(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】光に反応するニューロン素子を実現するトランジスタおよびニューロモルフィック基盤の人工視知覚システム
(51)【国際特許分類】
H01L 31/10 20060101AFI20241010BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20241010BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20241010BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
H01L31/10 E
H01L29/78 613Z
H01L29/78 622
H01L29/78 301X
H01L29/78 301J
(21)【出願番号】P 2022505375
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(86)【国際出願番号】 KR2021019067
(87)【国際公開番号】W WO2022131787
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2022-01-25
(31)【優先権主張番号】10-2020-0178161
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0080089
(32)【優先日】2021-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514260642
【氏名又は名称】コリア アドバンスド インスティチュート オブ サイエンス アンド テクノロジィ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ヤンギュ
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ジュンギュ
【審査官】桂城 厚
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0038409(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0134435(KR,A)
【文献】特開2007-042802(JP,A)
【文献】特開2019-075464(JP,A)
【文献】特開2001-156298(JP,A)
【文献】特開2002-033484(JP,A)
【文献】特開平07-074382(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0037107(US,A1)
【文献】特表2004-535669(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0064541(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0236285(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0033128(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0067743(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/0392
H01L 31/08-31/119
H01L 31/18-31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光に反応するニューロン素子を実現するトランジスタであって、
正孔バリア領域または電子バリア領域を含む半導体基板、
前記正孔バリア領域または前記電子バリア領域の上に水平方向に延長形成された状態で、入射する光子(Photon)によって発生した正孔を蓄積する浮遊ボディ層(Floating body)、
前記浮遊ボディ層
(Floating body)の両端に形成されるソース領域およびドレイン領域、
前記浮遊ボディ層
(Floating body)の上に形成されるゲート絶縁膜、および
前記ゲート絶縁膜の上に形成されるゲート領域
を含み、
前記浮遊ボディ層(Floating body)は、前記ソース領域および前記ドレイン領域に電流信号が印加されることによって発生した衝突電離(Impact ionization)によって生じた正孔を蓄積し、統合(Integration)現象および発火(Firing)現象によってスパイク形態の電圧信号を出力し、前記浮遊ボディ層(Floating body)に入射する光の強度に応じて発火閾値電圧(Firing threshold voltage)を低めて前記スパイク形態の電圧信号の周波数を増加させることを特徴とする、トランジスタ。
【請求項2】
前記半導体基板は、
シリコン(Si)、シリコンゲルマニウム(SiGe)、歪みシリコン(Strained Si)、歪みシリコンゲルマニウム(Strained SiGe)、SOI(Silicon-On-Insulator)、シリコンカーバイド(SiC)、または3-5族化合物半導体のうちの少なくともいずれか1つで形成されることを特徴とする、請求項1に記載のトランジスタ。
【請求項3】
前記正孔バリア領域または前記電子バリア領域は、
埋め込み酸化物(Buried oxide)、埋め込みn-ウェル(Buried n-well)、埋め込みp-ウェル(Buried p-well)、埋め込みSiC(Buried SiC)、または埋め込みSiGe(Buried SiGe)のうちの少なくともいずれか1つで形成されることを特徴とする、請求項1に記載のトランジスタ。
【請求項4】
前記浮遊ボディ層
(Floating body)は、
平面型、フィン(Fin)型、ナノワイヤ(Nanowire)型、またはナノシート(Nanosheet)型のうちのいずれか1つの構造である中で、シリコン(Si)、シリコンゲルマニウム(SiGe)、または3-5族化合物半導体のうちの少なくともいずれか1つで形成されることを特徴とする、請求項1に記載のトランジスタ。
【請求項5】
前記半導体基板は、
バックゲート(Back gate)として動作可能であることを特徴とする、請求項1に記載のトランジスタ。
【請求項6】
前記ソース領域および前記ドレイン領域は、
p型シリコン、n型シリコン、または金属シリサイドのうちの少なくともいずれか1つで形成されることを特徴とする、請求項1に記載のトランジスタ。
【請求項7】
前記ソース領域および前記ドレイン領域は、
前記p型シリコンまたは前記n型シリコンで形成されることを特徴とする、請求項6に記載のトランジスタ。
【請求項8】
前記金属シリサイドは、
エルビウム(Er)、イッテルビウム(Yb)、サマリウム(Sm)、イットリウム(Y)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、セリウム(Ce)、白金(Pt)、鉛(Pb)、イリジウム(Ir)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、タングステン(W)、コバルト(Co)のうちの少なくともいずれか1つを含むことを特徴とする、請求項6に記載のトランジスタ。
【請求項9】
前記ゲート絶縁膜は、
