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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】漏油検出システム
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/26 20060101AFI20241010BHJP
   B65D 90/24 20060101ALI20241010BHJP
   B65D 90/50 20190101ALI20241010BHJP
【FI】
G01M3/26 S
B65D90/24
B65D90/50
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021060882
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022156938
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2024-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】栗原 英雄
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-079592(JP,U)
【文献】特開平03-160339(JP,A)
【文献】特開昭59-068639(JP,A)
【文献】特開2019-018897(JP,A)
【文献】特開昭53-089013(JP,A)
【文献】特開平01-037393(JP,A)
【文献】米国特許第04238953(US,A)
【文献】中国実用新案第206624262(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/26
B65D 90/24
B65D 90/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石油タンクを囲むように形成された水路と、
この水路を含めて平面視円形状をなすように前記水路の両端が接続された溜枡と、
前記水路及び前記溜枡の水が前記石油タンクの周りを循環する流れを形成するように前記水路に設置された水流ポンプと、
前記石油タンクから漏洩し、前記水路を経由して前記溜枡内に流入した石油を検知する漏油検知器と、を備えていることを特徴とする漏油検出システム。
【請求項2】
前記溜枡の上部を仕切るように設置された仕切板を備え、
前記仕切板の下端と前記溜枡の底面の間に連通口が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の漏油検出システム。
【請求項3】
前記溜枡内の水を前記水路に送出する水中ポンプを備え、
前記漏油検知器が配置された第1の区画と前記水中ポンプが配置された第2の区画の下部同士は前記連通口を介して繋がっており、
前記水流ポンプは、前記第2の区画から前記水路を経由して前記第1の区画に戻る向きに水流が形成されるように設置されていることを特徴とする請求項2に記載の漏油検出システム。
【請求項4】
前記溜枡の壁面の一部に設けられた排水口に一端が接続されるとともに他端が前記排水口よりも低くなるように設置された排水管を備え、
前記排水口は、前記水路の底面よりも高い位置に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の漏油検出システム。
【請求項5】
前記溜枡内の水位を検知する水位センサと、
前記排水管に設置された電磁弁と、
前記漏油検知器及び前記水位センサによる検知結果に基づいて前記電磁弁を開閉する制御装置と、を備えたことを特徴とする請求項4に記載の漏油検出システム。
【請求項6】
前記漏油検知器の検知結果に基づいて前記制御装置によって動作を制御される警報器を備え、この警報器は聴覚又は視覚で認知可能な情報を発報することを特徴とする請求項5に記載の漏油検出システム。
【請求項7】
前記石油タンクが設置されている敷地に設けられた排水溝と、
この排水溝に設置されて前記制御装置によって動作を制御される排水弁と、を備え、
前記制御装置は、前記警報器が発報した前記情報に基づいて前記排水弁を閉じることで前記排水溝の水の前記敷地外への排出を防ぐことを特徴とする請求項6に記載の漏油検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油タンクから石油が漏洩したことを検出する漏油検出システムに係り、特に、石油の漏洩を短時間で効率よく検出することが可能な漏油検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
石油を使用する工場や発電所などでは、屋外タンク貯蔵所と呼ばれるエリアに設置される石油タンクに石油が備蓄される。ここで、屋外タンク貯蔵所と石油タンクの構造について図10を用いて説明する。図10(a)は屋外タンク貯蔵所を模式的に示した図であり、図10(b)は石油タンクの構造の一例を示した斜視図である。なお、図10(b)では石油タンクの内部構造が分かるように、浮屋根と側壁の一部を切り欠いた状態で示している。
図10(a)に示すように、屋外タンク貯蔵所50には、複数の石油タンク51の周りを囲むように0.5m以上の高さを有する防油堤52が設けられており、地盤面がコンクリート等によって舗装されている場合には、雨水を工場や発電所などの敷地の外へ排出するために排水溝53及び溜枡54を設けることが義務付けられている。
石油タンク51は、屋根部の形式によって、固定屋根タンク、浮屋根タンク及び浮蓋付き固定屋根タンクの3種類に大別されるが、石油の劣化や成分の蒸発が少なく、積雪の影響を受け難いなどの理由から、浮屋根タンクが用いられる場合が多い。図10(b)に示すように、浮屋根式の石油タンク51は、円筒形状の鋼板からなる側壁55と、円板状をなすとともに浮室(図示せず)が外周に設けられた浮屋根56と、底板57と、浮屋根排水管58と、回転内梯子59と、ゲージポール60などからなり、浮屋根56が石油の貯蔵量に応じて上下方向へ移動する構造となっている。
