(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】光輝性塗料、光輝性塗膜、光輝性積層塗膜および塗装物
(51)【国際特許分類】
C09D 1/00 20060101AFI20241010BHJP
C09D 5/29 20060101ALI20241010BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20241010BHJP
B05D 5/06 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
C09D1/00
C09D5/29
C09D7/63
B05D5/06 101A
(21)【出願番号】P 2024084008
(22)【出願日】2024-05-23
【審査請求日】2024-06-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592084071
【氏名又は名称】大橋化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129104
【氏名又は名称】舩曵 崇章
(72)【発明者】
【氏名】杉本 威史
(72)【発明者】
【氏名】岸本 隆行
(72)【発明者】
【氏名】井口 悦将
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特許第7146311(JP,B2)
【文献】特許第7406176(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鱗片状インジウム粒子と、
可塑剤と、
溶剤と、からなる光輝性塗料であって、
前記鱗片状インジウム粒子は、
前記光輝性塗料の固形分100重量%中に20~70重量%含まれており、
前記可塑剤は、
脂肪族二塩基酸エステルであり前記光輝性塗料の固形分100重量%中に
30~80重量%含まれている、
光輝性塗料。
【請求項2】
鱗片状インジウム粒子と、
可塑剤と、
分散剤と、
溶剤と、からなる光輝性塗料であって、
前記鱗片状インジウム粒子は、
前記光輝性塗料の固形分100重量%中に
30~55重量%含まれており、
前記可塑剤は、
脂肪族二塩基酸エステルであり前記光輝性塗料の固形分100重量%中に
20~55重量%含まれて
おり、
前記分散剤は、
前記光輝性塗料の固形分100重量%中に10~30重量%含まれている、
光輝性塗料。
【請求項3】
可塑剤が、
マレイン酸ジオクチル(DOM)またはジエチルサクシネート(DESU)である、
請求項1に記載の光輝性塗料。
【請求項4】
可塑剤が、
マレイン酸ジオクチル(DOM)またはジエチルサクシネート(DESU)である、
請求項2に記載の光輝性塗料。
【請求項5】
鱗片状インジウム粒子と、
可塑剤と、からなる光輝性塗膜であって、
前記鱗片状インジウム粒子は、
前記光輝性塗膜100重量%中に20~70重量%含まれており、
前記可塑剤は、
脂肪族二塩基酸エステルであり前記光輝性塗膜100重量%中に
30~80重量%含まれている、
光輝性塗膜。
【請求項6】
鱗片状インジウム粒子と
可塑剤と、
分散剤と、
からなる光輝性塗膜であって、
前記鱗片状インジウム粒子は、
前記光輝性塗膜100重量%中に
30~55重量%含まれており、
前記可塑剤は、
脂肪族二塩基酸エステルであり前記光輝性塗膜100重量%中に
20~55重量%含まれて
おり、
前記分散剤は、
前記光輝性塗膜
100重量%中に10~30重量%含まれている、
光輝性塗膜。
【請求項7】
可塑剤が、
マレイン酸ジオクチル(DOM)またはジエチルサクシネート(DESU)である、
請求項5に記載の光輝性塗膜。
【請求項8】
可塑剤が、
マレイン酸ジオクチル(DOM)またはジエチルサクシネート(DESU)である、
請求項6に記載の光輝性塗膜。
【請求項9】
下塗り塗膜と、
この下塗塗膜の上に成膜された請求項5~8のいずれか1項に記載の光輝性塗膜と、
この光輝性塗膜の上に成膜された上塗り塗膜と、
を備えた光輝性積層塗膜。
【請求項10】
請求項9に記載の光輝性積層塗膜を有する、塗装物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光輝性塗料、光輝性塗膜、光輝性積層塗膜および塗装物に関する。
【0002】
樹脂筐体などに光輝性(鏡面性)を付与する手段としては、無電界めっき法や蒸着法などが知られている。しかしながら、めっき法は環境保護の観点、蒸着法は高額な設備投資が必要なことや生産性が低いなどの観点から、これらとは異なる鏡面意匠の形成方法が種々検討されてきた。
【0003】
このような鏡面意匠の形成方法として、例えば、銀コロイドや錯体銀溶液を用いた手法もあった。
【0004】
しかしながら、これらの手法においても、耐候性や耐食性などの問題があり、いずれも工業用向けに広く展開することは難しかった。
【0005】
