(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】化粧料の紫外線防御性能の評価方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/59 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
G01N21/59 D
(21)【出願番号】P 2024096211
(22)【出願日】2024-06-13
【審査請求日】2024-06-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513103276
【氏名又は名称】黒田総合技研株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】598121341
【氏名又は名称】慶應義塾
(74)【代理人】
【識別番号】110004152
【氏名又は名称】弁理士法人お茶の水内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒田 章裕
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 浩一
【審査官】比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-057509(JP,A)
【文献】特表2016-532482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B、G01C、G01D、G01F、G01G、G01H、G01J、G01K、G01L、G01M、G01N、G01P、G01Q、G01R、G01S、G01T、G01V、G01W、A61B、A61C、A61D、A61F、A61G、A61H、A61J、A61K、A61L、A61M、A61N、A61P、A61Q
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDream3)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧料の紫外線防御性能の評価のための測定用試料の調製工程を有し、その調製工程が、紫外線透過度測定用透明基板表面に対し、表面が油の付着防止性を有する材料層で形成されたアプリケーターにより均一な化粧料塗布層を形成する方法を有する工程である、化粧料の紫外線防御性能の評価方法。
【請求項2】
表面が油の付着防止性を有する材料層が、油の付着防止性を有するポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、親水処理ポリエステルフィルム、親水化処理ポリエチレンテレフタレートフィルム、フッ素樹脂フィルムから選ばれた1種以上からなる層である請求項1に記載の化粧料の紫外線防御性能の評価方法。
【請求項3】
下記A~Dの工程を有する請求項1又は2に記載の化粧料の紫外線防御性能の評価方法。
A.接触角が異なる複数種の紫外線透過比率評価用基板の表面のそれぞれに対し、1種の化粧料を使用して、表面が付着防止性を有する材料層で形成されたアプリケーターによって、均一な化粧料塗布層を形成して行う、化粧料の紫外線防御性能の評価のための複数の測定用試料の調製工程
B.組立セルを用いて化粧料の基準厚さの吸光度を求め、
その基準厚さの吸光度を基に上記複数の測定用試料の吸光度を求めて、さらに、上記複数の測定用試料の下記式によりSPF値及びUVA-PF値を求める工程
CF×ΣEE(λ)×I(λ)×Abs(λ)の式を用いて290~320nmまでを1nmごとに積算して得られるSPF値
CF×ΣEE(λ)×I(λ)×Abs(λ)の式を用いて320~400nmまでを1nmごとに積算して得られるUVA-PF値
但し、CFはcorrection factor(=10)、EEはerythemal effect spectrum、Iはsolar intensity spectrum、Absはabsorbance of sunscreen productとする。
C.
1種の化粧料により作成した、複数の測定用試料について得られたSPF値を基に、そのSPF値が最大となる測定用試料を選択し、その測定用試料のSPF値とUVA-PF値を、そ
の化粧料のin vitro SPF値とin vitro UVA-PF値とする工程
D.In vivo SPF値とin vitro SPF値の関係式からその1種の化粧料のin vivo SPF相当値を求め、更に、in vivo UVA-PF値とin vitro UVA-PF値の関係式からその1種の化粧料のin vivo UVA-PF相当値を求める工程
【請求項4】
接触角が異なる複数種の紫外線透過度測定用透明基板は、その表面が、ポリイソシアネートで塗工された層を有する紫外線透過度測定用透明基板、イヌリンで塗工された層を有する紫外線透過度測定用透明基板、ヒドロキシアルキルセルロースで塗工された層を有する紫外線透過度測定用透明基板、の3種である請求項3に記載の化粧料の紫外線防御性能の評価方法。
【請求項5】
in vivo SPF値とin vitro SPF値の関係式、及び、in vivo UVA-PF値とin vitro UVA-PF値の関係式が、in vivo法で得られた化粧料のSPF値、UVA-PF値又はPA分類に対応するin vivo UVA-PF値と、前記A~Dの工程より求められたSPF値、UVA-PF値の関係を統計的に処理することで求められたものであることを特徴とする請求項3に記載の紫外線防御性能の評価方法。
【請求項6】
化粧料が、粉体化粧料又はスティック状化粧料であるか、あるいは固形の化粧料に不揮発性油剤を混合して得られるペースト状物である請求項1又は2に記載の紫外線防御性能の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料の紫外線防御性能の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以下、本発明の技術的背景について説明する。
現在、日本では化粧料における紫外線防御効果の指標として、波長290~320nmのB波紫外線の防御能力を示すSPF(Sun Protection Factorの略)と、波長320~400nmのA波紫外線の防御能力を示すUVA-PA(Protection grade of UVA)が用いられている。これらの測定結果を化粧料に表示する場合、日本化粧料工業連合会の定めるそれぞれの測定方法基準(非特許文献1、非特許文献2)に基づいて測定した値、又はそのグレードを表示することが求められる。
海外においても基本的にはそれぞれの地域の測定方法及び表示方法(非特許文献3)に従って表示することが求められるが、基本的な測定方法はほぼ統一されている。測定方法基準では、ヒトの背中を用い、背中に高出力の紫外線を照射し、その際に肌に生じる炎症反応と黒化反応の目視観察の結果から、紫外線防御効果を測定する。しかしながら、ヒトを用いると手間と費用がかかり、測定結果が出るまでの期間が長い。
加えてヒトを用いることの倫理的、医学的問題などがあるため、日本、欧州においては、ヒトを用いないで、機械にて紫外線防御効果を測定する測定方法の検討が進められている(非特許文献4)。しかしながら、現在進められている測定方法には、多くの問題点が存在することが報告されている(非特許文献5)。本発明者の検討でも、同じ試料を用いて、同じ規格の中で試験しても、最大で20倍ほどSPF値が変動することを見いだしている。
【0003】
特許文献1の方法を用いることでこの問題はかなり解消することができる。しかしながら、この方法を用いて検討を進めたところ、新たな問題が発生した。これは水に対する接触角が異なる基板を用いた場合、試料の測定値が大きく変化してしまう(非特許文献6)現象である。
そこで、可能な限り手間がかからず、高精度な測定が行える測定方法の開発が必要とされ、本発明者らの発明による特許文献2、3を中心とした特許文献2~7の発明により高精度の測定が可能となった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/047707号
【文献】特許第6741261号公報
【文献】特許第6842778号公報
【文献】特許第5825654号公報
【文献】特開2021-65873号公報
【文献】特開2023-57509号公報
【文献】特開2023-95723号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】日本化粧料工業連合会 紫外線防御用化粧料と紫外線防止効果 -SPFとPA表示- 2003年改訂版
【文献】日本化粧料工業連合会 日本化粧料工業連合会SPF測定方法基準〈2007年改訂版〉
【文献】ISO/TR26369 Cosmetics -- Sun protection test methods -- Reviewand evaluation of methods to assess the photoprotection of sun protectionproducts
【文献】Colipa Guidelines, Method for in vitro Determination of UVAprotection, 2009
【文献】Rohr, M.; Klette, E.; Ruppert, S.; Bimzcok, R.; Klebon, B.;Heinrich, U.; Tronnier, H.; Johncock, W.; Peters, S.; Pfluecker, F.; Rudolph,T.; Floesser-Mueller, H.; Jenni, K.; Kockott, D.; Lademann, J.; Herzog, B.;Bielfeldt, S.; Mendrok-Edinger, C.; Hanay, C.; Zastrow, L. “in vitro SunProtection Factor: Still a Challenge with No Final Answer” Skin Pharmacol.Phys. 2010, 23(4), 201-212.
【文献】K. Asakura, A. Kuroda, IFSCC Magazine 21(2), 53-57 (2018).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
化粧料はその組成毎に親水性、親油性及びそれらの中間の性質等のように物性が異なる。水に対する接触角が固定された1種の基板のみに対して化粧料を塗布したときに、ある化粧料は均一に塗布できたとしても、他の化粧料は均一に塗布できず、化粧料が相分離していたり、基板表面の一部から弾かれていたりして、基板表面の一部が露出する等した不均一な塗膜となることがある。
このため、測定精度を向上させたとしても、測定には、多くの接触角を有する基板を事前に用意しておき、それぞれの測定値をグラフに描いてようやく特性が把握できるに留まり、1つの製品の測定だけでも、複数種の接触角を備えた基板に対する測定を要する等、多くの労力を必要とする可能性がある。
この手間はIn vivo法と比較しても多大であり、実質的に代替法にならないことを意味した。
また、従来技術の方法により、世界中の200点以上の市販化粧料を計測すると、一部に我々の予想と異なる挙動をする製品群が認められたため、この原因について研究した。その結果、アプリケーターが金属製であるために、親油性である金属に強い親和性を有する化粧料においては、アプリケーターのギャップ部及びその前面部において化粧料の相分離が発生する。そして、ほとんどの化粧料がアプリケーター側に付着して、基板上の被塗布面にはほとんど化粧料が残らないといった現象が発生した。更に、こうした現象が発生しない製剤においても、赤外線イメージング顕微鏡を用いて、回転式膜厚計で膜厚が一定であることを確認した塗膜中の紫外線吸収剤の量の変化を調べてみたところ、ステンレス製四方アプリケーターを用いた場合では、定期的に紫外線吸収剤の濃度が濃くなる領域、つまり、塗膜の場所により紫外線吸収剤の濃度にムラが発生する場合があることが判った。これは膜厚のみ計測しているだけでは正確な測定ができないことを意味していた。