【0003】
屋外タンク貯蔵所50では石油タンク51の周囲に防油堤52が設けられているため、石油タンク51から石油が漏洩したとしても、その石油が防油堤52を超えて外部へ流出するおそれはない。この状態で雨が降ると、石油タンク51から漏洩した石油(以下、漏油という。)は雨水とともに排水溝53に流れ込む。そして、排水溝53に流れ込んだ漏油は最終的に溜枡54に集まることになる。そのため、溜枡54の内部には、例えば、図11(b)に示すような漏油検知器が設置されている。なお、図11(a)は漏油検知器を構成するフロートの外観を示した斜視図であり、図11(b)は漏油検知器が溜枡に設置される様子を示した図である。ただし、図11(b)では図10(a)に示した溜枡54を模式的に示している。
【0004】
図11(a)及び図11(b)に示すように、漏油検知器61は、溜枡54の底に設置されるベース板62と、このベース板62に対して垂直に立設される2本のガイド棒63、63と、平面視円形をなし、2本のガイド棒63、63がそれぞれ遊挿される2つのガイド孔64a、64aを有するフロート64と、このフロート64に内蔵された検知回路(図示せず)に対して電気的に接続される電極65、65及び信号線66を備えている。
すなわち、漏油検知器61では、フロート64がガイド孔64a、64aに遊挿されたガイド棒63、63によって上下以外の方向への移動を規制されている。ただし、フロート64は検知回路及び電極65、65を含んだ比重が1よりも小さいことから、溜枡54に貯留された水の上に浮いた状態で水の嵩に応じて上下方向へ移動可能となっている。
そして、漏油検知器61は、電極65、65の間のインピーダンスを検知回路から発生する高周波によって検知する構造となっている。このような構造の漏油検知器61において、漏油が溜枡54に流入して油膜を形成した場合、電極65、65が油膜を通して水に接触することになり、油膜が存在しない場合に比べて上述のインピーダンスが大きくなる。そして、このインピーダンスが所定の値を超えたことを検知すると、検知回路は油膜を検知したことを示す信号(図4(b)を用いて後述する漏油検知信号E)を発する。
【0005】
従来、屋外タンク貯蔵所50では、上述したように漏油の有無を溜枡54に設置された漏油検知器61によって検知していた。漏油量を最小限に抑えるには、石油タンク51からの石油の漏洩をできるだけ早く発見することが必要である。しかしながら、上述の方法では、設置場所が排水溝53から遠い石油タンク51については、漏油が排水溝53を経て溜枡54に到達するのに時間を要するため、短時間で石油の漏洩を発見することができないという課題があった。さらに、屋外タンク貯蔵所50に複数の石油タンク51が設置されている場合には、石油が漏洩した石油タンク51を特定することも困難であった。
【0006】
このような課題に対処するものとして、例えば、特許文献1には「油漏れ検出センサー」という名称で、重油や原油などを備蓄するタンクからの油漏れを検出するセンサーに関する発明が開示されている。
特許文献1に開示された発明は、備蓄タンクの周囲に設けられた溝を流れる水に漏油検出センサーを浮かべることを特徴としている。
この発明では、備蓄タンクの近くに設けられた溝に流れ込んだ油を検出する構成となっているため、備蓄タンクのどの部分から油が漏れた場合でも発見することが可能である。
【0007】
また、特許文献2には、「油タンクなどの油漏洩検知方法および装置」という名称で、石油備蓄基地や石油工場などに設置された油タンクからの油の漏洩を検知する方法とそれに用いる装置に関する発明が開示されている。
特許文献2に開示された装置は、漏油に浸されると膨潤するセンサーを備えており、このセンサーが膨潤した際に生ずる静電容量の変化に基づいて漏油を検知する構造となっている。
この発明では、油の漏洩を検出する部分が簡単な機構であり、石油タンクが設置されている現場付近に直接設置できるため、油の漏洩を容易に検知することが可能である。
【0008】
特許文献3には、「石油タンク等の漏洩検出装置」という名称で、平行に配置されたアルミニウム製の一対の平板の間の静電容量の変化に基づいて、この平板間に漏油が侵入したことを検出する装置に関する考案が開示されている。
特許文献3に開示された考案は、4本の絶縁性の連結部材を用いて、所定の間隔をあけた状態で平行に保持された一対のアルミニウム製の平板が、石油タンク等から漏洩した石油がその間に侵入し得る箇所(例えば、石油タンクの底部など)に設置される構造となっている。
このような構造によれば、石油タンク等から漏洩した石油を確実に検出することができる。
【0009】
さらに、特許文献4には、「貯蔵タンクの漏出検知装置」という名称で、主タンクの周囲に漏出防止層が設置された二重殻構造の貯蔵タンクにおいて、漏出液を検知する装置に関する発明が開示されている。
特許文献4に開示された発明は、下端部が主タンクの底面側の間隙空間に通じ、上端部が貯蔵タンクの上面から突出するように設置された漏出検知管と、潤滑性を有し、貯蔵液に対して融解し難い網目状の漏液収集帯を備え、漏液収集帯が漏出検知管の下端部上を通るように主タンクの周囲に巻回されるとともに両端が主タンクの上面に固着された構造となっている。
この発明では、二重殻構造の間隙空間の底部に設けられた漏出検知管の下端検知部に漏出液が迅速に蓄積される構造となっているため、この漏出液を検知することにより、タンクに貯蔵された液の漏出を素早く検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平11-211603号公報
