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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】環状担持触媒
(51)【国際特許分類】
   C07F 15/00 20060101AFI20241010BHJP
   B01J 31/22 20060101ALI20241010BHJP
   B01J 31/24 20060101ALI20241010BHJP
   C07F 15/06 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
C07F15/00 B CSP
C07F15/00 C
B01J31/22 Z
B01J31/24 Z
C07F15/06
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019546086
(86)(22)【出願日】2017-10-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 FR2017052980
(87)【国際公開番号】W WO2018078304
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-10-15
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-28
(31)【優先権主張番号】16/60471
(32)【優先日】2016-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】520179305
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ パリ-サクレー
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS-SACLAY
(73)【特許権者】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【弁理士】
【氏名又は名称】保田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【弁理士】
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】ユク,ヴァンサン,ジェルマン
(72)【発明者】
【氏名】マルティニ,シリル,オーギュスト,ロジェ
(72)【発明者】
【氏名】アブデラ,アブラハム
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ,エマニュエル
【合議体】
【審判長】井上 典之
【審判官】瀬良 聡機
【審判官】小石 真弓
(56)【参考文献】
【文献】特開平2-229198(JP,A)
【文献】国際公開第2011/050300(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/124468(WO,A1)
【文献】特開2005-255564(JP,A)
【文献】F.Arnaud-Neu 外7名、Chem.Eur.J、1999年、5、No.1、p.175~186
【文献】Lada N.Puntus 外3名、Eur.J.Inorg.Chem.、2007年、p.2315~2326
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D,C07F,B01J
CAPLUS/REGISTRY STN
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(IC)の化合物:
【化1】
(IC)
(式中:
*と**は結合して環状化合物を形成し、
nは、7~20の整数を表し、
Xは、3~8個の炭素原子を含む線状または分岐状アルキルから選択され、
は、1~8個の炭素原子を含む線状または分岐状アルキル、1~8個の炭素原子を含むO-線状または分岐状アルキルまたはO-アリール又はO-アルキルアリール(前記アルキルは1~3個の炭素原子の直鎖状または分岐状アルキルである)を表し、
m+は、酸化状態mの金属または酸化状態mの複数の金属を含む金属クラスターmは0、1、2、3、4または5であり、Mは遷移金属IB族、IIB族、IIIB族、IVB族、VB族、VIB族、VIIB族またはVIIIB族であり、
Lは、前記金属に連結した1つ以上の中性のまたは負に帯電した配位子からなり、
基Qは、ホスフィン、ホスホナイト、ホスフィナイト、N-複素環カルベン、及びサレン配位子からなる群から選択される)。
【請求項2】
請求項1に記載の以下の一般式(IC)の化合物:
【化2】
(式中:
*と**は結合して環状化合物を形成し、
n、X、Mm+、R及びLは請求項1で定義した通りであり、
Qは、ホスフィン、ホスホナイト、ホスフィナイト、N-複素環カルベンからなる群から選択される)。
【請求項3】
前記Qが、ホスフィン、ホスホナイト、ホスフィナイト、1,3-イミダゾリリデン、1,3-イミダゾリニリデン、1,2,4-トリアゾリリデン、1,3-ベンズイミダゾリリデン、1,2,4-トリアゾリリデン及び1,3-チアゾリリデンからなる群から選択される、請求項2に記載の以下の一般式(IC)の化合物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の式(IC)の化合物(式中、前記基Rは、n-オクチル、t-ブチル、O-ベンジル及びO-アルキルから選択される)。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の式(IC)の化合物(式中、n=8または16である)。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の式(IC)の化合物
(式中、
Xは、3~6個の炭素原子を有する線状アルキルであり、
基Qは、ホスフィン、ホスホナイト、ホスフィナイトならびにN-複素環カルベンからなる群から選択される、
は、n-オクチル、t-ブチル、O-ベンジルまたはO-アルキルを表し、
m+は、酸化状態mの金属または酸化状態mの複数の金属を含む金属クラスターmは0、1、2、3、4または5であり、Mは遷移金属IB族、IIB族、IIIB族、IVB族、VB族、VIB族、VIIB族またはVIIIB族であり、
Lは、前記金属に連結した1つ以上の中性のまたは負に帯電した配位子からなる)。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の式(IC)の化合物:
【化3】
(式中:
*と**は結合して環状化合物を形成し、
n、X、Rは請求項1で定義した通りであり、
Qは、ホスフィン、ホスホナイト、ホスフィナイト、N-複素環カルベンからなる群から選択され、
m+は、酸化状態mの金属または酸化状態mの複数の金属を含む金属クラスター(mは0、1、2、3、4または5)であり、Mは遷移金属IB族、IIB族、IIIB族、IVB族、VB族、VIB族、VIIB族またはVIIIB族であり、
Lは、前記金属に連結した1つ以上の中性のまたは負に帯電した配位子からなる)。
【請求項8】
前記Qが、ホスフィン、ホスホナイト、ホスフィナイト、1,3-イミダゾリリデン、1,3-イミダゾリニリデン、1,2,4-トリアゾリリデン、1,3-ベンズイミダゾリリデン、1,2,4-トリアゾリリデン及び1,3-チアゾリリデンからなる群から選択される、請求項7に記載の以下の一般式(IC)の化合物。
【請求項9】
前記Mm+が、Ni、Pd、Ru、Rh、Cu、CoおよびPtからなる群から選択される、請求項7又は8に記載の式(IC)の化合物。
【請求項10】
請求項1に記載の式(IC)の化合物:
【化4】
(式中:
*と**は結合して環状化合物を形成し、
n、X、m+、R1、及びLは請求項1で定義したとおりであり、
基Qはサレン配位子から選択される)。
【請求項11】
【化5】
から選択される請求項1に記載の式(IC)の化合物。
【請求項12】
還元反応、酸化反応、炭素-炭素結合形成反応、炭素-ヘテロ原子結合形成反応、COの存在下でのカルボニル化反応、COの存在下での気相カルボキシル化反応、及び不斉触媒反応からなる群から選択される反応における触媒としての請求項1~11のいずれか1項に記載の式(IC)の化合物の使用。
【請求項13】
カルボニル、アルケン、アルキンまたはアレーンの水素化、
スズキ、ヘック、スティル、クマダ及びソノガシラ反応、
炭素-窒素結合形成、炭素-酸素結合形成、炭素-リン結合形成、及び炭素-硫黄結合形成、
フィッシャー・トロプシュ、
エポキシド開環反応及び
C-C又はC-X結合形成を可能とする不斉触媒反応
からなる群から選択される反応における触媒としての請求項1~11のいずれか1項に記載の式(IC)の化合物の請求項12に記載の使用。
【請求項14】
式(IC)の化合物:
【化6】
(式中:*と**は結合して環状化合物を形成し、
n、X、L、Mm+及びRは請求項1で定義した通りであり、
基Qはホスフィン、ホスホナイト、ホスフィナイト、N-複素環カルベンからなる群から選択される)を調製するための方法であって、
式(IA)の化合物:
【化7】
(*と**は結合して環状化合物を形成し、n、X及びRは請求項1で定義した通りであり、前記化合物(IA)は、ホスフィン、ホスホナイト、ホスフィナイト、N-複素環カルベンからなる群から選択される基Qを有する)を
(L’) m+ 金属錯体又は金属M m+ (Mm+は、酸化状態mの金属または酸化状態mの複数の金属を含む金属クラスターmは0、1、2、3、4または5であり、Mは遷移金属IB族、IIB族、IIIB族、IVB族、VB族、VIB族、VIIB族またはVIIIB族であり、L’は、前記金属に結合した1つ以上の中性のまたは負に帯電した配位子から構成される)と接触させる工程を含む、前記方法。
【請求項15】
式(IC)の化合物:
【化8】
(式中:*と**は結合して環状化合物を形成し、
n、X、L、Mm+及びRは請求項1で定義した通りであり、Qはサレン配位子からなる群から選択される)を調製するための方法であって、
式(II)の化合物:
【化9】
(式中:*と**は結合して環状化合物を形成し、
Vは、Cl、Br、I、OSOMe、OSO(C)及びOSOCFからなる群から選択される脱離基を表す)を、アジ化ナトリウムと接触させて、
式(VIII)の化合物:
【化10】
(式中:*と**は結合して環状化合物を形成し、GはN 基を表す)を得る工程を含み、
式(VIII)の前記化合物を3-(tert-ブチル)-5-エチニル-2-ヒドロキシベンズアルデヒドと接触させて、式(IB)の化合物
【化11】
(式中、*と**は結合して環状化合物を形成し、Q’は下記の式:
【化12】
で表される基である)
を得る工程を含み、
次いで、式(IB)の前記化合物を、式(VII)の化合物
【化13】
と接触させて式(IA)の化合物
【化14】
(式中、*と**は結合して環状化合物を形成する)
を得る工程を含み、
式(IA)の前記化合物を、
式LMm+の金属錯体(式中、M、L及びmは請求項1で定義した通りである)と、酢酸コバルト、パラ-トルエンスルホン酸の存在下で接触させて、式(IC)の前記化合物を得る工程を含む、式(IC)の化合物を調製するための方法。
【請求項16】
式(IC)の前記化合物が不均一系触媒として使用される、請求項12又は13に記載の使用。
【請求項17】
前記触媒の金属の浸出率が、この触媒中の金属含有量の総重量の10%未満である、請求項12、13及び16のいずれか1項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カリックスアレーンをベースとする配位子、そのような配位子を含む金属錯体及び均一系または不均一系触媒としてのそれらの使用に関する。
【0002】
金属触媒作用は、しかしながら、所定の反応を加速させるかまたは可能にし、従来の有機合成経路(時に多くの工程数を必要とする)よりもはるかに低い製造コストで多数の化合物を利用可能にする方法を示す。
【0003】
ヒト用途の製品、特に医薬用途の製品中の残留金属に関する要件は、現在、そのような製品の製造における金属不活性化剤の使用にとって障害となる。例えば、クラス1A及び1Bの遷移金属の残留率は、経口投与については10ppm未満でなければならず、非経口投与については1ppm未満でなければならない。
