(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】ミラーユニット
(51)【国際特許分類】
G02B 26/10 20060101AFI20241010BHJP
G02B 26/08 20060101ALI20241010BHJP
G02B 5/08 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
G02B26/10 104Z
G02B26/08 E
G02B5/08 F
(21)【出願番号】P 2020043211
(22)【出願日】2020-03-12
【審査請求日】2023-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2019210634
(32)【優先日】2019-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100177910
【氏名又は名称】木津 正晴
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大幾
(72)【発明者】
【氏名】井出 智行
【審査官】小濱 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-041039(JP,A)
【文献】特開2017-075989(JP,A)
【文献】特開2017-026730(JP,A)
【文献】特開2007-80859(JP,A)
【文献】国際公開第2011/013581(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/08-26/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部、及び前記支持部に対して移動可能に構成された可動ミラー部を有するミラーデバイスと、
光入射開口を有し、前記光入射開口から入射した光が前記可動ミラー部に入射可能となるように前記ミラーデバイスを収容及び保持するパッケージと、を備え、
前記パッケージには、前記パッケージの内部と外部とを連通する通気口が設けられて
おり、
前記パッケージは、所定方向の一方側に開口する前記光入射開口が設けられて前記ミラーデバイスを保持する本体部と、前記光入射開口を覆うように前記本体部上に配置された窓部材と、有し、前記本体部は、前記所定方向の他方側に位置する底壁を含み、
前記通気口は、前記所定方向において前記底壁に対して前記一方側に設けられている、ミラーユニット。
【請求項2】
所定方向における前記通気口の最小幅は、前記可動ミラー部と
、前記ミラーユニット
を構成する部分のうち位置が固定された部分との間の最小距離よりも小さい、請求項1に記載のミラーユニット。
【請求項3】
前記可動ミラー部は、可動部と、前記可動部上に設けられたミラーと、を有し、
所定方向における前記通気口の最小幅は、前記ミラーに垂直な方向から見た場合における前記支持部と前記可動部との間の最小距離よりも小さい、請求項1又は2に記載のミラーユニット。
【請求項4】
所定方向における前記通気口の最小幅は、前記可動ミラー部が前記支持部に対して移動可能範囲における最大位置まで移動したときの前記可動ミラー部と前記ミラーユニットにおいて位置が固定された部分との間の最小距離よりも小さい、請求項1~3のいずれか一項に記載のミラーユニット。
【請求項5】
前記通気口は、前記本体部と前記窓部材との間の隙間によって構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のミラーユニット。
【請求項6】
前記本体部の頂面には、凸部が設けられており、
前記窓部材は、前記凸部に接触するように前記頂面上に配置されており、
前記隙間は、前記頂面と前記窓部材との間に形成されている、請求項5に記載のミラーユニット。
【請求項7】
前記通気口は、前記窓部材の一部が前記本体部に接合されている一方で前記窓部材の残部が前記本体部に接合されていないことにより、構成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載のミラーユニット。
【請求項8】
前記通気口は、前記光入射開口によって構成されている、請求項1~7のいずれか一項に記載のミラーユニット。
【請求項9】
前記通気口は、剥離可能なフィルムにより覆われている、請求項1~8のいずれか一項に記載のミラーユニット。
【請求項10】
前記通気口は、前記光入射開口によって構成されており、
前記通気口は、前記本体部に接着された剥離可能なフィルムより覆われており、
前記フィルムが前記本体部に接着されている幅は、前記光入射開口の幅よりも狭い、請求項1に記載のミラーユニット。
【請求項11】
支持部、及び前記支持部に対して移動可能に構成された可動ミラー部を有するミラーデバイスと、
