(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】廃棄物の処理プラント
(51)【国際特許分類】
B09B 5/00 20060101AFI20241010BHJP
C05F 7/00 20060101ALI20241010BHJP
C05F 9/02 20060101ALI20241010BHJP
C10L 5/46 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
B09B5/00 M ZAB
C05F7/00 301
C05F9/02
C10L5/46
(21)【出願番号】P 2020556342
(86)(22)【出願日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 JP2019048756
(87)【国際公開番号】W WO2021117195
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2020-10-26
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】507394639
【氏名又は名称】株式会社サムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪田 勇
(72)【発明者】
【氏名】岡野 公美
(72)【発明者】
【氏名】鴨沢 卓郎
(72)【発明者】
【氏名】阪田 乾仁
(72)【発明者】
【氏名】阪田 光子
(72)【発明者】
【氏名】山田 稔
(72)【発明者】
【氏名】並木 広光
(72)【発明者】
【氏名】山口 森也
【合議体】
【審判長】関根 裕
【審判官】長谷川 真一
【審判官】瀬下 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-177359(JP,A)
【文献】特開平7-24437(JP,A)
【文献】特開2018-89579(JP,A)
【文献】特開平10-277527(JP,A)
【文献】特表2015-514955(JP,A)
【文献】特開2002-316129(JP,A)
【文献】国際公開第2018/060827(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B1/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を同一の敷地内において処理しリサイクル資源を回収する廃棄物の処理プラントであって、
前記敷地内に搬入された廃棄物を貯蔵・保管した後に該廃棄物を殺菌処理するとともに廃棄物を構成する複数の素材に分解処理する
廃棄物処理建屋が設けられた廃棄物処理ゾーンと、
前記廃棄物処理ゾーンで殺菌処理され分解処理された廃棄物を構成する複数の素材をリサイクルして製品を製造する
製品製造建屋が設けられた製品製造ゾーンと、
前記廃棄物処理ゾーンと前記製品製造ゾーンとを区画する区画ゾーンと、が前記敷地内に設けられ、
前記廃棄物処理ゾーンには、
廃棄物が前記敷地内に搬入される廃棄物搬入エリアと、
前記廃棄物処理建屋内に設けられ、前記廃棄物搬入エリアから廃棄物処理建屋内に搬入された前記廃棄物を貯蔵・保管する廃棄物貯蔵エリアと、
前記廃棄物処理建屋内に設けられ、前記廃棄物貯蔵エリアに貯蔵・保管された前記廃棄物を、該廃棄物を構成する複数の素材に分解処理してリサイクル資源を回収する処理・回収エリアと、
が設けられ、
前記処理・回収エリアには、廃棄物を該廃棄物を構成する複数の素材に分解処理する分離機と、前記分離機によって、分解処理された素材を選別する選別機と、前記分離機、前記選別機によって選別された素材をリサイクル資源として回収する回収装置と、前記回収装置によって回収されたリサイクル資源をストックするリサイクル資源ストックヤードと、が設けられて
おり、
前記区画ゾーンは、前記廃棄物処理建屋と前記製品製造建屋との間に設けられていることを特徴とする廃棄物の処理プラント。
【請求項2】
前記製品製造ゾーンは、前記リサイクル資源のうちパルプから段ボール原料を製造する段ボール原料製造装置と、前記リサイクル資源のうち排液から液肥を製造する液肥製造装置と、排液中の固形成分から肥料を製造する肥料製造装置と、排液中の固形成分からバイオマス燃料を製造するバイオマス燃料製造装置と、前記リサイクル資源のうちパルプとプラスチックから固形燃料を製造する固形燃料製造装置と、が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の廃棄物の処理プラント。
【請求項3】
前記製品製造ゾーンには、前記段ボール原料製造装置により製造された段ボール原料、前記液肥製造装置により製造された液肥、前記肥料製造装置により製造された肥料、前記固形燃料製造装置により製造された固形燃料をストックする製品ストックヤードと、この製品ストックヤードにストックされた前記段ボール原料、前記液肥、前記肥料、前記固形燃料を出庫する出庫室と、が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の廃棄物の処理プラント。
