IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルコン インコーポレイティドの特許一覧

特許7569619広視野高光パワー使い捨て網膜観察システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】広視野高光パワー使い捨て網膜観察システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/13 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
A61B3/13
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019566821
(86)(22)【出願日】2018-06-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-20
(86)【国際出願番号】 IB2018054516
(87)【国際公開番号】W WO2018235000
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-06-03
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-23
(31)【優先権主張番号】62/522,865
(32)【優先日】2017-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(72)【発明者】
【氏名】リンフォン ユイ
(72)【発明者】
【氏名】バレンティナ ダシュキナ
【合議体】
【審判長】樋口 宗彦
【審判官】萩田 裕介
【審判官】▲高▼見 重雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第6439721(US,B1)
【文献】特開2000-347088(JP,A)
【文献】特開2017-23583(JP,A)
【文献】特開2014-126787(JP,A)
【文献】特開平10-73706(JP,A)
【文献】特開2016-161946(JP,A)
【文献】特開2017-32923(JP,A)
【文献】特表平9-505221(JP,A)
【文献】特開2000-347088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
網膜の高分解能広角観察用のシステムであって、
目から反射された光線から形成された画像を観察するためのレンズ配置を有する眼科顕微鏡であって、前記眼科顕微鏡の前記レンズ配置は、前記目の前部の画像を解像するように構成されている、眼科顕微鏡と、
レンズホルダを前記光線内及び外に二者択一的に配置するように構成された前部レンズアタッチメントと、
広視野光学システムであって、
第1のレンズの少なくとも1つの表面に回折面を有し、前記回折面は、二次ブレーズプロファイルを備えたキノフォーム面を含む、前記第1のレンズと、
第2のレンズであって、前記第1のレンズ及び前記第2のレンズが、ほぼ色消しのダブレットを形成するために組み合わされ、前記眼科顕微鏡の前記レンズ配置が前記目の前部の解像を可能とする状態で、前記第1のレンズ及び前記第2のレンズのみを前記眼科顕微鏡の光軸上に配置することによって、前記第1のレンズと前記レンズ配置との間に前記網膜の中間像が形成されると共に、前記中間像の位置に前記眼科顕微鏡の合焦位置を調整することによって、前記網膜の画像を解像することができる、第2のレンズと、
レンズホルダが前記光線に配置される場合に、前記第1のレンズ及び前記第2のレンズが、前記光線と同軸に配置され、且つ前記眼科顕微鏡が、前記目の前記網膜の高分解能画像を観察できるようにするように、前記第1のレンズ及び前記第2のレンズを収容するように構成された、且つ前記レンズホルダと結合するように構成された共有ハウジングと、を含む広視野光学システムと、
を含み、
前記共有ハウジングは、開口上部及び開口底部を備えた椀形であり、前記開口底部の近くの底部の内部棚は前記第2のレンズを支持するように構成され、前記開口上部の近くの上部の内部棚は前記第1のレンズを支持するように構成され、前記上部の内部棚の周辺の前記共有ハウジングの寸法は前記第1のレンズの寸法よりわずかに小さく、前記底部の内部棚の周辺の前記共有ハウジングの寸法は前記第2のレンズの寸法よりわずかに小さくなっており、
