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特許7569575情報処理装置、情報処理方法およびプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/339 20210101AFI20241010BHJP
【FI】
A61B5/339
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023084111
(22)【出願日】2023-05-22
【審査請求日】2024-08-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519409257
【氏名又は名称】株式会社カルディオインテリジェンス
(74)【代理人】
【識別番号】100190621
【弁理士】
【氏名又は名称】崎間 伸洋
(74)【代理人】
【識別番号】100212510
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 翔
(72)【発明者】
【氏名】波多野 薫
(72)【発明者】
【氏名】和田 茜
(72)【発明者】
【氏名】田村 雄一
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-068219(JP,A)
【文献】特開2004-261583(JP,A)
【文献】特開2018-110725(JP,A)
【文献】特開平5-161612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05-5/0538
A61B 5/24-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのプロセッサを含み、生物の反復する複数回の動きを示す動き情報を処理する情報処理装置であって、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記動き情報を取得し、
取得した前記動き情報を、前記生物の反復する複数回の動きそれぞれの波形を示す複数の第1の波形情報に分割し、
前記複数の第1の波形情報を、それぞれ複数の前記第1の波形情報を含む複数のクラスタにクラスタリングし、
前記クラスタそれぞれに含まれる前記第1の波形情報から、前記クラスタそれぞれに含まれる前記第1の波形情報が示す波形を代表する波形を示す1以上の第2の波形情報を選択し、
前記クラスタそれぞれを代表する波形を示す複数の前記第2の波形情報を少なくとも1画面に一覧表示する、
ための処理を実行するように構成され
前記第1の波形情報それぞれは、前記生物の反復する複数回の動きの解析に用いられる少なくとも1つの第3の波形情報を含み、
表示した前記第2の波形情報に含まれる前記第3の波形情報に対するユーザの操作に応じて、前記第3の波形情報および前記第3の波形情報に含まれる点の少なくともいずれかを示す印を、表示した前記第1の波形情報が示す波形に重ねて表示し、
表示した前記第2の波形情報に含まれる前記第3の波形情報に対するユーザの操作に応じて、前記第3の波形情報に含まれる点を特定し、
特定した前記第3の波形情報に含まれる点に基づいて、同じクラスタに含まれる他の前記第1の波形情報の前記第3の波形情報に含まれる点を特定する、
情報処理装置。
【請求項2】
前記生物の反復する複数回の動きは前記生物の心臓の拍動であり、
前記動き情報は、前記生物の心臓の拍動を示す心電図情報であり、
前記第1の波形情報それぞれは、前記生物の心臓の複数の拍動それぞれを示し、
前記第3の波形情報は、前記第1の波形情報それぞれに含まれるP波、Q波、R波、S波、T波およびU波の少なくとも1つと、前記P波、前記Q波、前記R波、前記S波、前記T波および前記U波の始端点、終端点および心電図における座標とのうちの少なくともいずれかを示す、
請求項に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記生物はヒトであり、
一個体の前記ヒトから、携帯型心電計または12誘導心電計を介して前記心電図情報を取得する、
請求項に記載の情報処理装置。
【請求項4】
予め決められた時間だけ前記心電図情報を取得することを繰り返す、
請求項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記予め決められた時間は、10秒~30秒である、
請求項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記第3の波形情報の少なくとも1つを示す印は、カーソルであり、
表示した前記第2の波形情報および前記第3の波形情報と、表示した前記第2の波形情報および前記第3の波形情報それぞれに重ねて表示した前記カーソルとを示す情報を記憶する、
請求項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
表示した前記第2の波形情報および前記第3の波形情報それぞれに重ねて表示した複数の前記カーソルの間の時間間隔を示す情報を、表示した前記第2の波形情報および前記第3の波形情報それぞれに重ねてさらに表示する、
請求項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
ショートカットキーを有するキーボード、
をさらに含み、
前記ユーザの操作は、前記キーボードが有する前記ショートカットキーに対して行われる、
請求項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
少なくとも1つのプロセッサを含み、生物の反復する複数回の動きを示す動き情報を処理する情報処理装置において、前記少なくとも1つのプロセッサが所定の指示命令を実行することによりなされる情報処理方法であって、
前記動き情報を取得する段階と、
取得した前記動き情報を、前記生物の反復する複数回の動きそれぞれの波形を示す複数の第1の波形情報に分割する段階と、
前記複数の第1の波形情報を、それぞれ複数の前記第1の波形情報を含む複数のクラスタにクラスタリングする段階と、
前記クラスタそれぞれに含まれる前記第1の波形情報から、前記クラスタそれぞれに含まれる前記第1の波形情報が示す波形を代表する波形を示す1以上の第2の波形情報を選択する段階と、
前記クラスタそれぞれを代表する波形を示す複数の前記第2の波形情報を少なくとも1画面に一覧表示する段階と、
前記第1の波形情報それぞれは、前記生物の反復する複数回の動きの解析に用いられる少なくとも1つの第3の波形情報を含み、
表示した前記第2の波形情報に含まれる前記第3の波形情報に対するユーザの操作に応じて、前記第3の波形情報および前記第3の波形情報に含まれる点の少なくともいずれかを示す印を、表示した前記第1の波形情報が示す波形に重ねて表示する段階と、
表示した前記第2の波形情報に含まれる前記第3の波形情報に対するユーザの操作に応じて、前記第3の波形情報に含まれる点を特定する段階と、
特定した前記第3の波形情報に含まれる点に基づいて、同じクラスタに含まれる他の前記第1の波形情報の前記第3の波形情報に含まれる点を特定する段階と、
を含む情報処理方法。
【請求項10】
少なくとも1つのプロセッサを含み、生物の反復する複数回の動きを示す動き情報を処理する情報処理装置を、
前記動き情報を取得し、
取得した前記動き情報を、前記生物の反復する複数回の動きそれぞれの波形を示す複数の第1の波形情報に分割し、
前記複数の第1の波形情報を、それぞれ複数の前記第1の波形情報を含む複数のクラスタにクラスタリングし、
前記クラスタそれぞれに含まれる前記第1の波形情報から、前記クラスタそれぞれに含まれる前記第1の波形情報が示す波形を代表する波形を示す1以上の第2の波形情報を選択し、
前記クラスタそれぞれを代表する波形を示す複数の前記第2の波形情報を少なくとも1画面に一覧表示する、
ための処理を実行するように構成され
前記第1の波形情報それぞれは、前記生物の反復する複数回の動きの解析に用いられる少なくとも1つの第3の波形情報を含み、
表示した前記第2の波形情報に含まれる前記第3の波形情報に対するユーザの操作に応じて、前記第3の波形情報および前記第3の波形情報に含まれる点の少なくともいずれかを示す印を、表示した前記第1の波形情報が示す波形に重ねて表示し、
表示した前記第2の波形情報に含まれる前記第3の波形情報に対するユーザの操作に応じて、前記第3の波形情報に含まれる点を特定し、
特定した前記第3の波形情報に含まれる点に基づいて、同じクラスタに含まれる他の前記第1の波形情報の前記第3の波形情報に含まれる点を特定する、
プロセッサとして機能させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物の心臓などの動きを電気的に示す動き情報を処理する情報処理装置、情報処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
被検者の身体に装着され、その心電図を長時間にわたって測定できる心電計が知られている(例えば、特許文献1を参照)。また、情報の統計処理および補正法として、個体別補正法、Bazett補正法およびFridericia補正法が知られている(非特許文献1,2)。また、心電図といった時系列的な情報を処理する方法として、時系列データクラスタリング法が知られている(非特許文献3)。また、時系列データの間の類似度を求める手法としてダイナミックタイムワーピング(動的時間伸縮;DTW(Dynamic Time Warping))法が知られている(非特許文献4)。また、例えば、心電図の心拍など、反復する多数の波形を含む信号から代表波形を求める方法が知られている(非特許文献5)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】QT計測指標とQT/RR関係の活用(水牧功一,心臓,48(4),2016; Vol.48 No.4(2016) https://www.jstage.jst.go.jp/article/shinzo/48/4/48_388/_pdf)
【文献】QT延長を評価する試験デザインと統計的評価方法(渡橋、Jpn J Biomet Vol. 29,Special Issue, 1 2008;https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjb/29/Special_Issue_1/29_Special_Issue_1_S61/_pdf/-char/ja)
【文献】時系列データクラスタリングとK-Shape(http://www.cybergarage.org/memo/timeseries_clustering-kshape/)
【文献】DTW(Dynamic Time Warping)動的時間伸縮法(https://data-analysis-stats.jp/%E6%A9%9F%E6%A2%B0%E5%AD%A6%E7%BF%92/dtwdynamic-time-warping%E5%8B%95%E7%9A%84%E6%99%82%E9%96%93%E4%BC%B8%E7%B8%AE%E6%B3%95/)