【0004】
費用のかかる及び/または面倒な精製工程を必要とせずに最終生成物中の金属の量を減少させるために様々な方法が提案されてきた。
【0005】
これらの方法の中で、不均一系触媒作用が最も重要な方法である。しかしながら、不均一系触媒の欠点は、類似の均一系触媒と比較してそれら性能が劣ることである。逆に、均一系触媒であって、それらが関与した反応の後の単純な濾過によって(または沈殿工程の後または限外濾過によって)最終生成物から分離され得る均一系触媒の使用は、探求された代替法である。これらの2つの経路に共通しているのは、配位子の脱錯化による溶液中の金属の浸出、ひいては最終生成物中のその存在である。
【0006】
本発明の目的は、既存の触媒と比較して高い触媒活性を有する触媒である。
【0007】
本発明の別の目的は、均一系触媒としてまたは不均一系触媒の容易に分離可能な生成物として使用することが可能な触媒である。
【0008】
本発明のなお更なる目的は、触媒であって、それが関与する反応中の金属の浸出を大きく減少させることが可能であり、かつ非常に少量の、特に100ppm未満の、または更に10もしくは5ppm未満の金属を含有する最終生成物を得ることが可能な触媒である。
【0009】
本発明は、一般式(I)の化合物:
【化1】
(式中:
nは、7~20または20を超える、特に21~220の整数を表し、
Xは、1~10個の炭素原子を含む線状または分岐状アルキル、1~5個の単位を含むポリエチレングリコールまたはエチレングリコール(0~10個の炭素原子を含む線状または分岐状アルキル)-アリールであり、そのアリールは特にフェニル及びナフチルから選択され、
は、1~8個の炭素原子を含む線状または分岐状アルキル、1~8個の炭素原子を含むO-線状または分岐状アルキルまたはO-(0~3個の炭素原子の直鎖状または分岐状アルキル)-アリールを表し、
m+は、酸化状態mの金属または酸化状態mの複数の金属を含む金属クラスターであり、mは0、1、2、3、4または5、特に0、1、2または3であり、
Lは、その金属に連結した1つ以上の中性のまたは負に帯電した配位子からなり、前記化合物は、式(IA)(式中、tは0であり、Zはホスフィン及びホスフィンオキサイドを除くホスホナイト及びホスフィナイトなどのリン配位子、1,3-イミダゾリリデン、1,3-イミダゾリニリデン、1,2,4-トリアゾリリデン、1,3-ベンズイミダゾリリデン、1,2,4-トリアゾリリデン及び1,3-チアゾリリデンなどのN-複素環カルベン、またはサレン配位子からなる群から選択される基Qを表す)を有し、前記化合物は、式(IB)(式中、tは0であり、Zは1,3-イミダゾリウム、1,3-イミダゾリニウム、1,3-ベンズイミダゾリウム、1,2,4-トリアゾリウム、1,3-チアゾリウムなどのアゾリウム、ホスフィン及びホスフィンオキサイドを除くリン配位子の前駆体、またはカルコゲニド、特にホスフィンスルフィド、またはサレン配位子前駆体、特にサリチルアルデヒドの誘導体からなる群から選択される基Qの前駆体である基Q’を表す)を有し、前記化合物は、式(IC)(式中、tは1であり、Zはホスフィン、ホスホナイト、ホスフィナイトなどのリン配位子、ならびに1,3-イミダゾリリデン、1,3-イミダゾリニリデン、1,2,4-トリアゾリリデン、1,3-ベンズイミダゾリリデン、1,2,4-トリアゾリリデン及び1,3-チアゾリリデンなどのN-複素環カルベン、またはサレン配位子からなる群から選択される基Qを表す)を有する)に関する。
【0010】
本発明の意味の範囲内で、「1~10個の炭素原子を含む線状または分岐状アルキル」という用語は、1~10個の炭素原子を含む、飽和、線状または分岐状の非環式炭素鎖である。これはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル及びデシルである。プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル及びデシルの定義は全ての可能性のある異性体を含む。例えば、ブチルという用語は、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル及びtert-ブチルを含む。アルキル鎖中の1つ以上の水素原子がフッ素原子またはCF基で置換され得る。
【0011】
本発明の意味の範囲内で、「エチレングリコール単位」という用語は、式-CH-CH-Oの基である。それ故、1~5個のエチレングリコール単位を有するポリエチレングリコールは、式-(CH-CH-CH(式中、nは1~5である)の鎖である。
【0012】
本発明の意味の範囲内で、「アリール」という用語は、それ自体がもう一つの飽和、不飽和または芳香族と縮合していてもよい5~6個の炭素原子を含む芳香族単環である。アリールという用語には、限定されないが、1つ以上の水素原子がアルキル、ハロゲン、アルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、アミノ、アミド、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、カルボン酸またはカルボン酸エステル及びナフチルから独立して選択される基で置き換えられたフェニル及びその誘導体が含まれる。置換アリールの例には、限定されないが、2-、3-または4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル、2-、3-または4-シアノフェニル、2-、3-または4-ニトロフェニル、2-、3-または4-フルオロ-、クロロ-、ブロモ-またはヨード-フェニル、2-、3-または4-メトキシフェニルが含まれる。
【0013】
本発明の意味の範囲内で、表現(1~10個の炭素原子を含有する直鎖状または分岐状アルキル)-アリールは、アリールに連結した上述したような1~10個の炭素原子を含む、飽和、線状または分岐状の非環式炭素鎖を含む基である。1~10個の炭素原子を含む線状または分枝状アルキル)-アリールの例には、ベンジル及びホモベンジル基が含まれる。
【0014】
本発明の目的のため、「Mm+」は、酸化状態0、1、2、3、4または5、特に0、1、2または3の金属原子を表す。前記金属原子は、安定で中性な種を得るために必要に応じて配位子として連結される。例えば、金属が酸化状態2のパラジウムである場合、それは2つの塩素イオン、本発明による化合物のQ部分及びピリジンまたはその誘導体の1つなどの別の配位子Lに連結され得る。金属Mが結合する配位子の性質は、金属前駆体及び金属錯体の調製に使用される条件に応じて変化する。金属Mはまた、金属クラスターまたはクラスターの一部であり得る。そのような凝集体の例には、金属カルボニル凝集体、特にトリルテニウムドデカカルボニルRu(CO)12が含まれる。
【0015】
N-複素環カルベンは当業者によく知られており、雑誌の記事及び書籍の主題とされてきた。我々は、特にN-複素環カルベンに関して、書籍N-Heterocyclic carbenes:Effective Tools for Organometallic Synthesis(Steven P.Nolan Editor;ISBN:978-3-527-33490-2)に言及し得る。
【0016】
N-複素環カルベンは以下の一般式を有する(Mはそれらが結合している金属を表す):
【化2】
(式中:
は、
・i-プロピル及びアダマンチルなどのアルキル、
・式CH-COOR(式中、Rはアルキルまたはアリールである)の基、
・特に1つ以上のアルキル、特にメチルまたはi-プロピル、1つ以上のアルコキシ、特にメトキシで任意に置換されたフェニルなどのアリール、
・ピリジル、フリル、ピロリル及びインドリルなどのヘテロアリール
から選択されるがこれらに限定されない)。
【0017】
本発明の意味の範囲内で、「ホスフィン」という用語は、リン原子によってカリックス[n]アレーンの残部に結合した式PRの化合物である。限定されないが、基Rとして:
・メチル、エチル、プロピル、n-ブチル、t-ブチル、オクチル、シクロヘキシル、アダマンチルなどのアルキル、
・特に1つ以上のアルキル、特にメチル、1つ以上のアルコキシ、特にメトキシで任意に置換されたフェニル、任意に置換されたナフチルなどのアリール、
・ピリジル、フリル、ピロリル及びインドリルなどのヘテロアリールが含まれ、または
・2つのR基は一緒に炭素環を形成し得る。
【0018】
ホスフィンの多くの例が先行技術において知られており、対応する配位子は本出願の教示から当業者によって導入され得る。
【0019】
より有利には、ホスフィンは、ジシクロヘキシルホスフィン、ジフェニルホスフィン及びジ-tert-ブチルホスフィンからなる群から選択される。
【0020】
本発明の意味の範囲内で、「ホスホナイト」という用語は、式P(OR)(式中、Rは上記のホスフィンについて定義した通りである)の化合物である。
【0021】
本発明の意味の範囲内で、「ホスフィナイト」という用語は、式PR(OR)(式中、R及びRは、互いに独立して、上記のホスフィンについて定義した通りである)の化合物である。
【0022】
本発明の意味の範囲内で、「サレン配位子」という用語は、式
【化3】
(式中:
基R、R’、R、R’及びRは:
・メチル、エチル、プロピル、n-ブチル、t-ブチル、オクチル、シクロヘキシル、アダマンチルなどのアルキル、
・特に1つ以上のアルキル、特にメチル、1つ以上のアルコキシ、特にメトキシで任意に置換されたフェニル、任意に置換されたナフチルなどのアリール、
・ピリジル、フリル、ピロリル及びインドリルなどのヘテロアリールから選択されるか、または
・2つのR基が一緒に炭素環を形成し得、
基R、R’、RまたはR’のうちの1つを介してカリックス[n]アレーンの残部に連結される)の化合物である。
【0023】
基を有する炭素は、ラセミ、エナンチオ濃縮またはエナンチオ純粋であり得る。
【0024】
特定の実施形態では、本発明は、一般式(I)の化合物:
【化4】
(式中:
nは、7~20または20を超える、特に21~220の整数を表し、
Xは、1~10個の炭素原子を含む線状または分岐状アルキル、1~5個のエチレングリコール単位を含むポリエチレングリコールまたは(0~10個の炭素原子を含む線状または分岐状アルキル)-アリールであり、そのアリールは特にフェニル及びナフチルから選択され、
は、1~8個の炭素原子を含む線状または分岐状アルキル、1~8個の炭素原子を含むO-線状または分岐状アルキルまたはO-(0~3個の炭素原子の直鎖状または分岐状アルキル)-アリールを表し、
m+は、酸化状態mの金属または酸化状態mの複数の金属を含む金属クラスターであり、mは0、1、2、3、4または5、特に0、1、2または3であり、
Lは、その金属に連結した1つ以上の中性のまたは負に帯電した配位子であり、前記化合物は、式(IA)(式中、tは0であり、Zはホスフィン及びホスフィンオキサイドを除くホスホナイト及びホスフィナイトなどのリン配位子、1,3-イミダゾリリデン、1,3-イミダゾリニリデン、1,2,4-トリアゾリリデン、1,3-ベンズイミダゾリリデン、1,2,4-トリアゾリリデン及び1,3-チアゾリリデンなどのN-複素環カルベンからなる群から選択される基Qを表す)を有し、
前記化合物は、式(IB)(式中、tは0であり、Zは1,3-イミダゾリウム、1,3-イミダゾリニウム、1,3-ベンズイミダゾリウム、1,2,4-トリアゾリウム、1,3-チアゾリウムなどのアゾリウム、ホスフィン及びホスフィンオキサイドを除くリン配位子の前駆体またはカルコゲニド、特にホスフィンスルフィドからなる群から選択される基Qの前駆体である基Q’を表す)を有し、
前記化合物は、式(IC)(式中、tは1であり、Zはホスフィン、ホスホナイト、ホスフィナイトなどのリン配位子、ならびに1,3-イミダゾリリデン、1,3-イミダゾリニリデン、1,2,4-トリアゾリリデン、1,3-ベンズイミダゾリリデン、1,2,4-トリアゾリリデン及び1,3-チアゾリリデンなどのN-複素環カルベンからなる群から選択される基Qを表す)を有する)に関する。
【0025】
一実施形態では、本発明によるカリックス[n]アレーンは、7~20個のフェノール単位を含有する。これらのカリックスアレーンは、純粋な形態で単離され得るか、または異なるサイズのカリックスアレーンを含む混合物の形態であり得る。