そこで、近年、インジウム粒子を配合した塗料を用いて光輝性を付与する手法が検討されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、「(a)被塗物の上に直接又は間接的に設けられた、下塗塗料により形成された下塗塗膜層、及び、(b)前記下塗塗膜層の上に直接又は間接的に設けられた、蒸着インジウム薄膜フレークの顔料重量濃度(PWC)が72.7%以上である金属含有塗膜層、を有する塗装物であって、前記下塗塗料が、
(α)硬化剤としてイソシアネート化合物を含む2液型硬化性塗料、
(β)アクリル系ラッカー、
(γ)メラミン系塗料、又は、
(δ)1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有し、架橋硬化することにより3次元網目構造となる(メタ)アクリル系化合物と、重合開始剤を含み、(メタ)アクリル系化合物が、ジアクリレート化合物及びウレタン(メタ)アクリレートである、活性エネルギー線硬化性塗料、であり、
前記蒸着インジウム薄膜フレークの平均厚さが0.100μm以下0.010μm以上であり、累積50%体積粒子径D50が1.00μm以下であり、
前記蒸着インジウム薄膜フレークの粒径と、該粒径における蒸着インジウム薄膜フレークの体積割合との関係を示す体積基準の粒度分布において、第1のピークと、該第1のピークよりも粒径が大きい第2のピークとを有し、
前記第1のピークにおける蒸着インジウム薄膜フレークの体積V1と、前記第2のピークにおける蒸着インジウム薄膜フレークの体積V2とが、(V1/V2)×100≧25%、を満たし、
前記第1のピークにおける蒸着インジウム薄膜フレークの粒径P1と、前記第2のピークにおける蒸着インジウム薄膜フレークの粒径P2とが、6.0≦P2/P1≦12を満たし、
前記塗装物の24GHz帯及び78GHz帯における電波透過率がいずれも75%以上である、ことを特徴とする塗装物。」が記載され、これによって「鏡面意匠及び電波透過性に優れ、塗膜形成温度が低い塗膜を有する塗装物を提供する」ことができるとある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、インジウム粒子は非常に高価な材料であるため塗料や塗装物などが高額になってしまいがちであった。
【0009】
高い光輝性を確保しようとすると、例えば、上記特許文献1にあるように、顔料重量濃度(塗料固形分100重量%中における顔料の重量%)が70重量%を超える程度まで、インジウム粒子(特許文献1における、蒸着インジウム薄膜フレーク)を配合せざるをえなかったのである。
その一方で、インジウム粒子を用いた塗膜などの特徴として挙げられる電波透過性に関して、インジウム粒子の顔料重量濃度が高くなると電波透過性が低くなる傾向があった。
【0010】
本発明は、上述の事柄に留意してなされたものであって、インジウム粒子の配合量が比較的少なくても光輝性を確保することができる光輝性塗料、光輝性塗膜、光輝性積層塗膜および塗装物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、鱗片状インジウム粒子と、可塑剤と、溶剤と、からなる光輝性塗料などとした。具体的な態様を以下に列挙する。
【0012】
(態様1)鱗片状インジウム粒子と、可塑剤と、溶剤と、からなる光輝性塗料であって、前記鱗片状インジウム粒子は、前記光輝性塗料の固形分100重量%中に20~70重量%含まれており、前記可塑剤は、脂肪族二塩基酸エステルであり前記光輝性塗料の固形分100重量%中に10~85重量%含まれている、光輝性塗料である。
鱗片状インジウム粒子の含有量は、光輝性塗料の固形分100重量%中に好ましくは25~60重量%、より好ましくは30~50重量%である。
【0013】
この光輝性塗料は、鱗片状インジウム粒子が、光輝性塗料の固形分100重量%中に20~70重量%という比較的少ない含有量であっても、十分な光輝性を確保することができる。
また、鱗片状インジウム粒子の含有量が比較的少ないため、電波透過性にも優れる。
【0014】
(態様2)可塑剤が、マレイン酸ジオクチル(DOM)またはジエチルサクシネート(DESU)である、態様1に記載の光輝性塗料である。
【0015】
この光輝性塗料は、鱗片状インジウム粒子の含有量が比較的少ない場合であっても、より一層、光輝性を確保することができる。
【0016】
(態様3)バインダー樹脂としてのポリマーを含んでいない、態様1または態様2に記載の光輝性塗料である。
ここで、「ポリマー」は分子量10,000以上のものを指す。さらに、「バインダー樹脂としてのポリマーを含んでいない」は、実質的にバインダー樹脂としての「ポリマー」を含んでいないことをいい、例えば、鱗片状インジウム粒子の表面処理剤などに「ポリマー」が使用されており、結果的に光輝性塗料に「ポリマー」が含まれてしまったものなどは除く趣旨である。より具体的には、例えば、塗料固形分100重量%中に、分子量10,000以上のポリマーを5重量%以上含んでいないことをいう。
【0017】
この光輝性塗料は、鱗片状インジウム粒子の含有量が比較的少ない場合であっても、より一層、光輝性を確保することができる。
【0018】
(態様4)分散剤を含む、態様1~3のいずれか1態様に記載の光輝性塗料である。
