(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】骨盤底機能不全判定のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G16H 50/20 20180101AFI20241010BHJP
【FI】
G16H50/20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023123746
(22)【出願日】2023-07-28
【審査請求日】2023-11-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517393570
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ゴールウェイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スタウントン ブレンダン
(72)【発明者】
【氏名】カンディフ ジェフリー
【審査官】森田 充功
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2022/0181027(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第114464322(CN,A)
【文献】米国特許第11114208(US,B1)
【文献】特開2019-079503(JP,A)
【文献】国際公開第2022/147611(WO,A1)
【文献】特開2020-155123(JP,A)
【文献】特開2021-190048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
A61B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の骨盤底機能不全症状を判定するための装置であって、
プロセッサであって、
1回目にアンケートデータを受信し、ここで、前記アンケートデータは、複数の異なる骨盤底機能不全症状に関する1以上の質問に対する患者の回答を含み、
2回目に行動データを受信し、ここで、前記2回目とは、前記1回目よりも後であり、前記行動データは、少なくとも1つの期間にわたる下記の1つまたは複数を含み:摂取した水分の量、排尿した水分の量、消費したカフェインの量、消費したアルコールの量、失禁の発症の数、夜間頻尿の発症の数、膀胱排尿の数、および切迫性を伴う失禁の発症の数、
訓練されたニューラルネットワークを使用して、
前記1回目に受け取った
前記アンケートデータに基づいて、前記患者の1つまたは複数の骨盤底機能不全症状の初期判定を提供し、
前記2回目に受信した
前記行動データに少なくとも基づいて、前記患者の1つまたは複数の骨盤底機能不全症状の更新されたまたは有効化した判定を提供するように構成されたプロセッサを備える装置。
【請求項2】
前記ニューラルネットワークは、複数のニューロンを備える入力層を備え、それぞれ異なる可能な質問の回答または行動データのメトリックが、異なるニューロンに対応する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ニューラルネットワークは、
前記2回目に受信した行動データおよびアンケートデータに基づいて、前記更新されたまたは有効化した判定を提供する、ように構成されている、請求項1~2のいずれかに記載の装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記受信したアンケートデータまたは行動データに基づいて前記ニューラルネットワークを訓練または更新するようにさらに構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
複数の異なる症状に関する複数の質問を記憶するように構成されたメモリをさらに備え、
前記プロセッサは、さらに、
ユーザに提示するための1つまたは複数の症状に関する質問を選択し、次の質問は、1つまたは複数の先行する質問に応答して前記プロセッサによって受信されたアンケートデータに基づいて選択される、ように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記メモリは、症状有病率の順に前記症状のランキングを記憶するように構成されており、
前記プロセッサは、最も一般的な症状に関連する最初の質問を選択するように構成されている、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、
1つまたは複数の先行する質問に応答して受信したアンケートデータが、1つまたは複数の先行する質問に関連する1つまたは複数の症状を示すかどうかを判定し、
前記アンケートデータが、1つまたは複数の先行する質問に関連する症状を示していない場合は、次に可能性の高い症状に関連する次の質問を選択する
ように構成されている、請求項5に記載の装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、分岐ロジックを使用して次の質問を選択するように構成され、任意選択で、前記分岐ロジックは、事前に決定される、請求項5に記載の装置。
【請求項9】
前記
少なくとも1つの期間
は24時間である、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記プロセッサは、前記1つまたは複数の症状の判定に基づいて標的治療プログラムを決定するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
コンピュータにより実行される、患者の骨盤底機能不全症状を判定する方法であって、
1回目にアンケートデータを受信することであって、ここで、前記アンケートデータは、複数の異なる骨盤底機能不全症状に関する1以上の質問に対する患者の回答を含むことと、
2回目に行動データを受信することであって、ここで、前記2回目とは、前記1回目よりも後であり、前記行動データは、少なくとも1つの期間にわたる下記の1つまたは複数を含むことと:摂取した水分の量、排尿した水分の量、消費したカフェインの量、消費したアルコールの量、失禁の発症の数、夜間頻尿の発症の数、膀胱排尿の数、および切迫性を伴う失禁の発症の数、
訓練されたニューラルネットワークを使用して、
前記1回目に受け取った
前記アンケートデータに基づいて、前記患者の1つまたは複数の骨盤底機能不全症状の初期判定を提供することと、
前記
2回目に受信した
前記行動データに
少なくとも基づいて、前記患者の1つまたは複数の骨盤底機能不全症状の更新されたまたは有効化した判定を提供することと、
を備える方法。
【請求項12】
プログラムがプロセッサによって実行されるときに、前記プロセッサに請求項
11に記載の方法を実行させる命令を備える非一時的なコンピュータプログラム。
【請求項13】
請求項
12に記載のコンピュータプログラムが記憶されたコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の骨盤底機能不全を判定するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
骨盤底と膀胱の機能不全の診断は複雑なプロセスである。骨盤底と膀胱の症状が異なると、さまざまな徴候が重なり合い、さまざまな原因が重なり合う。たとえば、2人の患者が同じ徴候(失禁の発症など)を示している可能性があるが、それらの徴候の根本的な原因は異なる可能性がある(たとえば、1人の患者は、過活動膀胱(OAB)を患っている可能性があり、もう1人の患者は腹圧性尿失禁(SUI)を患っている可能性がある)。
【0003】
OABの治療は、SUI関連の失禁には効果がなく、同様にSUIの治療はOAB関連の失禁には効果がないため、正しい診断が不可欠である。
【0004】
骨盤底および膀胱機能不全のある患者を診断するための現在の方法は、適切な結果が得られるまで一連の試行錯誤を伴う治療アプローチを必要とし、時間がかかり複雑である。その結果、治療期間が長くなり、治療費が増加し、治療の安全性と有効性が低下し、患者の不満が生じる。
【0005】
患者が最初に徴候を示してから正しく診断されるまでには、通常数か月、場合によっては数年かかる。多くの骨盤底および膀胱の症状には、症状の進行を止めるのに役立つ早期介入の治療期間があるため、早期診断はより良い転帰につながる。したがって、効果的かつタイムリーな治療のためには、正しい診断が不可欠である。
【0006】
しかしながら、骨盤底と膀胱の機能不全の特定と診断には、精度、一貫性、効率の点で困難な問題が伴う。
【0007】
本発明は、以上のことを念頭に置いてなされたものである。
【発明の概要】
【0008】
第1の態様によれば、患者の骨盤底機能不全症状を判定するための装置が提供される。この装置はプロセッサを備えていてもよい。プロセッサは、患者データを受信するように構成されていてもよい。患者データは、患者のアンケートデータおよび行動データのうちの少なくとも1つであるか、またはそれらを含んでいてもよい。プロセッサは、機械学習アルゴリズムを使用して、受信した患者データに基づいて患者の1つまたは複数の骨盤底機能不全症状の判定を提供するように構成されていてもよい。
【0009】
このような症状を特定および判定するための既知のアプローチは、時間がかかり、リソースを大量に消費するため、患者が多数の質問に回答したり、広範なデータ記録演習を受けたり、侵襲的な診断手順を受けたりする必要がある。さらに、患者は多くの場合、広範囲にわたる変動を示しており、把握して分類することが困難であるため、そのような状態を特定および判定するための既知のアプローチは、精度および一貫性が低い。
【0010】
この装置は、アンケートデータのみを手作業で評価する、遅く、非効率で、多くの場合不正確である従来のアプローチと比較して、患者の1つまたは複数の骨盤底機能不全症状または膀胱症状の効率的、正確かつ信頼性の高い判定の提供を可能にすることができる。この装置は、以前の患者のデータおよび対応する診断を使用して訓練された機械学習アルゴリズムのおかげで、母集団ベースのデータを使用して、アンケートデータ(主観的なものであってもよい)および/または患者の行動データの固有の検証を提供することもできる。これにより、判定の精度と信頼性をさらに向上させることができる。母集団ベースのデータにより、機械学習アルゴリズムを、患者が示す可能性のある変動に敏感にすることができる。