【0026】
有利な実施形態では、カリックスアレーンは純粋な形態である。
【0027】
より有利には、本発明のカリックスアレーンは、カリックス[8]アレーン及びカリックス[16]アレーンである。
【0028】
別の実施形態では、カリックスアレーンは、20個を超えるフェノール単位、特に21~220個のフェノール単位を含有する。これらのいわゆる「幅広(wide)」または「巨大(giant)」カリックスアレーンは、特に、国際出願WO2014/033407及びWO2014/033406に記載されている方法に従って調製される。それらはカリックスアレーンの混合物として単離され、それ故、数nはフェノール単位の平均数を示す。
【0029】
有利には、nが20を超える本発明のカリックスアレーンは、21~35、35~50、51~199または100~220個のフェノール単位を含有する。より好ましくは、これらのカリックスアレーン中のフェノール単位の平均数は約35である。
【0030】
本発明による化合物では、基Xは、好ましくは、2~8個または3~8個、特に2、3、4、5、6、7または8個の炭素原子を含む線状アルキル鎖である。より有利には、前記線状アルキル鎖は3~6個の炭素原子を含む。特定の実施形態では、基Xは、3個または4個の炭素原子、特に4個の炭素原子を有する線状アルキルである。そのため、本発明は、Xが2~8個または3~8個の炭素原子、特に2~6個または3~6個の炭素原子、好ましくは3または4個の炭素原子を含む線状アルキルである、上記で定義された式(I)の化合物に関する。
【0031】
本発明による化合物では、基Rは、好ましくは、n-オクチル、t-ブチル、O-ベンジル及びO-アルキル、特にO-メチル、O-エチル、O-プロピル及びO-n-オクチル、好ましくはt-ブチル、O-ベンジルから選択される。特定の実施形態では、RはO-ベンジルである。
【0032】
一実施形態では、本発明による化合物は、少なくとも2つの式(IA)の化合物、少なくとも2つの式(IB)の化合物または少なくとも2つの式(IC)の化合物の混合物の形態である。
【0033】
本発明の第1の目的は、パターンカリックス[n]アレーンをベースとする配位子に関し、前記配位子は以下の一般式(IA):
【化5】
(式中:
n、X、Rは上記で定義した通りである)を有する。
【0034】
式(IA)の化合物において、基Qは、ホスフィン及びホスフィンオキサイドを除くホスホナイト及びホスフィナイトなどのリン配位子、ならびに1,3-イミダゾリリデン、1,3-イミダゾリニリデン、1,2,4-トリアゾリリデン、1,3-ベンズイミダゾリリデン、1,2,4-トリアゾリリデン及び1,3-チアゾリリデンなどのN-複素環カルベンの群から選択される。
【0035】
そのため、式(IA)の化合物では、化合物は金属Mに結合することができる。
【0036】
本発明の第2の目的は、以下の式(IB)の化合物:
【化6】
(式中:
n、X、Rは上記で定義した通りである)である。
【0037】
式(IB)の化合物において、基Q’は、1,3-イミダゾリウム、1,3-イミダゾリニウム、1,3-ベンズイミダゾリウム、1,2,4-トリアゾリウム、1,3-チアゾリウムなどのアゾリウム、ホスフィン及びホスフィンオキサイドを除くリン配位子の前駆体またはカルコゲニド、特にホスフィンスルフィドからなる群から選択される基Qの前駆体である。
【0038】
「基Qの前駆体」という用語は、本発明の意味の範囲内で、部分Q’が金属とのその会合または金属との同時結合の前に基Qをもたらす可能性が高いことを意味する。例えば、Q’がイミダゾリウムである式(IB)の化合物は、アルコキシド、特にt-ブトキシドまたはナトリウムなどの塩基との反応によって、Qがイミダゾリリデンである式(IA)の化合物の形成をもたらし得る。
【0039】
ホスフィンオキサイドはホスフィン前駆体の例である。それらは、ジアルキルホスフィン、例えばジシクロヘキシルホスフィンまたはジ-t-ブチルホスフィンなどの水分及び/または酸素ホスフィンに対して非常に敏感な場合に特に有用である。
【0040】
好ましくは、Q’は、1,3-イミダゾリウム、1,3-イミダゾリニウム、1,2,4-トリアゾリウム、1,3-ベンズイミダゾリウム及び1,3-チアゾリウムからなる群から選択されるアゾリウムである。これらはイミダゾリウムアリールを含み、アリールは特に1,3,5-メシチルまたは2,6-ジイソプロピル-フェニルである。
【0041】
本発明の第3の目的は、上記で定義された式(IA)の配位子を含む金属錯体である。本発明の意味の範囲内で、「金属錯体」という用語は、式(IA)の化合物を含む化合物であって、Q基の少なくとも1つが、好ましくは酸化状態0、1、2、3、4または5、特に0、1、2または3を有する金属原子Mに結合している、化合物を意味する。
【0042】
予想外にも、本発明の発明者は、式Qの配位子の金属Mを多く含有する化合物が、本発明による配位子を用いて得ることができることを明らかにした。
【0043】
金属原子Mの数は、当然ながら、配位子の性質、金属及び化学量論(すなわち、比M/Q)に依存する。例えば、金属がロジウムでQがホスフィンを表す場合及び金属がパラジウムでQがイミダゾリリデンを表す場合、カリックス[8]アレーンを用いて8個の金属原子を含有する金属錯体が得られた。
【0044】
そのため、本発明による金属錯体は、特に以下の式(IC):
【化7】
(式中:
n、X、Mm+、R及びLは上記で定義した通りであり、
tは、1であり、
Qは、ホスフィン、ホスホナイト、ホスフィナイトなどのリン配位子、ならびに1,3-イミダゾリリデン、1,3-イミダゾリニリデン、1,2,4-トリアゾリリデン、1,3-ベンズイミダゾリリデン、1,2,4-トリアゾリリデン及び1,3-チアゾリリデンなどのN-複素環カルベンからなる群から選択される)である。
【0045】
Q基は特に1,3-イミダゾリリデン、特にアリール-イミダゾリリデン(アリールは特に1,3,5-メシチルまたは2,6-ジイソプロピル-フェニルである)である。有利には、本発明による、特に式(IC)の金属錯体は、IB族、IIB族、IIIB族、IVB族、VB族、VIB族、VIIB族またはVIIIB族に属する少なくとも1つの遷移金属を含有する。
【0046】
より好ましくは、金属は触媒活性を有することが知られている金属から選択される。これらには、Mn、Cr、Fe、Co、Ni、Pd、Ru、Rh、Au、Pt、Cu、Ag、Bi、Re、Mo、Ir、V、Cd及びZnからなる群から選択される金属、特にNi、Pd、Ru、Rh、Cu、CoまたはPtからなる群から選択される金属が含まれる。
【0047】
更により有利には、金属は、Pd、Pd2+、Rh、Rh1+、Rh3+、Co2+、Co3+、Ru及びRu2+からなる群から選択される。金属はまた、Ru(CO)12などの金属クラスターの一部であり得る。
【0048】
有利な実施形態では、本発明は、各Q部分が単一原子Mに結合している金属錯体に関する。そのため、本発明は、金属Mの数が以下の式(IC)のカリックス[n]アレーンのnに等しい金属錯体に関する:
【化8】
(式中:
n、X及びRは上記で定義した通りであり、
Qは、ホスフィン、ホスホナイト、ホスフィナイトなどのリン配位子、ならびに1,3-イミダゾリリデン、1,3-イミダゾリニリデン、1,2,4-トリアゾリリデン、1,3-ベンズイミダゾリリデン、1,2,4-トリアゾリリデン及び1,3-チアゾリリデンなどのN-複素環カルベンからなる群から選択され、
m+は、酸化状態mの金属または酸化状態mの複数の金属を含む金属クラスターであり、mは0、1、2、3、4または5、特に0、1、2または3であり、Lは、その金属に結合した1つ以上の中性のまたは負に帯電した配位子から構成される)。
【0049】
錯体中のMm+L基は、特に、Ru(CO)12、(ノルボルナジエン)RhCl、(シクロオクタジエン)RhCl、RhCl、PdCl、Pd(dba)から得られる錯体であり得る。ホスフィンまたはカルベンとの他の遷移金属錯体が知られており、本出願の教示を適用することによって当業者によって調製され得る。
【0050】
本発明はまた、式(IC)の化合物:
【化9】
(式中:
n、X、Rは上記で定義した通りであり、
Qは、ホスフィン、ホスホナイト、ホスフィナイトなどのリン配位子、ならびに1,3-イミダゾリリデン、1,3-イミダゾリニリデン、1,2,4-トリアゾリリデン、1,3-ベンズイミダゾリリデン、1,2,4-トリアゾリリデン及び1,3-チアゾリリデンなどのN-複素環カルベンからなる群から選択され、
m+は、酸化状態mの金属または酸化状態mの複数の金属を含む金属クラスター(mは0、1、2、3、4または5、特に0、1、2または3である)、特に遷移金属IB族、IIB族、IIIB族、VA族、IVB族、VB族、VIB族、VIIB族またはVIIIB族であり、特にNi、Pd、Ru、Rh、Cu、CoまたはPtからなる群から選択され、
Lは、その金属に連結した1つ以上の中性のまたは負に帯電した配位子からなる)に関する。
【0051】
本発明はまた、以下の式の化合物から選択される式(IC)の化合物に関する:
【化10】
【0052】
式(IC)の前記化合物は、特にDMF、DMSO、THF、NMP、ジオキサン、トルエン、クロロホルム及びジクロロメタンからなる群から選択される溶媒中の溶液の形態であり得る。
【0053】
式(IC)の前記化合物はまた、特にメタノール、エタノール、イソプロパノール及びブタノールなどのアルコール、水またはこれらの溶媒の混合物からなる群から選択される溶媒中の懸濁液の形態であり得る。
【0054】
式(IC)の化合物はまた、乾燥固体の形態であり得る。
【0055】
第1の特定の実施形態では、本発明は、式(IA1)の化合物(式中:
nは、7~20の整数を表し、
Xは、3~6個の炭素原子を有する線状アルキルであり、
tは0であり、Zはホスフィン及びホスフィンオキサイドを除くリン配位子、特にホスホナイト及びホスフィナイト、ならびに1,3-イミダゾリリデン、1,3-イミダゾリニリデン、1,2,4-トリアゾリリデン、1,3-ベンズイミダゾリリデン、1,2,4-トリアゾリリデン及び1,3-チアゾリリデンなどのN-複素環カルベン、好ましくはホスフィンまたは1,3-イミダゾリリデンからなる群から選択される基Qを表し、
は、n-オクチル、t-ブチル、O-ベンジルまたはO-アルキル、特にO-メチル、O-エチル、O-プロピルまたはO-n-オクチル、好ましくはt-ブチルまたはO-ベンジルを表す)、
または式(IB1)の式(IA1)の前記化合物の前駆体(式中、Q’は、1,3-イミダゾリウム、1,3-イミダゾリニウム、1,3-ベンズイミダゾリウム、1,2,4-トリアゾリウム、1,3-チアゾリウムなどのアゾリウム、ホスフィン及びホスフィンオキサイドを除くリン配位子の前駆体またはカルコゲニド、特にホスフィンスルフィド、好ましくは1,3-イミダゾリウムまたはホスフィンオキサイドからなる群から選択される)、
または式(IA1)、特に式(IC1)の化合物を含む金属錯体(式中:
m+は、酸化状態mの金属または酸化状態mの複数の金属を含む金属クラスターであり、mは0、1、2、3、4または5、特に0、1、2または3である)に関する。
【0056】
第2の特定の実施形態では、本発明は、式(IA2)の化合物(式中:
nが7~20の整数を表し、Xが4個の炭素原子を有する線状アルキルであり、
tは0であり、Zはホスフィン及びホスフィンオキサイドを除くリン配位子、特にホスホナイト及びホスフィナイト、ならびに1,3-イミダゾリリデン、1,3-イミダゾリニリデン、1,2,4-トリアゾリリデン、1,3-ベンズイミダゾリリデン、1,2,4-トリアゾリリデン及び1,3-チアゾリリデンなどのN-複素環カルベン、好ましくはホスフィンまたは1,3-イミダゾリリデンからなる群から選択される基Qを表し、
は、n-オクチル、t-ブチル、O-ベンジルまたはO-アルキル、特にO-メチル、O-エチル、O-プロピルまたはO-n-オクチル、好ましくはt-ブチルまたはO-ベンジルを表す)、