【文献】二重層SOMを用いたホルター心電図でのQRS波形態分類システム(金子他,生体医工学,46(6),576-586,2008;https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsmbe/46/6/46_6_576/_pdf/-char/ja#:~:text=%E3%83%9B%E3%83%AB%E3%82%BF%E3%83%BC%E5%BF%83%E9%9B%BB%E5%9B%B3%E3%81%A7%E3%81%AE%E4%B8%8D%E6%95%B4%E8%84%88%E8%87%AA%E5%8B%95%E8%A7%A3%E6%9E%90%E6%A9%9F%E8%83%BD%E3%81%AB%E3%81%AF%E6%A4%9C%E5%87%BA%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%9F%20%E5%BF%83%E9%9B%BB%E6%B3%A2%E5%BD%A2%E3%82%92%E4%B8%80%E5%BF%83%E6%8B%8D%E6%AF%8E%E3%81%AB%E5%88%87%E3%82%8A%E5%87%BA%E3%81%97%EF%BC%8C%E4%B8%BB%E3%81%ABQRS%E6%B3%A2%E3%81%AE%E5%BD%A2%E6%85%8B%E6%AF%8E%E3%81%AB%20%E5%88%86%E9%A1%9E%E3%81%99%E3%82%8B%E6%A9%9F%E8%83%BD%E3%81%8C%E3%81%82%E3%82%8B%EF%BC%8E%E6%AD%A3%E5%B8%B8%E3%81%AA%E5%BF%83%E6%8B%8D%E3%81%AE%E6%B3%A2%E5%BD%A2%E3%82%84%E7%95%B0%E5%B8%B8%E5%BF%83%E6%8B%8D%E3%81%AE%E6%B3%A2%E5%BD%A2%20%E5%90%8C%E5%A3%AB%E3%81%8C%E3%82%B0%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%94%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%81%95%E3%82%8C%E3%82%8B%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%A7%EF%BC%8C%E5%8C%BB%E7%99%82%E5%BE%93%E4%BA%8B%E8%80%85%E3%81%AF%E5%8A%B9%E7%8E%87%E7%9A%84%E3%81%AB,%E7%95%B0%E5%B8%B8%E5%BF%83%E9%9B%BB%E5%9B%B3%E3%81%AE%E7%A2%BA%E8%AA%8D%EF%BC%8C%E8%A8%BA%E6%96%AD%E3%81%8C%E3%81%A7%E3%81%8D%E6%9C%89%E7%94%A8%E3%81%AA%E8%A8%BA%E6%96%AD%E6%94%AF%E6%8F%B4%E6%A9%9F%E8%83%BD%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%A6%20%E7%94%A8%E3%81%84%E3%82%89%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%EF%BC%8E%E4%B8%80%E8%88%AC%E7%9A%84%E3%81%AB%E3%81%AF%E7%9B%B8%E4%BA%92%E7%9B%B8%E9%96%A2%E4%BF%82%E6%95%B0%E6%B3%95%E3%82%92%E7%94%A8%E3%81%84%E3%81%9F%E3%83%9E%E3%83%AB%20%E3%83%81%E3%83%86%E3%83%B3%E3%83%97%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%9E%E3%83%83%E3%83%81%E3%83%B3%E3%82%B0%E6%96%B9%E5%BC%8F%E3%81%8C%E7%94%A8%E3%81%84%E3%82%89%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%EF%BC%BB7%20%E2%80%958%EF%BC%BD%EF%BC%8E)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
長時間、例えば1日にわたって一人の被検者から測定された心電図は、10万回程度の多数の拍動を示す波形を含みうるが、このように多数の拍動を示す波形それぞれを解析することは、医師などの専門家にとってすら難かった。
【0005】
本発明は、このような背景からなされ、1人のヒトを測定して得られた心電図といった、生物の反復する複数回の動きを示す動き情報を処理し、動き情報に含まれる複数回の動きそれぞれを示す波形を解析することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、「少なくとも1つのプロセッサを含み、生物の反復する複数回の動きを示す動き情報を処理する情報処理装置であって、前記少なくとも1つのプロセッサは、前記動き情報を取得し、取得した前記動き情報を、前記生物の反復する複数回の動きそれぞれの波形を示す複数の第1の波形情報に分割し、前記複数の第1の波形情報を、それぞれ複数の前記第1の波形情報を含む複数のクラスタにクラスタリングし、前記クラスタそれぞれに含まれる前記第1の波形情報から、前記クラスタそれぞれに含まれる前記第1の波形情報が示す波形を代表する波形を示す1以上の第2の波形情報を選択し、前記クラスタそれぞれを代表する波形を示す複数の前記第2の波形情報を少なくとも1画面に一覧表示するための処理を実行するように構成される情報処理装置」が提供される。
【0007】
また、本開示の一態様によれば、「少なくとも1つのプロセッサを含み、生物の反復する複数回の動きを示す動き情報を処理する情報処理装置において、前記少なくとも1つのプロセッサが所定の指示命令を実行することによりなされる方法であって、前記動き情報を取得する段階と、取得した前記動き情報を、前記生物の反復する複数回の動きそれぞれの波形を示す複数の第1の波形情報に分割する段階と、前記複数の第1の波形情報を、それぞれ複数の前記第1の波形情報を含む複数のクラスタにクラスタリングする段階と、前記クラスタそれぞれに含まれる前記第1の波形情報から、前記クラスタそれぞれに含まれる前記第1の波形情報が示す波形を代表する波形を示す1以上の第2の波形情報を選択する段階と、前記クラスタそれぞれを代表する波形を示す複数の前記第2の波形情報を少なくとも1画面に一覧表示する段階とを含む方法」が提供される。
【0008】
さらに、本開示の一態様によれば、「少なくとも1つのプロセッサを含み、生物の反復する複数回の動きを示す動き情報を処理する情報処理装置を、前記動き情報を取得し、取得した前記動き情報を、前記生物の反復する複数回の動きそれぞれの波形を示す複数の第1の波形情報に分割し、前記複数の第1の波形情報を、それぞれ複数の前記第1の波形情報を含む複数のクラスタにクラスタリングし、前記クラスタそれぞれに含まれる前記第1の波形情報から、前記クラスタそれぞれに含まれる前記第1の波形情報が示す波形を代表する波形を示す1以上の第2の波形情報を選択し、前記クラスタそれぞれを代表する波形を示す複数の前記第2の波形情報を少なくとも1画面に一覧表示するための処理を実行するように構成されたプロセッサとして機能させるプログラム」が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、生物の反復する複数回の動きを示す動き情報を処理し、動き情報に含まれる複数回の動きそれぞれを示す波形を解析できる。
【0010】
なお、上述した効果は説明の便宜のための例示的なものであるにすぎず、限定的なものではない。上述した効果に加えて、または、上述した効果に代えて、本開示において記載されたいかなる効果や当業者であれば明らかな効果を奏することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示にかかる情報処理システム1の構成を例示する図である。
図2A図1に示した心電計2のハードウェア構成を例示する図である。
図2B図1に示した情報処理装置3および端末装置12のハードウェア構成を例示する図である。
図3A】心電図情報が示す心電図信号の波形を例示する図である。
図3B】波形情報が示す波形を例示する図である。
図3C】ユーザが波形の測定対象部分としてT波の終端点を特定する作業を例示する図である。
図4】情報処理装置3における情報処理のために用いられる情報テーブルを示す図である。
図5】情報処理装置3における情報処理を行う情報処理プログラム34に含まれるプログラムモジュールを示す図である。
図6A】テンプレート画面4を例示する図である。
図6B】T波の変化がなだらかであるという特徴を有するテンプレート40を含むテンプレート画面4を例示する図である。
図6C図6Bに示したn個のテンプレート40のうち、特に変化がなだらかな第i番目のテンプレート40のT波を拡大して示す図である(1≦i≦n)。
図7図1に示した情報処理システム1に含まれる心電計2、情報処理装置3および端末装置12の間で行われる通信シーケンスを示す図である。
図8A】Δ波とのアノテーションが添えられたテンプレート40を含むテンプレート画面4を例示する図である。
図8B】長時間にわたって測定されたQTc間隔の時間長を経時的に並べたトレンドグラフを例示する図である。
図9A】心臓に心室内伝導障害が生じていないときの正常な心拍波形を例示する図である。
図9B】心臓に心室内伝導障害が生じているときの異常な心拍波形を例示する図である。
図9C】心室伝達障害とのアノテーションが添えられたテンプレート40を含むテンプレート画面4を例示する図である。図9Dは、トレンドグラフを例示する図である。
図9D】トレンドグラフを例示する図である。
図10A】PVCとのアノテーションが添えられたテンプレート40を含むテンプレート画面4を例示する図である。
図10B】トレンドグラフを例示する図である。
図11A】ST上昇とのアノテーションが添えられたテンプレート40を含むテンプレート画面4を例示する図である。
図11B】トレンドグラフを例示する図である。
図12A図6Aなどに示したテンプレート40に含まれるテンプレート40の波形を例示する図である。
図12B図12Aに示したように選択されたテンプレート40に対応するクラスタ情報Dに含まれる波形情報が示す心拍波形を例示する図である。
図13A】不整脈の心拍波形が表示されたテンプレート40を含むテンプレート画面4を例示する図である。
図13B】不整脈の心拍波形を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1の実施形態]
まず、添付図面を参照して本開示の第1の実施形態を説明する。なお、図面において共通する構成要素および処理には同一の参照符号が付されている。また、図面においては、図示の都合上、「モジュール」など、構成要素の名称の一部が適宜、省略されたり、構成部分の間で送受信される情報などを示す線が適宜、省略されたりすることがある。
【0013】
また、本開示にかかる情報処理装置は、ヒトの心臓に対する測定により得られる心電図以外に、例えば、ヒトの脳に対する測定により得られる脳波など、ヒトの体内において反復する複数回の動きを示す信号に含まれ、複数回の動きそれぞれに対応する信号の波形を表示しうる。つまり、この「動き」は、ヒトの体内の物理的な動きに限定されず、脳なとの静的な動きをも含む。
【0014】
また、本開示にかかる情報処理装置は、ヒトに限らず哺乳類、爬虫類、両生類、魚類、無脊椎動物、植物、自然現象など、様々な生物、さらに無生物に対する測定により得られ、これらの動きを示す信号を処理しうる。また、本開示にかかる情報処理装置は、一個体の生物などに対してだけでなく、複数の個体の生物などに対する測定により得られ、これらの個体の体内などの動きを示す信号を処理しうる。ただし、以下において、説明を具体化し、その理解を容易にするために、本開示にかかる情報処理装置が、健康診断または病気の治療を受ける一人のヒト(被検者)の心電図を処理する場合が具体例とされる。
【0015】
1.情報処理システムの構成
