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特許7569591コンクリート表面均し装置およびコンクリート床面の施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】コンクリート表面均し装置およびコンクリート床面の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/10 20060101AFI20241010BHJP
   E04G 21/08 20060101ALI20241010BHJP
   E04F 21/24 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
E04G21/10 Z
E04G21/08
E04F21/24 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024009834
(22)【出願日】2024-01-25
【審査請求日】2024-01-25
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)公開日:「現場1」令和5年3月23日~令和5年6月29日「現場2」令和5年4月22日~令和5年10月14日(2)公開場所:「現場1」静岡県御殿場市保土沢1090-5「現場2」静岡県駿東郡清水町226-14(3)公開者:株式会社美咲工業(4)公開された発明の内容:株式会社美咲工業が、田中健児が発明したコンクリート表面均し装置およびコンクリート床面の施工方法を、上記現場1および現場2にて実施した。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524034741
【氏名又は名称】株式会社美咲工業
(74)【代理人】
【識別番号】100147393
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 一基
(72)【発明者】
【氏名】田中 健児
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-162422(JP,A)
【文献】特開昭57-130606(JP,A)
【文献】特開2009-155905(JP,A)
【文献】国際公開第2022/210682(WO,A1)
【文献】特公昭32-7240(JP,B1)
【文献】実開平4-76869(JP,U)
【文献】特開平7-229300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G21/00-21/10
E04F21/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延びる前辺部と、前記前辺部と略平行に前記第1方向に延びる後辺部と、前記第1方向とは垂直である第2方向に延びて前記前辺部と前記後辺部とを接続しており前記第1方向に互いに間隔を空けて配置される複数の接続辺部と、を有し、前記前辺部、前記後辺部および前記接続辺部により水平方向を囲まれかつ上下方向に貫通する平面視略矩形の枠内領域を形成し、前記前辺部および前記後辺部の底面は同一面上に位置する均し枠体と、
前記均し枠体に取り付けられるバイブレータと、を有し、
前記バイブレータは、前記前辺部の前側側面に、前記第1方向に沿って取り付けられているコンクリート表面均し装置。
【請求項2】
複数の前記接続辺部は、前記前辺部の一方の端部と前記後辺部の一方の端部とを接続する第1接続辺部と、前記前辺部の他方の端部と前記後辺部の他方の端部とを接続する第2接続辺部と、を含む請求項1に記載のコンクリート表面均し装置。
【請求項3】
前記第1接続辺部および前記第2接続辺部の底面は、前記前辺部および前記後辺部の底面と同一面上に位置する請求項2に記載のコンクリート表面均し装置。
【請求項4】
前記接続辺部は、前記前辺部および前記後辺部の一方の端部と、前記前辺部および前記後辺部の他方の端部との間で、前記前辺部と前記後辺部とを接続する中間接続辺部を含む請求項1に記載のコンクリート表面均し装置。
【請求項5】
3以上の前記接続辺部を有し、
2以上の前記枠内領域を有する請求項1に記載のコンクリート表面均し装置。
【請求項6】
前記前辺部および前記後辺部は前記第1方向に延びる矩形筒状であり、
前記前辺部および前記後辺部の前記第1方向に垂直な面による断面形状における前記第2方向の幅は、前記断面形状における高さ方向の幅より狭い請求項1に記載のコンクリート表面均し装置。
【請求項7】