または式(IB2)に対応する式(IA2)の前記化合物の前駆体(式中、Q’は、1,3-イミダゾリウム、1,3-イミダゾリニウム、1,3-ベンズイミダゾリウム、1,2,4-トリアゾリウム、1,3-チアゾリウムなどのアゾリウム、ホスフィン及びホスフィンオキサイドを除くリン配位子の前駆体またはカルコゲニド、特にホスフィンスルフィド、好ましくは1,3-イミダゾリウムまたはホスフィンオキサイドからなる群から選択される)、
または式(IA2)、特に式(IC2)の化合物を含む金属錯体(式中:
m+は、酸化状態mの金属または酸化状態mの複数の金属を含む金属クラスターであり、mは0、1、2、3、4または5、特に0、1、2または3である)に関する。
【0057】
第3の特定の実施形態では、本発明は、以下の式(IA3)の化合物(式中:
nは、8であり、
Xは、4個の炭素原子を有する線状アルキルであり、
tは0であり、Zはホスフィン及びホスフィンオキサイドを除くリン配位子、特にホスホナイト及びホスフィナイト、ならびに1,3-イミダゾリリデン、1,3-イミダゾリニリデン、1,2,4-トリアゾリリデン、1,3-ベンズイミダゾリリデン、1,2,4-トリアゾリリデン及び1,3-チアゾリリデンなどのN-複素環カルベン、好ましくはホスフィンまたは1,3-イミダゾリリデンからなる群から選択される基Qを表し、
は、n-オクチル、t-ブチル、O-ベンジルまたはO-アルキル、特にO-メチル、O-エチル、O-プロピルまたはO-n-オクチル、好ましくはt-ブチルまたはO-ベンジルを表す)、
または式(IB3)の式(IA3)の前記化合物の前駆体(式中、Q’は、1,3-イミダゾリウム、1,3-イミダゾリニウム、1,3-ベンズイミダゾリウム、1,2,4-トリアゾリウム、1,3-チアゾリウムなどのアゾリウム、ホスフィン及びホスフィンオキサイドを除くリン配位子の前駆体またはカルコゲニド、特にホスフィンスルフィド、好ましくは1,3-イミダゾリウムまたはホスフィンオキサイドからなる群から選択される)、
または式(IA3)、特に式(IC3)の化合物を含む金属錯体(式中:
m+は、酸化状態mの金属または酸化状態mの複数の金属を含む金属クラスターであり、mは0、1、2、3、4または5、特に0、1、2または3である)に関する。
【0058】
本発明の第4の目的は、一般式(I)の化合物:
【化11】
(式中:
nは、7~20または20を超える、特に21~220の整数を表し、
Xは、1~10個の炭素原子を含む線状または分岐状アルキル、1~5個の単位を含むポリエチレングリコールまたはエチレングリコール(0~10個の炭素原子を含む線状または分岐状アルキル)-アリールであり、そのアリールは特にフェニル及びナフチルから選択され、
は、1~8個の炭素原子を含む線状または分岐状アルキル、1~8個の炭素原子を含むO-線状または分岐状アルキルまたはO-(0~3個の炭素原子の直鎖状または分岐状アルキル)-アリールを表し、
m+は、酸化状態mの金属または酸化状態mの複数の金属を含む金属クラスターであり、mは0、1、2、3、4または5、特に0、1、2または3であり、
Lは、その金属に連結した1つ以上の中性のまたは負に帯電した配位子からなり、前記化合物は、式(IA)(式中、tは0であり、Zはサレン配位子、特にエナンチオ純粋なサレン配位子、特にシクロヘキシルジアミン及びジフェニルエチレンの誘導体ならびに上記サレン配位子の誘導体からなる群から選択される基Qを表す)を有し、
前記化合物は、式(IB)(式中、tは0であり、Zはサレン配位子の前駆体、特にサリチルアルデヒドの誘導体からなる群から選択される基Qの前駆体である基Q’を表す)を有し、
前記化合物は、式(IC)(式中、tは1であり、Zはサレン配位子、特にエナンチオ純粋なサレン配位子、特にシクロヘキシルジアミン及びジフェニルエチレンの誘導体ならびに上記サレン配位子の誘導体からなる群から選択される基Qを表す)を有する)に関する。
【0059】
有利な実施形態では、本発明はパターンカリックス[n]アレーンをベースとする配位子に関し、前記配位子は以下の一般式(IA):
【化12】
(式中:
n、X、Rは上記で定義した通りであり、
Q部分は、サレン配位子、特にエナンチオ純粋なサレン配位子、特にシクロヘキシルジアミン及びジフェニルエチレンの誘導体ならびに上記サレン配位子の誘導体からなる群から選択される)を有する。
【0060】
有利な実施形態では、本発明は以下の式(IB)の化合物:
【化13】
(式中:
n、X及びRは上記で定義した通りであり、
基Q’は、サレン配位子の前駆体、特にサリチルアルデヒドの誘導体からなる群から選択される基Qの前駆体である)である。
【0061】
有利な実施形態では、本発明は以下の式(IC)の化合物:
【化14】
(式中:
n、X、Mm+、R及びLは上記で定義した通りであり、
tは、1であり、
Qは、サレン配位子、特にエナンチオ純粋なサレン配位子、特にシクロヘキシルジアミン及びジフェニルエチレンの誘導体ならびに上記サレン配位子の誘導体からなる群から選択される)である。本発明の第5の目的は、有機化学反応における触媒としての上記で定義された式(IC)の化合物の使用に関する。
【0062】
本発明による化合物は、それらの特定の溶解性のため、均一系触媒としてまたは不均一系触媒としてのいずれかで使用され得る。
【0063】
上記で定義された式(IA)、(IB)及び(IC)の化合物は実際には所定の溶媒に可溶であり、他のものには可溶ではない。
【0064】
一実施形態では、式(IC)の化合物は、それらが可溶である溶媒中で均一系触媒として用いられ得る。均一系触媒作用のために使用可能な溶媒の例として、DMF、DMSO、THF、ジオキサン、NMP、トルエン、クロロホルム及びジクロロメタンを挙げることができる。
【0065】
均一系触媒として使用される場合、式(IC)の化合物は、それらが可溶ではなく、かつ化学反応有機物の生成物が可溶である溶媒を反応媒体に添加することによる最終生成物の濾過によって分離され得る。そのような溶媒の例はアルコール、水またはこれらの溶媒の混合物である。式(IC)の化合物はまた、式(IC)の化合物が可溶であり、かつ反応生成物が可溶ではない溶媒で前記反応生成物を洗浄することによって反応生成物から分離され得る。
【0066】
別の実施形態では、式(IC)の化合物は、それらが不溶である溶媒中で不均一系触媒として使用され得る。そのような溶媒の例はメタノール、エタノール、イソプロパノール及びブタノールなどのアルコール、水またはこれらの溶媒の混合物である。
【0067】
本発明において、式(IC)の化合物は反応媒体中の懸濁液の形態であり得る。別の実施形態によれば、式(IC)の化合物は、反応器の壁に堆積され得、この場合、例えば、式(IC)の化合物を含有する溶液を蒸発させることによって、有機化学反応が実行され、連続流反応器用のカートリッジ内に導入されるか、または有機もしくは無機材料中に分散される。
【0068】
有利には、本発明は、特にHの存在下でのカルボニル、アルケン、アルキンまたはアレーンの水素化などの還元反応、特にOの存在下での酸化反応、スズキ反応、ヘック、スティル、クマダ及びソノガシラなどの炭素-炭素結合形成反応、炭素-ヘテロ原子結合形成反応、とりわけ炭素-窒素、炭素-酸素、炭素-リン、及び炭素-硫黄結合形成、フィッシャー・トロプシュなどのCOの存在下でのカルボニル化反応、COの存在下での気相カルボキシル化反応及びエポキシド開環反応などの不斉触媒反応またはC-CもしくはC-X結合形成を可能とする不斉触媒反応からなる群から選択される反応における触媒としての上記で定義された式(IC)の化合物の使用に関する。
【0069】
そのため、本発明は、特にHの存在下でのカルボニル、アルケン、アルキン及びアレーンの水素化などの還元反応、特にOの存在下での酸化反応、スズキ、ヘック、スティル、クマダ及びソノガシラ反応などの炭素-炭素結合形成反応、炭素-ヘテロ原子結合形成反応、特に炭素-窒素、炭素-酸素、炭素-リン、及び炭素-硫黄結合形成、フィッシャー・トロプシュなどのCOの存在下でのカルボニル化反応、COの存在下での気相カルボキシル化反応、及びエポキシド開環反応などの不斉触媒反応またはC-CもしくはC-X結合形成のための不斉触媒反応からなる群から特に選択される有機化学反応における触媒としての上記で定義された式(IC)の化合物の使用に関する。
【0070】
一実施形態では、本発明は、炭素-炭素結合形成反応、特にヘック反応またはスズキ反応での、Mがパラジウムである上記で定義された式(IC)の化合物の使用に関する。有利には、基QがN-複素環カルベン、特にイミダゾリリデンである化合物を使用する。より有利には、式(IC)の化合物は、特にQがN-複素環カルベン、特にイミダゾリリデンである式(IC1)、(IC2)または(IC3)の化合物である。
【0071】
別の実施形態では、本発明は、特に二重結合及び/または芳香環、特にアルケンを水素化するための水素化反応における、Mがロジウムである上記で定義された式(IC)の化合物の使用に関する。本発明のロジウム錯体の芳香族環または二重結合に対する選択性は、反応の温度を変えることによって制御され得る。有利には、基Qがリン配位子、特にホスフィンである化合物を使用する。より有利には、式(IC)の化合物は、特にQがリン配位子、特にホスフィンである式(IC1)、(IC2)または(IC3)の化合物である。
【0072】
別の実施形態では、本発明は、エポキシド開環のエナンチオ選択的反応における、Mがコバルトである上記で定義された式(IC)の化合物の使用に関する。有利には、Q部分がサレン配位子、特に特にエナンチオ純粋なサレン配位子、特にシクロヘキシルジアミン及びジフェニルエチレンの誘導体ならびに上記サレン配位子の誘導体である化合物を使用する。別の実施形態では、式(IC)の化合物は触媒として使用することができ、その場合、この触媒の金属浸出率は、この触媒中の金属含有量の総重量の10%未満、特に5%未満である。
【0073】
本発明の第6の目的は、上記で定義された式(I)の化合物を調製するための方法に関する。
【0074】
一実施形態では、本発明は、上記で定義された式(IA)の化合物:
【化15】
(式中、Qは、第2級ホスホナイト、またはホスフィン及びホスフィンオキサイド以外の第2級ホスフィナイトなどのリン配位子である)を調製するための方法であって、
式(II)の化合物:
【化16】
(式中:
n、X、Rは上記で定義した通りであり、
Vは、特にCl、Br及びIなどのハロゲンならびにOSOMe、OSO(C)及びOSOCFなどのスルホネートからなる群から選択される脱離基を表す)を、
式QAの化合物(式中、Qは、第2級ホスホナイト、またはホスフィン及びホスフィンオキサイドを除く第2級ホスフィナイトなどのリン配位子からなる群から選択され、AはNa、K及びLiからなる群から選択されるアルカリ金属を表すか、またはAはHである)と接触させる工程を含み、反応は塩基の存在下で行われる、方法に関する。
【0075】
この実施形態では、Q基は求核置換反応によって導入される。Xが(1~10個の炭素原子を含む線状または分枝状アルキル)-アリールを表す場合、Q基は好適な金属触媒を用いてアリールに導入され得る。別の実施形態によれば、式(IA)の化合物は、フェノールの遊離OH基を有するカリックス[n]アレーンを式Q-XWの化合物(式中、Wは特にCl、Br及びIなどのハロゲンならびにOSOMe、OSO(C)及びOSOCFなどのスルホネートからなる群から選択される脱離基を表す)と反応させることによって調製され得る。
【0076】
第2の実施形態では、本発明は、上記で定義された式(IB)の化合物:
【化17】
(式中、Qは、ホスフィン及びホスフィンオキサイドを除くリン配位子またはカルコゲニド、特にホスフィンスルフィドから選択される)を調製するための方法であって、式(II)の化合物:
【化18】
(式中:
n、X、Rは上記で定義した通りであり、
Vは、特にCl、Br及びIなどのハロゲンならびにOSOMe、OSO(C)及びOSOCFなどのスルホネートからなる群から選択される脱離基を表す)を、
式Q’-Aの化合物(式中、Q’は、ホスフィン及びホスフィンオキサイド以外のリン配位子、カルコゲニド、特に第2級ホスフィンスルフィド、第2級ホスフィネートまたは第2級ホスホネートからなる群から選択され、AはNa、K及びLiからなる群から選択されるアルカリ金属を表すか、またはAはHである)と接触させる工程を含み、反応は塩基の存在下で行われる、方法に関する。
【0077】
カリウム塩、ナトリウム及びリチウムホスフィン、ホスフィナイト及びホスホナイトは市販されている既知の化合物である。
