(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】スライドファスナー固定用枠体
(51)【国際特許分類】
A45C 13/10 20060101AFI20241010BHJP
A45C 5/03 20060101ALI20241010BHJP
A44B 19/22 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
A45C13/10 J
A45C5/03
A44B19/22
(21)【出願番号】P 2024013429
(22)【出願日】2024-01-31
【審査請求日】2024-02-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501454049
【氏名又は名称】太平洋通商株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089026
【氏名又は名称】木村 高明
(72)【発明者】
【氏名】松下 俊靖
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-129502(JP,A)
【文献】特公平05-065166(JP,B2)
【文献】特開2019-141219(JP,A)
【文献】特開2002-223821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45C 13/10
A45C 5/03
A44B 19/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライドファスナーにより開閉可能に固定される
ソフトケースとしてのスーツケースハーフの開口周縁部に装着されるスライドファスナー固定用枠体であって、
前記開口周縁部を収納固定する第一溝部を有するスーツケースハーフ取付固定部と、
前記スーツケースハーフ取付固定部に隣接して設けられ、全体細長帯状に形成され、務歯列が幅方向一端部に固定されたファスナー固定片の他端部を長さ方向に移動可能な状態で収納して前記ファスナー固定片を前記スーツケースハーフへ固定する第二溝部を有する第一のファスナー固定部と、
を有することを特徴とするスライドファスナー固定用枠体。
【請求項2】
前記ファスナー固定片の前記他端部には、前記第二溝部に長さ方向に移動可能な状態で収納されるファスナー片固定部材が固定されていることを特徴とする請求項1に記載のスライドファスナー固定用枠体。
【請求項3】
前記ファスナー片固定部材は、前記ファスナー固定片の前記他端部において長さ方向に互いに所定間隔を置いて固定された複数の固定子により形成されていることを特徴とする請求項2記載のスライドファスナー固定用枠体。
【請求項4】
前記第一のファスナー固定部は、前記スーツケースハーフに取り付けられた状態において前記スーツケースハーフ取付固定部の内方側に設けられていることを特徴とする請求項1記載のスライドファスナー固定用枠体。
【請求項5】
前記第一溝部と前記第二溝部とは幅方向において互いに反対方向に開口するように形成されていることを特徴とする請求項1記載のスライドファスナー固定用枠体。
【請求項6】
前記第一のファスナー固定部に隣接して、前記スーツケースハーフに取り付けられた状態で前記スーツケースハーフの内方側に設けられ、前記スーツケースハーフの内部に設けられた収納部を開閉し、前記務歯列が前記幅方向一端部に固定された前記ファスナー固定片の前記他端部を長さ方向に移動可能な状態で収納して前記ファスナー固定片を前記スーツケースハーフへ固定する第三溝部を有する第二のファスナー固定部を有することを特徴とする請求項1記載のスライドファスナー固定用枠体。
【請求項7】
前記ファスナー固定片の前記他端部には、前記第二溝部に長さ方向に移動可能な状態で収納されるファスナー片固定部材が固定されており、前記ファスナー片固定部材は、前記ファスナー固定片の前記他端部において長さ方向に互いに所定間隔を置いて固定された複数の固定子により形成されていることを特徴とする請求項6記載のスライドファスナー固定用枠体。
【請求項8】
前記第三溝部は前記第二溝部とは幅方向において互いに反対方向に開口するように形成されていることを特徴とする請求項6記載のスライドファスナー固定用枠体。
【請求項9】