前記バイブレータは、前記前辺部の前側側面において前記第1方向の中央部から前記前辺部の一方の端部へ向かって前記第1方向に沿って取り付けられている第1バイブレータと、前記前辺部の前側側面において前記中央部から前記前辺部の他方の端部へ向かって前記第1方向に沿って取り付けられている第2バイブレータと、を有する請求項1に記載のコンクリート表面均し装置。
【請求項8】
請求項1から請求項までのいずれかに記載のコンクリート表面均し装置を準備する工程と、
施工領域を囲む施工枠を形成する工程と、
前記施工領域に生コンを投入する工程と、
前記施工領域を横切るように、前記コンクリート表面均し装置をセットする工程と、
前記バイブレータで前記均し枠体を振動させながら、前記施工領域を挟む前記施工枠の一方の上面に前記均し枠体における前記第1方向の一方側を押し当て、前記施工領域を挟む前記施工枠の他方の上面に前記均し枠体における前記第1方向の他方側を押し当てつつ、前記均し枠体を前記第2方向に移動させ、前記前辺部と前記後辺部とで前記施工領域に投入された前記生コンを均す工程と、を含むコンクリート床面の施工方法。
【請求項9】
前記生コンを均す工程において、前記均し枠体の移動方向下流側の前記生コンの一部を、前記枠内領域に投入する請求項に記載のコンクリート床面の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート床面の施工などで用いることができるコンクリート表面均し装置およびコンクリート床面の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート床面を施工する場合、施工枠を形成して枠内に生コンを投入し、これを鏝(こて)やトンボなどを用いて水平に均しながら形成する。この際、コンクリート内の気泡の脱泡やコンクリートの均質化などを目的として、バイブレータで振動を与えながら行うことが好ましい。
【0003】
しかし、従来の鏝(こて)やトンボなどを用いる方法では、コンクリート床面を狙い通り平ら(おおくの場合において水平)に形成するために、ある程度の頻度で施工したコンクリートの表面の高さを計測し、ずれを補正する必要がある。しかしながら、精度よく平らにコンクリート床面を形成するためには、高さの計測頻度を上げる必要があり、施工に時間がかかる問題がある。
【0004】
このような問題に対応できるコンクリート施工方法として、たとえば、施工領域の両側に設置したレールの上を転がる回転駆動式チューブローラを用いるものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-150701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、回転駆動式チューブローラを用いる従来技術では、チューブローラの最下点のみでしかコンクリートを均せないため、回転駆動式チューブローラを一度通過させただけでは平坦になっていない部分が残る場合があり、課題を有する。また、ローラ進行方向後方に十分なコンクリート溜まりを形成するためには、回転駆動式チューブローラを大径化する必要があり、装置が大型化する課題がある。
【0007】
そこで、本発明は、比較的軽量で簡易な手段で、効率的にコンクリートの表面を均すことができるコンクリート表面均し装置およびこれを用いるコンクリート床面の施工方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るコンクリート表面均し装置は、
第1方向に延びる前辺部と、前記前辺部と略平行に前記第1方向に延びる後辺部と、前記第1方向とは垂直である第2方向に延びて前記前辺部と前記後辺部とを接続しており前記第1方向に互いに間隔を空けて配置される複数の接続辺部と、を有し、前記前辺部、前記後辺部および前記接続辺部により水平方向を囲まれかつ上下方向に貫通する平面視略矩形の枠内領域を形成し、前記前辺部および前記後辺部の底面は同一面上に位置する均し枠体と、
前記均し枠体に取り付けられるバイブレータと、を有する。
【0009】
本発明に係るコンクリート表面均し装置は、均し枠体とバイブレータとを有しており、コンクリートに振動を与えて気泡の脱気およびコンクリートの均質化を行いながら、施工するコンクリートの表面を均すことができる。また、均し枠体は、互いに平行な前辺部と後辺部とを有するため、一度の通過で前辺部と後辺部とで2回表面を均すことができるため、コンクリート表面均し装置を通過させた後に残る非平坦部分を減少させることができる。また、枠内領域は上下方向に貫通しており、前辺部を通過した後、後辺部が通過する前のコンクリート表面を上方から視認することが可能であり、生コンを枠内領域に投入するなどの適切な対応を行うことができるので、小型かつ軽量であっても、効率的にコンクリート表面を均すことができ、通過後に残る非平坦部分を減らすことができる。また、このようなコンクリート表面均し装置を用いてコンクリート床面を施工することにより、コンクリート表面の高さの計測を減少ないし省略できる。
