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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】ヤーン熱風熱処理装置
(51)【国際特許分類】
   D01D 10/02 20060101AFI20241010BHJP
   D01D 10/04 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
D01D10/02
D01D10/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022578706
(86)(22)【出願日】2021-07-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-26
(86)【国際出願番号】 KR2021008689
(87)【国際公開番号】W WO2022244912
(87)【国際公開日】2022-11-24
【審査請求日】2023-02-10
(31)【優先権主張番号】10-2021-0065218
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0065219
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0065220
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522490907
【氏名又は名称】サムファン ティーエフ カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】タク,ビョン ファン
(72)【発明者】
【氏名】アン,ユ ジン
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-241051(JP,A)
【文献】特開2008-231644(JP,A)
【文献】特開2012-184527(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D 1/00-13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に密閉空間が形成されたチャンバ本体と、
熱処理のためのヤーンが巻き付けられたボビンを据え置きするために、前記チャンバ本体内に設けられるボビンハンガーと、
前記ヤーンを熱風熱処理するための熱媒体を、前記チャンバ本体内に供給する熱媒体供給管と、
前記熱媒体供給管から供給された熱媒体を加熱するために、前記チャンバ本体内に設けられる内部ヒーターと、
前記熱媒体の供給初期に発生する前記チャンバ本体内の温度勾配を低減するために、前記熱媒体をチャンバ本体内に供給する前に予め加熱するように、前記チャンバ本体の外部一側に設けられたプリヒーターと
前記チャンバ本体の一側に設けられて前記チャンバ本体内の空気又は熱媒体を外部に排出する排気口と、
前記排気口に設けられて前記チャンバ本体内の熱媒体を外部に強制排出する排気ファンと、
温度センサを用いて、前記チャンバ本体内に供給される熱媒体の給気温度、及び前記排気口を介して排出される熱媒体の排気温度を測定し、測定された給気温度及び排気温度の差により、前記排気ファンの動作速度を制御する制御部と、
を含むことを特徴とするヤーン熱風熱処理装置。
【請求項2】
更に、前記チャンバ本体内の空間を、前記内部ヒーターにより熱媒体を加熱する熱媒体加熱空間と、加熱された熱媒体によりボビンハンガーに据え置きされたヤーンを熱処理する熱処理空間とに区分する仕切板を含み、
前記仕切板には、熱媒体加熱空間で加熱された熱媒体が、熱処理空間に位置する各ボビンハンガーに据え置きされたヤーンにムラなく供給されるように、一定の間隔とサイズを有する多数の仕切板通孔が形成されることを特徴とする請求項1に記載のヤーン熱風熱処理装置。
【請求項3】
前記ボビンハンガーの外周面には、据え置きされるボビンとの離隔空間を一定に維持するためのハンガースペーサーが複数形成されることを特徴とする請求項1に記載のヤーン熱風熱処理装置。
【請求項4】
熱処理のためのヤーンが巻き付けられる前記ボビンの外周面には、ヤーンの熱処理において、ボビンとボビンハンガーの間の離隔空間を通じて、ボビンの内側面からヤーンの方向に熱媒体による熱風が送出されるように熱媒体が供給される多数のボビン通孔が形成されることを特徴とする請求項1に記載のヤーン熱風熱処理装置。