また、超親水性基板の作成するために、コロナ放電処理を行うと、コロナ放電処理装置が強い電磁ノイズを発生するため、オフィスビルなどでは使用できない場合がある。更に、化粧料を基板表面に塗布すると、凹凸がある大きなストライプ模様を有する塗膜になることがある。この場合に塗布膜厚の測定法として回転式ウエット膜厚計を用いると、測定値と実際の膜厚とが大きく乖離する。また、非特許文献4に示されたISO法に定める計算式により得た値は、ヒトと対象として得たデータとの乖離が発生する。
本発明の課題は、上記の問題を解決した化粧料の紫外線透過比率の評価方法を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
下記の構成を採用することにより、表面が金属(ステンレス)製のアプリケーターの代わりに、円筒型アプリケーターの表面に油の付着防止性を有する材料層(樹脂フィルムを巻回する等して得た)を形成したアプリケーターを使用して、特に化粧料の油性成分がアプリケーターに過剰に付着することを抑制した。
また、コロナ放電処理石英板そのものに代えて、予めコロナ放電した石英板等の表面をイヌリン等の各種の材料で被覆して、超親水性を備えた紫外線透過度測定用透明基板等の接触角が異なる複数種の紫外線透過比率評価用基板を採用した。これらの基板の表面のそれぞれに対し、1種の化粧料を使用して、表面が油の付着防止性を有する材料で形成されたアプリケーターによって、均一な化粧料塗布層を形成する。その結果、実験的にみて、化粧料がどのような性質(親水性、親油性、及びそれらの中間的な性質、及び液体、固体、クリーム状及びスティック状等の性状等)であっても、上記複数種の紫外線透過比率評価用基板のうちの少なくとも1つに対して、化粧料の薄層を均一に形成できる。このような手段を採用して、試験現場で基材の表面処理のためにコロナ放電装置を用いる必要性を無くした。この結果、回転式ウエット膜厚計に代えて、塗工された化粧料の層の、分光光度計による特定波長の吸光度の値と、100μm厚の組立セルの同特定波長での吸光度の値を比較して、計算により化粧料層の厚さを求めることで、より精度の高い測定を行うことが可能となる。これにより、より簡易で高精度な化粧料の紫外線透過比率評価方法を開発した。更に、吸光度からSPF値やUVA-PF値を求める計算式は、ISO法に定める計算式ではないことで、よりヒト試験データと相関性が高い測定結果を得られた。なお、以下紫外線透過比率評価用基板を、場合により単に「基板」というときがある。
【0008】
1.化粧料の紫外線防御性能の評価のための測定用試料の調製工程を有し、その調製工程が、紫外線透過度測定用透明基板表面に対し、表面が油の付着防止性を有する材料層で形成されたアプリケーターにより均一な化粧料塗布層を形成する方法を有する工程である、化粧料の紫外線防御性能の評価方法。
2.表面が油の付着防止性を有する材料層が、油の付着防止性を有するポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、親水処理ポリエステルフィルム、親水化処理ポリエチレンテレフタレートフィルム、フッ素樹脂フィルムから選ばれた1種以上からなる層である1に記載の化粧料の紫外線防御性能の評価方法。
3.下記A~Dの工程を有する1又は2に記載の化粧料の紫外線防御性能の評価方法。
A.接触角が異なる複数種の紫外線透過比率評価用基板の表面のそれぞれに対し、1種の化粧料を使用して、表面が付着防止性を有する材料層で形成されたアプリケーターによって、均一な化粧料塗布層を形成して行う、化粧料の紫外線防御性能の評価のための複数の測定用試料の調製工程
B.組立セルを用いて化粧料の基準厚さの吸光度を求め、下記式によりSPF値及びUVA-PF値を求める工程
CF×ΣEE(λ)×I(λ)×Abs(λ)の式を用いて290~320nmまでを1nmごとに積算して得られるSPF値
CF×ΣEE(λ)×I(λ)×Abs(λ)の式を用いて320~400nmまでを1nmごとに積算して得られるUVA-PF値
但し、CFはcorrection factor(=10)、EEはerythemal effect spectrum、Iはsolar intensity spectrum、Absはabsorbance of sunscreen productとする。
C.複数の測定用試料について得られたSPF値を基に、そのSPF値が最大となる測定用試料を選択し、その測定用試料のSPF値とUVA-PF値を、その1種の化粧料のin vitro SPF値とin vitro UVA-PF値とする工程
D.invivo SPF値とin vitro SPF値の関係式からその1種の化粧料のin vivo SPF相当値を求め、更に、in vivo UVA-PF値とin vitro UVA-PF値の関係式からその1種の化粧料のin vivo UVA-PF相当値を求める工程
4.接触角が異なる複数種の紫外線透過度測定用透明基板は、その表面が、ポリイソシアネートで塗工された層を有する紫外線透過度測定用透明基板、イヌリンで塗工された層を有する紫外線透過度測定用透明基板、ヒドロキシアルキルセルロースで塗工された層を有する紫外線透過度測定用透明基板、の3種である3に記載の化粧料の紫外線防御性能の評価方法。
5.in vivo SPF値とin vitro SPF値の関係式、及び、in vivo UVA-PF値とin vitro UVA-PF値の関係式が、in vivo法で得られた化粧料のSPF値、UVA-PF値又はPA分類に対応するin vivo UVA-PF値と、前記A~Dの工程より求められたSPF値、UVA-PF値の関係を統計的に処理することで求められたものであることを特徴とする3又は4に記載の紫外線防御性能の評価方法。
6.化粧料が、粉体化粧料又はスティック状化粧料であるか、あるいは固形の化粧料に不揮発性油剤を混合して得られるペースト状物である1~5のいずれかに記載の紫外線防御性能の評価方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の化粧料の紫外線透過比率評価方法を採用することで、溶液型の化粧料、エマルジョン型の化粧料、粉体化粧料、ペースト状化粧料、スティック型化粧料等の各種の形態の化粧料のうち、評価できない化粧料の形態はなく、いずれの形態の化粧料に対しても、より高精度、正確、更に安定した測定値を得るという効果を奏する。特に従来、粉体化粧料とスティック型化粧料は精度の高い測定が実施されたことがなく、本方法によって初めて上記の各種の形態の化粧料全てにわたり実施が可能となったものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】組立セルを分光光度計設置用の治具に設置した外観写真
【
図10】ステンレス製円筒型アプリケーターを用いて塗工した塗膜の赤外線イメージング顕微鏡による観察例
【
図11】塗布時に化粧料と接する面に、親水化ポリエチレンテレフタレートフィルムを固定した円筒型アプリケーターを用いて塗工した塗膜の赤外線イメージング顕微鏡での観察例
【
図12】塗布時に化粧料と接する面に、親水化していないポリエチレンテレフタレートフィルムを固定した円筒型アプリケーターを用いて塗工した塗膜の赤外線イメージング顕微鏡での観察例
【
図13】塗布時に化粧料と接する面に、ポリイミドテープを固定した円筒型アプリケーターを用いて塗工した塗膜の赤外線イメージング顕微鏡での観察例
【
図14】塗布時に化粧料と接する面に、ポリ塩化ビニルテープを固定した円筒型アプリケーターを用いて塗工した塗膜の赤外線イメージング顕微鏡での観察例
【
図15】塗布時に化粧料と接する面に、シリコーンゴムを固定した円筒型アプリケーターを用いて塗工した塗膜の赤外線イメージング顕微鏡での観察例
【
図16】塗布時に化粧料と接する面に、ポリエチレンナフタレートフィルムを固定した円筒型アプリケーターを用いて塗工した塗膜の赤外線イメージング顕微鏡での観察例
【
図17-1】非特許文献4のAPPENDIX Iの表
【
図17-2】非特許文献4のAPPENDIX Iの表
【
図17-3】非特許文献4のAPPENDIX Iの表
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の化粧料の紫外線防御性能の評価のための測定用試料の調製工程を含む紫外線透過比率評価方法は、親水、親油型を含む乳化物、ローション、乳化ファンデーション、粉体化粧料、油性化粧料、スプレーを含む各種の化粧料について、高精度で安定した紫外線防御指数を得るための測定方法である。
図1に示すように、本発明は、紫外線透過度測定用透明基板表面として、例えば、イヌリン処理基板(親水性基板)、ヒドロキシアルキルセルロース処理基板(中間性基板)、及びポリイソシアネート処理(疎水性)基板(親油性基板)の3種等の複数種の基板を用意する。これらの基板に評価対象の化粧料を、例えば塗工工程1、2及び3を順に行って塗布する。これらの基板の紫外線の透過光のスペクトルを測定する。これを化粧料の厚さが例えば20μmのときのスペクトルに補正する。このとき、別途組立セルにより求めた化粧料の厚さが100μmのときの吸光度を基準にして求める。
次いで、上記3種の基板のうち、SPF値が最もが高い基板を選定する。
この最もSPF値が高い基板のときのSPF値及びUVA値を基にして所定の式により、in vivo-SPF, in vivo-UVA-PFの相当値を得ることを基礎とする。
【0012】
<化粧料>
本発明における化粧料は、メイキャップ製品や基礎化粧料等を含む幅広い化粧料である。具体的には、親水型(O/W)乳化サンスクリーン剤、親油型(W/O)乳化サンスクリーン剤、多層型(O/W/O, W/O/W)乳化サンスクリーン剤、乳化ファンデーション等のメイクアップ化粧料、化粧下地、サンスクリーンクリーム、多層分離型サンスクリーン剤、ノンケミカルサンスクリーン剤、デイエッセンス、デイケアローション、ハンドクリーム、固型ファンデーション、粉白粉、頬紅、アイシャドウなどの粉体化粧料、口紅、スティック型サンスクリーン等の油性化粧料、スプレー型サンスクリーン剤、ロールオン型サンスクリーン剤等が含まれる。また、剤型としては、液状、乳液状、クリーム状、ローション状、エッセンス状、多層分離状、油性、粉体、シート等が挙げられる。但し、紫外線透過比率が明らかに0%であったり、明らかに100%であったりする化粧料は含まれない。そして、皮膚、好ましくは顔、身体、手足等の少なくともいずれかにこの化粧料等を塗布して、紫外線防御効果を得る。
この紫外線防御効果とは、一般に波長290~320nmのB波紫外線に対応したSPF値、波長320~400nmのA波紫外線に対応したUVA-PF値、又はPA分類に対応するin vivo UVA-PF値、PPD値として表わされるが、これらの波長の防御効果を示す指標であれば特に限定されない。
【0013】
紫外線吸収性を発現させるために添加する紫外線吸収剤は、化粧料に添加されるものであれば特に限定されない。このような紫外線吸収剤のなかでも油溶性のものは、ケイ皮酸系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、安息香酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、及び、ジベンゾイルメタン系紫外線吸収剤等である。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また水溶性のものは、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸及び/又は2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノンスルホン酸等である。常温で固体のものは、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールやトリスビフェニルトリアジン等である。
【0014】
化粧料が含有してもよい、紫外線を散乱、吸収させる顔料として、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、微粒子酸化セリウム、酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化チタニアゾル、アルミニウムパウダー、金箔粉末等が挙げられる。
更に、化粧料は、これらの紫外線吸収剤及び/又は顔料以外の成分として、化粧料に配合可能な各種の成分を含有させてなる。
【0015】
<紫外線透過度測定用透明基板表面>
