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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】検査用具保持構造物および検査設備
(51)【国際特許分類】
   G01K 1/14 20210101AFI20241010BHJP
   G01K 1/10 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
G01K1/14 L
G01K1/14 E
G01K1/10
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021064699
(22)【出願日】2021-04-06
(65)【公開番号】P2022160138
(43)【公開日】2022-10-19
【審査請求日】2024-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】十川 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】南 光成
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-13744(JP,U)
【文献】実開平3-109029(JP,U)
【文献】実開平2-57037(JP,U)
【文献】実開昭56-142435(JP,U)
【文献】特表2021-529329(JP,A)
【文献】特開2007-155382(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有しかつ細長状の検査用具の先端を所望の位置に案内して保持しておくための保持構造物であって、
中空管からなる曲管部と、中空管からなる直管部と、を備えている保護管と、
前記保護管において前記検査用具の導入口である第1の開口側を支持する第1の台座と、
前記保護管の胴部、及び/又は、前記第1の開口の反対側にある第2の開口側を支持する第2の台座と、を備えていることを特徴とする検査用具保持構造物。
【請求項2】
前記第1の台座及び前記第2の台座はそれぞれ、
前記保護管を載置する載置台と、
前記載置台に前記保護管を着脱可能に固定する固定具と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の検査用具保持構造物。
【請求項3】
前記第1の台座及び前記第2の台座はそれぞれ、
前記載置台を挟持するように配される一対の支持部と、
一対の前記支持部に対して前記載置台を傾動可能に固定する枢軸と、を備えていることを特徴とする請求項2に記載の検査用具保持構造物。
【請求項4】
前記保護管の外側面は、前記載置台上における取設位置の目安となる第1の目印を備えていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の検査用具保持構造物。
【請求項5】
複数本の前記保護管を備え、
複数本の前記保護管は、前記固定具により束ねられた状態で前記載置台に固定されていることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の検査用具保持構造物。
【請求項6】
前記固定具は、Uボルトであることを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載の検査用具保持構造物。
【請求項7】
前記保護管は、
前記直管部に複数の貫通孔を備え、
前記曲管部は貫通孔を備えていないことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の検査用具保持構造物。
【請求項8】
前記保護管の前記曲管部と前記直管部はそれぞれ別体からなり、
前記曲管部と前記直管部の間に連結部を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の検査用具保持構造物。
【請求項9】
前記保護管は、配管用炭素鋼鋼管であり、その「呼び口径」が「40A」又は「50A」であることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の検査用具保持構造物。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の検査用具保持構造物と、
前記保護管内に挿脱される前記検査用具と、を備え、
前記検査用具は、前記先端、及び、前記保護管内に挿入される部分の外側面、を被覆するフッ素樹脂からなるコーティング材を備えていることを特徴とする検査設備。
【請求項11】
前記検査用具は、前記コーティング材の内側に金属製のシース又は線状補強材を備えていることを特徴とする請求項10に記載の検査設備。
【請求項12】
前記検査用具は、前記保護管内への挿入量の目安となる第2の目印を備えていることを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の検査設備。
【請求項13】
前記第2の台座は、
平面視した際の前記第1の台座から離れた場所でかつ、
水平方向から見た際の前記第1の台座よりも鉛直下方に位置し、
前記第1の台座及び前記第2の台座は、水際の構造物に直接又は間接的に固設され、
前記保護管は、
平面視した際の前記第1の台座と前記第2の台座の間に前記曲管部を備え、
水平方向から見た際の前記第1の開口は、前記保護管の全てを前記直管部により構成した場合の前記第1の開口位置よりも鉛直下方に位置していることを特徴とする請求項10乃至請求項12のいずれか1項に記載の検査設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中、あるいは屋内又は屋外の所望の位置に細長形状を有する検査用具の先端を案内して保持しておくための検査用具保持構造物およびそれを用いた検査設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発電所等においては、冷却水等の放水に伴う外部環境への影響を監視する目的で、放水口近くの水温や水質、あるいは海底の温度や成分等の計測又は検査を定期的に行なっている。
通常、そのための設備は、発電所等の施設の建設時に必要箇所に併せて設置されることになっている。しかしながら、その後の環境基準の改定や、発電所等の設備の運転状況の変更等に伴い、例えば水温等の検査場所の変更を余儀なくされる場合がある。
この場合、新たに設定される検査場所へのアクセスが容易でないことがある。その場合は、新たに設定される検査場所にアクセスするために、別途足場等を新設置する必要があり、そのためのコストが嵩むという課題が生じていた。
本発明と同一の解決すべき課題を有する先願は現時点では発見されていないが、関連する技術分野の先行技術としては以下に示すものが知られている。
【0003】
特許文献1には「流体の温度計測装置及び発電プラント」という名称で、流れる流体の温度を計測する流体の温度計測装置及び発電プラントに関する発明が開示されている。
特許文献1に開示される発明は、同文献の図2中に示される符号をそのまま用いて説明すると、側壁部13の上面部13aに固定されるサポート部材21と、鉛直方向の上方側がサポート部材21に支持されて下方側の計測部32が水流部15に浸漬される温度計22と、サポート部材21から離間した位置で側壁部13の側面部13bに固定されると共に温度計22のうちの水流部15に浸漬される部分より水流部15の少なくとも上流側で温度計22の水流部15に浸漬される部分に対向して配置されるガイド管23とを備えてなるものである。
特許文献1に開示される発明によれば、流体中に温度計を浸漬して使用する場合にその破損を防止すべく、温度計自体の強度を上げたり、温度計を支持する支持部材を増加したり、あるいは温度計を水流の緩やかな場所に配置したりする必要がない。このため、特許文献1に開示される発明によれば、温度計の設置コストの増加を抑制することができる上、水流部の温度の計測精度を向上させることができ、さらに温度計のメンテナンス性を向上することができる。
【0004】
特許文献2には「海水温度測定装置」という名称で潮の干満に関わらず海水中の所定深度における温度の連続測定を可能にする海水温度測定装置に関する考案が開示されている。
特許文献2に開示される考案である海水温度測定装置は、支持部材により吊持された先端におもりを取着して海面下に垂下されたロープ体と、このロープ体に嵌合して上下動自在に配設されたガイド体と、このガイド体に取設され表面に多数の透孔を穿設した外筒と、この外筒に可調整に装着され先端に温度検知部を有する感温体を設けてなる二重管と、この二重管に取設され上記温度検知部を海水の所定深度に位置させるフロートとを具備したことを特徴とするものである。