分散剤の含有量は、塗料固形分100重量%中に、固形分として、好ましくは5~30重量%、より好ましくは10~25重量%、最も好ましくは15~20重量%である。
【0019】
この光輝性塗料は、鱗片状インジウム粒子の分散性が高くなり、塗料の安定性などが高まる。
【0020】
(態様5)可塑剤がマレイン酸ジオクチル(DOM)またはジエチルサクシネート(DESU)であり、分散剤を含む、態様1~4のいずれか1態様に記載の光輝性塗料である。
【0021】
この光輝性塗料は、鱗片状インジウム粒子の含有量が比較的少ない場合であっても、より一層、光輝性を確保することができる。
【0022】
(態様6)鱗片状インジウム粒子と、可塑剤と、分散剤と、溶剤と、からなる光輝性塗料であって、前記鱗片状インジウム粒子は、前記光輝性塗料の固形分100重量%中に20~70重量%含まれており、前記可塑剤は、マレイン酸ジオクチル(DOM)またはジエチルサクシネート(DESU)であり前記光輝性塗料の固形分100重量%中に10~85重量%含まれている、光輝性塗料である。
鱗片状インジウム粒子の含有量は、光輝性塗料の固形分100重量%中に好ましくは25~60重量%、より好ましくは30~50重量%である。
【0023】
この光輝性塗料は、鱗片状インジウム粒子の配合量が比較的少ない場合であっても、より一層、光輝性を確保することができる。
【0024】
(態様7)鱗片状インジウム粒子と、可塑剤と、からなる光輝性塗膜であって、前記鱗片状インジウム粒子は、前記光輝性塗膜100重量%中に20~70重量%含まれており、前記可塑剤は、脂肪族二塩基酸エステルであり前記光輝性塗膜100重量%中に10~85重量%含まれている、光輝性塗膜である。
ここでも、鱗片状インジウム粒子の含有量は、光輝性塗料の固形分100重量%中に好ましくは25~60重量%、より好ましくは30~50重量%である。
【0025】
この光輝性塗膜は、鱗片状インジウム粒子が、光輝性塗膜100重量%中に20~70重量%という比較的低い含有量であっても、十分な光輝性を確保することができる。
また、鱗片状インジウム粒子の含有量が比較的少ないため、電波透過性にも優れる。
【0026】
(態様8)可塑剤がマレイン酸ジオクチル(DOM)またはジエチルサクシネート(DESU)である、態様7に記載の光輝性塗膜である。
【0027】
この光輝性塗膜は、鱗片状インジウム粒子の含有量が比較的少ない場合であっても、より一層、光輝性を確保することができる。
【0028】
(態様9)バインダー樹脂としてのポリマーを含んでいない、態様7または態様8に記載の光輝性塗膜である。
ここで、「ポリマー」は分子量10,000以上のものを指す。さらに、「バインダー樹脂としてのポリマーを含んでいない」は、実質的にバインダー樹脂としての「ポリマー」を含んでいないことをいい、例えば、鱗片状インジウム粒子の表面処理剤などに「ポリマー」が使用されており、結果的に光輝性塗料に「ポリマー」が含まれてしまったものなどは除く趣旨である。例えば、塗料固形分100重量%中に、分子量10,000以上のポリマーを5重量%以上含んでいないことをいう。
【0029】
この光輝性塗膜は、鱗片状インジウム粒子の含有量が比較的少ない場合であっても、より一層、光輝性を確保することができる。
【0030】
(態様10)分散剤を含む、態様7~9のいずれか1態様に記載の光輝性塗膜である。
分散剤の含有量は、光輝性塗膜100重量%中に、好ましくは5~30重量%、より好ましくは10~25重量%、最も好ましくは15~20重量%である。
【0031】
この光輝性塗膜は、鱗片状インジウム粒子の分散性が高いものである。
【0032】
(態様11)可塑剤が、マレイン酸ジオクチル(DOM)またはジエチルサクシネート(DESU)であり、分散剤を含む、態様7~10のいずれか1態様に記載の光輝性塗膜である。
【0033】
この光輝性塗膜は、鱗片状インジウム粒子の含有量が比較的少ない場合であっても、より一層、光輝性を確保することができる。
【0034】
(態様12)鱗片状インジウム粒子と、可塑剤と、分散剤と、からなる光輝性塗膜であって、前記鱗片状インジウム粒子は、前記光輝性塗膜100重量%中に20~70重量%含まれており、前記可塑剤は、マレイン酸ジオクチル(DOM)またはジエチルサクシネート(DESU)であり前記光輝性塗膜100重量%中に10~85重量%含まれている、光輝性塗膜である。
ここでも、鱗片状インジウム粒子の含有量は、光輝性塗料の固形分100重量%中に好ましくは25~60重量%、より好ましくは30~50重量%である。
【0035】
この光輝性塗膜は、鱗片状インジウム粒子の含有量が比較的少ない場合であっても、より一層、光輝性を確保することができる。
また、鱗片状インジウム粒子の含有量が比較的少ないため、電波透過性にも優れる。
【0036】
(態様13)下塗り塗膜と、この下塗塗膜の上に成膜された態様7~12のいずれか1態様に記載の光輝性塗膜と、この光輝性塗膜の上に成膜された上塗り塗膜と、を備えた光輝性積層塗膜である。
【0037】
この光輝性積層塗膜は、鱗片状インジウム粒子が光輝性塗膜中に比較的低い含有量であっても、十分な光輝性を確保することができる。