【請求項5】
更に、前記プリヒーターを経て内部空間に流入した熱媒体を、内部ヒーターが設置された方向に連結される第1の経路と、ボビンハンガーが設置された方向に連結される第2の経路を介して、チャンバ本体内に供給するように、前記チャンバ本体の外部一側に設置された熱媒体供給部を含むことを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載のヤーン熱風熱処理装置。
【請求項6】
前記ボビンハンガーは、一端部が前記熱媒体供給部に連通され、他端部は、チャンバ本体の内部方向に開放した中空のパイプ形状からなることを特徴とする請求項に記載のヤーン熱風熱処理装置。
【請求項7】
前記ボビンハンガーは、一端部が前記熱媒体供給部に連通され、他端部は、閉塞した中空のパイプ形状からなり、前記ボビンハンガーの外周面には、プリヒーターで加熱された熱媒体が、前記熱媒体供給部を通じて前記チャンバ本体内に噴出する多数のハンガー通孔が形成されることを特徴とする請求項に記載のヤーン熱風熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヤーン熱風熱処理装置に関し、より詳しくは、密閉したチャンバ内に供給される熱媒体を加熱し、加熱された熱媒体の強制対流を用いて、ボビンに巻き付けられたヤーンを熱処理するヤーン熱風熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶ポリエステル繊維のようなサーモトロピック液晶ポリマー(TLCP、Thermotropic Liquid Crystal Polymer)繊維は、強度が高く、耐湿性、耐化学性、及び耐切創性(cut-resistance)などの特性を有する。これにより、前記TLCP繊維は、海洋資材、産業用安全手袋、ロープ、防刃服などの素材に用いられる。
【0003】
例えば、下記特許文献1において、液晶ポリエステル繊維は、強直な分子鎖からなるポリマーであって、溶融紡絲には、その分子鎖を繊維軸方向に高度で配向させ、固相重合を更に行うことで、溶融紡絲で得られる繊維のうち、最も高い強度と弾性率が得られることについて開示している。また、前記液晶ポリエステルは、固相重合により分子量が増加し、融点が上昇するため、耐熱性、寸法安定性が向上することが知られている。
【0004】
このように、液晶ポリエステル繊維には、固相重合を行うことで、高強度、高弾性率、優れた耐熱性、及び熱寸法安定性が発現される。ここで、固相重合反応は、一般に、融点近傍の高温下で行われており、このため、糸同士の融着が起きやすい。そこで、融着による糸の物性低下及びフィブリル化を抑制する目的で、固相重合乳剤を付与することが、液晶ポリエステル繊維の製造において、重要な技術ポイントである。
【0005】
このような液晶ポリエステル繊維は、溶融紡絲の後に高温での熱処理工程を経ることで、結晶化度が増加して、ヤーンの強度、耐湿性、耐化学性、及び耐切創性などの特性が向上する。
【0006】
下記特許文献1においても、繊維の耐磨耗性を高めるために、固相重合後に高温熱処理を行うことが開示されている。しかし、特許文献1には、ヤーンの熱処理工程において、ブロック又はプレートヒーターを用いた輻射加熱を提示しているが、このような輻射加熱の場合、加熱チャンバ内での温度均一化に長時間がかかるだけでなく、ヤーンの位置によって、熱処理効率が異なるため、複数のボビンに巻き付けられたヤーンを同時に熱処理することができないという問題がある。
【0007】
下記特許文献2には、縫合糸に加熱された乾燥気体を加えて熱処理することで、縫合糸の直線強度維持率を向上する技術が開示されている。すなわち、下記特許文献2は、縫合糸用ヤーンをドラムにムラなく巻き付けた後、熱処理機内に装着して回転させ、熱い乾燥空気又は不活性気体を吹き込んで熱処理する吸水性手術用縫合糸の乾燥及び熱処理方法に関し、内部を外部空気から遮断する外部箱、縫合糸を巻き付くドラム、前記ドラムを装着する支持台が開示されている。
【0008】
また、下記特許文献2には、前記外部箱の上端に設置され、前記ドラムに巻き付けられている縫合糸に、90度~130度の乾燥空気又は不活性気体を加える乾燥気体流入口手段と、前記外部箱の下端に設置され、前記乾燥気体流入口手段が設けられた反対側に位置した排気口について開示されている。