上記構成の特許文献2に開示される考案によれば、水面上を浮遊するフロートの上下動に伴って温度検知部が上下動することで、潮の干満による海面の変動があっても常時所定の海水内における温度を連続して測定することが可能となる。この結果、温度検知部による測定データの信頼性ならびに精度を向上させることができる。さらに、特許文献2に開示される考案によれば、装置の構成が簡単で、しかも耐久性に優れているので、長期間にわたり安定して動作させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-72289号公報
【文献】実願昭49-157214号(実開昭51-84486号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示される発明では、仮に温度の計測位置が同文献中の図8に示す側壁部13から流路の中心側に向かって離れている場合、この側壁部13から伸びるサポート部材21の長さを長くする必要がある。
この場合、特許文献1に開示される発明における温度計22(同文献中の図2を参照)のメンテナンスや交換のために、温度計22をガイド管23から取り外す必要がある場合に、作業者が側壁部13(同文献中の図8を参照)から直接これらの作業を行うことが困難である。
このため、特許文献1に開示される発明では、サポート部材21(同文献中の図2を参照)の上において人が作業できるよう、サポート部材21に十分な強度と安全性を付加する必要があった。
【0007】
特許文献2に開示される考案では、例えば同文献中の図2中に示される踊り場19を備えない場合、同図中の岸壁天端17から沖側に向かって離れた位置の海水中の温度を計測することができない。
【0008】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものでありその目的は、作業者が容易にアクセスできない場所に細長状の検査用具の先端を案内して保持しておくことができる検査用具保持構造物を提供することにある。
加えて、本発明の他の目的は、上記検査用具保持構造物を用いた検査設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための第1の発明である検査用具保持構造物は、可撓性を有しかつ細長状の検査用具の先端を所望の位置に案内して保持しておくための保持構造物であって、中空管からなる曲管部と、同じく中空管からなる直管部と、を備えている保護管と、この保護管において検査用具の導入口である第1の開口側を支持する第1の台座と、保護管の胴部、及び/又は、第1の開口の反対側にある第2の開口側を支持する第2の台座と、を備えていることを特徴とするものである。
上記構成の第1の発明において、保護管は、検査用具の先端を第2の開口側の所望の位置に案内してその位置に保持するという作用を有する。
より具体的には、保護管を構成する曲管部及び直管部はともに中空体からなり、これらの中空部はともに検査用具を挿入して用いる際に検査用具の進路となる。このため、保護管が曲管部を備えているということは、検査用具の進路が所望に曲がることを意味している。よって、第1の発明において保護管の曲管部は、検査用具の先端の進路を所望に変更させるという作用を有する。
さらに、保護管に検査用具が挿設された際に、保護管の内側面と検査用具の外側面の接触部分に生じる摩擦力で保護管内の所望の位置に検査用具の先端が保持される。
加えて、保護管における第1の開口は、検査用具の挿入口として用いられる。加えて、保護管における第2の開口は、検査用具の先端の目的地となる。
また、第1及び第2の台座はともに、水中、あるいは屋内又は屋外において保護管の配置を固定するという作用を有する。
【0010】
第2の発明である検査用具保持構造物は、上述の第1の発明であって、第1の台座及び第2の台座はそれぞれ、保護管を載置する載置台と、この載置台に保護管を着脱可能に固定する固定具と、を備えていることを特徴とするものである。
上記構成の第2の発明は、上述の第1の発明による作用と同じ作用を有する。さらに、上記構成の第2の発明において、第1の台座及び第2の台座のそれぞれが載置台を備えていることで、すなわち第2の発明が保護管を載置する載置面を有する少なくとも2つの載置台を備えていることで、その一部が曲がっている保護管を少なくとも2つの載置面(ただし、この載置面は平面に限定されない)により少なくとも2点支持するという作用を有する。
そして、第2の発明では、その一部が曲がっている保護管を少なくとも2つの載置面上(載置台)で支持するとともに、この載置台に固定具により保護管を固定することで、第1の台座及び第2の台座への保護管の着脱を繰り返す場合でも、保護管の配置を略一定にするという作用を有する。
【0011】
第3の発明である検査用具保持構造物は、上述の第2の発明であって、第1の台座及び第2の台座はそれぞれ、載置台を挟持するように配される一対の支持部と、この一対の支持部に対して載置台を傾動可能に固定する枢軸と、を備えていることを特徴とするものである。
上記構成の第3の発明は、上述の第2の発明による作用と同じ作用を有する。さらに、上記構成の第3の発明において、第1の台座及び第2の台座がそれぞれ載置台を挟持するように配される一対の支持部を備え、さらにこの一対の支持部に枢軸を介して載置台が固定されていることで、一対の支持部に対する載置台の傾斜度が所望に変更可能になる。
この場合、第1の台座及び第2の台座のそれぞれにおいて、一対の支持部に対する載置台の傾斜度を変更することで、第1の台座及び第2の台座に固定される保護管の第2の開口位置を変更することができる。
【0012】
第4の発明である検査用具保持構造物は、上述の第2又は第3の発明であって、保護管の外側面は、載置台上における取設位置の目安となる第1の目印を備えていることを特徴とするものである。
上記構成の第4の発明は、上述の第2又は第3の発明による作用と同じ作用を有する。さらに、上記構成の第4の発明において、保護管の外側面に設けられる第1の目印は、載置台上に保護管を載置して固定具により固定する際の位置合わせの基準として用いることができる。
【0013】
第5の発明である検査用具保持構造物は、上述の第2乃至第4のいずれかの発明であって、複数本の保護管を備え、これら複数本の保護管は、固定具により束ねられた状態で載置台に固定されていることを特徴とするものである。
上記構成の第5の発明は、上述の第2乃至第4のそれぞれの発明による作用と同じ作用を有する。さらに、上記構成の第5の発明が、複数の保護管を備えていることで、検査用具とその予備の検査用具、又は検査対象が異なる複数種類の検査用具、を互いに接近又は接触させた状態で配置することができる。
また、複数の保護管を載置台に束ねた状態で第1の台座及び第2の台座に固定することで、保護管を1本だけ第1の台座及び第2の台座に固定する場合に比べて、各保護管の変形や破損を起こり難くするという作用を有する。
つまり、複数の保護管を束ねて第1の台座及び第2の台座に固定することで、保護管同士が互いにその強度を補い合い、これにより検査用具保持構造物の使用中に保護管が外力により変形又は破損するのを防ぐことができる。
【0014】
第6の発明である検査用具保持構造物は、上述の第2乃至第5のいずれかの発明であって、固定具は、Uボルトであることを特徴とするものである。
上記構成の第6の発明は、上述の第2乃至第5のそれぞれの発明による作用と同じ作用を有する。さらに、上記構成の第5の発明において固定具としてUボルトを用いることで、固定具の形態をシンプルにしつつ、作業者にとって取扱いを容易にできる。さらに、固定具としてUボルトを用いる場合は、固定具が汎用品となるため、交換時の固定具の調達が容易になる。
さらに、第6の発明では、固定具としてUボルトを用いることで、載置台への保護管の着脱作業も容易になる。つまり、特殊な技術を有しない作業員でも載置台への保護管の着脱作業を行うことができる。
【0015】
第7の発明である検査用具保持構造物は、上述の第1乃至第6のいずれかの発明であって、保護管は、直管部に複数の貫通孔を備え、曲管部は貫通孔を備えていないことを特徴とするものである。
上記構成の第7の発明は、上述の第1乃至第6のそれぞれの発明による作用と同じ作用を有する。さらに、上記構成の第7の発明において、保護管の直管部に形成される複数の貫通孔は、保護管の外の気体又は液体を保護管内に出入りさせるという作用を有する。
この場合、保護管内の環境が保護管外の環境と略同じになるので、保護管内における検査用具による検査結果を、保護管の外の環境の検査結果と見なすことができる。
また、保護管の設置場所が粘性液体内のような特殊な環境下である場合、保護管を設置した後に検査用具の先端を保護管の直管部に送り込む場合、検査用具の存在によって直管部内の気体又は液体を複数の貫通孔を介して外部へ押し出すことができるので、検査用具の先端を第2の開口近傍にスムーズに到達させることもできる。
さらに、第7の発明において、保護管の曲管部が貫通孔を有しないことで、検査用具の先端が曲管部内を通過する際に、貫通孔から検査用具の先端が意図せず保護管の外に導出されてしまうのを防ぐという作用を有する。
