(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】ステータ及びモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 1/18 20060101AFI20241010BHJP
H02K 3/04 20060101ALI20241010BHJP
H02K 3/34 20060101ALI20241010BHJP
H02K 15/08 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
H02K1/18 C
H02K3/04 E
H02K3/34 B
H02K15/08
(21)【出願番号】P 2020030968
(22)【出願日】2020-02-26
【審査請求日】2022-08-05
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】峯田 由計
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-021892(JP,A)
【文献】特開2003-189521(JP,A)
【文献】特開2014-023344(JP,A)
【文献】特開2016-208745(JP,A)
【文献】国際公開第2013/183188(WO,A1)
【文献】特開2007-166739(JP,A)
【文献】特開平10-234147(JP,A)
【文献】特開2009-033912(JP,A)
【文献】特開2011-172402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/18
H02K 3/04
H02K 3/34
H02K 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアの一部を構成し、スロットを有するサポートコアと、
整列多層巻きにされた自己融着線からなり、前記スロット内に配置された部分
が前記スロットの形状に合わせ
て成形され且つ当該成形された状態で前記自己融着線の接着剤により固められている分布巻きコイルと、
を備えたステータ分割体
を複数含んで構成されたステータであって、
前記ステータコアの少なくともヨークの外周側を構成するヨーク構成コアを含んで構成され、
前記ヨーク構成コアは、ステータ周方向に分割された複数の分割ヨーク構成コアによって構成されており、
各前記分割ヨーク構成コアは、ステータ周方向に隣り合う前記サポートコアの間に嵌合され、前記ステータコアのティースの一部を構成するティース構成部を有するステータ。
【請求項2】
請求項1に記載のステータと、
永久磁石を有し、前記ステータの内側に配置されるロータと、
を備えたモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関し、特にステータ及び該ステータの一部を構成するステータ分割体に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載された先行技術では、製造すべき固定子の径方向に対して予め斜めに湾曲して形成された環状の絶縁部材を用意し、この絶縁部材にコイルを巻回して巻線体を形成し、複数の巻線体をその一端側を円周上に配置して円環状の巻線群を形成する。この巻線群の外側に、ヨーク片とティースからなる分割鉄心のティースを内向きにして配置し、ティースを巻線群の中心に指向させて複数の巻線体の絶縁部材のティース挿通孔に挿入していくことにより、各巻線体を複数のティースに跨らせ、巻線群の外周側で互いに隣り合う分割鉄心のヨーク片を接続させて円環状にする。これにより、軽量で、歩留まりが高く占積率が大きい固定子を提供するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、モータのコイルの巻線方法としては、集中巻きや分布巻きがあるが、一般的に、集中巻きよりも分布巻きの方が高トルク密度を維持し易い。しかしながら、電動過給機用モータのような小型モータに対して分布巻きを適用する場合、例えば整列多層巻きにしたコイルをステータコアのスロット開口からスロット内に挿入することになるため、スロットの形状等によってはスロット内の占積率を高めることが難しい場合がある。この点、上記の先行技術においても、複数のティースに跨った絶縁部材の回りにコイルを巻回するため、スロット内の占積率を高めるには限界がある。また、電動過給機用モータのような小型モータにおいては、上記のような絶縁部材を設けるスペースを確保できない。