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特許7569588レーザービームの均質度が向上したレーザー加工システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】レーザービームの均質度が向上したレーザー加工システム
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/073 20060101AFI20241010BHJP
   B23K 26/06 20140101ALI20241010BHJP
   B23K 26/066 20140101ALI20241010BHJP
   B23K 26/062 20140101ALI20241010BHJP
【FI】
B23K26/073
B23K26/06
B23K26/066
B23K26/062
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023553217
(86)(22)【出願日】2022-03-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-27
(86)【国際出願番号】 KR2022003412
(87)【国際公開番号】W WO2023171837
(87)【国際公開日】2023-09-14
【審査請求日】2023-09-01
(31)【優先権主張番号】10-2022-0028950
(32)【優先日】2022-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】512124371
【氏名又は名称】コーウィン ディーエスティー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】COWINDST CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】イ、チョン ジェ
(72)【発明者】
【氏名】ソ、ユ ジン
(72)【発明者】
【氏名】シム、ミョン ソン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソン ジュ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ボ ギョム
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-203292(JP,A)
【文献】特開2007-319475(JP,A)
【文献】特開2001-121282(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0937767(KR,B1)
【文献】特開2020-202266(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0125361(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0127462(KR,A)
【文献】特表2019-513304(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第4137646(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/073
B23K 26/06
B23K 26/066
B23K 26/062
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザービームを発生させるレーザー部と、
前記レーザー部から発生した前記レーザービームを拡大させるビームエキスパンダ部と、
前記ビームエキスパンダ部で拡大された前記レーザービームのビーム拡散角度を調整し、前記レーザービームのエネルギー分布を制御するビーム分布制御モジュールと、
前記ビーム分布制御モジュールで制御された前記レーザービームを一部だけ通過させるスリットユニットと、
前記スリットユニットを通過した前記レーザービームの光路上に配置され、前記レーザービームを集光して被加工体に照射する光学系と、を含む
ことを特徴とするレーザービームの均質度が向上したレーザー加工システム。
【請求項2】
前記ビーム分布制御モジュールは、
前記レーザービームを予め設定された角度で拡散させながら出力させるビーム拡散角度制御素子と、
前記ビーム拡散角度制御素子に入射する前記レーザービームに対する光軸を回転軸として前記ビーム拡散角度制御素子を回動させる回動ユニットと、を含む