前記眼科顕微鏡及び前記広視野光学システムが、少なくとも19.11ミリメートルの直径にわたる観察角度において、前記網膜の中心で少なくとも10マイクロメートル(μm)で、且つ前記網膜の周辺で少なくとも20μmで前記目の前記網膜を解像する、ことを特徴とする、システム。
【請求項2】
前記眼科顕微鏡の前記レンズ配置と前記前部レンズアタッチメントとの間の前記光線に位置するビームスプリッタを更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記広視野光学システムが、128ジオプトリとほぼ等しい光パワーを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1のレンズが、成形プロセスによってポリマーから形成された集光レンズを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記ポリマーが、ポリエーテルイミドを含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記第2のレンズが、成形プロセスによって形成されたポリマーレンズを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記第2のレンズが、回折面のないガラスレンズを含み、それによって、前記第2のレンズと接触する液体を前記レンズの光学処方に影響を与えずに除去できるようにする、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記共有ハウジングが、前記第1のレンズと結合するための第1の幾何学的なプロファイル及び前記第2のレンズと結合するための第2の幾何学的なプロファイルを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記共有ハウジングが、前記第2のレンズと一体的に形成され、前記共有ハウジングが、前記第1のレンズと結合するための幾何学的なプロファイルを含む、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼科手術に関し、特に広視野高光パワー使い捨て網膜観察システムに関する。
【背景技術】
【0002】
眼科手術は、通常、目における様々な構造を視覚化するために、手術顕微鏡を用いて実行される。例えば、白内障手術中に、角膜、水晶体等の前眼部を視覚化するために、顕微鏡が使用される。しかしながら、標準的な手術顕微鏡は、後眼部全体(例えば網膜)を十分には観察できない。何故なら、目の生まれつきの光学系(例えば角膜及び水晶体)が、手術顕微鏡が後眼の特徴に合焦することを妨げるからである。
【0003】
網膜の手術中に、優れた後部の観察を達成するために、手術顕微鏡は、目の網膜の画像を解像できる追加の光学システムと共に用いることができる。例えば、検眼鏡接眼レンズは、網膜の広角観察用の光学システムを含むことができ、且つ患者の目を覆うように配置することができる。次に、手術顕微鏡は、接眼レンズによって作成された画像を観察するために合焦させることができる。しかしながら、接眼レンズシステムは、手術器具を操作する外科医の能力を妨げる可能性がある。また、検眼鏡接眼レンズは、患者による動作の結果として、正しく位置合わせされない可能性がある。
【0004】
網膜の広角観察を達成するために、前部レンズアタッチメントがまた、手術顕微鏡と共に使用され得る。前部レンズアタッチメントは、非接触式の前部レンズを患者の目の上方に保持できる支持部材を含むことができる。しかしながら、眼科手術の間に、目からの液体及び/又は眼圧を維持するために用いられる液体若しくは目に送られる薬剤は、前部レンズを曇らせ、レンズを清掃するか又はレンズを交換することを外科医に要求する可能性がある。
【0005】
検眼鏡接眼レンズ及び/又は前部レンズを清掃することは、多くの理由で面倒になり得る。レンズを清掃するプロセスは、手術の実施から時間を奪い、且つそれほど望ましくない結果を引き起こす可能性がある。また、検眼鏡接眼レンズ及び/又は前部レンズは、効果的な清掃を非常に困難にする表面特徴(例えば回折面特徴)を有し得る。
【0006】
