(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】柱状部材の包囲装置および柱状部材の包囲装置の設置方法
(51)【国際特許分類】
B05B 12/32 20180101AFI20241010BHJP
H02G 1/02 20060101ALI20241010BHJP
B60M 1/12 20060101ALN20241010BHJP
【FI】
B05B12/32
H02G1/02
B60M1/12 D
(21)【出願番号】P 2020180106
(22)【出願日】2020-10-28
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】510330541
【氏名又は名称】株式会社牛越製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【氏名又は名称】小平 晋
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝年
(72)【発明者】
【氏名】牛越 弘彰
【審査官】當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-231563(JP,A)
【文献】特開2017-170415(JP,A)
【文献】特開2014-100710(JP,A)
【文献】特開平07-213959(JP,A)
【文献】特開平09-221913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 12/32
H02G 1/02
B60M 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状に形成される柱状部材の周囲を囲むための柱状部材の包囲装置であって、
前記柱状部材の周囲を囲むように前記柱状部材の周方向に配列されるとともに内部に充填される気体によって膨らんでいる中空状かつ柱状の複数の中空柱部と、前記中空柱部の内部に気体を供給する気体供給機構とを備え
、
複数の前記中空柱部のそれぞれは、互いに分離しており、
前記気体供給機構は、複数の前記中空柱部のそれぞれの内部に設置され、前記中空柱部の下端部から前記中空柱部の内部に気体を供給することを特徴とする柱状部材の包囲装置。
【請求項2】
前記柱状部材と前記中空柱部との間に配置されるとともに前記中空柱部に取り付けられるシートを備えることを特徴とする請求項
1記載の柱状部材の包囲装置。
【請求項3】
前記柱状部材の表面にスプレー塗装する際に使用され、
複数の前記中空柱部は、前記柱状部材の周囲を囲むことで前記柱状部材の表面にスプレー塗装する際に霧状の塗料が周囲に飛散するのを防止することを特徴とする請求項1
または2記載の柱状部材の包囲装置。
【請求項4】
請求項
1から3のいずれかに記載の柱状部材の包囲装置の設置方法であって、
内部から気体が抜かれた状態の複数の前記中空柱部を、前記柱状部材の根本を囲むように配置する中空柱部配置工程と、その後、前記気体供給機構によって前記中空柱部の下端部から前記中空柱部の内部に気体を供給して複数の前記中空柱部を立ち上げる中空柱部立上工程とを備えることを特徴とする柱状部材の包囲装置の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架線柱等の柱状に形成される柱状部材の周囲を囲むための柱状部材の包囲装置に関する。また、本発明は、この柱状部材の包囲装置の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道用の架線柱が広く利用されている。鉄道用の架線柱として、たとえば、複数の山型鋼等の鋼材によって形成される架線柱が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1では、一対の架線柱が線路を挟んだ状態で設置されている。一対の架線柱の上端部は、架線を吊るすための架線梁(横梁)によって繋がれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の鋼材や鋼管によって形成される架線柱の場合、架線柱の腐食等を防止するために、定期的に架線柱の表面の塗料を塗り替える必要がある。従来、架線柱の塗料の塗り替え時には、作業者が手作業で架線柱に塗料を塗っている。手作業での塗料の塗布は手間がかかる大変な作業であるため、本願発明者は、ノズルから霧状の塗料を噴射して自動で架線柱に塗料を塗布することを検討している。