【文献】特開平9-33376号公報
【文献】実開昭55-175842号公報
【文献】特開2005-329997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述の従来技術である特許文献1に開示された発明では、備蓄タンクの油漏れが発生している箇所が漏油検出センサーの設置場所から遠い場合、備蓄タンクから漏れ出して溝に流れ込んだ油が漏油検出センサーの設置場所に到達するまでに時間を要するため、短時間に油漏れを検出することができないという課題があった。
また、特許文献2に開示された発明では、油漏洩センサーが設置されているピットが石油タンクの周りを囲むように設けられていないため、漏油が当該ピットに到達せず、石油タンクから石油が漏洩したことが油漏洩センサーによって検知されない可能性がある。
さらに、特許文献3に開示された考案は、石油タンクの底部などに一対のアルミニウム製の平板が設置される構造であるが、直径が数十メートルもある石油タンクに適用すると、製造や設置に要するコストが嵩んでしまうという課題があった。
そして、特許文献4に開示された発明では、漏液収集帯が主タンクの周囲に巻回される構造であるため、主タンクの直径が数十メートルもある場合には、漏液収集帯が巨大なものとなり、漏出液を検知する装置の製造コストが高くなってしまうという課題があった。
【0012】
本発明は、このような従来の事情に対処してなされたものであり、設置や保守に要する費用が安く、しかも簡単な構造でありながら、石油タンクから石油が漏洩したことを短時間で効率よく検出することが可能な漏油検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、第1の発明は、石油タンクを囲むように形成された水路と、この水路を含めて平面視円形状をなすように水路の両端が接続された溜枡と、水路及び溜枡の水が石油タンクの周りを循環する流れを形成するように水路に設置された水流ポンプと、石油タンクから漏洩し、水路を経由して溜枡内に流入した石油を検知することを特徴とするものである。
第1の発明では、水路が石油タンクを囲むように形成されていることから、石油が石油タンクのどの箇所から漏洩した場合であっても当該水路へ確実に流れ込む。また、第1の発明では、水路に流れ込んだ漏油が水路及び溜枡の水によって形成される循環流に乗って水路の中を短時間で移動した後、溜枡に流入する。そして、漏油は溜枡内に溜まった水の上に油膜を形成し、この油膜が漏油検知器によって検知される。
【0014】
第2の発明は、第1の発明において、溜枡の上部を仕切るように設置された仕切板を備え、仕切板の下端と溜枡の底面の間に連通口が設けられていることを特徴とするものである。
上記構造の第2の発明においては、第1の発明の作用に加え、水路から溜枡に流入した漏油が仕切板によって移動を遮られるため、溜枡内に滞留して厚い油膜を形成するという作用を有する。なお、仕切板の下端と溜枡の底面の間には連通口が設けられているため、溜枡内の水の移動が仕切板によって阻害される心配はない。
【0015】
第3の発明は、第2の発明において、溜枡内の水を水路に送出する水中ポンプを備え、漏油検知器が配置された第1の区画と水中ポンプが配置された第2の区画の下部同士は連通口を介して繋がっており、水流ポンプは、第2の区画から水路を経由して第1の区画に戻る向きに水流が形成されるように設置されていることを特徴とするものである。
第3の発明では、水流ポンプによって、第2の区画から水路を経由して第1の区画に戻るような水流が形成されるため、水路に流れ込んだ漏油は漏油検知器が配置された第1の区画に集まる。このとき、第1の区画において漏油によって水面上に形成された油膜は、第1の区画と第2の区画の上部を仕切るように設置されている仕切板によって、第2の区画の方への移動が阻止される。すなわち、第3の発明においては、第2の発明の作用に加え、第1の区画で形成された油膜が第2の区画に移動しないため、第2の区画に配置された水中ポンプが汚染されないという作用を有する。また、水中ポンプによって吸い込まれた第1の区画の下部の水が第2の区画に接続された水路の端部の近傍に吐出される。すなわち、第3の発明においては、第1の区画と第2の区画の下部における水の移動が水中ポンプによって促進されるという作用を有する。
【0016】
第4の発明は、第1の発明乃至第3の発明のいずれかの発明において、溜枡の壁面の一部に設けられた排水口に一端が接続されるとともに他端が排水口よりも低くなるように設置された排水管を備え、排水口は、水路の底面よりも高い位置に形成されていることを特徴とするものである。
第4の発明では、排水口が水路の底面よりも高い位置に設けられているため、溜枡の水は、その水位が排水口に達するまで排水管の方へ流出することはないが、溜枡の水位が排水口に達すると、排水管の方へ流出する。すなわち、第4の発明においては、第1の発明乃至第3の発明のいずれかの発明の作用に加え、排水管が溜枡とそれに接続された水路の水位を所定の高さに維持するという作用を有する。
【0017】
第5の発明は、第4の発明において、溜枡内の水位を検知する水位センサと、排水管に設置された電磁弁と、漏油検知器及び水位センサによる検知結果に基づいて電磁弁を開閉する制御装置と、を備えたことを特徴とするものである。
第5の発明においては、第4の発明の作用に加え、漏油検知器によって漏油が検知されず、かつ、溜枡の水位が所定の高さを超えている場合にのみ、制御装置の指示に従って電磁弁が開くように構成することで、漏油の排出管への流出が阻止されるという作用を有する。
【0018】
第6の発明は、第5の発明において、漏油検知器の検知結果に基づいて制御装置によって動作を制御される警報器を備え、この警報器は聴覚又は視覚で認知可能な情報を発報することを特徴とするものである。