まず、本開示にかかる情報処理システム1の構成を説明する。図1は、本開示にかかる情報処理システム1の構成を例示する図である。図1に示すように、情報処理システム1は、心電計2、情報処理装置3および端末装置12が、通信ネットワーク100を介して相互に情報を送受信可能に接続された構成をとる。ただし、心電計2と情報処理装置3、および、情報処理装置3と端末装置12とは、電線またはケーブルなどを介して、通信ネットワーク100なしに直接に情報を伝送可能に接続されうる。
【0016】
通信ネットワーク100は、データ通信可能な有線通信ネットワークまたは無線ネットワーク、あるいは有線通信ネットワークおよび無線ネットワークの組み合わせである。通信ネットワーク100は、心電計2が送信した心電図情報を情報処理装置3に伝送する。また、通信ネットワーク100は、検査を行う医師などのユーザが、端末装置12を用いて、情報処理装置3を操作したり、情報処理装置3が処理した心電図情報および波形情報を観察したり解析したりする場合に、情報処理装置3と端末装置12との間で情報を伝送する。
【0017】
2.心電計2の構成
図2Aは、図1に示した心電計2のハードウェア構成を例示する図である。図2Aに示すように、電極インターフェース(電極IF)202、プロセッサ206、メモリ208および通信処理回路214を含む通信インターフェース212が、バス200を介して相互に情報およびデータを送受信可能に接続された構成をとる。心電計2は、例えば、被検者の体に装着される携帯型の心電計、または、いわゆる12誘導心電計である。心電計2は、これらの構成部分により、被検者の心臓に対する測定を行い、情報処理システム100を介して情報処理装置3に心電図情報を実時間的に送信する。あるいは、心電計2は、心電図情報をメモリ208に記憶し、情報処理装置3からの要求に応じて、記憶した心電図情報を、通信ネットワーク100を介して情報処理装置3に対して送信する。また、あるいは、情報処理装置3は、予め決められた時間、例えば1時間~1日の間に得られた心電図情報をメモリ208に記憶し、ケーブル(不図示)、または、メモリ208および情報処理装置3に着脱可能で不揮発性メモリを含む外部記録媒体210を介して、記憶した心電図情報を情報処理装置3に対して出力する。
【0018】
電極インターフェース202には、被検者の体表に配置され、被検者の心臓が発するアナログ形式の電気的な信号(心電図信号)を検出するn個(1≦n)の電極204が接続される。電極インターフェース202は、心電図信号を増幅する増幅装置、および、増幅された心電図信号をディジタル形式のデータに変換するアナログ/ディジタル(A/D)変換装置などを含む。電極インターフェース202は、被検者の心電図信号を増幅してディジタル形式に変換し、被検者の心電図を示す心電図情報を生成する。
【0019】
プロセッサ206は、少なくとも1つのプロセッサ(CPU)、または、少なくとも1つのCPUおよび信号処理などの特定の処理に特化した少なくとも1つのディジタルシグナルプロセッサ(DSP)の組合せから構成される。プロセッサ206は、メモリ208に記憶されたプログラムに含まれる指示命令を実行して、バス200を介して接続された他の構成要素を制御する制御部として機能する。メモリ208に記憶されたプログラムは、OS(不図示)の機能を実現するための指示命令を含むプログラム、および、被検者の心電図信号を取得して心電図情報を生成し、生成した心電図情報を送信または記憶するための指示命令を含むアプリケーションプログラムを含みうる。
【0020】
メモリ208は、ROM、RAM、不揮発性メモリ、HDD(不図示)、SSD(不図示)などから構成され、記憶部として機能する。ROMは、本開示に係る情報提供サービスを利用するための指示命令を含むアプリケーションプログラム、およびOSを実行するための指示命令を含むプログラムを記憶する。RAMは、ROMに記憶された上記プログラムの指示命令がプロセッサ206により実行されている間、データの書き込みおよび読み込みをするために用いられるメモリである。不揮発性メモリは、プログラムの実行によってデータの書き込みおよび読み込みが実行されるメモリであって、例えば心電計2が携帯用心電計である場合に、不揮発性メモリに書き込まれた心電図情報は、心電計2の電源が切られた後でも保存される。なお、メモリ208には、アプリケーションプログラムの仕様によっては、上述したように、外部記録媒体210などが着脱され、メモリ208は、外部記録媒体210に対して心電図情報を書き込んでよい。
【0021】
通信インターフェース212は、通信処理回路214およびアンテナ(不図示)を介して、通信ネットワーク100を介して接続された情報処理装置3に対して、被検者に対する測定により得られた心電図情報を、実時間的に送信する通信部として機能する。なお、通信インターフェース212は、メモリ208に記憶されたアプリケーションプログラムの仕様によっては、上述したように、情報処理装置3からの要求に応じて、メモリ208に記憶された心電図情報を送信してよい。
【0022】
通信処理回路214は、LTE方式に準拠した広帯域の無線通信方式のための通信処理を行う。あるいは、通信処理回路214は、IEEE802.11に準拠した無線LAN、または、Bluetooth(登録商標)規格に準拠した無線通信方式のための通信処理を行う。さらに、通信処理回路214は、無線通信に代えて、または、加えて、有線通信のための通信処理も行える。
【0023】
3.情報処理装置3および端末装置12の構成
図2Bは、図1に示した情報処理装置3および端末装置12のハードウェア構成を例示する図である。情報処理装置3および端末装置12は、図2Bに示す構成要素の全てを備える必要はなく、一部を省略した構成をとることも可能であり、他の構成要素を加えることも可能である。また、情報処理装置3および端末装置12は、それぞれ1つの筐体に一体に構成される必要はなく、通信ネットワーク100を介して相互に接続された複数のコンピュータにわたって構成されうる。また、情報処理装置3と端末装置12とは必ずしも同じ種類の装置である必要はなく、例えば、情報処理装置3がサーバ装置であり、端末装置12がパーソナルコンピュータであってよい。
【0024】
図2Bに示すように、情報処理装置3および端末装置12は、出力インターフェース302、プロセッサ306、メモリ308、通信インターフェース312および入力インターフェース316が、バス300を介して相互に情報およびデータを送受信可能に接続された構成をとる。出力インターフェース302には、プリンタ(不図示)およびディスプレイ304などの出力デバイスが接続される。入力インターフェース316には、マウス318およびキーボード320などの入力デバイスが接続される。つまり、情報処理装置3および端末装置12は、一般的なコンピュータとしての構成部分を含む。
【0025】
なお、キーボード320は、例えば、パーソナルコンピュータなどに接続され、あるいはスマートフォンに表示される一般的なキーボードである。キーボード320がパーソナルコンピュータに接続されるキーボードであるときには、キーボード320は、アルファベット、数字および記号を入力するために用いられるハードウェア的なキースイッチ、および、コントロールキーなど、コンピュータを制御するために用いられるハードウェア的なキースイッチを含む。キーボード320のコントロールキーのキースイッチと、アルファベットを入力するためのキースイッチとを同時に押下することにより、情報処理システム1のユーザは、情報処理システム1に対して、いわゆるショートカットキーを用いた操作を行える。
【0026】
情報処理装置3は、これらの構成部分により、心電計2から入力された被検者の心電図情報を処理する。さらに、情報処理装置3は、心電図情報に含まれる多数の拍動それぞれに対応する波形を示す波形情報を、観察しやすいように情報処理装置3および端末装置12のディスプレイ304などに表示し、あるいはプリンタからプリントアウトできる。なお、以下の記載において「拍動」と「心拍」とは、ほぼ同義であるが、用語の統一のために「拍動」が用いられる。端末装置12は、これらの構成部分により、情報処理装置3から離れた位置にある情報処理装置3の入出力装置として機能する。つまり、情報処理装置3は、ユーザが情報処理装置3から離れた場所から情報処理装置3を操作し、心電図情報および波形情報を観察するために、情報処理装置3との間で情報を送受信し、ユーザの操作内容を情報処理装置3に送信し、情報処理装置3から送信された心電図情報および波形情報などを、出力インターフェース302などの出力デバイスから出力し、ユーザに対して表示する。
【0027】
出力インターフェース302には、上述したような様々な出力デバイスが接続され、接続された出力デバイスから情報を出力するための情報出力部として機能する。出力インターフェース302としては、シリアルポート、パラレルポート、USB、HDMI(登録商標)など、その用途などに応じて公知の接続形式が採用されうる。
【0028】
プロセッサ306は、心電計2のプロセッサ206と同様に、少なくとも1つのプロセッサ(CPU)、または、少なくとも1つのCPUと、信号処理または画像処理などの特定の処理に特化した少なくとも1つのDSPまたはGPUの組合せから構成される。プロセッサ306は、メモリ308に記憶されたプログラムに含まれる指示命令を実行して、バス300を介して接続された他の構成要素を制御する制御部として機能する。情報処理装置3において、メモリ308に記憶されたプログラムは、OSの機能を実現するための指示命令を含むプログラムを含みうる。また、メモリ308に記憶されたプログラムは、心電計2から入力された心電図情報を解析し、心電図情報に含まれ、複数の拍動それぞれに対応する波形(拍動波形)を示す波形情報を表示するためなどの指示命令を含むアプリケーションプログラムを含みうる。
【0029】
さらに、プロセッサ306は、生物の反復する複数回の動きを示す動き情報を取得し、取得した動き情報を、生物の反復する複数回の動きそれぞれの波形を示す複数の第1の波形情報に分割し、複数の第1の波形情報を、それぞれ複数の第1の波形情報を含む複数のクラスタにクラスタリングし、クラスタそれぞれに含まれる第1の波形情報から、クラスタそれぞれに含まれる第1の波形情報が示す波形を代表する波形を示す1以上の第2の波形情報を選択し、クラスタそれぞれを代表する波形を示す複数の前記第2の波形情報を少なくとも1画面に一覧表示するための処理を実行する。
【0030】
メモリ308は、上述した記憶デバイスを含み、記憶部として機能する。さらに、メモリ308は、生物の反復する複数回の動きを示す動き情報を取得し、取得した動き情報を、生物の反復する複数回の動きそれぞれの波形を示す複数の第1の波形情報に分割し、複数の第1の波形情報を、それぞれ複数の第1の波形情報を含む複数のクラスタにクラスタリングし、クラスタそれぞれに含まれる第1の波形情報から、クラスタそれぞれに含まれる第1の波形情報が示す波形を代表する波形を示す1以上の第2の波形情報を選択し、クラスタそれぞれを代表する波形を示す複数の前記第2の波形情報を少なくとも1画面に一覧表示する処理のためのアプリケーションプログラム(図5などを参照して後述)を記憶する。なお、メモリ308には、心電計2のメモリ208と同様に、外部記録媒体210が着脱され、メモリ308は、外部記録媒体210から心電図情報を読み出しうる。
【0031】
通信インターフェース312は、通信インターフェース212について上述した無線通信方式や公知の有線通信方式に従って、通信ネットワーク100を介した情報およびデータを送受信するための処理を行う。情報処理装置3においては、通信処理回路314は、一例として、心電計2から心電図情報を、通信ネットワーク100を介して受信するための処理を行う。また、通信処理回路314は、端末装置12へ心電図情報、および、心電図情報から得られた波形情報を、通信ネットワーク100を介して送信するための処理を行う。また、通信処理回路314は、端末装置12から、キーボード320などに対してユーザが行った操作を示す情報を受信するための処理を行う。また、端末装置12においては、通信処理回路314は、情報処理装置3から心電図情報および波形情報を、通信ネットワーク100を介して受信するための処理をおこなう。また、通信処理回路314は、ユーザにより端末装置12の入力デバイスに対して行われた操作を示す情報を、通信ネットワーク100を介して受信するための処理を行う。