【0010】
また、たとえば、複数の前記接続辺部は、前記前辺部の一方の端部と前記後辺部の一方の端部とを接続する第1接続辺部と、前記前辺部の他方の端部と前記後辺部の他方の端部とを接続する第2接続辺部とを有してもよい。
【0011】
一方の端部と他方の端部とに第1接続辺部と第2接続辺部とを有する均し枠体は、全長を抑えつつ、施工中において、枠内領域の生コンが施工枠の外に溢れることを防止できる。
【0012】
また、たとえば、前記第1接続辺部および前記第2接続辺部の底面は、前記前辺部および前記後辺部の底面と同一面上に位置してもよい。
【0013】
このような均し枠体は、施工領域からはみ出す部分の底面の高さが一致しているため、施工枠の形状によらず使用することができ、様々な現場に柔軟に適用可能である。
【0014】
また、たとえば、前記前辺部および前記後辺部は前記第1方向に延びる矩形筒状であり、
前記前辺部および前記後辺部の前記第1方向に垂直な面による断面形状における前記第2方向の幅は、前記断面形状における高さ方向の幅より狭い。
【0015】
コンクリート表面を均す前辺部と後辺部の断面形状を高さ方向の幅が大きい矩形筒状とすることにより、均し枠体の強度を高めて、かつ、枠内領域から生コンが溢れる問題を防止できる。
【0016】
また、たとえば、前記バイブレータは、前記前辺部の前側側面に、前記第1方向に沿って取り付けられていてもよい。
【0017】
バイブレータを前側側面に取り付けておくことで、バイブレータによる振動を均し枠体全体に伝えることができ、かつ、万が一バイブレータから均し枠体から脱落したとしても、均されたコンクリート表面に落下することを防止できる。
【0018】
また、たとえば、前記バイブレータは、前記前辺部の前側側面において前記第1方向の中央部から前記前辺部の一方の端部へ向かって前記第1方向に沿って取り付けられている第1バイブレータと、前記前辺部の前側側面において前記中央部から前記前辺部の他方の端部へ向かって前記第1方向に沿って取り付けられている第2バイブレータと、を有してもよい。
【0019】
このようなコンクリート表面均し装置では、均し枠体の全長が長い場合であっても、バイブレータによる振動を均し枠体全体に、均等に伝えることができる。
【0020】
本発明に係るコンクリート床面の施工方法では、上記いずれかに記載のコンクリート表面均し装置を準備する工程と、
施工領域を囲む施工枠を形成する工程と、
前記施工領域に生コンを投入する工程と、
前記施工領域を横切るように、前記コンクリート表面均し装置をセットする工程と、
前記バイブレータで前記均し枠体を振動させながら、前記施工領域を挟む前記施工枠の一方の上面に前記均し枠体における前記第1方向の一方側を押し当て、前記施工領域を挟む前記施工枠の他方の上面に前記均し枠体における前記第1方向の他方側を押し当てつつ、前記均し枠体を前記第2方向に移動させ、前記前辺部と前記後辺部とで前記施工領域に投入された前記生コンを均す工程と、を含む。
【0021】
このようなコンクリート床面の施工方法により、コンクリート表面の高さの計測を減少ないし省略して、迅速にコンクリート床面の施工を行うことができる。また、コンクリート表面均し装置が、均し枠体とバイブレータとを有しており、コンクリートに振動を与えて気泡の脱気およびコンクリートの均質化を行いながら、施工するコンクリートの表面を均すことができる。また、均し枠体は、互いに平行な前辺部と後辺部とを有するため、一度の通過で前辺部と後辺部とで2回表面を均すことができるため、コンクリート表面均し装置を通過させた後に残る非平坦部分を減少させる、効率的な施工を実現する。
【0022】
また、たとえば、前記生コンを均す工程において、前記均し枠体の移動方向下流側の前記生コンの一部を、前記枠内領域に投入してもよい。
【0023】
このような施工方法によれば、前辺部の通過後に比較的大きな凹みが残ったような場合にでも、下流側の生コンの一部を凹みのある枠内領域に投入することにより、後辺部が通過したあとには、凹みが解消した状態に均すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係るコンクリート表面均し装置の平面図である。