請求項1に記載のレーザービームの均質度が向上したレーザー加工システム。
【請求項3】
前記回動ユニットが動作すると、前記ビーム拡散角度制御素子を通過する前記レーザービームのエネルギー分布がより均質に形成される
請求項2に記載のレーザービームの均質度が向上したレーザー加工システム。
【請求項4】
前記レーザービームの光路上には、前記レーザービームの偏光特性を制御する偏光可変素子がさらに配置される
請求項3に記載のレーザービームの均質度が向上したレーザー加工システム。
【請求項5】
前記偏光可変素子は、前記回動ユニットによって前記ビーム拡散角度制御素子と同じ速度で回動される
請求項4に記載のレーザービームの均質度が向上したレーザー加工システム。
【請求項6】
前記ビーム分布制御モジュールは、前記ビーム拡散角度制御素子を通過した前記レーザービームの拡散角度を変更する結像距離可変素子をさらに含む
請求項2に記載のレーザービームの均質度が向上したレーザー加工システム。
【請求項7】
前記スリットユニットには、形状(Shape)およびサイズ(Size)が可変に調整される開口が形成される
請求項1に記載のレーザービームの均質度が向上したレーザー加工システム。
【請求項8】
前記ビーム分布制御モジュールと前記スリットユニットとの間に配置され、被加工体に照射される前記レーザービームの絶対位置を変更させるスキャンユニットをさらに含む
請求項1に記載のレーザービームの均質度が向上したレーザー加工システム。
【請求項9】
前記ビーム分布制御モジュールと前記光学系との間で前記レーザービームに対する光路の長さが一定である
請求項1に記載のレーザービームの均質度が向上したレーザー加工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー加工システムに関するものであって、より詳細には、ガウスエネルギー分布を有するレーザービームをフラットトップの形のエネルギー分布を有するようにして加工品質を向上させることができるレーザービームの均質度が向上したレーザー加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザー加工システムは、加工対象物である被加工体をレーザービームを用いて高い加工精度で加工することができる。しかし、このようなレーザービームは、エネルギー分布が鐘状のガウスビームプロファイルを有しているため、加工部位を均一に加工することができないという問題があった。これに対して、従来のレーザー加工システムには、レーザービームの直進性と回折性を用いてガウス分布をフラットトップの形の均質なエネルギー分布となるように多くの方法が適用されていた。
【0003】
しかし、従来の方式は、エネルギー分布の均質度の観点からは不十分であり、微細線幅、薄膜などの被加工体についての精密な加工を行うことにおいて物理的な限界があるという問題点が依然として存在した。また、従来の方式は、特殊な形の光学系を特殊に設計して使用しても、実際の量産において困難が多く実効性が足りないという問題点があった。
【0004】
また、従来技術を見ると、レーザービームの特定波長に応じてこれに対応する個別の設計が求められ、スリットを使用するレーザー加工システムの場合、実際の加工部位に照射されるレーザービームについての加工効果が低いという問題点などがあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、前述の問題点を解決するために案出されたものであって、レーザービームの均質度が向上したレーザー加工システムを提供しようとする。
【0006】
より具体的に、被加工体に照射されるレーザービームのエネルギー分布をフラットトップの形に変形して加工品質を向上させようとする。
【0007】
また、実際に加工される部位についてのリアルタイム観察により、様々な波長を有するレーザービームについてのエネルギー分布を効果的に制御しようとする。
【0008】
また、エネルギー分布が制御されたレーザービームの偏光特性を最小化しようとする。
【0009】
また、被加工体に照射されるレーザービームのサイズ、レーザービームの位置などを迅速かつ可変的に調整しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態は、前述の課題を解決するために、レーザービームを発生させるレーザー部と、前記レーザー部から発生した前記レーザービームを拡大させるビームエキスパンダ部と、前記ビームエキスパンダ部で拡大された前記レーザービームのビーム拡散角度を調整し、前記レーザービームのエネルギー分布を制御するビーム分布制御モジュールと、前記ビーム分布制御モジュールで制御された前記レーザービームを一部だけ通過させるスリットユニットと、前記スリットユニットを通過した前記レーザービームの光路上に配置され、前記レーザービームを集光して被加工体に照射する光学系と、を含むレーザービームの均質度が向上したレーザー加工システムを提供する。