【0032】
入力インターフェース316は、上述した入力デバイスに対してユーザが行った操作を受け入れる。また、入力インターフェース316は、受け入れた操作を示す情報を、バス300を介してプロセッサ306に対して出力する。
【0033】
4.心電図情報および波形情報などの説明
以下、心電図情報および波形情報(第1の波形情報)を説明する。図3Aは、心電図情報が示す心電図信号の波形を例示する図である。図3Bは、波形情報が示す波形を例示する図である。心電図情報および波形情報が示す波形は、図3Aおよび図3Bを参照して説明するまでもなく、一般に広く知られている。心電図情報は、被検者の心電図の波形を示す。情報処理装置3は、心電図波形を処理し、心電図情報を心臓の複数回の拍動それぞれに対応する情報に分割することにより波形情報を生成する。心電図情報は、情報処理装置3および端末装置12において、ディスプレイ304などに心電図波形として表示される。波形情報もまた、情報処理装置3および端末装置12において、ディスプレイ304などに拍動波形として表示される。
【0034】
心電計2は、電極204を介して被検者から検出したアナログ形式の心電図信号を、電極インターフェース202によりディジタル形式に変換することにより心電図情報を生成する。心電図情報は心電図信号の波形を示す。心電図信号は、連続した複数の拍動波形を示す拍動信号を含む。情報処理装置3は、心電図情報を、心電図信号に含まれる複数の拍動信号それぞれに対応する複数の波形情報それぞれに分割する。
【0035】
心電図信号に含まれる1つの拍動波形は、図3Bに示すように、それぞれP波、Q波、R波、S波、T波およびU波と呼ばれる波形を含む。1つの拍動波形に含まれるP波、Q波、R波、S波、T波およびU波それぞれの波形は、心臓を診断するための心電図情報の解析のための測定の対象となりうる。また、1つの拍動波形に含まれるこれらの波形の始端点、終端点、極大点(ピーク)および極小点(ミニマムポイント)なども測定の対象となりうる。
【0036】
また、1つの拍動波形に含まれるこれらの波形の始端点、終端点、極大点および極小点などの間の時間長も測定の対象となりうる。また、隣接する拍動波形それぞれに含まれるこれらの波形の成分の始端点、終端点、極大点および極小点などの間の時間長も測定または解析の対象となりうる。以下、心電図信号に含まれ、測定の対象となり得る波形および波形の始端点などは、測定対象部分とも記載されることがある。さらに、ST波の極大点と極小点との間の電圧値の差(ST波高値)、Q波の始端点からS波の終端点までのQRS複合体における極大点と極小点との間の電圧値の差(QRS幅における波高値)に対するT波の極大点と極小点との間の電圧値の差(T波の波高値)なども測定対象部分とされうる。
【0037】
1つの拍動波形それぞれに含まれる測定対象部分同士の間の時間長は、例えば、Q波の始端点からT波の終端点までのQT間隔の時間長、QRS幅の時間長、PR間隔の時間長、Q波の始端点からT波の極大点およびT波の極大点からT波の終端点までの時間長などである。また、隣接する拍動波形それぞれに含まれる測定対象部分同士の時間長は、例えば、隣接する2つの波形に含まれるR波のピーク同士の間隔の時間長を示すRR間隔などである。なお、心電図波形において、1つのP波の始端点の直前からRR間隔に対応する時間を経過するまでの間が1つの拍動波形である。本開示の説明などにおいて、心臓の複数の拍動が、「周期的」であるとは記載されず、「反復する」などと記載される理由は、被検者の体調および運動の状態などによりRR間隔に対応する時間が変化するからである。
【0038】
ユーザは、波形信号が示す波形に含まれる点のうち、任意のいずれかを特定できる。図3Cは、ユーザが波形の測定対象部分としてT波の終端点を特定する作業を例示する図である。例えば、図3Cに示すように、2人のユーザそれぞれは、独自に、表示された波形情報により示される波形を観察して、表示された波形におけるT波の終端点を特定できる。このようなときに、これらのユーザそれぞれが波形情報に異なる基線を想定すると、図3Cにおいて矢印a,bにより示すように、2人のユーザそれぞれが特定したT波の終端点が一致しなくなりかねない。このように、特定された測定対象部分が複数のユーザの間で一致しないときには、波形情報を解析して得られる測定対象部分の間隔、例えばQT間隔などにばらつきが生じることになる。本開示によれば、このような測定対象部分の特定および測定対象部分間の間隔のばらつきをなくしたり、小さくしたりできる。
【0039】
なお、心電計2が携帯型であって、被検者に装着され、長時間にわたって心電図情報を生成するときには、心電計2は、被検者の日常的な生活における心電図情報を測定することとなる。このようなときには、被検者の動きに応じて、心電図情報が示す心電図波形の解析において重要な基線に変化が生じるので、水平の基線を想定した心電図情報の解析が行われると、解析の結果に顕著な誤差が発生する可能性がある。また、複数のユーザを測定して得られた複数の心電図情報の解析のために、複数の心電図情報に共通の基線を想定すると、これらの心電図情報に対する解析の結果に顕著な誤差が生じる可能性がある。本開示によれば、このような心電図情報の解析が行われるときに、基線の想定に起因する心電図情報の解析の結果に生じる誤差をなくしたり、小さくしたりできる。つまり、本開示は、秒単位の短時間の測定により得られた心電図情報の解析にとって有効であるだけでなく、数時間~1日といった長時間の測定により得られた心電図情報の解析において、顕著な有効性を示す。
【0040】
5.情報処理装置3における情報処理に関する情報
以下、情報処理装置3における情報処理に関する情報を説明する。図4は、情報処理装置3における情報処理のために用いられる情報テーブルを示す図である。この情報テーブルは、プロセッサ306によりメモリ308に記憶される。図4に示すように、情報処理装置3における情報処理に関する情報テーブルは、複数の被検者いずれかまたは被検者に対する複数回の測定のいずれかをそれぞれ一意に特定する複数の被検者識別情報IDを含む。情報テーブルは、さらに、複数の被検者識別情報IDそれぞれに対応づけられた心電図情報A、波形情報B、時刻情報C、クラスタ情報D、テンプレート画面情報E、代表波形情報F、測定対象部分情報G、分析結果情報H、解析結果情報I、診断情報Jおよび補正済情報Kを含み、同じ被検者識別情報IDに対応づけられたこれらの情報同士は対応する。なお、情報テーブルは1つのファイルとして作成されてよく、また、複数のファイルに分割して生成されてよい。
【0041】
心電図情報Aは、対応づけられた被検者識別情報IDにより特定される被検者から、または、測定において心電計2により得られた心電図情報である。波形情報Bは、対応づけられた被検者識別情報IDにより特定される被検者から、または、測定において心電図情報から生成された波形情報である。
【0042】
時刻情報Cは、対応する波形情報Bに含まれる複数の波形情報それぞれが生成された時刻を示す時刻情報である。言い換えると、時刻情報Cは、対応する波形情報Bに含まれる複数の波形情報それぞれのタイムスタンプである。クラスタ情報Dは、対応する波形情報Bに対して時系列データクラスタリングによるクラスタリング処理により得られたn(1≦n)個のクラスタに含まれる波形情報である。テンプレート画面情報Eは、対応するクラスタ情報Dに含まれるn個のクラスタそれぞれを代表するn個の心拍波形を、n個のテンプレートとして表示するために用いられるテンプレート画面の形式などを示す画面情報である。代表波形情報Fは、対応するテンプレート画面情報Eにテンプレートとして表示されるn個の波形それぞれを示すn個の波形情報である。なお、代表波形情報Fは、n個のクラスタそれぞれを代表する1個の心拍波形を示す波形情報自体でなくてよく、例えば、上述のように複数の波形情報Bそれぞれに対応したフラグであってよい。例えば、代表波形情報Fが、波形情報Bのフラグであるときには、値が1のフラグに対応する波形情報は代表波形情報であり、値が0のフラグに波形情報は代表波形情報でないことを示す。なお、1つのクラスタ情報Dから、複数の代表波形情報Fが選択されてよい。
【0043】
測定対象部分情報Gは、ユーザの操作に応じて、n個のテンプレートとして表示された心拍波形それぞれにおいて特定された測定対象部分を示す情報である。なお、n個のテンプレートそれぞれに対するユーザの操作は、n個のテンプレートのいずれかを選択し、選択したテンプレートにおける測定対象部分を特定する操作である。測定対象部分を特定する操作は、具体的には、例えば、ユーザが、テンプレート40におけるQ波の始端点およびT波の終端点を、心拍波形の電圧値を縦軸とし、時間を横軸とする座標上の点として指定する操作である。アノテーション情報Hは、医師などのユーザがn個のテンプレートみて、n個のテンプレートそれぞれに付しうるアノテーション(注釈)を示す情報である。アノテーションとは、例えば、テンプレートを見たユーザがΔ(δ)波または期外収縮(PVC)といった存在を認めたときに、その旨をそのテンプレートに付して表示するための情報である。
【0044】
解析結果情報Iは、対応する波形情報Bに含まれる複数の波形情報に対する解析処理の結果を示す情報である。波形情報Bに含まれる複数の波形情報に対する解析処理は、例えば、時間長を縦軸とし時刻を横軸として、対応する波形情報Bに含まれる複数の波形情報それぞれの測定対象部分同士の間の時間長を、時系列的にグラフ形式で表示する処理である。診断情報Jは、対応づけられた被検者識別情報IDにより特定される被検者の心臓に対して、医師などのユーザが付した診断を示す情報である。なお、アノテーション情報Hおよび診断情報Jの内容は、ユーザがこれらの情報を入力しなかったときには、その旨を示す内容、例えば空値(φ)となる。なお、以下の記載において、必要に応じて、例えば、波形情報などの情報には、波形情報Bなどと記号が付される。補正済情報Kは、第2の実施形態において説明するように、拍動数(心拍数)の変化による影響を排除するために、QT間隔の時間長を、個体別補正法などで補正することにより得られたQT間隔の時間長を示す情報である。
【0045】
6.情報処理装置3において実行される情報処理プログラム34
以下、情報処理装置3における情報処理を行う情報処理プログラム34を説明する。図5は、情報処理装置3における情報処理を行う情報処理プログラム34に含まれるプログラムモジュールを示す図である。図5に示すように、情報処理プログラム34は、心電図情報取得モジュール340、波形情報生成モジュール342、クラスタリング処理モジュール346、代表波形選択モジュール348、テンプレート画面生成モジュール350、対象部分特定モジュール352、アノテーション生成モジュール354および波形情報解析モジュール356を含む。
【0046】
情報処理プログラム34のこれらの構成部分は、それぞれの機能を実現するために必要な指示命令を含み、メモリ308に記憶され、これらの構成部分それぞれに含まれる指示命令はプロセッサ306により読み出されて実行される。情報処理プログラム34は、これらの構成部分により、心電計2から複数の被検者または複数回の測定それぞれの心電図情報Aを取得してn個のテンプレート(図6Aなどを参照して後述)を生成し、テンプレート画面のなかに表示する。なお、n個のテンプレートは、好ましくは、複数の被検者それぞれについて作成される。1人の被検者に対する測定により得られた心電図情報に含まれる波形情報からは、少ないクラスタしか生成されない傾向がある。一方、複数の被検者に対する測定により得られた心電図情報に含まれる波形情報からは、多くのクラスタが生成されてしまう傾向がある。つまり、1人の被検者に対する測定により得られた波形情報に対しては有効にクラスタリング処理が行われうるので、少ない数の波形情報のクラスタしか生成されず、テンプレートの数も少なくて済む。テンプレートの数が少なければ少ないほど、ユーザが測定対象部分をテンプレートに対して特定する作業が少なくて済むことは明らかである。