【0078】
別の実施形態によれば、式(IB)の化合物は、OH遊離フェノール基を有するカリックス[n]アレーンを式QXWの化合物(式中、Wは特にCl、Br及びIなどのハロゲンならびにOSOMe、OSO(C)及びOSOCFなどのスルホネートからなる群から選択される脱離基を表す)と反応させることによって調製され得る。
【0079】
第3の実施形態では、本発明は、上記で定義された式(IB)の化合物:
【化19】
(式中、Q’は、1,3-イミダゾリウム、1,3-イミダゾリニウム、1,3-ベンズイミダゾリウム、1,2,4-トリアゾリウム、1,3-チアゾリウムなどのアゾリウムからなる群から選択される)を調製するための方法であって、式(II)の化合物:
【化20】
(式中:
n、X、Rは上記で定義した通りであり、
Vは、特にCl、Br及びIなどのハロゲンならびにOSOMe、OSO(C)及びOSOCFなどのスルホネートからなる群から選択される脱離基を表す)を、
1,3-イミダゾール、1,3-イミダゾリン、1,3-ベンズイミダゾール、1,2,4-トリアゾール及び1,3-チアゾールなどのアゾールからなる群から選択される式Q’の化合物と接触させる工程を含む、方法に関する。
【0080】
部分Qがアゾリウムである式(IB)の化合物の調製は、当業者によく知られている他の方法論で具体化され得る。これは、例えば、Vがアゾールを表す式(II)の化合物をアルキルハライドなどのアルキル化剤でアルキル化する方法である。別の実施形態によれば、式(IB)の化合物は、フェノールの遊離OH基を有するカリックス[n]アレーンを式Q’-XWの化合物(式中、Wは特にCl、Br及びIなどのハロゲンならびにOSOMe、OSO(C)及びOSOCFなどのスルホネートからなる群から選択される脱離基を表す)と反応させることによって調製され得る。
【0081】
第4の実施形態では、本発明は、上記で定義された金属錯体、特に式(IC)の化合物を調製するための方法に関する。
【0082】
式(IC)の化合物の調製のための方法は、使用される金属前駆体及び配位子の性質に応じて異なる。当業者は、本特許出願に基づいて、対応する金属錯体の調製法を知るだろう。
【0083】
そのため、本発明は、一実施形態では、上記で定義された式(IC)の化合物:
【化21】
(式中:
n、X、L、Mm+及びRは上記で定義した通りであり、
Zはホスフィン、ホスホナイト、ホスフィナイト、ならびに1,3-イミダゾリリデン、1,3-イミダゾリニリデン、1,2,4-トリアゾリリデン、1,3-ベンズイミダゾリリデン、1,2,4-トリアゾリリデン及び1,3-チアゾリリデンなどのN-複素環カルベンからなる群から選択される基Qを表す)を調製するための方法であって、
式Iの化合物(式中、tは0であり、Zはホスフィン、ホスホナイト、ホスフィナイトなどのリン配位子、ならびに1,3-イミダゾリリデン、1,3-イミダゾリニリデン、1,2,4-トリアゾリリデン、1,3-ベンズイミダゾリリデン、1,2,4-トリアゾリリデン及び1,3-チアゾリリデンなどのN-複素環カルベンからなる群から選択される基Qを表す)を、
【化22】
式(L’)Mm+の金属錯体(式中、Mm+は、酸化状態mの金属または酸化状態mの複数の金属を含む金属クラスターであり、mは0、1、2、3、4または5、特に0、1、2または3であり、L’は、その金属に結合した1つ以上の中性のまたは負に帯電した配位子から構成される)と接触させる工程を含む、方法に関する。
【0084】
金属錯体、特に式(IC)の調製に使用される金属前駆体は、例えば、ロジウムの場合はアルケンロジウム錯体、例えば[(ノルボルナジエン)RhCl]、[(シクロオクタジエン)RhCl]または塩、例えばRhCl、パラジウムの場合はPdCl、(シクロペンタジエン)PdCl、パラジウム錯体及びジベンジリデンアセトン、例えばPd(dba)及びPd(dba)、Pd(CHCN)Clまたはコバルトの場合はCOClまたはCo(OAc)である。
【0085】
式(IC)の化合物の調製に使用される金属前駆体は、当業者によく知られており、所望の錯体を得るために前駆体及び適切な反応条件を選択することができる。
【0086】
Qがアゾリリデンである式(IC)の化合物は、当業者に知られている様々な方法論に従って調製され得る。金属前駆体がN-複素環カルベン(塩基性配位子など)の形成をもたらし得る配位子を含有しない場合、N-複素環カルベンは金属交換反応に使用するための錯体(例えば、銀を有する錯体)を調製する前に調製され得る。その錯体は、その場でのカルベン発生によって、すなわち、カルベンを発生させることが可能な配位子を含有する金属前駆体との反応によって、または塩基の存在下で調製され得る。別の実施形態では、本発明は、上記で定義された式(IC)の化合物:
【化23】
(式中:
n、X、L、Mm+及びRは上記で定義した通りである)を調製する化合物を調製するための方法であって、
上記で定義された式(IB)の化合物
【化24】
(式中、Q’は、1,3-イミダゾリウム、1,3-イミダゾリニウム、1,3-ベンズイミダゾリウム、1,2,4-トリアゾリウム及び1,3-チアゾリウムなどのアゾリウムからなる群から選択される)を、
式(L’)Mm+の金属錯体(式中、Mm+は、酸化状態mの金属であり、mは0、1、2、3、4または5、特に0、1、2または3であり、L’は、その金属に結合した1つ以上の中性のまたは負に帯電した配位子から構成される)と任意に塩基の存在下で接触させる工程を含む、方法に関する。本発明はまた、上記で定義された式(IC)の化合物:
【化25】
(式中:
n、X、L、Mm+及びRは上記で定義した通りである)を調製する別の方法であって、
(a)上記で定義された式(IB)の化合物:
【化26】
(式中、Q’は、1,3-イミダゾリウム、1,3-イミダゾリニウム、1,3-ベンズイミダゾリウム、1,2,4-トリアゾリウム、1,3-チアゾリウムなどのアゾリウムからなる群から選択される)を塩基と接触させて、上記で定義された式(IA)の1,3-イミダゾリリデン、1,3-イミダゾリニリデン、1,2,4-トリアゾリリデン、1,3-ベンズイミダゾリリデン、1,2,4-トリアゾリリデンまたは1,3-チアゾリリデンなどのN-複素環カルベンを得る工程、(b)工程(a)で得られたN-複素環カルベンを、式(L’)Mm+の金属錯体(式中、Mm+は、酸化状態mの金属または酸化状態mの複数の金属を含む金属クラスターであり、mは0、1、2、3、4または5、特に0、1、2または3であり、L’は、その金属に結合した1つ以上の中性のまたは負に帯電した配位子から構成される)と接触させて式(IC)の化合物を得る工程を含む、方法に関する。
【0087】
本発明の第7の目的は、以下の式(IV)の化合物:
【化27】
(式中:
n及びRは上記で定義した通りであり、
Xは、4~8個の炭素原子、特に4個の炭素原子を含有する線状または分岐状アルキルであり、
Vは、特にCl、Br及びIなどのハロゲンならびにSOMe、SO(C)及びSOCFなどのスルホネートからなる群から選択される脱離基を表す)である。
【0088】
本発明の第8の目的は、上記で定義された式(IV)の化合物:
【化28】
を調製するための方法であって、
塩基、好ましくは炭酸ナトリウムまたはカリウム、水素化物、及び溶媒、好ましくはジメチルホルムアミド(DMF)の存在下で、
一般式
【化29】
の化合物及び一般式-X-Vの基前駆体(式中、X及びVは上記で定義した通りである)、例えばアルキルジハライド、好ましくは1-ブロモ-4-クロロブタンが関与する求核置換反応により、
一般式(IV)の化合物:
(式中、R及びnは上記で定義した通りであり、nは好ましくは7~20、特に8である)を得ることを含む、方法である。
【0089】
この方法論は、カリックス[n]アレーンに90%の効率(先行技術の51%に対して)を提供する。
【0090】
有利には、式(IV)の前記化合物は、別の溶媒の非存在下で、アルコール、好ましくはメタノールまたはエタノール中での少なくともパルプ化工程によって単離される。有利な実施形態では、式(V)の化合物は、メタノールでの第1の摩砕及びエタノールでの第2の摩砕によって単離される。
【0091】
この方法論を使用して、クロマトグラフィ工程を伴わずに、式(IV)の生成物がほぼ純粋に、すなわち95%を超える純度で得られる。本発明は更に、上記で定義された式(IA)の化合物:
【化30】
(式中、Qは、ホスフィン及びホスフィンオキサイドを除く、第2級ホスフィナイトまたは第2級ホスホナイトなどのリン配位子である)を調製するため、
または
上記で定義された式(IB)の化合物:
【化31】
(式中、Q’は、1,3-イミダゾリウム、1,3-イミダゾリニウム、1,3-ベンズイミダゾリウム、1,2,4-トリアゾリウム、1,3-チアゾリウムなどのアゾリウムからなる群から選択される)を調製するための方法であって、式(II)の化合物:
【化32】
(式中:
n、X、Rは上記で定義した通りであり、
Vは、特にCl、Br及びIなどのハロゲンならびにOSOMe、OSO(C)及びOSOCFなどのスルホネートからなる群から選択される脱離基を表す)を、
式QAの化合物(式中、Qは、第2級ホスホナイト、またはホスフィン及びホスフィンオキサイドを除く第2級などのリン配位子からなる群から選択され、AはNa、K及びLiからなる群から選択されるアルカリ金属を表すか、またはAはHである)と接触させ、その反応は塩基の存在下で行われて、式(IA)の化合物を得るか、
または1,3-イミダゾール、1,3-イミダゾリン、1,3-ベンズイミダゾール、1,2,4-トリアゾール及び1,3-チアゾールなどのアゾールからなる群から選択される式Q’の化合物と接触させる工程を含む、方法に関する。
【0092】
本発明は更に、式(IC)の化合物:
【化33】
(式中:
n、X、L、Mm+及びRは上記で定義した通りであり、
Zはホスフィン、ホスホナイト、ホスフィナイト、ならびに1,3-イミダゾリリデン、1,3-イミダゾリニリデン、1,2,4-トリアゾリリデン、1,3-ベンズイミダゾリリデン、1,2,4-トリアゾリリデン及び1,3-チアゾリリデンなどのN-複素環カルベンからなる群から選択される基Qを表す)を調製するための方法であって、
式Iの化合物(式中、tは0であり、Zはホスフィン、ホスホナイト、ホスフィナイトなどのリン配位子、ならびに1,3-イミダゾリリデン、1,3-イミダゾリニリデン、1,2,4-トリアゾリリデン、1,3-ベンズイミダゾリリデン、1,2,4-トリアゾリリデン及び1,3-チアゾリリデンなどのN-複素環カルベンからなる群から選択される基Qを表す)を、
【化34】
式(L’)Mm+の金属錯体(式中、Mm+は、酸化状態mの金属または酸化状態mの複数の金属を含む金属クラスターであり、mは0、1、2、3、4または5、特に0、1、2または3であり、L’は、0、その金属に結合した1つ以上の中性のまたは負に帯電した配位子から構成される)と接触させる工程を含む、方法に関する。
【0093】
一実施形態では、本発明は、上記で定義された式(IA)の化合物:
【化35】
(式中:
n、X、Rは上記で定義した通りであり、
Qは、サレン配位子、特にエナンチオ純粋なサレン配位子、特にシクロヘキシルジアミン及びジフェニルエチレンの誘導体ならびに上記サレン配位子の誘導体からなる群から選択される)を調製するための方法であって、
式(IB)の化合物:
【化36】
(式中:
n、X、Rは上記で定義した通りであり、
Q’は、サレン配位子の基前駆体、特にサリチルアルデヒドの誘導体、特に3-(tert-ブチル)-5-トリアゾール-2-ヒドロキシベンズアルデヒドを表す)を、
サレン配位子の別の前駆体基、特にサリチルアルデヒド誘導体、特に式VIIの化合物
【化37】
と接触させる工程を含む、方法に関する。
【0094】
一実施形態では、本発明は、上記で定義された式(IB)の化合物:
【化38】
(式中、Q’は、サレン配位子前駆体基、特にサリチルアルデヒド誘導体、特に3-(tert-ブチル)-5-トリアゾール-2-ヒドロキシベンズアルデヒドから選択される)を調製するための方法であって、式(VIII)の化合物:
【化39】
(式中:
n、X、Rは上記で定義した通りであり、