酸化膜(Silicon oxide)、窒化膜(Silicon nitride)、酸化窒化膜(Silicon oxynitride)、酸化アルミニウム(Aluminum oxide)、酸化ハフニウム(Hafnium oxide)、酸化窒化ハフニウム(Hafnium Oxynitride)、酸化亜鉛(Zinc oxide)、酸化ジルコニウム(Zirconium oxide)、高分子絶縁膜(Polymer dielectric)、または酸化ハフニウムジルコニウム(HZO)のうちの少なくともいずれか1つで形成されることを特徴とする、請求項1に記載のトランジスタ。
【請求項10】
前記ゲート絶縁膜は、
ポリシリコン(Poly-silicon)、アモルファスシリコン(Amorphous silicon)、金属酸化物(Metal oxide)、窒化ケイ素(Silicon nitride)、酸窒化ケイ素(Silicon oxynitride)、シリコンナノ結晶物質(Silicon nano-crystal)、または金属酸化物ナノ結晶のうちの少なくともいずれか1つで形成される電荷トラップ層を含むことを特徴とする、請求項1に記載のトランジスタ。
【請求項11】
前記ゲート領域は、
n型ポリシリコン、p型ポリシリコン、窒化チタン(TiN)、窒化タンタル(TaN)アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、マグネシウム(Mg)、クロム(Cr)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、金(Au)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、銀(Ag)、またはスズ(Sn)のうちの少なくともいずれか1つで形成されることを特徴とする、請求項1に記載のトランジスタ。
【請求項12】
前記ゲート領域は、
前記浮遊ボディ層
(Floating body)への光子透過率を高めるために、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、またはインジウムスズ酸化物(TIO)のうちの少なくともいずれか1つを含む透明金属物質で形成されることを特徴とする、請求項1に記載のトランジスタ。
【請求項13】
光に反応するニューロン素子を実現するトランジスタであって、
半導体基板、
前記半導体基板の上に垂直方向に互いに離隔した状態で形成されるソース領域およびドレイン領域、
前記ソース領域と前記ドレイン領域の間に前記垂直方向に延長形成された状態で、入射する光子(Photon)によって発生した正孔を蓄積する浮遊ボディ層(Floating body)、
前記浮遊ボディ層
(Floating body)の側面全体を覆っているGAA(Gate-all-around)を備えるゲート領域、および
前記浮遊ボディ層
(Floating body)と前記ゲート領域の間に形成されるゲート絶縁膜
を含み、
前記浮遊ボディ層(Floating body)は、前記ソース領域および前記ドレイン領域に電流信号が印加されることによって発生した衝突電離(Impact ionization)によって生じた正孔を蓄積し、統合(Integration)現象および発火(Firing)現象によってスパイク形態の電圧信号を出力し、前記浮遊ボディ層(Floating body)に入射する光の強度に応じて発火閾値電圧(Firing threshold voltage)を低めて前記スパイク形態の電圧信号の周波数を増加させることを特徴とする、トランジスタ。
【請求項14】
ニューロモルフィック基盤の人工視知覚システムであって、
半導体基板、ソース領域およびドレイン領域、浮遊ボディ層
(Floating body)、ゲート領域、およびゲート絶縁膜を含む少なくとも1つのトランジスタで実現される、光に反応する少なくとも1つのニューロン素子を含み、
前記少なくとも1つのトランジスタに含まれる
前記浮遊ボディ層
(Floating body)は、
前記浮遊ボディ層
(Floating body)に入射する光子(Photon)によって発生した正孔を蓄積することを特徴とし、
前記少なくとも1つのトランジスタに含まれる前記浮遊ボディ層(Floating body)は、
前記ソース領域および前記ドレイン領域に電流信号が印加されることによって発生した衝突電離(Impact ionization)によって生じた正孔を蓄積し、統合(Integration)現象および発火(Firing)現象によってスパイク形態の電圧信号を出力し、前記浮遊ボディ層(Floating body)に入射する光の強度に応じて発火閾値電圧(Firing threshold voltage)を低めて前記スパイク形態の電圧信号の周波数を増加させることを特徴とする、ニューロモルフィック基盤の人工視知覚システム。
【請求項15】
前記ニューロモルフィック基盤の人工視知覚システムは、
少なくとも1つのシナプス素子、少なくとも1つの抵抗、少なくとも1つの蓄電器、または少なくとも1つの追加のトランジスタのうちの少なくともいずれか1つをさらに含むことを特徴とする、請求項14に記載のニューロモルフィック基盤の人工視知覚システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の実施形態は、光に反応するニューロン素子を実現するトランジスタと、前記ニューロン素子を含むニューロモルフィック基盤の人工視知覚システムに関する。
【背景技術】
【0002】
人工知能動作において莫大なエネルギーを消耗していた従来のフォン・ノイマン(Von Neumann)方式の限界を克服するための代案として、ニューロモルフィックコンピューティング(Neuromorphic computing)システムに多くの関心が寄せられている。ニューロモルフィックコンピューティングは、人間の脳をハードウェア的に模倣して人工知能動作を実現する技術である。人間の脳は極めて複雑な機能を遂行するが、脳が消費するエネルギーは20Wにしかならない。ニューロモルフィックコンピューティングは、このような人間の脳の構造自体を模倣することで、従来のコンピューティングよりも優れた連想、推論、認識などの人工知能動作を超低電力で実行することができる。
【0003】
このようなニューロモルフィックコンピューティングは、生物学的視知覚システムを模倣することで効率的なパターン認識、物体感知、およびリアルタイムイメージ処理を可能にするための、人工視知覚システムに多く使用されている。生物学的視知覚システムでは、網膜に存在する光受容体(Photoreceptor)が外部の光を受ければ、網膜の神経節細胞(Ganglion cell)が活性化する。これにより、神経節細胞は、光の強度によって異なる電気的スパイク信号を生成し、この信号を視覚皮質(Visual cortex)に伝達する。したがって、視覚皮質に伝達された信号に基づいて神経網で光学イメージ処理が始まり、物体を認識できるようになるのである。ハードウェアを使用してこのような生物学的視知覚システムを模倣するためには、光受容体や神経節細胞のような網膜ニューロンの役割をする構成要素が必要となる。しかし、従来の手動光検出器(Photodetector)にはこのような機能が備わっていないため、適用することができなかった。
【0004】
この代わりに、光信号を感知するイメージセンサ、光信号を電気信号に変換する回路、および伝達された信号を処理する人工神経網を結合したシステムが使用された。しかし、このような方法は、ハードウェアの費用が高くつくことはもちろん、光信号を電気信号に変換する過程においてボトルネック現象が発生し、信号遅延と追加の電力消費が発生していた。