【0011】
効率的な決定により、装置は、新しい、異なる、または変化する患者データに基づいて、異なる時点でより容易かつ迅速に繰り返し判定を提供することも可能になる。これにより、医師は現在の症状の判定が正しいかどうか、および/または現在の治療計画が患者の徴候を改善しているかどうかをより迅速に判定できる。これにより、患者が最初に徴候を示してから正しく診断されるまでの時間が短縮され、骨盤底機能不全症状または膀胱症状の進行を阻止し、患者の健康状態を改善するのに役立てることができる。
【0012】
機械学習アルゴリズムは、ニューラルネットワークであってもよいし、ニューラルネットワークを備えていてもよい。ニューラルネットワークは、複数のニューロンを備える入力層を備えていてもよい。各ニューロンは、考えられる異なる質問の回答や行動データの指標に対応していてもよい。
【0013】
これにより、装置は、不完全なデータまたはデータの異なるサブセットに基づいて、1つまたは複数の症状の判定を提供することができてもよい。例えば、装置は、同じ基礎的なアプローチを使用して、アンケートデータ、行動データ、またはその両方に基づいて判定を提供することができてもよい。これにより、そのような症状に対する従来の診断アプローチと比較して、装置の柔軟性と適用性を大幅に向上させることができる。これにより、患者の潜在的に主観的なアンケートデータを患者の行動データを使用して検証できるようになり、判定の精度と効率をさらに向上させることができる。
【0014】
プロセッサは、1回目に受信したアンケートデータに基づいて、1つまたは複数の症状の初期判定を提供するように構成されていてもよい。プロセッサはまた、1回目より後の2回目に受信した少なくとも行動データに基づいて、1つまたは複数の症状の更新されたまたは検証中の判定を提供するように構成されていてもよい。更新されたまたは検証中の判定は、2回目に受信した行動データとアンケートデータの両方に基づいていてもよい。
【0015】
患者のアンケートデータおよび/または行動データに基づいて正確な判定を効率的に提供するための装置の柔軟性により、装置は、新しい、異なる、または変化する患者データに基づいて、異なる時点でより容易かつ迅速に繰り返しの判定を提供することが可能になってもよい。これにより、医師は、現在の症状の判定が正しいかどうか、および/または現在の治療計画が患者の徴候を改善しているかどうかを迅速に判定できるようになる。
【0016】
プロセッサは、受信した患者データに基づいて機械学習アルゴリズムを訓練または更新するようにさらに構成されていてもよい。
【0017】
受信した患者データに基づいてアルゴリズムを訓練または更新すると、機械学習アルゴリズムの訓練データセットのサイズが時間の経過とともに増加するため、判定の信頼性と精度を向上させることができる。このようにして、機械学習アルゴリズムは、従来の診断アプローチのように固定されたアプローチに依存するのではなく、母集団の結果を考慮に入れるために実質的に継続的に更新されてもよい。
【0018】
この装置は、複数の質問を記憶するように構成されたメモリをさらに備えていてもよい。複数の質問は、複数の異なる症状に関連していてもよい。プロセッサは、ユーザに提示するための1つまたは複数の症状に関する質問を選択するようにさらに構成されていてもよい。プロセッサは、1つまたは複数の先行する質問に応答して受信した患者データに基づいて次の質問を選択するように構成されていてもよい。
【0019】
このような骨盤底機能不全症状または膀胱症状を特定および判定するための既知のアプローチには、長時間にわたる症状特有のアンケートが含まれる。しかしながら、患者は、考えられるいくつかの状態のうち1つまたは複数を呈する可能性があり、質問の1つのサブセットに依存すると、患者の症状を判定する際の感度と特異性が低下する可能性がある。
【0020】
1つまたは複数の先行する質問に応答して受信した患者データに基づいて、複数の異なる症状に関する複数の質問から次の質問を選択することによって、装置は、アンケートデータから最も臨床的に関連性の高いデータをより効率的に抽出することができる。臨床関連データは、患者に提示される質問の数を最小限にしながら、複数の症状に関するアンケートデータを含んでいてもよい。無関係なアンケートデータを削減または削除することもできる。そうすれば患者も医師も負担が軽減され得る。さらに、関連するアンケートデータのみが機械学習アルゴリズムに提供されるため、1つまたは複数の症状の判定の効率と精度がさらに向上する。
【0021】
メモリは、複数の異なる症状のランキングを症状有病率の順に記憶するように構成されていてもよい。プロセッサは、最も一般的な症状に関連する最初の質問を選択するように構成されていてもよい。
【0022】
プロセッサは、1つまたは複数の先行する質問に応答して受信した患者データが、1つまたは複数の先行する質問に関連する症状を示すかどうかを判定するように構成されていてもよい。患者データが、1つまたは複数の先行する質問に関連する症状を示していない場合、プロセッサは、次に最も蔓延しているまたは可能性の高い症状に関連する次の質問を選択するように構成されていてもよい。
【0023】
その結果、最も臨床的に関連性の高いデータのみが質問から抽出され、機械学習アルゴリズムに提供されるため、1つまたは複数の症状の判定の効率と精度がさらに向上する。
【0024】
プロセッサは、分岐ロジックを使用して次の質問を選択するように構成されてもよい。 分岐ロジックは、事前に決定されていても、固定されていてもよい。
【0025】
行動データは、摂取した水分の量、排尿した水分の量、消費したカフェインの量、消費したアルコールの量、失禁の発症の数、夜間頻尿の発症の数、膀胱空隙の数、および切迫性を伴う失禁の発症の数のうちの1つまたは複数を含んでいてもよい。
【0026】
行動データは、少なくとも1つの期間にわたって提供されてもよい。各期間は、24時間であってもよい。行動データは、複数の期間にわたって提供された行動データの平均であってもよく、または含んでいてもよい。
【0027】
プロセッサは、ユーザ電子デバイス用のデジタルユーザインターフェースを生成するように構成されていてもよい。デジタルユーザインターフェースは、装置への患者データの入力を可能にすることができる。これにより、自分の症状について当惑している患者の不安を軽減または最小限に抑えることができる。これにより、患者の関与も高まり、患者の健康を改善することができる。
【0028】
プロセッサは、サーババックエンドを介して、またはユーザ電子デバイス上のネイティブアプリケーションにおいて、ユーザ電子デバイス上のウェブアプリケーション上で1つまたは複数の症状の判定を実装するように構成されていてもよい。
【0029】
プロセッサは、プロセッサによる1つまたは複数の症状の判定に基づいて、標的治療プログラムを決定するように構成されていてもよい。これにより、患者に合わせて実質的に個別化された治療を可能とすることができる。プロセッサはさらに、プロセッサによる1つまたは複数の症状の更新された判定に基づいて、更新された標的治療プログラムを決定するように構成されていてもよい。これにより、以前の治療プログラムが患者の症状の改善に望ましい効果をもたらさなかった場合に、治療アプローチを迅速かつ簡単に更新可能とすることができる。
【0030】
第2の態様によれば、患者の骨盤底機能不全症状を判定する方法が提供される。この方法は、患者データを取得または受信することを備えていてもよい。患者データは、患者のアンケートデータおよび行動データのうちの少なくとも1つであるか、または備えていてもよい。この方法はまた、機械学習アルゴリズムを使用して、受信した患者データに基づいて患者の1つまたは複数の骨盤底機能不全症状の判定を提供することを備えていてもよい。
【0031】
第2の態様の方法は、第1の態様の装置上で、またはそれを使用して実行されてもよい。 第2の態様の方法は、第1の態様の装置のオプション機能に対応する1つまたは複数のオプション機能を備えていてもよい。
【0032】
第3の態様によれば、プログラムがプロセッサによって実行されると、プロセッサに第2の態様の方法を実行させる命令を含む非一時的なコンピュータプログラムが提供される。
【0033】
第4の態様によれば、第3の態様のコンピュータプログラムが記憶されたコンピュータ可読媒体が提供される。
【0034】
本発明の別個の態様および実施形態の文脈で説明される特徴は、可能な限り一緒に使用することができ、および/または交換可能にすることができる。同様に、簡潔にするために単一の実施形態に関連して特徴が説明される場合、それらの特徴は、個別に、または任意のサブコンビネーションで提供されてもよい。第1の態様の装置に関連して説明される特徴は、第2の態様の方法、第3の態様のコンピュータプログラム、または第3の態様のコンピュータ可読媒体に関して定義可能な対応する特徴を有することができ、またその逆も同様であり、それらの実施形態は、具体的に想定される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
ここで、添付の図面を参照して、例示としてのみ本発明を説明する。
【0036】
【
図1】
図1は、本発明に係る、患者の1つまたは複数の骨盤底機能不全症状または膀胱症状を判定するための装置の実施形態を示す。
【
図2】
図2は、本発明に係る、患者の1つまたは複数の骨盤底機能不全症状または膀胱症状を判定するための方法の実施形態を示す。
【
図3】
図3は、本発明に係る、複数の質問を記憶するように構成されたメモリを備える、患者の1つまたは複数の骨盤底機能不全症状または膀胱症状を判定するための装置の別の実施形態を示す。
【
図4A】
図4Aは、
図3に示される装置のプロセッサがメモリ内の複数の質問から質問を選択するようにどのように構成されているかを示すフローチャートを示す。