【0011】
前記ビーム分布制御モジュールは、前記レーザービームを予め設定された角度で拡散させながら出力させるビーム拡散角度制御素子と、前記ビーム拡散角度制御素子に入射する前記レーザービームに対する光軸を回転軸として前記ビーム拡散角度制御素子を回動させる回動ユニットと、を含むことが好ましい。
【0012】
前記回動ユニットが動作すると、前記ビーム拡散角度制御素子を通過する前記レーザービームのエネルギー分布がより均質に形成されることが好ましい。
【0013】
前記レーザービームの光路上には、前記レーザービームの偏光特性を制御する偏光可変素子がさらに配置されることが好ましい。
【0014】
前記偏光可変素子は、前記回動ユニットによって前記ビーム拡散角度制御素子と同じ速度で回動されることが好ましい。
【0015】
前記ビーム分布制御モジュールは、前記ビーム拡散角度制御素子を通過した前記レーザービームの拡散角度を変更する結像距離可変素子をさらに含むことが好ましい。
【0016】
前記スリットユニットには、形状(Shape)およびサイズ(Size)が可変に調整される開口が形成されることが好ましい。
【0017】
前記ビーム分布制御モジュールと前記スリットユニットとの間に配置され、被加工体に照射される前記レーザービームの絶対位置を変更させるスキャンユニットをさらに含むことが好ましい。
【0018】
前記ビーム分布制御モジュールと前記光学系との間で前記レーザービームに対する光路の長さが一定であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
以上で説明した本発明の課題解決手段によると、次のような事項を含む様々な効果が期待できる。ただし、本発明が下記のような効果をすべて発揮してこそ成立するわけではない。
【0020】
本発明の一実施形態に係るレーザー加工システムは、均質度がより向上したレーザービームを提供することができる。
【0021】
また、被加工体に照射されるレーザービームのエネルギー分布をフラットトップの形に変形して加工品質を向上させることができる。
【0022】
また、実際に加工される部位についてのリアルタイム観察によって様々な波長を有するレーザービームについてのエネルギー分布を効果的に制御できる。
【0023】
また、エネルギー分布が制御されたレーザービームの偏光特性を最小化することができる。
【0024】
また、被加工体に照射されるレーザービームのサイズ、レーザービームの位置などを迅速かつ可変的に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係るレーザービームの均質度が向上したレーザー加工システムについての概略図である。
【0026】
図2】(a)図1のビーム分布制御モジュールで回動ユニットが動作しない場合、ビーム分布制御モジュールを通過する前後のレーザービームについてのエネルギー分布を示す図である。(b)図1のビーム分布制御モジュールで回動ユニットが動作した場合、ビーム分布制御モジュールを通過する前後のレーザービームについてのエネルギー分布を示す図である。
図3】(a)レーザービームが図1のビーム分布制御モジュールを経ずにスリットユニットと光学系を通過した場合のレーザービームのエネルギー分布を示す図である。(b)図2(b)によってビーム分布制御モジュールを通過したレーザービームがスリットユニットと光学系を通過した場合、エネルギー均質度が向上したレーザービームのエネルギー分布を示す図である。
図4】本発明の他の実施形態に係るレーザービームの均質度が向上したレーザー加工システムについての概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本開示の構成および効果を十分に理解するために、添付の図面を参照して本開示の好ましい実施形態を説明する。しかし、本開示は、以下に開示される実施形態に限定されず、様々な形態で実施することができ、様々な変更を加えることができる。以下、本発明を説明するにおいて関連する公知機能について、この分野の技術者に自明な事項として本発明の要旨を不必要に曖昧にし得ると判断される場合には、その詳細な説明を省略する。
【0028】
