(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】固定相の厚さ勾配を有するクロマトグラフィカラム
(51)【国際特許分類】
B01J 20/281 20060101AFI20241010BHJP
G01N 30/60 20060101ALI20241010BHJP
B01J 20/287 20060101ALI20241010BHJP
G01N 30/56 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
B01J20/281 Y
G01N30/60 K
B01J20/287
G01N30/56 E
G01N30/56 A
(21)【出願番号】P 2022530329
(86)(22)【出願日】2020-11-25
(86)【国際出願番号】 US2020062266
(87)【国際公開番号】W WO2021137979
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-09-20
(32)【優先日】2019-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513283512
【氏名又は名称】ザ レジェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミシガン
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファン、シュドン
(72)【発明者】
【氏名】チュー、ホンボ
(72)【発明者】
【氏名】シー、ジンヤン
(72)【発明者】
【氏名】リー、マックスウェル ウェイ - ハオ
(72)【発明者】
【氏名】倉林 活夫
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-080038(JP,A)
【文献】特開昭52-055594(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0139934(US,A1)
【文献】Hongbo Zhu,Development of Micro Gas Chromatographs and Micro Photoionization Detectors,2019年08月,96-117頁,https://deepblue.lib.umich.edu/bitstream/handle/2027.42/150066/hongbo_1.pdf?sequence=1&isAllowed=n.07 August 2019;Entire Document
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/281 - 27/292
G01N 30/00 - 30/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ又は複数の標的分析物のピークフォーカシングのためのガスクロマトグラフィ装置であって、
入口及び出口を有するクロマトグラフィカラムであって、前記入口が、前記出口で前記クロマトグラフィカラムを出る1つ又は複数の標的分析物を含む試料を受け取る、上記クロマトグラフィカラムと、
前記クロマトグラフィカラムの内部に堆積されて正の厚さ勾配を有する固定相であって、前記入口から前記出口まで延在し、前記クロマトグラフィカラムの前記入口において第1の厚さ及び前記クロマトグラフィカラムの前記出口において第2の厚さを有し、前記第2の厚さが前記第1の厚さよりも少なくとも約100%大きい上記固定相と、
を備える、
上記ガスクロマトグラフィ装置。
【請求項2】
前記第1の厚さが約10nm以上約10マイクロメートル以下であり、かつ前記第2の厚さが約30nm以上約30マイクロメートル以下である、請求項1に記載のガスクロマトグラフィ装置。
【請求項3】
前記第2の厚さが、前記第1の厚さに対して少なくとも約300%以上大きい、請求項1に記載のガスクロマトグラフィ装置。
【請求項4】
前記クロマトグラフィカラムがマイクロガスクロマトグラフィカラムである、請求項1に記載のガスクロマトグラフィ装置。
【請求項5】
前記固定相がシロキサンポリマーを含む、請求項1に記載のガスクロマトグラフィ装置。
【請求項6】
前記シロキサンポリマーが、1~30個の炭素原子を含む少なくとも1つのアルキル基又はアリール基を含む、請求項5に記載のガスクロマトグラフィ装置。
【請求項7】
前記クロマトグラフィカラムの断面形状が、円形、楕円形、長方形、及び三角形からなる群から選択される、請求項1に記載のガスクロマトグラフィ装置。
【請求項8】
ガスクロマトグラフィ装置におけるピークフォーカシングの方法であって、
クロマトグラフィカラムの内部に堆積されて正の厚さ勾配を有する固定相を含むクロマトグラフィカラムの入口に、2つ以上の標的分析物を導入することであって、前記固定相が、前記入口から出口まで延在し、前記クロマトグラフィカラムの前記入口において第1の厚さ及び前記クロマトグラフィカラムの前記出口において第2の厚さを有し、前記第2の厚さが前記第1の厚さよりも少なくとも約100%大きい、上記導入することと、
前記クロマトグラフィカラム内の2つ以上の標的分析物を分離することと、
前記クロマトグラフィカラムの前記出口から前記2つ以上の標的分析物を溶出させることと
を含む、上記方法。
【請求項9】
前記2つ以上の標的分析物が揮発性有機化合物(VOC)である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記2つ以上の標的分析物のうちの少なくとも1つが芳香族化合物を含み、かつ前記芳香族化合物の全ピークフォーカシング率が約25%以上である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記2つ以上の標的分析物のうちの少なくとも1つがアルカン化合物を含み、かつ前記アルカン化合物の全ピークフォーカシング率が約10%以上である、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の厚さが約10nm以上約10マイクロメートル以下であり、かつ前記第2の厚さが約30nm以上約30マイクロメートル以下である、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の厚さが、前記第1の厚さに対して少なくとも約300%以上大きい、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記クロマトグラフィカラムがマイクロガスクロマトグラフィカラムである、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記固定相が、1~30個の炭素原子を含む少なくとも1つのアルキル基又はアリール基を含むシロキサンポリマーを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
前記クロマトグラフィカラムの断面形状が、円形、楕円形、長方形、及び三角形からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
ガスクロマトグラフィ装置におけるピークフォーカシングを検証する方法であって、
2つ以上の標的分析物を、クロマトグラフィカラムの内部に堆積されて正の厚さ勾配を有する固定相を含むクロマトグラフィカラムの入口に導入することによってフォワード操作を実施することであって、前記固定相が、前記クロマトグラフィカラムの入口から出口まで延在し、前記クロマトグラフィカラムの前記入口において第1の厚さ及び前記出口において第2の厚さを有し、前記第2の厚さが前記第1の厚さよりも少なくとも約100%大きい、上記フォワード操作を実施することと、
前記クロマトグラフィカラム内の前記2つ以上の標的分析物を分離することとと、
前記クロマトグラフィカラムの前記出口から前記2つ以上の標的分析物を溶出させることと、
前記固定相を含む前記クロマトグラフィカラムの前記出口に前記2つ以上の標的分析物を導入することによってリバース操作を実施することと、
前記クロマトグラフィカラム内の前記2つ以上の標的分析物を分離することと、
前記クロマトグラフィカラムの前記入口から前記2つ以上の標的分析物を溶出させることと、
前記フォワード操作及び前記リバース操作からのクロマトグラフィ分解能を比較することであって、2つの標的分析物からの2つのピークの少なくとも1つの対応する対のピークフォーカシング率が5%より大きい、上記比較することと
を含む、上記方法。
【請求項18】
正の厚さ勾配を有するクロマトグラフィカラムを有するガスクロマトグラフィ装置を作製する方法であって、
前記クロマトグラフィカラムに前駆体液体を導入することであって、前記前駆体液体が、固定相前駆体と、前記クロマトグラフィカラムの長さに沿って揮発して前記クロマトグラフィカラムに沿って移動するときに前記固定相前駆体の濃度を増加させる低沸点溶媒とを含む、上記前駆体液体を導入することと、
前記固定相前駆体を反応又は架橋させて、
前記クロマトグラフィカラムの入口か
ら出口まで延在してお
り前記入口において第1の厚さ及
び前記出口において第2の厚さを有する前記正の厚さ勾配の固定相を形成することであって、前記第2の厚さが前記第1の厚さよりも少なくとも約100%大きい、上記固定相前駆体を反応又は架橋させて正の厚さ勾配の固定相を形成することと、
を含む上記方法。
【請求項19】
前記前駆体液体を導入する前に、前記クロマトグラフィカラムの内面をシラン化する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記シラン化することが、前記クロマトグラフィカラムを通して気相中の反応性シランを通過させることを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記クロマトグラフィカラムが入口及び出口を備え、かつ前記導入すること及び反応又は架橋することは、前記クロマトグラフィカラムに前記前駆体液体を部分的に充填し、前記入口に圧力を加えて前記前駆体液体を前記クロマトグラフィカラムの長さ押し下げ、及び前記出口に真空を適用して前記低沸点溶媒を気化させることによって、前記クロマトグラフィカラムの内面を動的にコーティングすることを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の厚さが約10nm以上約10マイクロメートル以下であり、かつ前記第2の厚さが約30nm以上約30マイクロメートル以下である、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記第2の厚さが、前記第1の厚さに対して少なくとも約300%以上大きい、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記クロマトグラフィカラムがマイクロガスクロマトグラフィカラムである、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記正の厚さ勾配の固定相がシロキサンポリマーを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