【
図4B】
図4Bは、
図3に示される装置のプロセッサがメモリ内の複数の質問から質問を選択するようにどのように構成されているかを示すフローチャートを示す。
【
図4C】
図4Cは、
図3に示される装置のプロセッサがメモリ内の複数の質問から質問を選択するようにどのように構成されているかを示すフローチャートを示す。
【
図4D】
図4Dは、
図3に示される装置のプロセッサがメモリ内の複数の質問から質問を選択するようにどのように構成されているかを示すフローチャートを示す。
【
図4E】
図4Eは、
図4Aは、
図3に示される装置のプロセッサがメモリ内の複数の質問から質問を選択するようにどのように構成されているかを示すフローチャートを示す。
【
図4F】
図4Fは、
図3に示される装置のプロセッサがメモリ内の複数の質問から質問を選択するようにどのように構成されているかを示すフローチャートを示す。
【
図5】
図5は、1つまたは複数の骨盤底機能不全症状または膀胱症状の判定を提供するために
図3に示される装置のプロセッサによって使用されるニューラルネットワークを示す。
【
図6】
図6は、
図3に示される装置を使用して患者の1つまたは複数の骨盤底機能不全症状または膀胱症状を判定するための方法の別の実施形態を示す。
【0037】
様々な図面における同様の参照番号および指定は、同様の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、本発明の一実施形態に係る、患者の骨盤底機能不全症状を判定するための装置100を示す。装置100は、プロセッサ105を備える。プロセッサ105は、患者データ、特に患者の1つまたは複数の潜在的な骨盤底機能不全症状に関するアンケートデータ、および患者の行動データを受信するように構成される。図示の実施形態では、装置100は、プロセッサ105によって患者データが受信されるデータ受信モジュール110を備えるが、これは必須ではない。プロセッサ105はさらに、機械学習(ML)アルゴリズム115を使用して、受信した患者データに基づいて患者の1つまたは複数の骨盤底機能不全症状を判定するように構成されている。図示の実施形態では、MLアルゴリズム115は、ニューラルネットワークであるか、またはニューラルネットワークを含むが、これは必須ではない。
【0039】
プロセッサ105は、ユーザ電子デバイス上でサーババックエンドを介して、またはネイティブアプリケーションにおいて、ユーザ電子デバイス(例えば、パーソナルコンピュータまたはスマートフォン)上のウェブアプリケーション上で、1つまたは複数の骨盤底機能不全症状の判定を実施するように構成されてもよい。装置100は、ユーザ電子デバイス用のデジタルユーザインターフェースを生成するように構成されていてもよい。デジタルユーザインターフェースは、装置100への患者データのユーザ入力(例えば、キーボードまたはタッチスクリーンを介して)を可能であってもよく、および/またはプロセッサ105による1つまたは複数の骨盤底機能不全症状の決定の出力を表示してもよい。
【0040】
図2は、本発明の一実施形態による、患者の骨盤底機能不全症状を判定する方法200を示す。方法200は、上述の装置100を使用して実行されてもよい。
【0041】
方法200のステップ202は、患者データ、特に患者の1つまたは複数の潜在的な骨盤底機能不全症状に関するアンケートデータおよび患者の行動データを取得することを備える。方法200のステップ204は、機械学習アルゴリズムを使用して、患者の1つまたは複数の骨盤底機能不全症状を判定することを備える。
【0042】
図3は、本発明の別の実施形態に係る、患者の骨盤底機能不全症状を判定するための装置300を示す。装置300は、
図1に示される装置100に関して上述したように、プロセッサ305および機械学習アルゴリズム315を備え、同様の参照番号は同様の要素を示す。
【0043】
図示の実施形態では、装置300は、メモリ325をさらに備える。メモリ325は、複数の異なる骨盤底機能不全症状に関する複数の質問を記憶するように構成される。プロセッサ305は、患者の1つまたは複数の骨盤底機能不全症状に関するアンケートデータを取得するために、ユーザに提示するための1つまたは複数の症状に関する質問をメモリ325から選択するように構成されている(例えば、上述したように、装置300によって生成されるデジタルユーザインターフェースを介して)。
【0044】
骨盤底機能不全状態の現在の診断方法は、症状固有のアンケートを利用している。患者は考えられるいくつかの症状のうちの1つまたは複数を抱えていることがあるため、このような症状固有のアンケートの臨床結果は理想的とは言えない可能性がある。アンケートの質問の1つのサブセットに依存すると、検査対象の骨盤底/膀胱機能不全の感度と特異度が最適以下になることがある。さらに、多くの患者は、2つ以上の関連する症状を抱えている。各アンケートは症状ごとに異なるため、複数の症状を呈する患者は、複数のアンケートに回答する必要がある。したがって、複数の症状固有のアンケートを使用した患者の評価は、時間がかかり、不便で、ロジスティック的に困難になることがある。
【0045】
メモリ325は、複数の症状のランキングを症状有病率の順に記憶するように構成されている。プロセッサ305は、最も一般的な症状(例えば腹圧性尿失禁、SUI)に関する第1の質問を選択するように構成されている。
【0046】
メモリ325に記憶された複数の質問は、複数の異なる症状に関連する。質問は、特に生活の質、徴候、煩わしさ指数、および生活の質への影響に関連する、臨床的に検証された症状固有の質問を備える。質問は、1つまたは複数の従来の臨床的に検証された症状固有のアンケート、たとえばMESA(加齢性尿失禁の医学的、疫学的および社会的側面に関するアンケート)、POPDI(骨盤臓器脱苦痛の調査票)、PFDI(骨盤底苦痛の調査票)、PGI-I(改善に対する患者全体の印象)、ICIQ-OAB(失禁アンケート過活動膀胱に関する国際協議)、ICIQ-OAB-QOL(失禁アンケート過活動膀胱の生活の質に関する国際協議)、QUID(尿失禁診断のためのアンケート)、SARC-F(筋力、歩行、椅子からの立ち上がり、階段の上り下り、転倒履歴)などから選択される。
【0047】
しかしながら、患者データを取得するために複数の症状のそれぞれに関するすべての質問をユーザに提示するのではなく、図示の実施形態では、プロセッサ305は、1つまたは複数の先行する質問に応答して受信した患者データに基づいて次の質問を選択するように構成されている。プロセッサ305は、1つまたは複数の先行する質問に応答して受信した患者データが、1つまたは複数の先行する質問に関連する症状を示すかどうかを判定するように構成されている。患者データが1つまたは複数の先行する質問に関連する症状を示していない場合、プロセッサ305は、1つまたは複数の次に最も可能性の高い症状に関する次の質問を選択するように構成される。次に最も可能性の高い症状は、次に最も一般的な症状であってもよく、これにより、潜在的に無関係なデータの取得を避けるために、最も可能性の高い症状が最初に評価されることが可能になるが、これは必須ではない。
【0048】
図4は、プロセッサ305が、1つまたは複数の先行する質問に応答して受信した患者データに基づいて次の質問を選択するようにどのように構成され得るかの一例を説明するフローチャートまたはアルゴリズム400を示す。
【0049】
フローチャート400で選択され得る質問と、それらの元となる臨床的に検証されたアンケートを以下に示す。フローチャート400に示される質問に加えて、またはその代わりに、骨盤底機能不全症状および/または膀胱症状に関する同じまたは他の臨床的に検証されたアンケートからの他の質問がメモリ325に記憶されてもよいことを認識されたい。
【0050】
MESA(示された症状):
1.穏やかに咳をすると尿が出なくなりますか?(SUI)
2.激しく咳き込むと尿が出なくなりますか?(SUI)
3.くしゃみをすると尿が出なくなりますか?(SUI)
4.持ち上げると尿が出なくなりますか?(SUI)
5.曲げると尿が出なくなりますか?(ISD)
6.笑うと尿が出なくなりますか?(MUI)
7.早歩き/ジョギングをすると尿が出なくなりますか?(ISD)
8.便秘のときにいきむと尿が出なくなりますか?(SUI)
9.立位から立ち上がると尿が出なくなりますか?(ISD MUI)
10.一部の人々は、ほとんど警告を受けず、かつ突然、自分ではコントロールできないほど尿が出なくなる、または出なくなりそうになっていることに気づいていますか?どのくらいの頻度でこのようなことが起こりますか?まったくない、めったにない、時々、よくある?(UUI)
11.トイレが見つからなかったり、トイレが空いていて尿意を感じた場合、どれくらいの頻度で尿が出なくなったりおもらしをしたりすることがありますか?まったくない、めったにない、時々、よくある?(UUI)
12.突然膀胱が非常に満杯になったように感じたときに、尿が出なくなりますか?(UUI)
13.手を洗うと尿が出なくなりますか?(UUI)
14.寒いと尿が出なくなりますか?(UUI)
15.冷たい飲み物を飲むと尿が出なくなりますか?(UUI)
【0051】
POPDI:
1.あなたは普段、下腹部に圧迫感を感じますか?「はい」の場合、どの程度煩わしいですか(0~4)?
2.あなたは普段、骨盤部分に重さやだるさを感じますか?「はい」の場合、どの程度煩わしいですか(0~4)?
3.普段、膣部分に膨らみや脱落物が見えたり、触れたりすることがありますか?「はい」の場合、どの程度煩わしいですか(0~4)?
4.排便をする、または排便を完了するために、通常、膣または直腸の周囲を押す必要がありますか?「はい」の場合、どの程度煩わしいですか(0~4)?
5.あなたは通常、膀胱が完全に空になっていない感覚を経験しますか?「はい」の場合、どの程度煩わしいですか(0~4)?
6.排尿を開始または完了するために、膣領域の膨らみを指で押し上げる必要があることがありますか?「はい」の場合、どの程度煩わしいですか(0~4)?
19.通常、膀胱を空にするのが難しいと感じますか?「はい」の場合、どの程度煩わしいですか(0~4)?