前記スーツケースハーフの前記開口周縁部に固定されるように全体四角枠状に形成されていることを特徴とする請求項1記載のスライドファスナー固定用枠体。
【請求項10】
合成樹脂製であり、前記開口周縁部は前記第一溝部に収納された状態で接着固定されることを特徴とする請求項1記載のスライドファスナー固定用枠体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライドファスナー固定用枠体に関する。
【背景技術】
【0002】
スーツケースにはケース本体の素材がナイロンやポリエステル等のソフトケースと、ケース本体がポリカーボネートやアルミ合金等の硬度の大きい素材により形成されたハードケースがある。ソフトケースの場合、ハードケースとは異なりスーツケースハーフの開口周縁部に枠体が設けられておらず、ケース本体の開閉は、ケース本体の周縁部に装着されたファスナーにより行われる。
【0003】
ソフトケースの場合、ファスナーはスーツケースハーフの開口周縁部に特殊なミシンを使用してケース本体の周縁部に、樹脂製のコイルファスナーの務歯列が固定されたファスナー固定布片材(テープ材)を縫着してケース本体周縁部に固定される。
【0004】
開口周縁部に枠体が設けられていないソフトケースの場合、スーツケースハーフの剛性がどうしても低くなり、その結果、スーツケースハーフの上面部が反りやすく、ケース本体内側へ凹む場合がある。
【0005】
この現象はケース本体が大きくなるほど発生しやすい。枠体が設けられていないスーツケースは、外方からの力がケース本体に加わった場合にはケース本体が凹み、内部に収納されている収納物に外力が及び、収納物に影響を及ぼす場合がある。
【0006】
また、従来のソフトケースにあっては、ソフトケースを横置きにしてファスナーを開閉する際には、スーツケースハーフそのものの重みによりスーツケースハーフそれぞれに固定されたファスナー同士が上下方向において重なってしまう場合がある。
【0007】
このような場合に使用者が無理にスライダーを動かしてファスナーを閉じようとすると、スライダーが務歯列に噛んでしまいスムーズにスライダーを引くことができない場合があり、ファスナーの破損につながってしまう、という問題があった。
【0008】
このような破損によりファスナーを修理する場合、縫製固定部位をほどいてから交換等を実施する必要があり、修理作業が煩雑であると共に、修理費が嵩むこととなる。
【0009】
鞄等に利用可能なファスナー構造の例として、特許文献1には、スライドファスナーの左右務歯列が圧着され、鞄等の開口縁部が挿入固定される開口部の構造が開示されている。この開口部の構造は、鞄等の開口部の見栄えをよくしスライドファスナーの縫着を容易に行えるものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、このような従来の技術によっては、上記問題点を解決することは不可能である。
【0012】
本発明は、ソフトケースにおいてスーツケースの収納物に外部からの衝撃等の影響を及ぼさないと共に、スーツケース開閉時に円滑にファスナーを開閉でき、ファスナーの破損のリスクを低減するスライドファスナー固定用枠体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載のスライドファスナー固定用枠体は、スライドファスナーにより開閉可能に固定されるソフトケースとしてのスーツケースハーフの開口周縁部に装着されるスライドファスナー固定用枠体であって、前記開口周縁部を収納固定する第一溝部を有するスーツケースハーフ取付固定部と、前記スーツケース取付固定部に隣接して設けられ、全体細長帯状に形成され、務歯列が幅方向一端部に固定されたファスナー固定片の他端部を長さ方向に移動可能な状態で収納して前記ファスナー固定片部を前記スーツケースハーフへ固定する第二溝部を有する第一のファスナー固定部と、を有することを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載のスライドファスナー固定用枠体は、前記ファスナー固定片の前記他端部には、前記第二溝部に長さ方向に移動可能な状態で収納されるファスナー片固定部材が固定されていることを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載のスライドファスナー固定用枠