【0005】
これにより、イメージセンサ、光信号変換回路、および処理人工神経網を使用する従来の技術の限界を克服するための技術が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一実施形態は、光が入射するときにスパイキング特性が変化することによって光に反応するニューロン素子を実現したトランジスタ、および前記ニューロン素子を含む人工視知覚システムを提案する。
【0007】
これにより、一実施形態は、単一素子で光を感知する機能とスパイクを発現する機能の両方を備えたトランジスタ、および前記ニューロン素子を含む人工視知覚システムを提案する。
【0008】
ただし、一実施形態が解決しようとする技術的課題が上述した課題に限定されてはならず、以下で説明する例の技術的思想および領域から逸脱しない範囲で多様に拡張されてよい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態によると、光に反応するニューロン素子を実現するトランジスタは、正孔バリア領域または電子バリア領域を含む半導体基板、前記正孔バリア領域または前記電子バリア領域の上に水平方向に延長形成される浮遊ボディ層(Floating body)、前記浮遊ボディ層の両端に形成されるソース領域およびドレイン領域、前記浮遊ボディ層の上に形成されるゲート絶縁膜、および前記ゲート絶縁膜の上に形成されるゲート領域を含む。
【0010】
一側によると、前記浮遊ボディ層は、衝突電離(Impact ionization)によって発生した正孔と、前記浮遊ボディ層に入射する光子(Photon)によって発生した正孔の両方を蓄積することを特徴としてよい。
【0011】
他の一側によると、前記ソース領域および前記ドレイン領域は、前記ソース領域および前記ドレイン領域に電流信号が印加されることに応答して、統合(Integration)現象および発火(Firing)現象によってスパイク形態の電圧信号を出力し、光子が入射することに応答して、発火閾値電圧(Firing threshold voltage)を低めてスパイキング周波数を増加させることを特徴としてよい。
【0012】
また他の一側によると、前記半導体基板は、シリコン(Si)、シリコンゲルマニウム(SiGe)、歪みシリコン(Strained Si)、歪みシリコンゲルマニウム(Strained SiGe)、SOI(Silicon-On-Insulator)、シリコンカーバイド(SiC)、または3-5族化合物半導体のうちの少なくともいずれか1つで形成されることを特徴としてよい。
【0013】
また他の一側によると、前記正孔バリア領域または前記電子バリア領域は、埋め込み酸化物(Buried oxide)、埋め込みn-ウェル(Buried n-well)、埋め込みp-ウェル(Buried p-well)、埋め込みSiC(Buried SiC)、または埋め込みSiGe(Buried SiGe)のうちの少なくともいずれか1つで形成されることを特徴としてよい。
【0014】
また他の一側によると、前記浮遊ボディ層は、平面型、フィン(Fin)型、ナノワイヤ(Nanowire)型、またはナノシート(Nanosheet)型のうちのいずれか1つの構造である中で、シリコン(Si)、シリコンゲルマニウム(SiGe)、または3-5族化合物半導体のうちの少なくともいずれか1つで形成されることを特徴としてよい。
【0015】
また他の一側によると、前記半導体基板は、バックゲート(Back gate)として動作可能であることを特徴としてよい。
【0016】
また他の一側によると、前記ソース領域および前記ドレイン領域は、p型シリコン、n型シリコン、または金属シリサイドのうちの少なくともいずれか1つで形成されることを特徴としてよい。
【0017】
また他の一側によると、前記p型シリコンまたは前記n型シリコンで形成される前記ソース領域および前記ドレイン領域は、拡散(Diffusion)、固相拡散(Solid-phase diffusion)、エピタキシャル成長(Epitaxial growth)、選択的エピタキシャル成長(Epitaxial growth)、イオン注入(Ion implantation)、または後続熱処理のうちの少なくともいずれか1つ以上の方式で形成されることを特徴としてよい。
【0018】
また他の一側によると、前記金属シリサイドは、エルビウム(Er)、イッテルビウム(Yb)、サマリウム(Sm)、イットリウム(Y)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、セリウム(Ce)、白金(Pt)、鉛(Pb)、イリジウム(Ir)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、タングステン(W)、コバルト(Co)のうちの少なくともいずれか1つを含み、前記金属シリサイドで形成される前記ソース領域および前記ドレイン領域は、改善された接合のために不純物偏析(Dopant segregation)を利用することを特徴としてよい。
【0019】
また他の一側によると、前記ゲート絶縁膜は、酸化膜(Silicon oxide)、窒化膜(Silicon nitride)、酸化窒化膜(Silicon oxynitride)、酸化アルミニウム(Aluminum oxide)、酸化ハフニウム(Hafnium oxide)、酸化窒化ハフニウム(Hafnium Oxynitride)、酸化亜鉛(Zinc oxide)、酸化ジルコニウム(Zirconium oxide)、高分子絶縁膜(Polymer dielectric)、または酸化ハフニウムジルコニウム(HZO)のうちの少なくともいずれか1つで形成されることを特徴としてよい。
【0020】
また他の一側によると、前記ゲート絶縁膜は、ポリシリコン(Poly-silicon)、アモルファスシリコン(Amorphous silicon)、金属酸化物(Metal oxide)、窒化ケイ素(Silicon nitride)、酸窒化ケイ素(Siliconoxynitride)、シリコンナノ結晶物質(Silicon nano-crystal)、または金属酸化物ナノ結晶のうちの少なくともいずれか1つで形成される電荷トラップ層を含むことを特徴としてよい。
【0021】
また他の一側によると、前記ゲート領域は、n型ポリシリコン、p型ポリシリコン、窒化チタン(TiN)、窒化タンタル(TaN)アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、マグネシウム(Mg)、クロム(Cr)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、金(Au)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、銀(Ag)、またはスズ(Sn)のうちの少なくともいずれか1つで形成されることを特徴としてよい。
【0022】
また他の一側によると、前記ゲート領域は、前記浮遊ボディ層への光子透過率を高めるために、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、またはインジウムスズ酸化物(TIO)のうちの少なくともいずれか1つを含む透明金属物質で形成されることを特徴としてよい。
【0023】