【0005】
しかしながら、架線柱に塗料を塗布するときに、風が吹いていると、ノズルから噴霧された霧状の塗料が風の影響で想定外の方向に流されて、架線柱に目論見通りに塗料を塗布できなくなるおそれがある。また、架線柱に塗料を塗布するときに、ノズルから噴射された霧状の塗料が飛散して、架線柱の周囲を汚すおそれがある。架線柱に塗料を塗布するときの風の影響を低減するとともに塗料の飛散を抑制するため、本願発明者は、架線柱に塗料を塗布するときに、架線柱の周囲を囲む包囲装置を設置することを検討している。この場合、架線柱への塗料の塗布作業の全体時間を短縮するため、包囲装置は、容易に設置できるとともに容易に撤去できることが好ましい。
【0006】
そこで、本発明の課題は、架線柱のように柱状に形成される柱状部材の周囲を囲むための柱状部材の包囲装置において、容易に設置すること、および、容易に撤去することが可能な柱状部材の包囲装置を提供することにある。また、本発明の課題は、この柱状部材の包囲装置の設置方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の柱状部材の包囲装置は、柱状に形成される柱状部材の周囲を囲むための柱状部材の包囲装置であって、柱状部材の周囲を囲むように柱状部材の周方向に配列されるとともに内部に充填される気体によって膨らんでいる中空状かつ柱状の複数の中空柱部と、中空柱部の内部に気体を供給する気体供給機構とを備え、複数の中空柱部のそれぞれは、互いに分離しており、気体供給機構は、複数の中空柱部のそれぞれの内部に設置され、中空柱部の下端部から中空柱部の内部に気体を供給することを特徴とする。
【0008】
本発明の柱状部材の包囲装置では、内部に充填される気体によって膨らんでいる中空状かつ柱状の複数の中空柱部が、柱状部材の周囲を囲むように柱状部材の周方向に配列されている。そのため、本発明では、気体が抜かれたコンパクトな状態の複数の中空柱部を、柱状部材が設置されている現場に持ち込んでから、気体供給機構によって中空柱部の内部に気体を供給することで、柱状部材の包囲装置を設置することが可能になる。したがって、本発明では、柱状部材の包囲装置を容易に設置することが可能になる。
【0009】
また、本発明では、柱状部材の周囲を囲むように設置されている中空柱部の内部から気体を抜くだけで、中空柱部をコンパクトな状態にすることが可能になるとともに、コンパクトな状態の複数の中空柱部を、柱状部材が設置されている現場から持ち去ることが可能になる。したがって、本発明では、柱状部材の包囲装置を容易に撤去することが可能になる。また、本発明では、柱状の複数の中空柱部によって柱状部材の周囲が囲まれているため、たとえば、特許文献1に記載の架線柱のように、架線柱の上端部に架線梁が繋がっていても、柱状部材の包囲装置を容易に設置することが可能になる。
【0010】
また、本発明では、複数の中空柱部のそれぞれは、互いに分離しており、気体供給機構は、中空柱部の下端部から中空柱部の内部に気体を供給する。そのため、たとえば、柱状部材を補強するための補強用の支線が柱状部材に繋がっている場合であっても、周方向で隣接する中空柱部の間で支線を通すことが可能になり、その結果、柱状部材の周囲を囲むように複数の中空柱部を配置することが可能になる。また、たとえば、柱状部材を利用して電線が引き回されている場合であっても、周方向で隣接する中空柱部の間で電線を通すことが可能になり、その結果、柱状部材の周囲を囲むように複数の中空柱部を配置することが可能になる。
【0011】