前部レンズの清掃の代替として、網膜の外科医は、手術中の連続性を保証するために、前部レンズを交換レンズの予備からのレンズと取り替えることをしばしば選択する。しかしながら、広角網膜観察用に使用される典型的なレンズは、高精度に研磨され、且つ非常に高価である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本技術の開示される実施形態は、目の網膜の高分解能広角観察用のシステム及び方法に関する。幾つかの実施形態において、目の網膜の高分解能広角観察用のシステムは、広視野光学システムを用いて形成された網膜の高分解能画像を観察できる眼科顕微鏡を含む。幾つかの場合に、眼科顕微鏡は、広視野光学システムを保持するレンズホルダを光線内及び外に二者択一的に配置するように構成された前部レンズアタッチメントと結合される。幾つかの実施形態において、広視野光学システムは、光学等級ポリマーから形成された、且つレンズを使い捨てにできるようにするコストで製造された1つ又は複数のレンズを含む。
【0008】
また、幾つかの場合に、広視野光学システムは、少なくとも1つの表面に回折面を有する第1のレンズと、第2のレンズと、を含む。これらの場合に、第1のレンズ及び第2のレンズは、ほぼ色消しのダブレットを形成するために組み合わせることができる。回折面は、二次ブレーズプロファイルを備えたキノフォーム面とすることができる。幾つかの場合に、第1のレンズ及び第2のレンズの両方は、光学等級ポリマーから形成される。他の幾つかの場合に、回折面を備えた第1のレンズは、光学等級ポリマーから形成され、第2のレンズは、ガラスから形成される。幾つかの実施形態において、広視野光学システムは、1つ又は複数の表面上に回折面を備えた光学等級ポリマーから形成された単レンズを含む。
【0009】
幾つかの実施形態において、広視野光学システムは、第1のレンズ及び第2のレンズを保持する共有ハウジングを含む。共有ハウジングはまた、レンズホルダが光線に配置される場合に、第1のレンズ及び第2のレンズが光線と同軸に配置されるように、眼科顕微鏡の前部レンズアタッチメントのレンズホルダで結合することができる。共有ハウジングは、第1のレンズ、第2のレンズ、及びレンズホルダの1つ又は複数と結合するための1つ又は複数の幾何学的特徴を含むことができる。また、幾つかの場合に、共有ハウジングは、第1のレンズ及び/又は第2のレンズと一体的に形成することができる。
【0010】
幾つかの場合に、網膜の高分解能広角観察の方法は、眼科顕微鏡のレンズ配置の下に広視野光学システムを配置することと、広視野光学システムによって解像される目の網膜の高分解能画像を観察するために眼科顕微鏡を合焦させることと、を含むことができる。
【0011】
本技術、その特徴、及びその利点のより完全な理解のために、添付の図面に関連して得られた以下の説明が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】目の網膜の高分解能広視野観察用のシステムを示す。
図2】網膜の高分解能広角観察の方法を示す。
図3A】人間の目のモデルからの光を解像する広視野光学システムの例を示す。
図3B】二次ブレーズプロファイルを有する回折キノフォーム面の例を示す。
図4A図3Aに表現されている独立型広視野光学システムを用いて、中間平面に形成された目のモデルの画像スポットサイズの定量化された結果を示す。
図4B】眼科顕微鏡と統合された、図3Aに表現されている広視野光学システムを用いて、中間平面に形成された目のモデルの画像スポットサイズの定量化された結果を示す。
図4C】顕微鏡モデルと統合された、図3Aに表現されている広視野光学システムの変調伝達関数の定量化された結果を示す。
図5A】広視野光学システムの第1のレンズ及び第2のレンズ用の共有ハウジングの側面断面図を示す。
図5B】共有ハウジング内にパチンと嵌められるか又は配置される広視野光学システムの第2のレンズ及び第1のレンズと一体の共有ハウジングの側面断面図を示す。
図6】人間の目のモデルからの光を解像する広視野光学システムの例を示す。
図7A】眼科顕微鏡と統合された、図6に表現されている広視野光学システムにおける単一屈折/回折ハイブリッドレンズを用いて、中間平面に形成された目のモデルの画像スポットサイズの定量化された結果を示す。
図7B-1】眼科顕微鏡と統合された、図6に表現されている広視野光学システムにおける単一屈折/回折ハイブリッドレンズの変調伝達関数の定量化された結果を示す。
図7B-2】眼科顕微鏡と統合された、図6に表現されている広視野光学システムにおける単一屈折/回折ハイブリッドレンズの変調伝達関数の定量化された結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