一実施形態によると、光に反応するニューロン素子を実現するトランジスタは、半導体基板、前記半導体基板の上に垂直方向に互いに離隔した状態で形成されるソース領域およびドレイン領域、前記ソース領域と前記ドレイン領域の間に前記垂直方向に延長形成される浮遊ボディ層(Floating body)、前記浮遊ボディ層の側面全体を覆っているGAA(Gate-all-around)を備えるゲート領域、および前記浮遊ボディ層と前記ゲート領域の間に形成されるゲート絶縁膜を含む。
【0024】
一側によると、前記浮遊ボディ層は、衝突電離(impact ionization)によって発生した正孔と、前記浮遊ボディ層に入射する光子(photon)によって発生した正孔の両方を蓄積することを特徴としてよい。
【0025】
他の一側によると、前記ソース領域および前記ドレイン領域は、前記ソース領域および前記ドレイン領域に電流信号が印加されることに応答して、統合(Integration)現象および発火(Firing)現象によってスパイク形態の電圧信号を出力し、光子が入射することに応答して、発火閾値電圧(Firing threshold voltage)を低めてスパイキング周波数を増加させることを特徴としてよい。
【0026】
一実施形態によると、ニューロモルフィック基盤の人工視知覚システムは、半導体基板、ソース領域およびドレイン領域、浮遊ボディ層、ゲート領域、およびゲート絶縁膜を含む少なくとも1つのトランジスタで実現される、光に反応する少なくとも1つのニューロン素子を含み、前記少なくとも1つのトランジスタに含まれる浮遊ボディ層は、衝突電離(Impact ionization)によって発生した正孔と、前記浮遊ボディ層に入射する光子(Photon)によって発生した正孔の両方を蓄積することを特徴とし、前記少なくとも1つのトランジスタに含まれる前記ソース領域および前記ドレイン領域は、前記ソース領域および前記ドレイン領域に電流信号が印加されることに応答して、統合(Integration)現象および発火(Firing)現象によってスパイク形態の電圧信号を出力し、光子が入射することに応答して、発火閾値電圧(Firing threshold voltage)を低めてスパイキング周波数を増加させることを特徴としてよい。
【0027】
一側によると、前記ニューロモルフィック基盤の人工視知覚システムは、少なくとも1つのシナプス素子、少なくとも1つの抵抗、少なくとも1つの蓄電器、または少なくとも1つの追加のトランジスタのうちの少なくともいずれか1つをさらに含むことを特徴としてよい。
【0028】
一実施形態によると、光に反応するニューロン素子を実現するトランジスタは、正孔バリア領域または電子バリア領域を含む半導体基板、前記正孔バリア領域または前記電子バリア領域の上に水平方向に延長形成された状態で、入射する光子(Photon)によって発生する正孔すべてを蓄積する浮遊ボディ層(Floating body)、前記浮遊ボディ層の両端に形成されるソース領域およびドレイン領域、前記浮遊ボディ層の上に形成されるゲート絶縁膜、および前記ゲート絶縁膜の上に形成されるゲート領域を含んでよい。
【発明の効果】
【0029】
一実施形態は、光が入射するときにスパイキング特性が変化することによって光に反応するニューロン素子を実現したトランジスタ、および前記ニューロン素子を含む人工視知覚システムを提案する。
【0030】
これにより、一実施形態は、単一素子で光を感知する機能とスパイクを発現する機能の両方を備えたトランジスタ、および前記ニューロン素子を含む人工視知覚システムを提案する。
【0031】
したがって、一実施形態は、イメージセンサ、光信号変換回路、および処理人工神経網を使用していた従来の技術とは異なり、追加の構成要素を必要としないことから、ハードウェア費用の消耗が低いため低費用ながらも高集積を達成できるという効果と、光信号を電気信号に変換する過程において発生する信号遅延および追加の電力消費などのボトルネック現象を解消できるという効果がある。
【0032】
一実施形態の効果が上述したものに限定されてはならず、以下で説明する例の技術的思想および技術領域から逸脱しない範囲で多様に拡張されてよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】網膜ニューロンを含む生物学的視知覚システムを説明するための図である。
【
図2a】
図2aは、一実施形態における、光に反応するニューロン素子を実現するトランジスタを示した斜視図である。
【
図2b】
図2bは、
図2aに示したトランジスタのA-A’の断面を示した側面断面図である。
【
図3a】
図3aは、他の一実施形態における、光に反応するニューロン素子を実現するトランジスタを示した斜視図である。
【
図3b】
図3bは、
図3aに示したトランジスタのA-A’の断面を示した側面断面図である。
【
図4】光に反応するニューロン素子の動作原理を説明するための図である。
【
図5a】
図5aは、
図3a~3bに示したトランジスタから実際に測定した光の強度による電気的測定結果を示したグラフである。
【
図5b】
図5bは、
図3a~3bに示したトランジスタから実際に測定した光の強度による電気的測定結果を示したグラフである。
【
図6a】
図6aは、
図3a~3bに示したトランジスタから実際に測定した光の波長による電気的測定結果を示したグラフである。
【
図6b】
図6bは、
図3a~3bに示したトランジスタから実際に測定した光の波長による電気的測定結果を示したグラフである。
【
図6c】
図6cは、
図3a~3bに示したトランジスタから実際に測定した光の波長による電気的測定結果を示したグラフである。
【
図7a】
図7aは、
図3a~bに示したトランジスタのゲート電圧による電気的測定結果を示したグラフである。
【
図7b】
図7bは、
図3a~bに示したトランジスタのゲート電圧による電気的測定結果を示したグラフである。
【
図7c】
図7cは、
図3a~bに示したトランジスタのゲート電圧による電気的測定結果を示したグラフである。
【
図8a】
図8aは、
図3a~3bに示したトランジスタを利用したパターン認識のシミュレーション結果を示したグラフである。
【
図8b】
図8bは、
図3a~3bに示したトランジスタを利用したパターン認識のシミュレーション結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、実施形態について、添付の図面を参照しながら詳しく説明する。しかし、本発明が、実施形態によって制限あるいは限定されてはならない。また、各図面に提示した同一の参照符号は、同一の部材を示す。
【0035】
また、本明細書で使用する用語(Terminology)は、本発明の好ましい実施形態を適切に表現するために使用した用語であり、これは、使用者、運用者の意図、または本発明が属する分野の慣例などによって異なることがある。したがって、本用語に対する定義は、本明細書の全般に記した内容に基づいて下されなければならない。
【0036】
以下で説明する実施形態に係る光に反応するニューロン素子は、トランジスタを基盤とする。このとき、ニューロン素子を実現するトランジスタは、水平型トランジスタ構造または垂直型トランジスタ構造であってよい。
【0037】