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、コイルが分布巻きにされる構成において、スロット内の占積率を高めることができるステータ分割体、ステータ、モータ及びステータ分割体の製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様のステータ分割体は、ステータコアの一部を構成し、スロットを有するサポートコアと、整列多層巻きにされた自己融着線からなり、前記スロット内に配置された部分が前記スロットの形状に合わせて成形され且つ当該成形された状態で前記自己融着線の接着剤により固められている分布巻きコイルと、を備えている。
【0007】
第1の態様のステータ分割体では、ステータコアの一部を構成するサポートコアがスロットを有しており、整列多層巻きにされた自己融着線からなる分布巻きコイルの一部が上記スロット内に配置されている。この分布巻きコイルにおいてスロット内に配置された部分は、スロットの形状に合わせて成形され且つ当該成形された状態で自己融着線の接着剤により固められている。これにより、スロット内の占積率を高めることができる。
【0008】
第2の態様のステータ分割体は、第1の態様のステータ分割体において、前記サポートコアは、前記スロットを境にステータ周方向に分割された一対の分割サポートコアによって構成されている。
【0009】
第2の態様のステータ分割体では、サポートコアは、スロットを境にステータ周方向に分割された一対の分割サポートコアによって構成されている。このため、分布巻きコイルの一部をスロット内に配置させてスロットの形状に合わせて成形する際には、当該一部を一対の分割サポートコアで挟み込んで加圧すればよい。これにより、上記の成形が容易になる。
【0010】
第3の態様のステータ分割体は、第1の態様又は第2の態様のステータ分割体において、前記スロットの内周面には、絶縁性を有する塗料又は樹脂からなる絶縁材が設けられている。
【0011】
第3の態様のステータ分割体では、サポートコアが有するスロットの内周面に、絶縁性を有する塗料又は樹脂からなる絶縁材が設けられている。これにより、サポートコアと分布巻きコイルとの絶縁性を高めることができる。
【0012】
第4の態様のステータは、第1の態様~第3の態様の何れか1つの態様のステータ分割体を複数含んで構成されている。
【0013】
第4の態様のステータは、複数のステータ分割体を含んで構成されている。これらのステータ分割体は、第1の態様~第3の態様の何れか1つの態様に記載されたものであるため、前述した作用及び効果が得られる。
【0014】
第5の態様のステータは、第4の態様のステータにおいて、前記ステータコアの少なくともヨークの外周側を構成するヨーク構成コアを含んで構成されている。
【0015】
第5の態様のステータでは、複数のステータ分割体が備える複数のサポートコアと、上記のヨーク構成コアとを含んでステータコアが構成されている。これにより、各サポートコアを小型にすることができるので、例えばサポートコアのスロット内に配置された分布巻きコイルの一部を成形する際の作業性などが向上する。
【0016】
第6の態様のステータは、第5の態様のステータにおいて、前記ヨーク構成コアは、ステータ周方向に分割された複数の分割ヨーク構成コアによって構成されており、各前記分割ヨーク構成コアは、ステータ周方向に隣り合う前記サポートコアの間に嵌合され、前記ステータコアのティースの一部を構成するティース構成部を有している。
【0017】
第6の態様のステータでは、ステータコアの少なくともヨークの外周側を構成するヨーク構成コアが、ステータ周方向に分割された複数の分割ヨーク構成コアによって構成されている。各分割ヨーク構成コアは、ステータ周方向に隣り合うサポートコアの間に嵌合され、ステータコアのティースの一部を構成するティース構成部を有している。このティース構成部の上記嵌合により、ステータ周方向に隣り合うサポートコアの間隔が均等になるため、各サポートコアのスロット内に一部が配置された各分布巻きコイルをステータコアに対して正確に位置決めすることができる。
【0018】
第7の態様のモータは、第4の態様~第6の態様の何れか1つの態様のステータと、永久磁石を有し、前記ステータの内側に配置されるロータと、を備えている。
【0019】
第7の態様のモータでは、永久磁石を有するロータがステータの内側に配置される。このステータは、第4の態様~第6の態様の何れか1つの態様のものであるため、前述した作用及び効果が得られる。
【0020】