光入射開口を有し、前記光入射開口から入射した光が前記可動ミラー部に入射可能となるように前記ミラーデバイスを収容及び保持するパッケージと、を備え、
前記パッケージには、前記パッケージの内部と外部とを連通する通気口が設けられており、
前記パッケージは、前記光入射開口が設けられて前記ミラーデバイスを保持する本体部と、前記光入射開口を覆うように前記本体部上に配置された窓部材と、を有し、
前記通気口は、前記本体部と前記窓部材との間の隙間によって構成されている、ミラーユニット。
【請求項12】
支持部、及び前記支持部に対して移動可能に構成された可動ミラー部を有するミラーデバイスと、
光入射開口を有し、前記光入射開口から入射した光が前記可動ミラー部に入射可能となるように前記ミラーデバイスを収容及び保持するパッケージと、を備え、
前記パッケージには、前記パッケージの内部と外部とを連通する通気口が設けられており、
前記パッケージは、前記光入射開口が設けられて前記ミラーデバイスを保持する本体部と、前記光入射開口を覆うように前記本体部上に配置された窓部材と、を有し、
前記通気口は、前記窓部材の一部が前記本体部に接合されている一方で前記窓部材の残部が前記本体部に接合されていないことにより、構成されている、ミラーユニット。
【請求項13】
支持部、及び前記支持部に対して移動可能に構成された可動ミラー部を有するミラーデバイスと、
光入射開口を有し、前記光入射開口から入射した光が前記可動ミラー部に入射可能となるように前記ミラーデバイスを収容及び保持するパッケージと、を備え、
前記パッケージには、前記パッケージの内部と外部とを連通する通気口が設けられており、
前記通気口は、剥離可能なフィルムにより覆われている、ミラーユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミラーユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
可動ミラー部を有する光走査デバイスと、光走査デバイスを収容するパッケージと、を備えるミラーユニットが知られている(例えば特許文献1,2参照)。このようなミラーユニットでは、パッケージ本体の光入射開口が窓部材によって塞がれており、パッケージ内が気密に封止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-17832号公報
【文献】特開2016-99567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなミラーユニットにおいては、パッケージの内部と外部との間の温度差により、窓部材に結露が生じるおそれがある。本発明は、パッケージ内での結露の発生を抑制することができるミラーユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のミラーユニットは、支持部、及び支持部に対して移動可能に構成された可動ミラー部を有するミラーデバイスと、光入射開口を有し、光入射開口から入射した光が可動ミラー部に入射可能となるようにミラーデバイスを収容及び保持するパッケージと、を備え、パッケージには、パッケージの内部と外部とを連通する通気口が設けられている。
【0006】
このミラーユニットでは、通気口を介してパッケージの内部と外部との間を通気することができ、その結果、パッケージ内での結露の発生を抑制することができる。
【0007】
所定方向における通気口の最小幅は、可動ミラー部とミラーユニットにおいて位置が固定された部分との間の最小距離よりも小さくてもよい。この場合、通気口からパッケージ内に進入した塵埃により可動ミラー部の動作が阻害されるのを抑制することができる。
【0008】
可動ミラー部は、可動部と、可動部上に設けられたミラーと、を有し、所定方向における通気口の最小幅は、ミラーに垂直な方向から見た場合における支持部と可動部との間の最小距離よりも小さくてもよい。この場合、通気口からパッケージ内に進入した塵埃が支持部と可動部との間に挟まるのを抑制することができ、塵埃により可動ミラー部の動作が阻害されるのを抑制することができる。
【0009】
所定方向における通気口の最小幅は、可動ミラー部が支持部に対して移動可能範囲における最大位置まで移動したときの可動ミラー部とミラーユニットにおいて位置が固定された部分との間の最小距離よりも小さくてもよい。この場合、可動ミラー部が支持部に対して移動可能範囲における最大位置まで移動したときでも、通気口からパッケージ内に進入した塵埃により可動ミラー部の動作が阻害されるのを抑制することができる。
【0010】