本発明で用いる紫外線透過度測定用透明基板表面として、接触角が異なる複数種の紫外線透過比率評価用基板を用いる。特に、3種類の基板(親油性基板、中間性基板、親水性基板)から2種以上の複数種の基板を用いる。例えばこのような3種類の基板を使用して複数の測定用試料を得る。3種類の基板は互いに純水に対する接触角が異なっている。本発明における紫外線透過比率評価用基板の接触角は、該基板表面の純水に対する25℃での接触角である。以下、紫外線透過度測定用透明基板表面を場合により、「紫外線透過比率評価用基板」という。
紫外線透過比率評価用基板は、いずれも超平滑処理がなされた石英板等を加工して製造された複数のプレートのそれぞれの表面に、必要に応じて親水化前処理又は親油化前処理等を行った上で、親油性層、親水性層、及びこれらの性質の中間の接触角を示す中間の性質を有する接触角調整層を有する。中でも上記の3種類の基板が好ましく、290~400nmの範囲の紫外線を透過する。また経日安定性にも優れていることが必要である。
【0016】
親水化前処理は、プレートに対して、プラズマ処理、アーク放電処理、コロナ放電処理等の物理的手段による処理を行い、純水に対する接触角を0~20゜、好ましくは0~10゜、より好ましくは0~5゜の範囲の親水性基板にするものである。これらの処理の詳細条件、つまり、印加電圧、処理時間等は、目的とする接触角に応じて任意に決定できる。更に雰囲気は、空気中のコロナ放電処理や、真空、又は酸素やアルゴン雰囲気下でのプラズマ放電処理とすることができる。中でも、石英基板をコロナ放電処理することが好ましい。
親油化前処理としては、プレート表面に、親油性を発揮させるための化合物を被覆したり、親油性を有する反応性化合物の雰囲気下で、プレート表面をプラズマ処理、アーク放電処理、コロナ放電処理等を行うことにより得ることができる。
なおプレートがポリメチルメタアクリレート等のように外力により変形されやすい材料では、化粧料を塗工時や洗浄時等に変形しやすく、安定的に紫外線透過比率評価用基板を作成できなかったり、使用できない可能性があり、好ましくない。そのため、石英板のように、機械的強度が高く、かつ290~400nmの範囲の紫外線を、その波長の範囲全般にわたって均一に透過するプレートが好ましい。
【0017】
該プレートを基礎として上記3種類の基板を得るために、3つのプレート毎に異なる3種の接触角調整層を形成させて紫外線透過度測定用透明基板を得る。
なお、本発明においては、紫外線透過性を正確に評価する上で、該プレート表面に形成した3種の接触角調整層のそれぞれは平滑であることが必要である。その平滑の程度は、以下の検定方法に求めた結果、凹凸の高さが最大でも1μm以下であることが好ましい。
【0018】
(凹凸の検定方法)
プレート(石英板)の上に試験液(イソノナン酸イソノニル27重量%、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル6重量%、酸化チタン分散液15重量%、ワセリン50重量%、イソステアリン酸ソルビタン2重量%)を薄く塗布した。次いで、試験液の塗布層上に、ステンレス製のギャップが1μmで幅が10cmのアプリケーターを置き、プレート表面と平行に少し移動させて、アプリケーター表面を試験液の塗布層に馴染ませた。更に、アプリケーターを用いて速度5mm/sで精密に均した後、塗膜を光に透かして見た時に塗膜に濃淡がない場合、プレート表面には凹凸が無く、以下の親油性基板、中間性基板及び親水性基板にしたときにも凹凸が無いとして検定に合格とする。
【0019】
(親油性基板)
親油性基板は、上記プレート表面を平滑にし、必要に応じて親油化前処理を行った上で、親油化処理層を形成して、純水に対する25℃での接触角が75~85°の範囲にしたものである。親油化処理層として、一般的なウレタン樹脂、ウレタンアクリレートは更に高い接触角を示すため、接触角を低下させる他の成分を配合させる必要がある。また、アクリル樹脂はコーティングに用いることができるグレードは波長290~400nmの範囲に紫外線吸収を持つ場合が多く不適である。同様に紫外線硬化樹脂は、硬化後の樹脂は波長290~400nmの範囲に多少の吸収を有することが多く不適である。
そこで、平滑に塗工が可能で、かつ成分の調整及び他の成分の添加により純水に対する接触角が調整可能な樹脂として、湿分硬化性でも良いアクリル系ポリイソシアネート、ポリウレタン、ポリウレタンアクリレート、チオール化合物/イソシアネート化合物/アクリレート化合物の共重合体を採用することが好ましい。これらの樹脂は分子構造の一部に親水性を有するポリオールやアクリレート、ヒドロキシ基含有アクリレートを有している。このポリオールやアクリレート、ヒドロキシ基含有アクリレートの成分の配合割合を調整して純水に対する接触角を75~85°に調整できる。
【0020】
(中間性基板)
中間性基板は、上記プレート表面を平滑にし、必要に応じて親水化前処理や親油化前処理等を行った上で、親水性と親油性の中間的性質を有する層を形成して得る。中間性基板表面は、純水に対する25℃での接触角が50°~60°の範囲にしたものが適当である。親水性と親油性の中間的性質を有する層を形成直後から接触角が変化する中間性基板においては、親水性と親油性の中間的性質を有する層を形成した直後に化粧料を塗布することが必要である。
【0021】
このような中間性基板を得るために必要な親水性と親油性の中間的性質を有する層は、ヒドロキシアルキルセルロース(塗布直後の接触角は51°~52゜)が好ましい。また以下の化合物から1種以上を選択して上記プレート表面に塗工して形成しても良い。
必要により可溶化された、マンノース、ガラクトース、キシロース、グルコース、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロース、フルクトース、セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、マルトトリオース、ラフィノース等の三糖類、イヌリン等の四糖類、オリゴ糖、グルカン、寒天、α-シクロデキストリン、マルトデキストリン、コーンスターチ、葛粉、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、ヒドロキシエチル澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、タマリンドガム、キサンタンガム、ネイティブジェランガム、ジェランガム、等の糖骨格を持つ化合物。
なお、本発明による効果を毀損しない範囲において、エリスリトールやキシリトール等の糖アルコール、糖由来の化合物、更にその他の糖ではない化合物を配合させてもよく、させなくてもよい。
更に、層を構成する上では常温常圧で固体であり、かつ潮解性がなく、室温の水に不溶性ではないことが好ましい。不溶性ではないとは、室温の水に1g/100mL以上の溶解度を有する場合である。そして5g/100mL以上の溶解度を有するものが更に好ましい。
【0022】
(親水性基板)
親水性基板は、上記中間性基板を得るために使用した上記の各種化合物及び各種化合物の複数の組み合わせから選択して、上記プレート上に層を形成して得る。
なかでも、イヌリン等の四糖類や、ヒドロキシアルキルセルロースを使用して、親水性を発揮する層を形成できる。イヌリンを使用した場合には、塗布直後の純水に対する25℃での接触角は23°~26°であり、塗布後5分経過後の接触角は0°~2.5°である。また経日安定性にも優れている。
【0023】
本発明の化粧料の紫外線防御性能の評価方法は、紫外線透過比率評価用基板である3種類の基板(親油性基板、中間性基板、親水性基基板)の上に化粧料を薄く塗工して測定用試料を調製する。それを分光光度計を用いて計測することを基礎とする。測定法の概要を
図1に示すが、乳化物のサンスクリーン剤の場合で説明する。
[A.接触角が異なる複数種の紫外線透過比率評価用基板の表面のそれぞれに対し、1種の化粧料を使用して、表面が付着防止性を有する材料層で形成されたアプリケーターによって、均一な化粧料塗布層を形成して行う、化粧料の紫外線防御性能の評価のための複数の測定用試料の調製工程]
<紫外線透過比率評価用基板への化粧料の塗工>
下記の任意の塗工工程1及び/又は塗工工程2等を行い、その後調製工程として下記塗工工程3を行う。その結果、測定用試料を調製する。
【0024】
(塗工工程1)
紫外線透過比率評価用基板の表面に対して、500μm~1000μmのギャップを持つ金属製アプリケーターを用いて紫外線透過比率評価用基板上に化粧料を塗工する。この際に例えば、厚さ4~10mmの範囲にある超々ジュラルミン等製の支持基板上に紫外線透過比率評価用基板を載置し、金属製アプリケーターとの相対的な移動速度が1~10mm/秒の速度、例えば5mm/秒となるようにして塗工する。また、化粧料を事前に紫外線透過比率評価用基板上に画材用のヘラなどを用いて引き延ばしておき、その上を必要に応じて金属製アプリケーターで均すようにしてもよい。
【0025】
金属製アプリケーターは例として
図4~
図6に示すものを採用できる。
金属製アプリケーターは、例えば
図4に示す塗り拡げ装置1によって移動される。
塗り拡げ装置1は塗り拡げ部材2及び該塗り拡げ部材2の両端を支持するための支持部3を有する装置である。
該塗り拡げ部材2は該支持部3に対して図示しない構造、例えば、塗り拡げ部材の両端部に設けたピンが、支持部3に設けられた上下方向に延びた溝に嵌合される等することによって上下に自由に移動が可能に支持されてなり、該塗り拡げ部材の自重によって、塗り拡げる対象である化粧料から受ける抗力に抗し、基板に対して該化粧料を均一に塗布するようにしてなるものである。
この
図4に記載の塗り拡げ装置1は、説明のために他の部材を図示していないが、塗り拡げ装置として一体のものとするために、例えば2つの支持部3を接続させる部材アングル等を設けることも可能である。
また、
図5は該塗り拡げ装置1を下面からみた図(
図6における台座B側から上方の塗り拡げ部材2をみたときの図)であり、塗り拡げ部材先端6が塗り拡げ部材2の先端に位置している。
【0026】
塗り拡げ装置1に備えられた塗り拡げ部材2及び支持部3の材質は、金属であることが好ましく、特にステンレス、ジュラルミン等寸法精度が良く、かつ加工可能な材料が好ましい。本発明で用いる塗り拡げ部材の断面形状は多角形であることが好ましい。
図6は、該金属製アプリケーターにより塗工中の状態の断面図である。
図6には、基板4を固定するための台座Bが設けられている。更に、
図5に示すように矢印で示す塗り拡げ装置の進行方向に向いた、塗り拡げ部材の面と、塗工される基板4の表面とのなす角度が30゜以上であることが必要である。30゜未満の場合では、化粧料5によって塗り拡げ部材にかかる抗力のために膜厚が一定にならず、化粧料によっては測定精度が低くなる場合がある。塗り拡げ部材が円筒状、あるいは楕円の筒状等のように、塗り拡げ部材の最も基板に近い部分と塗工される基板表面のなす角度が0゜に近くなる形状の場合も同様に塗り拡げ部材に係る抗力のために膜厚が一定にならない。
また、塗り拡げ部材先端6と基板4とで形成される間隙の高さが、塗工工程1では500μm~1000μmの範囲にあることが好ましい。
【0027】
塗り拡げ部材の質量は、塗り拡げ部材を単独で用いる場合では100g以上あることが好ましく、更に250g以上あることが好ましい。質量が小さいと抗力の影響を受けやすく、平滑な膜が形成できなくなる原因になる。また、質量が大きすぎると基板やそれを支持している板にゆがみが生じ、基板が平らでなくなってくるため、塗工部位による膜厚が変化する原因になる。どれだけの質量がかけられるかは基板や支持している板の強度にもよるので一概にいえないが、5mm厚の超超ジュラルミンを用いた場合では、塗り拡げ部材の上から加重し、自重と合わせた荷重が2kgを超えてくると基板のゆがみが無視できない大きさとして現れてくることが観察されている。
【0028】
(塗工工程2)
塗工工程2にて使用する塗布具は、
図7に示すように、回転軸先端に直径30~40mmの円筒型の支持体Pを設けてなる。この円筒型の支持体は両端の円形端面の中心を通る軸が、該回転軸に接続される。この支持体に例えば幅8~12mm、長さ30~35mm、高さ8~12mmの直方体の形状を持つ樹脂製スポンジ状塗工具Sを固定する。このとき樹脂製スポンジ状塗工具Sの表面は平面であり、その平面は紫外線透過比率評価用基板4の表面と平行になるようにして使用される。そして、該樹脂製スポンジ状塗工具を回転(例えばR方向に200~250rpm)させながら、紫外線透過比率評価用基板4の表面に塗工工程1により塗工された化粧料からなる層(