【0047】
また、情報処理プログラム34は、ユーザの操作に応じて、表示されたn個のテンプレートそれぞれの測定対象部分を特定し、特定した測定対象部分にカーソルなどの画像を付す。また、情報処理プログラム34は、ユーザの操作に応じてテンプレートに対するアノテーションの入力を受け入れ、テンプレートに付して表示する。さらに、情報処理装置3は、ユーザの操作に応じて波形情報Bに対する解析処理を行い、解析処理の結果をディスプレイ304などに表示する。
【0048】
以下、情報処理プログラム34の構成部分それぞれを説明する。心電図情報取得モジュール340は、情報処理プログラム34の処理に必要とされる心電図情報Aの全てを、通信インターフェース312を介して一度に心電計2から取得し、メモリ308に記憶する。以下、情報処理プログラム34の必要とされる心電図情報Aが、一人(一個体)の被検者に対する1日にわたる測定により得られた心電図情報である場合が具体例とされる。あるいは、心電図情報取得モジュール340は、被検者に対する測定により得られた心電図情報を、心電計2から実時間的(リアルタイム)に、または予め決められた時間の分ずつ心電計2から取得し、メモリ308に記憶する。情報処理プログラム34は、情報処理プログラム34による処理に必要な心電図情報の全ての取得が終了すると、取得してメモリ308に記憶した心電図情報の全てを心電図情報Aとする。メモリ308に記憶された心電図情報Aは、波形情報生成モジュール342により読み出される。
【0049】
波形情報生成モジュール342は、入力インターフェース316または通信インターフェース312を介して受け入れられたユーザの操作に応じて、心電図波形に含まれる複数の心拍波形それぞれのQRS複合体において、最大の電圧値を示す部分(QRS複合体のピーク)を検出する。波形情報生成モジュール342は、隣接する2個のQRS複合体のピーク同士の間の時間長を1回分の心拍波形の時間長さとする。また、波形情報生成モジュール342は、隣接する2個の心拍波形の2つのQ波形うち、先行する1個のQ波形の始端点よりも予め設定された時間長だけ前の部分を、2つの心拍波形のうちの先行する1個の心拍波形の始端点とする。また、波形情報生成モジュール342は、先行する1つの心拍波形の始端点から、隣接する2個のQRS複合体のピーク同士の間の時間長だけ後の部分を、先行する1つの心拍波形の終端点とする。このようにして、波形情報生成モジュール342は、心電図信号から1回分の心拍信号を切り出すことを、心電図信号の全体にわたって繰り返し、心電図信号を連続した複数の回数分の心拍信号に分割する。さらに、波形情報生成モジュール342は、この分割により得られた複数の回数分の心拍信号それぞれに対応する波形情報を、心電図情報から切り出す。以上説明した処理により、波形情報生成モジュール342は、心電図情報を複数の波形情報に分割する。波形情報生成モジュール342は、以上説明したように生成した複数の波形情報Bをメモリ308に記憶する。メモリ308に記憶された波形情報Bは、クラスタリング処理モジュール346により読み出される。
【0050】
クラスタリング処理モジュール346は、波形情報Bに対して、時系列データクラスタリング方法、例えばK-Shape法によるクラスタリング処理を行い、波形情報Bから複数の波形情報のn個のクラスタを生成し、メモリ308に記憶する。なお、クラスタリング処理モジュール346は、K―Means法など、K-Shape法以外の方法によりクラスタリング処理を行いうる。例えば、クラスタリング処理モジュール346は、K-Means法ではなく、各形状の条件を設定してクラスタリング処理を行うアリゴリズムにより、類似する形状の波形情報Bをクラスタに分類する方法をとりうる。さらに、クラスタリング処理モジュール346は、心電図波形に含まれる心拍波形に対して、教師あり機械学習または教師なしの機械学習を行い、機械学習の結果を用いたAI的な手法を用いたクラスタリング処理を行うことにより、クラスタリング処理の精度を高めうる。メモリ308に記憶されたクラスタ情報Dは、代表波形選択モジュール348により読み出される。
【0051】
代表波形選択モジュール348は、n個のクラスタそれぞれから、これらのクラスタそれぞれに含まれる複数の波形情報が示す心拍波形を代表する1個の心拍波形を示す代表波形情報を選択する。代表波形選択モジュール348は、選択されたn個の代表波形情報を代表波形情報Fとしてメモリ308に記憶する。メモリ308に記憶された代表波形情報Fは、テンプレート画面生成モジュール350により読み出される。なお、クラスタリング処理モジュール346は、クラスタリング処理において、ある1個のクラスタの代表波形と、他のn-1個のクラスタの代表波形との類似度が低いとき、この1個のクラスタおおよびこのクラスタに含まれる波形情報をノイズとして消去し、これ以降の情報処理プログラム34における処理に用いられないようにしうる。このようなときには、n個のクラスタに含まれる全ての波形信号の集合は、波形情報Bの集合の部分集合となることがある。
【0052】
テンプレート画面生成モジュール350は、波形情報Bと代表波形情報Fとからテンプレート画面情報Eを生成する。テンプレート画面生成モジュール350は、メモリ308にテンプレート画面情報Eとして記憶し、出力インターフェース302または通信インターフェース312を介して出力する。テンプレート画面生成モジュール350から出力されたテンプレート画面情報Eは、ディスプレイ304などに表示される。メモリ308に記憶されたテンプレート画面情報Eは、対象部分特定モジュール352により読み出される。
【0053】
図6Aは、テンプレート画面4を例示する図である。なお、図6Aには、テンプレート画面に11個のテンプレートが含まれる場合(n=11)が例示される。ただし、複数のテンプレート画面4それぞれに含まれるテンプレート40の数nは同じでなくてよい。図6Aに示すように、テンプレート画面4はn個のテンプレート40を含み、n個のテンプレート40それぞれには、n個のクラスタに含まれる波形情報の代表波形情報Fそれぞれが示す心拍波形が表示される。テンプレート画面4において、テンプレート40は一覧表示される。ただし、テンプレート画面4の数は1に限定されず、2以上でありうる。なお、テンプレート40には、例えば、測定対象部分としてQ波の始端点とT波の終端点とを示すカーソルと、およびQ波の始端点とT波の終端点との間(QT間隔)の時間長などが、テンプレート40に重ねて表示される。
【0054】
対象部分特定モジュール352(図5)は、通信インターフェース312または入力インターフェース316を介してユーザの操作を受け入れる。対象部分特定モジュール352は、ユーザの操作に応じて、テンプレート画面4のなかのテンプレート40のいずれかを選択し、さらに、テンプレート40の心拍波形に含まれる測定対象部分の特定、つまり、上述した座標の範囲または座標点の特定を行う。このように、ユーザが、n個のテンプレート40の全てを参照することにより、n個のクラスタの全てに対して統一的に測定対象部分の特定を行うことができる。
【0055】
なお、対象部分特定モジュール352は、n個のクラスタそれぞれの代表波形情報F以外の波形情報が示す心拍波形において、n個のクラスタそれぞれにおいて代表波形に対して特定された測定対象部分の座標の付近の波形と一致する波形がある座標の範囲または座標点、または、高い類似性を示す波形がある座標の範囲または座標点を、測定対象部分として特定する。対象部分特定モジュール352は、測定対象部分の特定のために、ダイナミックタイムワーピング法を用いる。ダイナミックタイムワーピング法は、1つのクラスタの代表波形情報Fが示す波形に時系列的に含まれる各点と、同じクラスタに含まれる他の1つの波形情報に時系列的に含まれる各点との距離が全て求め、これらの点の距離を最小とする点の集合としてのタイムワーピングパスを見つけることである。テンプレート40において特定されたQ波の始端点およびT波の終端点の座標と、タイムワーピングパスとに基づいて、代表波形情報F以外の波形を示す心拍波形におけるQ波の始端点およびT波の終端点の座標が特定される。対象部分特定モジュール352は、このように特定されたn個のクラスタそれぞれに含まれるQ波の始端点の座標およびT波の終端点の座標を含む全ての測定対象部分を示す情報を、測定対象部分情報Gとしてメモリ308に記憶する。メモリ308に記憶された測定対象部分情報Gは、波形情報解析モジュール356により読み出される。
【0056】
アノテーション生成モジュール354は、テンプレート画面4のなかのn個のテンプレート40それぞれに表示された代表波形情報Fが示す心拍波形に対してユーザが入力したアノテーションを示す情報を、出力インターフェース302または入力インターフェース316を介して受け入れる。アノテーション生成モジュール354は、受け入れたアノテーションを示す情報を、アノテーション情報Hとしてメモリ308に記憶する。メモリ308に記憶されたアノテーション情報Hは、テンプレート画面生成モジュール350により読み出される。さらに、アノテーション生成モジュール354は、テンプレート40に表示された代表波形ごとに付与したアノテーション情報を用いて、代表波形情報F以外が示す心拍波形のアノテーションを受け入れる。例えば、アノテーション生成モジュール354が、代表波形情報Fに対する不整脈とのアノテーション情報を受け入れたときには、同じクラスタに含まれる他の波形情報にも不整脈とのアノテーション情報を付す。また、例えば、アノテーション生成モジュール354が、代表波形情報Fに対するQT間隔の解析対象外とのアノテーション情報を受け入れたときには、同じクラスタに含まれる他の波形情報にもQT間隔の解析対象外とのアノテーション情報を付す。
【0057】
テンプレート画面生成モジュール350は、読み出したアノテーション情報を、n個のテンプレート40に重ねて表示する。なお、ユーザは、代表波形としてテンプレート40に表示された心拍波形を観察して、被検者の心臓に対して何らかの診断を下した場合には、診断の結果を、入力デバイスおよび通信インターフェース312または入力インターフェース316を介して入力できる。アノテーション生成モジュール354は、診断の結果を示す診断情報を、診断情報Jとしてメモリ308に記憶する。メモリ308に記憶された診断情報Jは、テンプレート画面生成モジュール350により読み出され、テンプレート40に重ねて表示される。
【0058】
波形情報解析モジュール356は、波形情報Bおよび測定対象部分情報Gに対する解析処理を行う。波形情報解析モジュール356は、例えば、テンプレート画面4のなかのテンプレート40に対して特定された全ての波形信号および隣接する波形信号における測定対象部分同士の間の時間長、例えばQT間隔およびRR間隔を求め、解析結果情報Iとしてメモリ308に記憶する。また、波形情報解析モジュール356は、例えば、波形情報Bの値を時系列にグラフ形式で並べ、解析結果情報Iとしてメモリ308に記憶し、通信インターフェース312または入力インターフェース316を介して出力する。波形情報Bの測定対象部分のこのような解析処理により、ユーザは、被検者の心拍波形にいずれの時刻で乱れなどの異常が生じたことを知ることができる。
【0059】
7.テンプレート画面4およびこれを用いた測定対象の特定および記憶
以下、情報処理装置3に対するユーザの操作に応じて、例えば、心電図情報に含まれる波形情報それぞれの測定対象部分としてQ波の始端点およびT波の終端点を特定し、情報処理装置3に記憶させるためのユーザによる操作を説明する。まず、情報処理装置3は、ユーザの操作に応じて、情報処理プログラム34(図5)の実行を開始する。
【0060】