第1、第2などの用語は、様々な構成要素を説明するために使用できるが、前記構成要素は、前記用語によって限定されない。前記用語は、1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ使用できる。例えば、本開示の権利の範囲から逸脱することなく、第1の構成要素を第2の構成要素と命名することができ、同様に第2の構成要素も第1の構成要素と命名することができる。
【0029】
本出願において、「含む」または「有する」などの用語は、本明細書に記載の特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品、またはこれらの組み合わせが存在することを指定しようとするものであり、1つまたは複数の他の特徴や数字、ステップ、動作、構成要素、部品、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加の可能性を予め排除しない。
【0030】
本出願で使用される用語は、単に特定の実施形態を説明するために使用されたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明らかに異なる意味を含まない限り、複数の表現を含む。本開示の実施形態で使用される用語は、別段の定義がない限り、当該技術分野における通常の知識を有する者に通常知られている意味と解釈される。
【0031】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るレーザービームの均質度が向上したレーザー加工システムについての概略図である。図1を参照すると、本発明の一実施形態に係るレーザービームの均質度が向上したレーザー加工システムは、レーザー部100、ビームエキスパンダ部200、ビーム分布制御モジュール300、スリットユニット400、光学系500、スキャンユニット600などを含み得る。ここで、本発明を構成するレーザー部100ないしスキャンユニット600などの各構成要素は、レーザービームLの光路上に配置される。一方、ステージなどには、被加工体Tを安着し得る。
【0032】
レーザー部100は、予め設定される波長、パルス幅、出力条件を有するレーザービームLを生成させる。レーザー部100は、単一パルスまたはマルチパルスのレーザービームLを生成し得る。このようなレーザービームLは、加工対象物である被加工体Tに応じて適宜選択され得る。一方、レーザー加工に使用されるレーザービームLのパルス幅は、ナノ秒、ピコ秒、フェムト秒、または連続波レーザーであり得る。フェムト秒レーザービームLのような極超短レーザーの場合、多層薄膜が形成された被加工体Tについての選択的加工などの精密加工が必要な場合に使用できる。連続波レーザーの場合、局所部位についての加熱手段として使用できる。
【0033】
一実施形態において、レーザー部100を介して発振するレーザービームLは、単一のものであり得る。一方、レーザー部100から発振するレーザービームLは、ガウス分布のエネルギー強度を有することになる。すなわち、レーザービームLの中心部は、その周辺部よりも強いエネルギーを有する。当技術分野におけるガウス分布の理論は、既によく知られており、具体的な説明は省略する。このとき、被加工体Tには、ガウス分布を有するレーザービームLによって中心部が最も深く、その周辺に行くほど深さが浅くなる形状の溝が形成される。
【0034】
ビームエキスパンダ部200は、レーザー部100から発生したレーザービームLを拡大する役割を果たす。すなわち、ビームエキスパンダ部200は、レーザービームLのビーム直径を予め設定される倍率に応じて拡張させることができる。このようなビームエキスパンダ部200は、少なくとも1つ以上のレンズを用いてレーザービームLのサイズを調整することができる。
【0035】
一方、一実施形態は、ビームシェイパー部700をさらに含み得る。このとき、ビームシェイパー部700は、ビームエキスパンダ部200を介して拡大されたレーザービームLのガウス分布を予め平坦に形成することができる。
【0036】
ビーム分布制御モジュール300は、ビームエキスパンダ部200で拡大されたレーザービームLのビーム拡散角度を調整してレーザービームLのエネルギー分布を制御する機能を有する。一実施形態において、本発明がビームシェイパー部700をさらに含む場合、ビーム分布制御モジュール300には、ビームシェイパー部700を通過したレーザービームLが入射する。
【0037】