実施形態の詳しい説明に先立って用語を整理すると、通常、浮遊ボディまたは浮遊ボディ層(Floating body)とは、4-電極(ゲート、ソース、ドレイン、ボディ)基盤の電界トランジスタのチャネルとは異なり、3-電極(ゲート、ソース、ドレイン)からなるトランジスタのチャネル(Channel)を意味する。この代表として、SOI(Silicon-On-Insulator)基板上の素子で広く使用されている。この場合、チャネルの上部に存在するゲートは、極めて薄いゲート絶縁膜によって露出されるチャネル上部または一部のチャネル電位を制御する。しかし、チャネルの下部は、埋め立て酸化膜(Buried oxide)と隣接していることから、SOI基板であるバックゲート(Back-gate)から電圧を印加しても、極厚の埋め立て酸化膜によってチャネル下部の電位を調節することが難しい。したがって、SOI素子は、チャネル下部の電位を効果的に制御することができず、所望しない浮遊ボディ効果が発生するようになる。
【0038】
より広範囲の概念としては、ナノワイヤ(Nanowire)やナノシート(Nanosheet)などのチャネルがGAA(Gate-All-Around)で覆われているGAAトランジスタの孤立したチャネルにもボディに別途の電圧を印加することができないため、浮遊ボディになることがある。しかし、このような場合には、チャネル全面を覆っているゲートと極薄のゲート絶縁膜によってチャネル電位がゲートによって適切に統制されるため、浮遊ボディの効果が緩和されるようになる。
【0039】
水平型トランジスタとは異なり、垂直型トランジスタは、バルクシリコン(Bulk-Si)基板の上に形成されるため、外観的には浮遊ボディがないように見えるが、実際はそうではない。例えば、p型ボディ(Body)の場合には垂直方向に配置されたn+ソース領域とn+ドレイン領域により、n型ボディの場合には垂直配置されたp+ソース領域とp+ドレイン領域により、チャネルが孤立して浮遊ボディ構造が形成されることがある。ここで、上付き文字「+」は、ドーピング濃度が約1020cm-3と極めて高いことを意味する。同じように、垂直突起の下の埋め込みSiC(Buried SiC)または埋め込みSiGe(Buried SiGe)などによっても、チャネルがバルクシリコン基板と電気的に絶縁して浮遊ボディが生成されることがある。したがって、以下では、水平型トランジスタと垂直型トランジスタの両方において、浮遊ボディを有するものと表現する。
【0040】
図1は、網膜ニューロンを含む生物学的視知覚システムを説明するための図である。
【0041】
図1を参照すると、人間の網膜は、光受容体(Photoreceptor)、双極細胞(Bipolar cell)、神経節細胞(Ganglion cell)、水平細胞(Horizontal cell)、無軸索細胞(Amacrine cell)などの多様なニューロンで構成されている。光受容体は、光信号を受け、これを電気信号に変換し、双極細胞を経て神経節細胞に信号を伝達する。水平細胞は、光受容体の反応性を制御して外部環境に対する適応を調節し、無軸索細胞は、神経節細胞の側面抑制によって対比差を生成して感覚知覚を高める。神経節細胞からスパイク信号を受信する視覚皮質は、神経網で信号を処理することによって対象を認識する。
【0042】
以下で説明する、光に反応するニューロン素子を実現するトランジスタ基盤の人工視知覚システムは、このような生物学的視知覚システムを模倣する。これについては、以下で詳しく説明する。
【0043】
図2aは、一実施形態における、光に反応するニューロン素子を実現するトランジスタを示した斜視図であり、
図2bは、
図2aに示したトランジスタのA-A’の断面を示した側面断面図である。
【0044】
図2a~2bを参照すると、一実施形態に係る水平型トランジスタ200は、光に反応するニューロン素子を実現する素子であることから、以下では、水平型トランジスタ200は、ニューロン素子を意味するものとする。また、以下では、水平型トランジスタ200は、説明の便宜のために、トランジスタ200と命名することにする。
【0045】
トランジスタ200は、半導体基板210、浮遊ボディ層(Floating body)220、ソース領域230およびドレイン領域240、ゲート絶縁膜250、ゲート領域260を含んでよい。
【0046】
半導体基板210は、シリコン(Si)、シリコンゲルマニウム(SiGe)、歪みシリコン(Strained Si)、歪みシリコンゲルマニウム(Strained SiGe)、SOI(Silicon-On-Insulator)、シリコンカーバイド(SiC)、または3-5族化合物半導体のうちの少なくともいずれか1つで形成されてよい。
【0047】
このような半導体基板210は、電圧バイアスを加えるバックゲート(Back gate)として動作可能であり、正孔バリア領域(または、電子バリア領域)211を含むように構成されてよい。
【0048】
ここで、正孔バリア領域(または、電子バリア領域)211は、埋め込み酸化物(Buried oxide)、p型ボディ(body)の場合は、埋め込みn-ウェル(Buriedn-well)、n型ボディ(body)の場合は、埋め込みp-ウェル(Buriedp-well)、埋め込みSiC(Buried SiC)、または埋め込みSiGe(Buried SiGe)のうちの少なくともいずれか1つで形成されてよい。
【0049】
浮遊ボディ層220は、正孔バリア領域(または、電子バリア領域)211の上に、シリコン(Si)、シリコンゲルマニウム(SiGe)、または3-5族化合物半導体のうちの少なくともいずれか1つで形成されてよい。
【0050】
特に、浮遊ボディ層220は、衝突電離(Impact ionization)によって発生した正孔と、浮遊ボディ層220に入射する光に含まれる光子(Photon)によって発生した正孔の両方を蓄積することにより、トランジスタ200でニューロンのスパイキング動作が可能となるようにしてよい。
【0051】
このとき、浮遊ボディ層220は、平面型、フィン(Fin)型、ナノワイヤ(Nanowire)型、またはナノシート(Nanosheet)型のうちのいずれか1つの構造であってよく、トランジスタ200が水平型トランジスタであることを考慮した上で水平方向に延長形成されてよい。しかし、浮遊ボディ層220の構造がこれに制限あるいは限定されてはならず、垂直方向に延長形成されてもよい。これについては、
図3a~3bを参照しながら詳しく説明する。
【0052】
ソース領域230およびドレイン領域240は、p型シリコン、n型シリコン、または金属シリサイドのうちの少なくともいずれか1つであり、浮遊ボディ層220の両端に形成されてよい。
【0053】
例えば、ソース領域230およびドレイン領域240は、p型シリコンまたはn型シリコンで形成されてよく、このような場合、ソース領域230およびドレイン領域240は、浮遊ボディ層220のイオンタイプとは反対のタイプを備えるようになる。より具体的な例として、浮遊ボディ層220がp型の場合には、ソース領域230およびドレイン領域240はn型であってよく、浮遊ボディ層220がn型の場合には、ソース領域230およびドレイン領域240はp型であってよい。
【0054】
また、ソース領域230およびドレイン領域240がp型シリコンまたはn型シリコンで形成される場合、ソース領域230およびドレイン領域240は、拡散(Diffusion)、固相拡散(Solid-phase diffusion)、エピタキシャル成長(Epitaxial growth)、選択的エピタキシャル成長(Epitaxial growth)、イオン注入(Ion implantation)、または後続熱処理のうちの少なくともいずれか1つ以上の方式で形成されてよい。