体は、前記ファスナー片固定部材は、前記ファスナー固定片の前記他端部において長さ方向に互いに所定間隔を置いて固定された複数の固定子により形成されていることを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載のスライドファスナー固定用枠体は、前記第一のファスナー固定部は、前記スーツケースハーフに取り付けられた状態において前記スーツケースハーフ取付固定部の内方側に設けられていることを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載のスライドファスナー固定用枠体は、前記第一溝部と前記第二溝部とは幅方向において互いに反対方向に開口するように形成されていることを特徴とする。
【0018】
請求項6に記載のスライドファスナー固定用枠体は、前記第一のファスナー固定部に隣接して、前記スーツケースハーフに取り付けられた状態で前記スーツケースハーフの内方側に設けられ、前記スーツケースハーフの内部に設けられた収納部を開閉し、前記務歯列が前記幅方向一端部に固定された前記ファスナー固定片の前記他端部を長さ方向に移動可能な状態で収納して前記ファスナー固定片を前記スーツケースハーフへ固定する第三溝部を有する第二のファスナー固定部を有することを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載のスライドファスナー固定用枠体は、前記ファスナー固定片の前記他端部には、前記第二溝部に長さ方向に移動可能な状態で収納されるファスナー片固定部材が固定されており、前記ファスナー片固定部材は、前記ファスナー固定片の前記他端部において長さ方向に互いに所定間隔を置いて固定された複数の固定子により形成されていることを特徴とする。
【0020】
請求項8に記載のスライドファスナー固定用枠体は、前記第三溝部は前記第二溝部とは幅方向において互いに反対方向に開口するように形成されていることを特徴とする。
【0021】
請求項9に記載のスライドファスナー固定用枠体は、前記スーツケースハーフの前記開口周縁部に固定されるように全体四角枠状に形成されていることを特徴とする。
【0022】
請求項10に記載のスライドファスナー固定用枠体は、合成樹脂製であり、前記開口周縁部は前記第一溝部に収納された状態で接着固定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
請求項1のスライドファスナー固定用枠体は、スライドファスナーにより開閉可能に固定されるスーツケースハーフの開口周縁部に装着されるスライドファスナー固定用枠体であって、前記開口周縁部を収納固定する第一溝部を有するスーツケースハーフ取付固定部と、前記スーツケースハーフ取付固定部に隣接して設けられ、全体細長帯状に形成され、務歯列が幅方向一端部に固定されたファスナー固定片の他端部を長さ方向に移動可能な状態で収納して前記ファスナー固定片を前記スーツケースハーフへ固定する第二溝部を有する第一のファスナー固定部と、を有する。
【0024】
これにより、従来のソフトケースのようにファスナーが。ファスナー固定部材であるテープを介してスーツケースハーフに直接に縫合固定されておらず、ファスナー固定片部を枠体の溝部から長さ方向に沿って引きぬくことにより、迅速、簡易に交換することが可能となる。そのため、仮にスライドファスナーが破損した場合であっても、縫合固定を解除し、再度縫合固定する必要がなくなり、その結果、修理コストを大幅に低減できるソフトケースを提供することが可能となる。
【0025】
また、スーツケースハーフの周縁部に枠体が固定され、枠体を介してスライドファスナーが取り付けられることから、ソフトケースの本体へ外部からの衝撃が加わった場合であっても、ケース本体の剛性を維持することができ、スーツケース内に収納した収納物を保護することができる。
また、経年時のスーツケース本体の反り等の変形を阻止することもできる。
【0026】
請求項2のスライドファスナー固定用枠体は、前記ファスナー固定片の前記他端部には、前記第二溝部に長さ方向に移動可能な状態で収納されるファスナー片固定部材が固定されている。これにより、スーツケースハーフが撓んだ場合にスライドファスナーのファスナー固定片が破損することを低減させることができる。
【0027】