【0009】
しかし、特許文献2には、加熱した乾燥気体を与える乾燥気体流入口手段が外部箱の上端に設けられ、排気口が外部箱の下端に設けられることで、暖かい空気は、上に上がり、冷たい空気は、その空いた空間を満たして、下に下がる対流現象の原理を考えると、熱処理の効率が低下するだけでなく、複数のヤーンを同時に熱処理することができないという問題がある。
【0010】
これを解決するために、特許文献2では、縫合糸がムラなく熱処理されるように、支持台を回転させるモータ装置を備えているが、これにより、装置の構成が複雑となる問題があり、複数のヤーン(特に、乾燥気体流入口手段と排気口の間に支持台の複層構造時)を同時に熱処理することができないという問題が依然として存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】韓国登録特許第10-1647414号公報
【文献】韓国登録特許第10-0141998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、熱媒体が初期にチャンバ内に供給される場合、未だ加熱されない熱媒体の供給により生ずるチャンバ内空間の位置による温度勾配及びこれにより発生する熱処理の不均一性を防止し、ヤーンの熱処理速度を増やすことができるヤーン熱風熱処理装置を提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、ヤーンの熱処理で発生した異物により、装備とヤーンが汚染することを防止するヤーン熱風熱処理装置を提供することである。
【0014】
本発明の更に他の目的は、ボビンの径方向に巻き付けられたヤーンの位置及び巻取厚によって、熱媒体に露出する程度が異なるため、ボビンに巻き付けられたヤーンの熱処理均一性が低下する問題を解決することができるヤーン熱風熱処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このような技術的課題を解決するための本発明によるヤーン熱風熱処理装置は、内部に密閉空間が形成されたチャンバ本体と、熱処理のためのヤーンが巻き付けられたボビンを据え置きするために、前記チャンバ本体内に設けられるボビンハンガーと、前記ヤーンを熱風熱処理するための熱媒体を、前記チャンバ本体内に供給する熱媒体供給管と、前記熱媒体供給管から供給された熱媒体を加熱するために、前記チャンバ本体内に設けられる内部ヒーターと、前記熱媒体の供給初期に発生する前記チャンバ本体内の温度勾配を低減するために、前記熱媒体をチャンバ本体内に供給する前に予め加熱するように、前記チャンバ本体の外部一側に設けられるプリヒーターとを含むことを特徴とする。
【0016】
前記チャンバ本体の一側には、更に、チャンバ本体内の空気又は熱媒体を外部に排出する排気口が設けられ、前記排気口には、チャンバ本体内の熱媒体を外部に強制排出する排気ハンガー設けられる。
【0017】
更に、温度センサを用いて、前記チャンバ本体内に供給される熱媒体の給気温度と、前記排気口を介して排出される熱媒体の排気温度を測定し、測定された給気温度と排気温度の差により、前記排気ファンの動作速度を制御する制御部を含む。
【0018】
更に、前記チャンバ本体内の空間を、前記内部ヒーターにより熱媒体を加熱する熱媒体加熱空間と、加熱された熱媒体によりボビンハンガーに据え置きされたヤーンを熱処理する熱処理空間とに区分する仕切板を含み、前記仕切板には、熱媒体加熱空間で加熱された熱媒体が、熱処理空間に位置する各ボビンハンガーに据え置きされたヤーンにムラなく供給されるように、一定の間隔とサイズを有する多数の仕切板通孔が形成される。
【0019】
前記ボビンハンガーの外周面には、据え置きされるボビンとの離隔空間を一定に維持するためのハンガースペーサーが複数形成される。また、熱処理のためのヤーンが巻き付けられる前記ボビンの外周面には、ヤーンの熱処理において、ボビンとボビンハンガーの間の離隔空間を通じて、ボビンの内側面からヤーンの方向に熱媒体による熱風が送出されるように熱媒体が供給される多数のボビン通孔が形成される。
【0020】
更に、前記プリヒーターを経て内部空間に流入した熱媒体を、内部ヒーターが設置された方向に連結される第1の経路と、ボビンハンガーが設置された方向に連結される第2の経路を介して、チャンバ本体内に供給するように、前記チャンバ本体の外部一側に設置された熱媒体供給部を含む。
【0021】