【請求項4】
前記敷地には、収集先から回収された廃棄物が積載された回収車が前記敷地内に入る搬入口と、前記製品製造ゾーンでリサイクルされた製品を前記敷地から出す搬出口と、が設けられ、該敷地と敷地の外周との間には緑地帯が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の廃棄物の処理プラント。
【請求項5】
前記敷地内には、前記廃棄物処理ゾーン側に廃棄物の処理プラントを管理する管理棟が設けられ、前記製品製造ゾーン側に排水処理施設が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の廃棄物の処理プラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物を同一敷地内において処理しリサイクル資源を回収する廃棄物の処理プラントに関し、特に廃棄物として使用済み紙おむつ等の使用済み衛生用品を処理するのに好適な廃棄物の処理プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理施設、食品工場、大型店舗、ホテル、レストラン等で生じる各種廃棄物を、同一建屋に設置した各種装置によりリサイクル処理する廃棄物処理プラントが特許文献1で開示されている。同文献1で開示された廃棄物処理プラントは、廃棄物を車両で搬入することが可能な搬入エリアと、廃棄物をリサイクル可能に処理する処理エリアと、リサイクル処理された廃棄物の生成物を搬出する搬出エリアとが同一の建屋内に配置されている。また、同文献1の廃棄物処理プラントでは、リサイクル処理に伴って発生する臭気を除去して建屋の外に放出する脱臭手段が設けられている。
【0003】
この廃棄物処理プラントによれば、同一場所、同一建屋においてリサイクル処理を可能とすることができ、廃棄物の保管及びリサイクル処理によって発生する臭気を建屋外に漏れるのを防止でき、環境に優しい廃棄物処理プラントが実現できる。
【0004】
ところで、近年使い捨てのおむつとしての紙製のおむつや、尿取りパッドが使用されており、これらの紙おむつや尿取りパッド等の衛生用品を使用した後の使用済み衛生用品は、下水処理施設、食品工場、大型店舗、ホテル、レストラン等で生じる各種廃棄物と一緒に収集されて一般廃棄物として処理されている。
【0005】
このような使用済み衛生用品を上述した引用文献1の廃棄物処理プラントで処理する場合、同一場所、同一建屋においてリサイクル処理を可能とすることができ、廃棄物の保管及びリサイクル処理によって発生する臭気を建屋外に漏れるのを防止でき、環境に優しく廃棄物を処理することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、廃棄物である例えば使用済み衛生用品には、一般細菌や芽胞菌が付着している場合があり、上記した一般廃棄物の処理プラントでは、処理中の臭気が建屋外に漏れるのを防止することはできても、建屋の壁面や建屋内の空気には、一般細菌や芽胞菌が付着、浮遊している。このため、上記した処理プラントにおいて処理されて回収されたリサイクル製品(例えばパルプやプラスチック)に一般細菌や芽胞菌が付着してしまうおそれがある。
そこで、本発明は、使用済み衛生用品等の廃棄物を同一敷地内において処理しリサイクル資源を回収しても、処理プラント内に細菌類が付着、浮遊することがなく、リサイクル製品にも細菌類が付着することのない廃棄物の処理プラントの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の廃棄物の処理プラントの第1の態様は、廃棄物を同一の敷地内において処理しリサイクル資源を回収する廃棄物の処理プラントであって、前記敷地内に搬入された廃棄物を貯蔵・保管した後に該廃棄物を殺菌処理するとともに廃棄物を構成する複数の素材に分解処理する廃棄物処理建屋が設けられた廃棄物処理ゾーンと、前記廃棄物処理ゾーンで殺菌処理され分解処理された廃棄物を構成する複数の素材をリサイクルして製品を製造する製品製造建屋が設けられた製品製造ゾーンと、前記廃棄物処理ゾーンと前記製品製造ゾーンとを区画する区画ゾーンと、が前記敷地内に設けられ、前記廃棄物処理ゾーンには、廃棄物が前記敷地内に搬入される廃棄物搬入エリアと、前記廃棄物処理建屋内に設けられ、前記廃棄物搬入エリアから廃棄物処理建屋内に搬入された前記廃棄物を貯蔵・保管する廃棄物貯蔵エリアと、前記廃棄物処理建屋内に設けられ、前記廃棄物貯蔵エリアに貯蔵・保管された前記廃棄物を、該廃棄物を構成する複数の素材に分解処理してリサイクル資源を回収する処理・回収エリアと、が設けられ、前記処理・回収エリアには、廃棄物を該廃棄物を構成する複数の素材に分解処理する分離機と、前記分離機によって、分解処理された素材を選別する選別機と、前記分離機、前記選別機によって選別された素材をリサイクル資源として回収する回収装置と、前記回収装置によって回収されたリサイクル資源をストックするリサイクル資源ストックヤードと、が設けられており、前記区画ゾーンは、前記廃棄物処理建屋と前記製品製造建屋との間に設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