また、光輝性塗膜中に鱗片状インジウム粒子の含有量が比較的少ないため、電波透過性にも優れる。
【0038】
(態様14)態様13に記載の光輝性積層塗膜を有する、塗装物である。
【0039】
この塗装物は、十分な光輝性を確保することができる。
また、塗装物の積層塗膜は電波透過性に優れる。
【発明の効果】
【0040】
本発明により、インジウム粒子の配合量が比較的少なくても光輝性を確保することができる光輝性塗料、光輝性塗膜、光輝性積層塗膜および塗装物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、光輝性塗料、光輝性塗膜、光輝性積層塗膜および塗装物について例示説明する。本発明は以下の実施形態などに限定されるものではない。
【0042】
まず、光輝性塗料について例示説明する。光輝性塗料は、鱗片状インジウム粒子と、可塑剤と、溶剤と、からなる。光輝性塗料は、これらの材料に加えて分散剤などを含んでいてもよい。以下、各要素について例示説明する。
【0043】
1.鱗片状インジウム粒子
鱗片状インジウム粒子は、光輝性塗料を塗布して得られる光輝性塗膜などに光輝性を発現させるための材料である。鱗片状インジウム粒子として、例えば、純度95%以上のインジウムからなる薄片状インジウム粒子を用いることができる。
【0044】
鱗片状インジウム粒子は、概ね平坦な平坦面を有し、この平坦面に対して垂直な方向の厚みが概ね均一のインジウム粒子であり、その厚みは非常に薄く、平坦面の長さ(最も長い部分の長さ)が非常に長い形状の粒子である。より詳細には、鱗片状は、インジウム粒子のアスペクト比(平均粒子径/厚み)が非常に大きいことを指し、例えば、アスペクト比が2~1,000であることをいう。ここで、平均粒子径は、レーザー回折散乱法により測定される50%粒径(D50%)を指す。
【0045】
鱗片状インジウム粒子の厚さは、好ましくは0.005~2μm、より好ましくは0.01~0.1μmである。厚さが0.005μm以上の鱗片状インジウム粒子は、塗膜の光沢度が高くなる。一方、鱗片状インジウム粒子の厚さが2μm以下であれば、塗膜の外観を良好に維持することができる。特に、鱗片状インジウム粒子の厚さが0.1μm以下であれば、より金属調の塗膜が得られやすくなる。鱗片状インジウム粒子の厚さは、電子顕微鏡を用いて測定される。
【0046】
鱗片状インジウム粒子の平均粒子径は、好ましくは0.01~10μm、より好ましくは0.01~2μmである。鱗片状インジウム粒子の平均粒子径が0.01μm以上であれば、厚さが0.01μm以下の鱗片状インジウム粒子が得られやすい。一方、鱗片状インジウム粒子の平均粒子径が10μm以下であれば、滑らかな金属調の塗膜が得られやすくなる。
【0047】
鱗片状インジウム粒子は、有機溶剤などの溶剤に分散した液状またはペースト状の形態で用いてもよい。鱗片状インジウム粒子は、その表面が、脂肪酸やシランカップリング剤等の表面処理剤によって表面処理されたものや、透明性を有する樹脂で被覆されていてもよい。
【0048】
鱗片状インジウム粒子としては、蒸着による蒸着インジウム薄膜や圧延による圧延薄膜などを粉砕などして鱗片状としたものが挙げられる。これらの中でも、より金属調の塗膜が得られやすい点で、蒸着インジウム薄膜を粉砕などしたものが好ましい。
蒸着インジウム薄膜は、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどの基材フィルム上にインジウムを蒸着して、基材フィルム上に蒸着インジウム薄膜を形成した後、形成された蒸着インジウム薄膜を基材フィルムから剥離することなどで得られる。蒸着インジウム薄膜を不定形に粉砕することで、鱗片状インジウム粒子となる。
このようにして得られる鱗片状インジウム粒子として、例えば、尾池工業株式会社製のリーフパウダー(登録商標)などが市販されている。
【0049】
この鱗片状インジウム粒子(尾池工業株式会社製のリーフパウダー)は、純度95%以上のインジウムからなる薄片状インジウム粒子であって、インジウム粒子の粒径と、該粒径におけるインジウム粒子の体積割合との関係を示す体積基準の粒度分布において、第1のピークと、該第1のピークよりも粒径が大きい第2のピークとを有し、前記第1のピークにおけるインジウム粒子の体積V1と、前記第2のピークにおけるインジウム粒子の体積V2とが、次式、(V1/V2)×100≧25%、を満たし、前記第1のピークにおけるインジウム粒子の粒径P1と、前記第2のピークにおけるインジウム粒子の粒径P2とが、次式、6.0≦P2/P1≦12、を満たし、前記インジウム粒子の累積50%体積粒子径D50が0.70μm以下であることを特徴とする薄片状インジウム粒子である。
【0050】
2.可塑剤
次に、可塑剤について例示説明する。光輝性塗料において、可塑剤としては脂肪族二塩基酸エステルを用いる。
【0051】
(1)脂肪族二塩基酸エステル
脂肪族二塩基酸エステルは、アジピン酸、アゼライン酸、マレイン酸、セバシン酸などの脂肪族二塩基酸とアルコールをエステル化して得られる。