前記シロキサンポリマーが、1~30個の炭素原子を含む少なくとも1つのアルキル基又はアリール基を含む、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年11月25日に出願された米国仮出願第62/940,038号の利益を主張する。上記出願の全開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府支援
本発明は、米国空軍の空軍資材コマンドによって授与されたFA 8650-17-C-9106の下で政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
本開示は、ピークフォーカシングを高めるために正の厚さ勾配を有する固定相を有するクロマトグラフィカラムを備えるガスクロマトグラフィ装置に関する。
【背景技術】
【0004】
このセクションは、必ずしも従来技術ではない本開示に関連する背景情報を提供する。
【0005】
ガスクロマトグラフィ(GC)は、分離カラムを介して気相化合物を分離するための分析方法であり、標的試料中の化合物の分析及び同定を可能にする。GCは、揮発性有機化合物又は半揮発性有機化合物などの標的分析物を分離及び同定するために多くの産業で広く使用されている。GCは、個々の検出を必要とする複数の標的分析物を有する複雑な試料を分析するのに特に有用である。GCは、分離カラムを通過する化学物質の「ピーク」を観察することによって機能する。したがって、異なる化学物質又は標的分析物を有する試料は、注入器を介してカラムに導入される。カラムは、固定相と考えられる材料を内部に含む。試料の異なる部分は、(カラムに含まれる材料との各化学物質の物理的及び化学的相互作用のために)異なる速度でカラムを通過する。標的分析物がカラムから溶出し、カラムを出ると、検出器は、分析物がカラムを通過する速度に基づいて、経時的に溶出した種を区別することができる。そのような分析物は、検出中又は検出後に電子的に同定及び/又は定量することができる。クロマトグラフィカラム内の分離を改善して、性能及びGC検出能力を高めることが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
このセクションは、本開示の一般的な概要を提供し、その全範囲又はその特徴のすべての包括的な開示ではない。
【0007】
特定の態様では、本開示は、1つ又は複数の標的分析物のピークフォーカシングのためのガスクロマトグラフィ装置に関する。クロマトグラフィカラムは、入口及び出口を有し、入口は、出口でカラムを出る1つ又は複数の標的分析物を含む試料を受け取る。固定相は、クロマトグラフィカラムの内部に堆積され、正の厚さ勾配を有する。固定相は、入口から出口まで延在し、クロマトグラフィカラムの入口で第1の厚さを有し、クロマトグラフィカラムの出口で第2の厚さを有する。第2の厚さは、第1の厚さよりも少なくとも約10%大きい。
【0008】
一態様において、第1の厚さは約10nm以上約10マイクロメートル以下であり、第2の厚さは約30nm以上約30マイクロメートル以下である。
【0009】
一態様では、第2の厚さは、第1の厚さに対して少なくとも約100%以上大きい。
【0010】
一態様では、第2の厚さは、第1の厚さに対して少なくとも約300%以上大きい。
【0011】
一態様において、クロマトグラフィカラムは、マイクロガスクロマトグラフィカラムである。
【0012】
一態様では、固定相はシロキサンポリマーを含む。
【0013】
さらなる一態様では、シロキサンポリマーは、1~30個の炭素原子を含む少なくとも1つのアルキル基又はアリール基を含む。
【0014】
一態様では、クロマトグラフィカラムの断面形状は、円形、楕円形、長方形、及び三角形からなる群から選択される。
【0015】
本開示はまた、ガスクロマトグラフィ装置におけるピークフォーカシングの方法に関する。この方法は、クロマトグラフィカラムの内部に堆積されて正の厚さ勾配を有する固定相を含むクロマトグラフィカラムの入口に、2つ以上の標的分析物を導入することを含む。固定相は、入口から出口まで延在し、クロマトグラフィカラムの入口で第1の厚さを有し、クロマトグラフィカラムの出口で第2の厚さを有する。第2の厚さは、第1の厚さよりも少なくとも約10%大きい。本方法は、クロマトグラフィカラム内の2つ以上の標的分析物を分離することをさらに含む。この方法はまた、クロマトグラフィカラムの出口から2つ以上の標的分析物を溶出することを含む。
【0016】
一態様では、2つ以上の標的分析物は、揮発性有機化合物(VOC)である。
【0017】
一態様では、2つ以上の標的分析物のうちの少なくとも1つは芳香族化合物を含み、芳香族化合物の全ピークフォーカシング率は約25%以上である。
【0018】
一態様では、2つ以上の標的分析物のうちの少なくとも1つはアルカン化合物を含み、アルカン化合物の全ピークフォーカシング率は約10%以上である。
【0019】
一態様において、第1の厚さは約10nm以上約10マイクロメートル以下であり、第2の厚さは約30nm以上約30マイクロメートル以下である。
【0020】
一態様では、第2の厚さは、第1の厚さに対して少なくとも約300%以上大きい。
【0021】
一態様において、クロマトグラフィカラムは、マイクロガスクロマトグラフィカラムである。
【0022】
一態様では、固定相は、1~30個の炭素原子を含む少なくとも1つのアルキル基又はアリール基を含むシロキサンポリマーを含む。
【0023】
一態様では、クロマトグラフィカラムの断面形状は、円形、楕円形、長方形、及び三角形からなる群から選択される。
【0024】
本開示はまた、ガスクロマトグラフィ装置におけるピークフォーカシングを検証する方法に関する。この方法は、クロマトグラフィカラムの内部に堆積されて正の厚さ勾配を有する固定相を含むクロマトグラフィカラムの入口に、2つ以上の標的分析物を導入することによってフォワード操作を行うことを含む。固定相は、入口から出口まで延在し、クロマトグラフィカラムの入口で第1の厚さを有し、クロマトグラフィカラムの出口で第2の厚さを有する。第2の厚さは、第1の厚さよりも少なくとも約10%大きい。フォワード操作は、クロマトグラフィカラム内の2つ以上の標的分析物を分離することと、クロマトグラフィカラムの出口から2つ以上の標的分析物を溶出することとを含む。この方法はまた、2つ以上の標的分析物を、固定相を含むクロマトグラフィカラムの出口に導入することによってリバース操作を行うことを含む。リバース操作は、クロマトグラフィカラム内の2つ以上の標的分析物を分離することと、クロマトグラフィカラムの入口から2つ以上の標的分析物を溶出することとを含む。この方法は、フォワード操作及びリバース操作によるクロマトグラフィ分解能を比較することをさらに含み、2つの標的分析物からの2つのピークの少なくとも1つの対応する対のピークフォーカシング率は5%より大きい。
【0025】
本開示はさらに、正の厚さ勾配を有するクロマトグラフィカラムを有するガスクロマトグラフィ装置を作製する方法にも関する。この方法は、クロマトグラフィカラムに前駆体液体を導入することを含む。前駆体液体は、固定相前駆体と、クロマトグラフィカラムの長さに沿って揮発して、カラムに沿って移動するときに固定相前駆体の濃度を増加させ、したがって固定相の厚さ勾配を生成する低沸点溶媒とを含む。この方法はまた、固定相前駆体を反応又は架橋して、入口から出口まで延在しクロマトグラフィカラムの入口で第1の厚さ及びクロマトグラフィカラムの出口で第2の厚さを有する正の厚さ勾配固定相を形成することを含む。第2の厚さは、第1の厚さよりも少なくとも約10%大きい。
【0026】
一態様では、前駆体液体を導入する前に、クロマトグラフィカラムの内面をシラン化する。
【0027】
一態様では、シラン化することは、カラムを通して気相中の反応性シランを通過させることを含む。
【0028】
一態様では、クロマトグラフィカラムは入口及び出口を備え、導入及び反応又は架橋することは、クロマトグラフィカラムに前駆体液体を部分的に充填し、入口に圧力を加えて前駆体液体をカラムの長さ押し下げ、出口に真空を適用して低沸点溶媒を気化させることによって、クロマトグラフィカラムの内面を動的にコーティングすることを含む。
【0029】
一態様において、第1の厚さは約10nm以上約10マイクロメートル以下であり、第2の厚さは約30nm以上約30マイクロメートル以下である。
【0030】
一態様では、第2の厚さは、第1の厚さに対して少なくとも約100%以上大きい。
【0031】
一態様では、第2の厚さは、第1の厚さに対して少なくとも約300%以上大きい。
【0032】
一態様において、クロマトグラフィカラムは、マイクロガスクロマトグラフィカラムである。
【0033】
一態様では、固定相はシロキサンポリマーを含む。
【0034】
さらなる一態様では、シロキサンポリマーは、1~30個の炭素原子を含む少なくとも1つのアルキル基又はアリール基を含む。
【0035】
さらなる適用領域は、本明細書で提供される説明から明らかになるであろう。この概要における説明及び特定の例は、例示のみを目的とするものであり、本開示の範囲の限定を意図するものではない。
【0036】
本明細書で説明される図面は、選択された実施形態の例示のみを目的としており、すべての可能な実施態様ではなく、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】ガスクロマトグラフィ装置システムの例示的な実施形態を示す。
【0038】
【
図2】本開示の特定の態様による、ピークフォーカシングを高めるための正の厚さ勾配を有する固定相を有するクロマトグラフィカラムの断面図である。
【0039】
【
図3A】