広視野高光パワー使い捨て網膜観察システム用のシステム及び方法が開示される。
【0014】
図1は、目140の網膜142の高分解能広視野観察用のシステム100を示す。システム100は、眼科顕微鏡110と共に使用される広視野光学システム120を含むことができる。眼科顕微鏡110は、対物レンズ112を含むレンズ配置を包含するハウジング115を含むことができる。眼科顕微鏡110はまた、目140から反射された光線から形成された画像を観察するための両眼用接眼部配置113を含む。システム100はまた、光線の一部の方向を変えるためにビームスプリッタ118を含むことができる。
【0015】
広視野光学システム120は、回折面124を備えた第1のレンズ122と、第2のレンズ126と、を含むことができる。第1のレンズ122及び第2のレンズ126は、共有ハウジング130内で一緒に結合することができる。
【0016】
システム100はまた、眼科顕微鏡110と結合された前部レンズアタッチメント114を含むことができる。前部レンズアタッチメントは、共有ハウジング130と結合できるレンズホルダ116を含むことができる。幾つかの場合に、前部レンズアタッチメント114は、レンズホルダ116及び共有ハウジング130を光線内及び外に二者択一的に配置するために、接合されて関節でつながれることができる。幾つかの場合に、前部レンズアタッチメント114は、レンズホルダ116を上下に移動できるねじ駆動装置として構成され、レンズホルダは、光線内及び外へと回転するように構成される。
【0017】
幾つかの場合に、眼科顕微鏡110のレンズ配置は、目の前部の(ラベル付けされていない)の画像を解像するために一般に選択される。同様に、第1のレンズ122及び第2のレンズ126の組み合わせ処方は、眼科顕微鏡110のレンズ配置と組み合わせて用いられる場合に、目140の網膜142の画像を解像するように選択することができる。これらの場合に、眼科専門家は、レンズホルダ116及び共有ハウジング130を光線内及び外へと関節でつなぐことによって、目140の前部及び網膜142を二者択一的に観察することができる。
【0018】
図2は、網膜の高分解能広角観察の方法200を示す。方法200は、目から反射された光線を観察するために眼科顕微鏡のレンズ配置を位置付けることと205、広視野網膜観察システム用の第1のレンズ及び第2のレンズを選択することと210、を含む。第1のレンズは、凸面を有する第1の側、及び回折面プロファイルを有する第2の側を備えたポリマーレンズとすることができる。幾つかの場合に、第1のレンズの第1の側及び第2の側の両方は、回折面プロファイルを有する。第2のレンズは、滑らかな表面プロファイル及び少なくとも1つの凹面を有するガラス又はポリマーレンズを含むことができる。第1のレンズ及び第2のレンズは、ほぼ色消しのダブレットを形成するために組み合わせることができる。
【0019】
次に、方法200は、共有ハウジングに第2のレンズを配置することを含み、第2のレンズの凹面は、共有ハウジングの開口底部に面する215。幾つかの場合に、共有ハウジングの底部の内部棚は、以下でより詳細に説明されるように、第2のレンズを支持する。また、方法200は、共有ハウジングに第1のレンズを配置することを含み、第1のレンズの凸面は、共有ハウジングの開口底部に面し、第1のレンズの回折面は、共有ハウジングの開口上部に面する220。
【0020】
第1のレンズ及び第2のレンズが、共有ハウジング内に収容された後で、方法200は、眼科顕微鏡と結合された前部レンズアタッチメントのレンズホルダに共有ハウジングを挿入することを含み225、共有ハウジングの開口底部は、目に面し、共有ハウジングの開口上部は、眼科顕微鏡に面する。
【0021】
次に、方法200は、第1のレンズ及び第2のレンズが、光線と同軸に配置されように、前部レンズアタッチメントを光線内に位置付けること230と、共有ハウジング内に含まれる広視野光学システムによって解像される目の網膜の高分解能画像を観察するために、眼科顕微鏡を合焦させること235と、を含む。
【0022】
