(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】捕球具
(51)【国際特許分類】
A63B 71/14 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
A63B71/14 F
(21)【出願番号】P 2023193569
(22)【出願日】2023-11-14
【審査請求日】2023-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】592263012
【氏名又は名称】トライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 幹
【審査官】井上 香緒梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-161884(JP,A)
【文献】特開2013-230366(JP,A)
【文献】特開2021-186228(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0226867(US,A1)
【文献】特開平10-015143(JP,A)
【文献】登録実用新案第3214761(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 71/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
親指部の内部に親指挿入部材を備えた捕球具において、
前記親指挿入部材を前記親指部の長さ方向に沿って位置調整可能にする位置調整手段を設
け、
前記親指挿入部材は、親指が挿入される筒部と、前記筒部の長手方向端部に設けられる紐部材と、を備えており、前記紐部材が前記位置調整手段として機能することを特徴とする捕球具。
【請求項2】
前記親指挿入部材は、親指が挿入される筒部と、前記筒部の長手方向一端に設けられる第1紐部材と長手方向他端に設けられる第2紐部材とを備えており、これら第1紐部材と第2紐部材が前記位置調整手段として機能することを特徴とする請求項1に記載の捕球具。
【請求項3】
前記第1紐部材の先端は、小指部の先端部に形成された穴から外部に露出するように設けられていることを特徴とする請求項
2に記載の捕球具。
【請求項4】
前記第2紐部材の先端は、親指側の根元に形成された穴から外部に露出するように設けられていることを特徴とする請求項
2又は3に記載の捕球具。
【請求項5】
前記筒部は、長手方向の両端部に、長手方向の内側に向けて折り返し部が形成されていることを特徴とする請求項
2に記載の捕球具。
【請求項6】
掌側を形成する掌側外皮と掌側内皮とを備えており、
掌側内皮には親指方向に沿ったスリットが2カ所形成され、
前記筒部は、前記2カ所のスリットの間に形成される第1支持部が挿通される形態で取り付けられることを特徴とする請求項
2に記載の捕球具。
【請求項7】
掌側を形成する掌側外皮と掌側内皮とを備えており、
前記第1紐部材と前記第2紐部材は、その一部が、掌側外皮と掌側内皮の間に形成される空間に配置されることを特徴とする請求項
2に記載の捕球具。
【請求項8】
甲側を形成する甲側外皮と甲側内皮とを備えており、
甲側内皮に設けられた第2支持部が前記筒部に挿通されていることを特徴とする請求項
2に記載の捕球具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親指部の内部に親指挿入部材を備えた捕球具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
かかる捕球具の親指挿入部材は、下記特許文献1に開示される野球用グローブ等で一般的に設けられている構成である。親指部の内部に設けられている親指挿入部材は、捕球具を使用するときに親指が挿入される。親指挿入部材は筒部を備えており、その中に親指が挿入される。親指挿入時のフィット感を高めるために、筒部の内径を大きくしたり小さくしたりする調整手段も設けられることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
親指挿入時のフィット感をさらに改善したいという要望がある。
【0005】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その課題は、親指挿入時のフィット感を改善した捕球具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明に係る捕球具は、
親指部の内部に親指挿入部材を備えた捕球具において、
前記親指挿入部材を前記親指部の長さ方向に沿って位置調整可能にする位置調整手段を設けたことを特徴とするものである。