図2図2は、図1に示すコンクリート表面均し装置の正面図である。
図3図3(a)は、図1に示すコンクリート表面均し装置の側面図であり、図3(b)は、図1に示すコンクリート表面均し装置における前辺部の第1方向に垂直な断面による断面図である。
図4図4は、本発明に係るコンクリート床面の施工方法の第1段階を示す概念図である。
図5図5は、本発明に係るコンクリート床面の施工方法の第2段階を示す概念図である。
図6図6は、本発明に係るコンクリート床面の施工方法の第3段階を示す概念図である。
図7図7は、本発明に係るコンクリート床面の施工方法の第4段階を示す概念図である。
図8図8は、本発明に係るコンクリート床面の施工方法の第5段階を示す概念図である。
図9図9は、本発明に係るコンクリート床面の施工方法の第6段階を示す概念図である。
図10図10は、本発明の第2実施形態に係るコンクリート表面均し装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明の第1実施形態に係るコンクリート表面均し装置10の平面図である。図1では、コンクリート表面均し装置10の略半分を図示しているが、図示していない略半分は、図示している部分と略対称である。
【0026】
図1に示すようにコンクリート表面均し装置10は、均し枠体20と、均し枠体20に取り付けられるバイブレータ40とを有する。均し枠体20は、長手方向である第1方向D1に延びる前辺部22と、前辺部22と略平行に第1方向D1に延びる後辺部26と、前辺部22と後辺部26とを接続する複数の接続辺部30とを有する。均し枠体20の第1方向D1に沿う長さは、たとえば1000~10000mm程度とすることができるが、特に限定されない。
【0027】
複数の接続辺部30は、第1接続辺部32、第2接続辺部34(図4参照)および中間接続辺部36とを有する。これらの第1接続辺部32、第2接続辺部34および中間接続辺部36は、第1方向D1とは垂直である第2方向D2に延びており、第1方向D1に互いに間隔を空けて配置される。ただし、第1方向D1の中央部に配置される2つの中間接続辺部36のように、一部の接続辺部30が互いに接触または隣接して配置してあってもかまわない。
【0028】
図4は、図1に示すコンクリート表面均し装置10を用いるコンクリート床面の施工方法における第1段階を示す概念図である。図4には、コンクリート表面均し装置10の全体図が示されている。なお、図4に示すコンクリート表面均し装置10は、一部の構造が簡略化して示されており、図1に示すコンクリート表面均し装置10に対して中間接続辺部36の数および配置間隔が異なる。コンクリート表面均し装置10における中間接続辺部36の数および配置間隔は特に限定されず、適宜決定することができる。
【0029】
図4に示すように、接続辺部30の第1接続辺部32は、前辺部22の一方の端部22aと後辺部26の一方の端部26aとを接続しており、接続辺部30の第2接続辺部34は、前辺部22の他方の端部22bと後辺部26の他方の端部26bとを接続している。また、接続辺部30の中間接続辺部36は、前辺部22および後辺部26の一方の端部22a、26aと、前辺部22および後辺部26の他方の端部22b、26bとの間で、前辺部22と後辺部26とを接続する。
【0030】
図1および図4に示すように、均し枠体20には、前辺部22、後辺部26および一対の接続辺部30により水平方向を囲まれる平面視略矩形の枠内領域38が形成されている。図1に示すように、均し枠体20の半分には4つの枠内領域38が形成され、全体で8つの枠内領域38が形成されている。枠内領域38は上下に貫通しており、上下に遮るものがない。
【0031】
均し枠体20が枠内領域38を形成することにより、図6から図8に示すような施工段階において、生コン70が枠内領域38から、施工領域66における枠内領域38直下の部分以外に溢れ出ることを、効果的に防止できる。また、3以上の接続辺部30を有し、2以上の枠内領域38を有することで、均し枠体20の剛性を高めることができる。ただし、均し枠体20に形成される枠内領域38の数は特に限定されず、たとえば、1つの枠内領域と2つの接続辺部を有する均し枠体も考えられる。
【0032】
図3(a)は、図1に示す均し枠体20の左側面図である。図3に示すように、前辺部22の底面23と後辺部26の底面27とは、同一平面上に位置する。これにより、均し枠体20を施工枠62(図4参照)に安定して押し当てることができ、また、均し枠体20を一回通過させるだけで、前辺部22と後辺部26により2回、コンクリート表面を同じ高さに均すことができる。
【0033】