図3A-3Cは、本開示の特定の態様による膜厚勾配カラム(FTGC)によるピークフォーカシングの図である。より薄いものからより厚い膜は、
図3Aに示すようにカラムに沿って移動するときに分析物ピークをフォーカスさせる。
【
図3C】フォワード及びバックワード/リバース操作モードの図である。
【0040】
【
図4A】FTGCコーティング設定の図である。カラムは、コーティング溶液プラグが部分的に充填され、続いて混合物を5psiの圧力で押し出すことによって動的にコーティングされる。溶液を押し出しながら、-2psiの真空圧力を出口に加えて溶媒を気化させた。
【
図4B】膜厚34nmのカラム入口付近のSEM画像である。
【
図4C】膜厚241nmのカラム出口付近のSEM画像である。
【0041】
【
図5A】フォワード操作モードにおけるC
7~C
16アルカン混合物の分離のグラフである。
【
図5B】バックワード又はリバース操作モードでの同一パラメータにおけるC
7~C
1
6アルカン混合物の分離のグラフである。
【
図5C】C
7~C
16アルカン混合物の分離が等時間バックワード・モードであるグラフである。
【
図5D】均一な厚さのカラムを用いたC
7~C
16アルカン混合物の分離のグラフである。
【0042】
【
図6】C
7~C
16アルカンについて、フォワード及び同一パラメータ等時間リバース/バックワード・モードと均一な厚さのカラムとの間の分解能の差を示すグラフである。
【0043】
【
図7A】フォワード・モードにおける芳香族混合物の分離のグラフである。
【
図7B】同一パラメータにおける芳香族混合物の分離のグラフである。
【
図7C】等時間バックワード/リバース・モデルにおける芳香族混合物の分離のグラフである。
【
図7D】均一な厚さのカラムを有する比較カラムにおける芳香族混合物の分離のグラフである。ピーク1、2、3、4及び5は、それぞれ、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、o-キシレン及び1,3-ジクロロベンゼンに対応する。
【0044】
【
図8】芳香族化合物の分離について、フォワード及び同一パラメータ等時間バックワード・モードと均一な厚さのカラムとの間の分解能の差を示すグラフである。
【0045】
【
図9A】フォワード・モードにおけるC
5及びC
6の室温等温分離のグラフである。
【
図9B】C
5及びC
6の同一パラチオン・リバース/バックワード・モードの室温等温分離のグラフである。
【
図9C】均一な厚さのカラムを使用したC
5及びC
6の室温等温分離のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
対応する参照番号は、図面のいくつかの図を通して対応する部分を示す。
【0047】
例示的な実施形態は、本開示が徹底的であり、当業者に範囲を十分に伝えるように提供される。本開示の実施形態の完全な理解を提供するために、特定の組成物、構成要素、装置、及び方法の例など、多数の特定の詳細が記載されている。特定の詳細を採用する必要がないこと、例示的な実施形態を多くの異なる形態で具体化することができること、及びいずれも本開示の範囲を限定するものと解釈されるべきではないことは、当業者には明らかであろう。いくつかの例示的な実施形態では、周知のプロセス、周知の装置構造、及び周知の技術は詳細には説明されない。
【0048】
本明細書で使用される用語は、特定の例示的な実施形態を説明するためだけのものであり、限定することを意図するものではない。本明細書で使用される単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数形も含むことが意図され得る。「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(including)」、及び「有する(having)」という用語は包括的であり、したがって、記載された特徴、要素、組成物、ステップ、整数、操作、及び/又は構成要素の存在を特定するが、1つ又は複数の他の特徴、整数、ステップ、操作、要素、構成要素、及び/又はそれらのグループの存在又は追加を排除するものではない。「含む(comprising)」というオープンエンドの用語は、本明細書に記載の様々な実施形態を説明及び特許請求するために使用される非限定的な用語として理解されるべきであるが、特定の態様では、この用語は代わりに、「からなる(consisting of)」又は「から本質的になる(consisting essentially of)」などのより制限する限定的な用語であると理解されてもよい。したがって、組成物、材料、構成要素、要素、特徴、整数、操作、及び/又はプロセスステップを列挙する任意の所与の実施形態について、本開示はまた、具体的には、そのような列挙された組成物、材料、構成要素、要素、特徴、整数、操作、及び/又はプロセスステップからなるか、又は本質的になる実施形態を含む。「からなる(consisting of)」の場合、代替的な実施形態は、任意の追加の組成物、材料、構成要素、要素、特徴、整数、操作、及び/又はプロセスステップを除外し、「から本質的になる(consisting essentially of)」の場合、基本的かつ新規な特性に実質的に影響を及ぼす任意の追加の組成物、材料、構成要素、要素、特徴、整数、操作、及び/又はプロセスステップは、そのような実施形態から除外されるが、基本的かつ新規な特性に実質的に影響を及ぼさない任意の組成物、材料、構成要素、要素、特徴、整数、操作、及び/又はプロセスステップは、その実施形態に含まれ得る。
【0049】
本明細書に記載された任意の方法ステップ、プロセス、及び操作は、実行の順序として具体的に特定されない限り、必ずしも説明又は図示された特定の順序でそれらの実行を必要とすると解釈されるべきではない。他に指示がない限り、追加の又は代替のステップが使用されてもよいことも理解されたい。
【0050】
構成要素、要素、又は層が、別の要素又は層「の上にある」、「に係合される」、「に接続される」、又は「に連結される」と言及される場合、それは他の構成要素、要素、又は層の上に直接あるか、係合されるか、接続されるか、又は連結されてもよく、あるいは介在する要素又は層が存在してもよい。対照的に、ある要素が、別の要素又は層に対して「直接上に」、「直接係合される」、「直接接続される」、又は「直接連結される」と言及される場合、介在する要素又は層は存在しなくてもよい。要素間の関係を説明するために使用される他の単語(例えば、「間に」対「直接間に」、「隣接する」対「直接隣接する」など)も同様に解釈されるべきである。本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語は、関連する列挙された項目のうちの1つ又は複数のありとあらゆる組み合わせを含む。
【0051】
本明細書では、様々なステップ、要素、構成要素、領域、層及び/又はセクションを説明するために第1、第2、第3などの用語が使用され得るが、これらのステップ、要素、構成要素、領域、層及び/又はセクションは、特に明記しない限り、これらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、1つのステップ、要素、構成要素、領域、層又は部分を別のステップ、要素、構成要素、領域、層又は部分と区別するためにのみ使用され得る。「第1」、「第2」などの用語、及び他の数値用語は、本明細書で使用される場合、文脈によって明確に示されない限り、順序又は順番を意味しない。したがって、以下に説明する第1のステップ、要素、構成要素、領域、層又は部分は、例示的な実施形態の教示から逸脱することなく、第2のステップ、要素、構成要素、領域、層又は部分と呼ぶことができる。
【0052】
「前(before)」、「後(after)」、「内側(inner)」、「外側(outer)」、「下(beneath)」、「下(below)」、「下方(lower)」、「上(above)」、「上方(upper)」などの空間的又は時間的に相対的な用語は、本明細書では、図に示すように、1つの要素又は特徴と別の要素(複数可)又は特徴(複数可)との関係を説明するための説明を容易にするために使用され得る。空間的又は時間的に相対的な用語は、図に示された向きに加えて、使用中又は操作中の装置又はシステムの異なる向きを包含することを意図することができる。
【0053】
本開示を通して、数値は、所与の値からのわずかな偏差、及び言及された値とほぼ同じ値を有する実施形態、並びに言及された値と正確に同じ値を有するものを包含する範囲の近似的な尺度又は限界を表す。詳細な説明の最後に提供される実施例以外に、添付の特許請求の範囲を含む本明細書における(例えば、量又は条件の)パラメータのすべての数値は、「約」が実際に数値の前に現れるか否かにかかわらず、すべての場合において「約」という用語によって修飾されると理解されるべきである。「約」は、記載された数値が多少の不正確さを許容することを示す(数値の正確さに多少近づく;およそ、又は数値に合理的に近い;ほぼ)。「約」によって提供される不正確さが、この通常の意味で当技術分野で他の方法で理解されない場合、本明細書で使用される「約」は、そのようなパラメータを測定及び使用する通常の方法から生じ得る少なくとも変動を示す。例えば、「約」は、5%以下、任意に4%以下、任意に3%以下、任意に2%以下、任意に1%以下、任意に0.5%以下、特定の態様では、任意に0.1%以下の変動を含み得る。
【0054】
さらに、範囲の開示は、範囲に与えられた終点及び部分範囲を含む、全範囲内のすべての値及びさらに分割された範囲の開示を含む。
【0055】
ここで、添付の図面を参照して、例示的な実施形態をより完全に説明する。
【0056】
様々な態様において、本教示はガスクロマトグラフィに関する。
図1に示すように、ガスクロマトグラフィシステム20の簡略図は、典型的には、少なくとも5つの構成要素:(1)キャリアガス供給源20、(2)試料注入システム22、(3)1つ以上のガスクロマトグラフィカラム30、(4)検出器32、(5)データ処理システム34を有する。キャリアガス供給源20として導入されるキャリアガス(移動相とも呼ばれる)は、ヘリウム、水素、窒素、アルゴン、又は空気などの高純度で比較的不活性なガスである。従来のシステムにおけるキャリアガス20は、(分離プロセス全体にわたって)試験される試料流体と同時にカラム30を通って流れる。試料注入器22は、キャリアガス供給源20からの流れるキャリアガスと組み合わせることによって、試験されるべき1つ又は複数の標的分析物(例えば、気体形態)を含む所定量の試料混合物をカラム30に導入する。したがって、キャリアガス供給源20及び試料22(潜在的に1つ又は複数の標的分析物を有する)が、1つ又は複数のクロマトグラフィカラム30に導入される。試料22は、キャリアガス供給源20から同時に注入されたキャリアガスと共に移動する。