第6の発明においては、第5の発明の作用に加え、警報器により、石油タンクから石油が漏洩したことが作業者や監視者の視覚又は聴覚によって認知されることから、石油の漏洩が発生したという事実が短時間で確実に作業者や監視者に伝わるという作用を有する。
【0019】
第7の発明は、第6の発明において、石油タンクが設置されている敷地に設けられた排水溝と、この排水溝に設置されて制御装置によって動作を制御される排水弁と、を備え、制御装置は、警報器が発報した情報に基づいて排水弁を閉じることで排水溝の水の敷地外への排出を防ぐことを特徴とするものである。
第7の発明においては、第6の発明の作用に加え、漏油の発生に伴い、排水溝の中の水の敷地の外へ向かう流れが遮断されるという作用を有する。
【発明の効果】
【0020】
第1の発明によれば、石油タンクから漏洩した石油はすべて水路に流れ込むため、当該水路が設けられていない従来の設備とは異なり、石油タンクと排水溝の間の地面の上に残っている石油を回収する作業を行う必要がない。また、水路に流れ込んだ石油は循環流によって強制的に溜枡へ送られるため、当該石油の漏洩をその発生箇所に関係なく、短時間で確実に検出することができる。そして、第1の発明は、水路と溜枡を形成し、水路に水流ポンプを設置するとともに溜枡に漏油検知器を設置するという簡単な構造であるため、設置や保守に要する費用が削減されるという効果を奏する。
【0021】
第2の発明によれば、溜枡に流入した漏油が厚い油膜を形成するため、第1の発明の効果に加え、漏油検知器による漏油の検知精度が高まるという効果を奏する。
【0022】
第3の発明によれば、第2の発明の効果に加え、水中ポンプが第1の区画に集められた漏油によって汚染されないため、水中ポンプが故障し難く、また、水中ポンプの保守に要する費用が削減されるという効果を奏する。また、第3の発明によれば、仕切板の影響で循環流の速度が低下するおそれがないため、石油タンクからの石油の漏洩を短時間で検出できるという第1の発明の効果が同様に発揮される。
【0023】
雨水が水路に流入すると、その水位が上昇して、水路から水が溢出することが考えられる。もし、漏油が水路に流れ込んでいる状態で水路の水が溢出した場合、一旦、水路に流れ込んだ漏油が水とともに水路から溢出してしまい、溜枡に到達しなかったり、到達したとしてもその量が少なくなったりする可能性がある。この場合、溜枡に設置された漏油検知器による検知が困難になる。これに対し、第4の発明では、水路の水位が所定の高さに維持されるため、水路に流れ込んだ漏油が水路から溢出することはない。したがって、第4の発明によれば、石油タンクから石油が漏洩したことを短時間で検出できるという第1の発明の効果が確実に発揮される。また、水路の外に溢出した漏油を回収する作業も発生しない。
【0024】
第5の発明では、溜枡の水位が所定の高さを超えていても漏油検知器によって漏油が検知された場合には電磁弁が開かないため、漏油が排水管を通って溜枡の外部に排出されることはない。したがって、第5の発明によれば、第4の発明の効果に加え、誤って敷地の外へ漏油を排出してしまうことを防止できるという効果を奏する。
【0025】
第6の発明によれば、第5の発明の効果に加え、警報器により、漏油が発生したことが作業者や監視者に短時間で確実に伝わるため、作業者や監視者が漏油の処理をただちに行うことができるという効果を奏する。
【0026】
第7の発明によれば、第6の発明の効果に加え、漏油が排水溝に流れ込んだ場合でも、その漏油が排水溝中の水とともに敷地の外へ排出されてしまうという事態を防ぐことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】(a)及び(b)はそれぞれ本発明の実施の形態に係る漏油検出システムの実施例1を示す斜視図及び平面図である。
図2】(a)及び(b)はそれぞれ水流ポンプ及び水位センサの断面図及び外観図であり、(c)は同図(b)において破線で囲まれた部分を拡大した断面図である。
図3】(a)及び(b)はそれぞれ図1(a)及び図1(b)において破線で囲まれた部分を拡大した図である。
図4】(a)は図3(b)におけるA-A線矢視断面図であり、(b)は実施例1の漏油検出システムの構成を示したブロック図である。
図5】実施例1の漏油検出システムの制御装置における処理の手順を示したフローチャートである。
図6】本発明の実施の形態に係る漏油検出システムの実施例2を示す斜視図である。
図7】(a)は図6において溜枡とその周辺を拡大して示した平面図であり、(b)は同図(a)におけるB-B線矢視断面図である。
図8】本発明の実施の形態に係る漏油検出システムの実施例3を示す斜視図である。
図9】(a)は図8において溜枡とその周辺を拡大して示した平面図であり、(b)は同図(a)におけるC-C線矢視断面図である。
図10】(a)は屋外タンク貯蔵所の模式図であり、(b)は石油タンクの斜視図である。
図11】(a)は漏油検知器を構成するフロートの外観斜視図であり、(b)は漏油検知器が溜枡に設置される様子を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の漏油検出システムの具体的な構造と、それに伴って発揮される作用及び効果について、図1乃至図9を参照しながら詳細に説明する。一般に、溜枡は排水路よりも深く、かつ、排水路よりも幅が広い構造となっている。この場合、排水路から溜枡に流入する水は勢いを失って流速が低下するため、水とともに溜枡に流入した漏油は溜枡内に滞留する。その結果、溜枡内の水面上には厚い油膜が形成され易い。図11を用いて説明した漏油検知器61は水面に形成された油膜が所定の厚さ(本実施例で用いた漏油検知器61の場合には7mm)を有する場合のみ検知可能な構造であるため、所定の厚さに達していない油膜は検知されないが、上述のとおり、溜枡に流入した漏油によって形成された厚い油膜は、漏油検知器61によって容易に検知される。