具体的に、ビーム分布制御モジュール300は、ビーム拡散角度制御素子310、回動ユニット320、偏光可変素子330、および結像距離可変素子340などを含み得る。ビーム分布制御モジュール300は、レーザービームLを拡散させ、ガウス分布を有するビームプロファイルをよりフラットトップの形に近づけるように切り替える。このようなビーム拡散角度制御素子310は、レーザービームLを予め設定された角度で拡散しながら出力させる。
【0038】
具体的に、レーザービームLは、ビーム分布制御モジュール300の一側の前面に入射した後、エネルギー分布が均質に制御されて他側の背面に出射する。一方、回動ユニット320は、ビーム拡散角度制御素子310、偏光可変素子330をレーザービームLの光路上に順次配置させるホルダ部322をさらに含み得る。このとき、レーザービームLは、ホルダ部322の中央に形成される中空を通じて入射し、ビーム拡散角度制御素子310、偏光可変素子330を順次に通過することができる。ここで、レーザービームLのビーム直径は、ホルダ部322の中空のサイズより小さいことが好ましい。
【0039】
また、一実施形態において、ビーム拡散角度制御素子310は、一種のレンズであり得る。このとき、レンズは、入射する位置(支点)に応じて出射する位置(支点)を変更することができる。このために、一実施形態に係るレンズは、特別な光学設計によって製作されることができる。これとは異なり、ビーム拡散角度制御素子310は、レンズの屈折率の変化によって同じ目的を達成することができる。
【0040】
レンズに入射するレーザービームLは、予め設定される横断面形状およびビーム直径を有し得る。前述したように、レーザービームLは、その中心部を基準にエネルギーレベルが異なるビームプロファイルを有する。
【0041】
このとき、レンズに入射するレーザービームLは、レンズの入射面のうち、いずれの位置を介して入射するかによって出射される位置が変わり得る。一実施形態において、レンズは、入射位置に応じて予め設定された角度でレーザービームLを拡散させることができる。例えば、レーザービームLの中心部を構成する任意の位置のレーザービームLがビーム拡散角度制御素子310を介して予め設定された角度で拡散して出力されると、出射されるレーザービームLのエッジ(Edge)部を構成し得る。また、一実施形態において、ビーム拡散角度制御素子310は、種類に応じて拡散される角度などを変えることができる。
【0042】
回動ユニット320は、ビーム拡散角度制御素子310に入射するレーザービームLに対する光軸Sを回転軸としてビーム拡散角度制御素子310を回動させる。具体的に、回動ユニット320は、ビーム拡散角度制御素子310を予め設定されるrpmで回動させることができる。一実施形態において、回動ユニット320の一部の構成要素であるホルダ部322は、レーザービームLの光軸Sを基準に回動することができる。ここで、ビーム拡散角度制御素子310は、ホルダ部322の中空を通じて移動するレーザービームLと垂直にホルダ部322に固定設置され得る。このとき、ビーム分布制御モジュール300を介して出射されるレーザービームLのエネルギー分布は、より均質に形成され得る。ここで、回動ユニット320は、回動速度の制御を通じて出射されるレーザービームLのエネルギー分布を効果的に平均化することができる。このとき、ビーム拡散角度制御素子310を通過するレーザービームLは、フラットトップの形により近接するエネルギー分布を有する。図2(a)および図2(b)を見ると、回動ユニット320が動作すると、ビーム拡散角度制御素子310を通過するレーザービームLのエネルギー分布がより均質に形成されることが確認できる。また、ガウス分布のエネルギー強度を有するビームが配列されたマルチモードレーザーの場合にも同様に適用できる。
【0043】
また、一実施形態において、レーザービームLの光路上には、レーザービームLの偏光特性を制御する偏光可変素子330がさらに配置され得る。偏光可変素子330は、レーザービームLの光路上の任意の一位置に配置され得る。一実施形態において、偏光可変素子330は、薄膜ガラス(Glass)の形態であり得る。
【0044】
ここで、偏光可変素子330は、レーザービームLに対する光軸Sを回転軸に回動させることができる。このとき、偏光可変素子330は、レーザービームLに応じて任意の一角度θで静止して固定できる。これとは異なり、偏光可変素子330は、レーザービームLに対する光軸Sを回転軸に連続的に回動させることができる。一実施形態において、偏光可変素子330は、回動ユニット320によってビーム拡散角度制御素子310と同じ速度で回動できる。
【0045】
また、ビーム拡散角度制御素子310と偏光可変素子330とは、互いに一定距離に離隔され、互いに平行にホルダ部322に固定して設置され得る。ここで、離隔距離についての特別な制限はない。