図3Aは、本開示の幾つかの実施形態に従って、人間の目のモデル350からの光を解像する広視野光学システム320の例を示す。広視野光学システム320は、第1のレンズ322及び第2のレンズ326を含む。第1のレンズ322は、集光レンズとすることができ、且つ少なくとも1つの表面に回折面324を含むことができる。回折面324は、広視野光学システム320の光パワーを増加させ、且つ第2のレンズ326と一緒に、ほぼ色消しのダブレットを作成する。図3Bは、開示される技術の幾つかの実施形態に従って、二次ブレーズプロファイルを有する回折キノフォーム面の例を示す。幾つかの場合に、ポリマー又はガラスの追加の保護層が、回折面に適用され得る。
【0023】
幾つかの場合に、広視野光学システム320の第1のレンズ322及び第2のレンズ326の1つ又は複数は、高光学性能及び広視野光学系用に選択された光学等級ポリマーを含む。更に、光学等級ポリマーは、使い捨ての使用を可能にするために、高生産価値において低製造コストで広視野光学システム320を作製できるようにする。使い捨てであるほど低い製造コストを有する広視野光学システム320を用いることは、目からの液体及び/又は眼圧を維持するために用いられる液体若しくは目に送られる薬剤が、広視野光学システム320におけるレンズを曇らせる場合に、例えば眼科手術中に手術コストをそれほど増加させずに、外科医が素早く簡単にレンズを配置し交換できるようにする。
【0024】
前述のように、広視野光学システム320は、球面、非球面、円筒、及び自由形状の処方を備えた、屈折、反射、及び回折基板などの1つ又は複数の光学面を含むことができる。光学ガラスでこれらの表面を形成することは、時間のかかる高精度光学研磨及び/又は磁性流体研磨(MRF)方法を用いて達成され、且つ極めて費用がかかる。光学等級ポリマーは、使い捨ての広視野光学システム320用の十分に低いコストで、これらの光学面を製造できるようにすることに資する。何故なら、シングルポイントダイヤモンド旋削(SPDT)方法によって、プロトタイプが形成される必要があるだけであり、後続のコピーは、射出成形、圧縮成形等を用いて作製することができるからである。
【0025】
本発明者は、光学等級ポリマーから形成された広視野光学システム320が、スポットサイズ及び変調伝達関数試験において非常にうまく働くことを観察した。図4Aは、図3Aで説明した独立型広視野光学システムを用いて、中間平面に形成された目のモデルの画像スポットサイズの定量化された結果を示す。図4Bは、眼科顕微鏡と統合された、図3Aで説明された広視野光学システムを用いて、中間平面に形成された目のモデルの画像スポットサイズの定量化された結果を示す。図4Cは、顕微鏡モデルと統合された、図3Aで説明された広視野光学システムの変調伝達関数の定量化された結果を示す。MTFは、約30パーセントまで周辺において下がる、網膜の中央領域における回折限界分解能を提供する。
【0026】
再び図3Aを参照すると、第1のレンズ322及び第2のレンズ326は、少なくとも128ジオプトリの光パワーを生成するために結合することができる。また、第1のレンズ322及び第2のレンズ326は、眼科顕微鏡と組み合わせて、少なくとも19.11ミリメートルの直径にわたって広角で、網膜の中心において少なくとも10マイクロメートル及び網膜の周辺において20マイクロメートルの分解能で目の網膜の画像を解像することができる。
【0027】
幾つかの場合に、低コストで製造することができ、且つ複数の用途のために滅菌可能な光学ポリマーを選択することができる。例えば、ポリエーテルイミド(PEI)で作製された広視野光学システム320は、図4A-4Cに示されている結果と同様の結果を達成することができ、且つエチレンオキシド滅菌、γ線、高圧蒸気滅菌、乾熱滅菌等を含む様々な滅菌法に耐えることができる。
【0028】
幾つかの場合に、広視野光学システムにおける第1のレンズは、使い捨ての光学等級ポリマーとすることができ、一方で第2のレンズは、従来のガラスレンズを含む。上記で説明したように、第1のレンズは、液体の存在で曇らされ得る、且つ液体を取り除くことが特に困難になり得る回折面を含む可能性がある。しかしながら、第2のレンズは、滑らかな表面を有し、従ってきれいに拭くことがより容易になり得、従ってガラスレンズを使用し、滅菌し、再利用できるようにする。
【0029】
上記で説明したように、広視野光学システムにおける第1及び第2のレンズは、共有ハウジングに配置することができる。幾つかの場合に、第1及び第2のレンズの一方又は両方は、予め組み立てられるか、又は共有ハウジング内で一体的に形成される。他の幾つかの場合に、共有ハウジングは、第1及び第2のレンズの一方又は両方と結合するための幾何学的特徴を含む。
【0030】