明の廃棄物の処理プラントの第2の態様は、前記製品製造ゾーンは、前記リサイクル資源のうちパルプから段ボール原料を製造する段ボール原料製造装置と、前記リサイクル資源のうち排液から液肥を製造する液肥製造装置と、排液中の固形成分から肥料を製造する肥料製造装置と、排液中の固形成分からバイオマス燃料を製造するバイオマス燃料製造装置と、前記リサイクル資源のうちパルプとプラスチックから固形燃料を製造する固形燃料製造装置と、が設けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明の廃棄物の処理プラントの第3の態様は、前記製品製造ゾーンには、前記段ボール原料製造装置により製造された段ボール原料、前記液肥製造装置により製造された液肥、前記肥料製造装置により製造された肥料、前記固形燃料製造装置により製造された固形燃料をストックする製品ストックヤードと、この製品ストックヤードにストックされた前記段ボール原料、前記液肥、前記肥料、前記固形燃料を出庫する製品出庫室と、が設けられていることを特徴とする。
【0013】
本発明の廃棄物の処理プラントの第4の態様は、前記敷地には、収集先から回収された廃棄物が積載された回収車が前記敷地内に入る搬入口と、前記製品製造ゾーンでリサイクルされた製品を前記敷地から出す搬出口と、が設けられ、該敷地と敷地の外周との間には緑地帯が設けられていることを特徴とする。
【0014】
本発明の廃棄物の処理プラントの第5の態様は、前記敷地内には、前記廃棄物処理ゾーン側に廃棄物の処理プラントを管理する管理棟が設けられ、前記製品製造ゾーン側に排水処理施設が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、廃棄物が廃棄物処理ゾーンにて殺菌処理され、複数の素材に分解処理されるので、回収されたリサイクル資源に細菌類が付着していることがない。また、細菌類が付着していないリサイクル資源が製品製造ゾーンでリサイクル製品に製造されるのでリサイクル資源によって製造されたリサイクル製品に細菌類が存在することがない。さらに、廃棄物処理ゾーンと製品製造ゾーンとの間には、これらのゾーンを区画する区画ゾーンが設けられているので、廃棄物処理ゾーンに万が一細菌類が付着・浮遊していても、区画ゾーンによって遮断されるので製品製造ゾーンに細菌類が移ることがない。したがって、廃棄物を同一敷地内において処理しリサイクル資源を回収しても、細菌類が付着、浮遊することがなく、リサイクル資源にも細菌類が付着することがないので、リサイクル資源から製造した製品にも細菌類が存在することがない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る廃棄物の処理プラントを示す平面図。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態に係る廃棄物の処理プラントに設けられた廃棄物のリサイクルシステムを示す説明図。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態に係る廃棄物の処理プラントの廃棄物処理ゾーンと区画ゾーンを示す平面図。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態に係る廃棄物の処理プラントの製品製造ゾーンと区画ゾーンを示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係る廃棄物の処理プラント(以下「処理プラント」という)について図面を用いて説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0018】
本実施の形態に係る処理プラントは、使用済み衛生用品のリサイクルシステムが導入され、廃棄物である使用済み衛生用品を同一敷地内において処理し、リサイクル資源としてパルプ、プラスチック、排液、その他を回収し、回収したリサイクル資源から段ボール原料、固形燃料、液肥、肥料、バイオマス燃料を製造する。
【0019】
初めに使用済み衛生用品のリサイクルシステム1について説明し、次にこの使用済み衛生用品のリサイクルシステムが導入された処理プラント2について説明する。以下、使用済み衛生用品が、使用済み衛生用品を構成する複数の素材ごとに分解処理され、分解処理された素材がリサイクル資源として製品となる手順に従って使用済み衛生用品のリサイクルシステムについて説明する。
【0020】
[使用済み衛生用品のリサイクルシステム]
使用済み衛生用品のリサイクルシステム(以下「リサイクルシステム」という)1は、一般社会で使用された使用済み衛生用品を回収し、回収した使用済み衛生用品を使用済み衛生用品の処理装置3によって使用済み衛生用品を構成する素材ごとに分離し、分離した素材としてパルプ、プラスチック、その他、排液をリサイクル資源として回収するシステムである。
【0021】