図7には示さないが、樹脂製スポンジ状塗工具Sと紫外線透過比率評価用基板4の表面の間に存在する)に接するようにして所定の時間均し、塗工工程1により形成した化粧料層をより薄い塗工層にする。なお、この際に、樹脂製スポンジ状塗工具の表面は、紫外線透過比率評価用基板よりも大きい面積、又は樹脂製スポンジ状塗工具Sの長さは、紫外線透過比率評価用基板の幅や径よりも長く、スポンジ状塗工具の端部は化粧料の塗工層と接触しないことが好ましい(
図7では、樹脂製スポンジ状塗工具Sの両端は紫外線透過比率評価用基板4の端部からはみ出ている。)。また、スポンジ状塗工具はウレタンスポンジからなることが好ましい。
【0029】
(塗工工程3(調製工程))
調製工程として、塗工工程2により得た化粧料塗工層表面に対して、例えば円筒型アプリケーターの表面に、化粧料が含有する油分又は化粧料を測定用試料にするために使用する油分と、これら油分と分散する他の物質との分散状態を維持させるために必要な性質を有する、表面が油の付着防止性を有する材料(実質的にこれら油分と分散する他の物質との分散状態を維持できる性質を有する材料)からなる層(アプリケーターの表面に選択的に油脂が付着しにくい材料層)を形成する。以下この層は油の吸着を抑止する層又はフィルムとする。そして、このフィルムを両面テープで固定したアプリケーターであって、紫外線透過比率評価用基板表面に対して20~30μmのギャップを有する改質アプリケーターを用いて、5mm/s位の速度で塗工して、測定用試料を調製する。ここで、該油の吸着を抑止する層又はフィルムは表面が油の付着防止性を有するからなる。この塗工工程3により均一な化粧料塗布層を備えた測定用試料を得る。
なお、塗工工程3は、化粧料層の薄膜を形成させる工程であるので、上記のようにアプリケーター表面の材料を限定する必要がある。上記塗工工程1及び2はより厚い化粧料層を形成させるものである。そのため、上記塗工工程1及び2で使用する塗布具は、塗工工程3のようにアプリケーターの表面の材質を、上記のような撥水性や実質的にこれら油分と分散する他の物質との分散状態を維持できる性質を有する材料のようには限定しない。
【0030】
塗工工程3で用いる表面が油の付着防止性を有する材料としては、上記の性質を有し、材料層にしたときにその膜厚が一定であり、塗工時に破れたりシワは生じたりしないものが前提となる。表1に示す材料を検討した結果、親水化処理ポリエステルフィルム、親水化処理ポリエチレンテレフタレートフィルム等の親水化処理済フィルムや、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂やポリエチレンナフタレート(PEN)からなるフィルム及び層が好ましい。またフッ素樹脂として、ポリフッ化ビニリデンに加えて、テトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレンポリマー、パーフルオロアルコキシポリマー、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニルフルオライドも好ましい。これらの材料の層はいずれも使用可能であったが、特に耐久性が優れているポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムが最も好適であった。フッ素系樹脂からなる層も良い成績を示した。また、ステンレスは水との接触角が90°ではあるものの、ステンレスであると、例えばエマルジョン系の化粧料のエマルジョンを破壊する可能性があり、結果的に均一な塗膜を形成できない可能性がある。
表1に記載の水との接触角は、25℃の純水との接触角である。
【0031】
ついで、100μmギャップのステンレス製円筒型アプリケーターに、上記25μmの厚さを持ち、凹凸の高さが1.0μm以下であるPEN等の樹脂フィルム(表面が油の付着防止性を有する材料として)を、ニチバン社製ナイスタック(弱粘着、厚さ60μm)を用いてシワがないように貼り付け、更にプラスチック製のスクレーパーで表面を平らにならしたものを作成した。なお、このPEN等の樹脂フィルム被覆アプリケーターの重量は266gと軽く、粘度が高い化粧料では塗工時にアプリケーターが浮き上がってしまい、膜厚が一定しない現象が確認された。そのため、アプリケーターの上に248gのステンレス製ブロックを載せ、トータル508gで塗工した。特に、凹凸の高さが1.0μm以下であるため、表面が平滑の化粧料層を形成できた。なお、この樹脂フィルムの表面は平滑なほど、形成された化粧料層表面が平滑であり、その後の測定精度を向上できる。なお化粧料が液体及び固体等の性状が異なっても、この特性は変わらない。また、上記の表面が油の付着防止性を有する材料として示した材料はいずれも、上記PENと同様の下記の実施例による結果と同様の結果を示した。
なお、上記塗工工程1で用いた500μm~1000μmのギャップを持つ金属製アプリケーターは特に加工の必要はない。塗工時にアプリケーターが浮きあがる問題は、アプリケーターのギャップが狭い時に顕在化するため、塗工工程1及び2では発生しやすいが、ギャップが大きい塗工工程1では特に対策を必要としない。
【0032】
上記円筒型アプリケーターの例を
図8に示す。
円筒型アプリケーター7は、例えば
図8に示す塗り拡げ装置9によって移動される。
塗り拡げ装置9は円筒型アプリケーター7及び該円筒型アプリケーター7の両端を支持するための支持部8を有する装置である。そして、支持部8等により図示しないフレーム等に固定、又は、塗り拡げるために必要な移動ができるように支持される。
該円筒型アプリケーター7は該支持部8に対して図示しない構造、例えば、円筒型アプリケーター7の両端部に設けたピンが、支持部8に設けられた上下方向に延びた溝に嵌合される、又は全体を一体で成形する等することによって上下に自由に移動が可能に支持される。そして、該円筒型アプリケーター7の自重によって、塗り拡げる対象である化粧料から受ける抗力に抗し、基板に対して該化粧料を均一に塗布するようにしてなる。又は、該円筒型アプリケーター7が該支持部8に固定されていても良い。円筒型アプリケーター7は1つの金属ブロックを切削等し、接合部がないものを得ても良く、任意の部材を組む等して得ても良い。
この
図8に記載の塗り拡げ装置9は、説明のために他の部材を図示していないが、塗り拡げ装置9として一体のものとするために、例えば2つの支持部8を接続させる部材アングル等を設けることも可能である。
図8に示す円筒型アプリケーター7は、上記金属製アプリケーターの塗り拡げ部材2が円筒型アプリケーター7に置換された形状を有する。
また、円筒型アプリケーター7は、その円筒の長さ方向に垂直の断面の形状が厳密に断面が円形のものでもよく、そうでなくても良い。円筒型アプリケーター7は、円形でも良いが、
図9に示すように円形に4個所の弦を設けて、弦の部分を平面にした形状でも良く、扇形でも良い。さらに、
図9に示す円形を基本とした形状に変えて、断面が楕円形であったり、2つの円や楕円等が重なった形状とし、部分的に平面を設けた形状でもよい。断面のうち、化粧料に接する部位がなだらかな曲線又は水平の平面であればよい。化粧料に接する部位の円筒形の形状は特に限定されないが、その塗布時における化粧料に接する部位の形状は、断面の直径が10~30mmの円筒形を反映した曲面や、そのような曲面に近い断面が円ではない、例えば楕円形等を反映した曲面でもよい。水平面の場合、短径の幅(
図9において、基板Bに対向した、上記のなだらかな曲線又はまたは水平の平面について、円筒形アプリケーターが基板に対して相対的に移動する方向を示す矢印に対して、並行方向であるの長さL)は1.0~5.0mmが好ましく、さらに好ましくは1.0~3.0mmである。
【0033】
図9は円筒型アプリケーター7により化粧料を塗布する際に矢印方向に移動をさせているときの図である。上記円筒型アプリケーター7と同様に化粧料塗工層表面に対して移動をさせることになる。そして、上記円筒型アプリケーターにおける塗り拡げ部材先端6に相当する部位が、
図9における円筒型アプリケーター7の下端の略水平面部分であり、この下端の部分によって、円筒型アプリケーターが矢印方向に移動することにより、過剰の化粧料5も同様に移動する。このとき、円筒型アプリケーター7と基板4の表面とで形成される間隙が、塗工工程1では500μm~1000μmの範囲にあることが好ましい。
【0034】
上記の、円筒型アプリケーターの表面に油の吸着を抑止するフィルムは、
図8に図示しないが
図8の円筒型アプリケーター7の全体を巻回するようにして、上記フィルムを円筒型アプリケーター7表面に被覆してもよく、
図8における円筒型アプリケーター7の下方であって、過剰の化粧料5とも接する部分のみを覆うように被覆しても良い。該表面が油の付着防止性を有する材料からなる層で円筒型アプリケーターの表面を被覆する際には、例えば円筒型アプリケーター7の上方の、過剰の化粧料5と接しない部分のみで、円筒型アプリケーターの表面を巻回した該フィルムを両面接着テープにて固定しても良い。また円筒型アプリケーター7の下方であって、過剰の化粧料5とも接する部分のみを覆うようにフィルムで被覆する場合にも、過剰の化粧料5と接しない部分に限定して、両面接着フィルムにより上記フィルムを固定できる。なお、円筒型アプリケーターに該フィルムを固定する手段としては、両面テープによる固定に代えて、フィルムを対象物に固定する公知の他の手段(クリップ等の挟持部材、接着剤による固定等)を採用できる。
【0035】
ここで、表面が油の付着防止性を有する材料のフィルム及び層からなることが必須である理由について説明する。コロナ放電して超親水性とした石英板の上に
図4の形を持つステンレス製のアプリケーターを用いてサンスクリーン剤を塗工し、回転式膜厚計を用いて膜厚が一定であることを確認した塗膜を用意する。この塗膜について、赤外線イメージング顕微鏡(サーモサイエンティフィック社製iN10MX赤外イメージングシステムオールインワン顕微FT-IR)を用いて紫外線吸収剤の特性吸収波数の1つである2852cm
-1のイメージングを行ったところ、紫外線吸収剤の濃度が部位により変化していることが確認された。これは化粧料の膜厚が一定であるならば、化粧料中のサンスクリーン剤の組成は塗膜の場所に関わらず一定であるという前提が崩れたことを意味する。つまりステンレス製アプリケーターを用いた場合では、その測定値には大きな誤差が含まれていることとなる。紫外線吸収剤の濃度が部位により変化しないような材料を用いて塗工することが可能であれば、誤差を大幅に減らすことが可能となり、正確な測定が実施可能となる。そこで、各種の材料を用いて塗工を行い、その時に得られた塗膜の紫外線吸収剤の分布を赤外線イメージング顕微鏡を用いて計測してみたところ、表面が油の付着防止性を有する材料を用いた時に紫外線吸収剤の濃度が部位により変化しない、又は変化が僅かであることを見出した。逆にこれらの材料で塗膜の均一性が保持されたことから、紫外線吸収剤の濃度が部位により変化した理由として、ステンレスは親油性であるため、アプリケーターの走行に伴い、サンスクリーン剤中の油性成分が徐々にステンレス表面に吸着し、吸着量が一定以上になると基板側に落下する現象が発生していると思われる。
【0036】
(塗工工程全般について)
上記塗工工程1は、塗工工程2のための前塗工工程である。塗工工程2におけるアプリケーターの塗工できる膜の厚さの安定性は、アプリケーター前面の化粧料の量に依存する傾向がある。そのため、化粧料の量を一定にするための目的で実施するものである。塗工工程2は、実使用では使用者はサンスクリーン剤等の化粧料を指や手で延ばしているから、この厚みを薄くするためのせん断等の物理的影響を反映させるものである。但し、塗工工程2の所要時間が長くなると、化粧料中の揮発性成分が蒸散して化粧料の不揮発分が濃縮されてしまう。そのため塗工しにくい化粧料でも均一に塗工できるように、8~14秒を塗工時間とする。塗工工程3は塗工工程2で不均一になった化粧料を均一な塗膜にするために実施するものである。
【0037】
【0038】
(乾燥工程)
塗工工程3の後、1時間~1時間半、冷暗所に放置する。この時に紫外線を照射しても構わない。
日本国以外の国では市販サンスクリーン剤のSPF値は100~150であり、これらの化粧料を測定するためには現行のSPFアナライザーの性能では不十分である。吸光度が5.5位まで安定に測定ができる超高感度の分光光度計が必要となるが、超高感度の分光光度計は積分球と光路との配置の関係で試料を垂直に立てて設置する必要がある。そのため、塗工した試料が液だれしてこないように一定時間の乾燥工程が必要となる。
【0039】
