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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】車体構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/06 20060101AFI20241010BHJP
   B23K 11/00 20060101ALI20241010BHJP
   B23K 11/20 20060101ALI20241010BHJP
   F16B 5/08 20060101ALI20241010BHJP
   F16B 5/12 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
B62D25/06 A
B23K11/00 570
B23K11/20
F16B5/08 A
F16B5/12 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021062028
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022157671
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2024-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142550
【弁理士】
【氏名又は名称】重泉 達志
(74)【代理人】
【識別番号】100180758
【弁理士】
【氏名又は名称】荒木 利之
(72)【発明者】
【氏名】中川 修一
(72)【発明者】
【氏名】横田 恵介
(72)【発明者】
【氏名】星野 司
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-93959(JP,A)
【文献】実開平5-1663(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0023684(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/06
B23K 11/00
B23K 11/20
F16B 5/08
F16B 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金属からなる板状の第1車体部材の所定方向の端末部が、前記第1金属と異なる第2金属からなる板状の第2車体部材へ接合される車体構造であって、
前記第1金属からなり、前記第1車体部材と前記第2車体部材の接合部に介在し前記第1車体部材の前記端末部に沿って延びる介在部を有する板状の第3車体部材を備え、
前記第3車体部材の介在部は、前記第3車体部材の前記所定方向の端末をなし、前記所定方向の端末側に、厚さ方向について前記第2車体部材寄りに位置する一般部と、前記第3車体部材の延在方向について前記一般部と隣接し厚さ方向について前記第1車体部材寄りに位置する台部と、を有し、
前記第3車体部材の前記台部は、前記第1車体部材の前記端末部と溶接により接合される溶接接合部を有し、
前記第3車体部材の前記一般部は、前記第2車体部材及び前記第3車体部材を重ねた状態で厚さ方向へ突出させる平面視円形のかしめ結合により、前記第2車体部と結合されるかしめ結合部を有し、
前記第3車体部材の前記一般部は、前記かしめ結合部について前記溶接接合部と反対側に切欠部を有する車体構造。
【請求項2】
前記第3車体部材の前記一般部は、前記介在部の延在方向について前記台部の両端側に隣接して形成され、
前記台部に隣接する前記各一般部は、前記かしめ結合部及び前記切欠部をそれぞれ有する請求項1に記載の車体構造。
【請求項3】
前記第1金属は、アルミニウムであり、
前記第2金属は、スチールである請求項1または2に記載の車体構造。
【請求項4】
前記第1車体部材は、ルーフパネルであり、