本発明において、たとえば、柱状部材の包囲装置は、内部から気体が抜かれた状態の複数の中空柱部を、柱状部材の根本を囲むように配置する中空柱部配置工程と、その後、気体供給機構によって中空柱部の下端部から中空柱部の内部に気体を供給して複数の中空柱部を立ち上げる中空柱部立上工程とを備える柱状部材の包囲装置の設置方法によって設置される。この場合には、内部から気体が抜かれたコンパクトな状態の複数の中空柱部を柱状部材の根本に配置した後、気体供給機構によって中空柱部の内部に気体を供給して中空柱部を立ち上げることで、柱状部材の包囲装置を設置することが可能になるため、柱状部材の包囲装置をより容易に設置することが可能になる。
【0012】
本発明において、柱状部材の包囲装置は、柱状部材と中空柱部との間に配置されるとともに中空柱部に取り付けられるシートを備えることが好ましい。このように構成すると、たとえば、複数の中空柱部に囲まれている柱状部材に塗料を塗布する場合、シートに塗料が付着しても、中空柱部等に塗料が付着するのを防止することが可能になる。したがって、柱状部材の包囲装置の構成部品が塗料の付着に伴って汚れても、シートのみ交換すれば良くなり、その結果、柱状部材の包囲装置のメンテナンスが容易になる。
【0013】
本発明において、たとえば、柱状部材の包囲装置は、柱状部材の表面にスプレー塗装する際に使用され、複数の中空柱部は、柱状部材の周囲を囲むことで柱状部材の表面にスプレー塗装する際に霧状の塗料が周囲に飛散するのを防止する。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明では、柱状部材の周囲を囲むための柱状部材の包囲装置を容易に設置することが可能になるとともに、容易に撤去することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態にかかる柱状部材の包囲装置によって囲まれる柱状部材の構成を説明するための正面図である。
【
図2】(A)は、本発明の実施の形態にかかる柱状部材の包囲装置の正面図であり、(B)は、(A)に示す中空柱部の内部構造を示す断面図である。
【
図4】本発明の他の実施の形態にかかる柱状部材の包囲装置の構成を説明するための図である。
【
図5】本発明の他の実施の形態にかかる中空柱部の断面図である。
【
図6】本発明の他の実施の形態にかかる中空柱部の構成を説明するための図である。
【
図7】参考形態にかかる柱状部材の包囲装置の構成を説明するための図である。
【
図8】参考形態にかかる架線梁の包囲装置等の構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0017】
(柱状部材の包囲装置の構成および設置方法)
図1は、本発明の実施の形態にかかる柱状部材の包囲装置1によって囲まれる柱状部材2の構成を説明するための正面図である。
図2(A)は、本発明の実施の形態にかかる柱状部材の包囲装置1の正面図であり、
図2(B)は、
図2(A)に示す中空柱部7の内部構造を示す断面図である。
図3は、
図2(A)のE-E断面の断面図である。
【0018】
本形態の柱状部材の包囲装置1(以下、「包囲装置1」とする。)は、柱状に形成される柱状部材2の周囲を囲むための装置である。柱状部材2は、屋外に設置されている。また、本形態の柱状部材2は、鉄道用の架線柱である。したがって、以下では、柱状部材2を「架線柱2」とする。包囲装置1は、図示を省略するノズルから霧状の塗料を噴射して自動で架線柱2に塗料を塗布する際に使用される。すなわち、包囲装置1は、架線柱2の表面にスプレー塗装する際に使用される。
【0019】
架線柱2は、複数の山型鋼等の鋼材によって形成されている。架線柱2は、四角柱状に形成されている。架線柱2は、たとえば、線路を挟むように線路の両側に設置されており、線路の両側に設置される架線柱2の上端部は、架線を吊るすための架線梁3によって繋がれている。架線柱2には、支線4が繋がっている。たとえば、架線柱2には、3本の支線4が繋がっている(
図3参照)。なお、架線柱2は、鋼管によって形成されていても良い。架線柱2が鋼管によって形成される場合には、架線柱2は、たとえば、円柱状に形成されている。
【0020】