なお、本発明の実施の形態に係る漏油検出システムでは溜枡が水路よりも深く、かつ、幅が水路よりも広い構造となっているが、このような構造に限定されるものではない。すなわち、本発明における溜枡は水路よりも深い構造、又は幅が水路よりも広い構造のいずれかであっても良い。このような構造であっても、溜枡に流入した漏油が厚い油膜を形成するという上述の作用及び当該油膜が漏油検知器61によって検知され易いという上述の効果は同様に発揮される。
【0029】
なお、以下に説明する水路と溜枡は、グレーチング蓋(図示せず)によって上部が覆われているものとする。また、図3(a)、図3(b)、図4(a)、図6図7(a)、図7(b)、図8図9(a)及び図9(b)には水路や溜枡の側壁が薄い板によって構成されている様子が示されているが、水路や溜枡はこのような構造に限定されるものではなく、例えば、水路や溜枡の側壁はブロック状のコンクリートなどのように厚い部材によって構成されていても良い。そして、水路や溜枡がそのような構造であっても以下に説明する本発明の作用及び効果は同様に発揮される。さらに、図10及び図11を用いて既に説明した用語等については同一の符号を付すことにより、それらの説明を適宜省略する。
【実施例1】
【0030】
図1(a)及び図1(b)はそれぞれ本発明の漏油検出システムの一例を示す斜視図及び平面図である。また、図2(a)は水流ポンプが羽根車の回転中心を含む鉛直平面で切断された状態を示した断面図であり、図2(b)は水位センサの外観図であり、図2(c)は図2(b)において破線で囲まれた部分を拡大した断面図である。さらに、図3(a)及び図3(b)はそれぞれ図1(a)及び図1(b)において破線で囲まれた部分を拡大した図である。そして、図4(a)は図3(b)におけるA-A線矢視断面図であり、図4(b)及び図5はそれぞれ本発明の漏油検出システムの構成の一例を示したブロック図及び漏油検出システムの制御装置における処理の手順を示したフローチャートである。
なお、図2(a)ではハウジングのみを断面表示とするとともに、図2(c)ではネジ以外の部材を断面表示としている。また、図3(a)及び図3(b)に示した排水管及び電磁弁は地中に埋設されていることから、図1(a)及び図1(b)では排水管と電磁弁の図示を省略するとともに、図3(a)及び図3(b)では水路内や溜枡内の水及び石油タンクの周囲の地面の図示を省略している。さらに、図1乃至図3及び図4(a)では信号線や電源ケーブルの図示を省略している。
【0031】
図1(a)及び図1(b)に示すように、漏油検出システム1aは、地面67を掘削して石油タンク51を囲むように形成された水路2と、この水路2を含めて平面視円形状をなすように水路2の両端が接続された溜枡4と、溜枡4の内部に設置された水位センサ5及び漏油検知器61と、水を一方向へ送出する複数の水流ポンプ3を備えている。そして、この複数の水流ポンプ3は水路2及び溜枡4の水が石油タンク51を中心とする円形の循環流を形成するように水路2に設置されている。
図2(a)に示すように、水流ポンプ3は、モータ(図示せず)によって駆動されるプロペラファン3aと、このプロペラファン3aを回転可能に支持するケーシング3bと、このケーシング3bとプロペラファン3aが内部に設置されるハウジング3cと、このハウジング3cの内壁にケーシング3bを連結する固定具3dを備えている。そして、水流ポンプ3は水路2に設置された状態でプロペラファン3aを回転させると、吸込口3eから吸い込まれた水がハウジング3cの内部を流れて吐出口3fから吐出される構造となっている。
なお、図1(b)には、5つの水流ポンプ3が示されているが、水流ポンプ3の数は5つに限らず、適宜変更可能である。また、水流ポンプ3は図2(a)に示したような構造に限定されるものではない。例えば、遠心ポンプや歯車ポンプなどのようなプロペラポンプ以外の各種のポンプも水流ポンプ3として用いることができる。
図2(b)及び図2(c)に示すように、水位センサ5は、信号線などの各種のケーブルが接続された本体5aと、下端が閉塞された非磁性材からなり、リードスイッチ5bが内蔵されるとともに上端が本体5aに接続された筒状のステム5cと、このステム5cの上端に設けられたフランジ5dと、ステム5cに外挿されたフロート5eと、このフロート5eに内蔵されたリング状の磁石5fと、フロート5eを上下から挟むようにステム5cに設置された一対のストッパ5g、5gと、このストッパ5gをステム5cに固定するためのネジ5hを備えている。そして、水位センサ5はフロート5eの上下動に伴って磁石5fがリードスイッチ5bの高さに達すると、リードスイッチ5bが作動して、水位が所定の高さを超えたことを示す信号(図4(b)を用いて説明する検知信号H)を発する構造となっている。
【0032】
このように漏油検出システム1aでは、平面視円形状なす水路2が石油タンク51を囲むように形成されていることから、石油が石油タンク51のどの箇所から漏洩した場合でも水路2へ確実に流れ込む。そのため、水路2が設けられていない従来の設備とは異なり、石油タンク51と排水溝53の間の地面の上に残っている石油を回収する作業を行う必要がない。また、水路2に流れ込んだ石油は前述の循環流によって強制的に溜枡4へ送られるため、水路2に流れ込んだ漏油は、短時間で溜枡4に流入する。その後、漏油は溜枡4の内部に溜まった水の上に油膜を形成し、この油膜が漏油検知器61によって検知される。したがって、漏油検出システム1aにおいては、石油タンク51からの石油の漏洩をその発生箇所に関係なく、短時間で確実に検出することが可能である。また、漏油検出システム1aは、水路2及び溜枡4を形成し、水路2に水流ポンプ3を設置するとともに溜枡4に漏油検知器61を設置するという簡単な構造であるため、設置や保守に要する費用が安いという効果を有している。
【0033】