第8の態様のステータ分割体の製造方法は、自己融着線を整列多層巻きして分布巻きコイルを製造するコイル製造工程と、ステータコアの一部を構成し、スロットを有するサポートコアを製造するサポートコア製造工程と、前記分布巻きコイルの一部を前記スロット内に配置させ、当該一部を前記スロットの形状に合わせて成形する成形工程と、前記一部を加熱して前記自己融着線の接着剤を一時的に溶融させる加熱工程と、を有している。
【0021】
第8の態様のステータ分割体の製造方法によれば、コイル製造工程では、自己融着線を整列多層巻きして分布巻きコイルを製造する。サポートコア製造工程では、ステータコアの一部を構成し、スロットを有するサポートコアを製造する。成形工程では、分布巻きコイルの一部をサポートコアのスロット内に配置させ、当該一部をスロットの形状に合わせて成形する。加熱工程では、分布巻きコイルの上記一部を加熱して自己融着線の接着剤を一時的に溶融させる。この接着剤が冷却されて固化すると、分布巻きコイルの一部が上記の成形状態で接着剤により固められる。これにより、スロット内の占積率を高めることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明に係るステータ分割体、ステータ、モータ及びステータ分割体の製造方法では、コイルが分布巻きにされる構成において、スロット内の占積率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第1実施形態に係るモータの主要部の構成を示す分解斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係るステータの部分的な構成を示す断面図である。
【
図3】複数のステータ分割体が組み合わされた状態を示す斜視図である。
【
図4】第1実施形態に係るステータ分割体を示す斜視図である。
【
図5】製造途中の分布巻きコイルにサポートコアが取り付けられた状態を示す斜視図である。
【
図6】
図5のF6-F6線に沿った切断面を示す断面図である。
【
図7】分布巻きコイルの製造途中の状態を示す斜視図である。
【
図8】
図7のF8-F8線に沿った切断面を示す断面図である。
【
図9】第2実施形態に係るステータの部分的な構成を示す
図2に対応した断面図である。
【
図10】第3実施形態に係るステータの部分的な構成を示す
図2に対応した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第1の実施形態>
以下、
図1~
図8を用いて、本発明の第1実施形態に係るモータ10について説明する。なお、各図においては、図面を見やすくする関係から、一部の符号を省略している場合がある。
【0025】
図1に示されるように、モータ10は、界磁であるロータ12が電機子であるステータ20の内側に同軸的に配置されるインナロータ型のモータとされている。ロータ12及びステータ20は、有底の円筒状に形成された図示しないケースの内側に同軸的に収容される構成になっている。以下、ステータ20の軸方向を「ステータ軸方向」と称し、ステータ20の周方向を「ステータ周方向」と称し、ステータ20の径方向を「ステータ径方向」と称する。
【0026】
ロータ12の中心には回転軸14が設けられており、ロータ12の外周側には複数の永久磁石16が設けられている。複数の永久磁石16は、ロータ12の周方向に並んで設けられており、ロータ12の外周側に形成された複数の磁石挿入孔(符号省略)の内側にそれぞれ挿入されている。なお、本発明におけるロータは、上記のロータ12のような磁石埋め込み型(Interior Permanent Magnet)に限らず、外表面に磁石が取り付けられた表面磁石型(Surface Permanent Magnet)であってもよい。
【0027】
図1及び
図2に示されるように、ステータ20は、複数(ここでは6個)のステータ分割体24と、複数(ここでは12個)の分割ヨーク構成コア38とによって構成されている。各ステータ分割体24は、
図3及び
図4に示されるように、一対のサポートコア26と、分布巻きコイルとしての同心巻きコイル30とによって構成されている。そして、上記6個のステータ分割体24が有する合計12個のサポートコア26と、上記12個の分割ヨーク構成コア38とによって、ステータコア22が構成されている。このステータコア22は、複数(ここでは12個)のスロット23を有している。
【0028】