脂肪族二塩基酸エステル類を例示すると、次の通りである。例えば、アジピン酸ジブチル(DBA)、アジピン酸ジイソブチル(DIBA)、アジピン酸ジ‐2‐エチルヘキシル(DOA)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、アジピン酸ジイソデシル(DIDA)、アゼライン酸ビス‐2‐エチルヘキシル(DOZ)、セバシン酸ジブチル(DBS)、セバシン酸ジ‐2‐エチルヘキシル(DOS)、セバシン酸ジイソノニル(DINS)、マレイン酸ジオクチル(DOM)、ジエチルサクシネート(DESU)などを用いることができる。
【0052】
これら脂肪族二塩基酸エステルのなかでも、マレイン酸ジオクチル(DOM)、ジエチルサクシネート(DESU)が光輝性の点から好ましい。マレイン酸ジオクチル(DOM)とジエチルサクシネート(DESU)の配合によって光輝性がより向上するメカニズムは不明であるが、分子が対称構造であることが関係しているのではないかと推論する。例えば、分子対称性によって鱗片状インジウム粒子の配向性が向上していることなどが考えられる。
【0053】
3.分散剤
次に、分散剤について例示説明する。光輝性塗料において分散剤は任意成分である。しかしながら、鱗片状インジウム粒子の凝集を抑制し、安定した状態で光輝性塗料中に分散した状態を維持するためには、分散剤を配合することが好ましい。
【0054】
光輝性塗料において、分散剤としては、鱗片状インジウム粒子を安定して分散できるものであれば、任意の分散剤を用いることができる。しかしながら、高分子量(例えば、分子量が10,000を超える)の分散剤を多量に配合することは、光輝性の面から好ましくない。
【0055】
一般的に、分散剤として、例えば、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシアルキレンデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレントリデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオレイルセチルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンオレイルセチルエーテル硫酸ナトリウム等のアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフタレンスルフォン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレントリデシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルリン酸エステル等のアルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム等のアルキルエーテル酢酸塩、ラウリルスルホコハク酸二ナトリウムポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸二ナトリウム、ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸塩等のアルキルコハク酸塩などが知られている。
【0056】
分散剤の市販品として、例えば、エスリームC-2091I(日油株式会社)、エスリームAD-374M(日油株式会社)、エスリームMP-071K(日油株式会社)のほか、エスリームSP-0201(日油株式会社)、エスリームC20931(日油株式会社)、エスリーム221P(日油株式会社)、エスリームAD-3172M(日油株式会社)、BYK-392(BYK)、DISPERBYK‐2000(BYK)、DISPERBYK‐2200(BYK)、DISPERBYK‐2155(BYK)などを用いることができる。
【0057】
4.溶剤
次に、溶剤について例示説明する。溶剤は、鱗片状インジウム粒子や可塑剤などを分散させたり、光輝性塗料の粘度を調節して塗布性を最適化したりするために用いる。
【0058】
溶剤としては、光輝性塗料に用いる可塑剤などとの相溶性や鱗片状インジウム粒子の分散性、乾燥温度や乾燥時間などを考慮して適宜選択することができる。溶剤には、有機溶剤のほか水なども含まれる。各種プラスチック筐体へ光輝性塗膜を形成する場合には、例えば、乾燥温度が80±5℃程度、乾燥時間が1時間以内、好ましくは30分以内で光輝性塗料が乾燥するように、溶剤を選択することが望ましい。
【0059】
有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、フェノール系溶剤、脂肪族もしくは芳香族炭化水素系溶剤、脂肪族もしくは芳香族塩化炭化水素系溶剤、含硫黄化合物系溶剤、含窒素化合物系溶剤などを挙げることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0060】
5.光輝性塗料
次に、光輝性塗料について例示説明する。光輝性塗料は、鱗片状インジウム粒子、可塑剤、溶剤を所定量配合、混合して得られる。これらの材料に加えて分散剤や添加剤などを加えてもよい。
【0061】
[鱗片状インジウム粒子]