[測定用試料の紫外線の吸収スペクトルを測定]
(超高感度分光光度計による各基板に塗布した化粧料の吸収スペクトル測定工程)
パーキンエルマー社製紫外可視分光光度計 LAMBDA 850+(測定感度 吸光度8)に150mmの積分球を設置した。
図3に示した、組立セルを分光光度計設置用の治具に設置した外観写真となるように、測定用試料の組立セルを、
図3中のアルマイト処理したアルミニウム製の治具の中央部の穴に合わせるようにして固定した。この治具を、積分球の受光部の外側に積分球の開口部に平行になるように両面テープで固定した。この装置により、290~400nmの範囲の吸光度を計測した。
この紫外可視分光光度計 LAMBDA 850+を使用した理由は、resources.perkinelmer.comにおいて、Materials Characterization: UV/Vis/NIR Spectroscopy;ASpectroscopic in vitro Method for the Calculation ofSunscreen SPF Values としてPerkinElmer社のLAMBDA 850+と紫外線領域では同等の性能を有するLAMBDA 1050+の測定例が記載されていることによる。つまり、本装置を用いた紫外線防御能力の測定は既に実績があるためである。
【0040】
この操作を3種類の測定用試料(親油性基板、中間性基板及び親水性基板)に対してそれぞれ実施した。なお、測定用試料1枚あたり3点ずつ測定場所を変えたデータを取得することが好ましい。以下のようにして基準厚さ(基準膜厚)の試料を得る。
【0041】
[B.組立セルを用いて化粧料の基準厚さの吸光度を求め、下記式によりSPF値及びUVA-PF値を求める工程(固体化粧料以外の化粧料)]
(組立セルへの試料の充填)
内部の空間の厚さが100μmの組立セル(東ソー製 T-20-UV-0.1)が固定できるようにした治具を用意し、そのセルに組立セルの雌型(凹部が形成された方のセル)を設置した。セルの凹部(深さ100μm)に試料を注いだ後、上から100×100mmの平滑な石英板をゆっくりと押し付けて、試料中の気泡を取り除いた。この状態でセルと石英板は平行になっているので、石英板を水平にずらして組立セルに試料が100μmの厚さで充填された基準膜厚試料を得た。ついでセルの周囲と裏面を清掃した。厚さを100μmとした理由としては、厚さ50μmで乳化物を測定した場合、計測位置によって測定した吸光度がおおきくばらつくことが多い。これは50μm厚では測定位置によって、乳化物中の成分組成が大きく異なっていることが原因である。一方、500μm厚にすると、各種の化粧料を計測しても、測定位置による吸光度のばらつきはなくなるが、高いSPF値を持つ化粧料では吸光度が大きくなりすぎ、ランベルトベールの法則が満たされない場合がある。100μm厚では、計測位置による吸光度のばらつきは認められるものの、複数回の測定で補正が可能なため、基準厚さとして100μm厚の組立セルを選択した。
また、組立セルに試料を充填する方法としてセルと平滑な石英板が平行になる形での方法を用いている理由は、かきとり式(石英板を斜めに当てて組立セルの表面を均す方法)で組立セルの表面をかきとった場合に、一部の化粧料で本来の量よりも多くかきとられてしまう化粧料が存在しており、この場合は大体80~90μmの厚さとなっていることが判ったため、それを避けるために開発した方法である。
【0042】
(基準膜厚試料の加熱工程)
精密ホットプレートを用意し、60℃で安定化させた。該ホットプレート上に上記の基準膜厚試料を置いて15分放置した。15分後、試料を回収して基準膜厚試料を得た。通常、複数の基準膜厚試料を業務として測定する際は同時に10点位の組立セルをホットプレートの上に置くことになるため、熱のムラがないように理化学用の精密に温度管理が可能なホットプレートを用いることが必要であり、また、サンプルの取違を避けるためにホットプレートは大型の装置を用いることが好ましい。
【0043】
基準膜厚試料を加熱した理由としては、基準膜厚試料の化粧料の厚さは100μmあり厚いため、加熱せずに1時間放置しても上記の各塗工基板上の化粧料の状態とは状態が異なってしまうことが挙げられる。特に揮発性成分の残留量に変化が生じる。そのため、いくつかの化粧料を用いて計測したところ、例えばあるサンスクリーン剤の60℃での加熱時間と吸光度の関係を示した
図2のように、5分間の加熱で水やエタノールなどの揮発性成分は概ね蒸散した後の吸光度はあまり変化しないものが多い。
図2では、加熱温度別に吸光度を測定した。なお15分間の加熱を行ったサンプルを2つ得て、それぞれの吸光度を測定した。)。しかし、化粧料によってはもう少し時間がかかるものがあることが判ったため、余裕を見て15分間加熱して、化粧料中の揮発性成分を十分に除去した。なお、
図2においては15分のみ2回計測している。また、加熱5分後に吸光度が大きく減少する理由としては、乳液では水と油の界面で光が屈折して光散乱が発生しているところ(そのために可視光では白く見える)、加熱により水がなくなるとこの散乱光が減少するため吸光度が低下したことが挙げられる。
【0044】
(基準膜厚試料の分光光度計測定工程)
組立セルは12.5×45mmと小さいため、そのままでは分光光度計にセットできない。そのため、分光光度計の積分球の開口部に組立セルが密着して設置できるように
図3に示すような黒色プラスチック製の治具を開発して設置した。黒色プラスチック製の治具の開口部に組立セルを設置して、波長400nmの吸光度を測定した。なお、組立セルを積分球の開口部に密着させる理由としては、化粧料は光散乱するものがあるため、積分球に密着させないと散乱光の影響を十分に反映できなくなるためである。
400nmの光を用いた理由としては、紫外線の計測に用いられる290~400nmの波長範囲の中で最も可視光に近く、微粒子などによる光散乱の影響が最も少ない波長であるためである。化粧料の白色度だけであれば660nmなどの波長を用いることも可能であるが、基板の測定時に290~400nmの波長範囲とは別に計測する必要がある。そのため、基板を塗工から1~1.5時間で計測する時間制限があることを考えると400nmを用いるのが効率的である。また、化粧料によっては、ローションなど波長400nmの光を吸収、散乱しない製品が存在する。その場合は、380nm、360nm、340nm、320nm、300nmのように少しずつ測定波長を短波長側にずらして行って、有意差のある吸光度が得られる波長を選択する。
【0045】
組立セルでは測定のばらつきを補正するため、組立セル内の異なる2ヶ所の吸光度を計測することが好ましい。また、基準膜厚試料の作成においてばらつきが発生する化粧料が存在することが判ったため、基準膜厚試料の作成も複数回実施することが必要である。好ましい例としては、基準膜厚試料を2つ作成し、各組立セル中の2カ所を計測して吸光度データを4つ取得し、その標準偏差/平均値を求め、これが0.2を超えるようなら基準膜厚試料を1つ追加して得られる6点の吸光度の平均値を以て、該当する製品の100μm厚の吸光度とすることが挙げられる。
【0046】
以上の操作で該当する試料の100μmでの吸光度が判ったので、これを0.2倍して20μmに換算する。これはin vivo SPF測定法ではヒトの背中に2mg/cm2の割合で化粧料を塗布して測定値を得ているため、2mg/cm2に相当する20μmの厚さでの値での比較をするための操作である。
【0047】
[C.複数の測定用試料について得られたSPF値を基に、そのSPF値が最大となる測定用試料を選択し、その測定用試料のSPF値とUVA-PF値を、その1種の化粧料のin vitro SPF値とin vitro UVA-PF値とする工程(固体化粧料以外の化粧料)]
前述の各基板で計9点の吸光度データがあるので、例えば400nmの吸光度を基準とするのであれば、9点のそれぞれ400nmの吸光度の値を上記組立セルを用いて計測した20μmの吸光度の値と比較して、測定データ全体を20μmの値になるように補正する。補正方法は単純に400nmの吸光度と20μmの吸光度の比から各波長ごとに比例計算して求めればよい。各基板ごとに波長ごとの補正データの平均値を求めて基板ごとに1つのスペクトルデータを得、これを用いて計算によりin vitro SPF値やin vitro UVA-PF値を求める。そして、3枚の基板の中で最大のSPF値を示した基板を選択し、その基板のSPF値とUVA-PF値をその製品の値と定める。
仮に、塗布後の化粧料の層が、基板表面の親水性(親油性)等の特性に影響されて、化粧料が相分離したり、脱濡れを生じたりしたとする。このような結果、基板全体として紫外線が透過しやすくなる。言い換えれば、化粧料の層が均一であり、紫外線の透過率が最小の基板は、このSPF値が最大となる基板(紫外線透過比率評価用基板)である。このような基板は他の基板上よりも、化粧料組成物がその性質を変えることなく化粧料の層が形成されたものである。そのため、SPF値が最大となる基板を選択して、その後のSPF値及びUVA-PF値を求めることによって、化粧料が本来有する特性を正確に測定できる。
【0048】
[D.invivo SPF値とin vitro SPF値の関係式からその1種の化粧料のin vivo SPF相当値を求め、更に、in vivo UVA-PF値とin vitro UVA-PF値の関係式からその1種の化粧料のin vivo UVA-PF相当値を求める工程(固体化粧料以外の化粧料、粉体化粧料及びスティック状化粧料に共通)]
ここでスペクトルデータから計算によりin vitro SPF値やin vitro UVA-PF値を求めるにあたり、化粧料業界においては非特許文献4に記載されたISO基準の計算式を用いることが多い。しかしながら、本発明人らの研究(Miyuki Fujishiro, Shoichi Yahagi, Akihiro Kuroda, Taisuke Banno,Kouichi Asakura, “Investigation on the validity of in vitro UVA-PFevaluation method for sunscreen samples”, 第2回世界オレオサイエンス会議(WCOS 2022))でISO法の計算式は、UVB領域の吸光度の違いをうまく反映できないことがあることを示した。また、全世界の市販サンスクリーン剤206点の計測結果から、SPF値、UVA-PF値共にISO基準の計算式を用いて製品に表示された紫外線防御数値又は指標と本発明で得られた計算値との関係を調べた場合、線形回帰モデルの決定係数(R2乗値)が非常に悪くなることを見出した。一方、ISO基準の計算式が提唱される以前(1979年)から中東や南米中心に別の計算式が提唱されていた(Elizangela AbreuDutra他、”Determination of sun protection factor (SPF) ofsunscreens by ultraviolet Spectrophotometry”, BrazilianJournal of Pharmaceutical Sciences, 40, 3, 381-385,2004)。それは、波長毎のSPFを次の式で求め、
SPF=CF×ΣEE(λ)×I(λ)×Abs(λ) (式1)
この波長毎に求めたSPFを、290~320nmの範囲で求め、この値を積算したものである。ここでCFはcorrection factor(=10)、EEはerythemaleffect spectrum、Iはsolarintensity spectrum、Absはabsorbanceof sunscreen productとされている。CF、EEとIは定数で、EEについては、
図17に示す非特許文献4のAPPENDIX Iの表中にErythema action spectrumとして波長毎の値として示され、かつ、Iについては、同じ表中にUV-SSR source W.m
-2nm
-1として波長ごとの数値が示されているのでこれを用いた。この式1を用いてSPF値を計算すると、ISO基準の計算式と比べてはるかに大きな決定係数が得られた。更に、式1の方がヒト測定値との整合性が良い結果であることから、本発明ではこの式1を用いた(ISO基準の決定係数は0.5336に対して、式1では0.6792)。
また、次の式
UVA=CF×ΣEE(λ)×I(λ)×Abs(λ) (式2)
波長毎に求めたUVAを320~400nmの範囲で求め、各波長での求めた値を積算したものを算出した。