図3に示すように、第1接続辺部32の底面33は、前辺部22および後辺部26の底面23、27と同一平面上に位置する。図3では図示していないが、第2接続辺部34の底面は、第1接続辺部32の底面33と同様に、前辺部22および後辺部26の底面23、27と同一平面上に位置する。このような均し枠体20では、図4に示すように施工枠62の枠部分の幅が広い場合であっても狭い場合であっても気にせずに、施工領域66の幅に合わせて均し枠体20の幅を決めることができるので好ましい。また、第1接続辺部32および第2接続辺部の底面33と前辺部22および後辺部26の底面23、27との高さをそろえることで、均し枠体20を施工枠62に押し当てる際の安定性が高まる。
【0034】
なお、図1図3には示されていないが、図1に示す中間接続辺部36の底面についても、第1接続辺部32の底面33と同様に、前辺部22および後辺部26の底面23、27と同一平面上に位置することが、コンクリートの表面を美しく均す観点から好ましい。
【0035】
図3(b)は、図1に示すコンクリート表面均し装置10における前辺部22における第1方向D1に垂直な断面による断面図である。図1および図3(b)に示すように、前辺部22は第1方向D1に延びる矩形筒状である。また、前辺部22の第1方向D1に垂直な面による断面形状における第2方向の幅W2は、高さ方向の幅W3より狭い。後辺部26も前辺部22と同様に第1方向D1に延びる矩形筒状であり、後辺部26における第1方向D1に垂直な面による断面形状も、図3(b)に示す前辺部22の断面形状と同様である。
【0036】
図3(b)に示すように、前辺部22および後辺部26を、断面における高さ方向の幅W3が第2方向の幅W2より広い矩形筒状とすることにより、均し枠体の重量が過剰になることを防止しつつ、生コンが前辺部22および後辺部26の上を乗り越えることを防止することができる。なお、高さ方向D3は、第1方向D1および第2方向D2に垂直な方向であり、施工するコンクリートの表面に垂直な方向である。
【0037】
なお、均し枠体20の材質としては、特に限定されないが、鉄、アルミニウムまたはこれらを含む合金とすることが、生コンの表面に適切な圧力を加えられる重量と剛性を均し枠体20に持たせる観点から好ましい。また、たとえば、均し枠体20は、前辺部22、後辺部26および接続辺部30を略矩形筒状の長四角パイプ等で構成し、これらの前辺部22および後辺部26と接続辺部30とを、ネジ止めや溶接等により互いに固定することで作製することができる。
【0038】
図2は、図1に示すコンクリート表面均し装置10を前方(前辺部22側)から見た正面図である。図1および図2に示すように、バイブレータ40の第1バイブレータ42の振動部は、前辺部22の前側側面24に、第1方向D1に沿って取り付けられている。また、図4に示すように、バイブレータ40の第2バイブレータ44の振動部も、第1バイブレータ42と同様に、前辺部22の前側側面24に、第1方向D1に沿って取り付けられている。
【0039】
また、図1図2および図4に示すように、第1バイブレータ42の振動部は、前辺部22の前側側面24において第1方向D1の中央部24aから前辺部22の一方の端部22aに向かって第1方向D1に沿って取り付けられている。一方、図4に示すように、第2バイブレータ44の振動部は、前辺部22の前側側面24において第1方向D1の中央部24aから前辺部22の他方の端部22bに向かって第1方向D1に沿って取り付けられている。
【0040】
バイブレータ40を前側側面24に取り付けておくことで、バイブレータ40による振動を均し枠体20全体に伝えることができ、かつ、万が一バイブレータ40が均し枠体20から脱落したとしても、均されたコンクリート表面に落下することを防止できる。また、バイブレータ40を前側側面24に取り付けておくことで、まずバイブレータに近い前辺部22から強い振動を所定箇所の生コンに伝えて脱泡や均質化を進め、その後に同じ箇所を後辺部22が通過することで、コンクリート表面をより良好に均すことができる。さらに、第1バイブレータ42と第2バイブレータ44とを前辺部22の前側側面24に対称に配置することで、均し枠体20の全長が長い場合であっても、バイブレータ40による振動を、均し枠体20の第1方向D1の全体に、略均等に伝えることができる。
【0041】
図4に示すように、バイブレータ40としては、均し枠体20に固定される棒状の振動部が、図示しないモータ部に対して、柔軟な接続部を介して接続されているものを用いることができる。ただし、バイブレータ40としては、振動部とその駆動部が別体となっているものであってもよく、振動部とその駆動部とが一体となっているものであってもよい。