この場合、保護管の第1の開口から検査用具を挿入して、保護管の第2の開口側に検査用具の先端を配置する際の作業性を向上させるという作用を有する。つまり、第7の発明では、例えば検査用具の先端を保護管の第2の開口近傍に配して検査を行う必要がある場合に、曲管部内を移動している検査用具が貫通孔から保護管の外に意図せず導出されてしまい、検査用具の先端を目的地(例えば保護管の第2の開口近傍)に案内することができないという不具合が生じるのを防ぐことができる。
【0016】
第8の発明である検査用具保持構造物は、上述の第1乃至第7のいずれかの発明であって、保護管の曲管部と直管部はそれぞれ別体からなり、曲管部と直管部の間に連結部を備えていることを特徴とするものである。
上記構成の第8の発明は、上述の第1乃至第7のそれぞれの発明による作用と同じ作用を有する。さらに、上記構成の第8の発明では、保護管における曲管部と直管部がそれぞれ別体により構成されていることで、保護管の作製時に曲管部と直管部を別々に作製して準備することができる。この場合、保護管の全長が例えばメートル単位の長尺体である場合に、特に曲管部の形成作業を容易にできる。
また、第8の発明において連結部は、曲管部と直管部を連結して一体化するという作用を有する。具体的には、連結部としては曲管部及び直管部の隣接部に設けられるフランジや、曲管部及び直管部の接続部に介設される別体からなる筒体等が考えられる。
さらに、第8の発明の連結部において曲管部と直管部を分離可能に構成することで、保護管のメンテナンスを容易にするという作用を有する。
【0017】
第9の発明である検査用具保持構造物は、上述の第1乃至第8のいずれかの発明であって、保護管は、配管用炭素鋼鋼管であり、その「呼び口径」が「40A」又は「50A」であることを特徴とするものである。
上記構成の第9の発明は、上述の第1乃至第8のそれぞれの発明による作用と同じ作用を有する。さらに、上記構成の第9の発明において、保護管を構成する曲管部及び直管部として、配管用炭素鋼鋼管を用い、かつその「呼び口径」を「40A」又は「50A」に特定することで、保護管の全長が20mにも及ぶ場合や、少なくとも一部を海水中に浸漬して用いる場合に十分な強度と耐久性を付与するという作用を有する。
【0018】
第10の発明である検査設備は、上述の第1乃至第8のいずれかの発明である検査用具保持構造物と、その保護管内に挿脱される検査用具と、を備え、この検査用具は、その先端、及び、保護管内に挿入される部分の外側面、を被覆するフッ素樹脂からなるコーティング材を備えていることを特徴とするものである。
上記構成の第10の発明において、検査用具保持構造物は第1乃至第8のそれぞれの発明による作用と同じ作用を有する。また、検査用具は、検査用具保持構造物を構成する保護管の第1の開口からその中空部内に挿入されて、同保護管の第2の開口又はその近傍において所望に検査対象の検査又はサンプル採集を可能にするという作用を有する。
さらに、第10の発明において検査用具の、先端、及び、保護管内に挿入される部分の外側面、を被覆するフッ素樹脂からなるコーティング材は、例えば海水等の何らかの溶質が溶解している液体中に、検査用具を長期間又は繰り返し浸漬して使用する際に、検査用具の表面を保護するという作用を有する。つまり、第10の発明において検査用具がコーティング材を備えていることで、検査用具構成している材質の劣化を遅延させるという作用を有する。さらに、上記コーティング材は、検査用具を保護管内に挿脱する際に、保護管の内面と接触する部分の摺動性を向上させるという作用を有する。
【0019】
第11の発明である検査設備は、上述の第10の発明であって、検査用具は、コーティング材の内側に金属製のシース又は線状補強材を備えていることを特徴とするものである。
上記構成の第11の発明は、上述の第10の発明による作用と同じ作用を有する。さらに、上記構成の第10の発明において、検査用具のコーティング材の内側(下層側)に設けられる金属製のシース又は線状補強材は、検査用具に可撓性及び形状保持性を付与するという作用を有する。
この場合、検査用具の挿脱対象である保護管がメートル単位の長尺体である場合に、検査用具の操作性を向上させるという作用を有する。
【0020】
第12の発明である検査設備は、上述の第10又は第11の発明であって、検査用具は、保護管内への挿入量の目安となる第2の目印を備えていることを特徴とするものである。
上記構成の第12の発明は、上述の第10又は第11の発明による作用と同じ作用を有する。さらに、上記構成の第12の発明における検査用具が第2の目印を備えていることで、保護管内に検査用具を挿入する際に、第2の目印を保護管における第1の開口に位置させることで、保護管内に検査用具を繰り返し挿脱する場合でもその挿入量を略一定にすることができる。
この場合、保護管内に検査用具を挿入した際の検査用具の先端位置を都度略一定にできる。この結果、検査用具を用いて検査を行う際に、検査位置にばらつきが生じるのを抑制することができる。
【0021】
第13の発明である検査設備は、上述の第10乃至第12のいずれかの発明であって、第2の台座は、平面視した際の第1の台座から離れた場所でかつ、水平方向から見た際の第1の台座よりも鉛直下方に位置し、第1の台座及び第2の台座は、水際の構造物に直接又は間接的に固設され、保護管は、平面視した際の第1の台座と第2の台座の間に曲管部を備え、水平方向から見た際の保護管の第1の開口は、保護管の全てを直管により構成した場合の第1の開口位置よりも鉛直下方に位置していることを特徴とするものである。
上記構成の第13の発明は、上述の第10乃至第12のそれぞれの発明による作用と同じ作用を有する。
さらに、上記構成の第13の発明において、第1の台座に対する第2の台座の配置を上記の通り特定するとともに、第1の台座及び第2の台座を水際の構造物に直接又は間接的に固設し、さらに平面視した際の保護管における第1の台座と第2の台座の間に曲管部を設けておくことで、第13の発明を水平方向から見た際の第1の開口の位置を、保護管の全てを直管により構成した場合の第1の開口位置よりも鉛直下方に位置させることができる。
つまり、第13の発明によれば、保護管の第2の開口が水中に配置される場合でも、検査用具の挿脱を行うための保護管の第1の開口を、作業者の至近距離に配置することができる。
【発明の効果】
【0022】
上述のような第1の発明によれば、保護管が直管部に加えて曲管部を備えていることで、保護管を直管部のみで構成する場合に比べて、検査用具の先端を所望の位置に案内するための経路(保護管の形態)の自由度を大幅に高めることができる。
よって、第1の発明によれば、直線的な形態のみでは到達することができない所望の場所に検査用具の先端を案内してその位置に保持しておくことができる。
この結果、第1の発明によれば、保護管が直管部のみで構成される場合に検査用具の先端を配置することができなかった場所に検査用具の先端を配置して所望の検査やサンプル採集を行うことができる。
また、第1の発明によれば、保護管を曲管部及び直管部の2種類の形態により構成することで、検査用具を保護管に挿脱させるための第1の開口を、作業者の手の届く範囲の至近距離に配置することができる。
この場合、保護管の第1の開口に作業者がアクセスするための足場等を建設する必要がないので、第1の発明の設置に要するコストや手間を大幅に削減することができる。
【0023】
第2の発明は、上述の第1の発明による効果と同じ効果に加えて、第1の台座及び第2の台座への保護管の着脱を繰り返す場合でも、水中、屋外又は屋内の空間における保護管に設置位置にずれが生じるのを好適に抑制することができる。
つまり、第2の発明において保護管は曲管部を有している。さらに、第2の発明では、第1の台座、第2の台座がそれぞれ載置台を備えている。このため、第1の台座及び第2の台座に保護管を固定する場合で、かつ保護管の配置が最初の配置から鉛直方向及び/又は水平方向にずれている場合は、保護管に接触していない載置台が出てくる可能性が高くなる。
つまり、第2の発明では、第1の台座及び第2の台座に保護管を固定する際に、全ての載置台に保護管を接触させることで、保護管の着脱を繰り返す際に保護管の配置に位置ずれが生じるのを防止できる。
このことは、第2の発明において保護管に対するメンテナンスの前後で、検査用具の配置に変動が生じ難いことを意味している。
よって、第2の発明によれば、保護管をメンテナンスしながら長期間使用する場合でも、検査用具を用いた検査精度が低下するのを、あるいは、検査用具によるサンプル採集位置にずれが生じることで検査精度が低下するのを、好適に防止できる。
【0024】
第3の発明は、上述の第1又は第2の発明による効果と同じ効果を有する。さらに、第3の発明において、第1の台座及び第2の台座のそれぞれを構成する一対の支持部に対する載置台の傾斜度を所望に変更できるということは、保護管の形状が変わってもこれを既存の載置台によって保護管を保持できることを意味している。つまり、第3の発明によれば、保護管を交換するだけで検査用具の先端の位置を容易に制御することができる。すなわち、保護管内に挿設される検査用具の先端の位置を容易に変更することができる。
他方、一対の支持部に対して各載置台が、その傾斜度が変更不能に固設されている場合は、例えば検査用具による検査位置又はサンプル採集位置が変更になった場合に、保護管のみならず第1の台座及び第2の台座についても交換する必要がある。