鱗片状インジウム粒子は、光輝性塗料の固形分100重量%中に20~70重量%となるように配合する。鱗片状インジウム粒子は、光輝性塗料の固形分100重量%中に好ましくは25~60重量%、より好ましくは30~55重量%、最も好ましくは30~50重量%となるように配合する。
【0062】
[可塑剤]
可塑剤としての脂肪族二塩基酸エステルは、光輝性塗料の固形分100重量%中に10~85重量%(固形分)となるように配合する。可塑剤としての脂肪族二塩基酸エステルは、光輝性塗料の固形分100重量%中に好ましくは15~80重量%(固形分)となるように配合する。
可塑剤の配合量について、より詳細に説明すると、後述する分散剤を配合しない場合、塗料の固形分100重量%中に、好ましくは25~80重量%、より好ましくは30~75重量%、最も好ましくは33~72重量%となるように配合する。
一方、後述する分散剤を配合する場合、可塑剤の配合量は、塗料の固形分100重量%中に、好ましくは15~60重量%、より好ましくは20~55重量%、最も好ましくは25~50重量%になるように配合する。
【0063】
[分散剤]
分散剤は任意の成分である。分散剤を配合する場合は、光輝性塗料の固形分100重量%中に好ましくは30重量%以下、より好ましくは25重量%と以下となるように配合する。分散剤を配合する場合、配合量の下限値は特に制限されないが、光輝性塗料の固形分100重量%中に10重量%以上としたり15重量%以上としたりすることができる。
【0064】
[溶剤]
溶剤は、例えば、光輝性塗料が所望の塗布性が得られるような粘度になるよう配合する。なお、塗布性は、溶剤の種類によっても変化することがある。
【0065】
[その他]
また、光輝性塗料には各種添加剤などを少量配合してもよい。
なお、光輝性塗料には、バインダー樹脂としてのポリマーを含んでいないことが好ましい。「ポリマー」は分子量10,000以上のものを指す。さらに、「バインダー樹脂としてのポリマーを含んでいない」は、実質的にバインダー樹脂としての「ポリマー」を含んでいないことをいい、例えば、鱗片状インジウム粒子の表面処理剤などに「ポリマー」が使用されており、結果的に光輝性塗料に「ポリマー」が含まれてしまったものなどは除く趣旨である。例えば、塗料固形分100重量%中に、分子量10,000以上のポリマーを5重量%以上含んでいないことをいう。
【0066】
6.光輝性塗膜
次に、光輝性塗膜について例示説明する。光輝性塗膜は、前述した光輝性塗料を被塗装物の表面に塗布して乾燥(溶剤を揮発)させることで得られる。光輝性塗膜は、鱗片状インジウム粒子と、可塑剤と、からなる。光輝性塗膜は、これらの材料に加えて分散剤などを含んでいてもよい。
各種プラスチック筐体へ光輝性塗膜を形成する場合には、例えば、温度が80±5℃程度、時間が1時間以内で乾燥または硬化させる。
【0067】
7.光輝性積層塗膜
次に、光輝性積層塗膜について例示説明する。光輝性積層塗膜は、下塗り塗膜と、この下塗塗膜の上に成膜された上記光輝性塗膜と、この光輝性塗膜の上に成膜された上塗り塗膜と、で構成される。
【0068】
[下塗り塗膜]
下塗り塗膜は、被塗装物の表面に成膜された塗膜であり、通常、被塗装物に下塗り塗料を塗布して乾燥させることで得られる。下塗り塗膜としては、被塗装物との密着性が確保されており、ある程度の表面平滑性があって光輝性塗料の塗布性が良好であれば、特に制限されない。
【0069】
下塗り塗料としては、例えば、二液タイプのクリヤー塗料を用いることができる。各種プラスチック筐体へ積層塗膜を形成することを考慮すると、乾燥温度が80±5℃程度、乾燥時間が1時間以内で乾燥または硬化するような下塗り塗料を用いることが好ましい。下塗り塗料の塗布膜厚は、下塗り塗料の固形分にもよるが、好ましくは10~35μm、より好ましくは20~25μmである。
【0070】
[光輝性塗膜]
この下塗塗膜の上に前記光輝性塗料を塗布し乾燥させて光輝性塗膜を成膜する。光輝性塗料および光輝性塗膜については前述の通りであり、説明を割愛する。
光輝性塗料の赤外線吸収率は、光輝性塗料の固形分にもよるが、好ましくは30~80%、より好ましくは45~75%である。光輝性塗膜の膜厚は1μm以下であるため電磁式膜厚計が使用できない。そこで、種々検討を重ねた結果、赤外線吸収率が 光輝性塗膜の膜厚と比例関係にある事を見出し、上記数値化を行った。赤外線吸収率の測定機器は、有限会社東亜システムクリエイト社製の光学透過率測定器 DST-2501を用いた。測定サンプルとして、透明アクリル樹脂板を使用し、これに光輝性塗料を塗布し乾燥させて光輝性塗膜とし赤外線吸収率を測定した。なお、光輝性塗料はスプレーガンで塗布した。
【0071】
[上塗り塗膜]
上塗り塗膜は、光輝性塗膜の表面に成膜された塗膜であり、通常、光輝性塗膜に上塗り塗料を塗布して乾燥させることで得られる。上塗り塗膜としては、光輝性塗膜との密着性が確保されており、ある程度の表面平滑性があれば、特に制限されない。
【0072】