【0055】
他の例として、ソース領域230およびドレイン領域240は、エルビウム(Er)、イッテルビウム(Yb)、サマリウム(Sm)、イットリウム(Y)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、セリウム(Ce)、白金(Pt)、鉛(Pb)、イリジウム(Ir)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、タングステン(W)、コバルト(Co)のうちの少なくともいずれか1つを含む金属シリサイドで形成されてよく、このような場合、金属シリサイドで形成されるソース領域230およびドレイン領域240は、改善された接合のために不純物偏析(Dopant segregation)を利用することから、トランジスタ200は、不純物偏析ショットキー障壁トランジスタであってよい。
【0056】
このようなソース領域230およびドレイン領域240は、ソース領域230およびドレイン領域240に電流信号が印加されることに応答して、浮遊ボディ層220における統合(Integration)現象および発火(Firing)現象によってスパイク形態の電圧信号を出力する。
【0057】
特に、ソース領域230およびドレイン領域240は、浮遊ボディ層220に光子が入射することに応答して、浮遊ボディ層220における発火閾値電圧(Firing threshold voltage)を低め、スパイキング周波数を増加させる。これについては、
図4を参照しながら詳しく説明する。
【0058】
ゲート絶縁膜250は、浮遊ボディ層220とゲート領域260を絶縁する構成要素であって、浮遊ボディ層220の上に、酸化膜(Silicon oxide)、窒化膜(Silicon nitride)、酸化窒化膜(Silicon oxynitride)、酸化アルミニウム(Aluminum oxide)、酸化ハフニウム(Hafnium oxide)、酸化窒化ハフニウム(Hafnium Oxynitride)、酸化亜鉛(Zinc oxide)、酸化ジルコニウム(Zirconium oxide)、高分子絶縁膜(Polymer dielectric)、または酸化ハフニウムジルコニウム(HZO)のうちの少なくともいずれか1つで形成されてよい。
【0059】
また、ゲート絶縁膜250は、ポリシリコン(Poly-silicon)、アモルファスシリコン(Amorphous silicon)、金属酸化物(Metal oxide)、窒化ケイ素(Silicon nitride)、酸窒化ケイ素(Silicon oxynitride)、シリコンナノ結晶物質(Silicon nano-crystal)、または金属酸化物ナノ結晶のうちの少なくともいずれか1つで形成される電荷トラップ層を含んでもよい。
【0060】
ゲート領域260は、ゲート絶縁膜250の上に、n型ポリシリコン、p型ポリシリコン、窒化チタン(TiN)、窒化タンタル(TaN)アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、マグネシウム(Mg)、クロム(Cr)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、金(Au)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、銀(Ag)、またはスズ(Sn)のうちの少なくともいずれか1つで形成されてよい。
【0061】
一方、ゲート領域260は、浮遊ボディ層220への光子透過率を高めるために、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、またはインジウムスズ酸化物(TIO)のうちの少なくともいずれか1つを含む透明金属物質で形成されてもよい。
【0062】
また、ゲート領域260は、二重ゲート(Double-gate)、三重ゲート(Tri-gate)、オメガゲート(Omega-gate)、またはマルチゲート(Multiple-gate)のうちの少なくともいずれか1つの構造であってよい。
【0063】
このようなゲート領域260およびゲート絶縁膜250は、浮遊ボディ層220のドーピング濃度が一定値(例えば、5×1017cm-3)以上の場合には必要ないこともある。この場合、トランジスタ200は、2端子npnゲートレス(npn gateless)トランジスタまたはpnpゲートレス(pnp gateless)トランジスタの構造であってよい。
【0064】
図3aは、他の一実施形態における、光に反応するニューロン素子を実現するトランジスタを示した斜視図であり、
図3bは、
図3aに示したトランジスタのA-A’の断面を示した側面断面図である。
【0065】
図3a~3bを参照すると、他の一実施形態に係る垂直型トランジスタ300は、光に反応するニューロン素子を実現する素子であることから、以下では、垂直型トランジスタ300は、ニューロン素子を意味するものとする。また、以下では、垂直型トランジスタ300は、説明の便宜のために、トランジスタ300と命名することにする。
【0066】
トランジスタ300は、半導体基板310、ソース領域320およびドレイン領域330、浮遊ボディ層(Floating body)340、ゲート領域350、ゲート絶縁膜360を含んでよい。
【0067】
半導体基板310は、シリコン(Si)、シリコンゲルマニウム(SiGe)、歪みシリコン(Strained Si)、歪みシリコンゲルマニウム(Strained SiGe)、SOI(Silicon-On-Insulator)、シリコンカーバイド(SiC)、または3-5族化合物半導体のうちの少なくともいずれか1つで形成されてよい。
【0068】
このような半導体基板310は、電圧バイアスを加えるバックゲート(Back gate)として動作可能であり、正孔バリア領域(または、電子バリア領域)を含まないように構成されてよい。
【0069】
これについては以下で説明するが、ゲート領域350が浮遊ボディ層340の側面全体を覆うGAA構造(Gate-All-Around)を備えることにより、浮遊ボディ層340で衝突電離または光子によって生じる正孔を、正孔バリアがなくても閉じ込めることができるためである。
【0070】
ソース領域320およびドレイン領域330は、p型シリコン、n型シリコン、または金属シリサイドのうちの少なくともいずれか1つであって、半導体基板310の上に垂直方向に互いに離隔した状態で形成されてよい。
【0071】
例えば、ソース領域320およびドレイン領域330は、p型シリコンまたはn型シリコンで形成されてよく、このような場合、ソース領域320およびドレイン領域330は、浮遊ボディ層340のイオンタイプとは反対となるタイプを備えるようになる。より具体的な例として、浮遊ボディ層340がp型の場合には、ソース領域320およびドレイン領域330はn型であってよく、浮遊ボディ層340がn型の場合には、ソース領域320およびドレイン領域330はp型であってよい。
【0072】
また、ソース領域320およびドレイン領域330がp型シリコンまたはn型シリコンで形成される場合、ソース領域320およびドレイン領域330は、拡散(Diffusion)、固相拡散(Solid-phase diffusion)、エピタキシャル成長(Epitaxial growth)、選択的エピタキシャル成長(Epitaxial growth)、イオン注入(Ion implantation)、または後続熱処理のうちの少なくともいずれか1つ以上の方式で形成されてよい。