包囲装置1は、内部に充填される気体によって膨らんでいる中空状かつ柱状の複数の中空柱部7を備えている。本形態の包囲装置1は、たとえば、8本の中空柱部7を備えている。8本の中空柱部7は互いに繋がっておらず、8本の中空柱部7のそれぞれは互いに分離している。また、本形態の中空柱部7は、内部に充填される空気によって膨らんでいる。中空柱部7は、上下方向に細長い円柱状に形成されている。中空柱部7は、上下方向に細長い円筒状の円筒部7aと、円筒部7aの上端を塞ぐ円板状の天面部7bと、円筒部7aの下端を塞ぐ円板状の底面部7cとによって構成されている。中空柱部7は、比較的耐久性の高い軟質の樹脂で形成されている。たとえば、中空柱部7は、ナイロンで形成されている。なお、中空柱部7は、比較的耐久性の高い布等で形成されていても良い。
【0021】
また、包囲装置1は、中空柱部7の下端が固定されるとともに地面に設置されるベース部材8と、中空柱部7の内部に空気を供給する気体供給機構としての送風機(ファン)9とを備えている。包囲装置1は、8個のベース部材8を備えており、8本の中空柱部7のそれぞれの下端がベース部材8に固定されている。また、包囲装置1は、8個の送風機9を備えており、送風機9は、8個の中空柱部7のそれぞれの内部に設置されている。具体的には、送風機9は、底面部7cの上側に設置されており、上側に向かって空気を送り込む。すなわち、送風機9は、中空柱部7の下端部から中空柱部7の内部に気体を供給する。底面部7cおよびベース部材8には、送風機9によって中空柱部7の内部に送り込まれる空気が通過する空気の通過口が形成されている。送風機9は、包囲装置1の使用時に、膨らんだ状態の中空柱部7の形状が維持できるように、中空柱部7の内部に空気を送り込む。たとえば、送風機9は、包囲装置1の使用時に、中空柱部7の内部に常時、空気を送り込む。
【0022】
図3に示すように、8本の中空柱部7は、架線柱2の周囲を囲むように架線柱2の周方向に配列されている。架線柱2の周方向で隣接する2本の中空柱部7は互いに接触している。8本の中空柱部7は、架線柱2の周囲を囲むことで架線柱2の表面にスプレー塗装する際に霧状の塗料が周囲に飛散するのを防止する。また、8本の中空柱部7は、架線柱2の周囲を囲むことで架線柱2の表面にスプレー塗装する際の風の影響を低減させる。8本の中空柱部7と架線柱2との間には空間(隙間)が形成されており、架線柱2に塗料を塗布する際には、ノズルから噴射された霧状の塗料の対流がこの空間内で発生する。
【0023】
包囲装置1を設置するときには、内部から空気が抜かれたコンパクトな状態の中空柱部7であって、内部に送風機9が配置されるとともにベース部材8に固定されている中空柱部7を、架線柱2が設置されている現場に持ち込んで、空気が抜かれた状態(すなわち、内部に空気が充填されていない状態)の8個の中空柱部7を架線柱2の根本を囲むように配置する(中空柱部配置工程)。その後、送風機9によって中空柱部7の下端部から中空柱部7の内部に空気を供給して8個の中空柱部7を立ち上げる(中空柱部立上工程)。
【0024】
なお、包囲装置1は、接触している中空柱部7同士が離れないように、8本の中空柱部7の内周側で8本の中空柱部7を繋ぐ連結部材11を備えていても良い(
図4(A)参照)。たとえば、連結部材11は、平板状に形成されており、4本の中空柱部7が繋がれる2個の連結部材11同士が繋がれることで、8本の中空柱部7が連結部材11を介して繋がれている。また、たとえば、風が強く吹いている環境下で包囲装置1が使用される場合には、風の影響による中空柱部7の変形を防止するため、中空柱部7の上端部にワイヤーの一端部を繋ぐとともに、ワイヤーの他端部を架線柱2の上端部に固定しても良い。この場合には、たとえば、ドローン(無人航空機)を使用して、ワイヤーの他端部を架線柱2の上端部に固定しても良い。
【0025】
また、本形態では、架線梁3と中空柱部7とが干渉しないように、架線梁3の下側に配置される中空柱部7の高さが、架線梁3の下側に配置されない中空柱部7の高さよりも低くなっている(
図2(A)参照)。具体的には、架線梁3の下側に配置される中空柱部7の円筒部7aの長さが、架線梁3の下側に配置されない中空柱部7の円筒部7aの長さよりも短くなっているが、架線梁3の下側に配置される中空柱部7の円筒部7aの長さと、架線梁3の下側に配置されない中空柱部7の円筒部7aの長さとが等しくなっていても良い。この場合には、架線梁3の下側に配置される中空柱部7の上端部に空気が入り込まないように円筒部7aの上端部をワイヤー(または紐)12で縛って(