【0042】
コンクリート表面均し装置10によるコンクリート床面の施工方法の第1段階では、図4に示すように施工領域66を囲む施工枠62を形成し、コンクリート表面均し装置10を準備する。図4に示す例では、施工枠62は、施工済みのコンクリート床面で構成されるが、これとは異なり、木、樹脂または金属等で構成されるものであってもよい。図4に示すように、施工領域66には、必要に応じて溶接金網などの補強材等が設けられる。
【0043】
図4に示すように、コンクリート床面の施工に用いるコンクリート表面均し装置10は、施工領域66の一辺より、第1方向D1(図1参照)の長さが長いものを準備する。特に、コンクリート表面均し装置10は、施工領域66の一辺より、第1方向D1(図1参照)の長さが僅かに長いものを準備することが、コンクリート表面均し装置10の両端を抑えながら施工しやすいため好ましい(図6図8参照)。
【0044】
図5は、コンクリート床面の施工方法の第2段階を示す概念図である。図4および図5に示すように、コンクリート床面の施工方法の第2段階では、施工領域66に生コンを投入する(いわゆるコンクリートの打ち込み)。次に、図5に示すように、施工領域66に流し込まれた生コンにバイブレータ72を挿入して、生コンから大きな気泡を取り除き、セメントと骨材とを均質にする、いわゆる締め固めの一部の作業を行うことも好ましい。
【0045】
図6は、コンクリート床面の施工方法の第3段階を示す概念図である。図5および図6に示すように、コンクリート床面の施工方法の第3段階では、施工領域66を横切るように、コンクリート表面均し装置10をセットする。
【0046】
図7および図8は、コンクリート床面の施工方法の第4および第5段階を示す概念図である。図6図8に示すように、コンクリート床面の施工方法の第4および第5段階では、コンクリート表面均し装置10に設けられるバイブレータ40で均し枠体20を振動させながら、均し枠体20を第2方向D2(図1参照)へ移動させる。この際、図6図8に示すように、施工領域66を挟む施工枠62の一方の上面62aに均し枠体20における第1方向D1の一方側20aを押し当て、施工領域66を挟む施工枠62の他方の上面62bに均し枠体20における第1方向D1の他方側20bを押し当てつつ、均し枠体20を移動させる。
【0047】
均し枠体20の下面を施工枠62の上面62a、62bに押し当てながら、コンクリート表面均し装置10を第2方向D2に移動させることにより、均し枠体20の前辺部22と後辺部26とで施工領域66に投入された生コン70を均す工程が実施される。図6図8に示すように、コンクリート表面均し装置10で生コン70を均す工程では、均し枠体20の一方側20aを保持する作業者と、均し枠体20の他方側20bを保持する作業者を含む2人以上の作業者により、均し枠体20の移動が実施されることが好ましい。
【0048】
生コン70を均す工程において、均し枠体20の下面を施工枠62の上面62a、62bに押し当てながら移動させる作業は、均し枠体20がバイブレータ40により振動しており施工枠62との摩擦抵抗が小さくなるため、比較的小さい力で行うことができる。また、均し枠体20がバイブレータ40により振動していることで、施工領域66に投入された生コン70に振動が伝わり、生コン70を均す工程において、いわゆる締め固めの工程を行うことができる。
【0049】
また、図7に示すように、施工領域66の生コン70は、均し枠体20が生コン70の上面を通過する際に、前辺部22の底面23と後辺部26の底面27とで2回均される。また、前辺部22の底面23と後辺部26の底面27とは、施工枠の上面62a、62bに押し当てられているため高さが一定に保たれる。したがって、均し枠体20が通過した後の生コン70の上面には、高さが一定に均された表面が形成される。
【0050】
さらに、図7に示すように、生コン70を均す工程において、均し枠体20の移動方向D4下流側の、表面が均されていない施工領域66の生コン70の一部をスコップ74で掬って、均し枠体20の上から枠内領域38に投入する作業を行ってもよい。すなわち、均し枠体20の前辺部22が通過する前後の生コン70の表面を作業者が監視し、前辺部22が通過しても表面が平らになっていない部分を発見した場合、該当する部分の枠内領域38に上から生コン70を補充することで、後辺部26の通過時に表面が均され、均し枠体20の通過後に高さが一定に均された表面を全体的に形成できる。なお、枠内領域38の第1方向D1に沿う方向の幅を400~1000mm程度とすることは、枠内領域38に上から補充した生コン70を、目的とする位置に効率的に補充する観点から好ましい。