【0073】
他の例として、ソース領域320およびドレイン領域330は、エルビウム(Er)、イッテルビウム(Yb)、サマリウム(Sm)、イットリウム(Y)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、セリウム(Ce)、白金(Pt)、鉛(Pb)、イリジウム(Ir)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、タングステン(W)、コバルト(Co)のうちの少なくともいずれか1つを含む金属シリサイドで形成されてよく、このような場合、金属シリサイドで形成されるソース領域320およびドレイン領域330は、改善された接合のために不純物偏析(Dopant segregation)を利用することから、トランジスタ300は、不純物偏析ショットキー障壁トランジスタであってよい。
【0074】
このようなソース領域320およびドレイン領域330は、ソース領域320およびドレイン領域330に電流信号が印加されることに応答して、浮遊ボディ層340における統合(Integration)現象および発火(Firing)現象によってスパイク形態の電圧信号を出力する。
【0075】
特に、ソース領域320およびドレイン領域330は、浮遊ボディ層340に光子が入射することに応答して、浮遊ボディ層340における発火閾値電圧(Firing threshold voltage)を低め、スパイキング周波数を増加させる。これについては、
図4を参照しながら詳しく説明する。
【0076】
浮遊ボディ層340は、ソース領域320とドレイン領域330の間に、シリコン(Si)、シリコンゲルマニウム(SiGe)、または3-5族化合物半導体のうちの少なくともいずれか1つで延長形成されてよい。
【0077】
特に、浮遊ボディ層340は、衝突電離(Impact ionization)によって発生した正孔と、浮遊ボディ層340に入射する光に含まれる光子(Photon)によって発生した正孔の両方を蓄積することにより、トランジスタ300でニューロンのスパイキング動作が可能となるようにする。
【0078】
このとき、浮遊ボディ層340は、平面型、フィン(Fin)型、ナノワイヤ(Nanowire)型、またはナノシート(Nanosheet)型のうちのいずれか1つの構造であってよく、トランジスタ300が垂直型トランジスタであることを考慮した上で垂直方向に延長形成されてよい。
【0079】
ゲート領域350は、浮遊ボディ層340の側面全体を覆っているGAA構造となるように、n型ポリシリコン、p型ポリシリコン、窒化チタン(TiN)、窒化タンタル(TaN)アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、マグネシウム(Mg)、クロム(Cr)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、金(Au)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、銀(Ag)、またはスズ(Sn)のうちの少なくともいずれか1つで形成されてよい。
【0080】
一方、ゲート領域350は、浮遊ボディ層340への光子透過率を高めるために、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、またはインジウムスズ酸化物(TIO)のうちの少なくともいずれか1つを含む透明金属物質で形成されてもよい。
【0081】
また、ゲート領域350は、二重ゲート(Double-gate)、三重ゲート(Tri-gate)、オメガゲート(Omega-gate)、またはマルチゲート(Multiple-gate)のうちの少なくともいずれか1つの構造であってよい。
【0082】
ゲート絶縁膜360は、浮遊ボディ層340とゲート領域350を絶縁する構成要素であって、浮遊ボディ層340とゲート領域350の間に、酸化膜(Silicon oxide)、窒化膜(Silicon nitride)、酸化窒化膜(Silicon oxynitride)、酸化アルミニウム(Aluminum oxide)、酸化ハフニウム(Hafnium oxide)、酸化窒化ハフニウム(Hafnium Oxynitride)、酸化亜鉛(Zinc oxide)、酸化ジルコニウム(Zirconium oxide)、高分子絶縁膜(Polymer dielectric)、または酸化ハフニウムジルコニウム(HZO)のうちの少なくともいずれか1つで形成されてよい。
【0083】
また、ゲート絶縁膜360は、ポリシリコン(Poly-silicon)、アモルファスシリコン(Amorphous silicon)、金属酸化物(Metal oxide)、窒化ケイ素(Silicon nitride)、酸窒化ケイ素(Silicon oxynitride)、シリコンナノ結晶物質(Silicon nano-crystal)、または金属酸化物ナノ結晶のうちの少なくともいずれか1つで形成される電荷トラップ層を含んでもよい。
【0084】
このようなゲート領域350およびゲート絶縁膜360は、浮遊ボディ層340のドーピング濃度が一定値(例えば、5×1017cm-3)以上である場合には必要ないこともある。この場合、トランジスタ200は、2端子npnゲートレス(npn gateless)トランジスタまたはpnpゲートレス(pnp gateless)トランジスタの構造であってよい。
【0085】
以上で説明した水平型トランジスタ200および垂直型トランジスタ300は、ニューロモルフィック基盤の人工視知覚システムに含まれることにより、人工視知覚システムが生物学的視知覚システムを模倣することができるようになる。このような場合、人工視知覚システムは、上述した水平型トランジスタ200または垂直型トランジスタ300を少なくとも1つ以上含むことに留まらず、少なくとも1つのシナプス素子、少なくとも1つの抵抗、少なくとも1つの蓄電器、または少なくとも1つの追加のトランジスタ(水平型トランジスタ200または垂直型トランジスタ300とは区別される他のトランジスタ)のうちの少なくともいずれか1つをさらに含んでよい。
【0086】
図4は、光に反応するニューロン素子の動作原理を説明するための図である。
【0087】
図4を参照すると、
図2a~2bまたは
図3a~3bを参照しながら説明した、光に反応するニューロン素子を実現するトランジスタにおいて、ソース領域またはドレイン領域に電流信号が印加されれば、電荷が蓄積される統合(Integration)現象が発生することがある。この後、蓄積された電荷が一定値(発火閾値電圧(Firing threshold voltage:V
T、firing)に基づいた値)以上となれば、蓄積された電荷が抜け出る発火(Firing)現象が発生することがある。このような統合現象と発火現象の繰り返しにより、トランジスタがスパイク形態の電圧信号を出力するようになる。
【0088】
ここで、蓄積された電荷が一瞬にして抜け出る原理は、単一トランジスタのラッチ(Single transistor latch)現象に基づく。より具体的に説明すると、ソース領域およびドレイン領域における高電圧により発生した衝突電離(Impact ionization)によって生じた正孔が一定以上に蓄積されながら、急激に大きな電流が流れる現象である。
【0089】