【0057】
試料24からの標的分析種は分離され、カラム30を通って輸送され、したがってそこから溶出される。1つ又は複数の標的分析物を有する溶出試料は、クロマトグラフィカラム30を通過して分離されるときのそれぞれの標的分析物種の遅延に応じて、部分画分でカラム30から溶出され得ることに留意されたい。さらに、カラム30から溶出する試料画分は、任意に捕捉され、下流に再注入されてもよい。
【0058】
典型的には、固定相として機能する材料でカラムの内面がコーティングされている(又はカラムの内部が充填されている)ので、クロマトグラフィカラム30内で分離が達成される。「カラム」という用語の使用は、1つ又は複数の基板に画定された微細機構からのパターン化された流れ領域又は当業者によって認識される他の流体流路など、流体が流れることができる様々な流路を広く含むことを意図している。固定相は、試料混合物中の異なる標的分析物を異なる程度まで吸着する。吸着の差は、異なる化学種がカラムを移動するときに異なる遅延、したがって移動速度を引き起こし、それによって試料混合物中の標的分析物の物理的分離をもたらす。特定のバリエーションにおいて、クロマトグラフィカラムは、マイクロガスクロマトグラフィカラムである。本明細書で使用される場合、「マイクロスケール」は、約500μm未満、任意に約400μm未満、任意に約300μm未満、任意に約200μm未満、任意に約150μm未満、特定のバリエーションでは、任意に約100μm未満である少なくとも一次元を有する構造を指し、ナノスケールの特徴も包含し得る。本明細書で使用される場合、マイクロスケール、マイクロチャネル、マイクロ流体チャネル、又は微細構造への言及は、同等のナノスケール構造などのより小さい構造を包含する。直径などの1つの寸法はマイクロスケール範囲内に入り得るが、長さなどの他の寸法はマイクロスケール範囲を超えてもよいことにも留意されたい。
【0059】
分離された様々な成分は、カラム30から溶出され、分析のために1つ又は複数の検出器32に入る。したがって、1つ又は複数の検出器32は、1つ又は複数のカラム30の端部に配置される。したがって、検出器32は、異なる時間にカラム30から出現又は溶出する試料中の様々な化学物質又は標的分析物を検出するのに役立つ。そのような検出器32は、典型的には、溶出画分の破壊分析によってガスクロマトグラフィシステムで動作する。検出器32の典型的な非限定的な例には、質量分析計(MS)(例えば、飛行時間型質量分析計(TOFMS))、水素炎イオン化型検出器(FID)、光イオン化検出器(PID)、電子捕捉検出器(ECD)、熱伝導率検出器(TCD)などが含まれる。データ処理システム34はまた、典型的には分離試験結果を記憶、処理、及び記録することができるように、典型的には検出器32と通信する。
【0060】
壁コーティング毛細管クロマトグラフィカラムでは、気相と毛細管壁にコーティングされた固定相との間の蒸気相互作用により、分析物の保持が可能になる。分析物がカラムに沿って移動するにつれて、分析物は縦方向及び横方向の物質移動に遭遇し、その結果、ピークが広がり、GC分解能が低下し、共溶出の可能性が高まる。典型的には、(十分な分析物相互作用及び保持を可能にするために)クロマトグラフィカラム内の固定相の適切な選択、温度プログラムされたプロファイルの適用、及びスプリット/スプリットレス試料注入は、クロマトグラフ分離及び分離の改善を可能にする。しかしながら、場合によっては、これらの方法は、所望の分離を達成するには不十分である。例えば、ポータブルGCでは、限られたキャリアガス供給がスプリット注入の使用を妨げる一方で、温度プログラミングの精密な制御は困難であり、システム電力容量によって制限される。さらに、特殊な分離(例えば、多孔質層開放管状カラムによる高揮発性化合物の分離)であっても、関連化合物の全範囲を完全に分離することは困難であり得る。したがって、カラム分離を改善するための追加の方法が望ましい。
【0061】
負の温度勾配分離(NTGS)は、溶出ピークを鋭くすることによってカラム性能を改善するために使用されてきた1つの方法である。NTGSでは、カラム入口は、加熱され、周囲環境との熱交換によって温度勾配が生成される。温度はカラム出口に向かって低いので、ピークの前部はその後部よりもゆっくりと移動し、全体的なピークフォーカシングをもたらす。この効果は、カラムに沿って異なる温度プロファイルを調整することによって最適化することができ、異なる条件下で高い汎用性を可能にする。しかしながら、NTGSが熱交換に依存しているため、フォーカシングは周囲温度、湿度、空気対流速度、及び充填材料の熱伝導率によって異なり、再現性及び予測性が低下する(特に複雑な温度プロファイルが使用される場合)。精巧な熱制御モジュールを使用して温度勾配を安定させることができるが、GC装置に追加のサイズ、重量、複雑さ、及びコストが加わる。さらに、前述の熱交換によるエネルギー損失は、限られたリソースを有するシステム(例えば、マイクロGC装置)にとって関連する不利益である。さらに、高揮発性化合物の分離は、周囲温度付近を必要とすることが多く、その結果、温度勾配の発生が回避又は最小化され、したがってNTGS効果を阻害する。したがって、汎用性及び調整可能であるが、特定の用途(例えば、ポータブルGC)に対するNTGSの使用は制限され、困難であり得る。
【0062】
本開示は、ガスクロマトグラフィ中のピークフォーカシングのための新しい方法を提供する。特定の態様では、1つ又は複数の標的分析物のピークフォーカシングのためのガスクロマトグラフィ装置は、入口及び出口を有するクロマトグラフィカラムを備える。入口は、出口でカラムを出る1つ又は複数の標的分析物を含む試料を受け取る。固定相は、クロマトグラフィカラムの内部に配置又は堆積され、正の厚さ勾配を有する。固定相は、入口から出口まで延在し、クロマトグラフィカラムの入口で第1の厚さを有し、クロマトグラフィカラムの出口で第2の厚さを有する。以下でさらに説明するように、第2の厚さは、第1の厚さよりも少なくとも約10%大きい。このように、正の固定相の厚さ勾配は、固定相の膜厚が入口から出口に向かって増加する勾配である。出口に向けて固定相の厚さが増加しているので、ピークの前部はその後部よりもゆっくりと移動し、全体的なピークフォーカシングをもたらす。
【0063】
図2は、1つ又は複数の標的分析物のピークフォーカシングを可能にする、本開示の特定の態様に従って調製されたクロマトグラフィカラム50の一例を示す。特定の態様では、1つ又は複数の標的分析物は、クロマトグラフィカラム50内で使用される温度及び圧力で比較的高い蒸気圧、したがって低沸点を有する揮発性有機化合物(VOC)であり得る。VOC標的分析物は、アルカン又は芳香族化合物を含み得る。
【0064】
クロマトグラフィカラム50は壁60によって画定されている。したがって、クロマトグラフィカラム50の壁60は、固定相64によって少なくとも部分的に占有され得る中空内部領域52を有する構造を画定することができる。クロマトグラフィカラム50の断面形状は、円形、楕円形、長方形、及び三角形からなる群から選択され得る。特定の態様では、クロマトグラフィカラム50は、金属、シリカ若しくはガラス、又はポリマーから形成される。クロマトグラフィカラム50は、入口70及び出口72を画定する。
図2に示すように、壁60は一定の厚さを有する。したがって、「T
1」で示される入口70における壁60の第1の厚さは、出口72における「T
2」で示される第2の厚さと同じである。
【0065】
上記のように、試料/担体移動相中の1つ又は複数の標的化合物の混合物は、カラムを通過するときに固定相64と相互作用する。各標的分析物は、固定相64と異なる程度まで、又は異なる速度で相互作用する。固定相64との相互作用が最も少ない分析物は、クロマトグラフィカラム50から最初に出るか、又は溶出する。一般に、固定相64との相互作用が最も多い標的分析物は、最も遅い速度でカラム50を通って移動し、したがって最後に出る。移動相(担体及び試料)及び固定相65の特性を変更することによって、標的分析物の異なる混合物を分離することができる。以下に説明するように、本技術の文脈における固定相64は、1つ又は複数の標的分析物のピークフォーカシングを可能にする正の厚さ勾配を有し、これは一般に、クロマトグラフィカラム50の入口70から出口72に移動するにつれて分析物ピークがフォーカスされることを意味する。
【0066】
特定のバリエーションでは、固定相64は、シリカ又はシロキサンポリマーなどのケイ素を含んでもよい。様々なシロキサン系ポリマーが固定相64を形成し得る。一般に、シロキサンポリマーは、一般に構造反復単位(-O-SiRR’-)nによって記載される、同じであっても異なっていてもよい側鎖構成基を有するケイ素及び酸素の基本骨格を有する架橋ポリマーであり、式中、R及びR’は同じ又は異なる側鎖基であってもよく、「n」は2を超える任意の値であってもよい。シリカ又はシロキサンの表面官能化は、異なる短鎖オルガノシランとのモノマー又はポリマー反応で実施してシラノール基と反応させることができる。標的分析物による保持機構は同じままであるが、異なる固定相の表面化学の違いは、異なる標的分析物に対する選択性の変化をもたらす。シロキサンポリマーは、ポリヘテロシロキサンを含んでいてもよく、側基又は反復単位は異なっていてもよい。適切な側基の例は、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、フェニル、アルキルフェニルなどを含むがこれらに限定されない、1~30個の炭素原子を含む少なくとも1つの非置換又は置換アルキル基又はアリール基であり得る。
【0067】