【0007】
かかる構成による捕球具の作用・効果を説明する。この構成によると、親指挿入部材を親指部の長さ方向に沿って位置調整することができる。これにより、捕球具のユーザーの好みに対応した位置に親指挿入部材を調整することができ、フィット感を改善することができる。
【0008】
本発明に係る前記親指挿入部材は、親指が挿入される筒部と、前記筒部の長手方向端部に設けられる紐部材と、を備えており、前記紐部材が前記位置調整手段として機能することが好ましい。
【0009】
これにより、紐部材を移動させると筒部が移動し、適切な位置に親指挿入部材の筒部を位置調整することができる。
【0010】
本発明に係る前記親指挿入部材は、親指が挿入される筒部と、前記筒部の長手方向一端に設けられる第1紐部材と長手方向他端に設けられる第2紐部材とを備えており、これら第1紐部材と第2紐部材が前記位置調整手段として機能することが好ましい。
【0011】
この構成によると、第1紐部材や第2紐部材を引っ張るなどして、筒部が移動し、適切な位置に親指挿入部材の筒部を位置調整することができる。
【0012】
本発明において、前記第1紐部材の先端は、小指部の先端部に形成された穴から外部に露出するように設けられていることが好ましい。
【0013】
これにより、第1紐部材の先端を持って引っ張るなどして、親指挿入部材を位置調整することができる。
【0014】
本発明において、前記第2紐部材の先端は、親指側の根元に形成された穴から外部に露出するように設けられていることが好ましい。
【0015】
これにより、第2紐部材の先端を持って引っ張るなどして、親指挿入部材を位置調整することができる。
【0016】
本発明に係る前記筒部は、長手方向の両端部に、長手方向の内側に向けて折り返し部が形成されていることが好ましい。
【0017】
折り返し部を設けることで、親指を挿入するときの感触を良くすることができる。
【0018】
本発明において、掌側を形成する掌側外皮と掌側内皮とを備えており、
掌側内皮には親指方向に沿ったスリットが2カ所形成され、
前記筒部は、前記2カ所のスリットの間に形成される第1支持部が挿通される形態で取り付けられることが好ましい。
【0019】
かかる構成により、親指挿入部材を位置調整可能な状態で設けることができる。
【0020】
本発明において、掌側を形成する掌側外皮と掌側内皮とを備えており、
前記第1紐部材と前記第2紐部材は、その一部が、掌側外皮と掌側内皮の間に形成される空間に配置されることが好ましい。
【0021】
これにより、指を挿入したときに掌や甲に第1紐部材と第2紐部材が触れないようにすることができる。
【0022】
本発明において、甲側を形成する甲側外皮と甲側内皮とを備えており、
甲側内皮に設けられた第2支持部が前記筒部に挿通されていることが好ましい。
【0023】
かかる構成により、親指挿入部材を位置調整可能な状態で設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図3】手指挿入部からグローブの内部を見たときの拡大図
【
図4】グローブの内部を構成する主要な部材(ユニット)を示す図
【
図8】各甲側内皮を結合する前の状態を掌側から見た図
【
図9】第1親指部甲側内皮,第2親指部甲側内皮、カバーの形状を掌側から見た図
【
図10A】第2親指部甲側内皮を第1親指部甲側内皮に結合するまでの手順を示す図
【
図10B】第1親指部甲側内皮,第2親指部甲側内皮、カバーを結合する手順を示す図
【
図11】第1親指部甲側内皮,第2親指部甲側内皮、カバーを結合した状態で第2親指部甲側内皮の第2部分を捲った状態を示す図
【
図12】甲側内皮を結合した状態を示す掌側から見た図
【
図13B】
図13において、各折り返し部を裏面側へ折り返した状態を示す図
【
図13C】各折り返し部を折り返した状態を裏面側から見た図
【
図13D】親指挿入部材の端面どうしを縫製により結合した状態を示す図
【
図15】
図5において、クッション部材を除いた状態を示す図
【
図16】親指挿入部材の取り付け状態を示す掌側から見た拡大図
【
図17】親指挿入部材の取り付け状態を示す甲側から見た拡大図
【
図20】掌側外皮と甲側外皮を組み合わせた状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係る捕球具の好適な実施形態をまず説明する。
図1は、本発明に係る捕球具の一例である野球用グローブ(以下、単にグローブと略す。)を掌側からみた外観図である。
図2は、
図1に示すグローブを甲側からみた外観図である。
【0026】
グローブは、親指部1、人差し指部2,中指部3,薬指部4,小指部5を備えている。親指部1と人差し指部2の間にはウェブ6が設けられる。甲側にはベルト7が設けられており、手指をグローブ内に挿入するための手指挿入部8が形成されている。