これに対して、第3の発明のように一対の支持部に対する載置台の傾斜度が変更可能である場合は、保護管のみの交換で検査用具による検査位置又はサンプル採集位置の変更に対応することができる。
したがって、第3の発明によれば、第1の台座及び第2の台座の汎用性を高めることができる。
【0025】
第4の発明は、上述の第1乃至第3のそれぞれの発明による効果と同じ効果を有する。さらに、第4の発明によれば、第1の台座及び第2の台座への保護管の固定作業時の保護管の位置合わせを簡便化することができる。
より具体的には、例えば保護管がメートル単位の長尺体である場合、保護管に不可避な撓み等が生じる場合がある。この場合、全ての載置台に保護管が接触しているにも関わらず、保護管の配置が取外し前の配置からずれているという事態も起こり得る。この場合は、保護管と載置台の接触の有無を確認するだけでは、保護管の位置ずれを発見することはできない。
よって、第4の発明のように保護管が第1の目印を備えている場合は、第1の台座及び第2の台座への固定作業を正確にかつ迅速に行うことができる。
【0026】
第5の発明は、上述の第1乃至第4のそれぞれの発明による効果と同じ効果を有する。さらに、第5の発明によれば、複数の保護管を束ねた状態で第1の台座又は第2の台座に固定することで、保護管同士を互いに補強することができる。
よって、第5の発明によれば、例えば流体内のように保護管に対して常時外力が作用する環境下に保護管を配設して用いる場合に、保護管の変形や破損を防ぐことができる。
したがって、第5の発明によれば、検査用具保持構造物の耐用性を向上させることができる。
【0027】
第6の発明は、上述の第1乃至第5のそれぞれの発明による効果と同じ効果を有する。さらに、第6の発明によれば、固定具の取扱いを容易にできる上、固定具の調達も容易にできる。
【0028】
第7の発明は、上述の第1乃至第6のそれぞれの発明による効果と同じ効果を有する。さらに、第7の発明によれば、直管部内の環境を直管部外の環境と略同じにすることができる。よって、第7の発明によれば、直管部内において検査用具を用いて行った検査又はサンプル採集を、直管部外で行った検査又はサンプル採集と見なすことができる。つまり、第7の発明によれば、直管部内の任意の位置を検査地点又はサンプル採集地点とすることができる。この結果、第7の発明によれば、1台の検査用具保持構造物を用いて複数地点の検査又はサンプル採集を行うことが可能になる。
また、この時、保護管(直管部)により検査用具を常時保護しておくことができるので、使用中に検査用具が破損するリスクを低減することができる。よって、第7の発明によれば、検査用具の耐用性を向上させることもできる。
また、第7の発明では曲管部が貫通孔を備えていないので、保護管内に検査用具を挿入する場合でかつ検査用具の先端が曲管部を通過する際に、曲管部の外に検査用具の先端が意図せず導出されてしまうのを防ぐことができる。したがって、第7の発明によれば、保護管内に検査用具を挿入する際の検査用具の操作性を向上させることができる。
【0029】
第8の発明は、上述の第1乃至第7のそれぞれの発明による効果と同じ効果を有する。さらに、第8の発明によれば、保護管がメートル単位の長さを有する長尺体である場合に、直管部と曲管部を別々に作製することができる。この結果、第8の発明に係る保護管の作製を容易にできる。
また、第8の発明では、例えば連結部において直管部と曲管部を分離可能に構成することで、保護管のメンテナンス作業として例えばその内部の清掃を行う際に、直管部と曲管部をそれぞれ分離してこれらに対して個別に作業を行うことができる。
また、第8の発明の場合は、保護管の一部が劣化、損傷又は破損した場合、直管部又は曲管部のいずれかを交換するだけで再び保護管として使用することができる。
したがって、第8の発明によれば、保護管のメンテナンス及び修理を容易にできる。
【0030】
第9の発明は、上述の第1乃至第8のそれぞれの発明による効果と同じ効果を有する。さらに、第9の発明によれば、保護管がメートル単位の長さを有する長尺体であり、かつこのような保護管を海水や河水等の液体中に浸漬して使用する場合に、十分な強度と耐久性を発揮させることができる。
【0031】
第10の発明は、上述の第1乃至第9のそれぞれの発明による効果と同じ効果を有する。さらに、第10の発明によれば、保護管内に検査用具を常設して、又は、必要に応じて検査用具を挿脱して用いる検査設備を提供することができる。
また、第10の発明では、検査用具がその表面にフッ素樹脂からなるコーティング材を備えていることで、検査用具を海水や河水等の液体中に長期間にわたり浸漬して使用する場合や、海水や河水等の液体中に繰り返し検査用具を浸漬する場合に、検査用具の劣化を遅らせるとともに、検査用具自体が損傷するのを防ぐことができる。
さらに、検査用具がその表面にフッ素樹脂からなるコーティング材を備えていることで、保護管内における検査用具の摺動性を向上させることができる。この場合、保護管内への検査用具の挿脱作業が容易になる。
したがって、第10の発明によれば、耐用性を有し、かつ操作性が優れた検査用具を備えた検査設備を提供することができる。
【0032】
第11の発明は、上述の第10の発明による効果と同じ効果を有する。さらに、第11の発明では、検査用具がコーティング材の内側に金属製のシース又は線状補強材を備えていることで、保護管に挿入される検査用具の全長がメートル単位の長さを有する場合でも、検査用具に適度な可撓性及び形状保持性を付与することができる。
この場合、保護管に検査用具を挿脱する際の検査用具の操作性を向上させることができる。
【0033】
第12の発明は、上述の第10又は第11の発明による効果と同じ効果を有する。さらに、第12の発明では、検査用具が第2の目印を備えていることで保護管内への検査用具の挿入量を所望に決めておくことができる。
この場合、保護管内に検査用具を挿入する際に、保護管内における検査用具の先端位置を目視により確認できなくとも、毎回同じ位置に検査用具の先端を配置して必要な検査又はサンプル採集を行うことができる。
また、第12の発明では、第2の目印を複数個所に備えていてもよい。この場合、第12の発明によれば、1つの検査用具を用いて保護管内の異なる複数地点において検査又はサンプル採集を行うことができる。
よって、第12の発明によれば検査設備の利便性を向上させることができる。
【0034】
第13の発明は、上述の第10乃至第12のそれぞれの発明による効果と同じ効果を有する。さらに、第13の発明では、足場等の追加の設備がなくとも作業者は、保護管の第1の開口に容易にアクセスすることができる。
よって、第13の発明によれば、保護管の第1の開口に検査用具を挿脱する際の作業者の安全性を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の実施例1に係る検査用具保持構造物の側面図である。
図2】本発明の実施例1に係る検査用具保持構造物の要部の斜視図である。
図3】本発明の実施例1に係る検査設備の側面図である。
図4】本発明の実施例1に係る検査用具保持構造物の第1の台座周辺の部分側面図である。
図5】本発明の実施例1に係る検査用具保持構造物の第2の台座周辺の部分側面図である。
図6】(a)本発明の実施例1に係る検査用具保持構造物の第2の台座の周囲の部分斜視図であり、(b)同検査用具保持構造物において第2の台座から保護管を取外した状態を示す斜視図である。
図7】本発明の実施例1に係る検査用具保持構造物の保護管の第2の開口側の部分斜視図である。
図8】本発明の実施例1に係る検査設備を構成する検査用具の部分拡大図である。
図9】本発明の実施例2に係る検査用具保持構造物の側面図である。
図10】本発明の実施例2の変形例に係る検査用具保持構造物の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の実施形態に係る検査用具保持構造物および検査設備について図1乃至図10を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0037】
はじめに、図1及び図2を参照しながら実施例1に係る検査用具保持構造物の基本構造について説明する。
図1は本発明の実施例1に係る検査用具保持構造物の側面図である。また、図2は同検査用具保持構造物の要部の斜視図である。
実施例1に係る検査用具保持構造物1Aは、可撓性を有しかつ細長状の検査用具の先端を所望の位置に案内して保持しておくために、屋外又は屋内に設置される構造物である。
より具体的には、このような実施例1に係る検査用具保持構造物1Aは、例えば図1,2に示すように、中空管体からなり、その中心軸の一部が弧を描くように湾曲し、かつ細長状の検査用具7(図1,2には図示されていない、後段における図3を参照。)を挿脱するための第1の開口2cと、この第1の開口2cの反対側に位置する第2の開口2dを備えてなる保護管2と、この保護管2の第1の開口2c側を支持する第1の台座3と、同保護管2の胴部を支持する第2の台座4を備えてなるものである。