様々な態様では、固定相64は、壁60の内面66に堆積され、正の厚さ勾配を画定する。特定のバリエーションでは、以下でさらに説明するように、内面66を最初にシラン化し、例えば内面66をヘキサメチルジシラザン(HMDS)蒸気に曝露し、シラン又はシラノール含有表面コーティングを形成することができる。次いで、シロキサンポリマーの前駆体、例えば、Silicone OV-1、Ohio Valley Specialty CompanyからOV-1 6001又はSilicone OV-17として市販されているビニル変性-100%ジメチルシリコーン、Ohio Valley Specialty CompanyからOV-1 6017として市販されているビニル変性-50%フェニルシリコーン-50%メチルシリコーンを注入し、反応させて固定相を形成することができる。Dow SYLGARD(商標)184試薬B(15% w/w、架橋剤)などの架橋剤を前駆体と共に添加して架橋を促進することもできる。特に、固定相64はこのような材料に限定されず、これらは単にガスクロマトグラフィカラムの適切な例として提供されているにすぎない。
【0068】
示されるように、固定相64は、壁60の内面66に沿って入口70から出口72まで延在する。したがって、固定相64は、内面66上に連続的なコーティング又はフィルムを形成する。固定相64は、入口70において、「t1」によって指定される第1の厚さを有する。固定相64はまた、出口72において、「t2」によって指定される第2の厚さを画定する。第2の厚さ(t2)は、第1の厚さ(t1)よりも少なくとも約10%大きい。したがって、固定相64は、クロマトグラフィカラム50の長さに沿って正の勾配厚さを画定する。このようにして、内部領域52は、入口70における固定相64の第1の厚さ(t1)によって画定される第1の直径「d1」を有する。内部領域52は、出口72における固定相64の第2の厚さ(t2)によって画定される第2の直径「d2」を有する。第1の直径(d1)は、第2の直径(d2)よりも大きい。このようにして、固定相64は、クロマトグラフィカラム50内に正の厚さ勾配を画定する。
【0069】
特定の態様では、厚さ勾配は、第1の厚さ(t1)と第2の厚さ(t2)との間でクロマトグラフィカラム50の長さに沿って徐々に増加する。固定相64の厚さの変化は、一定であってもよく、又はクロマトグラフィカラム50の長さに沿って変化してもよいが、厚さは入口70から出口72へと増加する。
【0070】
特定のバリエーションでは、第2の厚さ(t2)は、第1の厚さ(t1)より少なくとも約50%大きく、任意に第1の厚さ(t1)より少なくとも約100%大きく、任意に第1の厚さ(t1)より少なくとも約150%大きく、任意に第1の厚さ(t1)より少なくとも約200%大きく、任意に第1の厚さ(t1)より少なくとも約250%大きく、特定のバリエーションでは、任意に第2の厚さ(t2)は第1の厚さ(t1)より少なくとも約300%大きい。第1の厚さ(t1)は、約10nm以上約10マイクロメートル以下であってもよく、第2の厚さ(t2)は約30nm以上約30マイクロメートル以下である。1つのバリエーションでは、第1の厚さ(t1)は約30nmであり、第2の厚さ(t2)は約30マイクロメートルである。
【0071】
図3A~
図3Cは、本開示の特定の態様による、本明細書では膜厚勾配カラム(FTGC)とも呼ばれる正の膜厚勾配を使用することによるピークフォーカシングの図である。
図3Aに見られるように、所与の分析物80について、ピーク82は、分析物80がカラム84の入口88から出口90まで延在する正の厚さ勾配を有する固定相86を有するカラム84を移動するにつれてますますフォーカスする。したがって、より薄いものからより厚い固定相86の膜厚(入口88から出口90への方向)は、
図3Aに示すようにブロック矢印の方向にカラムに沿って移動するときに分析物ピーク82をフォーカシングさせる。
図3Bは、カラム性能評価のための設定の図である。カラム84は、水素炎イオン化型検出器(FID)98を備えたAgilent 6890ベンチトップGC 96の注入器94と流体連通して設置される。
図3Cは、フォワード(上)及びバックワード/リバース操作モード(下)の図である。言い換えれば、少なくとも2つの標的分析物を含む試料は、入口88からフォワード・モード(上)で導入され、クロマトグラフィカラム84の出口90に向かってブロック矢印の方向に移動する。バックワード又はリバース・モード(下)では、少なくとも2つの標的分析物を含む試料がクロマトグラフィカラム84の出口90に導入され、次いでブロック矢印の方向に入口88に向かって移動する。
【0072】
特定の態様では、本開示は、ガスクロマトグラフィ装置におけるピークフォーカシングの方法を企図する。この方法は、クロマトグラフィカラムの内部に堆積されて正の厚さ勾配を有する固定相を含むクロマトグラフィカラムの入口に、2つ以上の標的分析物を導入することを含んでよい。固定相は、入口から出口まで延在し、クロマトグラフィカラムの入口で第1の厚さを有し、クロマトグラフィカラムの出口で第2の厚さを有する。第2の厚さは、第1の厚さよりも少なくとも約10%大きい。固定相は、前述のいずれかであってもよい。本方法は、クロマトグラフィカラム内の2つ以上の標的分析物を分離することを含む。さらにそれから、2つ以上の標的分析物がクロマトグラフィカラムの出口から溶出される。
【0073】
特定の態様では、2つ以上の標的分析物は、揮発性有機化合物(VOC)である。一態様では、2つ以上の標的分析物のうちの少なくとも1つは芳香族化合物を含み、芳香族化合物の全ピークフォーカシング率は約25%以上であり、例えば約26%以上であってもよく、任意に約27%以上であってもよく、特定のバリエーションでは、任意に約28%以上であってもよい。
【0074】
別の態様では、2つ以上の標的分析物のうちの少なくとも1つはアルカン化合物を含み、アルカン化合物の全ピークフォーカシング率は約10%以上であり、特定の態様では、任意に約11%以上であってもよい。
【0075】
さらに別の態様では、本開示は、ガスクロマトグラフィ装置におけるピークフォーカシングを検証する方法を企図する。この方法は、クロマトグラフィカラムの内部に堆積されて正の厚さ勾配を有する固定相を含むクロマトグラフィカラムの入口に、2つ以上の標的分析物を導入することによってフォワード操作を行うことを含む。固定相は、入口から出口まで延在し、クロマトグラフィカラムの入口で第1の厚さを有し、クロマトグラフィカラムの出口で第2の厚さを有し、第2の厚さは第1の厚さよりも少なくとも約10%大きい。固定相は、上記の設計及び組成のいずれかを有し得る。フォワード操作は、クロマトグラフィカラム内の2つ以上の標的分析物を分離し、続いて、クロマトグラフィカラムの出口から2つ以上の標的分析物を溶出することを含む。次いで、2つ以上の標的分析物を、固定相を含むクロマトグラフィカラムの出口に導入することによって、リバース操作が行われる。リバース操作は、クロマトグラフィカラム内の2つ以上の標的分析物を分離することと、クロマトグラフィカラムの入口から2つ以上の標的分析物を溶出することとをさらに含む。この方法は、フォワード操作及びリバース操作によるクロマトグラフィ分解能を比較することをさらに含み、2つの標的分析物からの2つのピークの少なくとも1つの対応する対のピークフォーカシング率は5%より大きく、任意に約10%以上である。
【0076】
本開示、正の厚さ勾配を有するクロマトグラフィカラムを有するガスクロマトグラフィ装置を作製する方法を企図する。この方法は、クロマトグラフィカラムに前駆体液体を導入することを含む。前駆体液体は、固定相前駆体と、クロマトグラフィカラムの長さに沿って揮発して、カラムに沿って移動するときに固定相前駆体の濃度を増加させ、したがって固定相の厚さ勾配を生成する低沸点溶媒とを含む。この方法はまた、固定相前駆体を反応又は架橋して、入口から出口まで延在しクロマトグラフィカラムの入口で第1の厚さ及びクロマトグラフィカラムの出口で第2の厚さを有する正の厚さ勾配固定相を形成することを含む。第2の厚さは、第1の厚さよりも少なくとも約10%大きい。
【0077】
特定の態様では、前駆体液体を導入する前に、クロマトグラフィカラムの内面をシラン化する。シラン化することは、カラムを通して気相中の反応性シランを通過させることを含んでよい。一例では、反応性シランは、内面にシラン含有表面コーティングを形成するヘキサメチルジシラザン(HMDS)蒸気であってもよい。特定のバリエーションでは、反応性シランはクロマトグラフィカラムを複数回通過してもよい。
【0078】
シロキサンポリマーの前駆体、例えば、Silicone OV-1、Ohio Valley Specialty CompanyからOV-1 6001又はSilicone OV-17として市販されているビニル変性-100%ジメチルシリコーン、Ohio Valley Specialty CompanyからOV-1 6017として市販されているビニル変性-50%フェニルシリコーン-50%メチルシリコーンを注入し、反応させて固定相を形成することができる。Dow SYLGARD(商標)184試薬B(15% w/w、架橋剤)などの架橋剤を前駆体と共に添加して架橋を促進することもできる。特に、固定相はこのような材料に限定されず、これらは単にガスクロマトグラフィカラムの適切な例として提供されているにすぎない。
【0079】
クロマトグラフィカラムは入口及び出口を含み、導入及び反応又は架橋することは、クロマトグラフィカラムの内面を動的にコーティングすることを含み得る。これは、クロマトグラフィカラムに前駆体液体を部分的に充填し、入口に圧力を加えて前駆体液体をカラムの長さにわたって押し下げ、出口に真空を適用して低沸点溶媒を気化させることによって達成することができる。例えば、入口で5psiの圧力を加えることによって、前駆体液体のプラグをカラムに押し込むことができる。-2psiの真空圧力を出口に加えて、低沸点溶媒を気化させることができる。
【0080】
例
【0081】
固定相の厚さ勾配ガスクロマトグラフィ(GC)カラムは、分析物ピークのフォーカシング及び分離分解能の改善を可能にする。理論的分析及びシミュレーションは、正の厚さ勾配によるフォーカシング、すなわち固定相の厚さがカラムに沿って増加することを実証する。ピークフォーカシングは、長さ5mのキャピラリーカラムを、カラム入口での34nmからカラム出口での241nmまで変化する膜厚でコーティングすることによって実験的に検証される。C5~C16の範囲のアルカン及び芳香族を使用して、カラムをフォワード(薄いものから厚いものへ)及びバックワード(厚いものから薄いものへ)のモードで分析し、131nmの厚さを有する均一な厚さのカラムと比較する。
【0082】
フォワード・モードと均一な厚さのカラムとの間の分解能の比較は、アルカンで11.7%、芳香族で28.2%の全体的なフォーカシング率(すなわち、ピーク・キャパシティの向上)を示した。
【0083】