図1に示すように、掌側外皮10により捕球するためのポケットが形成される。また、掌側外皮10により、親指部1、人差し指部2,中指部3,薬指部4,小指部5の掌側の面が構成される。
【0027】
図3は、手指挿入部8からグローブの内部を見たときの拡大図を示す。ベルト7の縁にはヘリ革7aが設けられている。掌が接触する箇所には掌側内皮11が設けられている。掌側外皮10と掌側内皮11とは、適宜の紐により結合され、グローブの掌側の大部分を構成する。
【0028】
親指部1の内部には、親指挿入部材70が設けられており、その中に親指が挿入される。本発明は、親指挿入時のフィット感を高めるために、親指挿入部材70を親指部1の長さ方向に沿って位置調整可能にするための位置調整手段を備えている。親指挿入部材70の詳細は後述する。
【0029】
図4は、グローブの内部を構成する主要な部材(ユニット)を示す図である。この図において、掌側外皮と甲側外皮は示されていない。また、
図4は、甲側から見た図であり、甲側内皮を構成する部材が示される。
図5は、
図4に示すユニットを掌側から見た図である。
【0030】
人差し指部甲側内皮20、中指部甲側内皮30,薬指部甲側内皮40、小指部甲側内皮50が設けられており、その境界部は縫製により結合される。また、各甲側内皮20,30,40の先端側には、人差し指部補強部材21、中指部補強部材31,薬指部補強部材41が設けられており、熱可塑性ポリウレタンのような皮に比べて強度を有する素材により形成される。各甲側内皮20,30,40の先端部は符号20a,30a,40aで示しており、各補強部材21,31,41の裏面側に位置している。小指部甲側内皮50の先端部50aには、補強部材は設けられない。なお、以上の構成は、特開2023-128号公報にも開示されている構成である。
【0031】
親指部1の根元側に位置する第1親指部甲側内皮60が設けられ、親指部1の先端側に位置する第2親指部甲側内皮63が設けられ、両者は縫製により結合される。第1親指部甲側内皮60と第1人差し指部甲側内皮20も縫製により結合される。
【0032】
図5に示すように、掌側内皮11は、親指部掌側内皮111、人差し指部掌側内皮112,中指部甲側内皮113,薬指部掌側内皮114,小指部掌側内皮115を有している(
図15も参照)。親指部掌側内皮111の根元部には、カバー76が縫製により掌側内皮11に結合されている。カバー76は、掌側内皮11と同じ素材の布で形成することができる。カバー76の裏面側に親指挿入部材70が設けられている。親指挿入部材70を構成する第1紐部材71と第2紐部材72がカバー76の両側から飛び出すようになっている。
【0033】
各掌側内皮111,112,113,114,115は、先端部111a,112a,113a,114a,115aを有している。先端部112a,113a,114aの位置は、甲側の先端部20a,30a,40aとほぼ同じである。先端部111a,115aに関しても同様である。
【0034】
人差し指部クッション部材22,中指部クッション部材32,薬指部クッション部材42が設けられている。これらクッション部材は、発泡スチロール等の適宜の素材により形成される。これらクッション部材22,23,24は、甲側の甲側内皮20,30,40及び甲側内皮21,31,41と共に縫製により結合される。これにより、人差し指、中指、薬指を挿入する空間部が形成される。クッション部材22,32,42の先端部の位置は、補強部材21,31,41の先端部の位置と同じである。
【0035】
<グローブの製作手順>
次に、グローブの製作手順の概略を説明する。
図6は、甲側外皮を構成する部材を示し、甲側から見た図である。親指部1を構成する第1親指部甲側外皮1a、第2親指部甲側外皮1b、人差し指部2を構成する第1人差し指部甲側外皮2a、第2人差し指部甲側外皮2b、中指部3を構成する第1中指部甲側外皮3a、第2中指部甲側外皮3b、薬指部4を構成する第1薬指部甲側外皮4a、第2薬指部甲側外皮4b、小指部5を構成する第1小指部甲側外皮5a、第2小指部甲側外皮5bを有する。甲側外皮1aには、穴1dが形成され、第2紐部材72が通される。甲側外皮5bには穴5dが形成され、第1紐部材71が通される。
【0036】
図7は、各甲側外皮を結合した状態を甲側から見た図である。第1親指部甲側外皮1aと第2親指部甲側外皮1bは、ハミダシ1cにより結合される。他の人差し指部2,中指部3,薬指部4,小指部5もハミダシ2c,3c,4c,5cにより結合される。親指部1の甲側外皮とベルト7は、縫製により結合される。
【0037】
図8は、各甲側内皮20,30,40,50を結合する前の状態を示し、掌側から見た図である。穴50aは紐を通すためのものである。スリット50bは、紐80を通すためのものである(