まず、情報処理装置3は、心電計2が1日にわたって一人の被検者に対する測定を行うことにより得られた心電図情報の全てを受け入れて心電図情報Aとして記憶し、テンプレート画面情報Eおよび代表波形情報Fを生成する。さらに、情報処理装置3は、生成したテンプレート画面情報Eおよび代表波形情報Fを用いて、図6Aに示したテンプレート画面4を生成する。
【0061】
ユーザは、テンプレート画面4に含まれるn個のテンプレート40のいずれかを選択する操作を行う。情報処理装置3は、この操作により選択されたテンプレート40を、例えば色を変化させるなどして強調表示する。さらに、ユーザは、選択されたテンプレート40に表示された心拍波形の測定対象部分を特定する操作を行う。この操作は、マウス318を用いた操作であっても、キーボード320に対する方向キーおよびショートカットキーを利用した操作であってもよい。このような操作に応じて、情報処理装置3は、例えば、Q波形の始端点およびT波形の終端点に、印としてカーソルの画像を重ねて表示する。なお、ユーザにより特定されたQ波形の始端点およびT波形の終端点を示す印はカーソルに限定されず、例えば丸印またはフラグであってよい。
【0062】
ユーザが、このような操作をテンプレート画面4に含まれるn個のテンプレート40の全てに対して行うと、情報処理装置3は、n個全てのテンプレート40それぞれのQ波形の始端点およびT波形の終端点を特定し、特定したこれらの測定対象部分それぞれにカーソルを重ねて表示する。さらに、ユーザがn個全てのテンプレート40において特定された測定対象部分を記憶させる操作を行うと、情報処理装置3は、この操作に応じて、特定された測定対象部分を示す情報を記憶する。
【0063】
図6Bは、T波の変化がなだらかであるという特徴を有するテンプレート40を含むテンプレート画面4を例示する図である。図6Cは、図6Bに示したn個のテンプレート40のうち、特に変化がなだらかな第i番目のテンプレート40のT波を拡大して示す図である(1≦i≦n)。ユーザは、情報処理装置3に対して、図6Bに示したテンプレート画面4に含まれるn個のテンプレート40それぞれにおけるQ波の始端点およびT波の終端点を特定するための操作と、これらの測定対象部分を記憶させるための操作を行う。情報処理装置3は、ユーザによるこれらの操作に応じて、n個のテンプレート40それぞれのQ波の始端点およびT波の終端点を特定し、記憶する。
【0064】
しかしながら、図6Cに示すように、第i番目のテンプレート40のT波の変化がなだらかで、ユーザにとってこのT波の終端点の特定が難しいことがある。このようなときには、ユーザは、例えば、このテンプレート40のT波の終端点を矢印a,bが示す位置のいずれにするか迷ってしまいかねない。このとき、例えば、ユーザは、第i番目のテンプレート40のT波の終端点の特定を後回しにし、第i番目以外のテンプレート40のT波の終端部を特定した後で、改めて第i番目以外のテンプレート40のT波の終端部を特定する。このようにすると、ユーザは、既に特定した第i番目のテンプレート40以外のテンプレート40のT波の終端点を参照しながら、第i番目のテンプレート40のテンプレート40のT波の終端点を特定できる。このような特定の結果、ユーザは、第i番目のテンプレート40に含まれる矢印a,bが示す位置のうち、例えば、その他のテンプレート40に含まれるT波の終端点に近い位置を示す矢印aが示す位置を、第i番目のテンプレート40に含まれるT波の終端点として特定し、情報処理装置3に記憶させられる。
【0065】
なお、第i番目のテンプレート40に対して、Q波の始端点およびT波の終端点などを特定する作業をするためのテンプレート40は、n個のテンプレート40を一覧表示したテンプレート画面4と分けて表示されうる。これにより、Q波の始端点およびT波の終端点の特定の対象とされる心拍波形が表示されたテンプレート40が拡大して表示されえ、Q波の始端点およびT波の終端点が正確に特定されうるようになる。さらに、このようなテンプレート40に、表示された心拍波形の前後の心拍波形、および、この心拍波形を含む10~30秒程度の心拍波形が表示されてよい。これにより、ユーザは、ある心拍波形のP波の始端点からその次の心拍波形のP波の始端点まで結ぶ基線の位置、および、その長期的な変動を容易に確認できるようになる。従って、Q波の始端点およびT波の終端点がさらに正確に特定されうるようになる。
【0066】
8.情報処理システム1における通信シーケンス
以下、第1の実施形態における情報処理システム1の心電計2、情報処理装置3および端末装置12の間の通信シーケンスを説明する。図7は、図1に示した情報処理システム1に含まれる心電計2、情報処理装置3および端末装置12の間で行われる通信シーケンスを示す図である。なお、情報処理システム1において情報処理装置3は端末装置12なしでも動作可能であるが、以下の説明においては、ユーザが端末装置12を用いて情報処理装置3を操作して、テンプレート画面4に対する操作を行う場合が具体例とされる。また、上述したように、心電計2から情報処理装置3には、必要な心電図情報が実時間的に送信されたり、複数回に分けて送信されたりしうるが、ここでの説明においては、必要な心電図情報の全てが一度に心電計2から送信される場合が具体例とされる。
【0067】
ユーザが端末装置12を操作して、情報処理装置3における情報処理プログラム34の起動および処理開始を指示する操作を行うと、端末装置12のプロセッサ306によりメモリ308から読み出されて実行されているOSはこれらの操作を、入力インターフェース316を介して受け入れる。さらに、端末装置12のOSは、通信インターフェース312および通信ネットワーク100を介して、情報処理装置3に、受け入れた操作を示す情報を送信する(S100)。
【0068】
情報処理装置3のプロセッサ306によりメモリ308から読み出されて実行されているOSは、通信ネットワーク100および通信インターフェース312を介して情報処理プログラム34の起動および処理開始を指示する操作を示す情報を受信する。さらに、情報処理装置3のOSは、情報処理プログラム34を起動して、処理を開始させる。つまり、情報処理装置3のOSは、プロセッサ306にメモリ308から情報処理プログラム34(図5)の各構成部分を読み出させ、実行を開始させる(S102)。
【0069】
心電図情報取得モジュール340は、通信インターフェース312および通信ネットワーク100を介して心電計2に心電図情報の送信を要求する(S104)。心電計2のプロセッサ206によりメモリ208から読み出されて実行されているOSは、この要求を、通信ネットワーク100および通信インターフェース212を介して受信する。さらに、心電計2のOSは、メモリ308から、処理に必要とされる全ての心電図情報を読み出し、通信インターフェース312および通信ネットワーク100を介して情報処理装置3に送信する(S106)。心電図情報取得モジュール340は、通信ネットワーク100および通信インターフェース312を介して心電図情報を受信し、心電図情報Aとしてメモリ308に記憶する(S108)。
【0070】
波形情報生成モジュール342は、ユーザの操作に応じて、心電図情報Aを処理して波形情報Bを生成し、メモリ308に記憶する(S110)。クラスタリング処理モジュール346は、波形情報Bに対してK-Shape法などの形状ベースのクラスタリング手法によるクラスタリングを行い、波形情報Bからそれぞれ複数の波形情報を含むn個のクラスタを生成し、メモリ308に記憶する(S112)。クラスタリング処理モジュール346は、n個のクラスタそれぞれに含まれる波形情報が示す心拍波形から、このクラスタを代表する心拍波形を選択し、選択した心拍波形を示す波形情報を、このクラスタの代表波形情報とする。クラスタリング処理モジュール346は、n個のクラスタそれぞれについて選択されたn個の代表波形情報を、代表波形情報Fとしてメモリ308に記憶する(S114)。
【0071】
テンプレート画面生成モジュール350は、テンプレート画面情報Eと代表波形情報Fとからテンプレート画面4(図6Aなど)を生成し、テンプレート画面4の情報をメモリ308に記憶する(S116)。さらに、テンプレート画面生成モジュール350は、通信インターフェース312および通信ネットワーク100を介してテンプレート画面4の情報を端末装置12に送信する(S118)。端末装置12のOSは、情報処理装置3からテンプレート画面4の情報を、通信ネットワーク100および通信インターフェース312を介して受信する。さらに、端末装置12のOSは、受信したテンプレート画面4の情報を、出力インターフェース302を介してディスプレイ304などにテンプレート画面4として表示する(S120)。
【0072】
ユーザが端末装置12に表示されたテンプレート画面4に含まれるn個のテンプレート40それぞれに対して測定対象部分を特定する操作を行うと、端末装置12のOSは、入力インターフェース316を介してユーザの操作を受け入れる(S122)。端末装置12のOSは、受け入れたユーザの操作を示す情報、つまり、テンプレート画面4に含まれるテンプレート40の測定対象部分を特定する操作を示す情報を、通信インターフェース312および通信ネットワーク100を介して情報処理装置3に送信する。情報処理装置3のOSは、端末装置12から送信されてきたユーザの操作を示す情報を、通信ネットワーク100および通信インターフェース312を介して受信する(S124)。
【0073】
対象部分特定モジュール352は、端末装置12から送信されてきたユーザの操作を示す情報に基づいて、テンプレート画面4のなかのn個のテンプレート40それぞれの測定対象部分を特定する。さらに、対象部分特定モジュール352は、特定した測定対象部分を示す測定対象部分情報Gを生成し、メモリ308に記憶する。さらに、代表波形情報Fが示す波形に対して測定対象部分の特定が行われると、対象部分特定モジュール352は、測定対象部分の特定が行われた代表波形情報Fが代表するクラスタに含まれるその他の全ての波形情報Bに対する測定対象部分の特定を行う(S126)。ユーザは、端末装置12に表示されたテンプレート画面4に含まれる1個以上のテンプレート40に対してアノテーションを入力する操作を行う。さらに、ユーザは、情報処理装置3に、クラスタ情報Dおよび測定対象部分情報Gを用いた解析処理を行わせるための操作を行う。端末装置12のOSは、これらの操作を、入力インターフェース316を介して受け入れる(S128)。
【0074】
端末装置12のOSは、受け入れたアノテーションを入力する操作および解析処理を行わせるための操作を示す情報を、通信インターフェース312および通信ネットワーク100を介して情報処理装置3に送信する。情報処理装置3のOSは、通信ネットワーク100および通信インターフェース312を介して端末装置12からこれらの操作を示す情報を受信する(S130)。なお、情報処理装置3のテンプレート画面生成モジュール350は、通信ネットワーク100および通信インターフェース312を介して、端末装置12からこれらの操作を示す情報を受信する。テンプレート画面生成モジュール350は、これらの操作を受信するたびに、受信した操作が示すアノテーションを含むテンプレート画面4を生成し、情報処理装置3に送信し、出力インターフェース302を介してディスプレイ304に表示させる(不図示)。
【0075】
対象部分特定モジュール352は、端末装置12から受信した情報に基づいてn個のテンプレート40それぞれの測定対象部分を特定し、測定対象部分情報Gを生成してメモリ308に記憶する。また、波形情報解析モジュール356は、端末装置12から受信した情報に基づいてクラスタ情報Dを処理し、n個のクラスタそれぞれに含まれる波形情報が示す心拍波形におけるQT間隔の時間長を求めるなどの解析処理を行い、解析結果情報Iを生成してメモリ308に記憶する(S132)。対象部分特定モジュール352および波形情報解析モジュール356は、生成したこれらの情報を、通信インターフェース312および通信ネットワーク100を介して端末装置12に送信する。端末装置12のOSは、通信ネットワーク100および通信インターフェース312を介して情報処理装置3からこれらの情報を受信する(S134)。端末装置12のOSは、受信したこれらの情報が示す測定対象部分にカーソルの画像が重ねられたテンプレート40を含むテンプレート画面4を表示する。また、端末装置12のOSは、受信したQT間隔の時間長などの解析結果が重ねられたテンプレート40を含むテンプレート画面4を表示する(S136)。