フォーカシング効果は、高度に揮発性の化合物の等温室温分離及び異なる傾斜速度での温度プログラム分離についても実証される。すべての場合において、フォワード・モード分離からのピーク・キャパシティは、他のモードによるものよりも高く、正の厚さ勾配が分析物ピークをフォーカスさせる能力を示している。したがって、この厚み勾配技術は、GC分離性能を改善するための一般的な方法として、種々の固定相及びカラムタイプに広く適用することができる。
【0084】
試験設定
【0085】
FTGCは、水素炎イオン化型検出器(FID、
図3B参照)を備えたAgilent 6890ベンチトップGCに設置される。キャリアガスとしては、超高純度ヘリウムが用いられる。ピークフォーカシング効果の評価は、
図3Cに示すように、より薄いコーティング端部(フォワード・モード、すなわち、より薄い膜からより厚い膜へ移動)又はより厚いコーティング端部(バックワード・モード、すなわち、より厚い膜からより薄い膜へ移動)から注入された分析物を用いて行われる。均一な厚さのカラム(平均厚さと同じ膜厚)も、比較のために同じ設定を使用して評価される。すべての実験は、一定の圧力温度プログラミングを使用して実施される。温度プログラム方法及びヘッド圧力を表1に示す。
【0086】
材料
【0087】
分析用標準グレードのC5~C16、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、o-キシレン、1,3-ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、及びジクロロメタンは、Sigma-Aldrich(St.Louis,MO)から購入する。ビニル変性OV-1(P/N 6001)及びOV-17(P/N 6017)は、Ohio Valley Specialty Company(Marietta,OH)から購入する。Dow SYLGARD(商標)184試薬Bは、Ellsworth Adhesive(Germantown,WI)から購入する。不活性化溶融シリカチューブ(P/N 10010、250μm内径)及びRTX-5カラム(P/N 10205、内径250μm、膜厚0.1μmで長さ5mに切断)は、Restek(Bellefonte,PA)から購入する。DB-1MSカラム(P/N 122-0162、内径250μm、膜厚0.25μmで長さ5mに切断)は、Agilent(Santa Clara,CA)から購入する。すべての材料は、さらなる精製又は修飾なしに購入したまま使用される。
【0088】
カラムコーティング
【0089】
OV-1(75% w/w)、OV-17(10% w/w)及びDow SYLGARD(商標)184試薬B(15% w/w、架橋剤)をジクロロメタンに溶解して、2%(w/w)コーティング溶液(実質的に5%フェニル固定相)を作製する。
図4Aを参照すると、長さ5mのキャピラリーカラム(250μm i.d.)100を、コーティング前にヘキサメチルジシラザン(HMDS)蒸気の8回の反復注入によってシラン化する。続いて、シリンジポンプを介してカラム入口104から80μLのコーティング溶液102をキャピラリ100に充填する。5psiの正圧106が入口104から加えられて、コーティング溶液102を出口108へ向かわせる。負の2psi真空圧力110が、出口108に、1mダミーカラム(250μm i.d.)112を介して加えられ、一定のコーティングプラグ速度が確保される。コーティング中、少量の低沸点ジクロロメタンが真空下で急速に蒸発し、コーティング溶液プラグ102がカラム入口104から出口108に移動するにつれて、コーティング溶液濃度、したがって膜厚が徐々に増加した。コーティング後、乾燥空気をカラム100に連続的に2時間流し、続いて80℃でさらに2時間架橋し、その後HMDSを用いて失活させる。次いで、カラム100を0.5mL/分のヘリウム流下で230℃で3時間エージングする。同じ方法を使用して、均一な厚さの膜を有するカラムを1%(w/w)のコーティング溶液(上記と同じ組成であるが希釈されている)を使用してコーティングし、入口から5psiの正圧を加えてコーティング溶液を(真空を適用せずに)出口に向かわせる。
【0090】
シミュレーション設定
【0091】
フォワード及びバックワード・モードでのC8~C15の分離のシミュレーションを行い、平均勾配膜厚相当の均一な厚さも用いた(表1の分離条件)。膜厚は、5mカラム(フォワード・モードの場合は入口から出口まで、バックワード・モードの場合はその逆)について34nmから241nmまで変化した。なお、保持係数k(x,t)の算出には、公知の値に基づいて推定される分配係数K(t)(式(2))の値が必要である。シミュレーションした保持時間及びFWHMを表2に提供し、分解能を表3に提供する。
【0092】
均一な厚さ制御
【0093】
Restek RTX-5カラムは、対照としてフォワード及びバックワードのモードでC7~C16アルカンの分離に使用され、分離の差は予想されない。分離条件を表1に示す。保持時間及びFWHM(5回にわたる)のp値は、対応のあるスチューデントのt検定を使用して計算され、得られたTスコアをp値に変換する。有意性はp=0.05で得られ、いかなる分析物ピークについてもフォワード・モードとバックワード・モードとの間の有意差は観察されない。同様に、5m長のAgilent DB-1MSカラムを使用した場合(データは示さず)、C7-C15についてフォワード・モードとバックワード・モードとの間の有意差は観察されない。
【0094】
固定相の特性評価
【0095】
固定相の厚さを特徴付けるために、FTGCを最初に液体窒素中で凍結し、いくつかの断片を切り刻む。走査型電子顕微鏡(SEM)画像は、カラム入口(より薄い膜)及び出口(より厚い膜)の近くで撮影される。
図4(B)及び(C)は、膜厚が入口から出口まで34nmから241nmまで増加し、約41nm/mの勾配であることを示す。均一な厚さのカラムはまた、入口及び出口の両方において特徴付けられ、カラムの両端で131nmの膜厚を有する。
【0096】
ピークフォーカシングの理論的説明は以下の通りである。
【0097】
位置x(カラム入口からの距離)及び所与の時間tにおける分析物の有効速度ueff(x,t)は、以下によって与えられる。
【0098】
【数1】
ここで、u
M(x,t)は移動相の速度であり、k(x,t)は保持係数であり:
【0099】
【0100】
分配係数K(t)は以下のように定義される
【0101】
【数3】
式中、Rは普遍的な気体定数であり、T(x,t)は位置xにおける時間依存性のカラム温度である。ΔGは、固定相から移動相に移動する分析物に関連するギブスの自由エネルギー変化であり、分析物のエンタルピー(ΔH)及びエントロピー(ΔS)の変化から計算することができる。
【0102】
ΔG=ΔH-TΔS.(4)
【0103】
相比βは以下により定義される
【0104】
【数4】
の場合
式中、d
i及びd
f(x)はそれぞれカラム内径及び膜厚である。したがって、式(2)は次のように表すことができる
【0105】
【数5】
式中、Aは所与のカラムの定数である。カラムに沿った保持係数の変化δk(x,t)は、次のように書くことができる
【0106】
【0107】
式(7)は、距離δxのカラムに沿った保持係数δk/kのわずかな増加が、第1項によって与えられる負の温度勾配及び第2項によって与えられる正の膜厚勾配の2つの寄与を有することを示す。この保持係数勾配(δk/k)は、式(1)によって速度勾配に関連付けられる。したがって、負の温度勾配及び正の膜厚勾配の両方が、バンドの前部と後部との間に速度差をもたらし、バンドフォーカシングを可能にする(例えば、分析物の空間分布は、空間的に変化する速度勾配を経験する)。出口では、バンドは溶出中の時変ピークとして観察され、これは非フォーカシングバンドからの対応するピークよりも狭くなり得る。すなわち、カラム内でのバンドフォーカシングの結果、ピークフォーカシング(観測可能な量)が発生する。これら2つの勾配の等価性は、以下のように表すことができる
【0108】
【0109】
膜厚勾配は、従来の温度勾配に基づくピークフォーカシングに比べていくつかの利点を有する。第1に、膜厚勾配はカラム温度とは無関係であり、任意の操作温度で任意の揮発性の分析物のフォーカシングを可能にする。高揮発性化合物は、特にNTGSではフォーカスすることが困難であるが、本発明の技術により(例えば、FTGCクロマトグラフィ装置及びプロセスを用いて)達成することができる。第2に、温度勾配はヒーター及び周囲条件(ヒーター配置、放熱、カラムサイズ/重量、カラムチャネル配置、周囲温度及び空気流など)によって変化し得るが、膜厚勾配は常に一定であり、より信頼性が高く再現可能なGC操作を可能にする(環境影響の影響を受けにくい)。最後に、本開示の特定の態様によるFTGCは、追加の付属品(例えば、NTGSに必要なヒーターやクーラーなど)なしで使用することができ、将来の統合のための装置の複雑さを大幅に低減する。しかしながら、これらの利点にもかかわらず、いくつかの態様では、膜厚勾配に基づく分離は、勾配が固定されているためにNTGSよりも用途が狭い場合があり、一方、温度勾配は、熱源及び/又はドレインを変更することによって調整することができる。さらに、カラム出口に向かう膜厚の増加は、より遅い物質移動をもたらし、ピークフォーカシング効果を相殺する可能性がある。以下のシミュレーションにおいて、物質移動効果を調べる。
【0110】
このシミュレーションでは、温度勾配(すなわち、NTGS)は考慮せず、膜厚勾配のみを解析する。カラムに沿って移動する分析物ピークの時間依存濃度cは、過渡対流拡散方程式を解くことによって決定される。
【数8】
式中、u
eff(x,t)は式(1)で与えられる。有効拡散D
effは、局所分散D及び保持係数k(x,t)から計算することができる。
【数9】
式中、d
fは膜厚、D
Mは移動相拡散定数である。Dは、縦方向及び横方向の両方の物質移動/拡散を含むことに留意されたい。D
M(x,t)は、以下のように表すことができる
【数10】
拡散定数をD
Cとし(モル重量並びに分析物及び移動相分子の原子及び構造拡散体積に依存する)、及びD
Sを固定相拡散定数とする。局所圧力p(x)は、入口圧力p
in及び出口圧力p
outから決定される
【数11】
式中、Lはカラムの長さである。u
M(移動相の速度)は以下により得られる
【数12】
式中、粘度ηは、温度T
0での参照粘度η
0及びガスタイプ依存指数α
nの関数として提供され:
【0111】
【0112】