図4参照)。
【0038】
図9は、第1親指部甲側内皮60,第2親指部甲側内皮63、カバー62の構成を示す図であり、掌側から見た形状を示す。また、親指方向をXで示す。甲側内皮60には矩形の穴60aが形成されており、後述の親指挿入部材70を取り付けるために設けられている。カバー62は樹脂製であり穴60aを塞ぐために設けられる。甲側内皮63は、第1部分63bと第2部分63cを有しており、第2部分63cは親指方向Xに沿った延伸部分として形成される。穴63aは紐を通すための穴である。第1部分63bは、甲側内皮60と縫製により結合されるが、第2部分63cは結合されないので、自由度がある。甲側内皮63は、略T字形の平面形状である。第2部分63cの根元の左右には切込み63fが形成されている。
【0039】
図10Aは、甲側内皮63を甲側内皮60に結合するまでの処理を示す図である。
図10A(a)は、
図9に示す状態から裏返した状態を示す。切込み63fがあり、これを利用して、第2部分63cの左右を折り返して折り返し部63d,63eを形成する。折り返し部が形成された状態を
図10A(b)に示す。折り返し部が形成された甲側内皮63を掌側から見た形状が
図10A(c)に示される。
【0040】
図10Bは、第1親指部甲側内皮60,第2親指部甲側内皮63、カバー62の全体の結合までの手順を示す図である。(a)は、第1親指部甲側内皮60,第2親指部甲側内皮63を結合した状態を甲側から見た図である。(b)は同じく掌側から見た図である。第1部分63bは、甲側内皮60と縫製により結合されるが、第2部分63cは結合されないので、自由度がある。(c)は、更にカバー62を結合した状態を示す図である。カバー62は、縫製62aにより甲側内皮60に結合され、穴60aが封鎖される。この穴60aがあることで、後述の親指挿入部材70の筒部73の端部74aと端部74bの結合作業が行いやすくなる。端部74aと端部74bの結合(縫製)が終わったら、カバー62により穴60aを封鎖する。
【0041】
図11は、第1親指部甲側内皮,第2親指部甲側内皮、カバーを結合した状態で第2親指部甲側外皮の第2部分を捲った状態を示す図である。第2部分63cは、ちょうど穴60aを覆い隠す位置にある。
【0042】
図12は、各甲側内皮を結合した状態を示す図であり、掌側から見た図である。掌側内皮や親指挿入部材70の図示は省略している。
【0043】
図13A~
図13Dは、親指挿入部材70の構成を示す図である。
図13Aは、甲側から見た展開図である。親指方向をXで示す。親指挿入部材70は、1つの布部材により形成され、第1紐部材71,第2紐部材72、筒部73,折り返し部73a,73b,73c,73d、端部74a,74bを有する。
【0044】
図13Bは、
図13Aにおいて、各折り返し部73a,73b,73c,73dを裏面側へ折り返した状態を示す。
図13Cは、折り返した状態を裏面側から見た図である。かかる折り返しを行うことで、筒部73の端面に布部材の端面が露出しないので、親指挿入部材70に親指を挿入するときの感触を良くすることができる。
【0045】
図13Dは、端面74aと端面74bを縫製により結合した状態を示す図である。これにより、親指挿入空間75が形成されたリング状の筒部73が形成される。
【0046】
図14は、掌側内皮11と掌側内皮を並べて示す図である。掌側内皮11には、スリット116が2カ所に形成されている。また、小指側の根元にもスリット117が形成される。小指挿入部80は周知の構成であるが、2つの紐部材800を有する。小指挿入部80の本体部分は、掌側内皮11の小指部の位置に縫製により結合される。紐部材800は甲側内皮50に形成された2カ所のスリット50bに挿通され、さらに甲側外皮に形成されたスリット(不図示)も挿通され、グローブの外観側に露出する。2つの紐部材800を調整することで、小指挿入部80の内径を調整することができる。
【0047】
図15は、
図5において、クッション部材22,32,42を除いた状態を示す図である。
図16は、親指挿入部材70の取り付け状態を示す図である。
図16は、カバー76は不図示の状態で掌側から見た拡大図である。
図17は、同じく甲側から見た拡大図である。
【0048】
掌側内皮11に2カ所スリット116が形成されており、親指挿入部材70を組み込むときは、端部74a,74bをそれぞれスリット116に挿入する。その後、
図17に示すように、端部74a,74bを結合することで筒部73が形成され、親指挿入部材70が掌側内皮11に取り付けられる。筒部73の長さよりも、スリット116の長さの方が長いので、親指挿入部材70はスリット116に沿って(親指方向X)に沿って移動可能である。2つのスリット116の間で親指挿入部材70を支持する形態であり、この箇所は第1支持部に相当する。筒部73の中に第1支持部が挿通される形態である。