図3(a)及び図3(b)並びに図4(a)に示すように、水路2よりも幅が広く、かつ、水路2よりも深くなるように形成された溜枡4は水路2の内周側壁2cの一部と側壁4bによって周りを囲まれており、側壁4bは平面視した場合に水路2の外周側壁2bよりも外側へ突出するように形成されている。そして、漏油検知器61は、フロート64が溜枡4に貯留された水に浮かんだ状態となるように、ベース板62が溜枡4の底面4aに設置されている。さらに、溜枡4の側壁4bには水路2の底面2aよりも高い位置に排水口4c(図4(a)参照)が設けられており、この排水口4cには電磁弁6を有する排水管7が接続されている。
排水管7は、排水溝53(図10(a)参照)などに接続された先端側が排水口4cに接続される基端側よりも低くなっており、電磁弁6を開くことにより、溜枡4の排水口4cから流出した水が排水管7の内部を基端側から先端側へ向かって流れる構造となっている。また、水位センサ5は、溜枡4に溜められた水に浮かんだ状態となっているフロート5eが排水口4cの内面の最も低い位置を超えたときに、検知信号を発するようにフランジ5dを用いて溜枡4に固定されている。さらに、排水溝53には、後述するように排水弁14(図4(b)参照)が設置されている。
なお、本実施例では水位センサ5が溜枡4に設置されているが、水位センサ5は溜枡4の代わりに水路2に設置されていても良い。
【0034】
図4(b)に示すように、漏油検出システム1aは、漏油検知器61、水位センサ5、電磁弁6及び排水弁14に加え、表示灯8a、ブザー8b及び入力装置9と、電磁弁6、排水弁14、表示灯8a及びブザー8bの動作を制御する制御装置10を備えている。なお、漏油検出システム1aでは、入力装置9として、漏油検出システム1aを稼働させるための監視開始ボタン及び漏油検出システム1aの稼働を終了させるための監視終了ボタンの他、作動中の表示灯8a及びブザー8bを停止させるための警報停止ボタンが設けられている。また、漏油検知器61、水位センサ5、電磁弁6及び排水弁14並びに表示灯8a、ブザー8b及び入力装置9は制御装置10と信号線を介して接続されているが、発信装置と受信装置を用いることにより、漏油検知器61等が制御装置10に対して無線接続された構造とすることもできる。さらに、表示灯8a、ブザー8b、入力装置9及び制御装置10は、通常、石油タンク51から離れた監視室等に設置することが望ましいが、表示灯8a、ブザー8b及び入力装置9については石油タンク51の近くに設置することもできる。
【0035】
入力装置9の監視開始ボタンを押すと、入力装置9から制御装置10に監視開始信号Dが送られる。監視開始信号Dを受け取った制御装置10は、図5に示すように、まず、ステップS1において、石油タンク51から石油が漏洩しているか否かの判断を行う。制御装置10は、漏油検知器61が発した漏油検知信号Eを受け取った場合、石油タンク51から石油が漏洩していると判断し、表示灯8aとブザー8bに警報開始信号Fを送る。その結果、表示灯8aが点灯するとともにブザー8bが鳴動する(ステップS2)。すなわち、表示灯8a及びブザー8bは石油タンク51から石油が漏洩した場合に視覚又は聴覚によって認知可能な情報を発報する警報器として機能する。
その後、制御装置10は電磁弁6に閉信号Gを送って電磁弁6を閉じるとともに(ステップS3)、排水弁14に閉信号Gを送って排水弁14を閉じる(ステップS4)。これにより、排水溝53の中の水の敷地の外へ向かう流れが遮断される。したがって、このような構造を備えた漏油検出システム1aによれば、漏油が排水溝53に流れ込んだ場合でも、その漏油が排水溝53の中の水とともに敷地の外へ排出されてしまうという事態を防ぐことができる。なお、電磁弁6及び排水弁14が既に閉じている場合には、その状態が維持される。
表示灯8aやブザー8bの作動中に入力装置9の警報停止ボタンを押すと、入力装置9から制御装置10に警報停止信号Dが送られる。警報停止信号Dを受け取った制御装置10は、ステップS5において、警報停止ボタンが押されたと判断し、表示灯8aとブザー8bに警報停止信号Fを送る。その結果、表示灯8aが消えるとともにブザー8bが鳴り止む(ステップS6)。なお、ステップS5において、警報停止ボタンが押されていないと制御装置10が判断した場合、制御装置10はステップS6の処理を行わずにステップS7に進み、監視終了ボタンが押されたか否かの判断を行う。
【0036】
制御装置10の作動中に入力装置9の監視終了ボタンを押すと、入力装置9から制御装置10に監視終了信号Dが送られる。監視終了信号Dを受け取った制御装置10は、ステップS7において、監視終了ボタンが押されたと判断し、表示灯8a、ブザー8b、電磁弁6及び排水弁14の動作の制御を終了する。なお、ステップS7において、監視終了ボタンが押されていないと制御装置10が判断した場合、ステップS1に戻り、制御装置10は石油タンク51から石油が漏洩しているか否かの判断を行う。
ステップS1において、制御装置10が漏油検知器61から漏油検知信号Eを受け取っていない場合、制御装置10は石油タンク51から石油が漏洩していないと判断して排水弁14に開信号Gを送り、排水弁14を開く(ステップS8)。なお、排水弁14が既に開いている場合には、その状態が維持される。
つぎに、水位センサ5が発した検知信号Hを制御装置10が受け取った場合、ステップS9において、制御装置10は溜枡4の水位が所定の高さ(例えば、排水口4cの内面における最も低い箇所の高さ)を超えていると判断し、電磁弁6に開信号Gを送って電磁弁6を開く(ステップS10)。その後、ステップS7に進み、制御装置10は監視終了ボタンが押されたか否かの判断を行う。なお、ステップS9において、溜枡4の水位が所定の高さを超えていないと制御装置10が判断した場合、ステップS1に戻り、制御装置10は石油タンク51から石油が漏洩しているか否かの判断を行う。
【0037】