図4(B)参照)、円筒部7aの上端部を
図4(B)の矢印の方向に折り曲げることで、架線梁3の下側に配置される中空柱部7の高さを、架線梁3の下側に配置されない中空柱部7の高さよりも低くすれば良い。
【0026】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の包囲装置1では、内部に充填される空気によって膨らんでいる8本の中空柱部7が架線柱2の周囲を囲むように架線柱2の周方向に配列されている。また、本形態では、内部から空気が抜かれたコンパクトな状態の中空柱部7を架線柱2が設置されている現場に持ち込んで、空気が抜かれた状態の8個の中空柱部7を架線柱2の根本を囲むように配置した後、送風機9によって中空柱部7の内部に空気を供給して8個の中空柱部7を立ち上げることで、包囲装置1が設置されている。そのため、本形態では、包囲装置1を容易に設置することが可能になる。
【0027】
また、本形態では、架線柱2の周囲を囲むように設置されている中空柱部7の内部から空気を抜くだけで、中空柱部7をコンパクトな状態にすることが可能になるとともに、コンパクトな状態の中空柱部7を、架線柱2が設置されている現場から持ち去ることが可能になる。そのため、本形態では、包囲装置1を容易に撤去することが可能になる。また、本形態では、8個の中空柱部7によって架線柱2の周囲が囲まれているため、架線柱2の上端部に架線梁3が繋がっていても、包囲装置1を容易に設置することが可能になる。
【0028】
本形態では、8本の中空柱部7のそれぞれは、互いに分離している。そのため、本形態では、架線柱2に支線4が繋がっていても、
図3に示すように、周方向で隣接する中空柱部7の間で支線4を通すことが可能になり、その結果、架線柱2の周囲を囲むように8本の中空柱部7を配置することが可能になる。また、8本の中空柱部7のそれぞれが互いに分離しているため、たとえば、架線柱2を利用して電線が引き回されていても、周方向で隣接する中空柱部7の間で電線を通すことが可能になり、その結果、架線柱2の周囲を囲むように8本の中空柱部7を配置することが可能になる。
【0029】
(他の実施の形態)
上述した形態において、包囲装置1は、
図2(B)および
図3の二点鎖線で示すように、架線柱2と中空柱部7との間に配置されるシート14を備えていても良い。シート14は、比較的安価な樹脂シートであり、たとえば、ポリエチレン等で形成されている。シート14は、中空柱部7に取り付けられている。この場合には、架線柱2に塗料を塗布する際にシート14に塗料が付着しても、中空柱部7に塗料が付着するのを防止することが可能になる。したがって、包囲装置1の構成部品が塗料の付着に伴って汚れても、シート14のみ交換すれば良くなり、その結果、包囲装置1のメンテナンスが容易になる。
【0030】
上述した形態において、架線柱2の周囲を囲むことができるのであれば、中空柱部7は、円柱状以外の柱状に形成されていても良い。たとえば、中空柱部7は、楕円柱状または多角柱状に形成されていても良いし、円錐状または円錐台状に形成されていても良い。中空柱部7が円錐状に形成されている場合には、中空柱部7は、エアレースで使用されるパイロン(エアパイロン)であっても良い。
【0031】
上述した形態において、包囲装置1が備える中空柱部7の数は、9本以上であっても良い。また、架線柱2の周囲を囲むことができるのであれば、包囲装置1が備える中空柱部7の数は、7本以下の複数本であっても良い。たとえば、包囲装置1が備える中空柱部7の数が4本である場合には、中空柱部7の横断面形状が、
図5(A)または
図5(B)に示すような形状(略三角形状)となっていて、4本の中空柱部7が、
図5(A)または
図5(B)に示すように配置されていても良い。また、たとえば、包囲装置1が備える中空柱部7の数が2本である場合には、中空柱部7の横断面形状が、
図5(C)に示すような形状(L形状)となっていて、2本の中空柱部7が、