【0076】
[第2の実施形態]
次に、添付図面を参照して本開示の第2の実施形態を説明する。心電図に含まれ、発作的または突発的に起こる拍動を示す波形の変化は、12誘導心電計を用いた5秒~10秒程度の測定に含まれる波形に現れる可能性が低いので、この程度の短時間の心電図の測定によっては非常に検出されにくい。一方、12誘導心電計を用いて、例えば24時間程度の測定を行い、測定の結果として得られた心電図に含まれる拍動の全ての波形を観察すれば、発作的または突発的に起こる拍動を示す波形の変化を検出しうる。
【0077】
しかしながら、24時間分の心電図は10万回程度の拍動を含むので、このような長時間にわたった測定により得られた心電図に含まれる拍動を示す波形の全てを観察することは、ユーザにとって非常に難しい。本開示の第2の実施形態は、長時間にわたった測定により得られた心電図情報Aに含まれる拍動を示す波形情報Bから、発作的または突発的に起こる拍動を示す波形の変化などを自動的に検出し、可視化できるように構成されている。
【0078】
なお、発作的または突発的に起こる拍動波形のなかの測定対象部分自体の変化および測定対象部分の間の時間長の変化、および、拍動を示す形状の変化は、WPW症候群、ブルガダ症候群、心室内伝導障害、期外収縮および心筋梗塞などを示唆する。本開示の第2の実施形態は、テンプレート40に、拍動波形の変化などを示すアノテーションを添えて表示できるように構成される。また、本開示の第2の実施形態は、多数の解析結果情報Iが示すQT間隔の時間長と、拍動が所属するクラスタの情報およびアノテーションの情報のうちの1以上(以下、「QT間隔の時間長など」と記載)とを、トレンドグラフ上でも表示するQT間隔の時間長などを経時的に並べてトレンドグラフを生成するなどの解析処理を行うように構成される。トレンドグラフにより、拍動波形に生じた変化が生じた時刻を可視化できる。
【0079】
なお、テンプレート40に重ねて、ユーザによるアノテーションの修正のための修正画面が表示されてよく、この修正画面においては、テンプレート40に表示された心拍波形の前後の心拍波形、または、この心拍波形を含む10~30秒程度の心拍波形が表示されてよい。このような心拍波形の表示により、ユーザは、WPW症候群、ブルガダ症候群、心室内伝導障害、期外収縮および心筋梗塞などの有無をより正確に判断できるようになる。また、ユーザは、クラスタごとに付与されたWPW症候群、ブルガダ症候群、心室内伝導障害、期外収縮および心筋梗塞などというアノテーションを、心拍波形ごとに確認できるようになる。さらに、ユーザは、発作的に起こる心拍波形の変化を確認し、疾患の有無を解析できるようになる。
【0080】
なお、以下に示すΔ波の可視化およびクラスタの除外のための処理は、情報処理プログラム34(図5)の処理を、以下のように変更することにより実現される。つまり、クラスタリング処理モジュール346が、ユーザの操作に応じて、クラスタ情報Dに含まれる1以上のクラスタを削除する処理を行えるようにする。また、クラスタリング処理モジュール346が、クラスタリング処理モジュール346および代表波形選択モジュール348を制御してクラスタを生成し、そのクラスタ情報Dを生成する処理を行えるようにする。波形情報解析モジュール356が、トレンドグラフを生成する処理を行えるようにする。テンプレート画面生成モジュール350が、トレンドグラフに生じた特異部分を点線などで囲む処理を行えるようにする。また、本開示の第1の実施形態に示した通信シーケンス(図7)もまた、情報処理装置3がトレンドグラフなどを端末装置12に送信し、端末装置12から情報処理装置3が特異部分を指定する操作などを示す情報を受信するように変更される。
【0081】
1.Δ波の可視化
まず、心電図情報Aおよび波形情報Bが示す心電図の波形がΔ波(「δ波」と記載されることもある)を含むことを可視化する処理を説明する。なお、Δ波は、心臓にWPW症候群が生じていることを示唆する。この処理により、テンプレート画面4のなかのテンプレート40に、心拍波形にΔ波が含まれることを示すアノテーションが付される。さらに、トレンドグラフが生成され、心拍波形にΔ波が含まれることとなった時刻が可視化される。図8Aは、Δ波とのアノテーションが添えられたテンプレート40を含むテンプレート画面4を例示する図である。図8Bは、長時間にわたって測定されたQTc間隔の時間長を経時的に並べたトレンドグラフを例示する図である。
【0082】
まず、ユーザは、端末装置12のディスプレイ304に表示されたテンプレート画面4に含まれるn個のテンプレート40に表示された拍動波形を観察して、例えば、n個のうち5個のテンプレート40に表示された拍動波形にΔ波が含まれることを発見する(n=12)。ユーザは、テンプレート画面4に対して、Δ波を含む拍動波形が表示された5個のテンプレート40を選択する操作を、端末装置12のマウス318などの入力デバイスを用いて行う。さらに、ユーザは、選択したテンプレート40に「Δ波」とのアノテーションを表示するための操作を行う。端末装置12は、これらの操作を示す情報を、通信ネットワーク100を介して情報処理装置3に送信し、情報処理装置3は、これらの操作を示す情報を受信する。
【0083】
情報処理装置3においては、端末装置12に表示されているテンプレート画面4を生成した情報処理プログラム34が動作している。これらの操作を示す情報を受信した情報処理装置3(図5)のアノテーション生成モジュール354は、「Δ波」とのアノテーションを選択された5個のテンプレート40に付すためのアノテーション情報Hを生成する。さらに、テンプレート画面生成モジュール350は、生成されたアノテーション情報Hを用いて、図8Aに示すように、「Δ波」とのアノテーションを付されたテンプレート40を含むテンプレート画面4を示す情報を生成し、端末装置12に送信する。端末装置12は、情報処理装置3からこのテンプレート画面4を示す情報を受信し、ディスプレイ304に表示されているテンプレート画面4を更新する。
【0084】
波形情報解析モジュール356は、波形情報B、時刻情報C、クラスタ情報Dおよび解析結果情報Iを処理する。波形情報解析モジュール356は、この処理の結果として、図8Bに示すように、QTc間隔の時間長を縦軸とし、時刻を横軸としたトレンドグラフを生成する。なお、例えば、トレンドグラフの縦軸により示されるQTc間隔の時間長の単位はms(ミリ秒)とされ、横軸で示される時刻の単位は分とされる。トレンドグラフにおいては、クラスタ情報Dに含まれる波形信号それぞれが示す心拍波形のQT間隔の時間長が経時的に並べられる。波形情報解析モジュール356は、生成したトレンドグラフを示す情報を端末装置12に送信する。端末装置12は、情報処理装置3からこの情報を受信してディスプレイ304に表示する。
【0085】
トレンドグラフの参照により、ユーザは、図8Bに示すように、Δ波を含み、QT間隔の時間長が長くなった拍動波形が発生した時刻を、波形情報Bが生成された全期間にわたって知ることができる。さらに、テンプレート画面生成モジュール350は、ユーザの操作に応じて、トレンドグラフにおいて、Δ波を含み、QT間隔の時間長が長くなった心拍波形を点線で囲み、目立たせるようにした画面を生成するように構成されうる。
【0086】
なお、図8Aおよび図8Bに示すようにトレンドグラフに表示されるQTc間隔の時間長は、QT間隔の時間長を、拍動数の変化による影響を排除するために、個体別補正法により補正することにより得られ、補正済情報Kとしてメモリ308に記憶される。なお、QT間隔がBazett補正法により補正された場合には、補正後のQT間隔はQTcB間隔と記載され、QT間隔がFridericia補正法により補正された場合には、補正後のQT間隔はQTcFと記載されることがある。このことは、以下のトレンドグラフについて同様である。なお、情報処理プログラム34は、トレンドグラフにおいて、n個のクラスタそれぞれから得られたQTc間隔の時間長に、複数の色のいずれかを付すように構成されうる。これにより、ユーザは、変化または異常を含む心拍波形が、n個のクラスタのいずれの波形情報により示されたかを容易に知ることができる。
【0087】
QTc間隔の時間長のトレンドグラフを生成するために、情報処理装置3は、上述した補正を、例えば1日分のクラスタ情報Dから得られたQT間隔の時間長に対して行う。なお、情報処理装置3は、QT間隔の時間長を実時間的(リアルタイム)に補正してQTc間隔の時間長を示す情報を生成するように構成されてよい。あるいは、情報処理装置3は、1日分のQT間隔の時間の全てを記憶してから補正してQTc間隔の時間長を示す情報を生成するように構成されてよい。
【0088】
このように補正されたQTc間隔を示す情報は、補正済情報K(図4)としてメモリ308に記憶される。なお、テンプレートが付されたテンプレート40とトレンドグラフとは、同一のテンプレート画面4のなかに表示されても、それぞれディスプレイ304の画面に別々に表示された2つのウィンドウそれぞれに表示されてもよい。また、情報処理装置3は、心拍波形に「Δ波」が含まれていることが示唆する心臓の疾患、例えば「WPW症候群」との診断名を示す診断情報Iを、テンプレート40またはトレンドグラフに付して、アノテーションとしてさらに表示するように構成されてよい。さらに、情報処理装置3は、トレンドグラフをさらに解析して、心拍波形にΔ波が含まれることを、自動的に判定するように構成されうる。
【0089】
2.心室内伝導障害の可視化
次に、心電図の波形が、心臓において心室内伝導障害が生じていることを示唆することを可視化する処理を説明する。なお、上述したΔ波の可視化の項目で説明された端末装置12および情報処理装置3の処理の詳細は、以下、重複を防ぐために適宜、省略される。また、Δ波の可視化の項目において上述したトレンドグラフの詳細、QT間隔の時間長の補正、および、情報処理装置3の変形例もまた、以下、重複を防ぐために省略される。図9Aは、心臓に心室内伝導障害が生じていないときの心拍波形を例示する図である。図9Bは、心臓に心室内伝導障害が生じているときの異常な心拍波形を例示する図である。心臓に心室内伝導障害が生じると、図9Aおよび図9Bを比較すると分かるように、心拍波形のRR間隔の時間長を一定とした場合に、心拍波形に含まれるQRS複合体の時間幅(QRS幅)が、予め求められた閾値よりも長くなる。
【0090】
図9Cは、心室伝達障害とのアノテーションが添えられたテンプレート40を含むテンプレート画面4を例示する図である。図9Dは、トレンドグラフを例示する図である。まず、ユーザは、図9Cに示すように端末装置12のディスプレイ304に表示されたテンプレート画面4に含まれるn個のテンプレート40に表示された拍動波形を観察する(n=12)。この観察の結果として、ユーザは、例えば、n個のうち1個のテンプレート40に表示された拍動波形に含まれるQRS複合体の時間幅が予め求められた閾値よりも長くなっており、心臓において発作的に心室内伝導障害が生じていることを示唆することを発見する。
【0091】
ユーザは、テンプレート画面4に対して、心臓において室内伝導障害が生じていることを示唆する1個のテンプレート40を選択する操作を行う。さらに、ユーザは、選択したテンプレート40に「心室伝達障害/QRS幅閾値以上」とのアノテーションを表示するための操作を行う。これらの操作を示す情報に基づいて、情報処理装置3は、図9Cに示したように、「心室伝達障害/QRS幅閾値以上」とのアノテーションを付した1個のテンプレート40を含むテンプレート画面4を生成する。端末装置12は、生成されたテンプレート画面4を表示する。