【0052】
PGI-I:
1.治療前はどうかと比較した治療後の現在の状態がどうかを最もよく表している番号/選択肢を確認してください(非常に良くなった、かなり良くなった、少し良くなった、変化なし、少し悪くなった、かなり悪くなった、非常に悪くなった)。
【0053】
ICIQ-OAB:
1.一日のうちどれくらいの頻度で排尿しますか?1~6、7~8、9~10、11~12、13以上?これはどの程度煩わしいですか?0(まったくない)から10(大いにある)までの番号を鳴らしてください。
2.夜間、平均して何回排尿するために起きなければなりませんか?なし、1、2、3、4、またはそれ以上?これはどの程度煩わしいですか?0(まったくない)から10(大いにある)までの番号を鳴らしてください。
3.排尿するために急いでトイレに行かなければなりませんか?まったくない、たまに、時々、ほとんどの場合、常に?これはどの程度煩わしいですか?0(まったくない) から10(大いにある)までの番号を鳴らしてください。
4.トイレに行く前に尿が漏れてしまいますか?まったくない、たまに、時々、ほとんどの場合、常に?これはどの程度煩わしいですか?0(まったくない)から10(大いにある)までの番号を鳴らしてください。
【0054】
ICIQ-OAB-QoL(示された症状):
3.慎重に旅行の計画を立てましたか?
4.日中に眠たさを感じたり、眠気を感じたりしますか?(夜間頻尿)
5.公共の場所でトイレへの「避難経路」を計画しますか?(切迫性)
6.苦悩がありますか?
7.イライラしましたか?
8.何か問題があるように感じましたか?
9.夜の睡眠を妨げていますか?(夜間頻尿)
10.身体活動が減っていますか?
11.朝起きたときに休んだ気分になれませんか?(夜間頻尿)
12.家族や友人に不満を感じていますか?
13.不安や心配がありましたか?
14.思った以上に家にいることが多くなっていますか?
15.常にトイレの近くにいるように旅行計画を調整しますか?(切迫性)
16.トイレから離れた活動(散歩、ランニング、ハイキングなど)を避けるようになりましたか?(切迫性)
17.トイレで過ごす時間について不満を感じたりイライラしたりしましたか?(頻度)
18.寝ているときに目が覚めましたか?(夜間頻尿)
19.臭いや衛生面が気になりましたか?
20.他の人と一緒に旅行中にトイレに立ち寄る必要があり、不快になりましたか?(頻度)
21.家族や友人との関係に影響がありましたか?
22.家族や友人とのパーティーや訪問など、社交的な集まりへの参加が減りました?
23.恥ずかしいですか?
24.必要な量の睡眠をとることが妨げられていますか?(夜間頻尿)
25.パートナーや配偶者との間に問題が生じましたか?
26.活動をより慎重に計画するようになりましたか?
27.行ったことのない場所に到着すると、すぐに一番近いトイレを見つけてしまいますか?(切迫性)
28.全体として、あなたの泌尿器徴候はどの程度生活の質を妨げていますか?0(まったくない)から10(大いにある)までの番号を鳴らしてください。
【0055】
QUID(示された症状):
以下のときに、尿を漏らしたり(たとえ少量であっても)、体を濡らしたり、ナプキンや下着を濡らしたりしませんか...
1.咳やくしゃみをするときは?(SUI)
2.かがんだり、何かを持ち上げたりするときは?(SUI/ISD)
3.早足で歩くとき、ジョギングするとき、または運動するときは?(SUI)
4.トイレに行くために服を脱いでいる間は?(UUI)
5.非常に強い不快な排尿欲求があり、トイレに行く前に尿を漏らしたり(少量でも)おもらししたりすることがありますか?(UUI)
6.突然の強い尿意に襲われ、急いでトイレに行かなければなりませんか?(切迫性)
各質問に0から5のスコアを付ける。0=まったくない、1=めったにない、2=時々、3=頻繁に、4=ほとんどの場合、5=常に。質問1、2、および3のスコアは、ストレススコアとして合計され、質問4、5、および6のスコアは、切迫スコアとして合計される。
【0056】
SARC-F:
1.部屋を横切るのはどのくらい困難ですか?
2.階段を1階分(10段)登るのはどのくらい困難ですか?
3.過去1年間に何回転倒しましたか?
4.10ポンド(4.5kg)の荷物を持ち上げたり運んだりするのはどのくらい困難ですか?
5.椅子からベッドに移るのはどのくらい困難ですか?
各質問に0から2のスコアを付ける。0=なし、1=一部、2=たくさん/補助具を使用するか使用できない。
【0057】
図4Aでは、アルゴリズム400の初期の質問としてQUID1が尋ねられる。QUID1に対する回答が1よりも大きい場合(>1)、アルゴリズム400の次のステップは、
図4Eに示されており、
図4Aには示されていない次のステップを示すために点線が使用されている。QUID1に対する回答が1以下の場合(≦1)、次の質問はICIQ OAB3である。ICIQ OAB3に対する回答がまったくない、またはたまにである場合、アルゴリズム400の次のステップは、
図4Eに示されている。ICIQ OAB3に対する回答が時々、または時々より頻繁である場合(例、ほとんどの場合、常に)、QUID6、4、および5が質問され、3つすべてに回答する必要がある。次に、QUID6、4、および5の合計スコアが計算される。各QUID質問には6つの可能な回答がある。考えられる各回答には、0、1、2、3、4、または5の値が割り当てられる(各質問に対する最も低い値/発病度の回答には0の値が割り当てられ、最も高い値/発病度の回答には5の値が割り当てられる)。合計スコアが3以下である場合、アルゴリズム400の次のステップが
図4Eに示されている。合計スコアが3より大きい場合、QUID4のスコアが確認される。QUID4のスコアが1より大きい場合、UUI(切迫性尿失禁)の初期ラベルが患者に適用される。QUID4のスコアが1以下の場合、QUID5のスコアが確認される。QUID5のスコアが1より大きい場合、UUIの初期ラベルが患者に適用される。QUID5のスコアが1以下の場合、OAB(過活動膀胱)の初期ラベルが患者に適用される。OABまたはUUIの初期ラベルが適用される場合、アルゴリズム400の次のステップが
図4Bに示されている。
【0058】
OABまたはUUIの初期ラベルが患者に適用された後、
図4Bは、ICIQ OAB3、2、1 が質問され、3つすべてが回答されることを示している。ICIQ OAB3、2、および1は、OABまたはUUIの初期ラベルをさらに調整するために使用されてもよい。ICIQ OAB3、2、および1に対する回答がいずれも閾値を超えない場合、アルゴリズム400の次のステップが
図4Cに示されている。ICIQ OAB3、2、および1の1つまたは複数に対する回答が閾値を超えている場合(たとえば、ICIQ OAB3では時々以上、ICIQ OAB2では2よりも大きい(>2)、ICIQ OAB1では7よりも大きい(>7)であるが、代わりに異なる閾値が使用されてもよい)、関連する質問の煩わしさスコアが確認される。煩わしさスコアが閾値を超えていない場合(たとえば、4より大きい(>4)、ただし、別の閾値が使用されてもよい)、アルゴリズムの次のステップが
図4Cに示される。1つの煩わしさスコアのみが閾値を超えている場合、患者に適用されるOABまたはUUIの初期ラベルがチェックされ、閾値を超える煩わしさスコアに対応する切迫性、夜間頻尿、または頻度の1つを含むように更新される(たとえば、患者のOABまたはUUIに関連する主な徴候を示すため)。複数の煩わしさスコアが閾値を超えている場合、煩わしさスコアが互いに比較される。煩わしさスコアが等しくない場合、最も高い煩わしさスコアが選択され、OABまたはUUIの初期ラベルが確認され、最も高い煩わしさスコアに対応する切迫性、夜間頻尿、または頻度のいずれかを含むように更新される。煩わしさスコアが等しい場合、切迫性、頻度、夜間頻尿の順に煩わしさスコアが優先して選択される 閾値を超え、最も高い優先順位に対応する煩わしさスコアが選択され、OABまたはUUIの初期ラベルが確認され、選択された煩わしさスコアに対応する切迫性、夜間頻尿、および頻度の1つを含むように更新される。患者に適用された初期ラベルを更新した後のアルゴリズム400の次のステップが
図4Fに示されている。
【0059】
図4Cでは、POPDI3、6、および5が質問され、3つすべてに回答する必要がある。POPDI3、6、および5のいずれも回答が「はい」でない場合、アルゴリズム400の次のステップが
図4Dに示されている。POPDI3、6、および5の1つまたは複数が回答「はい」の場合、POPDI3、6、および5の煩わしさスコアが確認される。POPDI3、6、および5の煩わしさスコアのいずれかが閾値を超えている場合(たとえば、2よりも大きい(>2)、ただし、別の閾値が使用されてもよい)、OABまたはUUIの初期ラベルが確認され、POP(骨盤臓器脱)を含むように更新される。POPDI3、6、および5の煩わしさスコアがいずれも閾値を超えていない場合は、POPDI5が回答「はい」でありPOPDI3および6が回答「いいえ」であるかどうかを判定するための確認が実行される。確認が肯定的である場合、それ以上の質問は行われず、オーバーフローVD(排尿機能不全)の更新されたラベルが適用される。確認が否定的である場合、アルゴリズム400の次のステップが
図4Dに示されている。
【0060】