図2に示すように、収集先4である病院、老人ホーム、介護施設、一般家庭、保育所等から分別・収集された使用済み紙おむつ等の使用済み衛生用品を使用済み衛生用品の回収具5によって回収し、保管場所6に保管する。保管場所6に保管された使用済み紙おむつは使用済み衛生用品の処理装置3に送られて処理される。使用済み衛生用品の回収具5は、具体的には複数個の使用済み衛生用品を収納する収納袋と、この収納袋を搬送するための搬送用のラックからなる。収納袋に収納され、複数個の収納袋をラック
、カゴ台車で運ぶことによって使用済み衛生用品は使用済み衛生用品の処理装置3へと搬送される。
【0022】
使用済み衛生用品の処理装置3は、使用済み衛生用品として例えば、使用済み紙おむつを、紙おむつを構成する素材としてパルプ、プラスチック、その他に処理液を用いて分離する分離機7と、分離機7によって分離された後のプラスチック、その他を乾燥させてプラスチックに付着し残存しているパルプ、その他を乾燥させて選別する選別機8とで構成されている。以下、廃棄物として使用済み紙おむつを例にとって説明する。
【0023】
分離機7は、筐体に固定された外胴分離槽と、この外胴分離槽の中で回転する内胴分離槽と、内胴分離槽内に処理液を供給する処理液供給手段と、内胴分離槽内で使用済み紙おむつを処理した後の排液を排出する排出部とから構成されている。内胴分離槽内には、保管場所6で保管されている使用済み紙おむつが投入され、投入された使用済み紙おむつの重量に対して設定された処理液が処理液供給手段から供給される。
【0024】
使用済み紙おむつが投入され、処理液が供給された内胴分離槽は、投入された使用済み紙おむつの重量に対して設定された回転数によって回転される。回転する内胴分離槽内で使用済み紙おむつが処理液とともに掻き回され、使用済み紙おむつが処理液に浸漬する。これにより、使用済み紙おむつは、紙おむつを構成するパルプ、プラスチック、その他に分離される。
【0025】
処理液中には、処理水の他に殺菌・消毒のための次亜塩素酸ナトリウム、使用済み紙おむつに用いられた高分子吸収体(ポリマー)に吸収されている汚物を含む汚水を掃き出させ高分子吸収体を分解する石灰、使用済み紙おむつから分解した素材を洗浄する洗剤等が含まれている。特に、石灰によって高分子吸収体は分離されて、高分子吸収体に吸収されている汚水が取り出される。また、使用済み紙おむつに用いられているパルプは分解され処理液中に混ぜ合わされ排液として第1パルプ回収装置9に送られる。なお、高分子吸収体に吸収されている汚水を取り出すために石灰以外に塩化カルシウムを用いることもできる。ポリマーに取り込まれた水分を放出させる事に寄与しているカルシウムを含む石灰と塩化カルシウムについての比較については後述する。
【0026】
分離機7内から使用済み紙おむつを処理した後の処理液を排液として排出する際には、分離機7の内胴分離槽から排出した処理液と、処理液を排出した後に内胴分離槽を回転して脱水することによって排出される処理液を排液として内胴分離槽内から第1パルプ回収装置9に排出する。
【0027】
第1パルプ回収装置9によって排液中に混濁状態で含まれているパルプが回収され、回収したパルプはリサイクル資源として段ボール原料製造装置10に送られ、段ボール原料が製造される。また、分離機7の内胴分離槽から排出された排液中には農作物を栽培する土壌にとって有益な肥料成分が含まれている。この排液はリサイクル資源として回収され、液肥製造装置11に送られ、液体肥料(液肥)が製造される。
【0028】
さらに、排液中には、液体成分の他に固形成分としての汚泥成分(SS 浮遊物質)が含まれている。このSS(浮遊物質)は、SS回収装置12によって排液中から回収される。回収されたSS(浮遊物質)には、農作物を栽培する土壌にとって有益な肥料成分が含まれている。排液中から回収されたSS(浮遊物質)はリサイクル資源として肥料製造装置13に送られ固形の肥料が製造される。
【0029】
また、排液中からリサイクル資源として回収されたSS(浮遊物質)は、水分を除くと、高い発熱量を持っており、リサイクル資源であるバイオマス燃料として用いることができ、バイオマス燃料製造装置14によってバイオマス燃料が製造される。分離機7の内胴分離槽内に固形成分として残ったプラスチック、その他は、選別機8に送られる。分離機7によって脱水した後でも内胴分離槽内に残った固形成分であるプラスチック、その他には、水分とともにパルプが付着している。このパルプは、選別機8によりプラスチック、その他から分離される。
【0030】
選別機8は、筐体に固定された外胴選別槽と、この外胴選別槽内で回転する内胴選別槽と、内胴選別槽内に乾燥風を供給する乾燥風供給手段と、内胴選別槽内からプラスチック、その他を乾燥させた後の排風を排出する排出手段とから構成されている。内胴選別槽内には、分離機7によって分離された固形成分であるプラスチック、その他が投入される。内胴選別槽内に投入された固形成分であるプラスチック、その他は、乾燥風供給手段によって供給された乾燥風により乾燥される。
【0031】
これにより、プラスチックに付着している水分が蒸発されるとともに、プラスチックに付着していたパルプがプラスチックから分離される。付着していた水分が蒸発され、付着していたパルプが分離されたプラスチック、その他は内胴選別槽内から取り出されてリサイクル資源として固形燃料製造装置15に送られる。また、プラスチックから分離されたパルプは、リサイクル資源として第2パルプ回収装置16により回収される。プラスチックから分離されて回収されたパルプは、内胴選別槽内から取り出されたプラスチック、その他とともにリサイクル資源として固形燃料製造装置15に送られ固形燃料が製造される。