より具体的には、上記構成の実施例1に係る保護管2は、中空管からなる曲管部2aと、同じく中空管からなる直管部2bにより構成されている。
また、実施例1に係る保護管2に挿脱される検査用具7(後段における図3を参照)としては、例えば測温抵抗体とそれに接続される導線からなる温度センサや、これ以外の各種検知センサ(検知情報を伝達するための導線を含む)、あるいは液体又は気体を採集するための中空管等がある。特に検査用具7が液体又は気体を採集するための中空管である場合は、その先端7aにおいて採集された気体や液体を分析することで、これらの気体や液体中に含まれている目的とする物質(例えば、酸素や、任意の化合物等)の濃度を調べることができる。
また、実施例1に係る検査用具保持構造物1Aでは、例えば図1,2に示すように、保護管2の第1の開口2c側を支持する第1の台座3を、岸壁50の縁部に設けられる構造物(例えば手摺り51等)に直接又は間接的に固設しておいてもよい。
さらに、実施例1に係る検査用具保持構造物1Aでは、保護管2の胴部を支持する第2の台座4を、岸壁50から沖側に向かって突設される構造物(図1,2では放水路52の放水口53の上面)に直接又は間接的に固設しておいてもよい。
【0038】
より詳細には、図1,2に示すように、実施例1に係る検査用具保持構造物1Aは、例えば第2の台座4を、平面視した際の第1の台座3から離れた場所でかつ、水平方向から見た際の第1の台座3よりも鉛直下方に配置するとともに、第1の台座3及び第2の台座4を水際の構造物(例えば岸壁50や放水路52の放水口53等)に固設しておいてもよい。
さらに、実施例1に係る検査用具保持構造物1Aは、保護管2における曲管部2aを、平面視した際の第1の台座3と第2の台座4の間に設けるとともに、水平方向から見た際の保護管2における第1の開口2c位置を、保護管2を全て直管により構成した場合の第1の開口2c位置よりも鉛直下方に位置させておいてもよい。
【0039】
上述のような実施例1に係る検査用具保持構造物1Aによれば、例えば岸壁50近傍の海底54の所望位置に設定された検査地点57において目的とする検査やサンプル採集を行う際に、この検査地点57に検査用具7(図3を参照)の先端7aを案内して保持しておくことができる。
さらに、上述のような実施例1に係る検査用具保持構造物1Aによれば、細長状の検査用具7を保護管2内に挿脱するための第1の開口2cを、作業者58の手が届く至近距離に配置しておくことができる。
つまり、実施例1に係る検査用具保持構造物1Aによれば、岸壁50上の作業場55において、足場等の追加の設備がなくとも作業者58は、保護管2の第1の開口2cに容易にアクセスして、検査用具7を保護管2内に挿脱することができる。
実施例1に係る検査用具保持構造物1Aにより上述のような独自の効果が発揮される仕組みについて以下に詳細に説明する。
【0040】
図1において、検査地点57と第2の台座4を結ぶ直線Pと、岸壁50上に設けられる手摺り51の位置示す鉛直方向線Qの交点Xは、作業者58の頭上のはるか上方に位置している。
このことは、仮に保護管を直管部のみで構成した場合、その第1の開口2cが作業者58の頭上のはるか上方(図1中の符号Xで示す位置)に配置されることを意味している。
この場合、細長状の検査用具7(図3を参照)を保護管の第1の開口2cに挿脱するにあたり作業者は、作業場55から図1中の符号Xで示す位置に移動する必要がある。また、そのために図示しない足場等の別の設備を作業場55上に設置する必要がある。
つまり、保護管の第1の開口2cが図1中の符号Xで示す位置に配置される場合は、直管部のみからなる保護管を備えた検査用具保持構造物を設置するための費用に加えて、作業者58が作業場55から図1中の符号Xで示す位置にアクセスするための設備を設置する費用が生じるため、検査設備全体の設置コストが嵩んでしまう。
【0041】
これに対して、実施例1に係る検査用具保持構造物1Aでは、保護管2が直管部2bに加えて第1の開口2c側に曲管部2aを備えていることで、検査用具7(図3を参照)を挿脱する保護管2の第1の開口2cを、岸壁50上の作業場55の近傍に配置することができ、かつ第1の開口2cの向きを直線P(図1を参照)によって形成される傾斜角よりも水平に近い傾斜角とすることができる。
この場合、作業者58は、岸壁50上の作業場55に居ながらにして保護管2の第1の開口2cに細長状の検査用具7を挿脱することができる(図3を参照)。
したがって、実施例1に係る検査用具保持構造物1Aによれば、作業者58による検査用具の挿脱作業を容易にできる上、検査用具保持構造物1Aを使用するために別途足場等の設備を設置する必要がないので、検査設備10A(図3を参照)全体の設置に要するコストを廉価にできる。
さらに、実施例1に係る検査用具保持構造物1Aによれば、作業者が安全な作業場55に居ながらにして保護管2への検査用具7(図3を参照)の挿脱作業を行うことができるので、作業時の安全性も向上させることができる。
【0042】
ここで、図3を参照しながら、実施例1に係る検査設備及びその使用方法について説明する。
図3は本発明の実施例1に係る検査設備の側面図である。なお、図1及び図2に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
実施例1に係る検査設備10Aは、先の図1,2に示す検査用具保持構造物1Aと、その保護管2内に挿脱される細長状の検査用具7を備えてなるものである。
また、上述のような実施例1に係る検査設備10Aは、実施例1に係る検査用具保持構造物1Aにおける保護管2の第1の開口2cから検査用具7をその中空部内に挿入して、検査用具7の先端7aを保護管2内の所望の位置に配設して、例えば保護管2の第2の開口2dに配設した状態で用いられる。
つまり、図3に示す実施例1に係る検査設備10Aでは、保護管2を備えていることで検査用具7の先端7aを、放水路52の放水口53から所望の距離だけ離れた海底54上の検査地点57に配置することができる。
この結果、実施例1に係る検査設備10Aを用いることで、作業者58は検査地点57に直接足を運ぶことなく検査地点57において所望の検査を行うことができる。あるいは、検査用具7がサンプル採集用の管体である場合は、検査用具7の先端7aから検査地点57に存在する所望のサンプルを採集することができる。
より詳細には、例えば検査用具7が測温抵抗体である場合は、検査地点57の温度を計測することができる。
【0043】
さらに、実施例1に係る検査設備10Aによれば、海底54の検査地点57に検査用具7の先端7aを常時配置しておくことができるので、検査地点57における検査又はサンプル採集を繰り返し又は継続して行うことができる。
加えて、実施例1に係る検査設備10Aでは、保護管2から検査用具7を容易に抜き取ることができるので、検査用具7に不具合が生じた際のメンテナンスや交換が容易である。
また、実施例1に係る検査設備10Aでは、保護管2内に検査用具7が収容されていない状態で、第1の台座3及び第2の台座4に対して保護管2を着脱することができる。このため、保護管2に対する清掃等のメンテナンスや、保護管2の劣化、損傷又は破損による交換作業も容易である。
【0044】
次に、図2及び図4,5を参照しながら第1の台座3、第2の台座4における保護管2の固定構造についてさらに詳しく説明する。
図4は本発明の実施例1に係る検査用具保持構造物の第1の台座周辺の部分側面図である。また、図5は同検査用具保持構造物の第1の台座周辺の部分側面図である。なお、図1乃至図3に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
図2及び図4に示すように、第1の台座3は、保護管2を載置する載置台3aと、この載置台3aに保護管2を固定するための固定具5を備えていてもよい(任意選択構成要素)。
さらに、図2及び図5に示すように、第2の台座4も、保護管2を載置する載置台4aと、この載置台4aに保護管2を固定するための固定具5を備えていてもよい(任意選択構成要素)。
なお、図2及び図4,5では、載置台3a,載置台4aの載置面(図4,5においてはいずれも上面)が平坦状である場合を例に挙げて説明しているが、載置台3a,載置台4aにおける保護管2の載置面は、必ずしも平坦状である必要はなく、保護管2の外周面にフィットする任意の形状でもよい。
また、上述の図1,3では、保護管2の胴部に第2の台座4を1つのみ設ける場合を例に挙げて説明しているが、保護管2の全長が特に長い場合や、保護管2に外力(水流や気流等)が常に作用する環境下において保護管2を使用する場合は、第2の台座4を2つ以上設けてもよい(任意選択構成要素)。
【0045】
上述のように、実施例1に係る検査用具保持構造物1Aが、保護管2の支持構造として少なくとも2の載置台3a,載置台4aを備えている場合、第1の台座3及び第2の台座4に対して保護管2の着脱を繰り返す際に、保護管2の取設位置にずれが生じるのを防止することができる。
実施例1に係る検査用具保持構造物1Aにおいて上述のような効果が発揮される仕組みについて以下に詳細に説明する。
【0046】