前記ボビンハンガーは、一端部が前記熱媒体供給部に連通され、他端部は、チャンバ本体の内部方向に開放した中空のパイプ形状からなる。また、前記ボビンハンガーは、一端部が前記熱媒体供給部に連通され、他端部は、閉塞した中空のパイプ形状からなり、前記ボビンハンガーの外周面には、プリヒーターで加熱された熱媒体が、前記熱媒体供給部を通じて前記チャンバ本体内に噴出する多数のハンガー通孔が形成される。
【発明の効果】
【0022】
以上で説明したように、本発明によるヤーン熱風熱処理装置は、チャンバ内空間の位置による温度勾配により引き起こされる熱処理の不均一性を防止して、チャンバ内空間の位置によらず、ヤーンの強度を均一に熱処理することができる。
【0023】
また、本発明のヤーン熱風熱処理装置は、熱媒体の供給初期に加熱された熱媒体をチャンバ内に迅速に供給して、ヤーンの熱処理温度に到達する時間を短縮することで、ヤーンの熱処理速度を増大することができる。
【0024】
更に、本発明のヤーン熱風熱処理装置は、排気口による熱媒体の排出により、ヤーンの熱処理で発生した異物を除去することで、異物により装備とヤーンが汚染することを防止することができる。
【0025】
なお、本発明のヤーン熱風熱処理装置は、ボビンに巻き付けられたヤーンの位置及び巻取厚によって異なるヤーンに対する熱媒体の露出程度を均一にすることで、ヤーンの巻取厚を維持すると共に、ヤーンの熱処理収率の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るヤーン熱風熱処理装置の外見斜視図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係るボビンを示す構成図である。
図3図3は、図1のA-A断面図である。
図4図4は、本発明の一実施形態に係る図1のB-B断面図である。
図5図5は、本発明の他の実施形態に係る図1のB-B断面図である。
図6図6は、本発明の更に他の実施形態に係る図1のB-B断面図である。
図7図7は、図6のA部を詳細に示す図である。
図8図8は、本発明によるヤーン熱風熱処理装置において、チャンバ本体内の温度を一定に維持するための制御ブロック図である。
図9図9は、本発明の一実施形態に係るチャンバ内の熱媒体流動状態を説明するための図である。
図10図10は、本発明の一実施形態に係るボビンとボビンハンガーの間の熱媒体流動状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下では、添付の図面を参考して、本発明の実施形態について本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳しく説明する。しかし、本発明は、他の形態に具現可能であり、ここで説明する実施形態に限定されるものではない。また、図面において、本発明を明確に説明するために、説明と関係ない部分は省略し、明細書全般に亘り、同一の部分に対しては、同一の符号を付している。
【0028】
明細書全般において、ある部分が他の構成要素を「含む」とすると、これは、特別に反対される記載がない限り、他の構成要素を除くことではなく、他の構成要素を更に含むことを意味する。また、明細書に記載された用語「制御部」は、少なくとも1つの機能や動作を処理する単位を意味し、これは、ハードウェアやソフトウェア、又はハードウェア及びソフトウェアの組み合わせで具現可能である。
【0029】
以下、添付の図面を参照して、本発明の好適な実施形態を説明することで、本発明を詳しく説明する。
【0030】
各図面において、同一の図面符号は、同一の部材を示す。
【0031】
図1は、本発明の一実施形態に係るヤーン熱風熱処理装置10の外見斜視図であり、図2は、本発明の一実施形態に係るボビン300を示す構成図であり、図3は、図1のA-A断面図である。また、図4は、本発明の一実施形態に係る図1のB-B断面図であり、図5は、本発明の他の実施形態に係る図1のB-B断面図である。また、図6は、本発明の更に他の実施形態に係る図1のB-B断面図であり、図7は、図6のA部を詳細に示す図である。
【0032】
本発明の一実施形態に係るヤーン熱風熱処理装置10は、図1及び図2に示しているように、チャンバ本体100内に供給される常温の熱媒体を加熱して、ボビン300に巻き付けられたヤーン310に供給することで、前記熱媒体の強制対流により、ボビン300に巻き付けられたヤーン310を熱処理する。ここで、前記熱媒体としては、ヤーン310を熱風熱処理するために、水分含量の少ない不活性気体又は窒素が望ましい。