式(12)中、所与の時間tにおいてカラムに沿って温度が同じままであるという仮定の下で、温度T(x,t)がT(t)として与えられることに留意されたい。式(9)は、離散時間(t)及び位置(i)ベクトルに有限差分モデルを適用することによって解くことができる。
【0113】
【0114】
【0115】
【数16】
Δx及びΔtは、シミュレーション距離及び時間ステップサイズである。これらを組み合わせると以下が得られる
【0116】
【0117】
式(19)の解は、カラムに沿った分析物ピークの時間依存的な移動をもたらす。
【0118】
式(19)をシミュレートするために、いくつかの境界条件を設定しなければならない。まず、t=0において、注入されたピークはガウスピーク形状を有し、すなわち、
【0119】
【数18】
式中、σは初期分散である。なお、時刻t=0における初期ピークはx=3σである。カラム入口では、最初の注入後、追加の分析物はカラムに注入されない:
【0120】
C(0,t)=0.(21)
【0121】
カラム出口では、最後のメッシュ濃度は左側のものとほぼ同じである(式(16)によって計算することができないため)、すなわち、
【0122】
C(L,t)=C(L-Δx,t).(22)
【0123】
ピークの保持時間及び半値全幅(FWHM)は、カラム出口(すなわち、x=L)において、式(19)を用いて、空間的に変化する濃度を用いて位置と時間の両方によって変化する二次元濃度行列を構築することを観察することにより測定することができる。例えば、C8~C15化合物の分離は、正(すなわち、薄いものから厚いもの、又は「フォワード」モード)及び負(すなわち、厚いものから薄いもの、又は「バックワード」モード)の膜厚勾配でシミュレートすることができる。また、対照として、均一な膜厚(フォワード/バックワードのモードの膜厚の平均と同等の膜厚)のシミュレーションも行う。温度を40℃から240℃まで30℃/分の速度で上昇させる。ヘッド圧力を3.45psiに設定する(出口は周囲、すなわち1atmに設定される)。膜厚は、5mカラム(フォワード・モードの場合は入口から出口まで、バックワード・モードの場合はその逆)について34nmから241nmまで変化する。第2の次元に沿って(すなわち、時間で)濃度を観察することにより、出口の検出器から得られた信号に対応して、経時的に変化する濃度のベクトルを得ることができる。最大値(時間とともに変化する)は、溶出/保持時間に対応し、FWHMは、濃度がピーク値の半分になる時間を観察することによって測定することができる。隣接するピーク間の分解能(R)は、以下の式を用いてさらに計算することができる
【0124】
【数19】
式中、t
1及びt
2は2つのピークの保持時間であり、w
1及びw
2は対応するFWHMである。
【0125】
ピーク保持時間及び半値全幅(FWHM)をカラム出口(すなわち、x=L)で測定し、表1に示す。表1は、シミュレーション、均一な厚さ制御、アルカンC
7~C
16の分離、芳香族化合物の分離、及び高揮発性アルカン(C
5及びC
6)の分離のための温度プログラミング・プロファイル及びヘッド圧力を示す。
【表1】
【0126】
表2は、フロント及びバックワードのモードにおけるC
8~C
15のシミュレートされた保持時間(RT)及び半値全幅(FWHM)を示す。均一なコーティング厚についてのRT及びFWHMも参照のために提供される。3.45psiのヘッド圧力で、温度を40℃から30℃/分の速度で上昇させる。カラム長は5mである。すべての値は分単位で提供される。さらなる分析を表3に示す。
【表2】
【0127】
表3は、フォワード及びバックワードのモード並びに均一な厚さにおけるC
8~C
15の隣接するピーク間のシミュレートされた分解能(R)を示す。フォワード・モードの分解能はすべて、バックワード・モードの分解能及び均一な厚さの分解能よりも大きい。解像度の差は、R
diff=R
fwd-R
bkwdと定義される。
【表3】
【0128】
表2は、フォワード及びバックワードのモードにおける分析物ピークが、異なる時間に溶出することを示す。これは、所与の分析物の分離条件が2つのモード間で異なるという事実に起因する。フォワード・モードでは、分析物は、最初に低温でより薄い膜に曝露された後、高温でより厚い膜に到達し、これは分析物がバックワード・モードで経験することと全く反対である。結果として、これらの2つのモードにおける分析物の保持時間は異なり、カラム性能を評価する場合、半値全幅(FWHM)のピークは直接比較できない。代わりに、2つのピーク間の分解能Rを使用して分離性能を分析し(表3参照)、これは式23によって与えられる。
【0129】
表3は、フォワード・モードが、バックワード・モードと比較して隣接するピーク間でより高い分解能をもたらすことを実証しており、これは、同じ時間間隔において、フォワード・モードがバックワード・モードよりも多くのピークを含むことができることを意味する。均一な厚さの分解能は、バックワード・モードの分解能よりも大きいが、常にフォワード・モードの分解能よりも小さく、したがって、フォワード・モードにおいてピークフォーカシングが達成されることを実証している。隣接するピークの分解能のさらなる分析は、フォワード・モードとバックワード・モードとの間の分解能の差(すなわち、Rdiff=Rフォワード-Rバックワード)が、分析物保持が増加するにつれて減少することを示す。これは、より厚い膜領域における、より遅い物質移動(すなわち、横方向拡散)に起因する可能性があり、これはより重い化合物でより顕著である。フォワード・モードでは、この効果は、カラム出口により近い低揮発性化合物を広げ、カラムによって提供されるフォーカシングを相殺する。対照的に、バックワード・モードでは、出口におけるより薄い膜はより小さな広がりをもたらし、バックワード勾配からの焦点ぼけが相殺される。したがって、低揮発性化合物の場合、フォワード・モードとバックワード・モードとの分解能差が減少する。
【0130】
アルカン混合物に対するピークフォーカシング。FTGCのピークフォーカシング能は、C
7~C
16アルカン混合物の分離によって評価される。0.025μLの液体を5:1のスプリット比で注入に使用する。フォワード・モード、均一な厚さのカラム、及びバックワード・モード(「同一パラメータバックワード・モード」と表記される。表1を参照-アルカン混合物)について同じ分離条件が使用される。クロマトグラムの例を
図5A~
図5Dに示す。
【0131】
図6は、分析物が、フォワード・モードで、均一な厚さのカラムについて、及び同一パラメータのバックワード・モードで、異なる時間に溶出することを示し、これはシミュレーションと一致する(表2)。これは、所与の分析物の分離条件が2つのモード間で異なり、またそれらが、均一な厚さのカラムと異なるという事実に起因する。フォワード・モードでは、分析物は、最初に低温でより薄い膜に曝露された後、高温でより厚い膜に到達し、これは分析物がバックワード・モードで経験することと全く反対である。均一な厚さのカラムでは、分析物は、すべての温度で同じ膜厚を経験する。結果として、これらの2つのモード及び均一カラムにおける分析物の保持時間は異なり、カラム性能を評価する場合、半値全幅(FWHM)のピークは直接比較できない。代わりに、隣接するピーク間(例えば、C
7とC
8、C
8とC
9など)の分解能を使用して、分離性能を分析する。同一パラメータのバックワード・モード及び均一カラムの分解能は、フォワード・モードの対応する分解能から減算される。すべての隣接するピーク対(5回にわたる平均)間の分解能差(すなわち、R
フォワード-R
同一パラメータのバックワード又はR
フォワード-R
均一)が
図6にプロットされている。分解能差のp値は、対応のあるスチューデントのt検定を使用して計算され(フォワード・モード及び同一パラメータのバックワード・モードにおいて、及び均一カラムについて、5回実行する)、得られたTスコアをp値に変換する(表3を参照)。有意性はp=0.05で得られ、フォワード・モードが、同一パラメータのバックワード・モードと比較した場合に、隣接するピークのすべての対の間で有意により高い分解能を有することを示している。これはシミュレーション(表3)によって裏付けられ、これはまた、フォワード・モードにおいてより高い分解能を示し、これは、同じ時間間隔において、フォワード・モードがバックワード・モードよりも多くのピークを含むことができることを意味する。均一な厚さのカラムの分解能は、C
10/C
11まではフォワード・モードの分解能よりも低いが、C
15/C
16の対については均一の分解能がより高い。全体的な性能の分析を以下に提供する。
【0132】
表4は、C
7~C
16アルカン分離について、フォワード・モード及び均一な厚さ、同一パラメータ(IP)のバックワード、及び等時間(ET)のバックワード・モードの間のp値を示す。有意性はp=0.05で得られる。すべてのp値はフォワード・モードとIPバックワード・モードとの間で有意であり、C
7~C
13のp値はETバックワード・モードで有意である。フォワード・モードの分解能は、C
10/C
11までは均一な厚さの分解能よりも有意に高く、一方で、均一な厚さの分解能は、C
15/C
16について有意に高い。
【表4】
【0133】
保持時間の不一致をさらに説明するために、第2の組のクロマトグラムが、C
16(最後に溶出する分析物)がフォワード・モードと同時に溶出することを確実にするためにバックワード・モードのランプ速度を下げることによって得られる(これは「等時間バックワード・モード」と示される。表1-分離条件、
図5A~
図5Dクロマトグラム、
図6-分解能差、表4-p値を参照)。ここでも、フォワード・モードは、C
7とC
13の間のアルカン対に対して有意に高い分解能を提供する(結果は5回の実行から得られた)が、C
13~C
16については等時間バックワード・モードと同様に機能する。フォワード・モードは、すべての局所解像度(すなわち、隣接するアルカン対の間)について等時間バックワード・モード(又は均一な厚さのカラム)を上回ることはないが、フォワード・モードは、他のすべてのモードと比較して、すべての解像度にわたる合計として定義される有意により高いピーク・キャパシティ(PC)を有する(表5)。以下のように定義されるフォーカシング率の分析
【0134】
【0135】
フォワード・モードが、均一な厚さのカラム、同一パラメータのバックワード・モード、及び等時間バックワード・モードと比較した場合に、それぞれ約11.7%、26.8%、及び29.8%の全体的なフォーカシング率を示すことを示す。
【表5】
【0136】
表5.