パッケージは、光入射開口が設けられてミラーデバイスを保持する本体部と、光入射開口を覆うように本体部上に配置された窓部材と、を有し、通気口は、本体部と窓部材との間の隙間によって構成されていてもよい。この場合、通気口を簡易に形成することができる。また、通気口が窓部材の近くに位置するため、窓部材の近傍の空気の温度及び湿度がパッケージ外の空気の温度及び湿度に近づき易く、結露の発生を一層抑制することができる。
【0011】
本体部の頂面には、凸部が設けられており、窓部材は、凸部に接触するように頂面上に配置されており、隙間は、頂面と窓部材との間に形成されていてもよい。この場合、通気口を一層簡易に形成することができる。
【0012】
パッケージは、光入射開口が設けられてミラーデバイスを保持する本体部と、光入射開口を覆うように本体部上に配置された窓部材と、を有し、通気口は、窓部材の一部が本体部に接合されている一方で窓部材の残部が本体部に接合されていないことにより、構成されていてもよい。この場合、通気口を簡易に形成することができる。
【0013】
通気口は、光入射開口によって構成されていてもよい。この場合、通気口を簡易に形成することができる。また、光入射開口が通気口を兼ねているため、結露を効果的に抑制することができる。
【0014】
通気口は、剥離可能なフィルムにより覆われていてもよい。この場合、ミラーユニットの搬送時等に通気口からパッケージ内に塵埃が進入するのを防止することができる。また、ミラーユニットの使用時には、フィルムを剥離して通気口を開放することができる。
【0015】
パッケージは、光入射開口が設けられてミラーデバイスを保持する本体部を有し、通気口は、光入射開口によって構成されており、通気口は、本体部に接着された剥離可能なフィルムより覆われており、フィルムが本体部に接着されている幅は、光入射開口の幅よりも狭くてもよい。この場合、通気口が光入射開口によって構成されているため、通気口を簡易に形成することができる。また、光入射開口が通気口を兼ねているため、結露を効果的に抑制することができる。また、通気口が剥離可能なフィルムにより覆われているため、ミラーユニットの搬送時等に通気口からパッケージ内に塵埃が進入するのを防止することができる。ミラーユニットの使用時には、フィルムを剥離して通気口を開放することができる。更に、フィルムが本体部に接着されている幅が、光入射開口の幅よりも狭いため、フィルムを剥がし易く、本体部に接着剤が残り難い。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、パッケージ内での結露の発生を抑制することができるミラーユニットを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係るミラーユニットの平面図である。
【
図2】
図1のII-II線に沿っての断面図である。
【
図3】
図1のIII-III線に沿っての断面図である。
【
図6】他の例に係る光走査デバイスの平面図である。
【
図7】他の例に係る光走査デバイスの平面図である。
【
図8】
図7のXIII-XIII線に沿っての断面図である。
【
図9】第1変形例に係るミラーユニットの断面図である。
【
図10】第2変形例に係るミラーユニットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
[ミラーユニットの全体構成]
【0019】
図1~
図4に示されるように、ミラーユニット100は、光走査デバイス(ミラーデバイス)1と、光走査デバイス1を収容するパッケージ40と、を備えている。パッケージ40は、本体部41と、窓部材51と、を有している。本体部41には、所定方向(Z軸方向)の一方側S1に開口する光入射開口41aが設けられている。本体部41は、光入射開口41aから入射した光が光走査デバイス1に入射可能となるように、光走査デバイス1を保持している。窓部材51は、光入射開口41aを覆うように配置されている。
[光走査デバイスの構成]
【0020】
図5に示されるように、光走査デバイス1は、支持部2と、支持部2に対して揺動可能な可動ミラー部10と、磁界発生部Mと、を有している。可動ミラー部10は、第1可動部3と、第2可動部4と、一対の第1連結部5と、一対の第2連結部6と、ミラー7と、を有している。支持部2、第1可動部3、第2可動部4、一対の第1連結部5及び一対の第2連結部6は、例えばSOI(Silicon on Insulator)基板により一体的に形成されている。つまり、光走査デバイス1は、MEMSデバイスとして構成されている。磁界発生部Mは、例えば、ハルバッハ配列がとられた永久磁石を含んで構成されており、略直方体状に形成されている。
【0021】
第1可動部3は、例えば矩形板状に形成されている。第2可動部4は、光軸方向Aから見た場合に隙間を介して第1可動部3を囲むように、例えば矩形環状に形成されている。支持部2は、光軸方向Aから見た場合に隙間を介して第2可動部4を囲むように、例えば矩形枠状に形成されている。つまり、支持部2は、光軸方向Aから見た場合に第1可動部3及び第2可動部4を囲むように枠状に形成されている。