図4Dでは、患者の年齢が要求される。患者が60歳未満の場合、それ以上の質問は行われない。患者が60歳以上の場合は、SARC-F1が尋ねられる。SARC-F1の回答が1以上の場合、それ以上の質問は行われず、機能UI(尿失禁)の更新されたラベルが適用される。SARC-F1に対する回答が0の場合、次のSARC-Fの質問が行われる。後続のSARC-Fの質問に対する回答が1以上の場合、それ以上の質問は行われない。後続のSARC-F質問の回答が0の場合、次のSARC-F質問が行われ、以降のSARC-F質問の回答が1以上になるか(この場合、それ以上の質問は行われず、機能UIの更新されたラベルが適用される)、またはすべてのSARC-F質問に対する回答が0になるまで(この場合、それ以上の質問は行われず、オーバーフローVDの更新されたラベルが適用される)繰り返される。
【0061】
図4Aから
図4Eにつながる3つの分岐のうちの1つをたどると(
図4Aを参照)、
図4EではQUID6が尋ねられる。QUID6の回答が1より大きい場合(>1)の場合、QUID4と5が尋ねられ、両方が回答される。次に、QUID1、6、4、および5のスコアが取得される。QUID6、4、および5(UUIに関連する)の合計スコアがQUID1(SUIに関連する)のスコアより大きい場合、MUI/UUI(混合、切迫性尿失禁が優勢)の初期ラベルが適用される。MUI/UUIの初期ラベルが適用される場合、アルゴリズム400の次のステップが
図4Fに示されている。QUID6、4、および5の合計スコアがQUID1のスコアより小さい場合、MUI/SUI(混合、腹圧性尿失禁が優勢)の初期ラベルが適用される。MUI/SUIの最初のラベルが適用されている場合、それ以上の質問は行われない。
【0062】
QUID6の回答が1以下の場合(≦1)、QUID3と2が質問され、両方とも回答する必要がある。QUID3と2の両方の回答が1以下の場合(≦1)、それ以上の質問は行われず、「不明」の初期ラベルが適用される。QUID3と2の一方または両方が1より大きいと回答した場合(>1)、患者の年齢が要求される。患者が60歳以上の場合、それ以上の質問は行われず、SUI ISD(腹圧性尿失禁が優勢で、内因性括約筋欠損の危険因子を伴う)のラベルが適用される。患者が60歳未満の場合、患者は以前にUI(尿失禁)手術を受けたことがあるかどうか尋ねられる。患者が以前にUI手術を受けたことがある場合、それ以上の質問は行われず、SUI ISDの初期ラベルが適用される。患者が以前にUI手術を受けていない場合、それ以上の質問は行われず、SUIの初期ラベルが適用される。
【0063】
図4Aから4Eに示されておりOAB、UUI、またはMUI/UUIを含む初期ラベルを提供する質問分岐のいずれも、
図4Fにつながる。
図4Fでは、各分岐のICIQ OAB質問に対する全体的なICIQ OABスコアが決定される。ICIQ OABの各質問には5つの考えられる回答がある。考えられる各回答には、0、1、2、3、または4の値が割り当てられ(各質問に対する最も低い値/発病度の回答には0の値が割り当てられ、最も高い値/発病度の回答には4の値が割り当てられる)、4つの質問の考えられる合計スコアは16である。全体的なICIQ OABスコアの決定には、煩わしさスコアは考慮されない。回答された質問の全体的なICIQ OABスコアが3以下の場合(≦3)、それ以上の質問は行われない。全体的なICIQ OABスコアが3を超える場合(>3)、ICIQ OAB QoL質問が行われる。アルゴリズム400では、ICIQ OAB QoL3、6から8、10、12から14、19、21から23、および25が質問され、すべてに回答する必要がある。続いて、ICIQ OAB QoL5、15、16、および27(以下、切迫性QoL質問と呼ぶ)が尋ねられ、すべてに回答する必要がある。切迫性QoL質問に対する回答を総合すると、閾値と比較されるスコアが生成される。各ICIQ OAB QoLには6つの可能な回答がある(まったくない、少しだけある、時々、かなりの場合、ほとんどの場合、すべての場合)。考えられる各回答には、1、2、3、4、5、または6の値が割り当てられる(各質問に対する最も発病度の低い回答には1の値が割り当てられ、最も発病度の高い回答には6の値が割り当てられる)。したがって、切迫性QoL質問を総合した考えられる最大スコアは24である。例えば、閾値は24のうち12のスコアであるが、別の閾値を代わりに使用されてもよい。続いて、ICIQ OAB QoL4、9、11、18、および24(以下、夜間頻尿QoL質問と呼ぶ)が尋ねられ、すべてに回答する必要がある。夜間頻尿QoL質問に対する回答を総合すると、閾値(たとえば、考えられる30のうち15)と比較されるスコアが生成される。続いて、ICIQ OAB QoL17および20(以下、頻度QoL質問と呼ぶ)が尋ねられ、両方に回答する必要がある。頻度QoL質問に対する回答を総合すると、閾値(たとえば、12のうちの6)と比較されるスコアが生成される。その後、尋ねられたICIQ OAB QoL質問の合計スコアが計算され、その時点でアルゴリズム400の分岐が終了し、さらなる質問は行われない。次に、切迫性QoL質問、夜間頻尿QoL質問、および頻度QoL質問のいずれかの合計スコアがそれぞれのしきい値以上であるかどうかを見る確認が実行される。「いいえ」の場合、ICIQ OAB QoL質問に回答する前に提供されたラベルが維持される。「はい」の場合、切迫性QoL質問、夜間頻尿QoL質問、および頻度QoL質問の合計スコアがしきい値以上であるものがいくつあるかを見る確認が実行される。切迫性QoL質問、夜間頻尿QoL質問、および頻度QoL質問のうち1つだけの合計スコアがそれぞれの閾値以上の場合、ラベルは切迫性、夜間頻尿、または頻度のいずれかを含むように更新される。切迫性QoL質問、夜間頻尿QoL質問、および頻度QoL質問の2つ以上の合計スコアがそれぞれの閾値以上の場合、質問の各グループの相対合計スコアが比較される。たとえば、切迫性QoL質問に関する24のうち18(18/24または3/4)は、絶対スコアは夜間頻尿の方が高いにもかかわらず、夜間頻尿QoL質問に関する30のうち20(20/30または2/3)よりも相対的に高くなる。相対合計スコアが等しくない場合、ラベルは、最も高い相対合計スコアを持つ切迫性、頻度、および夜間頻尿のうちの1つだけを含むように更新される。相対合計スコアが切迫性、頻度、および夜間頻尿の2つ以上で等しい場合、スコアは切迫性、頻度、夜間頻尿の順にランク付けされ、ラベルは切迫性、頻度、夜間頻尿の最高ランクの1つを含むように更新される。
【0064】
フローチャートまたはアルゴリズム400からわかるように、プロセッサ305は、1つまたは複数の骨盤底機能不全症状または膀胱症状に関連する、臨床的に検証された一連の質問をユーザに提示するように構成されており、これらの質問は、1つまたは複数の先行する質問に対する回答に基づいて最適である。図示の実施形態では、プロセッサ305は、例えば上述のフローチャート400に従って、事前にプログラムされた分岐ロジックを使用してそうするように構成されるが、これは必須ではない。これにより、最も少ない質問数で1つまたは複数の骨盤底機能不全症状または膀胱症状を判定することが可能となり、より少ない質問およびより少ない無関係なデータで判定の感度および特異性を高めることができる。
【0065】
プロセッサ305は、機械学習アルゴリズム315を使用して、取得された患者アンケートデータに基づいて、1つまたは複数の症状の判定を提供するように構成される。図示の実施形態では、機械学習アルゴリズム315は、ニューラルネットワークであるか、ニューラルネットワークを備えるが、他の機械学習アルゴリズム構造を代わりに使用してもよい。
【0066】
アルゴリズム400の分岐が終了し、それ以上の質問が行われない場合、選択された分岐で尋ねられた質問に対する回答が機械学習アルゴリズムに入力される。アルゴリズムの一部の分岐がラベル(例えば、オーバーフローVD、機能UIなど)で終わることもわかる。機械学習アルゴリズム315が利用できない場合(例えば、機械学習アルゴリズム315が所期に訓練される前)、ラベルは、アルゴリズム400内の臨床的に検証された質問に対して提供された回答に基づいて、予備診断または初期判定として機能してもよい。ラベルは、症状固有のアンケートに対する以前の患者の回答の臨床評価に基づいてもよい。ラベルの後にさらなる精密検査の推奨が記載されている場合、予備診断または初期判定は、正確な診断のための十分な情報を確認または提供するために必要なアンケートよりも浸蝕的な医療処置を示してもよい(例えば、尿力学検査など)。
【0067】
機械学習アルゴリズム315の実施形態を
図5により詳細に示す。図示の実施形態では、機械学習アルゴリズム315は、複数の層、ニューロン、および接続を備えるニューラルネットワークである。ニューラルネットワークは、複数のニューロン316aを備える入力層または一次層316を備える。プロセッサ305によって選択され、ユーザに尋ねられる質問に対する考えられるそれぞれの回答は、別個のニューロン316aによって表される。一次層316は、行動データ入力(以下でさらに説明する)を表す追加のニューロン316aをさらに備え、また、生理学的データ入力(例えば、患者の測定された骨盤底強度)を表す追加のニューロン316aを備えていてもよい。一次層316内のニューロンの数は、考えられる質問および/または行動データ入力の数、プロセッサ305による次の質問の選択中の質問の考えられる分岐などに応じて変化してもよい。各ニューロン316aには、0から1(たとえば、小数点以下2桁まで)までの活性化値Aが割り当てられる。ニューロン活性化値は、症状を示す可能性に基づいて事前に決定された質問の回答および/または行動データ入力によって指定される。
図5に示される特定のニューロン活性化値は、説明のみを目的としており、上述のアルゴリズム400に示される質問に対する回答を示すものではない。