【0032】
また、内胴選別槽から排出された乾燥風には、プラスチック、その他に付着していたパルプが混在している。乾燥風に混在しているパルプは、第3パルプ回収装置17により回収され、段ボール原料製造装置10に送られる。段ボール原料製造装置10では、分離機7から排出される排液中から回収されたリサイクル資源であるパルプと、選別機から排出される乾燥風から第3パルプ回収装置17によって回収されたリサイクル資源であるパルプとを用いて段ボール原料が製造される。
【0033】
以上説明した使用済み衛生用品のリサイクルシステムによって、使用済み衛生用品である使用済み紙おむつから、パルプ、プラスチック、その他、排液のリサイクル資源が回収されて固形燃料、段ボール原料が製造される。また、分離機7から排出された排液から、土壌にとって有益な肥料となる液肥が製造され、排液中に含まれる固形成分であるSS(浮遊物質)が回収されて固形の肥料、バイオマス燃料が製造される。以下に上記に説明した使用済み紙おむつのリサイクルシステムが導入された処理プラント2について説明する。
【0034】
[処理プラント]
本実施の形態の処理プラント2は、使用済み紙おむつを同一敷地37内において処理しリサイクル資源として、パルプ、プラスチック、その他、排液を回収する処理プラントである。本実施の形態の処理プラント2は、
図1に示すように、敷地37内に搬入された使用済み衛生用品としての使用済み紙おむつを貯蔵・保管した後に、この使用済み紙おむつを殺菌処理するとともに使用済み紙おむつを構成する複数の素材に分解処理する廃棄物処理ゾーン18と、廃棄物処理ゾーン18で殺菌処理され分解処理された使用済み紙おむつを構成する複数の素材をリサイクルして製品を製造する製品製造ゾーン19と、廃棄物処理ゾーン18と製品製造ゾーン19とを区画する区画ゾーン20と、が同一敷地37内に設けられている。
【0035】
廃棄物処理ゾーン18には、使用済み紙おむつが敷地37内に搬入される廃棄物搬入エリア21と、廃棄物搬入エリア21ら敷地37内に搬入された使用済み紙おむつを貯蔵・保管する廃棄物貯蔵エリア22と、廃棄物貯蔵エリア22に貯蔵・保管された使用済み紙おむつをこの使用済み紙おむつを構成する複数の素材に分解処理してリサイクル資源を回収する処理・回収エリア23と、が設けられている。
【0036】
廃棄物搬入エリア21には、使用済み紙おむつを病院、老人ホーム、介護施設、一般家庭、保育所等の収集先4から収集した使用済み紙おむつを回収する回収車24が駐車する回収車駐車スペース25が設けられている。また、廃棄物搬入エリア21には、回収車駐車スペース25に隣接して、廃棄物処理建屋26が設けられている。廃棄物処理建屋26には、回収された使用済み紙おむつが廃棄物処理建屋26内に搬入される回収物搬入口27が複数箇所に設けられている。そして、回収物搬入口27から、使用済み紙おむつが廃棄物処理建屋26内に搬入されることで廃棄物搬入エリア21から敷地37内に搬入された使用済み紙おむつが廃棄物処理建屋26内の廃棄物貯蔵エリア22に貯蔵・保管される。
【0037】
図3に示すように、廃棄物貯蔵エリア22には、複数箇所に回収物搬入口27が設けられている。この回収物搬入口27からはラック、カゴ台車に積み込まれた状態で廃棄物処理建屋26内に使用済み紙おむつが搬入される。また、廃棄物貯蔵エリア22には、回収物搬入口27から搬入された使用済み紙おむつを貯蔵しておく回収物ストックヤード28と、使用済み紙おむつが取り出された後の空きラックを保管しておく空きラック保管スペース29とが廃棄物処理建屋26の回収物搬入口27側に設けられている。そして、回収物ストックヤード28に貯蔵された使用済み紙おむつは、処理・回収エリア23に送られて処理される。
【0038】
処理・回収エリア23には、廃棄物処理建屋26内の中央部分に、使用済み衛生用品の処理装置3の分離機7と、この分離機7によって殺菌処理され、分解処理されて分離機7から排出される排液に混濁しているパルプを回収する第1パルプ回収装置9と、分離機7から排出される排液のうち固形成分を回収するSS回収装置12とが配置されている。また、処理・回収エリア23には、分離機7、第1パルプ回収装置9、SS回収装置12に隣接して廃棄物処理建屋26内に、使用済み衛生用品の処理装置3の選別機8と、選別機8によりプラスチック、その他から分離したパルプを回収する第2パルプ回収装置16と、選別機8から排出される乾燥風に含まれるパルプを回収する第3パルプ回収装置17とが配置されている。
【0039】
第1パルプ回収装置9は、分離機7から排出される排液中に含まれるパルプを回収する。第2パルプ回収装置16は、分離機7によって分解処理した使用済み紙おむつの固形部分であるプラスチック、その他を選別機8によって乾燥させて、プラスチック、その他に付着しているパルプを回収する。また第3パルプ回収装置17は、選別機8を乾燥させる際に乾燥処理した後の乾燥風中に含まれるパルプを回収する。
【0040】