【0033】
また、図2に示しているように、本発明によるボビン300の外周面には、多数のボビン通孔301が形成されている。ここで、ボビン300は、加熱された熱媒体の熱気から変形を防止するために、金属材からなるのが望ましい。
【0034】
本発明は、ヤーン310の熱処理において加熱された熱媒体が、ボビン300の外周面に形成されたボビン通孔301を介して、ボビン300の内側面からヤーン310に供給されるようにする。
【0035】
すなわち、ヤーン310の熱処理において加熱された熱媒体は、ボビン300とボビンハンガー110の間の離隔空間を通じて、ボビン300の内側面からヤーン310の方向に熱風を送出することで、ボビン300に巻き付けられたヤーン310の外側のみならず、内側の熱処理を同時に行うことができる。
【0036】
このような熱処理過程により、ヤーン310は、強度と弾性率が増加し、耐熱性、耐薬品性が向上する。ここで、ヤーン310の熱処理温度範囲は、170~320℃で4~30時間行うのが望ましいが、これに限定されるものではなく、ヤーン310の材質、ボビン300に巻き付けられたヤーン310の量などによって変わる。
【0037】
本発明によるヤーン熱風熱処理装置10は、図1図3乃至図6に示しているように、チャンバ本体100内に設けられるボビンハンガー110、熱媒体供給管120、及び内部ヒーター130、チャンバ本体100の上端に設けられる排気口150、チャンバ本体100の一側に設けられるプリヒーター200及び熱媒体供給部220を含む。
【0038】
前記チャンバ本体100は、外部の空気が流入しないように密閉し、チャンバ本体100内の加熱された熱媒体から外部に熱が失われないように、放熱構造からなるのが望ましい。
【0039】
また、チャンバ本体100の前面には、図1に示しているように、ヤーン310が巻き付けられたボビン300をボビンハンガー110に据置きするために、開閉可能なドア103が設けられる。また、ドア103の一側には、ドア103の開閉が容易となるように、把持可能な取っ手104が設けられる。
【0040】
また、ボビンハンガー110は、熱処理のためのヤーン310が巻き付けられたボビン300を据え置きするために、チャンバ本体100内に設けられる。すなわち、ボビンハンガー110は、図4乃至図6に示しているように、ドア103の対向側壁からドア103に向けた方向に突出し、底面に水平な状態で設けられる。
【0041】
また、図3では、ボビンハンガー110が3段3列に設けられた構造を示しているが、これに限定されるものではなく、チャンバ本体100の大きさによって、4段4列以上に設けられることもできる。一方、ボビンハンガー110は、加熱された熱媒体の熱気から変形を防止するために、金属材からなるのが望ましい。
【0042】
また、ボビンハンガー110は、本発明の一実施形態により、図4に示しているように、円筒状からなる。また、ボビンハンガー110は、本発明の他の実施形態により、図5に示しているように、プリヒーター200により加熱された熱媒体が、熱処理空間101に供給されるように、両端部が開放し、内部が中空のパイプ形状からなる。このようなパイプ形状のボビンハンガー110を介して、プリヒーター200で加熱された熱媒体が、チャンバ本体100の熱処理空間101に直ぐ供給される。
【0043】
また、ボビンハンガー110は、本発明の更に他の実施形態により、図6及び図7に示しているように、プリヒーター200で加熱された熱媒体が供給されるように、熱媒体供給部220に連結された端部が開放され、内部が中空のパイプ形状からなる。ここで、図6及び図7に示しているように、チャンバ内に位置するボビンハンガー110の端部は、閉塞形状からなる。また、ボビンハンガー110の外周面には、プリヒーター200で加熱された熱媒体が中空のボビンハンガー110の内部を経て、ボビン300の内側面からヤーン310に供給されるために噴出する多数のハンガー通孔113が形成される。
【0044】
また、ボビン300の外周面に形成される多数のボビン通孔301は、ヤーン310の熱処理において、ハンガー通孔113を介して供給された熱媒体が、ボビン300に巻き付けられたヤーン310の内側面に円滑に供給されるように、ハンガー通孔113に対応して構成するのが望ましい。
【0045】