上塗り塗料としては、例えば、二液タイプのクリヤー塗料を用いることができる。各種プラスチック筐体へ積層塗膜を形成することを考慮すると、乾燥温度が80±5℃程度、乾燥時間が1時間以内で乾燥または硬化するような上塗り塗料を用いることが好ましい。上塗り塗料の塗布膜厚は、上塗り塗料の固形分にもよるが、好ましくは8~32μm、より好ましくは18~22μmである。
8.塗装物
【0073】
最後に、塗装物について例示説明する。塗装物は、被塗装物の一部または全部に上記積層塗膜が成膜されたものである。上記積層塗膜が成膜された箇所は、高い光輝性を備える。
【0074】
積層塗膜を成膜する被塗装物は、特に限定されない。例えば、自動車の外装部や内装部、バンパやフロントグリルなどの自動車部品、携帯電話や情報端末機器などの電気製品の外装部、メイクパレットやコスメパレットなどの筐体部、リールやルアーなどの釣り具を挙げることができる。
【0075】
これらの被塗装物の材質としては、特に限定されるものではない。例えば、鉄やアルミなどの各種金属材料、ABS樹脂やポリエチレン樹脂などの各種樹脂材料、FRPなどの各種プラスチック材料、ガラスやセメントなどの各種無機材料、紙や布などの各種繊維材料などを挙げることができる。
【実施例】
【0076】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例中、量比などは重量に基づく値である。
【0077】
(実施例1)
下記表1における実施例1の配合表に基づき、光輝性塗料を作成した。なお、表1中、インジウム、可塑剤および分散剤の配合量について、括弧内の数値は固形分の量である。
そして、表1、表2における、鱗片状インジウム粒子含有量(固形分中の重量%)は、光輝性塗料の固形分100重量%中における鱗片状インジウム粒子の含有量(重量%)であり、一般的に、顔料重量濃度(PWC)と称されることもある。また、可塑剤含有量(重量%)は、光輝性塗料の塗料固形分100重量%中における可塑剤固形分の含有量(重量%)である。
【0078】
まず、鱗片状インジウムとして鱗片状インジウム粒子溶液(尾池工業株式会社「品番:リーフパウダー49CJ-1120」)と、可塑剤として脂肪族二塩基酸エステルであるマレイン酸ジオクチル(大八化学工業株式会社「品番:DOM」)を配合し、さらに溶剤(希釈剤)としてシンナーNo5600(大橋化学工業株式会社製)を配合した。その後、均一になるまで十分攪拌して実施例1の光輝性塗料を得た。
なお、鱗片状インジウム粒子溶液100重量%中には、鱗片状インジウム粒子が20重量%含まれている。
また、可塑剤と後述する分散剤について、配合精度を確保する目的で、シンナーNo5600でそれぞれ10倍に薄めた溶液の形態(固形分10%)で配合している。
【0079】
そして、被塗装物であるABS樹脂板の上に、下塗り塗料を塗布後、これを乾燥させて下塗り塗膜を形成し、その上から、実施例1の光輝性塗料を塗布乾燥させて光輝性塗膜を形成した。
下塗り塗料としては、ファインフィニッシュ(NXT)下塗りクリヤー(大橋化学工業製)に硬化剤IP-60(大橋化学工業株式会社製)とシンナーNo6820(大橋化学工業株式会社製)を60:10:48の重量比で混合したものを用い、これをABS樹脂板上に塗布(膜厚20~25μm)し、80℃×30分で乾燥させて下塗り塗膜を得た。
得られた下塗り塗膜の上から光輝性塗料を塗布して、80℃×30分で乾燥させて光輝性塗膜を得た。光輝性塗膜の赤外線吸収率は45~75%であった。
【0080】
最後に、得られた光輝性塗膜の上から、上塗り塗料を塗布後、これを乾燥させて上塗り塗膜を形成し、光輝性積層塗膜を得た。上塗り塗料としては、ファインフィニッシュ(NXT)上塗りクリヤー(大橋化学工業製)に硬化剤IP-60(大橋化学工業株式会社製)とシンナーNo6820(大橋化学工業株式会社製)を80:10:88の重量比で混合したものを用い、これを光輝性塗膜上に塗布(膜厚18~22μm)し、80℃×30分で乾燥させて上塗り塗膜とした。
これにより、下塗り塗膜、光輝性塗膜および上塗り塗膜からなる光輝性積層塗膜が得られた。
【0081】
得られた積層塗膜について、グロス値、L値、付着性を評価した。また、塗膜外観も評価した。
【0082】
グロス値の測定は、JIS Z8741―1997鏡面光沢度‐測定方法に従って実施した。測定機器は、コニカミノルタ株式会社製のMULTI GLOSS 268 Plusを用いて、測定角度20°、60°、85°でそれぞれ実施した。そして、測定角度20°における値が700以上を○評価とした。
【0083】
L値の測定には、測定機器として、コニカミノルタ株式会社製の分光測色計 CM-600dを用いた。そして、測定値が60以上を○評価とした。
【0084】
付着性は、いわゆるクロスカットテープ剥離試験(JIS K5600―2014)を実施し剥離なきものを○評価とした。なお、塗膜外観については塗布条件などによっても影響を受けることがあるため参考程度の評価としたが、塗膜外見評価が良くないものについては、他の評価が良好であっても△評価とした。
【0085】
実施例1の光輝性塗料を用いた積層塗膜は、非常に良好な評価結果であった。
【0086】
【0087】
(実施例2)(実施例3)
実施例1の配合をベースに、可塑剤としてのマレイン酸ジオクチルの配合量を増加させた実施例である。