図5(C)に示すように配置されていても良い。
【0032】
上述した形態において、送風機9は、中空柱部7の外部に設置されていても良い。この場合には、たとえば、中空柱部7と送風機9とが配管を介して繋がっている。また、この場合には、1台の送風機9によって、複数の中空柱部7の内部に空気が供給されても良い。また、送風機9に代えて、気体供給機構としての圧縮機(コンプレッサー)が中空柱部7の外部に設置されていても良い。また、上述した形態において、架線柱2の周方向で隣接する2本の中空柱部7の間に若干の隙間が形成されていても良い。この場合であっても、架線柱2に塗料を塗布する際に、風の影響を低減することが可能になるとともに、塗料の飛散を低減することが可能になる。
【0033】
上述した形態において、
図6に示すように、8本の中空柱部7が繋がっていて、繋がっている8本の中空柱部7を、架線柱2に巻き付けるように設置しても良い。この場合には、8本の中空柱部7は、たとえば、ポリエチレン等の樹脂製の2枚のシートを所定箇所で溶着することで形成されている。また、この場合には、内部から空気が抜かれた状態の8本の中空柱部7(
図6(B)参照)を、架線柱2が設置されている現場に持ち込んで、8本の中空柱部7の内部に空気を充填した後、架線柱2に巻き付けるように8本の中空柱部7を設置する。
【0034】
上述した形態において、加熱した空気が中空柱部7に充填されていても良い。また、中空柱部7の内部に空気以外の気体が充填されていても良い。また、上述した形態において、中空柱部7は、耐久性が高くない樹脂や布等で形成されていても良い。さらに、上述した形態において、架線柱2に支線4が繋がっていなくても良いし、架線柱2の上端部に架線梁3が繋がっていなくても良い。また、架線柱2は、鉄筋コンクリートで形成されていても良い。
【0035】
上述した形態において、包囲装置1は、架線柱2以外の柱状部材を囲むために使用されても良い。たとえば、包囲装置1は、屋外に設置される橋脚、ビルまたは樹木等を囲むために使用されても良い。また、包囲装置1は、屋内に設置される柱状部材を囲むために使用されても良い。また、包囲装置1は、柱状部材への塗料の塗布作業以外の作業時に使用されても良い。たとえば、包囲装置1は、柱状部材の消毒作業時に、消毒液の飛散を防止等するために使用されても良い。
【0036】
(参考形態)
上述した包囲装置1に代えて、
図7に示すように、四角溝状に形成される複数の溝状部材17を備える包囲装置21を使用して、架線柱2の周囲を囲むことも可能である。溝状部材17は、たとえば、発泡スチロールで形成されている。溝状部材17の長さは、1~2m程度である。この場合には、まず、架線柱2の下端部において、2個の溝状部材17を組み合わせてテープ18等によって繋ぎ、架線柱2の下端部の全周を2個の溝状部材17で囲む。その後、繋いだ2個の溝状部材17を架線柱2に沿って上側に移動させてから、架線柱2の下端部において、別の2個の溝状部材17を繋いで、架線柱2の下端部の全周をこの2個の溝状部材17で囲む。また、この作業を繰り返すことで、複数の溝状部材17によって架線柱2の周囲を囲む。なお、上下方向で重なる溝状部材17もテープ18等によって繋がれている。
【0037】
上述した形態において、架線梁3に自動で塗料を塗布する場合には、架線梁3を囲む包囲装置31を使用しても良い(
図8(A)参照)。この場合には、包囲装置31は、内部に充填される気体によって膨らんでいる中空状の中空立体部37を備えており、架線梁3は、中空立体部37の上端部によって囲まれている。中空立体部37の下端は、地面に設置されるベース部材38に固定され、中空立体部37の内部には、中空立体部37の内部に空気を供給する送風機9が設置されている。また、架線梁3に自動で塗料を塗布する場合には、
図8(B)に示すように、架線梁3の両側に架線梁3に沿って複数の中空柱部7を設置するとともに、架線梁3の下面および側面を覆うように、複数の中空柱部7を利用してシート40を設置しても良い。
【符号の説明】
【0038】
1 包囲装置(柱状部材の包囲装置)
2 架線柱(柱状部材)
7 中空柱部
9 送風機(気体供給機構)
14 シート