【0022】
第1可動部3は、第1軸線X1周りに揺動可能となるように、一対の第1連結部5を介して第2可動部4に連結されている。つまり、第1可動部3は、支持部2において第1軸線X1周りに揺動可能となるように支持されている。第1可動部3は、第1部分31と、第2部分32と、を含んでいる。第1部分31は、光軸方向Aから見た場合に例えば円形状に形成されている。第2部分32は、光軸方向Aから見た場合に例えば矩形環状に形成されている。第1部分31は、光軸方向Aから見た場合に第2部分32に囲まれており、複数(この例では2つ)の接続部分33を介して第2部分32と接続されている。つまり、第1部分31と第2部分32との間には、複数の接続部分33を除いて隙間が形成されている。
【0023】
接続部分33は、例えば、第2部分32の矩形状の内縁のうち第2軸線X2に交差する2辺の中央部に位置している。すなわち、この例では、接続部分33は、第2軸線X2上に位置している。第1部分31は、少なくとも第2軸線X2に沿った方向において第2部分32に接続されていればよい。
【0024】
第2可動部4は、第2軸線X2周りに揺動可能となるように、一対の第2連結部6を介して支持部2に連結されている。つまり、第2可動部4は、支持部2において第2軸線X2周りに揺動可能となるように支持されている。第1軸線X1及び第2軸線X2は、光軸方向Aに垂直であり、互いに交差している(この例では互いに直交している)。なお、第1部分31は、光軸方向Aから見た場合に矩形状又は多角形状に形成されていてもよい。第1部分31は、光軸方向Aから見た場合に、円形状(例えば楕円形状)に形成されていてもよい。第2部分32は、光軸方向Aから見た場合に五角形以上の多角形環状又は円環状に形成されていてもよい。
【0025】
一対の第1連結部5は、第1可動部3の第2部分32と第2可動部4との間の隙間において、第1可動部3を挟むように第1軸線X1上に配置されている。各第1連結部5は、トーションバーとして機能する。一対の第2連結部6は、第2可動部4と支持部2との間の隙間において、第2可動部4を挟むように第2軸線X2上に配置されている。各第2連結部6は、トーションバーとして機能する。
【0026】
ミラー7は、第1可動部3の第1部分31に設けられている。ミラー7は、第1軸線X1と第2軸線X2との交点を含むように、第1部分31における磁界発生部Mとは反対側の表面に形成されている。ミラー7は、例えば、アルミニウム、アルミニウム系合金、金又は銀等の金属材料により、円形、楕円形又は矩形の膜状に形成されている。ミラー7における第1可動部3とは反対側の表面は、光軸方向Aと垂直に延在するミラー面7aを構成している。ミラー7の中心は、光軸方向Aから見た場合に、第1軸線X1と第2軸線X2との交点に一致している。このように、複数の接続部分33を介して第2部分32と接続された第1部分31にミラー7が設けられているため、第1可動部3が共振周波数レベルで第1軸線X1周りにおいて揺動しても、ミラー7に撓み等の変形が生じるのを抑制することができる。
【0027】
更に、光走査デバイス1は、第1駆動用コイル11と、第2駆動用コイル12と、配線15a,15bと、配線16a,16bと、電極パッド21a,21bと、電極パッド22a,22bと、を有している。なお、
図2では、説明の便宜上、第1駆動用コイル11及び第2駆動用コイル12が一点鎖線で示され、配線15a,15b及び配線16a,16bが実線で示されている。
【0028】
第1駆動用コイル11は、第1可動部3の第2部分32に設けられている。第1駆動用コイル11は、光軸方向Aから見た場合におけるミラー7の外側の領域(すなわち、第2部分32)においてスパイラル状(渦巻き状)に複数回巻かれている。第1駆動用コイル11には、磁界発生部Mにより発生させられる磁界が作用する。
【0029】
第1駆動用コイル11は、第1可動部3の表面に形成された溝内に配置されている。つまり、第1駆動用コイル11は、第1可動部3に埋め込まれている。第1駆動用コイル11の一端は、配線15aを介して電極パッド21aに接続されている。配線15aは、第1可動部3から、一方の第1連結部5、第2可動部4及び一方の第2連結部6を介して、支持部2まで延在している。配線15a及び電極パッド21aは、例えば、タングステン、アルミニウム、金、銀、銅又はアルミニウム系合金等の金属材料により一体的に形成されている。第1駆動用コイル11と配線15aとは、互いに接続されている。
【0030】
第1駆動用コイル11の他端は、配線15bを介して電極パッド21bに接続されている。配線15bは、第1可動部3から、他方の第1連結部5、第2可動部4及び他方の第2連結部6を介して、支持部2まで延在している。配線15b及び電極パッド21bは、例えば、タングステン、アルミニウム、金、銀、銅又はアルミニウム系合金等の金属材料により一体的に形成されている。第1駆動用コイル11と配線15bとは、互いに接続されている。