また、ボビンハンガー110の外周面には、図3乃至図7に示しているように、据え置きされるボビン300とボビンハンガー110の間の空間を一定に離隔するハンガースペーサー111が複数形成される。すなわち、ハンガースペーサー111は、ヤーン310の熱処理において、ボビン300の内側面からヤーン310の方向に、熱媒体による熱風送出がムラなく行われるように、ボビン300とボビンハンガー110の離隔空間を均一に維持する。
【0046】
前記ハンガースペーサー111は、ボビンハンガー110の外周面の円周方向に沿って一定の間隔で形成される複数のブレード(blade)として設けられる。例えば、図3には、120度間隔の3つのブレードからなるハンガースペーサー111が設けられている。また、図4乃至図6には、ボビンハンガー110とハンガースペーサー111が一体に形成されることが示されている。
【0047】
しかし、ハンガースペーサー111の構成及び形状は、これに限定されるものではなく、他の形態に具現可能である。例えば、ハンガースペーサー111は、同一の間隔で形成される4つ以上のブレードで構成するか、ボビンハンガー110の外周面に沿って形成される多数の櫛形状に構成してもよい。
【0048】
また、ハンガースペーサー111がボビンハンガー110の外周面において、ボビンハンガー110と着脱式で構成される。ここで、ハンガースペーサー111は、それぞれ異なる高さの様々な高さで設けられ、ボビン300に巻き付けられたヤーン310の高さによって、対応するハンガースペーサー111をボビンハンガー110の外周面に設置して、ボビン300とボビンハンガー110の間の離隔空間を調節することができる。
【0049】
熱媒体供給管120は、図3乃至図6に示しているように、ヤーン310に対して熱風熱処理を行うための熱媒体を、熱媒体加熱空間102に供給する。また、内部ヒーター130は、熱媒体供給管120から供給される熱媒体(不活性気体又は窒素)を加熱することができる。
【0050】
ここで、熱媒体供給管120及び内部ヒーター130は、仕切板140により、熱処理空間101から隔離する熱媒体加熱空間102に設けられる。すなわち、内部ヒーター130は、チャンバ本体100の床部にジグザグ状に設けられ、熱媒体供給管120の供給口は、内部ヒーター130の上部に向けて設けられる。
【0051】
また、チャンバ本体100の内部空間は、仕切板140により、熱処理空間101と熱媒体加熱空間102とに分けられる。このような仕切板140は、図4乃至図6に示しているように、ドア103の開閉による破損を防止するために、ドア103と一定の間隔を維持するように設けられる。
【0052】
熱媒体加熱空間102では、内部ヒーター130により、熱媒体の加熱が行われる。また、熱処理空間101には、ボビンハンガー110が設けられ、熱媒体加熱空間102で加熱された熱媒体により、ヤーン310の熱処理が行われる。ここで、仕切板140には、熱媒体加熱空間102で加熱された熱媒体が、熱処理空間101に位置する各ボビンハンガー110にムラなく供給されるように、一定の間隔とサイズを有する多数の仕切板通孔141が設けられる。
【0053】
排気口150は、図1図4乃至図6に示しているように、チャンバ本体100内の加熱された空気又は熱媒体がチャンバ本体100外に排出されるように、チャンバ本体100の上端に設けられる。このような加熱空気又は熱媒体の外部排出により、ヤーン310の熱処理過程で気化された異物が、排気口150を介して共に排出される。また、前記排気口150には、環境汚染を防止するために、排出される異物及び熱媒体を収集するための収集管が設けられてもよい。また、前記収集管には、外部への清浄排出のためのフィルターが設けられることもできる。
【0054】
図4乃至図6に示しているように、排気口150には、制御部400の制御により駆動されて、チャンバ本体100内の加熱された空気又は熱媒体を外部に強制排出する排気ファン151が設けられる。すなわち、排気ファン151の駆動により、チャンバ本体100内の加熱された空気又は熱媒体が外部に強制排出され、もって、チャンバ本体100内の熱媒体の強制対流が発生する。
【0055】
また、プリヒーター200は、図4乃至図6に示しているように、熱処理のための熱媒体の供給初期に生じるチャンバ内の温度勾配を最小化するために、熱媒体供給管120を介して、チャンバ本体100に熱媒体を供給する前に、予め熱媒体を加熱する。
【0056】