先の図1乃至図3に示すように、実施例1に係る検査用具保持構造物1Aにおいて、保護管2は曲管部2aを備えている。このため、第1の台座3及び第2の台座4から取り外される前の保護管2の取付け位置から、再設置時の保護管2の位置がずれると、保護管2に接触しない載置台(例えば図4,5にそれぞれ示される載置台3aや載置台4a)が出てくる可能性が高い。
このため、第1の台座3及び第2の台座4への保護管2の再設置時に、保護管2と接触していない載置台(例えば図4,5にそれぞれ示される載置台3aや載置台4a)の有無を確認することで、再設置する保護管2の取設位置が当初目的とする位置からずれているか否かを判断することができる。
つまり、実施例1に係る検査用具保持構造物1Aでは、保護管2を少なくとも2点(例えば、第1の台座3及び第2の台座4)で支持することで、保護管2の取付け位置を1カ所に特定することができる。
したがって、第1の台座3及び第2の台座4から取り外した保護管2を第1の台座3及び第2の台座4に再設置する際に、全ての載置台(例えば図4,5にそれぞれ示される載置台3aや載置台4a)に保護管2を確実に接触させることで、保護管2の取付け位置にずれが生じるのを好適に防止できる。
【0047】
さらに、第1の台座3及び第2の台座4への保護管2の着脱を繰り返す際に、保護管2の取付け位置にずれが生じていないということは、第1の台座3及び第2の台座4への保護管2の脱着の前後で、保護管2に挿設される検査用具7の先端7aが到達する位置も変わらないことを意味している。
したがって、実施例1に係る検査用具保持構造物1Aが複数の載置台(例えば図4,5にそれぞれ示される載置台3a及び載置台4a)を備え、かつこれらの載置台に固定具5を用いて保護管2を固定することで、第1の台座3及び第2の台座4への保護管2の着脱を繰り返す場合でも、保護管2に挿入される検査用具7の先端7a位置がずれるのを好適に防止できる。
よって、第1の台座3及び第2の台座4への保護管2の着脱を繰り返す度に、保護管2の取付け位置がずれて、検査用具7による検査時の位置精度又はサンプル採集時の位置精度が低下するのを防止できる。
したがって、実施例1に係る検査用具保持構造物1A及びそれを用いてなる検査設備10Aによれば、検査用具7を用いて継続的に又は繰り返し、検査又はサンプル採集を行う際に高い位置精度を実現することができる。
【0048】
さらに、実施例1に係る検査用具保持構造物1Aの保護管2はその外側面に、載置台(例えば載置台3a、載置台4a)上における取設位置の目安となる第1の目印を備えていてもよい(任意選択構成要素、図示せず)。
実施例1に係る検査用具保持構造物1Aの保護管2が、例えばメートル単位の長さを有する長尺体である場合、保護管2の自重により保護管2に不可避なたわみが生じる場合がある。
この場合、第1の台座3及び第2の台座4への保護管2の再設置時に、保護管2の取付け位置にずれが生じていたとしても、保護管2に生じる不可避なたわみのせいで、複数の載置台(例えば載置台3a、載置台4a)の全てに保護管2が接触した状態になるというケースも起こり得る。
この場合は、載置台(例えば載置台3aや載置台4a)への保護管2の接触の有無を確認しただけでは、保護管2の位置ずれを見つけ出すことはできない。
これに対して、保護管2がその外側面上に位置合わせ用の第1の目印を備えている場合は、この第1の目印を利用して載置台(例えば載置台3a及び載置台4a)の適切な位置に保護管2を設置することができる。
したがって、実施例1に係る検査用具保持構造物1Aの保護管2が第1の目印を備えている場合は、載置台3aや載置台4aの所望の位置に正確に保護管2を配置することができるので、第1の台座3及び第2の台座4への保護管2の取付け作業を迅速にかつ正確に行うことができる。
よって、実施例1に係る検査用具保持構造物1A及びそれを用いてなる検査設備10Aによれば、第1の台座3及び第2の台座4への保護管2の設置作業時の作業性を大幅に向上させることができる。
【0049】
また、実施例1に係る検査用具保持構造物1Aでは、第1の台座3に設けられる載置台3aや、第2の台座4に設けられる載置台4aに保護管2を着脱可能に固定するための固定具5として、例えば図4及び図5に示すようなUボルトを用いることができる(任意選択構成要素)。
この場合、保護管2の固定具5を専用品として特注する場合に比べて、固定具5の調達に要するコストを廉価にできる。
また、固定具5として汎用品であるUボルトを用いる場合は、その取扱いが容易である。このため、第1の台座3及び第2の台座4に保護管2を着脱するにあたり、作業者58が特殊な技能を有している必要がない。したがって、第1の台座3及び第2の台座4への保護管2の着脱作業を容易にできる。
【0050】
続いて、第2の台座4及び第1の台座3の細部構造について図4乃至図6を参照しながら説明する。
図6(a)は本発明の実施例1に係る検査用具保持構造物の第2の台座周辺の部分斜視図であり、図6(b)は同検査用具保持構造物において第2の台座から保護管を取外した状態を示す斜視図である。なお、ここでは第2の台座4及び第1の台座3の作用効果について主に図6に示す第2の台座4構造を参照しながら説明する。また、図1乃至図5に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
図6(a),(b)に示すように、実施例1に係る検査用具保持構造物1Aの第2の台座4は、載置台4aを挟持するように配される一対の支持部4b,4bと、この一対の支持部4b,4bに対して載置台4aを傾動可能に固定する枢軸4cを備えていてもよい(いずれも任意選択構成要素)。
このように第2の台座4が、載置台4aと、一対の支持部4b,4bと、この支持部4b,4bに載置台4aを固定する枢軸4cを備えていることで、一対の支持部4b,4bに対する載置台4aの傾斜度を所望に変更することができる。
なお、実施例1に係る検査用具保持構造物1Aの第2の台座4では、例えば図6(a)に示すように、一対の支持部4b,4bに対する枢軸4c(例えばボルト等)の締付け具合を適宜調整することで、一対の支持部4b,4bに対する載置台4aの傾斜度を変更可能な状態とその固定状態を切替え可能にしてもよい。
【0051】
同様に、先の図3に示す第1の台座3も、載置台3aを挟持するように配される一対の支持部3b,3bと、これら一対の支持部3b,3bに対して載置台3aを傾動可能に固定する枢軸3cを備えていてもよい(いずれも任意選択構成要素)。
この場合も第1の台座3が、載置台3aと、一対の支持部3b,3bと、この支持部3b,3bに載置台3aを固定する枢軸3cを備えていることで、一対の支持部3b,3bに対する載置台3aの傾斜度を所望に変更することができる。
また、実施例1に係る検査用具保持構造物1Aの第1の台座3でも、一対の支持部3b,3bに対する枢軸3c(例えばボルト等)の締付け具合を適宜調整することで、一対の支持部3b,3bに対する載置台3aの傾斜度を変更可能な状態とその固定状態を切替え可能にしてもよい(図4参照)。
【0052】
この場合、例えば図1,3に示す検査地点57の変更に伴って、保護管2の第2の開口2dの配設位置を変更する必要がある場合に、第1の台座3における載置台3a、及び、第2の台座4における載置台4a、の傾斜度を所望に変更できるということは、保護管2の形状が変わってもこれを既存の載置台3a,4aによって保持できることを意味している。
つまり、第1の台座3、第2の台座4のそれぞれにおいて、載置台3a、載置台4aの傾斜度が変更可能に構成されることで、新たに準備される保護管2の外形に沿うように載置台3a及び載置台4aの傾斜度を変えることができる。
したがって、検査地点57が変更された場合に、実施例1に係る検査用具保持構造物1Aを構成する保護管2、第1の台座3及び第2の台座4のうちの保護管2のみを交換するだけで対応できるので(ただし、第1の台座3及び第2の台座4の移設が必要な場合もある)、実施例1に係る検査用具保持構造物1Aの設置にかかるコストを廉価にできる。
さらに、第1の台座3、第2の台座4のそれぞれにおいて、載置台3a、載置台4aのそれぞれの傾斜度が変更可能に構成されることで、第1の台座3及び第2の台座4を汎用品として提供することが可能になる。
この場合、保護管2の外形に応じて第1の台座3及び第2の台座4を特注する必要がなくなるので、この点からも実施例1に係る検査用具保持構造物1Aの設置にかかるコストを廉価にできる。
【0053】
なお、実施例1に係る検査用具保持構造物1Aの第1の台座3は、例えば図4に示すように、岸壁50上に設けられる手摺り51に支持構造3dを付設し、この支持構造3dに一対の支持部3b(例えばH鋼等)をボルト等の固定具を用いて、あるいは溶接等の固定手段により固設した後、この一対の支持部3b,3bに載置台3aを枢軸3c(例えばボルト等)により傾動可能に取設してもよい。
さらに、実施例1に係る検査用具保持構造物1Aの第1の台座3の支持構造3dは、図4に示すように、例えば一対のL字アングル11a等からなる構造材の間に、例えばH鋼11b等の構造材を所望間隔毎に介設し、これらを例えばボルト11c等の固定具により串刺し状にして一体化したもので手摺り51の支柱を挟持するなどして固定してもよい。