【0031】
第2駆動用コイル12は、第2可動部4に設けられている。第2駆動用コイル12は、第2可動部4においてスパイラル状(渦巻き状)に複数回巻かれている。第2駆動用コイル12には、磁界発生部Mにより発生させられる磁界が作用する。第2駆動用コイル12は、第2可動部4の表面に形成された溝内に配置されている。つまり、第2駆動用コイル12は、第2可動部4に埋め込まれている。
【0032】
第2駆動用コイル12の一端は、配線16aを介して電極パッド22aに接続されている。配線16aは、第2可動部4から、一方の第2連結部6を介して、支持部2に延在している。配線16a及び電極パッド22aは、例えば、タングステン、アルミニウム、金、銀、銅又はアルミニウム系合金等の金属材料により一体的に形成されている。なお、第2駆動用コイル12と配線16aとは、互いに接続されている。
【0033】
第2駆動用コイル12の他端は、配線16bを介して電極パッド22bに接続されている。配線16bは、第2可動部4から、他方の第2連結部6を介して、支持部2に延在している。配線16b及び電極パッド22bは、例えば、タングステン、アルミニウム、金、銀、銅又はアルミニウム系合金等の金属材料により一体的に形成されている。なお、第2駆動用コイル12と配線16bとは、互いに接続されている。
【0034】
光走査デバイス1における可動ミラー部10の動作の例を挙げる。第1例としては、第1駆動用コイル11に高周波数の駆動電流が印加される。このとき、第1駆動用コイル11には、磁界発生部Mにより発生させられた磁界が作用しているため、第1駆動用コイル11にローレンツ力が発生する。これにより、第1可動部3は、例えば、共振周波数レベルで第1軸線X1周りにおいて揺動させられる。
【0035】
また、第2駆動用コイル12には、一定の大きさの駆動電流が印加される。このとき、第2駆動用コイル12には、磁界発生部Mにより発生させられた磁界が作用しているため、第2駆動用コイル12にローレンツ力が発生する。これにより、第2可動部4は、例えば、駆動電流の大きさに応じて第2軸線X2周りにおいて回転させられ、その状態で停止させられる。これにより、光走査デバイス1によれば、所定の光源からの光をミラー7により反射させつつ走査することができる。光は外部から窓部材51を介してミラー面7aに入射してミラー面7aで反射され、窓部材51を介して外部に出射する。第1例では、第1可動部3が共振周波数で揺動されると共に第2可動部4が静的に用いられる。
【0036】
第2例としては、第1例の第1可動部3の動作と同様に、第1駆動用コイル11に高周波数の駆動電流が印加されることによって第1可動部3が共振周波数に応じて揺動されると共に、第2駆動用コイル12に高周波数の駆動電流が印加されることによって第2可動部4が共振周波数に応じて揺動される。このように、第2例では、第1可動部3及び第2可動部4の両方が、共振周波数で揺動される。
【0037】
第3例としては、第1例の第2可動部4の動作と同様に、第1駆動用コイル11に対して一定の大きさの駆動電流が印加されることによって、第1可動部3が駆動電流の大きさに応じて第1軸線X1周りにおいて回転させられて停止させられると共に、第2駆動用コイル12に対して一定の大きさの駆動電流が印加されることによって、第2可動部4が駆動電流の大きさに応じて第2軸線X2周りにおいて回転させられて停止させられる。このように、第3例では、第1可動部3及び第2可動部4の両方が、静的に用いられる。
【0038】
第4例としては、例えば第2可動部4が設けられていない場合等であって、第1駆動用コイル11に高周波数の駆動電流が印加されることにより、第1可動部3のみが共振周波数に応じて揺動される。さらに、第5例としては、同様の場合であって、第1駆動用コイル11に対して一定の大きさの駆動電流が印加されることによって、第1可動部3が駆動電流の大きさに応じて第1軸線X1周りにおいて回転させられて停止させられる。第4例及び第5例では、第1可動部3のみが駆動される。
【0039】
なお、
図2に示されるように、支持部2が磁界発生部Mによって支持され、第1可動部3及び第2可動部4は、磁界発生部Mから離間している。これにより、第1可動部3及び第2可動部4は、磁界発生部Mに干渉することなく回転可能となっている。
[パッケージの構成]
【0040】
図1~
図4に示されるように、パッケージ40の本体部41は、例えば略直方体状に形成されている。本体部41は、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PP(ポリプロピレン)等の樹脂材料からなり、射出成形により形成される。本体部41は、樹脂材料からなる場合、フィラー強化されていてもよい。本体部41は、Al,Fe又はそれらの合金等の金属材料により形成されてもよい。本体部41には、一方側S1に開口する凹部42が形成されている。凹部42の開口により、上述した光入射開口41aが構成されている。