このとき、衝突電離以外に、光子によって追加の正孔が生じるようになれば、発火閾値電圧(Firing threshold voltage:VT、firing)が減少するようになり、スパイキング周波数が増加するのと同じようにスパイキングが活発化する。
【0090】
したがって、光である光子に反応してスパイキング周波数が増加する生物学的網膜ニューロンの特性を、トランジスタによって模倣することができる。
【0091】
図5a~5bは、
図3a~3bに示されたトランジスタから実際に測定した光の強度による電気的測定結果を示したグラフである。以下、垂直型トランジスタに対する電気的測定結果について説明するが、水平型トランジスタに対する電気的測定結果も同じように現れる。
【0092】
図5aを参照すると、トランジスタに一定の電流信号が入力される場合、スパイク形態の電圧が出力されることを確認することができる。このとき、光が照射されれば、発火閾値電圧が減少しながらスパイキングが活発化することを確認することができる。その理由は、光子によって浮遊ボディ層に追加の正孔が生じながら、より低い電圧で発火が発生するようになるためである。
【0093】
図5bを参照すると、光の強度が増加するほど、スパイキング周波数が増加することが分かる。
【0094】
図5a~5bの実験は、垂直ナノワイヤ直径が700nmである垂直型トランジスタ(ニューロン素子)で直接測定したものであり、ニューロン動作を可能にするために-1Vのゲート電圧と100nAドレイン定電流を印加した。また、光源としては、LED白色光を使用した。
【0095】
図6a~6cは、
図3a~3bに示したトランジスタから実際に測定した光の波長による電気的測定結果を示したグラフである。以下、垂直型トランジスタに対する電気的測定結果について説明するが、水平型トランジスタに対する電気的測定結果も同じように現れる。
【0096】
図6aを参照すると、波長が638nmである赤色光(R)がトランジスタに照射されるときに、発火閾値電圧が減少しながらスパイキングが活発化することを確認することができる。一方、
図6bを参照すると、波長が1550nmである赤外線(IR)が照射されたときに、発火閾値電圧およびスパイキング周波数に変化がないことを確認することができる。
【0097】
その理由は、赤外線の場合、シリコンのエネルギーバンドギャップ(1.12eV)よりもそのエネルギーが小さく、これにより正孔が生じないためである。
【0098】
一方、
図6cを参照すると、赤色光(R)、緑色光(G)、青色光(B)のうちの青色光で、スパイキング周波数の変化が最も低いことが分かる。その理由は、波長が減少するほど、エネルギー損失が増加して浸透長(Penetration depth)が減少するためである。
【0099】
図6a~6cの実験も、垂直ナノワイヤ直径が700nmである垂直型トランジスタ(ニューロン素子)で直接測定したし、ニューロン動作を可能にするために-1Vのゲート電圧と100nAドレイン定電流を印加した。また、光源としては、レーザと、特定の波長帯の光を照射するためのダイオードを使用した。
【0100】
図7a~7cは、
図3a~3bに示したトランジスタのゲート電圧による電気的測定結果を示したグラフである。以下、垂直型トランジスタに対する電気的測定結果について説明するが、水平型トランジスタに対する電気的測定結果も同じように現れる。
【0101】
生物学的網膜ニューロンの光に対する反応性は、外部環境の影響を受ける。例えば、目が明るい環境に持続的に露出されれば反応性は低くなり、暗い環境に持続的に露出されれば反応性は高くなる。このような特性は、網膜ニューロンが変化する外部環境に適応することを手助けするものであり、トランジスタで実現されるニューロン素子もニューロン素子の反応性を調節する機能が必要となる。これは、ゲート電圧の調節によって実現される。
【0102】
図7aに示すように、ゲート電圧が-1Vであるときには、光が照射されることによって発火閾値電圧およびスパイキング周波数が大きく変化するが、
図7bに示すように、ゲート電圧が-2Vであるときには、変化がほぼないことを確認することができる。これにより、
図7cに示すように、ゲート電圧が増加するほど、スパイキング周波数の変化が増加することを確認することができる。
【0103】
その理由は、ゲート電圧が低いときには、ソース領域またはドレイン領域と浮遊ボディ層の間のエネルギーバリアの差が大きいため、光子によって追加の正孔が発生してもその影響が低いためである。
【0104】
図7a~7cの実験も、垂直ナノワイヤの直径が700nmである垂直型トランジスタ(ニューロン素子)で直接測定したし、ニューロン動作が可能となるように100nAドレイン定電流を印加した。また、光源としては、LED白色光を使用した。
【0105】
図8a~8bは、
図3a~3bに示したトランジスタを利用したパターン認識のシミュレーション結果を示したグラフである。以下、垂直型トランジスタを利用したシミュレーション結果について説明するが、水平型トランジスタを利用したシミュレーション結果も同じように現れる。
【0106】
図8aを参照すると、3×3の黒白ピクセルで構成されたイメージパターンから「X」パターンと「O」パターンを識別するための神経網が構成された。神経網は、9個の入力層(1~9)と9×2個の出力層(A、B)で構成されている。各ピクセスは1つの入力ニューロンを示し、白色画素は光を受けた画素、黒色画素は光を受けなかった画素を示す。SPICE回路シミュレーションを利用して、光を受けなかったニューロン素子のスパイキング特性と、1.2mWの白色光を受けたニューロン素子のスパイキング特性をモデリングしたし、シナプスは、有効抵抗として模写することができるため2端子抵抗で表現した。
【0107】
図8bを参照すると、各出力層と連結するシナプスから出力する電流の合計を比べたとき、「X」パターンが入力された場合には、出力層Aと連結するシナプスから出力する電流のスパイキング周波数がより大きく、「O」パターンが入力された場合には、出力層Bと連結するシナプスから出力する電流のスパイキング周波数がより大きいことを確認することができる。したがって、提案する光に反応するニューロン素子を利用してイメージパターン認識を実行することができ、イメージセンサと変換回路がなくても人工視知覚システムを構成することができるため、低いハードウェア費用で人工視知覚システムを構成できるだけでなく、光信号を電気信号に変換する過程において発生する信号遅延と、追加の電力消費などのボトルネック現象を解消することができる。これにより、説明したトランジスタが実現するニューロン素子は、固執的な人工視知覚システムを低費用で構成することができ、大量生産を可能にすることができる。
【0108】
以上のように、実施形態を、限定された実施形態および図面に基づいて説明したが、当業者であれば、上述した記載から多様な修正および変形が可能であろう。例えば、説明された技術が、説明された方法とは異なる順序で実行されたり、かつ/あるいは、説明されたシステム、構造、装置、回路などの構成要素が、説明された方法とは異なる形態で結合されたりまたは組み合わされたり、他の構成要素または均等物によって対置されたり置換されたとしても、適切な結果を達成することができる。
【0109】
したがって、異なる実施形態であっても、特許請求の範囲と均等なものであれば、添付される特許請求の範囲に属する。
【符号の説明】
【0110】
200:トランジスタ
210:半導体基板
220:浮遊ボディ層
230:ソース領域
240:ドレイン領域
250:ゲート絶縁膜
260:ゲート領域