前記第2車体部材は、左右方向へ延びる骨格部材である請求項1から3のいずれか1項に記載の車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異種金属からなる車体部材を接合させた車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の運動性能の向上等を目的として、車体の骨格部材をスチール製としたまま、車体の外板部材をアルミニウム製とする場合がある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載には、アルミニウム製のルーフパネルを、スチール製のサイドメンバに接合させる技術が開示されている。特許文献1に記載の車体構造では、ルーフパネルのフランジ部に切欠部を形成し、切欠部から露出するようスチール製の継手部材をルーフパネルに摩擦攪拌接合により接合し、継手部材における切欠部からの露出部分をサイドメンバとスポット溶接により接合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-30100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の車体構造では、ルーフパネルと継手部材を摩擦攪拌接合により強固に接合しているため、車体の塗装工程等でルーフパネルが高温に曝された場合、ルーフパネルと継手部材の相対的な移動が許容されず、熱膨張率差に起因して生じるルーフパネルの内部応力が高くなり、ルーフパネルが変形するおそれがある。
【0005】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、異種金属からなる車体部材同士を接合する際に、接合対象となる車体部材において熱膨張率差に起因して生じる内部応力の低減を図ることのできる車体構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、第1金属からなる板状の第1車体部材の所定方向の端末部が、前記第1金属と異なる第2金属からなる板状の第2車体部材へ接合される車体構造であって、前記第1金属からなり、前記第1車体部材と前記第2車体部材の接合部に介在し前記第1車体部材の前記端末部に沿って延びる介在部を有する板状の第3車体部材を備え、前記第3車体部材の介在部は、前記第3車体部材の前記所定方向の端末をなし、前記所定方向の端末側に、厚さ方向について前記第2車体部材寄りに位置する一般部と、前記第3車体部材の延在方向について前記一般部と隣接し厚さ方向について前記第1車体部材寄りに位置する台部と、を有し、前記第3車体部材の前記台部は、前記第1車体部材の前記端末部と溶接により接合される溶接接合部を有し、前記第3車体部材の前記一般部は、前記第2車体部材及び前記第3車体部材を重ねた状態で厚さ方向へ突出させる平面視円形のかしめ結合により、前記第2車体部と結合されるかしめ結合部を有し、前記第3車体部材の前記一般部は、前記かしめ結合部について前記溶接接合部と反対側に切欠部を有する車体構造が提供される。
【0007】
この車体構造によれば、第1車体部材の端末部は、第3車体部材の介在部の台部に溶接接合され、第3車体部材の介在部の一般部が第2車体部材とかしめ結合により結合される。これにより、第1車体部材は、第3車体部材を介して第2車体部材に固定される。
車体の温度が変化した際、第1金属からなる第2車体部材と、第2金属からなる第3車体部材とは熱膨張率が異なることから、第2車体部材及び第3車体部材に比較的大きな内部応力が発生する。このとき、第2車体部材と第3車体部材とは、平面視円形のかしめ結合により結合されているので、かしめ結合部の中心軸について相対的な回転方向の移動が許容される。また、車体の温度の変化時にかしめ結合が緩まっていることから、第3車体部材は第2車体部材に対して移動しやすく、第3車体部材の第2車体部材に対して伸長または収縮する動きが、第3車体部材に形成された切欠部により吸収される。このとき、第3車体部材の介在部の一般部は延在方向に伸長または収縮し、台部は一般部の延在方向の移動に追従して厚さ方向に移動する。
このように、車体の温度が変化した際、主として第2車体部材が変形することから、接合対象である第1車体部材及び第3車体部材に比較的大きな内部応力が生じることはない。
【0008】
また、上記車体構造において、前記第3車体部材の前記一般部は、前記介在部の延在方向について前記台部の両端側に隣接して形成され、前記台部に隣接する前記各一般部は、前記かしめ結合部及び前記切欠部をそれぞれ有してもよい。
【0009】
この車体構造によれば、第2車体部材と第3車体部材の溶接接合部が、第3車体部材の介在部の延在方向について、第2車体部材と第3車体部材のかしめ結合部及び第3車体部材の切欠部の間に配置されるので、第3車体部材をバランスよく変形させることができる。
【0010】
また、上記車体構造において、前記第1金属は、アルミニウムであり、前記第2金属は、スチールであってもよい。
【0011】
この車体構造によれば、アルミニウムからなる第1車体部材が、スチールからなる第3車体部材へ、アルミニウムからなる第2車体部材を介して固定される。
【0012】
また、上記車体構造において、前記第1車体部材は、ルーフパネルであり、前記第2車体部材は、左右方向へ延びる骨格部材であってもよい。