ここで、CF、EE、及びIは、上記(式1)と同じく、EEはerythemal effect spectrum、Iはsolar intensity spectrum、Absはabsorbance of sunscreen productとされている。そして、
図17に示す非特許文献4のAPPENDIX Iの表中に同様に示されたものである。この式2を用いてUVAを求めると、ISO基準の計算式から得られる決定係数と比べてはるかに大きな値が得られた(ISO基準の決定係数は0.5767に対して、式2では0.7900)ことから、本発明ではUVA-PFについてもこの計算式で波長範囲を320~400nmに変えたものを用いることとした。
【0049】
上記で得られるin vitro SPF値とin vitro UVA-PF値は、そのままでは従来のin vivo SPF値やinvivo UVA-PF値との比較はできない。比較するためには相関関係を示す関係式が必要となる。全世界の市販サンスクリーン剤200点以上の計測結果(in vitro SPF値とin vivoSPF値の比、in vitro UVA-PF値とin vivo UVA-PF値の比)から得られた式(in vivo SPF値とinvitro SPF値の関係式、及び、invivo UVA-PF値とin vitro UVA-PF値の関係式)はそれぞれ以下の関係式の通りとなったので、これを用いてinvivo SPF 相当値と、in vivo UVA-PF相当値を求めることになる。
in vivo SPF値とinvitro SPF値の関係式: in vivoSPF 相当値 = in vitro SPF値/0.101(式3)
invivo UVA-PF値とin vitro UVA-PF値の関係式: in vivo UVA-PF相当値 = in vitro UVA-PF値/2.13(式4)
なお、上記の全世界の市販サンスクリーン剤200点以上の計測結果において、太陽光のスペクトルとして、米国繊維科学技術・染色技術協会(AATCC)が定めた太陽光スペクトルと、ISOが定めるUV-SSRの両方で比較を実施した。その結果、UVA-PFの結果にはあまり差がないが、AATCCによる係数がわずかに高い値を示した。実質的にどちらを使っても問題ないと思われる。もし、ISO法に規定されたUV-SSRの光源を用いて計算したい場合は、UVA-PF: in vivo UVA-PF相当値 = invitro UVA-PF値/3.6680 とすれば良い。
【0050】
ここで上述した、全世界の市販サンスクリーン剤200点以上の計測結果(in vitro SPF値とin vivoSPF値の比、in vitro UVA-PF値とin vivo UVA-PF値の比)から得られた式(In vivo SPF値とInvitro SPF値の関係式、及び、Invivo UVA-PF値とin vitro UVA-PF値の関係式)の求め方を示す。これらの関係式は、上記工程A~工程Dより求められたSPF値、及びUVA-PF値と、製品に標記したUVA-PF値の関係を統計的に処理する。現在、SPFについては国際的にすべてヒトを用いて計測されたin vivo値が使用されている。UVA-PFについては、メーカーによっては実数値をパッケージに示している会社とPA分類表示されている会社があるが、いずれもヒトを用いて計測されたin vivo値となっている。UVA-PFの値が記載されている場合はそのまま用いれば良いが、PA分類が記載された場合はそのin vivo UVA-PF値の範囲が規定されていることから、PA分類に対応するin vivo UVA-PF値として、本発明では範囲の中間の値を以てその製品のUVA-PF値に対応させた。具体的にはPA+のときin vivo UVA-PF値を3とし、PA++のとき同6とし、PA+++のとき同12とし、PA++++のとき同24とした。全製品のin vitro SPF値を本発明の方法により求め、この数字を縦軸に、そしてパッケージに示されたin vivo SPF値を横軸に示した。原点を通る直線近似を行い、その近似式と決定係数を求めた。この方法に基づき、上記の式3のIn vivo SPF値とInvitro SPF値の関係式を求めた。同様にして、全製品のin vitro UVA-PF値を求め、この数字を縦軸に、そしてパッケージに示されたin vivo UVA-PF値値を横軸に示し、原点を通る直線近似を行い、その近似式と決定係数を求めて、最終的に上記式4のIn vivo UVA-PF値とin vitro UVA-PF値の関係式を求めた。
【0051】
以上の方法でリクイドファンデーションなどのメイクアップ化粧料を含む一般的な乳化物、ローション、スプレー製品の、組立セルによる膜厚100μmの基準膜厚試料の作成及び吸光度の測定ができる。
更に、SPF値が最大となる基板を選択し、上記の式(1)~式(4)による計算を経て、in vivo SPF 相当値とin vivo UVA-PF相当値を求めることができる。
次に流体でないパウダーファンデーションなどの粉体化粧料やスティック状化粧料について測定する場合の特有の手順について解説する。その後のin vivo SPF 相当値とin vivo UVA-PF相当値を求める方法は上記流体の化粧料と同様である。
【0052】
[B.組立セルを用いて化粧料の基準厚さの吸光度を求め、下記式によりSPF値及びUVA-PF値を求める工程(粉体化粧料)]
(組立セルへの試料の充填)
秤の上にガラス板か陶器板を置き、その上に粉末状の粉体化粧料をドーナツ状に設置する。ガラス板や陶器板は12cm角位の表面が平滑なものが軽量で作業が楽なことから好ましい。飛んだ粉はブラシを用いてきれいに除去しておく。基板1枚あたりに必要な粉体化粧料の重量は1.5g程度を目安とし、正確にその重量を計測、記録する。スポイトを用いてドーナツの穴の部分に紫外線領域に吸収を持たない不揮発性油剤を1.5g程度滴下し、その重量を正確に計測し、記録する。紫外線領域に吸収を持たない不揮発性油剤としては、粉体化粧料と混じりやすい特性がある非極性油、エステル油が好ましく、特に国際的に入手が可能で品質が安定しているスクワランが好ましい。不揮発性の基準は常温常圧で揮発性に乏しいか揮発性がないことをいい、おおむね10分間で0.1%以下の重量変動であるものを指す。本発明で用いる不揮発性油剤の粘度は特に限定されないが、例えば6~1000cs程度のものが取り扱いがしやすい。また、秤は1mgが計測可能な上皿天秤を用いることが好ましい。計量後、画材用のヘラを用いて、ガラス板か陶器板の上で塊がなくなり均一なペースト状物になるまで良く混合する。また、全部を同時に混ぜようとせずに、少しずつ混ぜていくことが肝要である。また、ヘラの裏面に良く混合されていない粉体化粧料が固着している場合があるので最後に確認が必要である。混合ペーストができあがったら、基板の上に混合ペーストの全量を流し、上記塗工工程1から塗工工程3を順に行うる。塗工工程3にて使用するアプリケーターの表面で、化粧料に接する部分の表面の凹凸の高さが1.0μm以下である。ついで乾燥工程は省き、分光光度計測定工程を実施する。
粉体ではない固形の化粧料も同様である。
【0053】
基準膜厚試料については、上記の粉体化粧料の量を1g程度、紫外線領域に吸収を持たない不揮発性油剤を1g程度とした他は、上記の液体化粧料の場合と同様にして混合ペーストを得る。その後、上記液体化粧料の場合と同様に、組立セルの凹部にペーストを載せ、数分放置した後、上から組立セルの平板を被せて圧着し、組立セルの短辺を指で持ち、周辺部にでてきたペーストをふき取る。組立セルの平板は長辺の片側から力をゆっくりと加えて気泡をできるかぎり除去する。ここで、粉体化粧料の試料作成で測定値が変動する最大の原因は混練中に混入してくる気泡の存在であるため、得られた試料を光に透かした時に、もし気泡があった場合はその部分は計測しないようにして、前記の膜厚100μmの基準膜厚試料の分光光度計測定工程を実施する。また、組立セルの凹部にペーストを載せる際に大過剰量を載せてから平板を押し付けると気泡が抜けやすい。基準膜厚試料については、2組以上用意する。
【0054】
次に、各基板及び基準膜厚試料について、得られた吸光度の値を粉体化粧料の重量/(不揮発性油剤の重量+粉体化粧料の重量)の値で割ることで得られる調整吸光度を同試料の吸光度として用い、他は固体化粧料以外の化粧料の場合の基準膜厚試料の分光光度計測定工程と同様にして、粉体化粧料の測定値が得られ、in vivo SPF 相当値及びin vivo UVA-PF相当値を求める。
【0055】
[B.組立セルを用いて化粧料の基準厚さの吸光度を求め、下記式によりSPF値及びUVA-PF値を求める工程(スティック状化粧料)](組立セルへの試料の充填)
次に口紅やスティック状サンスクリーンなどのスティック状化粧料を測定する場合の手順について解説する。スティック状化粧料については、まず基板の測定を実施し、次に基準膜厚試料を実施することが好ましい。これは、波長400nmに光の吸収、散乱を持たない化粧料が多く存在するため、基板の測定結果から、基準膜厚試料の測定に用いる測定波長を決める必要があるためである。秤の上にガラス板か陶器板を置き、その上にヘラを使ってロの字型にスティック状化粧料を0.6g程度こすりつけ、化粧料の量を正確に計量、記録する。ついで紫外線領域に吸収を持たない不揮発性油剤をロの字の中央に2.4g程度滴下し、同様に計量、記録する。画材用のヘラを用いて、少しずつ混合し、全体が混ざったら、食品用の使い捨てのアルミカップ等の容器に混合ペーストを移し、ホットプレートを用いて60℃で15分間加熱する。この際に、ヘラの裏面に良く混合されていない化粧料が固着している場合があるため、確認が必要である。加熱後に相分離していた場合はまだ温かい内に良く混合する。基板の上に混合ペーストの全量を流し、上記の塗工工程1から塗工工程3を順に行う。塗工工程3にて使用するアプリケーターの表面で、化粧料に接する部分の表面の凹凸の高さが1.0μm以下である。ついで乾燥工程は省き、分光光度計測定工程を実施する。
【0056】
基準膜厚試料については、塗布するスティック状化粧料の量を0.3g程度とし、紫外線領域に吸収を持たない不揮発性油剤を1.2g程度とした他は、上記粉体化粧料の基準膜厚試料の作成と同様にして混合ペーストを得る。粉体化粧料と同様にして基準膜厚試料を2組以上作成する。
【0057】
次に、各基板及び基準膜厚試料について、得られた吸光度の値をスティック状化粧料の重量/(不揮発性油剤の重量+粉体化粧料の重量)の値で割ることで得られる調整吸光度を同試料の吸光度として用い、他は粉体化粧料の基準膜厚試料の作成同様の方法を採用して、スティック状化粧料の膜厚100μmの測定値が得られる。この工程においても、凹凸の高さが1.0μm以下である。
【0058】
ここで、本発明では分光光度計測定工程において、本体の測定感度が吸光度8に達する非常に高感度の測定装置を用いているが、化粧料業界では従来いわゆるSPFアナライザーと言われる測定装置が用いられてきた。代表的な機種が2種あり、1種は吸光度が2台、1種は吸光度が3台の測定感度を有している。一方、前述のように吸光度が8の測定例がある。製品により差はあるが、既存の2機種でもSPF値で15以下の製品であれば、感度的にも問題なく本発明の方法が実施可能と思われる。それ以上のSPF値の製品の場合は、なんらかの測定値は得られるが、大きな誤差要因を含むものと考えた方が良いと思われる。我々は前述のWCOS 2022でも報告したが、吸光度が2を超えてくると測定器間で吸光度が大きく異なって表示されることを確認しており、測定器の感度問題をしっかり認識した上で実施しないと測定値の客観性が担保できない。
【0059】
また、基板の平滑性の問題についてここに記しておく。化粧料業界ではヒトの肌には肌理があり、凹凸があるので測定用の基板も凹凸が必要として開発が進められてきた経緯がある。一方、本発明では、in vivo SPF測定法とin vivo UVA-PF測定法から得られた測定値と、本発明の方法で得られるin vitro SPF及びUVA-PF値との関係(上記in vivo SPF 相当値算出式、及び、上記in vivo UVA-PF相当値算出式)を求め、in vitro SPF及びUVA-PF値をそのまま用いずにin vivo SPF及びUVA-PF相当値を求めているところに特徴がある。in vivo法においては、紫外線照射プローブをヒトの背中に強く押し付けて測定を実施する。https://solarlight.com/product/model-601-multiport-spf-testing-6-output-solar-simulator/ は受託測定時に最も多用されている紫外線照射装置のカタログであるが、6連の照射プローブを使うことが示されている。このプローブの紫外線照射部は円筒型で中央から光ファイバーで導光した紫外線が照射される構造となっている。ヒトの皮膚に8mm円の円筒を強く押し付けると、皮膚は最大限にひきのばされて平らになる。本発明ではこの平らの状態での測定結果との関係を求めているため、測定基板も平滑なものを用いている。凹凸のあるプレートは、上記のin vivo測定法ではなく、消費者が実生活で浴びる紫外線の影響を測定するのに向いており、既にあるin vivo測定法との比較は本質的にはしにくいと考えられる。