請求項3に記載のスライドファスナー固定用枠体は、前記ファスナー片固定部材が、前記ファスナー固定片の前記他端部において長さ方向に互いに所定間隔を置いて遊嵌状態で固定された複数の固定子により形成されている。これにより、ファスナー固定片の他端部を第二溝部に安定収納させながら、ファスナー固定片の他端部の柔軟性を保ち、スライドファスナーの破損を低減することができる。
【0028】
請求項4に記載のスライドファスナー固定用枠体は、前記第一のファスナー固定部が、前記スーツケースハーフに取り付けられた状態において前記スーツケースハーフ取付固定部の内方側に設けられている。これにより、スライドファスナーがスーツケースハーフの外面よりも内方側へ配置されるため、外力によるスライドファスナーへの衝撃を低減することができる。また、スライドファスナーがスーツケースの外面から目立たなくなり、外観品質に優れたスーツケースを構成することができる。
【0029】
請求項5に記載のスライドファスナー固定用枠体は、前記第一溝部と前記第二溝部とは幅方向において互いに反対方向に開口するように形成されている。これにより、スライドファスナー固定用枠体に対し、スーツケースハーフの開口周縁部を、ファスナー固定片と略平面方向に配置し、スーツケースハーフの端部側においてスライドファスナーにより開閉可能な開口部を形成することができる。
【0030】
請求項6に記載のスライドファスナー固定用枠体は、前記第一のファスナー固定部に隣接して、前記スーツケースハーフに取り付けられた状態で前記スーツケースハーフの内方側に設けられ、前記スーツケースハーフの内部に設けられた収納部を開閉し、前記務歯列が前記幅方向一端部に固定された前記ファスナー固定片の前記他端部を長さ方向に移動可能な状態で収納して前記ファスナー固定片を前記スーツケースハーフへ固定する第三溝部を有する第二のファスナー固定部を有する。
【0031】
これにより、スライドファスナー固定用枠体は、スーツケースハーフの内部に設けられた収納部を開閉させるスライドファスナーにおいても、スーツケースハーフを開閉させるスライドファスナーと同様に、収納部内の収納物に外部からの衝撃等の影響を及ぼさないと共に、開閉時に円滑にスライドファスナーを開閉でき、スライドファスナーの破損のリスクを低減することができる。
【0032】
請求項7に記載のスライドファスナー固定用枠体は、前記ファスナー固定片の前記他端部には、前記第二溝部に長さ方向に移動可能な状態で収納されるファスナー片固定部材が固定されており、前記ファスナー片固定部材は、前記ファスナー固定片の前記他端部において長さ方向に互いに所定間隔を置いて遊嵌状態で固定された複数の固定子により形成されている。これにより、ファスナー固定片の他端部を第二溝部に安定収納させながら、ファスナー固定片の他端部の柔軟性を保つことができる。
【0033】
請求項8に記載のスライドファスナー固定用枠体は、前記第二溝部と前記第三溝部とは幅方向において互いに反対方向に開口するように形成されている。スライドファスナーによる開口部を、スライドファスナー固定用枠体を挟んだ異なる位置に形成することができる。
【0034】
請求項9に記載のスライドファスナー固定用枠体は、前記スーツケースハーフの前記開口周縁部に固定されるように全体四角枠状に形成されている。これにより、スーツケースハーフの開口部の剛性を高めることができる。
【0035】
請求項10に記載のスライドファスナー固定用枠体は、合成樹脂製であり、前記開口周縁部は前記第一溝部に収納された状態で接着固定される。そのため、スーツケースハーフと、スライドファスナー固定用枠体とを高い強度で容易に接続させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】固定用枠体を装着したスーツケースの一部の断面斜視図である。
【
図3】ファスナー固定片に設けられたファスナー片固定部材周辺の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、スライドファスナー3A(3)の固定用枠体2(スライドファスナー固定用枠体)を装着したスーツケース1の一部の断面斜視図である。本実施形態のスーツケース1は、略直方体の箱状に形成されたソフトケースである(
図1では不図示)。
【0038】