また、分離機7から排出された排液は、液体成分と、固体成分とに分離され、液体成分は、液肥製造装置11へ送られ、固体成分はSS回収装置12によってSS(浮遊物質)として回収され、肥料製造装置13へ送られる。そして、第1パルプ回収装置9、第2パルプ回収装置16、第3パルプ回収装置17、SS回収装置12によって回収されたパルプ、SS(浮遊物質)、選別機8によってパルプが取り除かれたプラスチック、その他は、リサイクル資源として、廃棄物処理建屋26内のリサイクル資源ストックヤード30に貯蔵される。リサイクル資源ストックヤード30に貯蔵されたパルプ、SS(浮遊物質)、プラスチック、その他は、区画ゾーン20を挟んで廃棄物処理ゾーン18の反対側の製品製造ゾーン19内に送られる。また、分離機7から排出された排液中の液体成分も、廃棄物処理ゾーン18と製品製造ゾーン19間に配設された管路を通って製品製造ゾーン19内の製品製造建屋31内に送られる。
【0041】
製品製造建屋31内には、中央部分に段ボール原料製造装置10が設けられている。この段ボール原料製造装置10には、第1パルプ回収装置9、第3パルプ回収装置17で回収されたパルプが供給されて段ボール原料が製造される。また、製品製造建屋31内には、段ボール原料製造装置10に隣接して、液肥製造装置11、肥料製造装置13が設けられている。液肥製造装置11には、分離機7から排出された排液中の液体成分が管路を通って供給されて液肥が製造される。肥料製造装置13には、SS回収装置12によって回収されたSS(浮遊物質)が供給されて固形の肥料が製造される。さらに、肥料製造装置13に隣接して、バイオマス燃料製造装置14が製品製造建屋31内に設けられている。このバイオマス燃料製造装置14には、SS回収装置12によって回収された廃液中の固形成分であるSS(浮遊物質)が供給されてバイオマス燃料が製造される。
【0042】
段ボール原料製造装置10を挟んで液肥製造装置11、肥料製造装置13の反対側に固形燃料製造装置15が設けられている。この固形燃料製造装置15には、選別機8によって乾燥されたプラスチック、その他と、選別機8の乾燥風から第2パルプ回収装置16によって回収されたパルプとが供給されて固形燃料が製造される。
【0043】
そして、段ボール原料製造装置10、液肥製造装置11、肥料製造装置13、バイオマス燃料製造装置14、固形燃料製造装置15によって製造された段ボール原料、液肥、肥料、バイオマス燃料、固形燃料は製品製造建屋31内の製品ストックヤード32にストックされる。また、段ボール原料製造装置10に隣接して製品製造建屋31内には、製品ストックヤード32にストックされた各製品を出庫する出庫室33が設けられている。この出庫室33からは、各製品が搬送車に積載されて出庫される。
【0044】
なお、バイオマス燃料製造装置14に隣接して、ボイラを設置しバイオマス燃料製造装置14によって製造したバイオマス燃料を燃料としてボイラを稼動させても良い。この場合、処理プラント2内で使用する蒸気および温水を供給することができる。
【0045】
また、
図1、
図3において、符号38は、処理プラント2の稼動を管理する管理棟であり、
図1において符号39は、処理プラント2によって製造した液肥、肥料を用いて作物を栽培する菜園である。さらに、処理プラント2が設けられた敷地37には、敷地37と敷地外との間に緑地帯40が敷地37の全周にわたり設けられている。
【0046】
また、製品製造建屋31に隣接して、排水処理施設34が設けられている。この排水処理施設34により処理された処理排水は、処理プラント2内で消費されて再利用される。したがって、本実施の形態に係る処理プラント2は、処理プラント2から排水を外部に出さないクローズド施設である。なお、処理プラント2からの排水は外部に排出することはないが、処理プラント2内での生活排水は一般の下水道に排出する。ここでのクローズド施設とは、使用済み紙おむつを処理する際に排出される排水については、一般の下水道に排出されることがなく、処理プラント2内での生活排水は、下水道に排出される。
【0047】
次に、使用済み衛生用品の処理装置3から排出される排水の流れについて説明する。使用済み衛生用品の処理装置3から排出された排液は、1次ピット(不図示)に貯留される。この一次ピットに貯留された排液中には、大量のパルプが混在しているので第1パルプ回収装置9によって回収される。第1パルプ回収装置9によって混在しているパルプが回収された後の排液は2次ピット(不図示)に貯留される。2次ピットに貯留された排液は、液中からパルプが回収されており、液中には汚物、その他が混在している。2次ピットに貯留された排液は、流量調整槽、pH調整槽、反応槽、SS回収装置12を通って、貯留槽に貯留される。
【0048】
上記1次ピットに貯留された排液は、表1に示すように、水素イオン濃度(pH)が平均13.0で強アルカリ性を有している。塩化物も多く、BOD、SSも高い数値を示している。上記2次ピットに貯留された排液は水素イオン濃度(pH)が平均12.9で強アルカリ性を有している。塩化物も多く、BOD、SSも高い数値を示している。排水処理装置から排出される排水処理装置出口水は、表1に示すように、水素イオン濃度(pH)が平均8.3で中性を有している。塩化物も少なくなっており、BOD、SSも低い数値を示し、下水排除基準を満たしている。