【実施例】
【0060】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0061】
[塗工工程3で用いるアプリケーターの化粧料と接する表面が、油の付着防止性を有する材料層で形成されるべき理由]
アプリケーターの塗工部分に油の付着防止性を有する材料層を設けた場合と設けなかった場合による塗膜の変化の確認試験
(測定条件)
赤外線イメージング顕微鏡(サーモサイエンティフィック社製iN10MX赤外イメージングシステムオールインワン顕微FT-IR)を用い、測定間隔は100μm×100μm、測定波数は2852cm-1、液体窒素を用いた透過測定、積算は各測定点ごとに16回実施し、リファレンスは合成石英製の石英板を用いた。測定範囲はアプリケーターの進行方向で70mmの範囲を計測した。本装置は本来カラーでマッピング分析の結果が得られるが、本特許においては、白くなっている部位がより高濃度(より透過率が低い)であることを示している。
測定試料 水、酸化亜鉛、エタノール、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、イソセチルミリステート、グリセリン、プロピレングリコール、ビスエチルヘキシロキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ポリビドロキシステアリン酸、フェノキシエタノール、メチコン、キサンタンガム、香料、EDTA-2Na、ビオサッカリドガム-1、色素、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、イソヘキサデカン、ポリソルベート80、オレイン酸ソルビタンからなる乳液(赤外線観察において紫外線吸収剤(油層)の挙動が明確になるように各成分の赤外線スペクトルから成分を選択、調整して得られた製剤)
アプリケーター 表面がステンレス製の円筒型アプリケーターと、表面に各種材料層を固定した円筒型アプリケーターを用いた。
塗工条件 精密塗工装置を用いて、5mm/sのスピードで塗工した。
塗工に用いた基板 コロナ放電装置(Electro-Technic Products社製BD-20ACLaboratory Corona Treaterを用い、10×10cmの合成石英製石英板の表面を90秒間処理した。処理はロボットを用いて全面が均一になるように処理した。
膜厚の測定 回転式膜厚計を用いて計測した。
【0062】
(試験結果)
上記測定条件でのステンレス製円筒型アプリケーターを用いて塗工した塗膜の赤外線イメージング顕微鏡での観察結果を
図10に示す。-15000より右側が通常紫外線防御能の評価試験に使用する塗膜の部位となる。回転式膜厚計でこの部位は膜厚が一定であることを確認した。
図10において白く見えている部位は相対的に紫外線吸収剤の濃度が高くなっている部位である。このことから、外観上厚さが一定で均一にみえる塗膜であっても、紫外線吸収剤の濃度は一定になっていないことが判る。
化粧料が接する表面に親水化ポリエチレンテレフタレートフィルムを固定した他は、上記円筒型アプリケーターと同様のアプリケーターを用いて塗工した塗膜の赤外線イメージング顕微鏡での観察結果を
図11に示す。特に紫外線吸収剤の高濃度部位は観察されず、安定した塗工が実現できていることが判る。
更に親水化処理されていないポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた場合の赤外線イメージング顕微鏡での観察結果を
図12に示す。親水化していないと紫外線吸収剤の濃度に濃淡がでていることが判る。
【0063】
ポリイミドテープを固定したアプリケーターを用いて塗工した塗膜の赤外線イメージング顕微鏡での観察結果を
図13に示す。紫外線吸収剤の濃度の濃淡が激しいことが判る。
ポリ塩化ビニルテープを固定したアプリケーターを用いて塗工した塗膜の赤外線イメージング顕微鏡での観察結果を
図14に示す。紫外線吸収剤の濃度の濃淡が激しいことが判る。
シリコーンゴムを固定したアプリケーターを用いて塗工した塗膜の赤外線イメージング顕微鏡での観察結果を
図15に示す。紫外線吸収剤の濃度の濃淡が激しいことが判る。
PENフィルムを固定したアプリケーターをいて塗工した塗膜の赤外線イメージング顕微鏡での観察結果を
図16に示す。特に紫外線吸収剤の高濃度部位は観察されず、安定した塗工が実現できていることが判る。
このようにして、各種材料を高濃度部位の有無で選別し、PENや親水化ポリエチレンテレフタレートなどが塗膜の均一性に優れていることを見出した。
【0064】
(実施例1)
表2に示す成分からなる乳液状化粧料を用い、本製品のin vivo SPF相当値と、in vivo UVA-PF相当値を得るまでの一連の作業の例を示す。なお、表2記載の乳液の紫外線防御能をヒトを用いて測定したSPF値は56、UVA-PFは19.9であった。
分光光度計としてはパーキンエルマー社製紫外可視分光光度計 LAMBDA 850+(測定感度 吸光度8)に150mmの積分球を設置したものを用い、組立セルは東ソー製のT-20-UV-0.1を用いた。
各基板の乾燥時間は1時間である。塗工工程1として500μmのステンレス製4方アプリケーターを用いて乳液状化粧料を平らにした。ついで塗工工程2で回転装置の先端に取り付ける塗工具はスポンジ状ウレタン(幅15mm、高さ10mm、長さ35mm)を用い、回転塗工の速度は260rpmとして、12秒間引き伸ばした。塗工工程3で使用した円筒型アプリケーター(塗布時に化粧料が接する部位の断面は直径12mmの円を反映した曲面)の被覆材としてはPENを用い、各基板とのギャップは25μmである。3種類の基板としては、アクリル系ポリイソシアネート処理プレート(アクリル系ポリイソシアネート塗布後1週間経過後接触角80°)、ヒドロキシアルキルセルロース処理プレート(ヒドロキシアルキルセルロース塗布後1週間経過後接触角51°~52°)、イヌリン塗工プレート(イヌリン塗工石英板) (イヌリン塗布後1週間経過後接触角 23°~26°)を用いた。なおこれらの接触角は全て25℃における純水の接触角である。
【0065】
【0066】
接触角が異なる複数種の紫外線透過比率評価用基板として、親油型の湿分硬化性アクリル-系ポリイソシアネート(表中では単にポリイソシアネートとする)処理プレートと、ヒドロキシアルキルセルロース塗工プレートと、イヌリン塗工プレートを1枚ずつ用意した。ここに表2記載の乳液を、塗工工程1としてギャップ500μmのステンレス製アプリケーターを用いて化粧料を塗工した。ついで塗工工程2としてすぐにウレタンスポンジを固定した回転装置を用いて260rpmで乳液を12秒間引き延ばした。ついで塗工工程3としてすぐに前記のPEN被覆円筒型アプリケーターを用いて塗膜を作成した。 冷暗所にて1時間保管し、分光光度計を用いて各プレートの3点ずつでの吸光度を計測した。
【0067】
別に用意した深さ100μmの組立セル2組に表2記載の乳液をそれぞれ充填した。充填後に、60℃に加熱した精密ホットプレートの上に15分間静置した後、室温まで放冷した。分光光度計を用いて400nmの吸光度を各組立セルの2点ずつで計測し、計4点の測定値を得た。実測値で示すと、吸光度の値として1.174941、1.159418、1.277993、1.155809となり、平均吸光度は1.19204、標準偏差が0.0579、標準偏差/平均吸光度=4.9%であった。標準偏差/平均吸光度=4.9%で20%以下であったので、測定は4点で実施することとした。
平均吸光度1.19204は100μmでの値のため、20μm当たりでは0.2倍して、0.238408となる。この値を基準として前記の各プレート9点の測定値の400nmの吸光度の値から膜厚20μm相当のスペクトルを比例計算で求めた。
【0068】
以上で9点の測定点の20μm相当のスぺクトルデータが得られたので、このデータを使って、実施例1として上記式(1)及び式(2)に従って求めたSPF値とUVA-PF値、及び、比較例1として非特許文献4に準拠して求めたISO法基準のSPF値とUVA-PF値を求めた。なお、上記式(1)及び式(2)の計算式においては、太陽光のスペクトルとしてAATCCの定めた太陽光スペクトルのデータを用いた値を示した。結果を表3及び表4に示す。
【0069】
【0070】
【0071】
表3を見ると、式1で求めたSPF値が最も高い値を示したのは、ヒドロキシアルキルセルロース塗工プレートであることが判り、この製品のin vitro SPF値は約6.8となり、同様に式2で求めたin vitro UVA-PF値は同プレートを用いて測定した約45.9となる。この値を式3からin vivo SPF 相当値を求めると67.7となり、式4からin vivo UVA-PF相当値は同様に21.6となる。ISO法の場合はそのままの値を用いることとされているので、in vitro SPF値は296、in vitro UVA-PF値は26.6となり、両者で大きな差がでた。一方、上記のように、この製品のin vivoでの測定値はSPFが56、UVA-PFが19.9であり、本発明の測定法は比較例であるISO法と比べて極めてin vivo法の測定値に近い値を示すことが判った。
また、上記PENに代えて、親水化処理ポリエステル、親水化処理ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレンポリマー、パーフルオロアルコキシポリマー、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン、及びポリビニルフルオライドのそれぞれからなるフィルムを採用しても、PENを使用したときと同様に、ヒドロキシアルキルセルロース塗工プレート上に表2記載の乳液からなり、この乳液が有する本来の性状と同じ性状の薄層を形成できた。
【0072】
(実施例2)
市販の粉体粧料(フェイスパウダー)を用いて測定を実施した。なお、市販製品のパッケージに記載のSPF値は32、PA分類は+++(UVA-PFで8~16に相当)(PA分類に対応するin vivo UVA-PF値は12)であり、成分表示は以下となっていた。
Talc,Perlite, Titanium Dioxide, Ethylhexyl Methoxycinnamate, Dimethicone, AluminumHydroxide, Stearic Acid, Silica, Methicone, Caprylyl Glycol,Ethylhexylglycerin, BHT, Cetyl PEG/PPG-10/1 Dimethicone, Tocopherol,Pentaerythrityl Tetra-di-t-butyl Hydroxyhydrocinnamate, (+/-)Titanium Dioxide,Mica, Iron Oxides
【0073】
前記の親油型湿分硬化性アクリル-系ポリイソシアネート処理プレートと、ヒドロキシアルキルセルロース塗工プレートと、イヌリン塗工プレートを1枚ずつ用意した。12cm角の表面硬化処理ガラス板の上に粉体化粧料をヘラを用いて細かく削り出してドーナッツ状に配置した。粉体化粧料の重量は1.500gであった。ここにスクワラン1.500gを加えて、画材用のヘラを用いて良く混合し、得られた混合ペーストを基板の上に広げた。これを3回繰り返して各基板の表面に混合ペーストが広げられた試料を得た。ついで、塗工工程1として上記実施例1と同じく、同様に500μmのステンレス製4方アプリケーターを用いて混合ペーストを平らにした。ついで塗工工程2としてすぐに上記実施例1と同じウレタンスポンジを固定した回転装置を用いて260rpmで混合ペーストを12秒間引き延ばした。ついで塗工工程3としてすぐに上記実施例1と同じPEN被覆円筒型アプリケーターを用いて塗膜を作成し、分光光度計を用いて各プレートごとに3点ずつ吸光度を計測した。