【0013】
この車体構造によれば、アルミニウムからなる第1車体部材が、スチールからなる第3車体部材へ、アルミニウムからなる第2車体部材を介して固定される。
【0014】
この車体構造によれば、ルーフパネルが骨格部材へ第2車体部材を介して固定され、車体の温度が変化した際、第2車体部材が変形することから、車両の外板をなすルーフパネルに比較的大きな内部応力が生じることはない。
【発明の効果】
【0015】
本発明の車体構造によれば、異種金属からなる車体部材同士を接合する際に、接合対象となる車体部材において熱膨張率差に起因して生じる内部応力の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態を示す車両の外観斜視図である。
図2】車体上部構造の概略斜視図である。
図3】車体上部構造のルーフパネル及び端末プレートを外した状態を示す概略斜視図である。
図4】車体上部構造のルーフパネルを外した状態を示す概略斜視図である。
図5】車体上部構造のルーフパネルを外した状態を示す概略平面図である。
図6】車体上部構造の概略側面断面図である。
図7】車体上部構造の概略正面断面図である。
図8】高温に曝された際の挙動を示す車体上部構造の概略正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1から図8は本発明の一実施形態を示すものであり、図1は本発明の一実施形態を示す車両の外観斜視図、図2は車体上部構造の概略斜視図、図3は車体上部構造のルーフパネル及び端末プレートを外した状態を示す概略斜視図、図4は車体上部構造のルーフパネルを外した状態を示す概略斜視図、図5は車体上部構造のルーフパネルを外した状態を示す概略平面図、図6は車体上部構造の概略側面断面図、図7は車体上部構造の概略正面断面図、図8は高温に曝された際の挙動を示す車体上部構造の概略正面断面図である。
【0018】
図1に示すように、この車両1は、室内空間の上部を仕切るルーフパネル2を備えている。図2に示すように、ルーフパネル2は、車両1の外板をなし、前端側でウインドシールドガラス100の後端側を上方から覆っている。本実施形態においては、ルーフパネル2は、第1金属としての板状のアルミニウムからなる。ルーフパネル2は、意匠面をなすパネル本体部21と、本体部21の前端から前方へ向かって下側に傾斜する傾斜部22と、傾斜部22の前端から略前方へ延びるフランジ23と、を有する。本実施形態においては、フランジ23がルーフパネル2の前側の端末部をなしている。
【0019】
図3に示すように、この車両1の車体構造は、左右一対のフロントピラー3の上端を連結し左右方向へ延びるレールフロント4を有し、ルーフパネル2の前端側の端末部がレールフロント4の前端側の端末部に固定される。本実施形態においては、骨格部材としての各フロントピラー3及びレールフロント4は、第2金属としての板状のスチールからなる。レールフロント4は、側面断面にて、略前後へ延びる底壁41と、底壁41の前端から略上方へ延びる前壁42と、前壁42の上端から略前方へ延びる前側フランジ43と、底壁41の後端から略上方へ延びる後壁44と、後壁44の上端から略後方へ延びる後側フランジ45と、を有する。本実施形態においては、前側フランジ43が、レールフロント4の前側の端末部をなしている。
【0020】
図4に示すように、この車体1の車体構造は、ルーフパネル2とレールフロント4の間に配置され、アルミニウムからなる板状の端末プレート5を有する。また、この車両1の車体構造は、レールフロント4の後端に接続され後方へ延びるブレース6と、レールフロント4におけるブレース6との接続部分を補強する補強部材7と、を有する。端末プレート5は、ルーフパネル2とレールフロント4の接合部に介在し各フランジ23,43に沿って延びる介在部51と、介在部51の後端から略下方へ延びる後壁52と、を有する。介在部51は、端末プレート5の前側の端末をなし、ルーフパネル2の前側の端末をなすフランジ23及びレールフロント4の前側の端末をなす前側フランジ43と平面視で重なるよう配置される。図5に示すように、後壁52は、レールフロント4の前壁42に沿って形成される。また、図6に示すように、レールフロント4の後端側には、ブレース6及び補強部材7が接合される。
【0021】