漏油検出システム1aでは、排水口4cが水路2の底面2aよりも高い位置に設けられているため、溜枡4の水位が排水口4cに達するまで、溜枡4の水が排水口4cを通って排水管7の方へ流出することはない。一方、溜枡4の水位が排水口4cに達すると、溜枡4の水は排水口4cから排水管7の方へ流出する。そして、電磁弁6が開いている場合には、溜枡4の水は排水管7を経由して排水溝53に流入する。すなわち、排水管7は溜枡4とそれに接続された水路2の水位を所定の高さに維持するという作用を有する。
雨水が流入すると水路2の水位が上昇するが、漏油が水路2に流れ込んでいる場合には、水とともに漏油が水路2から溢出してしまう可能性がある。しかしながら、上述したとおり、漏油検出システム1aでは水路2の水位が所定の高さに維持されるため、一旦、水路2に流れ込んだ漏油が水路2から溢出することはない。
【0038】
漏油検出システム1aにおいては、漏油検知器61によって漏油が検知されず、かつ、溜枡4の水位が所定の高さを超えている場合にのみ、制御装置10が電磁弁6を開くように構成されているため、漏油が排水管7を通って溜枡4の外部に排出されることはない。なお、水路2の水位が上昇した場合でも漏油検知器61によって漏油が検知されると電磁弁6は開かないため、水路2からの漏油の溢出が懸念される。しかしながら、表示灯8aの点灯とブザー8bの鳴動によって漏油が発生したことが作業者や監視者の視覚又は聴覚によって認知されることから、当該事実が短時間で確実に作業者や監視者に伝わる。したがって、上記構造の漏油検出システム1aによれば、漏油の処理がただちに行われる可能性が高い。そして、水路2の水が溢出する前に当該処理が完了した場合には、制御装置10の指示に従って電磁弁6が開くため、水路2から水が溢出することはない。
このように、漏油検出システム1aでは、一旦、水路2に流れ込んだ漏油が水路2から溢出することも、溜枡4に流入した漏油が排水管7から排水溝53を通って敷地の外に排出されてしまうおそれもない。したがって、漏油検出システム1aによれば、石油タンク51が設置されている場所の土壌や敷地の外の環境の汚染を防ぐことができる。
【実施例2】
【0039】
図6は実施例1の漏油検出システムの変形例の斜視図であり、図7(a)は図6において溜枡とその周辺を拡大して示した平面図である。なお、図6及び図7(a)は実施例1の漏油検出システムに関する図3(a)及び図3(b)にそれぞれ相当する。また、図7(b)は図7(a)におけるB-B線矢視断面図である。なお、図10及び図11に加えて図1乃至図5を用いて既に説明した構成要素については、同一の符号を付すことにより適宜その説明を省略する。また、図6及び図7(a)では水路内や溜枡内の水及び石油タンクの周囲の土の図示を省略するとともに、図6並びに図7(a)及び図7(b)では信号線や電源ケーブルの図示を省略している。
【0040】
図6並びに図7(a)及び図7(b)に示すように、漏油検出システム1bは、漏油検出システム1aにおいて、水位センサ5及び電磁弁6を備える代わりに、溜枡4の水を水路2に送出する水中ポンプ11と、溜枡4の上部を仕切るように両端が水路2の内周側壁2c及び溜枡4の側壁4bにそれぞれ接続された仕切板12を備えた構造となっている。そして、仕切板12により、溜枡4には漏油検知器61が配置された第1の区画13aと水中ポンプ11が設置された第2の区画13bが形成されている。
仕切板12は、上端12aの高さが水路2の内周側壁2cや溜枡4の側壁4bの上端の高さと略同一であるが、下端12bは溜枡4の底面4aに達していない。すなわち、第1の区画13aと第2の区画13bは、上部が仕切板12によって仕切られているものの、仕切板12の下端12bと溜枡4の底面4aの間に設けられた連通口を通して下部同士が繋がっている。なお、全ての水流ポンプ3は、循環流が第2の区画13bから水路2を経由して第1の区画13aに戻る向きに形成されるように設置されている。
さらに、排水管7が接続される溜枡4の排水口4cは第2の区画13bの側に設けられており、水中ポンプ11の吸込口(図示せず)に一端が接続された吸込管11aは他端が仕切板12の下端12bと溜枡4の底面4aの間から第1の区画13aへ突出するように配置されている。一方、水中ポンプ11の吐出口(図示せず)に一端が接続された吐出管11bは他端が第2の区画13bに接続された水路2の端部の近傍に配置されている。
【0041】
漏油検出システム1bでは、水流ポンプ3によって、循環流が第2の区画13bから水路2を経由して第1の区画13aに戻る向きに形成されるため、水路2に流れ込んだ漏油は、漏油検知器61が配置された第1の区画13aに集まる。このとき、第1の区画13aにおいて漏油によって水面上に形成された油膜は、第1の区画13aと第2の区画13bの上部を仕切るように設置されている仕切板12によって、第2の区画13bの方への移動が阻止される。このように、漏油検出システム1bでは、第2の区画13bに漏油が移動せず、水中ポンプ11が漏油によって汚染されないため、水中ポンプ11が故障し難い。また、水中ポンプ11の保守に要する費用が削減される。したがって、漏油検出システム1bでは、水中ポンプ11を安全に長期間使用することができる。
さらに、漏油検出システム1bでは、水路2から溜枡4の第1の区画13aに流入した漏油が仕切板12によって第2の区画13bへの移動を遮られることにより、第1の区画13aに滞留して厚い油膜を形成する。これにより、漏油検知器61による漏油の検知精度が高まる。
そして、排水口4cが第2の区画13bの側の壁面に設けられていることから、第1の区画13aに集められた漏油が排水口4cから排出されるおそれがない。したがって、漏油検出システム1bでは、排水管7に電磁弁6を設置したり、電磁弁6の動作を制御するための制御装置10を設置する必要がない。これにより、設置や保守に要する費用が削減される。なお、排水口4cを第1の区画13aの側の壁面に設ける場合には、漏油検出システム1aのように電磁弁6や制御装置10を設置することが望ましい。