図5Aは、広視野光学システム520の第1のレンズ522及び第2のレンズ526用の共有ハウジング530の側面の断面図を示す。共有ハウジング530の表面532は、共有ハウジング530が、開口上部534及び開口底部536を備えた椀形であるように、中心垂直軸のまわりに延びることができる。また、開口底部536の近くの底部の内部棚538は、第2のレンズ526を支持するように構成され、開口上部534の近くの上部の内部棚540は、第1のレンズ522を支持するように構成される。広視野光学システム520のように、共有ハウジング530は、共有ハウジング530を使い捨てにできるようにするほどの低コストで製造することができる(例えば、圧縮成形、射出成形等を用いて)。
【0031】
幾つかの場合に、共有ハウジング530の表面532は、例えば、射出成形できる硬質材料(例えばアルミニウム、硬質プラスチック等)とすることができる。これらの場合に、第1のレンズ522及び第2のレンズ526は、共有ハウジング530で浮動するか又は中にカチッと入ることができる。幾つかの場合に、共有ハウジング530の表面532は、少なくとも幾らか弾性の材料から形成することができる。これらの場合に、上部の内部棚540及び/又は底部の内部棚538のまわりの共有ハウジングの表面532は、第1のレンズ522及び第2のレンズ526の寸法よりそれぞれわずかに小さくすることができる。より小さな寸法は、第1のレンズ522及び第2のレンズ526が、共有ハウジング530の弾性表面532を伸ばすことができるように、且つ弾性表面532の復原力によって共有ハウジング530内に保持され得るようにすることができる。また、弾性表面532は、第1のレンズ522及び第2のレンズ526の適切な軸整列を保証することができる。
【0032】
光学ポリマーを用いる別の利点は、光学的及び機械的な機能の統合であり、従ってコンポーネントの数を低減することによって、広視野光学システム520の組み立て及び位置合わせを単純化することである。例えば、幾つかの場合に、第2のレンズ526は、一部として共有ハウジング530と統合することができる。図5Bは、共有ハウジング530’内にパチンと嵌められるか又は配置された広視野光学システム520’の第2のレンズ526’及び第1のレンズ522’と一体の共有ハウジング530’の側面の断面図を示す。
【0033】
上記の説明は、レンズペアを含む広視野光学システムに言及するが、幾つかの実施形態はまた、匹敵する光パワーを備えた、且つ眼科顕微鏡と組み合わせて、匹敵する高分解能で目の網膜の画像を解像できる単一の使い捨て光学等級ポリマーレンズを含む。図6は、本開示の幾つかの実施形態に従って、人間の目のモデル650からの光を解像する広視野光学システム620の例を示す。広視野光学システム620は、屈折/回折ハイブリッドである単レンズ622を含む。単レンズ622は、回折面624、例えば二次ブレーズプロファイルを有する回折キノフォーム面を含む。上記のマルチレンズ解決法のように、本発明者は、光学等級ポリマーから形成された単一屈折/回折ハイブリッドレンズを備えた広視野光学システム620が、スポットサイズ及び変調伝達関数試験において非常にうまく働くことを観察した。図7Aは、眼科顕微鏡と統合された、図6で説明された広視野光学システムにおける単一屈折/回折ハイブリッドレンズを用いて、中間平面に形成された目のモデルの画像スポットサイズの定量化された結果を示す。図7Bは、眼科顕微鏡と統合された、図6で説明された広視野光学システムにおける単一屈折/回折ハイブリッドレンズの変調伝達関数の定量化された結果を示す。
【0034】
幾つかの場合に、単一屈折/回折ハイブリッドレンズは、両方のレンズ表面に回折キノフォーム面を形成することによって向上させることができる。これらの場合に、流体が光学系を汚染するのを防ぐために、窓が、単一屈折/回折ハイブリッドレンズと患者の目との間に配置され得る。
【0035】
上記で開示された主題は、限定ではなく実例として考えられるべきであり、添付の請求項は、本開示の趣旨及び範囲内に入る全てのかかる修正、向上及び他の実施形態をカバーするように意図されている。従って、法律によって許される最大限まで、本開示の範囲は、以下の請求項及びそれらの均等物の最も広い許容される解釈によって決定されるべきであり、前述の詳細な説明によって制限も限定もされないものとする。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6
図7A
図7B-1】
図7B-2】