スーツケース1は、直方体状のケース本体の側面にスライドファスナー3Aにより開閉可能な開口部12を有する。スーツケース1は、例えば、スライドファスナー3Aが開状態の際、スーツケース1の開口部12が形成されていない側面に設けられたヒンジ部等により、2つのスーツケースハーフ11に蝶番状に開閉可能に形成される。スーツケースハーフ11は、例えば、荷物を出し入れするための開口部111を有した底浅の長矩形箱状に形成される。
【0039】
図2は、固定用枠体2の断面図である。
図2では、対向して配置される2つのスライドファスナー固定用枠体2のうち、一方を拡大して示している。
【0040】
固定用枠体2は、合成樹脂製で形成される。スライドファスナー固定用枠体2は、スライドファスナー3Aにより開閉可能に固定されるスーツケースハーフ11の開口周縁部112に装着される。固定用枠体2は、開口周縁部112に沿うように長尺に形成される。本実施形態の固定用枠体2は、スーツケースハーフ11の開口周縁部112に固定されるように、全体四角枠状に形成されている。従って、固定用枠体2は、開口周縁部112に沿って長尺に形成される。
【0041】
なお、スライドファスナー固定用枠体2は、開口周縁部112の形状等に応じて略コ字状、U字状、L字状又は直線状に長尺に形成してもよい。
【0042】
スライドファスナー3Aは、全体が細長の帯状に形成されたシート状のファスナー固定片31と、ファスナー固定片31の幅方向Wの一端部31aに固定された務歯列32と、務歯列32とは反対側のファスナー固定片31の他端部31bに固定されるファスナー片固定部材33と、を備える。従って、スライドファスナー3Aは、全体が細長帯状に形成される。
【0043】
ファスナー片固定部材33は、
図3に示すように、ファスナー固定片31の他端部31bにおいて、長さ方向Lに互いに所定間隔を置いて固定された複数の固定子331により形成されている。固定子331は、側面視において略C環状に形成される。固定子331は、互いに対向する爪部331aを有する。固定子331は、爪部331aにより、ファスナー固定片31の他端部31bを幅方向Wの端部側から挟持して、ファスナー固定片31に対して固定される。
【0044】
固定用枠体2は、スーツケースハーフ取付固定部4と、複数のファスナー固定部(第一のファスナー固定部5、第二のファスナー固定部6)と、を備える。
【0045】
スーツケースハーフ取付固定部4は、スーツケースハーフ11の開口周縁部112を収納固定する第一溝部41を有する。スーツケースハーフ11の開口周縁部112は、第一溝部41に収納された状態で接着固定される。
【0046】
第一のファスナー固定部5は、スライドファスナー固定用枠体2がスーツケースハーフ11に取り付けられた状態において、スーツケースハーフ取付固定部4に対し、スーツケースハーフ11の内方D1側に隣接して設けられる。第一のファスナー固定部5は、ファスナー固定片31をスーツケースハーフ11へ固定する第二溝部51を有する。
【0047】
第一溝部41と第二溝部51とは、スライドファスナー固定用枠体2の幅方向Wにおいて互いに反対方向に開口するように形成されている。また、第二溝部51は、溝幅方向に対向するように突出した突出部52,53を有する。突出部52は、突出部53よりも第二溝部51の底部側に形成される。
【0048】
対向する突出部52,53同士の間隙は、突出部52間に配置されるファスナー固定片31の厚みよりも大きく形成される。また、突出部52同士の間隙は、ファスナー片固定部材33の固定子331の外形よりも小さく形成される。
【0049】
第二溝部51は、ファスナー固定片31とファスナー片固定部材33とを遊嵌状態で収納するため、ファスナー固定片31の他端部31bを長さ方向Lに移動可能な状態で収納する。換言すると、ファスナー片固定部材33は、第二溝部51に長さ方向Lに移動可能な状態で収納される。一方、第二溝部51は、突出部52によりファスナー固定片31の幅方向Wへの抜けを規制する。
【0050】
第二のファスナー固定部6は、固定用枠体2が、スーツケースハーフ11に取り付けられた状態で、第一のファスナー固定部5に対し、スーツケースハーフ11の内方D1側に隣接して設けられる。
また、第二のファスナー固定部6は、スライドファスナー3B(3)のファスナー固定片31を、スーツケースハーフ11へ固定する第三溝部61を有する。