【0051】
このように、生コン70を均す工程では、生コン70に振動を与えて気泡等を抜きながら、均し枠体20が1回通過する間に前辺部22と後辺部26とで2回生コン70の表面を均すことができるため、高さが一定に均された表面を効率的に形成することが可能である。図8に示すように、均し枠体20が通過することにより表面が均された施工領域66について、トンボ76等により表面を仕上げる工程が行われてもよい。
【0052】
図9は、コンクリート床面の施工方法の第6段階を示す概念図である。図6図8に示すように、均し枠体20によって施工領域66全体の生コン70の表面を均したのち、図9に示すように、コンクリート表面均し装置10は作業者によって次の施工領域に運ばれる。
【0053】
以上のように、コンクリート表面均し装置10によれば、施工中のコンクリート表面の高さの計測を頻繁に行わなくても、生コン70の表面を一定の高さに効率的に均すことができる。また、コンクリート表面均し装置10は、生コン70に振動を与えて気泡の脱気およびコンクリートの均質化を行いながら、施工するコンクリート(生コン70)の表面を均すことができる。また、コンクリート表面均し装置10は、回転ローラタイプの均し装置に比べて軽量で取り扱いが容易であり、施工工程がシンプルである。
【0054】
以上、実施形態を挙げて本発明に係るコンクリート表面均し装置10およびこれを用いたコンクリート床面の施工方法について説明してきたが、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではなく、他の多くの実施形態や変形例を含むことは言うまでもない。たとえば、コンクリート表面均し装置10は2つのバイブレータである第1バイブレータ42および第2バイブレータ44を有しており、第2方向D2に対して左右対称であるが、コンクリート表面均し装置は左右非対称であってもよい。
【0055】
図10は、第2実施形態に係るコンクリート表面均し装置110の平面図である。コンクリート表面均し装置110では、コンクリート表面均し装置110の均し枠体120に、第1バイブレータ142が1つのみ設けられている。
【0056】
均し枠体120において、前辺部122と後辺部126とは、第1接続辺部32と、第2接続辺部34と、1つの中間接続辺部36によって接続されており、均し枠体120は、2つの枠内領域38を有する。コンクリート表面均し装置110が有する中間接続辺部36や枠内領域38およびバイブレータの数は、均し枠体120の第1方向D1に沿う全長などに応じて、適宜変更することができる。
【0057】
図10に示す第2実施形態に係るコンクリート表面均し装置110についても、図1図9を用いて説明した第1実施形態に係るコンクリート表面均し装置10との共通点に関しては、コンクリート表面均し装置10と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0058】
10…コンクリート表面均し装置
20…均し枠体
20a…一方側
20b…他方側
22…前辺部
22a…一方の端部
22b…他方の端部
23、27、33…底面
24…前側側面
24a…中央部
W1…第2方向の幅
W2…高さ方向の幅
26…後辺部
26a…一方の端部
26b…他方の端部
30…接続辺部
32…第1接続辺部
34…第2接続辺部
36…中間接続辺部
38…枠内領域
40…バイブレータ
42…第1バイブレータ
44…第2バイブレータ
D1…第1方向
D2…第2方向
D3…高さ方向
D4…移動方向
62…施工枠
62a…一方の上面
62b…他方の上面
66…施工領域
70…生コン
72…バイブレータ(均し装置とは別もの)
74…スコップ
76…トンボ

【要約】
【課題】比較的軽量で簡易な手段で、効率的にコンクリートの表面を均すことができるコンクリート表面均し装置
【解決手段】第1方向に延びる前辺部と、前記前辺部と略平行に前記第1方向に延びる後辺部と、前記第1方向とは垂直である第2方向に延びて前記前辺部と前記後辺部とを接続しており前記第1方向に互いに間隔を空けて配置される複数の接続辺部と、を有し、前記前辺部、前記後辺部および前記接続辺部により水平方向を囲まれかつ上下方向に貫通する平面視略矩形の枠内領域を形成し、前記前辺部および前記後辺部の底面は同一面上に位置する均し枠体と、前記均し枠体に取り付けられるバイブレータと、を有するコンクリート表面均し装置。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10