このように、プリヒーター200を用いて予め加熱された熱媒体は、熱媒体供給管120を介して、内部ヒーター130又は熱媒体加熱空間102に供給された後、熱媒体加熱空間102で内部ヒーター130を用いて再度加熱される。
【0057】
また、熱媒体供給部220は、図5及び図6に示しているように、チャンバ本体100の外部一側に密閉した供給空間230を備えるように設けられ、熱媒体供給部220の内壁には、ボビンハンガー110の内部と貫通する多数の貫通口が形成される。
【0058】
また、熱媒体供給部220において、前記内壁の対向側壁には、外部の熱媒体供給具に連結した供給管210が挿入される第1の挿入口221が設けられ、該当供給管210の周辺には、プリヒーター200が装着される。また、熱媒体供給部220の下部には、熱媒体供給管120が挿入される第2の挿入口222が設けられる。ここで、熱媒体供給部220は、図5及び図6のように、チャンバ本体100の後面に設けられるのが望ましい。
【0059】
このように、プリヒーター200を用いて予め加熱された熱媒体は、第1の挿入口221を介して、熱媒体供給部220に供給され、熱媒体供給部220に供給された熱媒体の一部は、熱媒体供給管120を介して、熱媒体加熱空間102に供給された後、熱媒体加熱空間102で内部ヒーター130を用いて再度加熱される。
【0060】
また、熱媒体供給部220に供給された熱媒体の一部は、多数の貫通口を介して、それぞれのボビンハンガー110内に供給され、図5に示しているように、パイプ形状のボビンハンガー110内を経て、ボビンハンガー110の開放した端部112を介して、熱処理空間101に供給されるか、図6に示しているように、多数のハンガー通孔113を経て、多数のボビン通孔301及び熱処理空間101に供給される。
【0061】
すなわち、プリヒーター200で予め加熱された熱媒体を、チャンバ内の熱処理空間101に迅速に供給して、チャンバ内の温度勾配を最小化し、ヤーンの熱処理速度を増加させる。
【0062】
そこで、プリヒーター200は、熱処理のための熱媒体の供給初期に、熱媒体加熱空間102で未だに加熱されていない熱媒体が熱処理空間101に直ぐ供給されることで発生するチャンバ内の温度勾配を最小化することができる。すなわち、本発明は、熱媒体の供給において、チャンバ内空間の位置による温度勾配のため、ヤーン310の熱処理がムラなく行われないヤーン310の熱処理の不均一性を防止することができる。
【0063】
また、本発明は、ヤーン310の熱処理のための熱媒体が初期にチャンバ内に供給されるとき、前記熱媒体がヤーン310の熱処理温度に到達する時間を短縮して、ヤーン310の熱処理速度を増加させる。
【0064】
すなわち、本発明は、ヤーン310の熱処理のための熱媒体が供給される初期に、プリヒーター200で加熱された熱媒体が、熱媒体供給部220に設けられた多数の貫通口223とボビンハンガー110の開放した端部112を通じて、熱処理空間101に迅速に供給されることで、熱処理空間101内の熱媒体が所定の熱処理温度範囲(例えば、170~320℃)に到達する時間を格段に減少させることができる。
【0065】
また、本発明は、プリヒーター200で加熱された熱媒体が、多数のハンガー通孔113を介して、熱処理空間101に供給されるので、熱処理空間101の内部で乱流を発生して、ボビン300が据え置きされる位置によらず、全体として熱処理の均一性を向上することができる。また、このようなプリヒーター200も、制御部400により所定の温度に制御される。
【0066】
前述したように、本発明の実施形態に係るヤーン熱風熱処理装置10は、図3における熱媒体加熱空間102で加熱された熱媒体の均一な流動により、チャンバ内の温度勾配を最小化し、ヤーン310熱処理の均一性を確保することができる。
【0067】
図8は、本発明によるヤーン熱風熱処理装置10において、チャンバ本体100内の温度を一定に維持するための制御ブロック図である。図8における制御部400は、第1の温度センサ410及び第2の温度センサ420の測定情報を入力され、入力された測定情報を基に、排気ファン151の動作速度を制御して、チャンバ本体100から排出される空気又は熱媒体の排出速度を調節することができる。
【0068】
すなわち、制御部400は、感知センサである第1の温度センサ410及び第2の温度センサ420を用いて、熱処理空間101に供給される熱媒体の給気温度と、排気口150を介して排出される熱媒体の排気温度を測定し、測定された給気温度と排気温度の差により、排気ファン151の動作速度を制御する。