【0042】
前述したように、第1の区画13aと第2の区画13bは、仕切板12によって、上部における水の移動が規制されているものの、下部における水の移動は規制されていない。さらに、仕切板12の下端12bと溜枡4の底面4aの間には連通口が設けられているため、溜枡4の内部における水の移動は仕切板12によって阻害されない。加えて、水中ポンプ11は第1の区画13aの下部の水を吸い込んで第2の区画13bに接続された水路2の端部の近傍に吐出するという作用を有している。すなわち、第1の区画13aと第2の区画13bの下部においては水中ポンプ11によって水の移動が促進されるため、仕切板12によって第1の区画13aと第2の区画13bの上部における水の移動が規制されていても、それによって水路2を流れる水の速度が低下してしまうおそれはない。このように、漏油検出システム1bでは、仕切板12の影響で循環流の速度が低下してしまうようなことはなく、石油タンク51からの石油の漏洩を短時間で検出できるという漏油検出システム1aの効果が同様に発揮される。
【実施例3】
【0043】
図8は実施例2の漏油検出システムの変形例の斜視図であり、図9(a)は図8において溜枡とその周辺を拡大して示した平面図であり、図9(b)は図9(a)におけるC-C線矢視断面図である。なお、図8並びに図9(a)及び図9(b)は実施例2の漏油検出システムに関する図6並びに図7(a)及び図7(b)にそれぞれ相当する。また、図1乃至図5並びに図10及び図11に加えて図6及び図7を用いて既に説明した構成要素については、同一の符号を付すことにより適宜その説明を省略する。さらに、図8及び図9(a)では水路内や溜枡内の水及び石油タンクの周囲の土の図示を省略するとともに、図8並びに図9(a)及び図9(b)では信号線や電源ケーブルの図示を省略している。
【0044】
図8並びに図9(a)及び図9(b)に示すように、漏油検出システム1cは、漏油検出システム1bにおいて、仕切板12が水路2の内周側壁2cと水中ポンプ11の間を仕切るように設置されていることを特徴とする。仕切板12の下端12bは溜枡4の底面4aに達していないものの、水路2の底面2aには達している。すなわち、漏油検出システム1cでは、仕切板12の下端12bは水路2の底面2aに対して隙間なく接続されているため、第1の区画13aの水が第2の区画13bに接続された水路2の端部側へ仕切板12を超えて直接流れ込むことはない。
一方、第1の区画13aと第2の区画13bは、上部が仕切板12によって仕切られているものの、下部同士は仕切板12の下端12bと溜枡4の底面4aの間の連通口を通して繋がっていることから、第1の区画13aの水は仕切板12の下端12bと溜枡4の底面4aの間を通って第2の区画13bに移動した後、上述の水路2の端部側に流れ込む。さらに、水中ポンプ11は漏油検出システム1bの場合と同様に、第1の区画13aから第2の区画13bを経由して水路2に向かう上述の水の流れを促進するように作用する。すなわち、漏油検出システム1cにおいても仕切板12の影響によって循環流の速度が低下することはないため、石油タンク51からの石油の漏洩を短時間で検出できるという漏油検出システム1aの効果が同様に発揮される。
また、漏油検出システム1cでは、仕切板12が水路2の内周側壁2cと水中ポンプ11の間を仕切るように設置されていることから、万一、溜枡4が設けられている箇所の水路2の内周側壁2cから石油が漏洩したとしても当該漏油は第1の区画13aに流入するだけで第2の区画13bには流入しない。すなわち、漏油検出システム1cでは、溜枡4が設けられている箇所の水路2の内周側壁2cから石油が漏洩した場合でも第2の区画13bに漏油が流入せず、漏油によって水中ポンプ11が汚染されて故障してしまうおそれがないため、水中ポンプ11を長期間使用することができるという漏油検出システム1bにおける効果がより一層発揮される。
さらに、排水口4cが第2の区画13bの側の壁面に設けられており、第1の区画13aに集められた漏油が排水口4cから排出されるおそれがないため、排水管7に電磁弁6や制御装置10を設置する必要がない。したがって、漏油検出システム1cにおいても設置や保守に要する費用が削減されるという漏油検出システム1bにおける効果が同様に発揮される。なお、排水口4cを第1の区画13aの側の壁面に設ける場合には、漏油検出システム1aのように排水管7に電磁弁6や制御装置10を設置することが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、工場や発電所などに設置される石油タンクに対して適用可能である。
【符号の説明】
【0046】
1a~1c…漏油検出システム 2…水路 2a…底面 2b…外周側壁 2c…内周側壁 3…水流ポンプ 3a…プロペラファン 3b…ケーシング 3c…ハウジング 3d…固定具 3e…吸込口 3f…吐出口 4…溜枡 4a…底面 4b…側壁 4c…排水口 5…水位センサ 5a…本体 5b…リードスイッチ 5c…ステム 5d…フランジ 5e…フロート 5f…磁石 5g…ストッパ 5h…ネジ 6…電磁弁 7…排水管 8a…表示灯 8b…ブザー 9…入力装置 10…制御装置 11…水中ポンプ 11a…吸込管 11b…吐出管 12…仕切板 12a…上端 12b…下端 13a…第1の区画 13b…第2の区画 14…排水弁 50…屋外タンク貯蔵所 51…石油タンク 52…防油堤 53…排水溝 54…溜枡 55…側壁 56…浮屋根 57…底板 58…浮屋根排水管 59…回転内梯子 60…ゲージポール 61…漏油検知器 62…ベース板 63…ガイド棒 64…フロート 64a…ガイド孔 65…電極 66…信号線 67…地面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11