【0054】
さらに、実施例1に係る検査用具保持構造物1Aの第2の台座4は、例えば図5及び図6に示すように、載置台4aとして例えばH鋼を用い、このH鋼からなる載置台4aを挟持するように一対の平板体からなる支持部4b,4bを立設してもよい。
さらに、第2の台座4は、例えば一対の平板体からなる支持部4b,4bを、同じく平板体からなる基板12aの上面に起立させた状態で固設し、必要に応じて支持部4b,4bに補強材12bを付加したものを、例えばボルト12c等の固定具を用いて例えば鉄筋コンクリート製の放水路52の上面に固定してもよい。
【0055】
ここで、図7を参照しながら保護管2の細部構造について説明する。
図7は本発明の実施例1に係る検査用具保持構造物の保護管の第2の開口側の部分斜視図である。なお、図1乃至図6に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
実施例1に係る検査用具保持構造物1Aの保護管は、図7に示すように、直管部2bに複数の貫通孔6を穿設するとともに、曲管部2aは貫通孔を有しない形態としてもよい(いずれも任意選択構成要素)。
図7に示すように、保護管2の直管部2bが複数の貫通孔6を備える場合は、直管部2b外の気体又は液体が直管部2b内に出入りして、直管部2bの周囲の環境と直管部2b内の環境が略同じになる。
したがって、実施例1に係る検査用具保持構造物1Aにおいて、保護管2の直管部2bが複数の貫通孔6を備える場合は、直管部2b内の任意の位置において検査用具7により検査又はサンプル採集を行った場合に、その検査又はサンプル採集を直管部2bの外側で行った検査又はサンプル採集と見なすことができる。
この場合、実施例1に係る検査用具保持構造物1Aにおいて保護管2の直管部2b内を、検査用具7を移動させながら複数の検査地点において検査又はサンプル採集を行うことができて便利である。
さらに、この場合、直管部2b内に検査用具7が常時収容されるため、検査用具7は保護管2により常時保護されることになる。したがって、上述のような実施例1に係る検査用具保持構造物1Aによれば、検査用具7の耐用性を向上させることができる。
【0056】
このとき、実施例1にかかる検査用具保持構造物1Aの保護管2の曲管部2aが貫通孔6を備えていないことで、検査用具7の先端7aが曲管部2aを通過する際に、貫通孔6から検査用具7の先端7aが曲管部2aの外側に導出されるのを防止することができる。
よって、保護管2の曲管部2aが貫通孔6を備えていないことで、保護管2内に検査用具7を挿入する際の作業性を向上させることができる。
なお、保護管2の曲管部2aに形成される貫通孔(図示せず)の直径が検査用具7の先端7aの最大径よりも十分に小さい場合で、かつ曲管部2a内を検査用具7の先端7aが通過する際に貫通孔から検査用具7の先端7aが導出される心配がない場合は、保護管2の曲管部2aに複数の貫通孔を形成してもよい。
この場合は、保護管2の曲管部2a内の環境を、曲管部2aの外側の環境と略同じにできるので、曲管部2a内の任意の地点を検査用具7による検査地点又はサンプル採集地点として利用することができる。
この場合、実施例1に係る検査用具保持構造物1Aの利便性を向上させることができる。
【0057】
また、先の1乃至図3では、保護管2における曲管部2aと直管部2bが一体物として構成されている場合を例に挙げて説明しているが、保護管2における曲管部2aと直管部2bをそれぞれ別体として構成しておき、これらを一体化した状態で用いてもよい(任意選択構成要素)。
つまり、実施例1に係る検査用具保持構造物1Aにおける保護管2の曲管部2aと直管部2bをそれぞれ別体により構成するとともに、曲管部2aと直管部2bの間に図示しない連結部を介設してもよい(いずれも任意選択構成要素)。
なお、曲管部2aと直管部2bの間に介設される連結部の例としては、例えばフランジを用いた連結構造や、曲管部2aと直管部2bを連結するための別体からなる筒体などがある。
前者の場合、すなわち、曲管部2aと直管部2bとをフランジを介して連結する場合は、曲管部2a側に設けられる図示しないフランジと、直管部2b側に設けられる図示しないフランジの重なり部分を、例えばボルト等の固定具を用いて着脱可能に一体化してもよい。
また、後者の場合、すなわち曲管部2aと直管部2bの間に別体の接続用筒体を介設する場合は、この接続用筒体のそれぞれの端部側に曲管部2aと直管部2bをそれぞれ螺着してこれらを一体化してもよい。
【0058】
上述のように保護管2の曲管部2aと直管部2bが別体からなる場合は、これらのうちのいずれか一方が劣化、損傷又は破損等の不具合が生じた場合に、その不具合が生じた方だけを交換することで保護管2をそのまま使用し続けることができる。
また、保護管2の曲管部2aと直管部2bが別体からなる場合は、そのメンテナンス作業として例えば清掃を行う際に、曲管部2aと直管部2bを分離してそれぞれを別々に清掃することができるので便利である。
【0059】
なお、実施例1に係る検査用具保持構造物1Aでは、保護管2、第1の台座3及び第2の台座4等の各パーツのそれぞれの材質や寸法を特定する必要は特にないが、検査用具保持構造物1Aの設置場所や検査用具7による検査又はサンプル採集の目的に応じて個々のパーツの材質や寸法を適宜設定すればよい。
例えば、実施例1に係る検査設備10A(先の図3を参照)において検査用具7が例えば、測温抵抗体であり、かつ保護管2の全長が5~20mの範囲内であり、かつ保護管2の一部を海中に浸漬して使用する場合は、保護管2を配管用炭素鋼鋼管により構成するとともに、その「呼び口径」が「40A」又は「50A」であるものを用いるとよい。
この場合、強度と耐久性の両者を備えた保護管2とすることができる。また、このような保護管2を支持する第1の台座3及び第2の台座4を、例えば鋼製の平板体や、H鋼、あるいはL字アングル等により構成することで、第1の台座3及び第2の台座4にも十分な強度と耐久性を付加することができる。
【0060】
また、本実施形態では、第1の台座3及び第2の台座4に1本の保護管2を固定具5により固定して用いる場合を例に挙げて説明しているが、第1の台座3及び第2の台座4に固定される保護管2の本数を2本以上としてもよい(任意選択構成要素)。
この場合、2本目以上の保護管2を1本目の保護管2の予備として用いることができる。あるいは、1本目の保護管2と略同じ検査地点において別の検査項目について検査又はサンプル採集を行うための第2乃至第n(ただし、nは2以上の自然数)の検査用具7を配置するための保護管2として使用することができる。
よって、実施例1に係る検査用具保持構造物1Aの第1の台座3及び第2の台座4に複数本の保護管2を固定して用いる場合は、実施例1に係る検査設備10Aの利便性を一層向上させることができる。
【0061】
さらに、実施例1に係る検査用具保持構造物1Aにおいて第1の台座3及び第2の台座4に2本以上の保護管2を固定して用いる場合、複数本の保護管2同士を固定具5で束ねた状態にして第1の台座3及び第2の台座4に固定してもよい(任意選択構成要素)。
この場合、複数本の保護管2同士が互いに支え合って補強することができる。
さらに、この場合、実施例1に係る検査用具保持構造物1Aにおける保護管2を常時外力(気流や水流等)が作用する環境下に設置して用いる場合に、複数本の保護管2からなる集合体の全体としての強度が高められる。
この結果、上述のような実施例1に係る検査用具保持構造物1A及びそれを用いてなる検査設備10Aの耐久性を向上させることができる。
なお、特に図示しないが複数本の保護管2を束ねて一体化する場合、保護管2同士を直接させてもよいし、保護管2同士の間に適宜スペーサを介設してもよい(任意選択構成要素)。
特に後者の場合は、保護管2同士の間に適宜スペーサを介設することで、束ねられた保護管2の安定性を向上させることができる。
【0062】
ここで、図8を参照しながら実施例1に係る検査設備10Aに用いられる検査用具7の細部構造について説明する。
図8は本発明の実施例1に係る検査設備を構成する検査用具の部分拡大図である。なお、図1乃至図7に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
図8に示すように、実施例1に係る検査設備10Aに用いられる検査用具7は、保護管2内に挿入される部分の、先端7aを含む表面の全域にフッ素樹脂からなるコーティング材8dを備えていてもよい(任意選択構成要素)。
実施例1に係る検査設備10Aに用いられる検査用具7がその表面にフッ素樹脂からなる、より具体的にはポリテトラフルオロエチレン[PTFE;テフロン(登録商標)]からなるコーティング材8dを備えている場合は、検査用具7を海水や河水等の液体中に長期間にわたり浸漬して使用する場合や、海水や河水等の液体中に繰り返し浸漬して使用する場合に、検査用具7を保護してその劣化を遅延させことができる。
さらに、検査用具7がその表面にフッ素樹脂からなるコーティング材8dを備えていることで、保護管2内に検査用具7を挿脱する際の検査用具7の表面における摺動性を向上させることができる。