【0046】
このとき、レーザービームLは、一定速度で回動するホルダ部322の中空を通じて入射してホルダ部322に固定設置され、ホルダ部322と同じ速度で回動するビーム拡散角度制御素子310と偏光可変素子330とを順次に通過した後に出射することができる。
【0047】
また、ビーム分布制御モジュール300は、ビーム拡散角度制御素子310を通過したレーザービームLの拡散角度を変更する結像距離可変素子340をさらに含み得る。結像距離可変素子340は、例えば、焦点レンズであり得る。このような結像距離可変素子340は、レーザービームLの光路上に配置される。結像距離可変素子340は、これを通過するレーザービームLの光学距離(焦点距離)または物理的距離を可変させることができる。
【0048】
一実施形態において、ビーム拡散角度制御素子310を通じて出射されるレーザービームLは、発散光に該当する。このとき、一実施形態において、結像距離可変素子340は、これを通過したレーザービームLの拡散角度を変更して発散光が平行光となるように、レーザービームLを集光する役割を果たすことができる。
【0049】
スリットユニット400は、ビーム分布制御モジュール300で制御されたレーザービームLを一部だけ通過させる。このために、スリットユニット400には、形状(Shape)およびサイズ(Size)が可変に調整される開口が形成され得る。ここで、開口は、三角形、四角形、円形などの様々な形状であり得る。その結果、スリットユニット400を通過するレーザービームLの形状は、様々に変更できる。一方、スリットユニット400は、マスクなどの代替可能な手段によって実施できる。
【0050】
四角形の開口を有するスリットユニット400は、例えば、四角形の各辺をなすように対向して配置されるプレートが互いに結合されながら形成され得る。このとき、プレートは、一定の幅を有するように形成され得る。一方、対向するプレート間の離隔距離は、調整可能に形成され、開口のサイズは、横(X軸)方向と縦(Y軸)方向で可変に調整できる。すなわち、開口は、絞り方式で動作できる。一方、プレートについての位置移動は、通常の技術者に自明な移動手段と制御方法などによる。
【0051】
レーザービームLは、直進性と回折性などの固有の特性を有する。スリットユニット400を通過すると、レーザービームLは、開口によってレーザービームLの周辺枠などが一部遮断され、開口の形状とほぼ同じ形状を有するようになる。スリットユニット400を通過する前のレーザービームLは、一般に円形であり、大きなビーム直径を有する。このとき、スリットユニット400の開口が正方形であり、一辺の長さがビーム直径より小さい場合、スリットユニット400を通過したレーザービームLは、開口の形状とほぼ同じ形状とサイズを有する。
【0052】
同時に、レーザービームLは、回折性によって開口を通過するとき、レーザービームLのビームプロファイルが一部重なり、その中心部のエネルギー分布がより平坦になる。すなわち、全体的なエネルギー分布がより均質になる。
【0053】
光学系500は、スリットユニット400を通過したレーザービームLの光路上に配置され、レーザービームLを集光して被加工体Tに照射する役割を果たす。このような光学系500は、第1集光レンズ部510、第2集光レンズ部520などを含み得る。一実施形態において、第1集光レンズ部510は、チューブレンズであり、第2集光レンズ部520は、対物レンズであり得る。
【0054】
チューブレンズは、スリットユニット400を通過したレーザービームLを集光する。チューブレンズが対物レンズとともに使用される場合、チューブレンズは、対物レンズの焦点距離に応じてその倍率が適切に変更できる。また、対物レンズは、チューブレンズを通過したレーザービームLを再び集光して被加工体Tに照射させる。すなわち、対物レンズは、被加工体T上に照射されるレーザービームLの焦点を調整して被加工体T上に集束することができる。
【0055】
対物レンズは、チューブレンズから出射されたレーザービームLを被加工体Tの加工部位に集光してレーザー加工を行う。すなわち、対物レンズは、被加工体Tに照射される直前にレーザービームLが最終的に通過する光学素子である。
【0056】
一方、一実施形態に係る光学系500は、映像取得ユニット(図示せず)をさらに含み得る。映像取得ユニットは、被加工体Tに対するアライン(Align)だけでなく、加工位置、実際に加工される加工部位についての映像などを直接リアルタイムで確認できるようにする。一実施形態において、映像取得ユニットは、照明部を介して照明光が被加工体Tに誘導されれば、被加工体Tから反射された照明光がイメージ結像レンズを介してCCDカメラに誘導させて撮影映像を取得することができる。