【0041】
窓部材51は、例えば、ガラス等の透光性材料により形成された矩形平板状の基材の両表面上に反射防止膜が形成されることで構成されている。上述のとおり、窓部材51は、光入射開口41aを覆っている。窓部材51は、Z軸方向と垂直に延在する一対の主面51aと、X軸方向と垂直に延在する一対の側面51bと、Y軸方向と垂直に延在する一対の側面51cと、を有している。一対の側面51b及び一対の側面51cは、一対の主面51aに連続している。
【0042】
本体部41の凹部42は、光走査デバイス1が配置されるデバイス配置部43と、光走査デバイス1から外部へ延在する配線等が配置される配線配置部44と、を含んでいる。デバイス配置部43は、窓部材51の主面51aに対して傾斜して延在する第1面43aと、第1面43aから第1面43aと垂直に延在する第2面43bと、第1面43aからZ軸方向と垂直に延在する一対の第3面43cと、を有している。
【0043】
光走査デバイス1は、磁界発生部Mが第1面43a、第2面43b及び一対の第3面43cに接触した状態で、デバイス配置部43に配置されている。これにより、光走査デバイス1は、可動ミラー部10のミラー面7aが窓部材51の主面51aに対して傾斜した状態となっている。光走査デバイス1は、例えば、第1軸線X1がX軸方向と平行になり且つ第2軸線X2がY軸方向と平行になるように配置されている。
【0044】
配線配置部44は、窓部材51の主面51aに対して傾斜した第1面44aと、第1面44aに連続し且つ湾曲した第2面44bと、を有している。第1面44aには、例えば複数の電極パッドが配置されている。これらの電極パッドには、光走査デバイス1から延在する配線と、第2面44bを通ってパッケージ40の外部へ延在する配線WRとが、電気的に接続されている。配線WRは、ミラーユニット100の外部に配置された外部端子に電気的に接続されている。配線WRは、この例では本体部41の表面上に設けられて外部へ延在しているが、本体部41の内部を通って外部へ延在していてもよい。配線WRは、本体部に埋め込まれた一端、及びパッケージ40の外部に露出した他端を有するリード端子の一端に電気的に接続されていてもよい。第2面44bは、必ずしも湾曲していなくてもよい。
【0045】
光入射開口41aは、Z軸方向から見た場合に(換言すれば窓部材51の主面51aに垂直な方向から見た場合に)略矩形状を呈している。より具体的には、光入射開口41aは、Z軸方向から見た場合に、デバイス配置部43に対応する矩形状の領域と、配線配置部44に対応する矩形状の領域を含んでいる。配線配置部44に対応する領域のY軸方向における幅は、デバイス配置部43に対応する領域のY軸方向における幅よりも狭くなっている。
図1では、光入射開口41aの縁が破線で示されている。
【0046】
本体部41は、凹部42を画定する枠状の側壁45を有している。側壁45は、Z軸方向から見た場合に、略矩形環状を呈し、光走査デバイス1を囲んでいる。側壁45は、最も一方側S1に位置する頂面45aと、Z軸方向に沿って延在する内面45bと、頂面45a及び内面45bに接続された傾斜面45cと、を有している。頂面45aは、Z軸方向と垂直に延在しており、傾斜面45cは、頂面45aに近づくにつれて一方側S1に近づくようにZ軸方向に対して傾斜して延在している。
【0047】
また、側壁45は、X軸方向と交差する平面に沿って延在する一対の外面45dと、Y軸方向と交差する平面に沿って延在する一対の外面45eと、を有している。この例では、一対の外面45dは、X軸方向と垂直に延在している。一対の外面45eは、Z軸方向と平行に延在する第1部分45fと、Z軸方向に対して傾斜して延在する第2部分45gを含んでいる。側壁45は、X軸方向において互いに向かい合う一対の第1壁部46と、Y軸方向において互いに向かい合う一対の第2壁部47と、を有している。
【0048】
第2部分45gは、第1部分45fに対して他方側(一方側S1とは反対側)に配置され、本体部41における他方側の端部まで延在している。第2部分45gが形成されていることにより、Y軸方向における本体部41(側壁45)の幅は、他方側に近づくにつれて狭くなっている。これにより、本体部41を射出成形により形成する場合に、成形品を成形型から容易に取り出すことができる。また、第2部分45gだけでなく、Z軸方向と平行な第1部分45fが形成されているため、ミラーユニット100を光学系に組み込む際に第1部分45fを押し当てることでミラーユニット100を位置合わせすることができ、ミラーユニット100の位置合わせ精度を向上することができる。