【0088】
実施例2および実施例3の光輝性塗料を用いた積層塗膜は、いずれも非常に良好な評価結果であった。
【0089】
(実施例4)(実施例5)(実施例6)
実施例1の配合をベースに、可塑剤を、マレイン酸ジオクチルから、同じ脂肪族二塩基酸エステルであるジエチルサクシネート(大八化学工業株式会社「品番:DESU」)に変更して、その配合量を振った実施例である。
【0090】
実施例4、実施例5および実施例6の光輝性塗料を用いた積層塗膜は、いずれも非常に良好な評価結果であった。
【0091】
(比較例1)(比較例2)(比較例3)
実施例1の配合をベースに、可塑剤を、脂肪族二塩基酸エステルであるマレイン酸ジオクチルから、アジピン酸系ポリエステル(DIC株式会社「品番:W‐2340‐S」)に変更して、その配合量を振った実施例である。
【0092】
比較例1、比較例2および比較例3の光輝性塗料を用いた積層塗膜は、いずれもあまり良い評価結果が得られなかった。
【0093】
(比較例4)~(比較例12)
実施例1の配合をベースに、可塑剤の代わりに各種分散剤を配合して、その配合量を振った比較例である。分散剤として、エスリームC-2091I(日油株式会社)、エスリームMP-071K(日油株式会社)、エスリームAD-374M(日油株式会社)を用いた。
【0094】
比較例4~比較例12のうち、比較例7の光輝性塗料を用いた積層塗膜はグロス値およびL値について比較的良好であったものの、分散剤のみを配合した系は、可塑剤を配合した系と比較して、あまり良い評価が得られなかった。
【0095】
(比較例13)
可塑剤も分散剤も配合していない比較例である。
【0096】
比較例13の光輝性塗料を用いた積層塗膜も、あまり良い評価結果が得られなかった。
【0097】
以上より、可塑剤として脂肪族二塩基酸エステルである、マレイン酸ジオクチル(DOM)またはジエチルサクシネート(DESU)を配合した系の評価結果が良いことがわかった。
【0098】
次に、可塑剤ベースの系に分散剤を加えて試作評価を行った。配合表および評価結果を表2に示す。
【0099】
【0100】
(実施例7)
実施例1の配合をベースに、分散剤を加えた系である。
【0101】
分散剤を配合していない実施例1の光輝性塗料を用いた積層塗膜の方がより良好な結果であったものの、実施例7の光輝性塗料を用いた積層塗膜も、非常に良好な評価結果であった。
【0102】
(実施例8)
実施例7の配合をベースに、可塑剤の配合量を増加させた系である。
【0103】
実施例8の光輝性塗料を用いた積層塗膜も、非常に良好な評価結果であった。
【0104】
(実施例9)(実施例10)(実施例11)
実施例7の配合をベースに、分散剤の種類を変更するともにその配合量を振った系である。
【0105】
実施例9、実施例10、実施例11の光輝性塗料を用いた積層塗膜も、いずれも良好な評価結果であった。
【0106】
(実施例12)~(実施例17)
実施例7~実施例11の配合をベースに、可塑剤を、マレイン酸ジオクチルから、同じ脂肪族二塩基酸エステルであるジエチルサクシネート(大八化学工業株式会社「品番:DESU」)に変更した実施例である。
【0107】
実施例12~実施例17の光輝性塗料を用いた積層塗膜も、いずれも良好な評価結果であった。
【0108】
(比較例14)~(比較例18)
実施例7~実施例11の配合をベースに、可塑剤を、脂肪族二塩基酸エステルであるマレイン酸ジオクチルから、アジピン酸系ポリエステル(DIC株式会社「品番:W‐2340‐S」)に変更した系である。
【0109】
可塑剤としてアジピン酸系ポリエステルを配合した系である比較例14~比較例18を用いた積層塗膜は、全体としてあまり良い評価結果が得られなかった。
【0110】
なお、予備検討において、分子量が大きい材料を配合した光輝性塗料は、ポリマーを添加する検証実験から、濁りや発色低下に繋がりやすいことがわかっている。
【0111】
また、各実施例の積層塗膜について、電波透過性(24GHz帯及び78GHz帯における減衰量及び透過率)を確認したところ、いずれも良好な結果が得られた。
【0112】
以上、特定の実施形態及び実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態などに限定されるものではなく、当該技術分野における熟練者等により、本出願の願書に添付された特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変更及び修正が可能である。
【要約】
【課題】インジウム粒子の配合量が比較的少なくても光輝性を確保することができる光輝性塗料、光輝性塗膜、光輝性積層塗膜および塗装物を提供することを目的とする。
【解決手段】鱗片状インジウム粒子と、可塑剤と、溶剤と、からなる光輝性塗料であって、前記鱗片状インジウム粒子は、前記光輝性塗料の固形分100重量%中に20~70重量%含まれており、前記可塑剤は、脂肪族二塩基酸エステルであり前記光輝性塗料の固形分100重量%中に10~85重量%含まれている、光輝性塗料などとした。
【選択図】なし