【0049】
したがって、使用済み衛生用品の処理装置3から排出された排液は、リサイクル資源としてのパルプや、SS(浮遊物質)を回収した後、液肥として利用することができ、最終的に排水処理装置出口水は、塩化物イオン濃度が315mg/Lであり、下水道への紙オムツ受入れに関するガイドライン(案)(2019年3月 国土交通省水管理・国土保全局下水道部)で定める紙オムツ処理装置の排水中の塩化物イオン濃度1,000mg/Lを下回っているので、環境に悪影響を与えることがなく、そのまま下水道に流すこともできる。
【0050】
【0051】
以上説明したように、本実施の形態に係る処理プラント2によれば、使用済み衛生用品が廃棄物処理ゾーン18にて殺菌処理され、複数の素材に分解処理されるので、回収されるリサイクル資源に細菌類が付着することがない。また、細菌類が付着していないリサイクル資源が製品製造ゾーン19でリサイクル製品に製造されるのでリサイクル資源によって製造されたリサイクル製品に細菌類が付着することがない。
【0052】
さらに、廃棄物処理ゾーン18と製品製造ゾーン19との間には、これらのゾーンを区画する区画ゾーン20が設けられているので、廃棄物処理ゾーン18に万が一細菌類が付着・浮遊していても、区画ゾーン20によって遮断されるので製品製造ゾーン19に細菌類が移ることがない。したがって、使用済み衛生用品を同一敷地内において処理しリサイクル資源を回収しても、細菌類が付着、浮遊することがなく、リサイクル資源にも細菌類が付着することのない。
【0053】
また、本実施の形態の処理プラント2によれば、使用済み衛生用品としての使用済み紙おむつを殺菌処理し、分解処理することで、紙おむつを構成する複数種の素材の全てをリサイクル資源として回収し、回収したリサイクル資源から段ボール原料、液肥、肥料、固形燃料、バイオマス燃料を製造する。したがって、本実施の形態の処理プラント2からは廃棄物が排出されることがなく、処理プラント2から排出されるごみの量を最低限にすることができる。
【0054】
また、本実施の形態の処理プラント2によれば、使用済み紙おむつを分解処理した後の排液も液体成分から液体肥料(液肥)を製造し、固体成分から固体の肥料、バイオマス燃料を製造するので、処理プラント2から排出される排液を下水道に流すことがなく環境に優しい処理プラントを実現することができる。
【0055】
一般的に一般廃棄物は自区内処理という原則があり、焼却、埋め立て処理するために 他市町村への一般廃棄物の持ち込み、受け入れは事前協議などの制度があり困難な地域も多かった。このことが分別収集、リサイクルを拒み、可燃ごみとして市町村ごとに焼却せざるを得なかったことで、焼却量が減らない、焼却コストの低減、焼却炉の縮小化になかなかつながらなかった。
【0056】
本実施の形態の処理プラント2によれば、立地市町村内に処理プラント2を設けることによって焼却量の低減が図れ、焼却コストの低減が可能になり、焼却炉の縮小が可能となる。すなわち、紙おむつは高齢者、乳幼児のほとんどが使用し、高齢者、乳幼児はどの地域でも存在し毎日安定的に排出されるものなので、大量処理できる施設を設置することで、広域的なリサイクルが可能となる。
【0057】
また、本実施の形態の処理プラント2によれば、製品製造、利用まで一体の敷地で実施できることで、製品の移動に係る運搬コスト、環境への影響が低減することができる。さらに、液体肥料を用いた菜園で野菜等を育成、収穫することにより、肥料の低減、一次産業への貢献に資することが可能となる。また、使用済み紙おむつの処理により産出されるプラスチック、パルプ、スカムはバイオマスボイラー燃料として利用が可能で、回収した蒸気は処理工程の温水、乾燥蒸気として再利用が可能である。また、汚泥も回収後、同じくバイオマスボイラー燃料として利用することが可能である。よって、収集した紙おむつ全量を1カ所で処理し、エネルギー利用として消費、農業振興まで展開することが可能となる。
【0058】
次に、本実施の形態の処理プラント2において、使用済み紙おむつの高分子吸収体(ポリマー)に取り込まれた水分を放出させる事に寄与しているカルシウムを含む石灰と塩化カルシウムの比較について説明する。
なお、紙おむつについては下記の内容とする。
平均的な使用前紙おむつに含まれるポリマーの質量は質量比で19.8%となる。
又平均的な使用済み紙おむつに含まれる水分は質量比で61.5%となる。
(1)使用済み紙おむつ280kgの場合
使用済み紙おむつを使用前紙おむつに換算すると108kgに相当する。
又この時に含まれるポリマー質量は21.3kgに相当する。
(2)使用済み紙おむつ20t(20,000kg)の場合
使用済み紙おむつを使用前紙おむつに換算すると7.7t(7,700kg)に相当する。
又この時に含まれるポリマー質量は1.5t(1,500kg)に相当する
【0059】
(石灰について)
本実施の形態の処理プラント2で用水に石灰(消石灰)を溶解して処理する場合について以下に説明する。
消石灰(Ca(OH)2)
モル質量 74g/mmol(Ca:40g O:16g H:1.0g)