【0049】
パッケージ40は、側壁45の頂面45aに設けられた突起61を更に有している。突起61は、光入射開口41aの縁に沿って延在している。突起61は、Z軸方向から見た場合に、矩形環状を呈し、光入射開口41aを囲んでいる。突起61が形成されていることより、突起61の内面61aと頂面45aとの間には段差部62が形成されている。
【0050】
突起61は、頂面45aの外縁に沿って延在している。Y軸方向から見た場合(
図2)、突起61の外面61bは、側壁45の外面45dと同一平面上に位置している。X軸方向から見た場合(
図3)、突起61の外面61bは、側壁45の外面45eの第1部分45fと同一平面上に位置している。突起61は、例えば、本体部41と同一の樹脂材料からなり、本体部41と一体に形成されている。本体部41及び突起61は、例えば、一回の射出成形により同時に形成され、単一の部材を構成している。突起61は、側壁45の一対の第1壁部46上にそれぞれ設けられた一対の第1部分64と、側壁45の一対の第2壁部47上にそれぞれ設けられた一対の第2部分65と、を有している。
【0051】
側壁45の頂面45aには、3つの凸部(当接部)63が設けられている。各凸部63は、Z軸方向から見た場合に、突起61よりも内側に配置されている。各凸部63は、一方側S1を向いた平坦な当接面63aを有している。当接面63aは、例えば、Z軸方向と垂直に延在しており、円形状を呈している。
【0052】
窓部材51は、光入射開口41aを覆うように段差部62に配置されている。すなわち、窓部材51は、突起61の内側において頂面45a上に配置され、光入射開口41aを覆っている。窓部材51の一対の主面51aの一方(以下、単に主面51aとも記す)が側壁45の頂面45aと向かい合い、窓部材51の側面51b,51cが突起61の内面61aと向かい合っている。窓部材51の主面51aは、凸部63の当接面63aに接触している(当接させられている)。これにより、頂面45aのうち当接面63aが設けられていない領域においては、窓部材51の主面51aと頂面45aとの間に隙間G1が形成されている。また、窓部材51の側面51b,51cと突起61の内面61aとの間には、隙間G2が形成されている。すなわち、側面51b,51cは、内面61aから離間している。
【0053】
隙間G1及び隙間G2は、互いに接続されている。隙間G1,G2により、パッケージ40の内部と外部とを連通する通気口80が構成されている。すなわち、通気口80は、本体部41と窓部材51との間の隙間G1,G2によって構成されている。通気口80により、パッケージ40の内部と外部との間における空気の流通が可能となっている。
【0054】
窓部材51は、例えば、低融点ガラス等の接合材70により本体部41に接合されている。窓部材51は、例えば、Z軸方向から見た場合における4つの隅部において本体部41に接合されている。4つの隅部に加えて又は代えて、窓部材51は、当接面63aとの接触箇所において接合材により本体部41に接合されていてもよい。窓部材51が本体部41に接合されている箇所においては、本体部41と窓部材51との間が接合材70によって塞がれており、本体部41と窓部材51との間に隙間G1(通気口80)が形成されていない。一方、窓部材51が本体部41に接合されていない箇所においては、本体部41と窓部材51との間に隙間G1(通気口80)が形成されている。すなわち、通気口80は、窓部材51の一部が本体部41に接合されている一方で、窓部材51の残部が本体部41に接合されていないことにより、構成されているとみなすことができる。
【0055】
突起61における一方側S1の端面61cは、全周にわたって(端面61cにおけるいずれの位置においても)、窓部材51よりも一方側S1に位置している。すなわち、突起61の頂面45aからの高さHは、窓部材51の厚さ(一対の主面51a間の距離)T1と凸部63の頂面45aからの高さ(Z軸方向における隙間G1の長さ)との和よりも大きい。窓部材51の厚さT1は、例えば0.6mm程度である。
【0056】
突起61の厚さT2は、突起61の頂面45aからの高さHよりも小さい。突起61の厚さT2は、窓部材51の厚さT1よりも薄い。突起61の厚さT2は、突起61の延在方向に垂直な方向における厚さであり、例えば突起61のうちX軸方向と垂直に延在する部分についてはX軸方向における厚さであり、Y軸方向と垂直に延在する部分についてはY軸方向における厚さである。突起61の厚さT2は、突起61の最大厚さである。例えば、実施形態のように突起61の一部が先細り形状に形成されている場合、突起61の厚さT2は、突起61における最も厚い部分における厚さである。この例では、突起61においてY軸方向に沿って延在する一対の部分の一方が、先細り形状に形成され、傾斜面61dを有している。これにより、窓部材51の段差部62への配置作業を容易化することができる。また、突起61を撓み変形し易くすることができる。