【0068】
一次層316は、一連の接続317によって二次層または隠れ層318に接続されるが、代わりにニューラルネットワークは複数の二次層または隠れ層318を備えていてもよい。隠れ層の数および各隠れ層内のニューロンの数は、取得されたデータセットの変動性によって決定されてもよく、各隠れ層318は、複数のニューロン318aを備えていてもよい。一次層316のニューロン316aと隠れ層318のニューロン318aとの間の接続317には、症状の判定に対する一次層ニューロン316aの重要性のレベルを示す重みW(正の値または負の値の場合がある)がそれぞれ割り当てられる。
図5に示す特定の重みは、説明のみを目的としている。図示の実施形態では、一次層316の各ニューロン316aは、隠れ層318の各ニューロン318aに接続されているが、これは必須ではない。
【0069】
次に、隠れ層318のニューロン318aの活性化値は、一次層316の各ニューロン316aの活性化値の加重和に、隠れ層318のニューロン318aへのそれぞれの接続の重みWを乗算することによって計算される(例えば、W1・A1+W2・A2+W3・A3+・・・WN・AN、ここで、Aは一次層316のN番目のニューロン316aの活性化値を表し、Wは、一次層316のN番目のニューロン316aと隠れ層318の対象ニューロン318との間の接続の重みを表す)
【0070】
次に、0と1の間の値を有するニューロン318aの活性化値を生成するために、活性化関数が加重和に適用される。図示の実施形態では、以下に示すように、シグモイド関数(S(x)=1/(1+e^(-X))が活性化関数として使用される。
【0071】
S(x)・(W1・A1+W2・A2+W3・A3+・・・WN・AN)
【0072】
ステップ関数、線形関数、双曲線正接関数、ReLU関数、Leaky ReLU関数、SoftMax関数、Swishセルフゲート関数などの他の活性化関数が代わりに使用されてもよいことを認識されたい。
【0073】
ニューラルネットワークの感度を高めるために、以下に示すように、隠れ層318の各ニューロン318aに対する上記の計算にバイアス値Bが追加されてもよい。
【0074】
S(x)・(W1・A1+W2・A2+W3・A3+・・・WN・AN+B)
【0075】
重みWおよびバイアス値Bは、全体としてニューラルネットワーク315の機能を決定するものである。
【0076】
図示の実施形態では、隠れ層318は、やはり上述した一連の重み付け接続を介して出力層320に接続する。出力層320は、複数のニューロン320aを備える。出力層320内の各ニューロン320aは、腹圧性尿失禁、脱出、過活動膀胱等を含むがこれらに限定されない異なる症状の判定または分類を表す。出力層320内のニューロン320aの数は、ニューラルネットワークが判定するために構成または訓練される症状の数に依存してもよい。図示の実施形態では、出力層320は、それぞれが異なる症状-SUI ISD、SUI、MUI/SUI、MUI/UUI、OAB切迫性、UUI切迫性、OAB夜間頻尿、UUI夜間頻尿、OAB頻度、UUI頻度、OAB POP、UUI POP、オーバーフローVD、機能UIを表す14個のニューロン320a(3個だけが示されている)を備える。最も高い活性化レベルを有する出力層320内のニューロン320aは、患者が罹患する可能性が最も高いとニューラルネットワークが判定した骨盤底機能不全症状または膀胱症状に対応する。例えば、
図5に示す例では、UUI切迫性に対応するニューロン320aが最も高い活性化値を有し、患者が罹患する可能性が最も高い症状がUUI切迫性であることを示している。
【0077】
アンケートデータに加えて、患者データは、行動データを含んでいてもよい。例えば、行動データは、摂取した水分の量(例えば、LまたはmL単位)、排尿した水分の量(例えば、LまたはmL)、消費されたカフェインの量(例えば、mg単位)、消費されたアルコールの量(例えば、単位)、失禁発症の数、夜間頻尿発症の数、膀胱空隙の数、および切迫性に関連する失禁発症の数などの指標を含んでいてもよい。関心のある各行動メトリクスは、考えられる質問の回答に関して上で説明したように、一次層316内の別個のニューロン316aによって表されてもよい。
【0078】
ニューラルネットワークの一次層316を上述のように構築することにより、ニューラルネットワーク315は、アンケートデータ、行動データ、またはその両方に基づいて(利用可能な場合は、任意選択で、アンケートデータおよび/または行動データと組み合わせた生理学的データにも基づいて)、1つまたは複数の骨盤底機能不全症状または膀胱症状の判定を提供することができる。これにより、装置300は、不完全な患者データまたは各患者のデータの異なるサブセットであっても、1つまたは複数の症状の判定を提供することができるようになる。さらに、1つまたは複数の先行する質問に応答して受信した患者データに基づいて質問を選択するように構成されているプロセッサ305と併せて、装置300は、各患者に最も関連する情報をニューラルネットワーク315に提供することによって、決定の効率および精度を向上させるように構成され得る(無関係な情報が削減または除去される)。
【0079】
これにより、装置300が、1回目に(例えば、アンケートデータに基づいて)初期判定を提供し、その後、2回目に(例えば、行動データと、任意選択で追加/繰り返しのアンケートデータに基づいて)更新されたまたは検証中の判定を提供することも可能になり得る。したがって、装置300は、1つまたは複数の骨盤底機能不全症状または膀胱症状を縦方向(例えば、繰り返し)監視および判定するのに特に適している可能性がある。
【0080】
ニューラルネットワーク315は、正確な判定を達成するためにニューラルネットワーク315内の重みおよびバイアス値を調整することによって、判定を提供するように訓練される。図示の実施形態では、ニューラルネットワーク315は、コスト関数の値を減少させるために勾配降下法を使用するバックプロパゲーションを使用して訓練されるが、これは必須ではない。
【0081】
ネットワークを訓練するために使用される訓練データは、患者アンケートデータ、行動データ、および複数の患者のそれぞれについての対応する判定または診断を備える。これにより、新しい患者に提供される判定の精度を高めるために、(集団レベルでの結果を考慮して)大規模なデータセットでニューラルネットワークを訓練できるようになる。さらに、訓練データは、装置300が判定を提供するために使用される新しい患者ごとに増補されてもよい。新しい患者ごとに受信した患者データと、その患者データに基づく外部判定または診断(例えば、装置300によって判定されない)を使用してニューラルネットワークを訓練することによって、ニューラルネットワークは、時間の経過とともにますます大規模になる訓練データセットに基づいて継続的に更新及び改善されてもよい。このようにして、ニューラルネットワークは、骨盤底機能不全症状または膀胱症状に対する従来の診断アプローチのように固定されたアプローチを維持するのではなく、調整してより正確な判定を提供するように構成されてもよい。
【0082】
図6は、本発明の別の実施形態に係る、患者の骨盤底機能不全症状または膀胱症状を判定する方法500を示す。方法500は、上述の装置300を使用して実行されてもよく、それに関して説明される。
【0083】
方法500のステップ502は、例えばフローチャート400に関して上述した装置300を使用して、患者アンケートデータを取得または受信することを備える。アンケートデータは、個人データおよび/または人口統計上の患者データ、ならびに骨盤底機能不全症状または膀胱症状に関連する患者データを含んでいてもよい。装置300は、上述したように、ユーザ電子装置用のデジタル患者インターフェースを(例えばプロセッサ305を使用して)生成するように構成され、それを介してユーザは装置300に患者データを入力してもよい。図示の実施形態では、装置300はまた、1つまたは複数の骨盤底機能不全症状または膀胱症状の判定を医師に表示してもよいデジタル医師インターフェースを(例えば、プロセッサ305を使用して)生成するように構成されている。
【0084】
方法500のステップ504は、受信した患者データに基づいて、1つまたは複数の骨盤底機能不全症状または膀胱症状の初期判定を提供することを備える。初期判定は、機械学習アルゴリズムを使用して、例えば上述のようにプロセッサ305のニューラルネットワーク315を介して提供される。
【0085】
ステップ506は、初期治療プログラムを患者に配信することを備える。図示の実施形態では、初期治療プログラムは、ユーザ電子装置上のデジタル患者インターフェースを介して、ビデオおよび/またはオーディオコンテンツの形式で患者に配信される。図示の実施形態では、初期治療プログラムは、初期決定がどの1つまたは複数の症状に関係するかに関係なく、あらゆる患者に共通である。初期治療プログラムは、患者の関与を促進するように設計されており、タスク、課題及びクラスを含んでいてもよい。初期治療プログラムは、第1の期間に配信される。図示の実施形態では、第1の期間は、1週間を備えるが、これは必須ではなく、初期治療プログラムは、これより短いまたは長い期間を備えていてもよい。
【0086】
初期治療プログラムの少なくとも一部は、デジタル患者インターフェースを介して患者の行動データを入力することを備える(例えば、毎日の水分とトイレの回数の記録を含む膀胱日記の記入)。
【0087】