密度 2.211g/cm3
水への溶解度 0.17g/100cm3→1.7g/L(at 25℃)
飽和水溶液のpH 12.4
(1)本実施の処理プラント2で使用済み紙おむつ280kgを処理する場合
消石灰12kg、用水760Lを使用する。
この場合、ポリマー質量を使用前の紙おむつで換算すると21.3kgとなりポリマー1g(乾燥質量)当りの消石灰のイオン量としては7.60mmolとなる。
またこの時の消石灰溶液の濃度は1.55質量%となる。
(2)本実施の処理プラント2で使用済み紙おむつ20t(20,000kg)を処理する場合
消石灰857kg、用水54.300L(54.3m3)を使用する。
消石灰のイオン量、消石灰濃度は(1)と同様。
【0060】
(塩化カルシウム)について
用水に塩化カルシウム(二水和物)を溶解して処理する場合について以下に説明する。
塩化カルシウム(二水和物)(CaCl2・2H2O)
モル質量 147g/mol(Ca: 40g Cl2: 35.5g O: 16g H:1.0g)
密度 1.835g/cm3
水への溶解度 74.5g/100cm3→745g/L(無水物 at 20℃)
処理条件
ポリマー1g(乾燥質量)当りの塩化カルシウムのイオン量として5~8mmolが好ましい。
又その時の濃度はイオン量として200~400mmolが好ましい。
(1)使用済み紙おむつ280kgを処理する場合
塩化カルシウムの質量
5 mmolの場合 15.7kg
8 mmolの場合 25.1kg
塩化カルシウムの濃度
200 mmol/Lの場合 2.94質量%(3質量%に相当)
400 mmol/Lの場合 5.88質量%(6質量%に相当)
塩化カルシウムの用水量
200 mmol/Lの場合 517L(0.5m3)(理論的な用水量)
400 mmol/Lの場合 401L(0.4m3)(理論的な用水量)
(2)使用済み紙おむつ20t(20,000kg)を処理する場合
塩化カルシウムの質量
5 mmoLの場合 1,120kg
8 mmoLの場合 1,792kg
塩化カルシウムの濃度は(1)と同様。
塩化カルシウムの用水量
200 mmoLの場合 36,943L(36.9m3)(理論的な用水量)
400 mmoLの場合 28,640L(28.6m3)(理論的な用水量)
【0061】
(石灰と塩化カルシウムの相違点)
塩化カルシウムでカルシウムのイオン量が5mmol~8mmolで処理した場合と石灰(消石灰)で処理した場合の薬品の使用量は消石灰は塩化カルシウムの使用量の76%から48%と少ない使用量で同等の処理効果を得たことになる。
又その場合の薬品濃度も52%から26%と薄い濃度で処理できることになる。
これは消石灰が水溶液になった場合に強アルカリ性を示すことが影響していると思われる。
但し用水については塩化カルシウムを使用した場合の理論的な用水量の方が消石灰の場合より少なくなる結果となった。
しかし塩化カルシウムを使用した水溶化処理装置で公表されている数値では使用済み紙おむつの日処理量20tに対し、約1,000t(m3)の用水(工業用水)を使用している事から、試算された理論的な用水量よりもかなり多くの用水が必要になっていると思われる。
紙おむつの素材構成はポリマーの他にパルプ、プラスチック素材、が含まれており、特にパルプは吸水性が高いためポリマー単体に比べ、吸水した場合にパルプ繊維とポリマーの相互作用により、より大量の水分を含んだ大きな水の塊となっていると考えられる。
このような状態でポリマーの親水基と水分子の水素結合を切断するためにポリマーにカルシウムを接触させるために大容量の塩化カルシウム水溶液(水)の中で強力な撹拌で剪断力を与え、用水全体を流動させることが必要となるためと思われる。
【0062】
なお、上記の実施の形態では、廃棄物として使用済み衛生用品である使用済み紙おむつを処理する処理プラント2として説明したが、他の廃棄物として、例えば生ごみを処理する処理プラントとしても適用することができる。この場合、生ごみのリサイクルシステムを処理プラントに導入すれば良い。この場合にも、生ごみを分解処理して、リサイクル資源、例えば液体肥料、固体肥料、固形燃料を製造することが可能である。
【0063】
上述の通り、本発明の実施の形態を開示したが、当業者によって本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が請求項に含まれることが意図されている。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係る廃棄物の処理プラント2は、使用済み紙おむつを分解処理し、リサイクル資源を回収し、リサイクル資源を用いて製品を製造することができる他に、使用済み衛生用品として尿取りパッド等の他の使用済み衛生用品を分解処理し、リサイクル資源を回収する場合にも利用することができ、高分子吸収体(ポリマー)とパルプを含む使用済み衛生用品の全てを処理することができる。また、廃棄物として、使用済み衛生用品以外に生ごみ等の処理にも利用することができる。
【符号の説明】
【0065】
2 廃棄物の処理プラント
18 廃棄物処理ゾーン
19 製品製造ゾーン
20 区画ゾーン
37 敷地