(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】光化学反応装置およびそれを用いた光化学反応方法並びにラクタムの製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 19/12 20060101AFI20241010BHJP
C07D 201/04 20060101ALI20241010BHJP
C07D 223/10 20060101ALI20241010BHJP
C07D 225/02 20060101ALI20241010BHJP
H01L 33/00 20100101ALI20241010BHJP
【FI】
B01J19/12 C
C07D201/04
C07D223/10
C07D225/02
H01L33/00 L
(21)【出願番号】P 2020202589
(22)【出願日】2020-12-07
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091384
【氏名又は名称】伴 俊光
(74)【代理人】
【識別番号】100125760
【氏名又は名称】細田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】高木 淳一
【審査官】隅川 佳星
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-130862(JP,A)
【文献】特開2009-064986(JP,A)
【文献】特開2011-054529(JP,A)
【文献】特開2011-110721(JP,A)
【文献】特開2012-149055(JP,A)
【文献】特開2013-200944(JP,A)
【文献】特表2016-519419(JP,A)
【文献】特開2019-087561(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102033037(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102994054(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 10/00 - 19/32
C07D 201/00 - 201/18
217/00 - 227/12
H01L 33/00 - 33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応液が収容された反応容器内に、反応液に光照射可能な光源装置が挿入された光化学反応装置であって、前記光源装置は、全体が有底円筒状の光透過性容器で覆われており、かつ、複数の発光ダイオードを搭載した基板に、内部に冷媒が流通されるヒートシンクが接続された光化学反応用の光源装置において、前記ヒートシンクがアルミニウム合金で作製されており、前記冷媒中の鉄イオン濃度が0.05mg/L以下である
光源装置であることを特徴とする
光化学反応装置。
【請求項2】
前記冷媒中の塩化物イオン濃度が2.0mg/L以下である、請求項1に記載の
光化学反応装置。
【請求項3】
前記冷媒の主成分が水である、請求項1または2に記載の
光化学反応装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の
光化学反応装置を用い、前記発光ダイオードからの光を反応液に照射することを特徴とする光化学反応方法。
【請求項5】
前記反応液がシクロアルカンである、請求項
4に記載の光化学反応方法。
【請求項6】
前記シクロアルカンと光ニトロソ化剤に前記発光ダイオードからの光を照射することによりシクロアルカノンオキシムを製造する、請求項
5に記載の光化学反応方法。
【請求項7】
前記シクロアルカノンオキシムがシクロヘキサノンオキシムまたはシクロドデカノンオキシムである、請求項
6に記載の光化学反応方法。
【請求項8】
前記光ニトロソ化剤が塩化ニトロシルまたはトリクロロニトロソメタンである、請求項
6または
7に記載の光化学反応方法。
【請求項9】
請求項
6~
8のいずれかに記載の光化学反応方法でシクロアルカノンオキシムを製造し、次いでラクタムに変換することを特徴とするラクタムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の発光ダイオード(以下、LEDと略称することもある。)を使用した光化学反応用の光源装置、その光源装置を用いた光化学反応装置と方法、その光化学反応方法を用いたラクタムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオードは素子温度(ジャンクション温度)を低減することでより高効率・省エネルギーな発光が行えるという特徴を有している。このため、ヒートシンクと呼ばれる熱交換を目的とした水路をその外壁が複数のLEDを搭載した基板に接するように配して、水路内部に冷媒を流すことで、素子の冷却を行っている(例えば、特許文献1、2)。ヒートシンクの材質としては、熱交換、冷却の効率の面から、アルミニウム合金などが好ましいと考えられる。
【0003】