方法500のステップ508は、受信した患者データに基づいて、1つまたは複数の骨盤底機能不全症状または膀胱症状の第1の更新された判定を提供することを備える。第1の更新された判定は、機械学習アルゴリズムを使用して、例えば、上述のようにプロセッサ305のニューラルネットワーク315を介して提供される。図示の実施形態では、第1の更新された判定は、初期治療プログラム中に提供または入力された患者の行動データに基づく。あるいは、第1の更新された判定は、患者の行動データとさらなるアンケートデータの両方に基づいてもよい。さらなるアンケートデータは、例えば、フローチャート400に関して上述したように装置300を使用して取得されてもよい。しかしながら、さらなるアンケートデータは、変わることのない患者データの収集の繰り返しを避けるために、個人データおよび/または人口統計上の患者データに直接関係しないデータを含んでいなくてもよい。
【0088】
いずれの場合も、第1の更新された判定は、受信した追加の患者データに応じて、初期判定を検証または確認するか、または異なる判定を提供してもよい。例えば、患者の行動データ(および任意選択でさらなるアンケートデータ)は、初期判定に関して提供されたアンケートデータと一致してもよく、その場合、第1の更新された判定は、初期判定を検証してもよい。あるいは、行動データ(および任意選択でさらなるアンケートデータ)は、初期判定に関して提供されたアンケートデータと少なくとも部分的に一致しなくてもよく、その場合、第1の更新された判定は、患者について1つまたは複数の症状のより関連性の高い異なる判定を提供してもよい。
【0089】
患者のアンケートデータおよび/または行動データを受信するニューラルネットワーク315の柔軟性により、同じアプローチおよび装置300が初期決定の効率的、迅速かつ正確な再評価を提供することが可能にすることができる。より多くの患者データが収集されると、装置300は、1つまたは複数の骨盤底機能不全症状または膀胱症状の更新された判定を提供するために、新しいまたは変化する患者データに迅速に応答することができ、今後の患者のための適切なおよび/または治療プログラムの選択を可能にすることができる。
【0090】
第1の更新された判定は、上述したように、デジタル医師インターフェース上で医師に表示されてもよい。これにより、受信した患者データに基づいて手動で判定を下さなければならない医師の作業負荷が大幅に軽減され、判定の効率、速度、および場合によっては精度が低下してもよい。任意選択で、プロセッサ305は、推奨される精密検査(例えば、SUI ISDの判定のための尿力学検査、OAB/UUI POPの判定のための骨盤検査、オーバーフローVDの判定のための排尿後残存量および尿流量測定、または機能UIを判定するためのフレイル検査などのさらなる検査)および/または第1の更新された判定の1つまたは複数の症状に対応する標的治療プログラムを判定するように構成されてもよく、これもデジタル医師インターフェース上に表示されてもよい。これにより、医師の負担がさらに軽減され得る。生のアンケートデータおよび/または行動データは、必要に応じて、デジタル医師インターフェース上で医師に表示するために利用できてもよい。
【0091】
方法500のステップ510は、第1の更新された判定に対応する第1の標的治療プログラムを患者に配信するステップを備える。装置300は、第1の更新された判定に基づいて第1の標的治療プログラムを決定するように構成されている。第1の標的治療プログラムは、上述したように、ユーザ電子装置上のデジタル患者インターフェースを介してビデオおよび/またはオーディオコンテンツの形式で患者に配信される。第1の標的治療プログラムは、第2の期間にわたって配信される。図示の実施形態では、第2の期間は、4週間であるが、これは必須ではなく、第1の標的治療プログラムは、これより短い期間または長い期間を備えていてもよい。第1の標的治療プログラムの第2の期間は、初期治療プログラムの第1の期間よりも長い期間であってもよく、または長い期間を備えていてもよい。
【0092】
第1の標的治療プログラムは、第1の更新された判定の1つまたは複数の症状に関連し、適切な治療内容を含む。例えば、1つまたは複数の症状のそれぞれについて、第1の標的治療プログラムを構築できる治療アプローチのプールが存在してもよい。治療アプローチのプールは、複数の治療を備える。治療は、さまざまな順序および/または組み合わせで組み合わされ、各症状に標的治療プログラムを提供してもよい。治療プログラムをさらに調整するために、選択した各治療の量および/または強度を症状に応じて変更してもよい。治療の中には、すべての症状に普遍的なものもあれば、選択された数の症状(例えば、1、2、3つの症状など)のみに特有の治療もあってもよい。その柔軟性により、第1の標的治療プログラムを第1の更新された判定の症状に合わせて簡単かつ容易に調整し、必要に応じて個別の患者治療計画を提供することが可能にすることができる。第1の標的治療プログラムの治療と治療量/強度の組み合わせは、症状ごとに事前に決定されてもよい。
【0093】
4週間続く第1の標的治療プログラムの場合、治療の組み合わせおよび/または1つまたは複数の治療の量または強度は、4週間のうちの各週で異なっていてもよい。これにより、患者は徴候を軽減するのに十分な期間、それぞれの治療の組み合わせに取り組むことが可能になると同時に、特定の症状にますます関連性の高い治療に継続的に進歩することも可能になる。
【0094】
治療は、たとえば、特定の治療アプローチの背景や、膀胱の解剖学的構造および/または膀胱の症状に関する詳細を説明する、患者が自分の状態についてより深く理解し、標的治療プログラムを内容に合わせて配置するのに役立つ情報または教育コンテンツを含んでいてもよい。治療は、第1の更新された判定の1つまたは複数の症状の徴候を緩和すること、および/または患者からさらなるデータ(例えば、行動データおよび/またはアンケートデータ)を収集することを目的とした(患者によって完了される)課題または演習を含んでいてもよい。
【0095】
第1の標的治療プログラムの少なくとも一部は、デジタル患者インターフェースを介して患者の行動データを入力することを備える(例えば、毎日の水分とトイレの回数の記録を含む膀胱日記の記入)。
【0096】
方法500のステップ512は、受信した患者データに基づいて、1つまたは複数の骨盤底機能不全症状または膀胱症状の第2の更新された判定を提供することを備える。第2の更新された判定は、機械学習アルゴリズム315を使用して、例えば上述のようにプロセッサ305のニューラルネットワークを介して提供される。図示の実施形態では、第2の更新された判定は、第1の標的治療プログラム中に提供または入力された患者の行動データに基づく。あるいは、第2の更新された判定は、患者の行動データとさらなるアンケートデータの両方に基づいてもよい。さらなるアンケートデータは、例えば、フローチャート400に関して上で説明したように装置300を使用して取得されてもよい。さらなるアンケートデータは、第1の標的治療プログラムが自分の症状をどのように改善したかについての患者の印象に関するフィードバックを提供する、PGI-I(患者全体の改善印象)質問への回答も含んでいてもよい。しかしながら、変更されない患者データの繰り返し収集を避けるために、追加のアンケートデータは、個人データおよび/または人口統計上の患者データに直接関係しないデータを含んでいなくてもよい。
【0097】
いずれの場合も、第2の更新された判定は、受信した追加の患者データに応じて、初期判定または第1の更新された判定を検証または確認するか、または異なる判定を提供してもよい。例えば、患者の行動データ(および任意選択でさらなるアンケートデータ)は、第1の標的治療プログラムが、第1の更新された判定の1つまたは複数の症状の徴候の改善に効果的であることを示してもよい。したがって、第2の更新された判定は、以前の判定を有効にしてもよい。あるいは、行動データ(および任意でさらなるアンケートデータ)は、第1の標的治療プログラムが、第1の更新された判定の1つまたは複数の症状の徴候の改善に効果がなかったことを示してもよい。したがって、第2の更新された判定は、患者の1つまたは複数の症状についての、異なる、より関連性の高い判定を提供することができる。
【0098】
第2の更新された判定は、上述したように、デジタル医師インターフェース上で医師に表示されてもよい。プロセッサ305はまた、第2の更新された判定の1つまたは複数の症状に対応する推奨精密検査および/または標的治療プログラムを決定するように構成されてもよく、これも上述したようにデジタル医師インターフェース上に表示されてもよい。生のアンケートデータおよび/または行動データは、必要に応じて、デジタル医師インターフェース上で医師に表示するために利用されてもよい。
【0099】
方法500のステップ514は、第2の更新された判定に対応する第2の標的治療プログラムを患者に配信することを備える。装置300は、第2の更新された判定に基づいて第2の標的治療プログラムを決定するように構成されている。第2の標的治療プログラムは、上述したように、ユーザ電子装置上のデジタル患者インターフェースを介してビデオおよび/またはオーディオコンテンツの形式で患者に配信される。第2の標的治療プログラムは、第3の期間にわたって配信される。図示の実施形態では、第3の期間は、4週間であるが、これは必須ではなく、第2の標的治療プログラムは、より短い期間またはより長い期間を備えていてもよい。第2の標的治療プログラムの第3の期間は、初期治療プログラムの第1の期間または第1の標的治療プログラムの第2の期間よりも長い期間であってもよく、または長い期間を備えていてもよい。
【0100】