スライドファスナー3Bは、第二溝部51に収納されるスライドファスナー3A(3)と同様の構成を有する。本実施形態のスライドファスナー3Bの説明では、スライドファスナー3Aと同様の構成について、同一の符号を付す等して、その説明を省略又は簡略化する。
【0051】
第二溝部51と第三溝部61とは、幅方向Wにおいて互いに反対方向に開口するように形成されている。第三溝部61は、溝幅方向に対向するように突出した突出部62を有する。
【0052】
対向する突出部62同士の間隙も、突出部62間に配置されるファスナー固定片31の厚みよりも大きく形成される。また、突出部62同士の間隙は、ファスナー片固定部材33の固定子331の外形よりも小さく形成される。
【0053】
スーツケースハーフ11の内部には、収納部7が設けられる。収納部7には、スーツケース1に収納する荷物等の収納物が収納される。第二のファスナー固定部6は、この収納部7を開閉するスライドファスナー3Bをさらに収納する。
【0054】
第三溝部61は、ファスナー固定片31とファスナー片固定部材33とを遊嵌状態で収納するため、ファスナー固定片31の他端部31bを長さ方向Lに移動可能な状態で収納する。換言すると、スライドファスナー3Bのファスナー片固定部材33は、第三溝部61に長さ方向Lに移動可能な状態で収納される。一方、第三溝部61は、突出部62によりファスナー固定片31の幅方向Wへの抜けが規制される。
【0055】
スーツケース固定用枠体2は、第二溝部51の開口方向に延設される延設板部21を有する。延設板部21は、スライドファスナー3Aに対し、スーツケースハーフ11の内方D1側に設けられていることから、スライドファスナー3Aに対して外力が加わった場合であっても、内方D1方向への凹みを所定の位置で規制するため、スライドファスナー3Aの破損等を防止することができる。
【0056】
本実施の形態にあっては、従来のソフトケースのようにファスナーがテープを介してスーツケースハーフに直接に縫合固定されておらず、ファスナー固定片31を固定用枠体2の第二溝部51から長さ方向に沿って引きぬくことにより、迅速、簡易に交換することが可能となる。そのため、仮にスライドファスナーが破損した場合であっても、修理コストを大幅に低減できるソフトケースを提供することが可能となる。
【0057】
また、スーツケースハーフの周縁部に固定用枠体2が固定され、固定用枠体2を介してスライドファスナーがスーツケースハーフ11に取り付けられることから、ソフトケース本体へ外部からの衝撃が加わった場合であっても、ケース本体の剛性を維持することができ、スーツケース1内に収納した収納物を保護することができる。また、経年時のスーツケース1の反り等の変形を阻止することもできる。
【0058】
本実施形態に係るスライドファスナーの固定用枠体2は、ファスナー固定片31の前記他端部には、前記第二溝部51に長さ方向に移動可能な状態で収納されるファスナー片固定部材33が固定されている。これにより、スーツケースハーフが撓んだ場合にスライドファスナーのファスナー固定片31が破損することを低減させることができる。
【0059】
また、本実施の形態に係るスライドファスナー固定用枠体2にあっては、ファスナー片固定部材33が、ファスナー固定片31の他端部において長さ方向に互いに所定間隔を置いて固定された複数の固定子331により遊嵌された状態で、ファスナー固定片31の他端部を第二溝部51に安定的に収納させながら、ファスナー固定片31の他端部の柔軟性を保ち、スライドファスナーの破損を低減することができる。
【0060】
また、第一のファスナー固定部5が、スーツケースハーフに取り付けられた状態においてスーツケースハーフ取付固定部4の内方側に設けられているため、スライドファスナー3がスーツケースハーフの外面よりも内方側へ配置されるため、外力によるスライドファスナーへの衝撃を低減することができる。また、スライドファスナー3がスーツケースの外面から目立たなくなり、外観品質に優れたスーツケースを構成することができる。
【0061】
さらに、本実施の形態にあっては、スライドファスナー固定用枠体2は、第一溝部41と第二溝部51とは幅方向において互いに反対方向に開口するように形成されているため、スライドファスナー固定用枠体2に対し、スーツケースハーフ11の開口周縁部を、ファスナー固定片31と略平面方向に配置し、スーツケースハーフ11の端部側においてスライドファスナー3により開閉可能な開口部12を形成することができる。