ヒートシンクに流す冷媒としては、河川水、イオン交換水、蒸留水や、これらの溶液に任意の薬剤を投入した冷媒が使用される。冷媒の使用方法としては、ヒートシンク内部に冷媒を1回流通しただけで廃棄する場合や、1回の流通によって発光ダイオードからの熱を吸熱後、再度別の熱交換器などの冷却装置を介して冷媒を再冷却し、循環使用する方法が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-200944号公報
【文献】WO2016/199706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような冷媒の中の一部の冷媒(例えば河川水)を使用した場合に、アルミニウム合金製ヒートシンクが1年弱で腐食してしまい、貫通孔が発生する等の問題があった。また、貫通孔が生じると、発光ダイオードが短絡したり、短絡の危険性から発光ダイオードが消灯状態となり、再点灯のためにはヒートシンクを修理することが必要となったりする問題があった。また、発光ダイオードの点灯を制御するための電気・電子部品の寿命が短くなる等の問題も発生する場合があった。
【0006】
そこで、本発明の課題は、上記のような問題点に着目し、腐食を抑制可能な、つまり、防食性能を向上可能なヒートシンク、特にアルミニウム合金製ヒートシンクを有する光化学反応用の光源装置と、その光源装置を用いた光化学反応装置と方法、その光化学反応方法を用いたラクタムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る光源装置は、複数の発光ダイオードを搭載した基板に、内部に冷媒が流通されるヒートシンクが接続された光化学反応用の光源装置において、前記ヒートシンクがアルミニウム合金で作製されており、前記冷媒中の鉄イオン濃度が0.05mg/L以下であることを特徴とするものからなる。
【0008】
アルミニウム合金には通常酸化皮膜が形成されており、その皮膜のために卑な金属であるにもかかわらずアルミニウム合金は耐食性が良い材質として知られている。しかし、液流れ(冷媒流れ)の激しい大型ヒートシンクでは、エロージョンの影響で瞬間的にアルミニウム酸化皮膜が剥がれ、そこに鉄イオン等の貴な金属が侵入して酸化皮膜下部のアルミニウム合金母材に鉄が定着する可能性がある。このような貴な金属の定着が一旦起きてしまうと、絶縁良好なアルミニウム酸化皮膜が形成できず、電気が流れやすいパスが生まれ、耐食性を悪化させる。
【0009】
上記のような理由から、鉄イオンの侵入を抑制することが重要であるが、今までどの程度まで鉄イオン濃度を低減させれば良いのか明確になっていなかった。
【0010】
今回鋭意検討の結果、冷媒中の鉄イオン濃度を0.05mg/L以下、望ましくは0.01mg/L以下にすることで劇的に防食性能が向上することが判明し、本発明を完成するに至った。
【0011】
鉄イオン濃度は、ICP-AES(Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectroscopy:誘導結合プラズマ-発光分析)またはICP-MS(Inductively Coupled Plasma-Mass Spectrometry:誘導結合プラズマ-質量分析)により分析を行うことができる。
【0012】
また、前述したアルミニウム酸化被膜は、液中の塩化物イオンが接触することによっても破壊が起き、同時に溶出したアルミニウムと塩化物で形成されるAl(OH)Cl+が被膜破壊箇所に蓄積され、酸性腐食が進行することも考えられる。
【0013】
塩化物イオン濃度は、2.0mg/L以下、好ましくは0.1mg/L以下にすることで防食性能がより向上することが判明した。
【0014】
塩化物イオン濃度は、硝酸銀滴定法、イオンクロマトグラフィー、電位差分析、フローインジェクション分析、吸光光度分析により評価できる。
【0015】
本発明における冷媒は、河川水そのものであっても河川水をイオン交換処理または蒸留処理した水でもよいし、イオン交換水や、蒸留水、水道水であってもよい。また、水を主体とせず、アルコール類のみでもよい。また、これらを溶媒として別途添加剤を加えた冷媒であってもよい。
【0016】
本発明は、ヒートシンク材質がアルミニウム合金である発光ダイオード搭載基板のすべてに適用可能であり、アルミニウム合金としては1000番台~8000番台のすべてを含む。
【0017】
ヒートシンクの外壁に接した形で設置する発光ダイオード搭載基板はどのような材質でもよく、通常アルミニウム合金や銅合金などの熱伝導性に優れる材質が使用される。
【0018】
このように発光ダイオードを使用した発光体を備えた光源装置として適用される場合には、上記ヒートシンクを備えた冷却手段が、上記発光体の裏面側(つまり、発光ダイオードを搭載した基板の裏面側で、発光ダイオード搭載側とは反対面側)に設けられていることが好ましい。すなわち、発光体の前面側の光の照射経路の障害とならないように冷却手段が構成されていることが好ましい。
【0019】
このような発光体を備えた光源装置においては、発光ダイオードからの照射光は、例えば、光化学反応用に使用することが可能である。例えば、後述の如く、発光ダイオードからの光が反応液に照射されるように構成されている光化学反応装置および方法に使用可能である。特に、発光ダイオードから光の照射先としての反応液がシクロアルカンであり、光照射によりシクロアルカノンオキシムを製造する光化学反応工程に使用可能である。光化学反応工程で製造したシクロアルカノンオキシムを用いてラクタムを製造することができる。