複数のサポートコア26は、ステータコア22の一部を構成するものであり、各々がスロット23を有しており、ステータ周方向に等間隔に並んで配置されている。言い換えると、ステータコア22における各スロット23の縁部が、それぞれサポートコア26によって構成されている。各サポートコア26は、各スロット23を境にステータ周方向に分割された一対の分割サポートコア28によって構成されている。
【0029】
分割サポートコア28は、電磁鋼板からなる複数枚のコア片がステータ軸方向に積層されて構成されたものである。上記複数枚のコア片は、加締めや接着等の手段で互いに結合されている。なお、
図1~
図6では、分割サポートコア28を概略的に記載している。また、分割サポートコア28は、磁性金属粉体を圧粉成形して形成されたものでもよい。
【0030】
図2に示されるように、分割サポートコア28は、ステータ軸方向から見てステータ径方向に延在する径方向延在部28Aと、径方向延在部28Aにおけるステータ径方向外側の部位からステータ周方向の一方側に突出した周方向突出部28Bとによって構成されている。径方向延在部28Aにおけるステータ径方向外側の端部は、周方向突出部28Bよりもステータ径方向外側に突出した位置出し凸部28A1とされている。この位置出し凸部28A1は、ステータ軸方向視でステータ径方向外側へ向けて半円形状に凸をなしている。
【0031】
各サポートコア26では、一対の分割サポートコア28がステータ周方向において互いに反対向きの姿勢で配置されており、一対の分割サポートコア28の各周方向突出部28Bが互いに向かい合って配置されている。そして、一対の分割サポートコア28の各径方向延在部28Aの間にスロット23が形成されている。このスロット23は、一例として、ステータ軸方向視で略三角形状をなしており、ステータ径方向内側へ向かうほどステータ周方向の幅が減少している。このスロット23内には、同心巻きコイル30の一部である軸方向延在部30Aが配置されている。
【0032】
図7及び
図8に示されるように、同心巻きコイル30は、自己融着線32(
図8参照)が整列多層巻きによって長尺な略矩形環状に巻回された後に、その長手方向両側部分からなる一対のコイルエンド部30Bがプレス成形等の手段で所定の形状(
図4参照)に曲げられて製造されたものである。この同心巻きコイル30は、一対のコイルエンド部30Bと、ステータ軸方向に延在する一対の軸方向延在部30Aとによって構成されており、一対の軸方向延在部30Aを介して一対のコイルエンド部30Bが接続された構成になっている。なお、
図5及び
図7では、同心巻きコイル30を概略的に記載している。
【0033】
一対のコイルエンド部30Bは、ステータ径方向外側に曲げられており、ステータ軸方向視でステータ径方向内側が開放された略C字状をなしている。一対の軸方向延在部30Aは、一対のサポートコア26の各スロット23内に配置されている。各スロット23の内周面には、絶縁性を有する塗料又は樹脂からなる絶縁材34が設けられている。同心巻きコイル30において、各スロット23の内部に配置された部分である軸方向延在部30Aは、
図2及び
図6に示されるように、ステータ軸方向視でのスロット23の形状に合わせて略三角形状に成形されると共に、当該成形された状態で自己融着線32の接着剤により固められている。そして、この接着剤により、一対の分割サポートコア28が上記の絶縁材34を介して軸方向延在部30Aに固着されている。なお、本実施形態では、スロット23がオープンスロットとされているが、セミクローズドスロットやクローズドスロットとされた構成にしてもよい。
【0034】
上記構成のステータ分割体24を複数(ここでは6個)含んで構成されたステータ20では、6個のステータ分割体24がステータ周方向に互いにオーバーラップした状態で並べられており、12個のサポートコア26がステータ周方向に互いに間隔をあけて並べられている。各同心巻きコイル30の各コイルエンド部30Bは、所定の結線方法により結線される構成になっている。また、ステータ周方向に隣り合うサポートコア26の間には、分割ヨーク構成コア38が有するティース構成部38Aが嵌合されている。
【0035】
本実施形態では、ステータ周方向に並ぶ12個の分割ヨーク構成コア38によってヨーク構成コア36が構成されている。このヨーク構成コア36は、ステータコア22のヨークの少なくとも外周側(ここでは外周側を含む大部分)を構成するヨーク構成部38Bと、ステータコア22のティースの一部(ここではティースにおけるステータ周方向の中間部)を構成するティース構成部38Aとによって構成されている。なお、
図2においては、ステータコア22のヨーク及びティースの符号を省略している。このヨーク構成コア36は、ティース構成部38A毎にステータ周方向に分割(ここでは12分割)されており、その分割されたうちの一つが分割ヨーク構成コア38とされている。