図4に示すように、端末プレート5の介在部51は、前端側に、厚さ方向についてルーフパネル2のフランジ23寄りに位置する一般部53と、各フランジ23,43の延びる方向、すなわち左右方向について一般部53と隣接し厚さ方向についてレールフロント4の前側フランジ43寄りに位置する台部54と、を有する。図5に示すように、台部54は、ルーフパネル2のフランジ23と溶接により接合される溶接接合部54aを有する。図5中、溶接接合部54aを〇印に×印を記入して示している。また、一般部53は、レールフロント4及び端末プレート5を重ねた状態で厚さ方向へ突出させる平面視円形のかしめ結合により、レールフロント4の前側フランジ43と結合されるかしめ結合部53aを有する。さらに、一般部53は、かしめ結合部53aについて溶接接合部54aと反対側に形成される切欠部53bを有する。
【0022】
本実施形態においては、図4に示すように、台部54が左右方向について間隔をおいて複数形成され、各台部54の左右両側にかしめ結合部53a及び切欠部53を有する一般部53が配置される。介在部51の後端側は、左右方向にわたって各台部54と一体的に同じ高さに形成される。本実施形態においては、図7に示すように、ルーフパネル2のフランジ23と端末プレート5の台部54との接合は、スポット溶接により行われる。図7中、スポット溶接による溶接接合部54aを〇印に×印を記入して示している。また、図7に示すように、レールフロント4の前側フランジ43と端末プレート5の一般部53との結合は、レールフロント4と端末プレート5を重ねた状態で、所定の治具を端末プレート5側からレールフロント4側へ押しつけ、レールフロント4及び端末プレート5をともに変形させることにより行われる。
【0023】
以上のように構成された車体構造によれば、ルーフパネル2のフランジ23は、端末プレート5の介在部51の台部54に溶接接合され、端末プレート5の介在部51の一般部53がレールフロント4の前側フランジ43とかしめ結合により結合される。これにより、ルーフパネル2は、端末プレート5を介してレールフロント4に固定される。
【0024】
車体の温度が変化した際、アルミニウムからなる端末プレート5と、スチールからなるレールフロント4とは熱膨張率が異なることから、端末プレート5及びレールフロント4に比較的大きな内部応力が発生する。このとき、端末プレート5とレールフロント4とは、平面視円形のかしめ結合により結合されているので、かしめ結合部53aの中心軸について相対的な回転方向の移動が許容される。また、車体の温度の変化時にかしめ結合が緩まっていることから、端末プレート5はレールフロント4に対して移動しやすく、端末プレート5のレールフロント4に対して伸長または収縮する動きが、端末プレート5に形成された切欠部53bにより吸収される。このとき、端末プレート5の介在部51の一般部53は延在方向に伸長または収縮し、台部54は一般部53の延在方向の移動に追従して厚さ方向に移動する。本実施形態においては、端末プレート5の溶接接合部54aが、左右方向について、かしめ結合部53a及び切欠部53bの間に配置されるので、端末プレート5をバランスよく変形させることができる。
【0025】
例えば、車体の塗装工程等で高温に曝された場合、熱膨張率の比較的大きなアルミニウムからなるルーフパネル2及び端末プレート5が、熱膨張率の比較的小さなスチールからなるレールフロント4よりも延在方向へ伸長する挙動を示す。このとき、図8に示すように、端末プレート5は、各一般部53が左右方向について各切欠部53b側へ移動するとともに、台部54が各一般部53に対する高さが低くなるよう変形する。
【0026】
以上詳述したように、本実施形態の車体構造によれば、ルーフパネル2を異種金属であるレールフロント4へ接合する際に、ルーフパネル2において熱膨張率差に起因して生じる内部応力の低減を図ることができる。これにより、同種金属のスポット溶接を行う設備で、車体の骨格部材と異なる金属を外板に使用することができ、車両の設計自由度が飛躍的に向上する。
【0027】
尚、前記実施形態においては、ルーフパネル及びレールフロントの接合部分に本発明を適用したものを示したが、例えば、ピラー等のアウタパネル及びインナパネルの接合部分に本発明を適用することもでき、異種金属が接合される箇所ならばどのような箇所でも適用可能である。
【0028】
また、前記実施形態においては、溶接接合部54aを有する台部54の左右両側にかしめ結合部53a及び切欠部53bを配置したものを示したが、かしめ結合部53a及び切欠部53bは少なくとも一方に配置されていればよい。
【0029】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0030】
2 ルーフパネル
4 レールフロント
5 端末プレート
23 フランジ
43 前側フランジ
51 介在部
53 一般部
53a 溶接接合部
54 台部
54a かしめ結合部
54b 切欠部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8