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  • 特許-カバー部材 図1
  • 特許-カバー部材 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】カバー部材
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/38 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
F16F9/38
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024087792
(22)【出願日】2024-05-30
【審査請求日】2024-05-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519221017
【氏名又は名称】株式会社ALCサープラス
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】吉増 時也
【審査官】久米 伸一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-360872(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0239525(US,A1)
【文献】特開昭55-015356(JP,A)
【文献】中国実用新案第215487382(CN,U)
【文献】実開昭57-054746(JP,U)
【文献】中国実用新案第216618375(CN,U)
【文献】中国実用新案第214465787(CN,U)
【文献】中国実用新案第206943306(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F9/38
B62K25/06
B60G13/00
B60G15/00
B61F5/00
B61F5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に使用される金属製のシリンダー本体を被覆するカバー部材であって、
前記シリンダー本体を覆う、メッシュ状の外装シェルと、
前記外装シェルを貫通して設けられたフィンと、を備え、
ることを特徴とするカバー部材。
【請求項2】
前記外装シェルが、カーボンナノチューブを含む塗料で塗装されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のカバー部材。
【請求項3】
前記フィンに、ダイヤモンド被膜が被覆されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のカバー部材。
【請求項4】
前記外装シェルが、前記シリンダー本体に対し、脱着可能である、
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載のカバー部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンパーのシリンダーを被覆するカバー部材に関する。
【背景技術】
【0002】
車、オートバイなどの車両には、様々な車両用部品が使用されている。例えば、車内の静粛性を向上させるために、エンジンやモータなどの駆動装置やトランスミッションなどの動力伝達装置から発生する騒音の低減対策として、ポリウレタンフォームなどの発泡体から構成される防音材が使用されている。このような防音材を用いる場合、硬質のカバー部材を用いることがある。防音材をカバー部材で被覆すると、カバー部材の分だけ熱抵抗が増えるため、防音材の放熱性が低下するおそれがある。このように、車両用部品にカバー部材を取り付けると放熱性などが低下し、車両用部品の劣化を生じさせる場合がある。カバー部材の放熱性などを損なうことを抑止するカバー部材や放熱部材が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1の放熱部材は、ポリマーを有する放熱層と、放熱層に積層される保護層と、を備えている。そして、放熱層は相手部材に接触して配置されて構成され、積層方向の熱伝導率や保護層の熱抵抗を調整している。また、この放熱部材は、放熱層や保護層に凹凸面を有し、凹凸面の表面積を保護層の積層方向の投影面積の所定倍とすることで、放熱効果を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-107672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両用部品のカバー部材には、放熱性以外にも、静電気を空中放電させる性能が望まれることがある。また、コストの観点から、複雑な構造ではなく、簡易な構造で機能が発揮されるカバー部材が望まれている。さらに、既存の車両用部品に対し取り付ける際や車両用部品から取り外す際に簡単にできることが望ましい。
【0006】
そこで、本発明は、効率的に熱放出及び静電気を空中放電させるカバー部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るカバー部材は、車両に使用される金属製のシリンダー本体を被覆するカバー部材であって、シリンダー本体を覆う、メッシュ状の外装シェルと、この外装シェルを貫通して設けられたフィンとを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るカバー部材は、外装シェルがカーボンナノチューブを含む塗料で塗装されていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るカバー部材は、フィンにダイヤモンド被膜が被覆されていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るカバー部材は、外装シェルがシリンダー本体に対し、脱着可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るカバー部材は、ダンパーのシリンダー本体の外部を被覆するため、外力による衝撃がシリンダー本体に直接伝わらず、シリンダー本体が破損することを抑止できる。また、本発明に係るカバー部材では、外装シェルを貫通して、フィンが外部に露出しているため、シリンダー本体に発生した熱を外装シェルとフィンを介して、外部に放出できる。
【0012】