第2の標的治療プログラムは、第1の標的治療プログラムと実質的に同様または同一の方法で構築されてもよい。例えば、第2の更新された判定が第1の更新された判定と実質的に類似または同一である場合、それは、第1の更新された判定が正しく、第1の標的治療プログラムがその患者にとって適切であったことを示し得る。したがって、徴候を改善するために、第2の標的治療プログラムで同じまたは類似の治療アプローチ(たとえば、ますます関連性の高い治療および/または治療量/強度に進む)を継続することが患者にとって有益であり得る。
【0101】
対照的に、第2の更新された判定が第1の更新された判定と異なる場合、それは、第1の更新された判定が正しくなく、第1の標的治療プログラムがその患者にとって適切ではなかったことを示し得る(たとえば、患者の徴候が改善しなかったか、さらには悪化し得る)。したがって、徴候を改善するために、第2の標的治療プログラムにおける第2の更新された判定の症状により適した異なる治療アプローチ(例えば、治療の異なる組み合わせおよび/または治療量/強度)に切り替えることは、患者にとって有益であり得る。
【0102】
第2の標的治療プログラムの少なくとも一部は、デジタル患者インターフェースを介して患者の行動データを入力することを備える(例えば、毎日の水分とトイレの回数の記録を含む膀胱日記の記入)。
【0103】
方法500のステップ516は、受信した患者データに基づいて、1つまたは複数の骨盤底機能不全症状または膀胱症状の最終判定を提供することを備える。最終判定は、機械学習アルゴリズムを使用して、例えば上述のようにプロセッサ305のニューラルネットワーク315を介して提供される。図示の実施形態では、最終決定は、第2の標的治療プログラム中に提供または入力された患者の行動データに基づく。あるいは、最終決定は、患者の行動データとさらなるアンケートデータの両方に基づいてもよい。さらなるアンケートデータは、例えば、フローチャート400に関して上で説明したように装置300を使用して取得されてもよい。さらなるアンケートデータは、第1の標的治療プログラムが自分の症状をどのように改善したかについての患者の印象に関するフィードバックを提供する、PGI-I(患者全体の改善印象)質問への回答も含んでいてもよい。しかしながら、変更されない患者データの繰り返し収集を避けるために、追加のアンケートデータは、個人データおよび/または人口統計上の患者データに直接関係しないデータを含んでいなくてもよい。
【0104】
いずれの場合も、最終判定は、受信した追加の患者データに応じて、以前の判定を検証または確認してもよい。例えば、患者の行動データ(および任意選択でさらなるアンケートデータ)は、以前の判定に関して提供されたアンケートデータおよび行動データと一致してもよいし、第2の標的治療プログラムが第2の更新された判定の1つまたは複数の症状の徴候を改善するのに効果的であったことを示してもよく、この場合、最終判定は、以前の判定を検証してもよい。あるいは、行動データ(および任意でさらなるアンケートデータ)は、以前の判定に関して提供されたアンケートデータおよび行動データと少なくとも部分的に一致しなくてもよく、第2の標的治療プログラムが第2の更新された判定の1つまたは複数の症状の徴候を改善するのに効果的でないことを示してもよい。そうである場合、最終判定は、患者の1つまたは複数の症状について、異なる、より関連性のある判定を提供してもよい。
【0105】
第2の更新された判定は、上述したように、デジタル医師インターフェース上で医師に表示されてもよい。プロセッサ305はまた、第2の更新された判定の1つまたは複数の症状に対応する推奨精密検査および/または標的治療プログラムを決定するように構成されてもよく、これも上述したようにデジタル医師インターフェース上に表示されてもよい生のアンケートデータおよび/または行動データは、必要に応じて、デジタル医師インターフェース上で医師に表示するために利用されてもよい。
【0106】
説明された方法500は、装置300が、1つまたは複数の骨盤底機能不全症状または膀胱症状の効率的、合理化された、頻繁な判定を可能にし、それによってそのような症状の診断の速度および精度を向上させる方法を示す。装置300はまた、不必要なデータを削減または除去する効率的なデータ収集を可能にする(例えば、フローチャート400を使用し、デジタル患者インターフェースを介して患者データを入力する)。装置300はまた、最も関連性のある患者データが提供される機械学習アルゴリズム315(例えば、ニューラルネットワーク)を使用して、1つまたは複数の症状を迅速かつ正確に判定することを可能にする。ニューラルネットワークなどの機械学習アルゴリズムを使用すると、患者の行動データと大規模なサンプルセットからの母集団ベースのデータの両方を使用して主観的な患者アンケートデータを検証することもでき、判定の精度がさらに向上する。装置300により、医師は、患者データの変化に迅速に反応して、徴候が改善しているか、安定しているか、悪化しているかを評価することができ(現在の治療プログラムが適切であるかどうかを示す)、それによって、必要に応じて治療を迅速に変更することが可能になり、症状のさらなる進行を阻止できる可能性が高まる。
【0107】
図7Aおよび7Bは、上述の装置300および/または方法500を使用した、1つまたは複数の骨盤底機能不全症状または膀胱症状の判定の速度および精度の改善を示す。
【0108】
図7Aは、骨盤底機能不全症状または膀胱症状の診断および治療のための従来の経路を示す。症状の初期評価と判定は、第1の医師の診察1で行われ、第1の治療プログラムが提供される。第1の治療プログラムが成功しない場合は、同じ症状に対して修正された治療プログラムが提供される。修正された治療プログラムに従っても改善が見られず、初期判定が正確でなかったことを示す場合(これらの症状の診断は複雑であるため、これはよくある)、プロセスは、第2の医師の診察2で再び開始される。各医師の診察における表後判定は、通常、アンケートデータのみに基づいて行われるため、各診断および/または治療決定の間の反復期間または時間Iが、多くの場合、重要になる(通常、数か月以上)。
【0109】
図7Bは、装置300および/または方法500を使用した、骨盤底機能不全症状または膀胱症状の診断および治療の経路を示す。症状の初期評価および判定は、従来の経路と同様に、第1の医師の診察1で行われる。しかしながら、従来の経路とは対照的に、各診断および/または治療の決定は、患者の主観的なアンケートデータだけでなく、母集団ベースのデータ(訓練された機械学習アルゴリズムの使用による)および行動データにも基づいている。これにより、2つの追加データソースで患者アンケートデータを検証することにより、従来の経路と比較して、各診断および/または治療の決定の品質(例えば、精度や効率など)を向上させることができる。また、判定の質が向上すると、不正確な診断(追加データの不足のため)に対して次善のまたは不正確な判定および治療アプローチを継続し、後で判定および治療プロセスを最初からやり直すのではなく、治療プロセス中の様々な時点での判定および/または治療アプローチの迅速な変更が可能になる。
【0110】
したがって、
図7Bの経路は、
図7Aに示す従来の経路に比べて次の利点を提供する。
・1つまたは複数の骨盤底機能不全症状または膀胱症状の正確な判定または診断を達成するための全体時間t<<Tの短縮。
・診断および/または治療決定の間の反復回数i<<Iの減少。
・診断および/または治療決定の数n<<Nの減少。
・診断および/または治療決定のより高い決定の質qn>>Qn
【0111】
本開示を読めば、当業者には他の変形および修正が明らかとなるであろう。そのような変形および修正は、骨盤底および膀胱機能不全の識別の技術分野ですでに知られており、本明細書ですでに説明した特徴の代わりに、またはそれに加えて使用できる同等の特徴および他の特徴を含んでいてもよい。
【0112】
添付の特許請求の範囲は、特徴の特定の組み合わせを対象としているが、本発明の開示の範囲には、いずれかの請求項で現在請求されているのと同じ発明に関連しているかどうか、本発明と同じ技術的問題の一部またはすべてを軽減するかどうかにかかわらず、本明細書に明示的または黙示的に開示される新規な特徴または特徴の新規な組み合わせ、またはその一般化も含まれることを理解されたい。
【0113】
別個の実施形態の文脈で説明される特徴は、単一の実施形態で組み合わせて提供されてもよい。逆に、簡潔にするために単一の実施形態に関連して説明される様々な特徴は、個別に、または任意の適切なサブコンビネーションで提供されてもよい。出願人は、本出願またはそこから派生するさらなる出願の審査中に、そのような特徴および/またはそのような特徴の組み合わせに対して新しい請求項が定式化される可能性があることをここに通知する。
【0114】
完全を期すために、「備える」という用語は、他の要素やステップを排除するものではなく、「1つの」または「1つの」という用語は複数を排除するものではなく、単一のプロセッサまたは他のユニットは、特許請求の範囲に記載されたいくつかの手段の機能を果たすことができ、特許請求の範囲内のいかなる参照符号も特許請求の範囲を限定するものとして解釈されないものとする。
【要約】 (修正有)
【課題】患者の骨盤底機能不全症状を判定するための装置及び方法を提供する。
【解決手段】装置(100)は、プロセッサ(105)を備える。プロセッサ(105)は、患者データを受信する。患者データは、患者のアンケートデータおよび行動データのうちの少なくとも1つを含む。プロセッサ(105)はまた、機械学習アルゴリズム(115)を使用して、受信した患者データに基づいて患者の1つまたは複数の骨盤底機能不全症状を判定する。
【選択図】
図1