【0036】
分割ヨーク構成コア38は、電磁鋼板からなる複数枚のコア片がステータ軸方向に積層されて構成されたものである。上記複数枚のコア片は、加締めや接着等の手段で互いに結合されている。なお、
図1では、分割サポートコア28を概略的に記載している。また、分割ヨーク構成コア38は、磁性金属粉体を圧粉成形して形成されたものでもよい。
【0037】
各分割ヨーク構成コア38のティース構成部38Aは、
図2に示されるように、ステータ周方向に隣り合うサポートコア26の間に嵌合(ここでは圧入)されている。これにより、各分割ヨーク構成コア38が複数のステータ分割体24に対して保持されている。なお、各分割ヨーク構成コア38同士が互いに接着又は溶着される構成にしてもよい。また、複数の分割ヨーク構成コア38からなるヨーク構成コア36を図示しないケースの内側に所謂締り嵌めによって固定する構成にしてもよい。
【0038】
上記のティース構成部38Aの嵌合により、ステータ周方向に隣り合うサポートコア26の間隔が均等になっており、各サポートコア26のスロット23内に軸方向延在部30Aが配置された各同心巻きコイル30がステータコア22に対して正確に位置決めされている。また、本実施形態では、各分割ヨーク構成コア38のヨーク構成部38Bには、サポートコア26の位置出し凸部28A1が嵌合する位置出し凹部(符号省略)が形成されている。これにより、より正確に上記の位置決めがなされている。
【0039】
次に、本実施形態に係るステータ分割体24の製造方法について説明する。この製造方法は、コイル製造工程と、サポートコア製造工程と、成形工程と、加熱工程と、コイルエンド成形工程とによって構成されている。
【0040】
コイル製造工程では、
図7及び
図8に示されるように、自己融着線32を整列多層巻きして、一様な断面を有する同心巻きコイル30を複数製造する。サポートコア製造工程では、電磁鋼板からなる複数枚のコア片を積層して、スロット23を有するサポートコア26(すなわち一対の分割サポートコア28からなるサポートコア26)を複数製造する。なお、サポートコア製造工程では、磁性金属粉体を圧粉成形することにより、サポートコア26を複数製造してもよい。また、コイル製造工程とサポートコア製造工程とは、何れか一方を先に実施してもよいし、両方を同時に実施してもよい。
【0041】
成形工程では、同心巻きコイル30の軸方向延在部30Aをサポートコア26のスロット23内に配置させ、当該軸方向延在部30Aをスロット23の形状に合わせて成形する。具体的には、一様な断面を有する軸方向延在部30A(
図8参照)をサポートコア26のスロット23内に配置させた状態で、当該軸方向延在部30Aを一対の分割サポートコアで挟み込んで加圧する。これにより、軸方向延在部30Aを
図6に示される略三角形状に成形する。
【0042】
次いで加熱工程では、同心巻きコイル30の軸方向延在部30Aを分割サポートコア28と一緒に加熱し、自己融着線32の接着剤を一時的に溶融させる。その後、自己融着線32の接着剤が冷却されて固化すると、同心巻きコイル30の軸方向延在部30Aが上記の成形状態で接着剤により固められる。
【0043】
次いで、コイルエンド成形工程では、同心巻きコイル30の一対のコイルエンド部30Bをプレス成形等の手段で所定の形状に曲げ加工する。これにより、ステータ分割体24が完成する。その後、製造された複数のステータ分割体24がステータ周方向に互いにオーバーラップした状態で並べられ、複数の分割ヨーク構成コア38と組み合わされると共に、各同心巻きコイル30の各コイルエンド部30Bが所定の結線方法により結線される。これにより、ステータ20が完成する。
【0044】
(作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0045】
本実施形態に係るモータ10は、永久磁石を有するロータ12がステータ20の内側に配置されている。このステータ20は、複数のステータ分割体24と、ヨーク構成コア36とを含んで構成されている。ステータ分割体24は、ステータコア22の一部を構成し、スロット23を有するサポートコア26と、整列多層巻きにされた自己融着線からなる同心巻きコイル30とを備えている。同心巻きコイル30は、スロット23内に配置された部分(軸方向延在部30A)がスロット23の形状に合わせて成形され且つ当該成形された状態で自己融着線32の接着剤により固められている。これにより、スロット23内に不要な隙間が存在し難くなるので、スロット23内の占積率を最大限に高めることができる。