【0092】
情報処理装置3は、波形情報Bおよび時刻情報Cなどを処理し、図9Dに示すトレンドグラフを生成する。トレンドグラフの参照により、ユーザは、図9Dに示すように、選択したテンプレート40に対応するクラスタ情報Dから、心臓における心室伝達障害の発生を示唆する心拍波形が生じた時刻を、波形情報Bが生成された全期間にわたって知ることができる。なお、ユーザは、さらにトレンドグラフに対して操作を行い、QT間隔の時間長が特に長くなった部分を特異部分として点線で囲んでよい。点線で囲むことにより、心室伝達障害の発生を示唆する心拍波形が生じた特異部分を目立たせるようにできる。なお、QT間隔の時間長を測定しても、ユーザは、QRS幅が長くなっていることを判断できない。図9Dに直接的に図示されていないが、ここの説明においては、アノテーションを付したユーザが、QRS幅を測定し、QRS幅の時間長が閾値以上であると判断したことが想定されている。
【0093】
3.PVCの可視化
次に、心電図の波形が期外収縮を示す可能性があることを可視化する処理を説明する。なお、被検者の心臓に期外収縮が生じているか否かは、ユーザが、特定の心拍波形と、その前後の心拍波形とを比較する必要がある。従って、ここで説明される可視化の処理は、あくまで期外収縮のスクリーニングを目的として行われる。図10Aは、PVCとのアノテーションが添えられたテンプレート40を含むテンプレート画面4を例示する図である。図10Bは、トレンドグラフを例示する図である。なお、期外収縮には、PVCおよびPACなどの複数の種類があり、被検者の心臓にPVCが生じている可能性がある場合に、ここで説明される処理が行われる。
【0094】
まず、ユーザは、図10Aに示すように端末装置12のディスプレイ304に表示されたテンプレート画面4に含まれるn個のテンプレート40に表示された拍動波形を観察する(n=12)。この観察の結果として、ユーザは、例えば、n個のうち3個のテンプレート40に表示された拍動波形が期外収縮が生じている可能性を示すことを発見する。
【0095】
ユーザは、テンプレート画面4に対して、拍動波形が期外収縮を示す3個のテンプレート40を選択する操作を行う。さらに、ユーザは、選択したテンプレート40に「PVC」とのアノテーションを表示するための操作を行う。これらの操作を示す情報に基づいて、図10Aに示したように、情報処理装置3は、「PVC」とのアノテーションを付したテンプレート40を含むテンプレート画面4を生成する。端末装置12は、生成されたテンプレート画面4を表示する。
【0096】
情報処理装置3は、波形情報Bおよび時刻情報Cなどを処理し、図10Bに示すトレンドグラフを生成する。トレンドグラフの参照により、ユーザは、心拍波形が期外収縮を示した時刻を、波形情報Bが生成された全期間にわたって知ることができる。なお、図10Bに示すように、心拍波形が期外収縮を示すときには、例えば、トレンドグラフに、QT間隔の時間長が特に長くなる3個の特異部分が生じる。これら3個の特異部分にある心拍波形は期外収縮が発生している可能性を示す。さらに、ユーザは、これら3つの特異部分を点線で囲んで目立たせるようにしてよい。さらに、PVCとのアノテーションが付された心拍波形が表示されたテンプレート40にフラグが立てられてもよい。
【0097】
4.ST上昇の可視化
次に、心電図の波形がST上昇を示すことを可視化する処理を説明する。図11Aは、ST上昇とのアノテーションが添えられたテンプレート40を含むテンプレート画面4を例示する図である。図11Bは、トレンドグラフを例示する図である。
【0098】
まず、ユーザは、図11Aに示すように端末装置12のディスプレイ304に表示されたテンプレート画面4に含まれるn個のテンプレート40に表示された拍動波形を観察する(n=12)。この観察の結果として、ユーザは、例えば、n個のうち6個のテンプレート40に表示された拍動波形がST上昇を示すことを発見する。
【0099】
ユーザは、テンプレート画面4に対して、拍動波形がST上昇を示す6個のテンプレート40を選択する操作を行う。さらに、ユーザは、選択したテンプレート40に「ST上昇」とのアノテーションを表示するための操作を行う。これらの操作を示す情報に基づいて、図11Aに示したように、情報処理装置3は、「ST上昇」とのアノテーションを付したテンプレート40を含むテンプレート画面4を生成する。端末装置12は、生成されたテンプレート画面4を表示する。
【0100】
情報処理装置3は、波形情報Bおよび時刻情報Cなどを処理し、図11Bに示すトレンドグラフを生成する。トレンドグラフの参照により、ユーザは、心拍波形がST上昇を示した時刻を、波形情報Bが生成された全期間にわたって知ることができる。なお、図11Bに示すように、心拍波形が期外収縮を示すときには、例えば、トレンドグラフに、QT間隔の時間長に乱れが生じている2個の特異部分a,bが生じる。図11Aに示すように、これら2個の特異部分にある心拍波形はST上昇を示し、その他の部分にある心拍波形はST上昇を含まずに正常である。さらに、ユーザは、これら2つの特異部分を点線で囲んで目立たせるようにしてよい。トレンドグラフにおいて、ST上昇というアノテーションがついたクラスタに含まれる波形情報は、色分け、または、フラグが付されて表示されることが想定されている。
【0101】
5.クラスタの削除および追加
以下、テンプレート画面4に含まれるn個のテンプレート40の1個以上を削除したり、テンプレート画面4にテンプレート40を1個以上追加したりする処理を説明する。図12Aは、図6Aなどに示したテンプレート40に含まれるテンプレート40の波形を例示する図である。図12Bは、図12Aに示したように選択されたテンプレート40に対応するクラスタ情報Dに含まれる波形情報が示す心拍波形を例示する図である。
【0102】
例えば、ユーザが、テンプレート画面4から選択したテンプレート40が、図12Aに示すように、T波の終端点以降に多くのノイズを含んでおり、また、図12Bに示すように、テンプレート40に対応する波形情報が3個しかない場合を考える。このように、テンプレート40に表示された心拍波形にノイズが多く、しかも、テンプレート40に対応するクラスタ情報Dに含まれる波形情報が少数である場合には、このテンプレート40に対応するクラスタは、情報処理装置3における処理にとって適切ではない。このようなクラスタに含まれる波形情報が示す心拍波形の測定対象部分の特定は難しい上に、心拍波形の異常を含まない可能性が高いからである。
【0103】
従って、ノイズが多いテンプレート40に対応し、少ない波形情報しか含まないクラスタの波形情報は、クラスタ情報Dから削除されることが望ましい。反対に、テンプレート画面4が少ない個数のテンプレート40しか含まない場合には、新しいクラスタの波形情報がクラスタ情報Dに追加されることが望ましい。
【0104】
そこで、上述したように、情報処理プログラム34のクラスタリング処理モジュール346が、ユーザの操作に応じて、クラスタ情報Dに含まれる1以上のクラスタを削除する処理を行えるようにすると、上述したクラスタの波形情報をクラスタ情報Dから削除できる。また、クラスタリング処理モジュール346が、ユーザの操作に応じて、クラスタリング処理モジュール346および代表波形選択モジュール348を制御し、クラスタを生成させることができれば、ノイズが多いテンプレート40に対応し、少ない波形情報しか含まないクラスタの波形情報に代えて、ノイズが少ないテンプレート40に対応し、多くの波形情報を含むクラスタの波形情報をクラスタ情報Dに追加できるようになる。
【0105】
6.その他
以上、心拍波形に含まれるΔ波などの可視化を説明したが、以上に説明しただけでなく、情報処理システム1の情報処理装置3は、さらに様々な心拍波形が示す波形、および、心拍波形が示唆する様々な疾患を可視化できる。図13Aは、不整脈の心拍波形が表示されたテンプレート40を含むテンプレート画面4を例示する図である。図13Bは、不整脈の心拍波形を例示する図である。
【0106】
ユーザが、図13Aに示したテンプレート画面4に含まれるn個のテンプレート40を観察し、不整脈の心拍波形を発見する(n=12)。ユーザは、このようなテンプレート40に情報処理装置3に対して「不整脈/解析対象外」とのアノテーションを付す操作を行い、発見したテンプレート40に「不整脈/解析対象外」とのアノテーションを付して可視化できる。
【0107】
本明細書で説明された処理および手順は、実施形態において明示的に説明された態様のみならず、コンピュータにより実行されるソフトウェア、コンピュータのハードウェアまたはこれらの組み合わせによっても実現可能である。具体的には、本明細書で説明された処理および手順は、集積回路、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、磁気ディスクおよび光ストレージ等の媒体に、当該処理に相当するロジックを実装することにより実現される。また、本明細書で説明される処理および手順は、それらの処理・手順をコンピュータプログラムとして実装し、端末装置やサーバ装置を含む各種のコンピュータに実行させることが可能である。
【0108】
本明細書で説明される処理および手順が単一の装置、ソフトウェア、コンポーネント、モジュールにより実行される旨が説明されたとしても、そのような処理または手順は、複数の装置、複数のソフトウェア、複数のコンポーネント、および/または、複数のモジュールにより実行されるものとすることができる。また、本明細書で説明される各種情報が単一のメモリや記憶部に格納される旨が説明されたとしても、そのような情報は、単一の装置に備えられた複数のメモリまたは複数の装置に分散して配置された複数のメモリに分散して格納されるものとすることができる。さらに、本明細書において説明されるソフトウェアおよびハードウェアの要素は、それらをより少ない構成要素に統合して、または、より多い構成要素に分解することにより実現されるものとすることができる。
【符号の説明】
【0109】
1 情報処理システム
100 通信ネットワーク
12 端末装置
2 心電計
3 情報処理装置
200,300 バス
202 電極インターフェース
204 電極
206,306 プロセッサ
208,308 メモリ
210 外部記録媒体
212,312 通信インターフェース
214,314 通信処理回路
302 出力インターフェース
304 ディスプレイ
316 入力インターフェース
318 マウス
320 キーボード
34 情報処理プログラム
340 心電図情報取得モジュール
342 波形情報生成モジュール
344 補正モジュール
346 クラスタリング処理モジュール
348 代表波形選択モジュール
350 テンプレート画面生成モジュール
352 対象部分特定モジュール
354 アノテーション生成モジュール
356 波形情報解析モジュール

【要約】
【課題】心電図といった、生物の反復する複数回の動きを示す動き情報を処理し、複数回の動きそれぞれを示す波形を解析する。
【解決手段】本開示にかかる情報処理装置は、少なくとも1つのプロセッサを含み、生物の反復する複数回の動きを示す動き情報を処理する。少なくとも1つのプロセッサは、前記動き情報を取得し、取得した動き情報を、生物の反復する複数回の動きそれぞれの波形を示す複数の第1の波形情報に分割し、複数の第1の波形情報を、それぞれ複数の第1の波形情報を含む複数のクラスタにクラスタリングし、クラスタそれぞれに含まれる第1の波形情報から、クラスタそれぞれに含まれる第1の波形情報が示す波形を代表する波形を示す1以上の第2の波形情報を選択し、クラスタそれぞれを代表する波形を示す複数の第2の波形情報を少なくとも1画面に一覧表示するための処理を実行するように構成される。
【選択図】図7
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B