【0020】
本発明に係る光化学反応装置は、上記のような光源装置を適用することにより、腐食によってアルミニウム合金製ヒートンクに貫通孔が生じ、それによる発光ダイオードの短絡を予防でき、1年以上の長期にわたって連続使用することが可能となる。
【0021】
また、本発明に係る光化学反応方法は、上記のような光源装置を用い、発光ダイオードからの光を反応液に照射することを特徴とする方法からなる。
【0022】
この本発明に係る光化学反応方法は、特に大容量の発光ダイオード群を安定して連続点灯させることが要求されるあらゆる光化学反応に使用できる。例えば、光の照射先が液体であって、該液体の組成に少なくとも炭素原子が含まれている光化学反応に適用できる。この光の照射先の液体としては、例えば、シクロアルカンを挙げることができる。シクロアルカンとしては、例えば、シクロヘキサンまたはシクロドデカンを挙げることができる。本発明に係る光化学反応方法は、特にこのようなシクロアルカンと光ニトロソ化剤に発光ダイオードからの光を照射することによりシクロアルカノンオキシムを製造する光化学反応に好適である。シクロアルカノンオキシムとしては、シクロヘキサノンオキシムまたはシクロドデカノンオキシムを挙げることができる。光ニトロソ化剤としては、例えば、塩化ニトロシルまたはトリクロロニトロソメタンを挙げることができる。
【0023】
本発明に係るラクタムの製造方法は、上記のような光化学反応方法でシクロアルカノンオキシムを製造し、次いでラクタムに変換することを特徴とする方法からなる。
【発明の効果】
【0024】
このように、本発明に係る光源装置によれば、腐食によってアルミニウム合金製ヒートンクに貫通孔が生じて発光ダイオードが短絡したり、短絡の危険性から発光ダイオードが消灯状態となり、再点灯のためにはヒートシンクを修理することが必要となったりする問題が解消され、電気・電子部品の長寿命化をはかることもできる。したがって、本発明に係る光源装置を適用することにより、長寿命の発光ダイオード光源装置の構築が可能となり、長時間、安定に光源装置を運転することが可能となる。この光源装置は大容量の発光ダイオード群を用いて光照射を行う光化学反応装置と方法に特に有効であり、さらにはその光化学反応方法で製造したシクロアルカノンオキシムを用いるラクタムの製造方法の安定化にも貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施態様に係る光源装置を用いた光化学反応装置の概略縦断面図である。
【
図2】
図1の光源装置の構成例を示す部分横断面図と部分縦断面図である。
【
図3】
図1の光源装置の構成例を示す部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施態様に係る光源装置を光化学反応装置に適用した場合を例示しており、その装置全体の概略縦断面を示している。
図1において、1は光化学反応装置全体を示しており、光化学反応装置1の反応容器2内に反応液3が収容されている。反応容器2内には、反応液3に光照射可能な光源装置4が挿入されており、光源装置4は、全体が有底円筒状の光透過性容器5で覆われている。この光透過性容器5は、例えば、光透過性材料からなる隔壁を二重に配置し、2つの隔壁間に光透過性流体を流通させる構造に構成することもできる(図示略)。
【0027】
光源装置4内には、複数の(多数の)発光ダイオード6を搭載した基板7が、複数、有底筒状の構造を構成するように、かつ、各基板7に搭載された複数の発光ダイオード6が外側に向くように配置されている。これら発光ダイオード搭載基板7と上述の光透過性容器5との間には、光透過性気相部または液相部8が形成されている。基板7には、発光ダイオード6の搭載側とは反対側の面に、内部に冷媒9が流通される冷媒通路10が形成されたヒートシンク11が接続されている。ヒートシンク11の冷媒通路10内に冷媒9を通液して発光ダイオード6の冷却を行うようにしている。
【0028】
本発明では、上記ヒートシンク11がアルミニウム合金で作製されており、防食性能向上のため上記冷媒9中の鉄イオン濃度が0.05mg/L以下、好ましくは0.01mg/L以下とされている。また、防食性能向上のため望ましくは、冷媒9中の塩化物イオン濃度は、2.0mg/L以下、好ましくは0.1mg/L以下とされている。
【0029】
複数の発光ダイオード6を搭載した基板7およびそれに接続されたヒートシンク11は、より具体的には、例えば、
図2、
図3に示すように構成される。
図2、
図3に示すように、複数の発光ダイオード6を搭載した1枚の基板7の裏面(発光ダイオード6搭載側とは反対側の面)には、冷媒通路10が形成された角筒状のヒートシンク11が接続される。このように構成された基板7およびヒートシンク11が、複数配列されて、
図1に示したような光源装置4を構成する。
【0030】
上記のように構成された光源装置4は、
図1に示すように反応容器2内に直接投入されて、反応液3に対する光化学反応に供される。
【0031】