【0069】
例えば、前記熱媒体の給気温度を測定するために、チャンバ本体100内の仕切板140の一側に、第1の温度センサ410が設置される。望ましくは、給気温度を測定するための第1の温度センサ410は、仕切板通孔141に設置される。また、前記熱媒体の排気温度を測定するための第2の温度センサ420は、排気口150の一側に設置される。
【0070】
制御部400は、第1の温度センサ410及び第2の温度センサ420を用いて、熱媒体の給気温度と排気温度を測定し、測定された給気温度と排気温度の差が大きい場合、排気ファン151の動作速度を減らして、空気又は熱媒体の排出速度を減少させる。また、測定された給気温度と排気温度の差が小さい場合は、排気ファン151の動作速度を高め、チャンバ本体100内の空気又は熱媒体の排出速度を増加して、異物の除去速度を増加させることができる。
【0071】
この場合、前記給気温度と排気温度がいずれも、所定の熱処理温度以下の場合は、排気ファン151の動作を停止(Off)させるのが望ましい。
【0072】
また、図8における制御部400は、熱媒体の給気温度を調節するために、所定の温度で内部ヒーター130又はプリヒーター200を制御して、熱媒体を加熱することができる。
【0073】
すなわち、前記熱媒体加熱空間102における温度が、所定の温度以下の場合、制御部400は、内部ヒーター130の加熱状態を増やして、熱媒体の温度を増加させるように制御することもできる。
【0074】
これにより、本発明は、ヤーン310の熱処理の均一性が向上し、熱処理収率を向上させることができる。また、本発明は、排気口150を用いた異物の排出により、装備及びヤーン310が汚染することを防止することができる。
【0075】
前述したように、本発明によるヤーン熱風熱処理装置10の内部における熱媒体流動状態について、図9及び図10を参照して説明する。
【0076】
図9は、本発明の一実施形態に係るチャンバ内の熱媒体流動状態を説明するための図であり、図10は、本発明の一実施形態に係るボビン300とボビンハンガー110の間の熱媒体流動状態を説明するための図である。
【0077】
図9に示しているように、熱媒体加熱空間102において、内部ヒーター130を用いて加熱された熱媒体が、一定の間隔及びサイズの仕切板通孔141を介して、熱処理空間101にムラなく供給されると共に、プリヒーター200を用いて加熱された熱媒体が、熱媒体供給部220に設けられた多数の貫通口223とボビンハンガー110の開放された端部112又はハンガー通孔113を介して、熱処理空間101に供給される。
【0078】
本発明は、チャンバ本体100に熱媒体を供給する前に、プリヒーター200を用いて、予め熱媒体を加熱する。また、熱処理空間101に供給される熱媒体の給気温度と、排気口150を介して排出される熱媒体の排気温度との差により、排気ファン151の動作速度を制御することで、図9のように加熱された熱媒体の強制対流を発生して、チャンバ内の温度勾配を最小化し、ヤーン310の均一な熱処理が可能となる。
【0079】
また、本発明は、図10に示しているように、加熱された熱媒体が、ボビン300とボビンハンガー110の間の離隔空間を通じて、ボビン300の内側面からヤーン310の方向に熱風を送出することで、ボビン300に巻き付けられたヤーン310の外側のみならず、内側の熱処理を同時に行うことを確認することができる。
【0080】
また、本発明は、ボビン300の外周面に形成された多数のボビン通孔301を介して、ボビン300に巻き付けられたヤーン310の内部に熱媒体が円滑に流動できるようにすることで、ボビン300に巻き付けられたヤーン310の内部熱処理の効率を増大することができる。
【0081】
以上、本発明に関する好適な実施形態を説明したが、本発明は、前記実施形態に限定されず、本発明の実施形態から当該発明が属する技術分野における通常の知識を有する者により容易に変更して、均等であると認められる範囲の全ての変更を含む。
【0082】
本発明は、ヤーンの熱風熱処理により、ヤーンの強度、耐湿性、耐化学性、及び耐切創性が向上した繊維を製造することができ、このように特性が向上した繊維は、海洋資材、産業用安全手袋、ロープ、防刃服などの素材として使用可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10