従って、スライドファスナー3をスーツケースハーフ11の上端面部の一般面よりも下方に配置することが可能となり、従来のソフトケースのようにケースの表面部にスライドファスナー3が表出することがなく、使用時においてスライドファスナー3を保護することができる。
【0062】
また、本実施の形態に係るスライドファスナー固定用枠体2は、第一のファスナー固定部5に隣接して、スーツケースハーフ11に取り付けられた状態でスーツケースハーフ11の内方側に設けられ、スーツケースハーフ11の内部に設けられた収納部7を開閉し、務歯列32が幅方向一端部に固定されたファスナー固定片31の他端部を長さ方向に移動可能な状態で収納してファスナー固定片31をスーツケースハーフ11へ固定する第三溝部61を有する第二のファスナー固定部6を有していることから、スライドファスナー固定用枠体2は、スーツケースハーフ11の内部に設けられた収納部7を開閉させるスライドファスナー3においても、スーツケースハーフ11を開閉させるスライドファスナー3と同様に、収納部7内の収納物に外部からの衝撃等の影響を及ぼさないと共に、開閉時に円滑にスライドファスナー3を開閉でき、スライドファスナー3の破損のリスクを低減することができる。
【0063】
また、本実施の形態にあっては、ファスナー片固定部材33は、ファスナー固定片31の他端部において長さ方向に互いに所定間隔を置いて遊嵌状態で固定された複数の固定子33により形成されている。これにより、ファスナー固定片31の他端部を第二溝部51に安定収納させながら、ファスナー固定片31の他端部の柔軟性を保つことができる。
【0064】
また、第二溝部51と第三溝部61とは幅方向において互いに反対方向に開口するように形成されていることから、スライドファスナー3による開口部を、スライドファスナー固定用枠体2を挟んだ異なる位置に形成することができる。
【0065】
また、本実施の形態に係るスライドファスナー固定用枠体2は、スーツケースハーフ11の開口周縁部112に固定されるように全体四角枠状に形成されている。これにより、スーツケースハーフ11の開口部12の剛性を高めることができる。
【0066】
また、スライドファスナー固定用枠体2は、合成樹脂製であり、開口周縁部112は第一溝部41に収納された状態で接着固定されていることから、スーツケースハーフ11と、スライドファスナー固定用枠体2とを高い強度で容易に接続させることができる。
【0067】
従って以上のように、本実施形態にあっては、スーツケースハーフ取付固定部4と、ファスナー固定部5,6とを備える固定用枠体2について説明した。このような固定用枠体2は、従来のソフトケースのようにスライドファスナー3がテープ状のファスナー固定片31を介してスーツケースハーフに直接に縫合固定する必要がないため、破損がし難く、また交換が必要となった場合であっても容易に交換作業を行うことができる。
【符号の説明】
【0068】
1 スーツケース
2 固定用枠体
3(3A,3B) スライドファスナー
4 スーツケースハーフ取付固定部
5 第一のファスナー固定部
6 第二のファスナー固定部
7 収納部
11 スーツケースハーフ
12 開口部
21 延設板部
31 ファスナー固定片
31a 一端部
31b 他端部
32 務歯列
33 ファスナー片固定部材
41 第一溝部
51 第二溝部
52,53 突出部
61 第三溝部
62 突出部
111 開口部
112 開口周縁部
331 固定子
331a 爪部
D1 内方
L 長さ方向
W 幅方向
【要約】
【課題】ソフトケースにおいてスーツケースの収納物に外部からの衝撃等の影響を及ぼさないと共に、スーツケース開閉時に円滑にファスナーを開閉でき、ファスナーの破損のリスクを低減するスライドファスナー固定用枠体を提供すること。
【解決手段】
スライドファスナー固定用枠体は、スライドファスナーにより開閉可能に固定されるスーツケースハーフの開口周縁部に装着される。また、スライドファスナー固定用枠体は、開口周縁部を収納固定する第一溝部を有するスーツケースハーフ取付固定部と、スーツケースハーフ取付固定部に隣接して設けられ、全体細長帯状に形成され、務歯列が幅方向一端部に固定されたファスナー固定片の他端部を長さ方向に移動可能な状態で収納して前記ファスナー固定片を前記スーツケースハーフへ固定する第二溝部を有する第一のファスナー固定部と、を有する。
【選択図】
図2