本発明では、大容量の、特に3kw以上、好ましくは10kw以上100kw以下の発光ダイオード群を1台の光源装置4にて使用可能で、光源装置4を1年以上修理なしで連続使用することが可能である。本発明の光源装置を用いることで、熱伝導性が良く、軽量なアルミニウム合金をヒートシンク材質として採用することができ、これにより光源装置全体の重量を軽くすることができるため、発光ダイオードの集積量の耐重量制限が緩和され、より発光ダイオードを高集積化した光源装置が作成でき、高出力光源を得ることも可能になる。また、伝熱性能の優れたアルミニウム合金が採用できるため、発光ダイオードの冷却効率も向上し、発光ダイオードのジャンクション温度低減による省エネルギー化も図れる。なお、1台の光源装置4における高集積された発光ダイオードの個数の上限は10万個程度である。
【0032】
上述したような光源装置4は、特に大容量の発光ダイオード群を安定して連続点灯させることが要求されるあらゆる光化学反応に適用できる。例えば、光化学反応方法において、光の照射先が液体(反応液)であって、炭素原子を含むものとすることができる。すなわち、本発明に係る光化学反応方法では、光の照射先は少なくとも1つは液体で構成される原料系とすることができる。原料となる液体は、炭素原子を含む液体であれば特に制限はなく、反応液として可燃性液体、例えばアルカン、シクロアルカンなどの炭化水素類を例示できる。
【0033】
なお、上記シクロアルカンとしては、特にその炭素数は限定しないが、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロウンデカン、シクロドデカンが好ましい。特に、ラクタムの原料となるシクロヘキサン、ラウリルラクタムの原料となるシクロドデカンが好ましい。
【0034】
上記のようなシクロアルカンと光ニトロソ化剤を用いて、発光ダイオードの光照射による光化学反応にてシクロアルカノンオキシムが得られる。光ニトロソ化剤には、例えば、塩化ニトロシル、塩化ニトロシルと塩化水素との混合ガスが好ましい。その他、一酸化窒素と塩素との混合ガス、一酸化窒素と塩素と塩化水素との混合ガス、ニトローゼガスと塩素との混合ガス等のいずれも光化学反応系にて、塩化ニトロシルとして作用するので、これらニトロソ化剤の供給形態に限定されるものではない。また、塩化ニトロシルとクロロホルムを光化学反応させて得られるようなトリクロロニトロソメタンをニトロソ化剤として用いてもよい。光化学反応を塩化水素の存在下で行う場合、シクロアルカノンオキシムはその塩酸塩となるが、そのまま塩酸塩の形態でもよい。
【0035】
上記の光反応によって、シクロアルカンの炭素数に応じたシクロアルカノンオキシムを得ることができる。例えば、シクロヘキサンを用いた塩化ニトロシルによる光ニトロソ化反応ではシクロヘキサノンオキシムが得られる。また、シクロドデカンを用いた塩化ニトロシルによる光ニトロソ化反応ではシクロドデカノンンオキシムが得られる。
【0036】
光化学反応を行って得られたシクロアルカノンオキシムをベックマン転位することによってラクタムが得られる。例えば、シクロヘキサノンオキシムをベックマン転位する反応では以下の反応式[化1]で示すようにεーカプロラクタムが得られる。また、シクロドデカノンオキシムをベックマン転位する反応ではω-ラウロラクタムが得られる。
【0037】
【0038】
なお、上記においては
図1~
図3に示した光源装置4を参照して本発明の実施の形態を説明したが、この実施形態は例として示したものであり、本発明の範囲を制限することは意図しない。様々な形態で実施することが可能であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、適宜簡略化や変更を行うことができる。このような実施形態やそれらの変更も、本発明の範囲に含まれる。
【実施例】
【0039】
以下に、本発明の代表的な実施例について説明する。
[実施例1]
アルミニウム合金(A6063)をイオン交換水(鉄イオン濃度:<0.01mg/L、塩化物イオン濃度:<0.1mg/L)に浸漬し、腐食の起きやすさを規定する電荷移動抵抗をインピーダンス法により測定したところ、80,000Ω・cm2と求められた。なお、電荷移動抵抗が高い程材質表面の絶縁性が高いことを示しており、腐食が起きにくいことを表している。
【0040】
[比較例1]
アルミニウム合金(A6063)を河川水(愛知用水、鉄イオン濃度:0.08mg/L、塩化物イオン濃度:3.0mg/L)に浸漬し、腐食の起きやすさを規定する電荷移動抵抗をインピーダンス法により測定したところ、4,000Ω・cm2と求められた。実施例1のイオン交換水の場合と比較すると材質表面の抵抗が1/20と低く、絶縁性が低いため腐食しやすい状態となっていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明に係る光源装置は、アルミニウム合金製ヒートシンクを流通される冷媒の少なくとも鉄イオン濃度を特定濃度以下としたので、腐食によりヒートシンクに貫通孔が生じる等の問題の発生を抑制することができるので、長時間の安定使用が要求される光化学反応用の光源装置として好適なものである。このような光源装置は、特に、光化学反応装置や光化学反応方法、その光化学反応方法を用いたラクタムの製造方法に用いて好適なものである。
【符号の説明】
【0042】
1 光化学反応装置
2 反応容器
3 反応液
4 光源装置
5 光透過性容器
6 発光ダイオード
7 基板
8 光透過性気相部または液相部
9 冷媒
10 冷媒通路
11 ヒートシンク