【0049】
図17に示すように、第2親指部甲側内皮63の第2部分63cが筒部73の内部に挿通されており、第2支持部に相当する。すなわち、筒部73の内部には、親指方向に沿って第1支持部と第2支持部が挿通される形態であり、筒部73(親指挿入部材70)を支持すると共に、親指方向に沿っての移動も可能にしている。
【0050】
図17に示すように、第2部分63cの幅方向両側には、折り返し部63d,63eが形成されている。親指が挿入されるのは、第2部分63cの裏側であり、第2部分63cと甲側内皮11の間、すなわち、第1支持部と第2支持部の間になる。
【0051】
第1紐部材71と第2紐部材72は、掌側内皮11と掌側外皮の間の空間に配置される。第1紐部材71は、掌側内皮11に形成されたスリット117に挿通され(
図14参照)、さらに小指部5の根元に形成された穴5dを介して外部に引き出される(
図7参照)。第2紐部材72は、親指部1に形成された穴1dを介して外部に引き出される。
【0052】
図18は、親指挿入部材70の取り付け状態を示す断面図である。掌側内皮11に形成された2カ所のスリット116に筒部73が挿通される形で親指挿入部材70が支持される。筒部73をスリット116に挿通する前は端部74aと端部74bが結合されていない。スリット15を挿通されたのちに端部74a,74bが連結され、親指挿入部材70が掌側内皮11から脱落しないように支持される。
【0053】
また、筒部73の内部には第2親指部甲側内皮63の第2部分63cが挿入されている。親指は、掌側内皮11と第2部分63cの間の空間に挿入される。折り返し部73a,73bは、筒部73の上部、端部74a,74bの位置する側に折り返されている。従って、親指に端部74a,74bの端面が接触することはない。
【0054】
これら外部に引き出された第1紐部材7と第2紐部材72を操作することで、親指挿入部材70の筒部73の親指方向Xに沿った位置を調整することができる。すなわち、第1紐部材71と第2紐部材72は、親指挿入部材70の位置調整手段として機能する。これにより、ユーザーは親指を親指挿入部材70に挿入した状態で適切な位置を確認しながら位置調整を行うことができる。調整が終了したのちは、第1紐部材71と第2紐部材72の先端をそれぞれ結ぶことで位置を固定することができる(
図2参照)。
【0055】
図19は、掌側外皮10と甲側外皮とを並べて示す図である。
図20は、掌側外皮10と甲側外皮を組み合わせた状態を示す図である。他の部材は省略している。
【0056】
<別実施形態>
本実施形態では、捕球具の一例として野球用グローブを挙げたが、野球用ミットの場合にも本発明は応用できるものである。また、野球用ではなく、ソフトボール用その他の球技に使用する捕球具に対しても応用できるものである。
【0057】
第1紐部材71と第2紐部材72をグローブの外部に引き出す位置については、本実施形態に限定されるものではなく、他の位置に設定してもよい。紐部材の長さ、素材や本数等については適宜設定することができる。本実施形態では、親指挿入部材は1つの布部材で形成されているが、複数部材を結合して構成してもよい。例えば、筒部と紐部材を別々の部材で製作し、これらを結合して親指挿入部材としてもよい。
【0058】
本発明におけるスリットは、単なる切込みでもよく、幅を有する長穴の形態で形成してもよい。
【0059】
本実施形態において、親指挿入部材70の筒部73の内径を調整する手段は設けられていないが、かかる手段を設けてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 親指部
10 掌側外皮
11 掌側内皮
60 第1親指部甲側内皮
62 カバー
63 第2親指部甲側内皮
63a 穴
63b 第1部分
63b 第2部分
63d,63e 折り返し部
70 親指挿入部材
71 第1紐部材
72 第2紐部材
73 筒部
73a,73b,73c,74d 折り返し部
74a,74b 端部
75 親指挿入空間
76 カバー
111 親指部掌側内皮
116 スリット
117 スリット
X 親指方向
【要約】 (修正有)
【課題】親指挿入時のフィット感を改善した捕球具を提供する。
【解決手段】親指部の内部に親指挿入部材を備えた捕球具において、親指挿入部材を親指部の長さ方向に沿って位置調整可能にする第1紐部材71,第2紐部材72を設けたことを特徴とする。親指挿入部材は、親指が挿入される筒部73と、筒部73の長手方向端部に設けられる第1紐部材71,第2紐部材72と、を備えており、紐部材71,72が位置調整手段として機能する。
【選択図】
図16