【0074】
凹部の深さ100μmの組立セル3組を用いて、上記と同様にして得られた粉体化粧料/(粉体化粧料+スクワラン)の値が0.615の混合ペーストを充填した。分光光度計を用いて400nmの吸光度を各組立セルに2点ずつ計測し、計6点の測定値を得た。なお、4点でも問題ないが、本方法で粉体化粧料を実測すると、どの程度のばらつきがあるのかを示すためにここでは6点のデータを示すこととした。実測値で示すと、吸光度の値として4.779588、4.715465、4.95402、4.692718、5.403312、4.901608となり、平均吸光度は、4.907785167、標準偏差が0.263589873、標準偏差/平均吸光度=5.4%であった。この平均吸光度は希釈されたもので計測しているため、希釈されていないと仮定して、平均吸光度の値を上記の混合割合で割ると7.980が得られる。
この値を用いて、先に得られていた計9点の吸光度を膜厚補正して得られた結果を表4に示す。
【0075】
【0076】
【0077】
表5及び表6を見ると、式1で求めたのSPF値が最も高い値を示したのは、親油型プレートであった。この製品のinvitro SPF値は5.4となり、同様に式2で求めたin vitro UVA-PF値は同プレートを用いて測定した23.5となる。この値を式3からin vivo SPF 相当値を求めると53.3となり、式4から求めたin vivo UVA-PF相当値は同様に11.0となる。ISO法の場合はそのままの値を用いることとされているので、in vitro SPF値は100.6、in vitro UVA-PF値は13.4となり、in vitro UVA-PFは共に製品表示値と一緒の範囲であったが、SPF値に関してはISO法でより大きな差が見られた。
【0078】
(実施例3)
市販のスティック型サンスクリーン剤を用いて測定を実施した。なお、市販製品のパッケージに記載のSPF値は50+、PA分類は++++(UVA-PFで16~32に相当)(PA分類に対応するinvivo UVA-PF値は24)であり、成分表示は以下となっていた。
Triethylhexanoin,Isononyl Isononanoate, Polymethylsilsesquioxane, Dimethicone, Nylon-12,Ethylhexyl Methoxycinnamate, Polyethylene, Synthetic Wax,Trimethylpentanediol/Adipic Acid/Glycerin Crosspolymer, ButylMethoxydibenzoylmethane, Dimethicone/Vinyl Dimethicone Crosspolymer, SucrosePolystearate, Polysilicone-15, Menthol, Alumina, Tocopherol, Water, ButyleneGlycol, Saxifraga Sarmentosa Extract, Geranium Robertianum Extract, VacciniumMyrtillus Leaf Extract, Cynara Scolymus (Artichoke) Leaf Extract, BHT,Fragrance
【0079】
前記の親油型湿分硬化性アクリル-系ポリイソシアネート 処理プレートと、ヒドロキシアルキルセルロース塗工プレートと、イヌリン塗工プレートを1枚ずつ用意した。12cm角の表面硬化処理ガラス板の上に画材用ヘラを用いてロの字型に化粧料をこすりつけた。化粧料の重量は0.600gであった。ロの字の中央にスクワランを2.400g滴下し、ヘラを用いて良く混合した。混合ペーストは食品用の使い捨てアルミカップに入れて、60℃で15分加熱した後、上記プレートに流し込んだ。これを3回繰り返して各基板の表面に混合ペーストが広げられた試料を得た。ついで、塗工工程1として上記実施例1と同じく、同様に500μmのステンレス製4方アプリケーターを用いて混合ペーストを平らにした。ついで塗工工程2として上記実施例1と同じく、すぐにウレタンスポンジを固定した回転装置を用いて260rpmで混合ペーストを12秒間引き延ばした。ついで塗工工程3として上記実施例1と同じく、前記のPEN被覆円筒型アプリケーターを用いて塗膜を作成し、分光光度計を用いて各プレートごとに3点ずつ吸光度を計測した。
【0080】
深さ100μmの組立セル2組を用いて、上記と同様にして得られた粉体化粧料/(粉体化粧料+スクワラン)の値が0.208の混合ペーストを充填した。なお、上記の測定で本化粧料には波長400nmにはほとんど吸収がないこと、波長360nmであれば十分な吸収があることが判ったため、測定波長を360nmに変更した。吸光度の実測値として、3.883449、3.774979、3.804809、3.645621の4点が得られ、平均吸光度は3.777215、標準偏差は0.098943、標準偏差/平均吸光度=2.6%であった。この平均吸光度は希釈されたもので計測しているため、希釈されていないと仮定して、平均吸光度の値を上記の混合割合で割ると18.2が得られる。この値を用いて、先に得られていた計9点の吸光度を膜厚補正して得られた結果を表5及び表6に示す。
【0081】
【0082】
【0083】
表5を見ると、0029段落基準のSPF値が最も高い値を示したのは、ヒドロキシアルキルセルロース塗工プレートであった。この製品のin vitro SPF値は約3.2となり、同様にin vitro UVA-PF値は同プレートを用いて測定した約12.0となる。この値を式3からin vivo SPF 相当値を求めると31.8となり、in vivo UVA-PF相当値は同様に式4から5.6となる。ISO法の場合はそのまの値を用いることとされているので、in vitro SPF値は19.5、in vitro UVA-PF値は3.5となり、製品表示値と比べて式3及び式4によれば、SPF値はやや小さい値となり、UVA-PF値は一致していたものの、ISO法基準では共にかなり小さな値となった。
【0084】
(比較例1、実施例4)
市販の圧力缶タイプのサンスクリーンスプレーを用いて測定を実施した。なお、市販製品のパッケージに記載のSPF値は100であり、成分表示は以下となっていた。
avobenzone(3%), homosalate (10%), octisalate (5%), octocrylene (10%), oxybenzone (6%)
alcoholdenat., isobutane, VA/butyl maleate/isobornyl acrylate copolymer, caprylylglycol, cyclopentasiloxane, cyclohexasiloxane, fragrance, polyglyceryl-3stearate/isostearate/dimer dilinoleate crosspolymer, lauryl PEG-8 dimethicone,phenylisopropyl dimethicone, ascorbyl palmitate, methyl dihydroabietate,tocopheryl acetate, mineral oil, panthenol, water, Aloe barbadensis leafextract.
【0085】
前記の親油型湿分硬化性アクリル-系ポリイソシアネート処理プレートと、ヒドロキシアルキルセルロース塗工プレートと、イヌリン塗工プレートを1枚ずつ用意した。唯一の塗工工程として、上からサンスクリーンをスプレーしてギャップが20μmのステンレス製4方アプリケーターを用いて5mm/sの速度でアプリケーターを走らせて塗膜を形成させた後、回転式膜厚計を用いて膜厚を計測しようとしたが、化粧料が透明であるため、膜厚測定ができなかった。
【0086】
そこで実施例1に準じて測定を実施したところ、ヒドロキシアルキルセルロース塗工プレートが選択され、in vitro SPF値は4.8となり、同様にin vitro UVA-PF値は同プレートを用いて測定した35.6となった。この値を式3によりin vivo SPF 相当値を求めると47.8となり、式4により求めたin vivo UVA-PF相当値は同様に16.7となった。本発明で使用する組立セルを用いる膜厚測定方法は、外観が透明なローションなどの化粧料や塗膜に凹凸が多く発生するような化粧料に大変適している。
【0087】
(比較例2、実施例5)
市販のサンスクリーン剤を用いて測定を実施した。なお、市販製品のパッケージに記載のSPF値は8であり、成分表示は以下となっていた。
Water,Alcohol, Phenylbenzimidazole Sulfonic Acid, Triethanolamine, Camellia SinensisLeaf Extract, Rosmarinus Officinalis (Rosemary) Leaf Extract, Coix Lacryma-JobiMa-yuen Seed Extract, Aloe Barbadensis Leaf Extract, Dipotassium Glycyrrhizate,PEG-12 Dimethicone, Dipropylene Glycol, PEG/PPG-30/10 Dimethicone, Dimethicone,Phenyl Trimethicone, Butylene Glycol, Potassium Hydroxide, Menthol, Fragrance
【0088】
前記の親油型アクリル-系ポリイソシアネート処理プレートと、ヒドロキシアルキルセルロース塗工プレートと、コロナ放電処理による超親水性プレートを1枚ずつ用意した。上からサンスクリーンを塗布し、塗工工程1として上記実施例1と同じく、ギャップ500μmのステンレス製4方アプリケーターを用いて化粧料を塗工した。ついで塗工工程2として上記実施例1と同じく、すぐにウレタンスポンジを固定した回転装置を用いて260rpmで12秒間引き延ばした。ついで塗工工程3としてすぐにギャップが20μmのステンレス製4方アプリケーターを用いて5mm/sの速度でアプリケーターを走らせて塗膜を形成させた後、回転式膜厚計を用いて膜厚を計測した。膜厚はプレート順に5,2,1μmとなった。ISO法での20μm厚相当時のSPF値は、それぞれ9、32、63であった。コロナ放電処理による超親水性プレートの処理状況は、ほとんどの化粧料がステンレス製アプリケーターにくっついており、一部の成分が相分離して塗膜を形成していた。また、ヒドロキシアルキルセルロース塗工プレートでも類似の状況が発生した。これは金属が親油性のため、サンスクリーン剤がたまたま金属との親和性が高い化粧料であった場合に、ギャップが狭いアプリケーターを走らせてもサンスクリーン剤が上下にうまく分割されずにほとんどが金属側に分配されてしまうことが原因と考えられた。
【0089】
そこで、実施例1と同様にして本製品の試験を実施したところ、PEN被覆円筒型アプリケーターではこのような問題は発生せず、均一な塗膜が形成でき、ポリエチレンナフタレートフィルムの効果が証明された。また、親水処理ポリエステルフィルム、親水化処理ポリエチレンテレフタレートフィルム、フッ化ポリビニリデンフィルム、一般的なフッ素樹脂フィルムでも試験してみたが、いずれも塗膜が生成され、フィルムの有効性が確認された。一方、表1に示すような他のフィルム状物について見てみると、いずれも塗膜の均一性に問題があったり、うまくアプリケーターが走らなかったり等の問題が発生した。
【0090】
以上の試験結果より、本発明の実施例は比較例の問題点を解決しており、幅広い化粧料化粧料に対応する測定方法として優れていることが判る。
【符号の説明】
【0091】
1:塗り拡げ装置
2:塗り拡げ部材
3:支持部
4:基板
5:過剰の化粧料
6:塗り拡げ部材先端
7:円筒型アプリケーター
8:支持部
9:塗り拡げ装置
B:台座
P:支持体
S:樹脂製スポンジ状塗工具
【要約】
【課題】既存の問題を解決した化粧料の紫外線透過比率の評価方法を得ること。
【解決手段】化粧料の紫外線防御性能の評価のための測定用試料の調製工程を有し、その調製工程が、紫外線透過度測定用透明基板表面に対し、表面が油の付着防止性を有する材料層で形成されたアプリケーターにより均一な化粧料塗布層を形成する方法を有する工程である、化粧料の紫外線防御性能の評価方法。
【選択図】
図1