本発明に係るカバー部材は、外装シャルにカーボンナノチューブを含む塗料が塗装されているため、放熱性及び導電性が高まり、熱の放出効率を向上させることができる。さらに、金属製の外装シェルを使用することで、シリンダーに発生する静電気の空中放電を促進させることができ、ダンパー機能の効率を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係るカバー部材がダンパーのシリンダー本体に取り付けられた斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係るカバー部材の断面図である。
図3】本発明の実施形態に係るカバー部材の構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態に係るカバー部材は、例えば、車両などの金属製のダンパーのシリンダー本体を被覆するために使用される。本実施形態に係るカバー部材を、図1から図3を参照し説明する。
【0015】
カバー部材1は、図1及び図2に示すように、金属製のフィン2と、シリンダー本体10を覆う外装シェル3と、を備えている。フィン2は外装シェル3に固定されており、シリンダー本体10と外装シェル3は、同一の金属でメッキが施されていることが好ましい。
【0016】
フィン2は、シリンダー本体10に対向して配置され、図2及び図3に示すように、基部2Aと、この基部2Aから外側に突出する複数の突出部2Bとを有する。突出部2Bは、外部に向けて、先細りとなるように形成されている。このフィン2の表面には、ダイヤモンド被膜が被覆(被着)されている。ダイヤモンド被膜は、ダイヤモンドコーティング装置により形成したり、ダイヤモンド粒子を配合したもので被膜したりすることで形成する。このダイヤモンド被膜には、例えば、ホウ素を混入したダイヤモンドを使用する。
【0017】
外装シェル3は、例えば、3Dプリンターを使用して製造することができる。この外装シェル3は、メッシュ状に形成され、所定の間隔で、貫通孔3Aが形成され、貫通孔3Aは複数形成されている。外装シェル3は、フィン2の基部2Aよりも外側に配置される。外装シェル3は、第一外装部材3Bと第二外装部材3Cの2つの部材を接続することで、円筒状の部材として構成されている。外装シェル3は、アルミニウムなどの金属や樹脂で構成される。また、外装シェル3の表面は、カーボンナノチューブを含む塗料で塗装されている。カーボンナノチューブは、優れた導電性、熱伝導性、電磁波シールド性に優れており、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブを使用する。また、カーボンナノチューブを含む塗料には、カーボンナノチューブ分散化技術を利用した、カーボンナノチューブの分散性が高いものを使用する。
【0018】
外装シェル3は、バンドやボルトなどで、シリンダー本体10に固定することで、カバー部材1がシリンダー本体10に取り付けられる。このカバー部材1は、容易に取り外すこともでき、シリンダー本体10に対し、脱着可能である。外装シェル3にフィン2が取り付けられる。フィン2の突出部2Bは貫通孔3Aを貫通して設けられ、外装シェル3にフィン2が取り付けられた状態で、突出部2Bの先端部分は、外部に露出される。露出された複数の突出部2Bから、シリンダー本体10に発生した熱が外部に放出される。また、フィン2の突出部2Bが挿入されていない貫通孔3Aは、熱の排出口として機能し、カバー部材1の内部で発生した熱が貫通孔3Aを介して外部に排出される(図3)。
【0019】
次に、本実施形態に係るカバー部材1の作用効果について、説明する。
【0020】
本実施形態に係るカバー部材1は、ダンパーのシリンダー本体10の外部を被覆するため、外力による衝撃はカバー部材1に加わる。そのため、衝撃がシリンダー本体10に直接伝わらず、シリンダー本体10が破損することを抑止できる。
【0021】
また、本実施形態に係るカバー部材1では、外装シェル3の貫通孔3Aを介して、フィン2の突出部2Bを外部に露出している。そのため、ダンパーのピストン運動によりシリンダー本体10に発生した熱を外装シェル3、フィン2の突出部2Bを介して、外部に放出できる。さらに、カバー部材1を構成する外装シェル3にはカーボンナノチューブを含む塗料が塗装されているため、放熱性及び熱導電性が向上する。また、フィン2の表面には、ダイヤモンド被膜が形成されているため、熱伝導性と導電性が向上する。したがって、このカバー部材1を使用することで、熱の放出効率を向上させることができ、シリンダー本体10の性能劣化や耐久劣化を防ぐことができる。
【0022】
さらに、本実施形態に係るカバー部材1では、金属製の外装シェル3を使用することで、シリンダーに発生する静電気の空中放電を促進させることができる。このように、静電気の空中放電を促進できることで、ダンパー機能の効率がよくなる。なお、フィン2は、外部に向けて先細りになるよう形成され、静電気が空中放電しやすい構造となっている。
【0023】
カバー部材1において、シリンダー本体10と外装シェル3は、同一の金属でメッキされていることが好ましい。シリンダー本体10と外装シェル3に同一金属メッキを施し、同一金属の膜を形成することで電食を防ぐことができる。メッキは、例えば、窒化チタンの金属を用いる。
【0024】
本実施形態に係るカバー部材1は、シリンダー本体10に対し、着脱可能であるため、カバー部材1の取り替えが容易である。また、このカバー部材1の外装シェル3は3Dプリンターで製造できるため、使用者の要望に沿った柔軟なデザインに応じて作製できる。したがって、デザイン性を考慮したカバー部材1とすることで、意匠性も向上する。
【0025】
以上、本実施形態について説明したが、これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。本実施形態では、外装シェルをバンドやボルトなどで、シリンダー本体に固定する例を示したが、初めからシリンダー本体にカバー部材を取り付けておくこともできる。また、外装シェルの塗装剤は、カーボンナノチューブの分散液を使用した例を示したが、導電性を考慮し、他の炭素材料をフィラーとして含有させることもできる。また、本実施形態では、フィンの突出部は90度ずれた四方向に突出して設けた例を示したが、求められる排熱効率に応じて、設けるフィンの数を増やすこともできる。
【符号の説明】
【0026】
1 カバー部材
2 フィン
2A 基部
2B 突出部
3 外装シェル
3A 貫通孔
3B 第一外装部材
3C 第二外装部材
10 シリンダー本体
【要約】
【課題】熱放出及び静電気の空中放電が可能なカバー部材を提供する。
【解決手段】車両に使用される金属製のシリンダー本体10を被覆するカバー部材1であって、シリンダー本体10を覆うメッシュ状の外装シェル3と、外装シェル3を貫通して設けられたフィン2とを備える。このカバー部材1を使用することで、シリンダー本体10の破損を防止でき、熱の放出効率や静電気の空中放電を促進させることができる。
【選択図】図2
図1
図2
図3