図5A~
図5DにおけるC
7~C
16アルカン分離についての、ピーク・キャパシティ、全体分解能、p値、及びフォワード・モードと同一パラメータ(IP)、及び等時間(ET)バックワード・モード、並びに均一厚さの間のフォーカシング率。有意性はp=0.05で得られる。フォワード・モードにおけるピーク・キャパシティは、他のすべてのモードにおけるピーク・キャパシティよりも有意に良好である。
【0137】
芳香族混合物に対するピークフォーカシング
【0138】
FTGCピークのフォーカシングは、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、o-キシレン、及び1,3-ジクロロベンゼンを含む芳香族混合物の分離においても分析される。0.025μLの混合液を5:1のスプリット比で注入する(表1に示す分離条件-芳香族混合物)。クロマトグラムの例を
図7A~
図7Dに示し、分解能の違いを
図8に示す。局所分解能差のp値(5回の実行から計算)を表6に示す。ピーク・キャパシティ、p値、及びフォーカシング率を表7に示しており、フォワード・モードが、他のすべてのモードと比較して有意により高いピーク・キャパシティを有することを示している。したがって、分離パラメータが一定に保たれる(及び、分析物が、同一パラメータのバックワード・モードにおいて、より速く溶出する)か、又は最後の化合物が同時に(フォワード及び等時間バックワード・モードで)溶出することを確実にするように変更されるかにかかわらず、フォワード・モードでの分離性能は常に、いずれかのバックワード・モードよりも良好である。フォワード・モードはまた、均一な厚さのカラムよりも優れており、28.2%のフォーカシング率を示している(表7)。したがって、全体として、フォワード・モード(すなわち、正の膜厚勾配)は、分離ピーク・キャパシティを改善する能力を示す。
【0139】
表6は、芳香族化合物の分離について、フォワード・モード及び均一厚さ、同一パラメータのバックワード(IP)、及び等時間のバックワード(ET)モードの間のp値を示す。溶出順序及び略語については、
図7A~
図7Dを参照されたい。有意性はp=0.05で得られる。すべてのp値は、フォワード・モードで有意に改善された分解能を示す。
【表6】
【0140】
表7は、
図7A~
図7Dにおける芳香族化合物の分離についての、ピーク・キャパシティ、p値、及びフォワード・モードと同一パラメータ(IP)、及び等時間(ET)バックワード・モード、並びに均一厚さの間のフォーカシング率を示す。有意性はp=0.05で得られる。フォワード・モードにおける分離は、他のすべてのモードにおける分離よりも有意に良好である。
【表7】
【0141】
昇温効果
【0142】
温度ランプ速度がピークフォーカシングにどのように影響するかを実証するために、4つの異なるランプ速度(0、10、20、及び30℃/分、保持なしで60℃からランプ)でのC7~C10の分離をフォワード・モード、同一パラメータのバックワード・モードにおいて、及び均一な厚さのカラムを使用して行う。圧力は3.45psi(60℃で2.7mL/分)であり、スプリット比はすべての分離について15:1である(0.025μL混合液注入)。空隙時間はメタン注入によって測定され、すべてのランプ速度について0.36分であることが分かる。各温度プロファイルの分解能及びフォーカシング率を表8に示す(5回の実行にわたる平均として提供される値)。フォワード・モードでは、より高い温度ランプ速度で、分析物は、カラム出口に近いより厚い固定相に到達するまでに比較的より高い温度に遭遇する。したがって、分析物は、より厚い膜においてあまり時間を費やさず、ピークの広がりが低減される。バックワード・モードでは、分析物は、最初に低温でより厚い固定相に遭遇した後、高温でより薄い固定相へ流れる。薄い固定相からのピークの広がりは既に小さいので、温度上昇によるピーク広がりの全体的な減少は、バックワード・モードではより低い。したがって、フォーカシング率は、温度ランプ速度の増加と共に増加し、30℃/分の速度で、フォワード・モードとバックワード・モードとを比較して最大61.9%、フォワード・モードと均一厚さとを比較して68.1%になる。
【0143】
表8は、様々な温度ランプ速度でのC7~C10の分離についてのフォワード・モード、バックワード・モード、及び均一厚さについての分解能(R)、ピーク・キャパシティ(PC)、及びフォーカシング率を示す。すべての分離について初期温度は60℃であり、キャリアガスヘッド圧力は3.45psi(60℃で2.7mL/mi)である。0.025μLの混合液を15:1のスプリット比で注入する。
【表8】
【0144】
高揮発性化合物についてのフォーカシング
【0145】
NTGSとは異なり、FTGC勾配は、温度勾配を生成することが困難な低温においてピークをフォーカスさせることができる(これらのピークがこれらの温度で合理的に保持される限り)。これを実証するために、C
5及びC
6の室温等温分離(表1)を行う(
図9A~
図9C)。分解能、p値及びフォーカシング率を表9に示す(5回の実行にわたって平均化された値)。40.2%のフォーカシング率は、平均フォワード・モードの分解能2.97及び均一な厚さの分解能2.12で達成される。NTGSの場合、低い操作温度で小さな温度勾配しか生成することができないため、高揮発性化合物について同じピークフォーカシング効果を達成することは困難であることに留意されたい。
【0146】
表9は、室温(26℃)C
5及びC
6分離についてのフォワード・モード、バックワード・モード、及び均一厚さについての分解能、p値、及びフォーカシング率を示す。有意性はp=0.05で得られる。
【表9】
【0147】
本明細書では、ピークフォーカシングを可能にする固定相の厚さ勾配カラム技術の開発及び評価について詳述した。実験結果は、室温での高揮発性化合物の集中分離を含む、フォワード・モードでの様々な化合物の分離性能の向上を示す理論的分析及びシミュレーションによって裏付けられる。NTGSと比較して、FTGCは、適用可能な温度及び化合物揮発性範囲がより大きく、付属品なしの簡単な操作、周囲条件への依存がより少なく、よりコンパクトであるという利点を有する。この固定相の厚さ勾配技術は、広範なGC用途に容易に適用することができ、勾配を生成することができることのみを条件として、任意の材料又は厚さの固定相に使用することができる。さらに、規則的な円形断面のキャピラリーカラムと矩形断面の微細加工カラムの両方に適用可能である。
【0148】
実施形態の前述の説明は、例示及び説明の目的で提供されている。網羅的であること、又は本開示を限定することを意図するものではない。特定の実施形態の個々の要素又は特徴は、一般に、その特定の実施形態に限定されず、適用可能な場合には交換可能であり、具体的に図示又は説明されていなくても、選択された実施形態で使用することができる。これはまた、多くの方法で変更されてもよい。そのようなバリエーションは、本開示からの逸脱と見なされるべきではなく、すべてのそのような改変は、本開示の範囲内に含まれることが意図されている。