この結果、上述のような実施例1に係る検査設備10Aによれば、保護管2内への検査用具7の挿脱作業の作業性を向上させることができる。
【0063】
実施例1に係る検査設備10Aに用いられる検査用具7はさらに、フッ素樹脂からなるコーティング材8dの内側(下層側)に金属製のシース8cを備えていてもよい(任意選択構成要素)。
この場合、検査用具7に適度な形状保持性と可撓性を同時に付与することができる。つまり、検査用具7の可撓性が十分で形状保持性が不十分な場合や、検査用具7の形状保持性が十分で可撓性が不十分な場合は、検査用具7を保護管2の曲管部2aを通過させることが困難になる。
つまり、前者の場合は、保護管2の中心軸方向に検査用具7を押し込む力が検査用具7の先端7a側にうまく伝達されず、検査用具7が意図しない箇所で曲がってしまい、保護管2の中心軸方向への挿入が困難になることが予想される。
他方、後者の場合は、検査用具7自体が適度に曲がらないせいで、保護管2の曲管部2aを、検査用具7を通過させることができないことが予想される。
よって、検査用具7がフッ素樹脂からなるコーティング材8dの内側(下層側)に金属製のシース8cを備えていることで、保護管2内への検査用具7の挿入作業を効率的にかつスムーズにできる。
また、実施例1に係る検査設備10Aに用いられる検査用具7では、金属製のシース8cに代えて金属製で線状補強材を備えていてもよい(任意選択構成要素)。
この場合も、検査用具7が金属製のシース8cを備えている場合と同様に、検査用具7に適度な可撓性と形状保持性を同時に付与することができるので、保護管2への検査用具7の挿入作業を容易にできる。
【0064】
なお、シース8cの材質としては例えば銅やアルミニウム等の柔らかい金属特に適しているが、これらの金属に限定される必要はなく、検査用具7の使用環境等を考慮して適切な金属を適宜選択すればよい。また、金属製のシース8cに代えて、金属製の線状補強材を用いる場合の材質についても同様である。特に検査用具7に用いる金属製の線状補強材として、例えば撚線からなるワイヤを用いる場合は、鉄を含有する比較的硬い金属も線状補強材として支障なく使用できる。
また、金属製のシース8cや金属製の線状補強材に代えて、硬質プラスチックによりシース8cや線状補強材を構成してもよい。この場合は、シース8cや線状補強材を金属により構成する場合に比べて、検査用具7を軽量にできる上、その作製にかかるコストも廉価になる。
【0065】
また、実施例1に係る検査設備10Aにおいて検査用具7が特に検温具8である場合、この検温具8は下記のような構成を備えていてもよい。
すなわち、検査用具7である検温具8を、例えば一対の測温抵抗体8a,8aと、この一対の測温抵抗体8a,8aに接続されかつ絶縁カバー8bを備えた導線部分を束ねた状態で保持するシース8c(ただし、シース8cの材質は金属以外の硬質プラスチック製でもよい)と、先端7aの反対側に設けられるコネクタ8eにより構成してもよい(任意選択構成要素)。
この場合、検温具8の先端7aが配設される位置の温度を検知して、その情報をコネクタ8eが接続される機器13から得ることができる。
また、上記構成の検温具8は、その先端7a及び導線部分であるシース8cの表面にフッ素樹脂からなる、より具体的にはポリテトラフルオロエチレン[PTFE;テフロン(登録商標)]からなるコーティング材8dを備えていてもよい。
また、検温具8がその表面にフッ素樹脂からなるコーティング材8dを備えている場合の作用効果については、上述の検査用具7がその表面にフッ素樹脂からなるコーティング材8dを備えている場合の作用効果と同じである。
【0066】
さらに、実施例1に係る検査設備10Aの検査用具7は、保護管2内に検査用具7を挿入した際にその挿入量(挿入長さ)の目安となる第2の目印(図示せず)を備えていてもよい(任意選択構成要素)。
この場合、保護管2内における検査用具7の先端7a位置を目視により確認できなくとも、保護管2内の所望の位置に検査用具7の先端7aを配置して必要な検査又はサンプル採集を行うことができる。
また、検査用具7が図示しない第2の目印を複数個所に備える場合は、1つの検査用具7を用いて保護管2内の異なる複数の地点において検査又はサンプル採集を行うことができる。
よって、実施例1に係る検査設備10Aの検査用具7が第2の目印を備えていることで、検査設備10Aの利便性を向上させることができる。
【実施例2】
【0067】
次に、図9を参照しながら本発明の実施例2に係る検査用具保持構造物について説明する。
図9は本発明の実施例2に係る検査用具保持構造物の側面図である。図1乃至図8に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
先の図1乃至図3に示す実施例1に係る検査用具保持構造物1Aでは、岸壁50から突出する既存の構造物(例えば放水路52)の上面に第2の台座4を直接固設する場合を例に挙げて説明しているが、このような第2の台座4の設置に適した既存の構造物が存在しない場合も想定される。
その場合は、例えば図9に示す実施例2に係る検査用具保持構造物1Bのように、支持構造9を岸壁50に突設し、この支持構造9に第2の台座4を設けて、第1の台座3及び第2の台座4に保護管2を固定して用いてもよい。
上述のような実施例2に係る検査用具保持構造物1Bによれば、第2の台座4を支持するための支持構造9を備えていることで、岸壁50から沖側に離れた所望の位置を検査地点57にすることができる。
よって、実施例2に係る検査用具保持構造物1Bによれば、保護管2の外形や長さ、さらには支持構造3dや支持構造9の形態を様々に変化させることで、保護管2の第1の開口2cを作業者58(図1,3を参照)の手の届く範囲に配置しつつ、この保護管2により案内される検査用具7の先端7aを所望の位置に配置することができる検査用具保持構造物及びそれを用いてなる検査設備(図示せず)を提供することができる。
【0068】
最後に、図10を参照しながら実施例2の変形例に係る検査用具保持構造物について説明する。
図10は本発明の実施例2の変形例に係る検査用具保持構造物の側面図である。なお、図1乃至図9に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
図10に示すように、実施例2の変形例に係る検査用具保持構造物1Cの保護管2´は、保護管2´の胴部に曲管部2aを備えている。より具体的には、保護管2´は、曲管部2aの端部のそれぞれに直管部2b、直管部2bを備えてなるものである。
上記構成の実施例2の変形例に係る検査用具保持構造物1Cによれば、保護管2´の第1の開口2cを作業場55にいる作業者(図示せず)の手が届く範囲に配しつつ、第2の開口2dを海底54からやや離れた沖側の水中に配置しておくことができる。
したがって、実施例2の変形例に係る検査用具保持構造物1Cのように保護管2´の形態を様々に変化させることで、所望の検査地点57´において検査用具7により所望の検査を行う又は所望のサンプル採集を行うことができる。
【0069】
なお、本実施形態では主に岸壁50に実施例1,2に係る検査用具保持構造物1A乃至検査用具保持構造1C及びそれを用いてなる検査設備10A等を設置する場合を例に挙げて説明しているが、これらの設置場所を岸壁50に限定する必要はなく、屋内又は屋外の所望の場所に設置して用いることができる。
さらに、本実施形態では、保護管2又は保護管2´が、曲管部2aを1ヶ所のみ備える場合を例に挙げて説明しているが、保護管2又は保護管2´は2カ所以上に曲管部2aを備えていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上説明したように本発明は、水中、あるいは屋内又は屋外の所望の位置に細長形状を有する検査用具の先端を案内して保持しておくことができる検査用具保持構造物及びそれを用いてなる検査設備であり、電力関連設備の保守に関する技術分野や、屋内外の環境を監視するための技術分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0071】
1A~1C…検査用具保持構造物 2,2´…保護管 2a…曲管部 2b,2b,2b…直管部 2c…第1の開口 2d…第2の開口 3…第1の台座 3a…載置台 3b…支持部 3c…枢軸 3d…支持構造 4…第2の台座 4a…載置台 4b…支持部 4c…枢軸 5…固定具 5a…Uボルト 5b…ナット 6…貫通孔 7…検査用具 7a…先端 8…検温具 8a…測温抵抗体 8b…絶縁カバー 8c…シース 8d…コーティング材 8e…コネクタ 9…支持構造 10A…検査設備 11a…L字アングル 11b…H鋼 11c…ボルト 12a…基板 12b…補強材 12c…ボルト 13…機器 50…岸壁 51…手摺り 52…放水路 53…放水口 54…海底 55…作業場 56…海面 57,57´…検査地点 58…作業者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10