Gは、基Q’のグラフト基、特にN基を表し、基Q’は、サレン配位子前駆体基、特にサリチルアルデヒドの誘導体、特に3-(tert-ブチル)-5エチニル-2-ヒドロキシベンズアルデヒドから選択される)を接触させる工程を含む、方法に関する。
【0095】
一実施形態では、本発明は、上記で定義された式(VIII)の化合物:
【化40】
(式中、Gは上記のように選択される)を調製するための方法であって、
式(II)の化合物:
【化41】
(式中:
n、X、Rは上記で定義した通りであり、
Vは、特にCl、Br及びIなどのハロゲンならびにOSOMe、OSO(C)及びOSOCFなどのスルホネートからなる群から選択される脱離基を表す)を、
基Q’のグラフト基の前駆体、特にアジ化ナトリウム(Q’は上記で定義した通りである)と接触させる工程を含む、方法に関する。
【0096】
別の実施形態では、本発明は、上記で定義された式(IC)の化合物:
【化42】
(式中:
n、X、L、Mm+及びRは上記で定義した通りであり、
Qは、サレン配位子、特にエナンチオ純粋なサレン配位子、特にシクロヘキシルジアミン及びジフェニルエチレンの誘導体ならびに上記サレン配位子の誘導体からなる群から選択される)を調製するための方法であって、
式(IA)の化合物:
【化43】
(式中、Qは、サレン配位子、特にエナンチオ純粋なサレン配位子、特にシクロヘキシルジアミン及びジフェニルエチレンの誘導体ならびに上記サレン配位子の誘導体からなる群から選択される)を、
式LMm+の金属錯体(式中、Mm+は、酸化状態mの金属であり、mは0、1、2、3、4または5、特に0、1、2または3であり、Lは、その金属に連結した1つ以上の中性のまたは負に帯電した配位子からなる)と、任意に塩基の存在下で、特に酢酸コバルト及びパラトルエンスルホン酸と接触させる工程を含む、方法に関する。
【0097】
一実施形態では、本発明は、上記で定義された式(IC)の化合物:
【化44】
(式中:
n、X、L、Mm+及びRは上記で定義した通りであり、
Qは、サレン配位子、特にエナンチオ純粋なサレン配位子、特にシクロヘキシルジアミン及びジフェニルエチレンの誘導体ならびに上記サレン配位子の誘導体からなる群から選択される)を調製するための方法であって、
式(II)の化合物:
【化45】
(式中:
n、X、Rは上記で定義した通りであり、
Vは、特にCl、Br及びIなどのハロゲンならびにOSOMe、OSO(C)及びOSOCFなどのスルホネートからなる群から選択される脱離基を表す)を、
基Q’のグラフト基の前駆体、特にアジ化ナトリウム
(Q’は、サレン配位子前駆体基、特にサリチルアルデヒドの誘導体、特に3-(tert-ブチル)-5-トリアゾール-2-ヒドロキシベンズアルデヒドから選択される基を表す)と接触させて、
(VIII)の化合物
【化46】
(式中:
n、X、Rは上記で定義した通りであり、
Gは、基Qの前記グラフト基の基、特にN基を表す)を得る工程を含み、式(VIII)の前記化合物を接触させて式(IB)の化合物
【化47】
(式中:
n、X、R及びQ’は上記で定義した通りである)を得る工程を含み、次いで式(IB)の前記化合物を、
サレン配位子の別の前駆体基、特にサリチルアルデヒドの誘導体、特に式(VII)の化合物、
【化48】
と接触させて式(IA)の化合物、
【化49】
(式中:
n、X、R及びQは上記で定義した通りである)を得る工程を含み、
式(IA)の化合物を、
式LMm+の金属錯体(式中、Mm+は、酸化状態mの金属であり、mは0、1、2、3、4または5、特に0、1、2または3であり、Lは、その金属に連結した1つ以上の中性のまたは負に帯電した配位子からなる)と任意に塩基の存在下で、特に酢酸コバルト及びパラ-トルエンスルホン酸と接触させて、
式(IC)の前記化合物を得る工程を含む、方法に関する。
【0098】
本発明は、特定の実施形態では、以下の化合物に関する:
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【実施例
【0099】
以下の4つのスキームは、N-複素環カルベンまたはホスフィンを含有する本発明による触媒の合成を図説している。
スキーム1:
【化50】
スキーム2:
【化51】
スキーム3:
【化52】
スキーム4:
【化53】
【0100】
実施例1:塩素化前駆体の調製
カリックスアレーン2の調製:
ベンジルオキシフェノール1(200g、1mol)、パラホルムアルデヒド(78.7g)及びキシレン(2L)を装填し、その媒体をアルゴン下に置いた。t-BuOK(7.39g、65.9mmol)を装填し、真空-アルゴンサイクルを実施した。混合物を強力な撹拌下で8時間還流させ、形成した水をディーンスターク水分離装置で収集した。混合物を室温に冷却し、キシレンを減圧下で蒸発させた。固体残留物を3LのTHF中で激しい撹拌下で45℃で加熱し、濾過し、500mlのTHFですすいだ。ケーキを2.5LのTHF中に45℃で30分間激しく撹拌しながら分散させた。1LのTHFを蒸発させ、THF/HCl(33%)(200/50ml)の溶液を添加した。混合物を室温で30分間撹拌し、濾過し、250mlのTHFですすいだ。粉砕後、生成物を空気下で一晩乾燥させ、次いで回転羽根ポンプを使用して数時間乾燥させた。169.5gの非常に純粋な生成物が得られた(収率:80%)。H NMR (DMSO-d6,ppm):8.67(s,8H),7.30(m,40H),6.58(s,16H),4.80(s,16H);3.77(s,16H)。m/z(MALDI,マトリックスDHB):1719.62[M+Na](計算値=1697.67)。
【0101】
カリックスアレーン3の調製:
粉砕したベンジルオキシカリックス[8]アレーン2(60g、35.3mmol)を装填し、次いで、1-ブロモ-4-クロロブタン(520ml、3mol)及びDMF(90ml)をアルゴン下で添加した。混合物を40℃に加熱し、撹拌を停止し、水素化ナトリウムの3分の1(22.6g、5.65.10-1mol)を添加した。混合物をアルゴン下に置き、撹拌を徐々に開始させた。残りの水素化ナトリウムを2回に分けて添加し、各添加の間隔は1時間30分であった。混合物を翌朝まで30℃で反応させた。350mlのジクロロメタンを添加し、混合物をセライトで濾過し、200mlのジクロロメタンですすぎ、溶媒を減圧下で60℃で蒸発させる。2Lのメタノールを添加し、固体を激しく撹拌しながら24時間分散させた。混合物を濾過し、ケーキを空気中で数時間乾燥させ、次いで羽根ポンプで乾燥させた。2Lのエタノールを添加し、固体を激しく撹拌しながら24時間分散させる。混合物を濾過し、ケーキを空気中で数時間乾燥させ、次いでロータリー羽根ポンプを使用して乾燥させた。80gの純粋な白色固体が得られた(収率=93%)。H NMR (DMSO-d6, ppm): 7.15 (m, 40H), 6.51 (s, 16H), 4.69 (s, 16H), 3.89 (s, 16H), 3.56 (m, 16H), 3.47 (t, 16H, J(H,H)=6.4Hz), 1,75 (m, 16H), 1.65 (m, 16H)。13C NMR (DMSO-d6, ppm): 155.17, 149.83, 138.08, 135.67, 129.34, 128.74, 128.64, 115.75, 73.38, 70.26, 46.29, 30.91, 30.20, 28.35。m/z(ESI,DCM-イソプロパノール、ポジティブモード):2439.85[M+Na]。
【0102】
実施例2:リン配位子の調製
リン配位子4
カリックスアレーン3(10g、4.13mmol)を反応器に装填し、真空下で30分間乾燥させ、続いてアルゴン下でTHF(17ml)を添加した。溶液を-20℃に冷却し、KPPhの溶液(70.2ml、THF中0.5M、35.1mmol)を徐々に添加した。溶液を室温で4時間撹拌し、続いてDCM(20ml)を添加した。混合物をセライトを通して濾過し、DCMですすいだ。濾液を蒸発乾固し、残留物をジエチルエーテルで摩砕し、濾過した。ケーキをペンタンで摩砕し、濾過した。生成物を真空下で乾燥させて14.2gの淡黄色生成物を得た(収率:95%)。H NMR (CDCl, ppm): 7.39~7.33 (m, 40H), 7.26~7.23 (m, 40H), 7.00 (s, 30H), 6.45 (s , 16H), 4.43 (s, 16H), 3.88 (s, 16H), 3.60 (m, 16H), 2.09~1, 97 (m, 16H), 1, 78 (m, 16H), 1, 57 (m, 16H)。31P NMR (CDCl, ppm): - 16.33 (s)。
【0103】
実施例3:イミダゾリウム塩(複素環N-カルベン配位子の前駆体)の調製
配位子IMes.HCl5:
カリックスアレーン3(10.1g、4.2mmol)及びメシチルイミダゾール(25g、134.2mmol)を装填した。反応器をアルゴン雰囲気下に置き、次いで無水DMFを添加した(200ml)。3回の真空/アルゴンを実施し、混合物を撹拌しながら100℃で7~9日間加熱した(反応をNMRによってモニターした)。DMFを蒸発させ、生成物をDCM(200ml)に溶解し、エーテル(300ml)で沈殿させる。得られた褐色固体をジエチルエーテル(300ml)で洗浄し、ジエチルエーテル(100ml)で摩砕し、濾過した。15.5gの褐色固体が得られた(収率=97%)。H NMR (DMSO-d6, ppm): 10.04 (s, 8H), 8.21 (s, 8H), 7.95 (s, 16H), 7.06 (s, 56H), 6.48 (s, 16H), 4.61 (s, 16H), 4.39 (s, 16H), 3.89 (s, 16H), 3.71 (s, 16H), 2.89 (s, 32H) , 2.73 (s, 32H), 2.28 (s, 24H), 2.03 (s, 16H), 1.66 (s, 48H), 1.65 (s, 16H)。m/z(ESI,ポジティブモード):942.49[M+4Na]/4(計算値=942.50) 1268.31[M+3Na]/3(計算値=1268.48),1920.45[M+2Na]/2(計算値=1920.45)。
【0104】
配位子IPr.HBr6:
カリックスアレーン3(3g、1.24mmol)、ジイソプロピルイミダゾール(4.24g、18.57mmol)及び臭化ナトリウム(12.65g、124mmol)をアルゴン下で反応器内に入れた。30mlの無水DMFを添加した。3回の真空/アルゴンを実施し、混合物を80℃で4日間加熱した。ジクロロメタン(20ml)を添加し、混合物をセライトを通して濾過した。溶液を蒸発乾固し、得られた白色固体を最小限のジクロロメタンに溶解した。生成物をジエチルエーテル(80ml)で沈殿させ、濾過し、エーテルですすぎ、ケーキを真空中で乾燥させた。4.62gの白色生成物が得られた(収率:81%)。H NMR (DMSO-d6, ppm): 9.87 (s, 8H), 8.21 (s, 8H), 8.12 (s, 8H), 7.61 (t, 8H), 7.42 (d, 16H), 7.02 (s, 40H), 6.52 (s, 16H), 4.56 (s, 16H), 4.42 (s, 16H), 3.79~3.87 ( m, 32H), 2.19 (クインテット, 16H), 2.07 (s, 16H), 1.71 (s, 16H), 1.08 (s, 96H)。m/z(ESI,ポジティブモード):1071.29[M-3Br]3+/3(計算値=1071.03),1455.03[M-3Br]3+/3(計算値=1454.68)。
【0105】
実施例4:サレン配位子の調製
中間体14:
カリックスアレーン3(10g、4.13mmol)及びアジ化ナトリウムNaN(6.8g、103mmol)を反応器に導入した。混合物を真空下で30分間乾燥させ、無水DMF(50ml)をアルゴン下で添加し、3回の真空/アルゴンサイクルを適用して媒体を不活性化した。溶液を65℃で30時間撹拌し、室温に冷却した。飽和NaCl溶液を添加して生成物を沈殿させ、これを次いで濾過した。得られた白色固体を水、メタノール、及び最後にペンタンで数回洗浄し、真空下で乾燥させて8.8gの白色粉末を得た(収率:86%)。H NMR (CDCl3, ppm): 7.17 (s, 40 H), 6.55 (s, 16H), 4.67 (s, 16H), 3.95 (s, 16H), 3.62~3.65 (m, 16H), 3.20~3.17 (m, 16H), 1.69 (bs, 32 H)。13C NMR (CDCl3, ppm): 154.7;148.9;137.0;134.8;128.3;127.7;127.5;114.9;72.9;69.7;51, 2;30.2;27.4;25.8。m/z(ESI,ポジティブモード):2496.1626[M+Na](計算値=2496.1710)。