【0046】
しかも、本実施形態では、サポートコア26は、スロット23を境にステータ周方向に分割された一対の分割サポートコア28によって構成されている。このため、同心巻きコイル30の軸方向延在部30Aをスロット内に配置させてスロット23の形状に合わせて成形する際には、軸方向延在部30Aを一対の分割サポートコア28で挟み込んで加圧すればよい。これにより、上記の成形が容易になる。
【0047】
また、本実施形態では、サポートコア26が有するスロット23の内周面に、絶縁性を有する塗料又は樹脂からなる絶縁材34が設けられている。これにより、サポートコア26と同心巻きコイル30との絶縁性を高めることができる。
【0048】
さらに、本実施形態では、ステータコア22は、複数のステータ分割体24が備える複数のサポートコア26と、ヨーク構成コア36とを含んで構成されている。これにより、各サポートコア26を小型にすることができるので、例えばサポートコア26のスロット23内に配置された同心巻きコイル30の一部を成形する際の作業性などが向上する。
【0049】
また、本実施形態では、上記のヨーク構成コア36が、ステータ周方向に分割された複数の分割ヨーク構成コア38によって構成されている。各分割ヨーク構成コア38は、ステータ周方向に隣り合うサポートコア26の間に嵌合され、ステータコア22のティースの一部を構成するティース構成部38Aを有している。このティース構成部38Aの上記嵌合により、ステータ周方向に隣り合うサポートコア26の間隔が均等になるため、各サポートコア26のスロット23内に軸方向延在部30Aが配置された各同心巻きコイル30をステータコア22に対して正確に位置決めすることができる。
【0050】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。なお、第1実施形態と基本的に同様の構成及び作用については、第1実施形態と同符号を付与しその説明を省略する。
【0051】
<第2の実施形態>
図9は、本発明の第2実施形態に係るステータ50の部分的な構成が
図2に対応した断面図にて示されている。このステータ50では、ヨーク構成コア36が複数の分割ヨーク構成コア38に分割されていない構成になっている。このヨーク構成コア36は、ティース構成部38Aを有しておらず、複数の分割サポートコア28がステータ周方向に互いに接触した構成となっている。この実施形態では、上記以外の構成は第1実施形態と同様とされている。この実施形態においても、第1実施形態と同様に、スロット23内の占積率を高めることができる。
【0052】
<第3の実施形態>
図10は、本発明の第3実施形態に係るステータ60の部分的な構成が
図2に対応した断面図にて示されている。このステータ60は、ヨーク構成コア36を備えておらず、複数の分割サポートコア28がステータコア22の外周まで延長されると共に、ステータ周方向に互いに接触している。この実施形態では、上記以外の構成は第1実施形態と同様とされている。この実施形態においても、第1実施形態と同様に、スロット23内の占積率を高めることができる。
【0053】
<実施形態の補足説明>
上記各実施形態では、分布巻きコイルとして同心巻きコイル30が適用された場合について説明したが、これに限らず、分布巻きコイルは、重ね巻きコイルや波巻きコイルであってもよい。
【0054】
また、上記各実施形態では、サポートコア26が一対の分割サポートコア28に分割された構成にしたが、これに限るものではない。すなわち、サポートコアのスロットがオープンスロットの場合、スロットの開口からスロット内に分布巻きコイルの一部を挿入して加圧することにより、当該一部をスロットの形状に合わせて成形するようにしてもよい。
【0055】
また、上記各実施形態では、スロット23の内周面に絶縁材34が設けられた構成にしたが、これに限らず、絶縁材34が省略された構成にしてもよい。
【0056】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記各実施形態に限定されないことは勿論である。
【符号の説明】
【0057】
10 モータ
12 ロータ
16 永久磁石
20 ステータ
22 ステータコア
23 スロット
24 ステータ分割体
26 サポートコア
28 分割サポートコア
30 同心巻きコイル(分布巻きコイル)
32 自己融着線
34 絶縁材
36 ヨーク構成コア
38 分割ヨーク構成コア
38A ティース構成部
38B ヨーク構成部
50 ステータ
60 ステータ