【0057】
図3(a)は、レーザービームLが図1のビーム分布制御モジュール300を経ずにスリットユニット400と光学系500を通過した場合のレーザービームLのエネルギー分布を示す図であり、図3(b)は、図2(b)によってビーム分布制御モジュール300を通過したレーザービームLがスリットユニット400と光学系500を通過した場合、エネルギー均質度が向上したレーザービームLのエネルギー分布を示す図である。
【0058】
図3(a)を見ると、レーザー部100から発生するレーザービームLが一実施形態に係るビーム分布制御モジュール300を経ずに、単にスリットユニット400と光学系500を順次通過して最終的に出射する場合、エネルギー分布についての均質度が相対的に低いことが確認できる。イメージを見ると、エネルギー分布における色(明暗)は、温度に対応し得る。すなわち、色(明暗)は、エネルギーレベルを意味する。したがって、同じ色(明暗)は、同じエネルギーレベルを有する。
【0059】
これとは異なり、図3(b)を見ると、レーザー部100から発生するレーザービームLが一実施形態に係るビーム分布制御モジュール300、スリットユニット400および光学系500を順次通過して最終的に出射される場合、レーザービームLのエネルギー分布についての均質度がかなり高いことが確認できる。
【0060】
一実施形態において、ビーム分布制御モジュール300を介して出射されるレーザービームLは、完全なフラットトップの形ではない。しかし、このようなレーザービームLがスリットユニット400を通過しながら開口によってエッジ部が一部切られ、その後光学系500を通過すると、レーザービームLのエネルギー分布が照射される加工部位の面積全体にわたってかなり均質なフラットトップの形になり得る。一実施形態において、本発明を通じて最終的に出射されるレーザービームLについてのエネルギー分布の不均質度は10%以内である。
【0061】
したがって、本発明の一実施形態(図3(b)参照)によって形成されて被加工体Tに照射されるレーザービームLは、中央部のエネルギー強度とその周辺部のエネルギー強度がほぼ同じ分布を有し得る。これは、レーザー加工による加工品質を最大化し、加工の均一度を大幅に向上させることができる。
【0062】
本発明の他の実施形態に係るレーザービームの均質度が向上したレーザー加工システムの概略図である。図4を参照すると、本発明の他の実施形態は、ビーム分布制御モジュール300とスリットユニット400との間に配置され、被加工体Tに照射されるレーザービームLの絶対位置(X-Y座標)を変更するスキャンユニット600をさらに含み得る。
【0063】
このとき、スキャンユニット600は、例えば、ガルバノメータスキャナ、ピエゾスキャナなどであり得る。ガルバノメータスキャナは、少なくとも1つ以上の駆動モータと、駆動モータの回転軸に結合されてレーザービームLの角度を変更する少なくとも1つ以上のスキャナミラーと、をさらに含み得る。このとき、駆動モータは、微細調整が可能であり、レーザービームLの照射位置を精密に移動させることができる。一方、スキャナミラーは、レーザービームLを反射してレーザービームLの光路を変更する。
【0064】
また、本発明の一実施形態は、ビーム分布制御モジュール300と光学系500との間でレーザービームLに対する光路の長さが一定であることを特徴とする。一方、図1を参照すると、ビーム分布制御モジュール300と光学系500との間の距離は、Dで表すことができる。一方、図4を参照すると、ビーム分布制御モジュール300と光学系500との間にスキャンユニット600がさらに配置されるが、このとき、光路の長さは、d+d+dで表すことができる。したがって、本発明の一実施形態に係ると、D=d+d+dである。
【0065】
また、本発明の一実施形態は、レーザービームLの光路上にレーザービームLを反射させる少なくとも1つ以上のレーザーミラーをさらに含み得る。レーザーミラーは、レーザービームLの角度を変更してレーザービームLの進行方向を調整する。このとき、レーザーミラーの数、その位置および種類などは、具体的に限定されない。
【0066】
以上、本発明の好ましい実施形態を例示的に説明したが、本発明の範囲は、このような特定の実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されたカテゴリ内で適切に変更可能なものである。
図1
図2
図3
図4