【0106】
中間体15:
カリックスアレーン14(1.21g、0.49mmol)及びアルキンA(0.894g、4.42mmol)をアルゴン雰囲気下で反応器内に入れ、ジクロロメタン(15ml)を添加した。硫酸銅五水和物CuSO・5HO(0.11g、0.442mmol)及びアスコルビン酸ナトリウム(0.167g、0.88mmol)の水溶液(15ml)を反応器に添加した。二相溶液をアルゴン下で室温で24時間撹拌した。ジクロロメタン(20ml)を添加し、二相溶液を炭酸水素ナトリウムNaHCOの飽和溶液(35ml)で洗浄した。水相をジクロロメタン(30ml)で3回抽出した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、蒸発させた。得られた固体を最少量のジクロロメタンに溶解し、エーテルで沈殿させ、濾過し、真空下で乾燥させた。5gの黄色固体が得られた(収率=75%)。H NMR (DMSO-d6, ppm): 11.74 (s, 8H), 9.85 (s, 8H), 8.37 (s, 8H), 7.86 (s, 8H ), 7.89 (s, 8H), 7.02 (s, 40 H), 6.45 (s, 16H), 4.58 (bs, 16H), 4.27 (bs, 16H ), 3.85 (bs, 16H), 3.55 (bs, 16H), 1, 91 (bs, 16H), 1.55 (bs, 16H), 1.30 (s, 72 H )。13C NMR (DMSO-d, ppm): 197.2;158.4;152.9;147.5;144.4;136.7;135.7;133.5;129.5;127.4;127.0;126.4;126.3;121,3;119.6;119.5;113.5;71.3;68.0;48.3;33.4;27.8;27.7;25.6;25.5。m/z(MALDI,DCTBマトリックス):4223.01[M+Cs](計算値=4222.88)。元素分析:C=72.7%(計算値=72.3%),H=6.5%(計算値=6.6%),N=8.2%(計算値=7.7%),O=12.5%(計算値=11.5%)。
【0107】
配位子16:
反応器内にアルゴン下でシクロヘキサンジアミンCの一塩化アンモニウム(0.366g、2.43mmol)、3,5-ジ-tert-ブチル-2-ヒドロキシベンズアルデヒドB(0.569g、2.43mmol)及び3Aモレキュラーシーブ(1g)を装填し、続いて無水メタノール(20ml)を装填した。反応物を室温で4時間撹拌し、次いで無水ジクロロメタン(30ml)中のカリックスアレーン15(1.1g、0.27mmol)の溶液をアルゴン下で添加した。トリエチルアミン(0.965ml、7.02mmol)をアルゴン下で添加し、混合物を室温で16時間撹拌した。溶液をセライトを通して濾過し、蒸発させた。得られた固体をメタノール及びエタノールで洗浄した。黄色固体を最小限のジエチルエーテルに溶解し、エタノールで沈殿させた。固体を濾過し、真空下で乾燥させて1.4gの黄色固体を得た(収率:79%)。H NMR (CDCl3, ppm): 14.12 (s, 8H), 13.58 (s, 8H), 8.28 (s, 8H), 8.19 (s, 8H), 7.68 (s, 8H), 7.61 (s, 8H), 7.43 (s, 8H), 7.03~6.95 (m, 40 H), 6.46 (s, 16H), 4.55 (bs, 16H), 4.13 (bs, 16H), 3.86 (bs, 16H), 3.54 (bs, 16H), 3.24 (bs, 16H), 1.79-1.88 (m, 48H), 1.79 (m, 48 H, 1.38 (s, 72 H), 1.36 (s, 72 H), 1.20 ( s, 72 H) 13C NMR (CDCl3, ppm): 166.0;165.3;160.7;158.0;154.9;149.0;147.6;140.1;137, 9;136.9;136.5;134.9;128.4;127.8;127.6;127.1;127.0;126.1;120.7;119.0;118 8;117.9, 115.2;72.9;72.6;71.9;69.9;50.1;35.1;35.0;34.13;33.2;33.1;31.5;30.3;29.5;29.4;27.3;24.3 m/z(MALDI,DCTBマトリックス):6724[m+Cs](計算値=6721) 元素分析:C=75.7%(計算値=74.5%),H=7.9%(計算値=7.9%),N=8.3%(計算値=8.5%),O=7.9%(計算値=7.7%)。[a] 20=+105.34(c=CHCl中0.002M)。
【0108】
実施例5:触媒の調製
ロジウム触媒7の調製:
カリックスアレーン3(3.28g、0.9mmol)及びクロロ(1,5-シクロオクタジエン)ロジウム(I)二量体(1.87g、3.8mmol)を反応器に導入し、真空中で乾燥させた。アルゴン下で30mlの無水ジクロロメタンを添加し、反応媒体を室温で2時間放置した。混合物を濾紙で濾過し、ジクロロメタンを蒸発させた。残留物を最少量のジクロロメタンに溶解し、ジエチルエーテルで沈殿させた。4.05gの黄橙色粉末が得られた(収率:80%)。H NMR (CDCl2, ppm): 7.64 (m, 4H), 7.32 (m, 48H), 7.01 (s, 40), 6.56 (s, 16H), 5, 41 (s, 16H), 4.48 (s, 16H), 3.97 (s, 16H), 3.79 (s, 16H), 3.05 (s, 16H), 1.66- 2.5 (m, 14H)。31P NMR (CDCl2, ppm): 26.26 (d, JRh = 148.9 Hz)。元素分析:C=62.38%(計算値=62.36%),H=5.47%(計算値=5.71%)。
【0109】
パラジウム触媒8の調製:
カリックスアレーン5(3g、0.79mmol)、炭酸カリウム(3g、21.7mmol、30分間加熱して減圧下で乾燥させた)及び塩化パラジウム(1.5g、8.5mmol)を反応器に導入した。混合物を真空下で30分間乾燥させ、次いで25mlの3-クロロピリジンをアルゴン下で添加した。3回の真空/アルゴンサイクルを実施し、混合物を撹拌しながら100℃で48時間加熱した。溶液を60mlのジクロロメタンで希釈し、遠心分離し、固体副生物を濾過によって分離し、ジクロロメタン及びクロロピリジンの一部を蒸発させた。次いで、錯体をジエチルエーテルで沈殿させた。白褐色固体が得られ、これを濾過し、ジエチルエーテルで洗浄した。真空中で乾燥させた後、3.61gの生成物が得られた(収率:78%)。H NMR (DMSO, ppm): 8.63 (s, 8H), 8.56 (d, 8H), 7.97 (d, 8H), 7.49 (s, 8H), 7.33 (s , 16H), 7.25 (s, 8H), 7.01 (s, 8H), 6.97 (s, 40H)。元素分析:C=55.2%(計算値=56.5%),H=4.6%(計算値=4.6%),N=5.6%(計算値=5.7%)。
【0110】
パラジウム触媒8’の調製:
カリックスアレーン5(0.5g、0.13mmol)、炭酸カリウム(0.72g、5.2mmol、30分間加熱及び真空下で乾燥させた)、ヨウ化カリウム(0.863g、5.2mmol、30分間加熱及び真空下で乾燥させた)及びヨウ化パラジウム(0.443g、1.23mmol)。乾燥を真空下で30分間実施し、5mlのピリジンをアルゴン下で添加した。3回の真空/アルゴンサイクルを実施し、混合物を撹拌しながら100℃で48時間加熱した。溶液を20mlのジクロロメタンで希釈し、遠心分離した。固体副生成物を濾過によって分離し、ジクロロメタン及びピリジンを蒸発させた。生成物を最少量のジクロロメタンに溶解し、錯体をジエチルエーテルで沈殿させ、濾過し、ジエチルエーテルですすいだ。真空下で乾燥させた後、0.655gの黄色固体が得られた(収率:71%)。H NMR (DMSO-d, ppm): 8.46 (d, J = 4.3 Hz, 16H), 7.72 (m, 8H), 7.47 (s, 8H), 7.27 (s , 8H), 7.20-7.23 (m, 24H), 6.97~7.03 (m, 56H), (s, 40H), 6.54 (bs, 16H), 4.57 (bs , 32H), 3.98 (bs, 16H), 3.86 (bs, 16H), 2.28 (s, 24H), 2.19 (s, 48H), 1.79 (s, 16H)。元素分析:C=46.89%(計算値=47.13%),H=4.03%(計算値=4.18%)N=4.63%(計算値=4.71%)。
【0111】
パラジウム触媒8’’の調製:
カリックスアレーン5(0.5g、0.13mmol)、炭酸カリウム(0.72g、5.2mmol、30分間加熱で乾燥させた)、臭化カリウム(0.619g、5.2mmol、30分間加熱及び真空下で乾燥させた)及び臭化パラジウム(0.33g、1.23mmol)を反応器に導入した。乾燥を真空下で30分間実施し、5mlのピリジンをアルゴン下で添加した。3回の真空/アルゴンサイクルを実施し、混合物を撹拌しながら100℃で48時間加熱した。溶液を20mlのジクロロメタンで希釈し、遠心分離した。固体副生成物を濾過によって分離し、ジクロロメタン及びピリジンを蒸発させた。生成物を最少量のジクロロメタンに溶解し、錯体をジエチルエーテルで沈殿させ、濾過し、ジエチルエーテルですすいだ。真空中で乾燥させた後、0.431gの黄色固体が得られた(収率:52%)。H NMR (DMSO-d, ppm): 8.51 (s, 16H), 7.77 (s, 8H), 6.98~7.24 (m, 88H), 6.53 (s, 16H) , 4.63 (bs, 32H), 3.92 (bs, 32H), 2.28 (s, 24H), 2.13 (s, 48H), 1.91 (s, 16H)。
【0112】
パラジウム触媒9の調製:
カリックスアレーン6(0.3g、6.5.10-2mmol)、炭酸カリウム(0.36g、2.6mmol、30分間加熱及び真空下で乾燥させた)及び臭化パラジウム(0.15g、0.55mmol)を反応器に導入した。乾燥を真空下で30分間実施し、5mlのピリジンをアルゴン下で添加した。3回の真空/アルゴンサイクルを実施し、混合物を撹拌しながら100℃で48時間加熱した。溶液を20mlのジクロロメタンで希釈し、遠心分離した。固体副生成物を濾過によって分離し、ジクロロメタン及びピリジンを蒸発させた。生成物を最少量のジクロロメタンに溶解し、錯体をジエチルエーテルで沈殿させ、濾過し、ジエチルエーテルですすいだ。真空中で乾燥させた後、0.35gの黄色固体が得られた(収率:79%)。H NMR (DMSO-d, ppm): 8.51 (s, 32H), 7.76 (s, 8H), 7.47 (s, 24H), 7.28-7.32 (m, 40H) , 7.04 (s, 40H), 6.54 (s, 16H), 4.57~4.66 (m, 32H), 3.93 (s, 32H), 2.83 (s, 16H), 2.34 (s, 16H), 1.84 (s, 16H), 1.24 (s, 48H), 0.91 (s, 48H)。元素分析:C=54.46%(計算値=54.27%),H=4.78%(計算値=5,00%)N=5,19%(計算値=5.27%)。
【0113】
パラジウム触媒13の調製:
炭酸カリウム(586mg、4.24mmol)を反応器に導入し、真空下で加熱しながら乾燥させた。塩化パラジウム(261mg、1.47mmol)、カリックスアレーン12(500mg、0.14mmol)及び3-クロロピリジン(3ml)を室温で添加した。3回の真空-アルゴンサイクルを行い、混合物を100℃で36時間加熱した。媒体をジクロロメタン(10ml)で希釈し、遠心分離し、濾過した。溶媒を蒸発させ、生成物を最小限のジクロロメタンに溶解した。生成物をジエチルエーテル/ペンタンで沈殿させ、濾過した。乾燥させた後、469mgの生成物が得られた(60%の収率)。H NMR (DMSO-d, ppm): 8.65 (s, 8H), 8.57 (s, 8H), 8.01 (s, 8H), 7.54 (s, 8H), 7.40 (s, 8H), 7.31 (s, 8H), 6.97 (s, 16H), 6.91 (s, 16H), 4.68 (s, 16H), 4.00 (s, 16H) , 3.80 (s, 16H), 2.28 (s, 40H), 2.08 (s, 48H), 1.81 (s, 16H), 0.96 (s, 72H)。元素分析:C=55.54%(計算値=55.43%)H=5.70%(計算値=5.52%)N=5.65%(計算値=6.06%)。
【0114】
コバルト触媒17の調製:
アルゴン下の反応器に、カリックスアレーン16(0.5g、0.075mmol)及びジクロロメタン(10ml)を導入し、混合物を完全に溶解するまで撹拌した。無水メタノール(6ml)中のCo(OAc)・3HO(0.187g、0.75mmol)の溶液をアルゴン下でカリックスアレーン16の溶液に添加した。反応物を室温で4時間撹拌した。混合物を0℃に冷却し、続いてパラ-トルエンスルホン酸(0.143g、0.75mmol)を添加し、更に5mlのジクロロメタンを添加した。反応物を1気圧の純酸素下に置き、室温で16時間撹拌した。溶液を蒸発させ、固体をメタノールで数回洗浄し、真空下で乾燥させた。0.534gの緑色固体が得られた(収率=84%)。H NMR (DMSO-d, ppm): 8.37 (s, 8H);8.03 (s, 8H);7.91 (s, 8H);7.81 -7.83 (m, 16H);7,46- 7,48 (m, 32 H);7.03-7.08 (m, 56 H);6.54 (bs, 16H);4.64 (bs, 16H);4.51 (bs, 16H);3.92 (bs, 8H);3.61 (s, 24 H);3.05 (s, 16H);2.25 (s, 24 H);1.89-1.94 (m, 48 H), 1.73-1.74 (m, 144 H), 1.46-1.56 (m, 48 H), 1.30 (s, 72 H )。13C NMR (DMSO-D6, ppm): 165.2;164.7;164.6;162.2;154.4;147.0;146.4;143.4;142.1;137.9;137.2;136.5;130.8;129.7;129.4;129.0;128.4;127.8;125.9;119.7;119.0;117.6;69.8;69.4;49.7;49.0;36.2;36.1;34.0;31, 9;30.8;30.6;29.8;27.2;24.7;21: 1。カリックスアレーン17+5CHClについて計算された元素分析:C=64.3%(計算値=64.8%),H=6.5%(計算値=6.5%),N=6.6%(計算値=6.3%),S=2.3%(計算値=2.9%)。[a] 20=+1020.4°(c=DMF中8.10-5M)。
【0115】
実施例6:スズキカップリング反応へのパラジウム触媒の使用
実施例6.1:ブロモトルエンとフェニルボロン酸とのカップリング
【化54】
標準プロトコル:触媒8(7.4mg、1.10-5mol、1mol%)、フェニルボロン酸(182.9mg、1.5.10-3mol、1.5当量)及び三塩基性リン酸カリウム(424.5mg、2.10-3mol、2当量)を反応器に導入した。混合物を真空下で10分間乾燥させ、ブロモトルエン(171mg、1.10-3mol、1当量)を添加した。媒体をアルゴン下に置き、無水エタノール(2ml)を添加した。3回の真空/アルゴンサイクルを行い、混合物を撹拌しながら40℃で2時間加熱した。反応をガスクロマトグラフィによってモニターした。ジハロゲン化基質をカップリングする場合、ボロン酸及び塩基の当量数を修正した。1,2-ジブロモベンゼンの場合:3当量の塩基及びボロン酸;1,9-ジブロモアントラセン及び1,2-ジクロロベンゼンの場合:3当量の塩基、2.5当量のボロン酸。
【0116】
触媒の温度及び装填に関する触媒8及び9でのスズキカップリングの結果を表1及び1’に示す。
【0117】
溶媒に関する触媒8及び9でのスズキカップリングの結果を表2に示す。
【0118】
塩基に関する触媒8及び9でのスズキカップリングの結果を表3に示す。
【0119】
触媒に関するスズキカップリングの結果を表4及び4’に示す。
【0120】
試薬の濃度に関するスズキカップリング反応の結果を表5に示す。
【0121】
表1:温度及び触媒装填。KPO、ブロモトルエン中0.5M、ボロン酸中15当量、エタノール、2時間。
【表2】
【0122】
表1’:温度及び触媒装填。KPO、ブロモトルエン中0.25M、イソプロパノール、触媒8、23時間。
【表3】
【0123】
表2:溶媒の性質。ブロモトルエン中KPO0.25M、Pd=0.5mol%、27℃、2時間。
【表4】
【0124】
表3:塩基の性質。エタノール中ブロモトルエン0.25M、Pd=0.5mol%、27℃。
【表5】
【0125】
表4:触媒の性質。条件1:KPO、ブロモトルエン中0.5M、エタノール、Pd=0.005mol%、80℃、2時間。条件2:ブロモトルエン中KPO0.25M、エタノール、Pd=0.5mol%、27℃、2時間。
【表6】
【0126】
表4’:触媒の性質。KPO、ブロモトルエン中0.25M、イソプロパノール、Pd=0.5mol%、温度、23時間。
【表7】
【0127】
表5:混合物の濃度。KPO、エタノール、Pd=0.5mol%、触媒8、27℃、2時間。
【表8】
【0128】
実施例6.2:様々な臭素化基質と様々なボロン酸とのスズキカップリング
【化55】
結果を以下の表6に示す。
【0129】
表6:様々な臭素化基質とボロン酸とのスズキカップリング反応の転化率、選択率及び収率。KPO、エタノール、2時間。
【表9-1】
【表9-2】
【0130】
実施例6.3:様々な塩素化基質とフェニルボロン酸とのスズキカップリング
【化56】
結果を以下の表7に示す。
【0131】
表7:様々な塩素化基質とフェニルボロン酸とのスズキカップリング反応の転化率及び選択率。KPO、溶媒、温度、2時間。
【表10】
【0132】
実施例6.4:スズキカップリングから得られた生成物中の残留パラジウム含有量に関する研究
次に、使用した全てのガラス器具を硝酸で洗浄し、超純水ですすいだ。スズキカップリングは、1mmolから始めて実施例6.1に示されたプロトコルに従って実施した。2時間の反応後、反応媒体を冷却し、撹拌せずに室温で30分間放置した。次いで媒体をグレード5の濾紙で濾過し、ケーキをエタノールですすいだ。濾液を真空下で濃縮し、ジエチルエーテルまたは酢酸エチル(10ml)を添加し、続いて水を添加した。次いで水相を3×10mlのジエチルエーテルまたは酢酸エチルで抽出した。有機相を組み合わせ、乾燥させ、真空下で濃縮した後、生成物を真空下で200℃で1時間蒸発させた。還流冷却器が取り付けられたフラスコ内で4mlの濃硝酸を添加することによって残留物を無機化し、これを透明で均質な溶液が得られるまで1時間撹拌しながら還流させた。次いで溶液をICP-MSによって分析した。スズキカップリングから誘導された生成物1キログラム当たりのパラジウムのミリグラムで表される金属含有量が得られた。
【0133】
触媒装填量の関数として得られた結果を表8及び8’に示す:
【0134】
表8:スズキカップリングから得られた生成物中の残留パラジウム含有量。KPO 0.5Mの基質、エタノール、80℃、2時間。
【表11】
【0135】
表8’:スズキカップリングから得られた生成物中の残留パラジウム含有量。
PO、0.25Mのブロモトルエン、1.5当量のフェニルボロン酸、イミダゾーレアノール、触媒8、40℃、23時間。
【表12】
【0136】
実施例7:金属錯体の他の用途
実施例7.1:水素化反応におけるロジウム触媒の使用
【化57】
標準プロトコル:
カリックスアレーン7(3.36mg、5.5.10-7mol、0.3mol%)、ベンジリデンアセトン(214.3mg、1.467.10-3mol)及びイソプロパノール(10ml)をオートクレーブに導入した。2回の圧縮(10バール)/減圧サイクルを実施し、30バールを注入することによって反応器を二水素雰囲気下に置いた。媒体を室温で撹拌し、その組成をエレクトロスプレー質量分析と組み合わせたガスクロマトグラフィで分析した。結果を以下の表9に示す。
【0137】
表9:水素化反応へのロジウム触媒7の使用
溶媒:イソプロパノール
【表13】
【0138】
実施例7.2:ヘックカップリングにおけるパラジウム触媒の使用
【化58】
標準プロトコル:触媒8(7.4mg、1.25.10-3mmol)及び三塩基性リン酸カリウム(424mg、2mmol)を反応器に導入し、真空下で10分間乾燥させた。ブロモベンゼン(105μl、1mmol)、アクリル酸ブチル(213μl、1.5mmol)及び無水ジメチルホルムアミド(4ml)をアルゴン雰囲気下で添加した。3回の真空/アルゴンサイクルを実施し、混合物を100℃で18時間撹拌し、57%の転化率を得た。
【0139】
結果を以下の表10に示す。
【0140】
表10:ヘックカップリングで得られた転化率。KPO、0.25Mのアクリル酸ブチル、2時間。
【表14】
【0141】
実施例7.3:エポキシド開環反応
i.エピブロモヒドリンの開環
【化59】
触媒17(32mg、0.034mmol、2mol%)、エピブロモヒドリン(0.141ml、1.7mmol)、クロロベンゼン(0.05ml、0.5mmol)及び0.197mlのTHFを反応器に導入した。水(0.044ml、2.5mmol)を撹拌しながら添加した。反応物を室温で24時間撹拌し、5mlのジクロロメタン、Amberlyst15(16mg)及び2.2-ジメトキシプロパン(0.418ml、3.4mmol)を添加した。撹拌を室温で18時間継続した。反応をガスクロマトグラフィによってモニターした:アキラルカラムの使用は、転化へのアクセスを提供し、キラルカラムのそれはエナンチオマー過剰(ee)へのアクセスを提供する。最初の触媒反応の後、触媒17をジエチルエーテルで沈殿させ、濾過し、新たなバッチの生成物及び溶媒を用いる新たな触媒反応に再度関与させた。それ故、触媒17を3回の触媒サイクルを通して評価した。
【0142】
結果を以下の表11に示す。
【0143】
表11:エポキシド開環反応で得られた転化率及びエナンチオマー過剰率
【表15】
【化60】
【0144】
触媒17(17mg、0.020mmol、2mol%)、シクロヘキセンオキサイド(0.100ml、0.99mmol)、クロロベンゼン(0.025ml、0.25mmol)及び0.210mlのトルエンを反応器に導入した。水(0.021ml、1.18mmol)を撹拌しながら添加した。反応物を室温で6日間撹拌した。反応をガスクロマトグラフィによってモニターした:アキラルカラムの使用は、転化へのアクセスを提供し、キラルカラムの使用はエナンチオマー過剰へのアクセスを提供する。6日後に100%の転化率が得られ、エナンチオマー過剰率は76%であった。
【0145】
実施例7.4:エピブロモヒドリンの開環から生じる生成物中のコバルトの残留含有量
反応の最後に、ジクロロメタン溶液を蒸発させ、生成物をエーテルで抽出した。懸濁液を濾紙を通して濾過し、濾液を減圧下で蒸発させた。得られた残留物を真空下で200℃で1時間蒸発させ、4mlの濃硝酸を添加し、これを透明で均一な溶液が得られるまで1時間撹拌しながら還流させた。次いで溶液をICP-MSによって分析した。エピブロモヒドリンの開環から生じた生成物1キログラム当たりのコバルトのミリグラムで表される金属含有量が得られた。
【0146】
得られた結果を表12に示す。
【0147】
表12:反応生成物中の残留コバルト含有量
【表16】
【0148】
実施例7.5:水素化反応の生成物中の残留ロジウム含有量
反応の最後に、反応媒体を室温で30分間放置し、濾過し、実施例5.4に記載されたものと同一の無機化プロトコル及び分析を使用した。
【0149】
表13:水素化反応生成物中の残留ロジウム含有量
【表17】