[通気口の構成]
【0057】
通気口80の最小幅Wは、可動ミラー部10とミラーユニット100において位置が固定された部分との間の最小距離Lよりも小さくなっている。
【0058】
まず、通気口80の最小幅Wについて説明する。通気口80においてパッケージ40の内部から外部へと向かう方向を延在方向とすると、通気口80の最小幅Wは、延在方向に垂直な断面における最小幅である。実施形態のように通気口80が隙間G1,G2により構成されている場合、隙間G1のうち窓部材51と側壁45の第1壁部46との間に形成された部分における延在方向は、X軸方向であり(
図2)、隙間G1のうち窓部材51と側壁45の第2壁部47との間に形成された部分における延在方向は、Y軸方向である(
図3)。隙間G2における通気口80の延在方向は、Z軸方向である。
【0059】
実施形態では、隙間G1の最小幅W1は、Z方向における隙間G1の幅である。隙間G2の最小幅W2は、隙間G2のうち窓部材51と突起61の第1部分64との間に形成された部分においては、X方向における隙間G2の幅であり(
図2)、隙間G2のうち窓部材51と突起61の第2部分65との間に形成された部分においては、Y方向における隙間G2の幅である(
図3)。この例では、隙間G1の最小幅W1は、隙間G1の延在方向の全体にわたって同一であり、隙間G2の最小幅W2は、隙間G2の延在方向の全体にわたって同一である。最小幅W1は、最小幅W2と等しい。したがって、通気口80の最小幅Wは、隙間G1の最小幅W1及び隙間G2の最小幅W2と等しい。最小幅W1が最小幅W2よりも狭い場合、通気口80の最小幅Wは最小幅W1であり、最小幅W2が最小幅W1よりも狭い場合、通気口80の最小幅Wは最小幅W2である。
【0060】
実施形態では、延在方向に垂直な断面における隙間G1の形状が延在方向に関して一様であるが、延在方向に垂直な断面における隙間G1の形状は、延在方向に関して変化していてもよい。この場合、隙間G1の最小幅W1は、最小幅が最も狭い断面における最小幅である。実施形態とは異なりY方向における隙間G1の最小幅がZ方向における隙間G1の最小幅よりも狭い場合、隙間G1の最小幅W1は、Y方向における隙間G1の幅である。これらの点は、隙間G2についても同様である。
【0061】
最小距離Lは、可動ミラー部10とミラーユニット100において位置が固定された部分との間の最小距離である。実施形態では、ミラーユニット100において位置が固定された部分とは、ミラーユニット100における可動ミラー部10以外の全ての要素であり、具体的には光走査デバイス1の支持部2及び磁界発生部M、並びにパッケージ40である。
【0062】
図5に示される光走査デバイス1では、最小距離Lは、光軸方向A(ミラー7に垂直な方向)から見た場合における支持部2と第2可動部4との間の最小距離であり、第1軸線X1に平行な方向における支持部2と第2可動部4との間の距離である。
【0063】
図6に示される光走査デバイス1Aでは、最小距離Lは、光軸方向Aから見た場合における支持部2と第2可動部4との間の最小距離であり、第1軸線X1に平行な方向における支持部2と第2可動部4との間の距離L1である。この例では、距離L1は、第2軸線X2に平行な方向における支持部2と第2可動部4との間の距離L2、及び第1軸線X1に平行な方向における支持部2と第2連結部6との間の距離L3と等しい。距離L1,L2,L3が異なる場合、最小距離Lは、距離L1,L2,L3のうち最も短いものである。支持部2と第2連結部6との間の距離とは、第2連結部6の延在方向に垂直な方向における距離である。
図6の例では、第1可動部3は、円形板状に形成されている。
【0064】
図7及び
図8に示される光走査デバイス1Bでは、第2可動部4及び第2連結部6が設けられておらず、第1可動部3が第1連結部5を介して支持部2に連結されている。可動ミラー部10は、第1軸線X1周りのみに揺動する。第1可動部3は、円形状に形成されている。支持部2は、第1可動部3(可動ミラー部10)と向かい合うように延在する平板状のベース部2aを有している。ベース部2aは、可動ミラー部10が第1軸線X1周りに最大振れ角まで回転した場合でも、可動ミラー部10(第1可動部3)がベース部2aに接触しないように配置されている。
【0065】
光走査デバイス1Bにおいて、光軸方向Aから見た場合における支持部2と可動ミラー部10との間の最小距離をL4とする。最小距離L4は、例えば、光軸方向A及び第1軸線X1に垂直な方向における支持部2と第1連結部5との間の距離である。この例では、支持部2と第1連結部5との間の距離は、支持部2と第1可動部3との間の距離(最短距離)と等しい。支持部2と第1連結部5との間の距離とは、第1連結部5の延在方向に垂直な方向における距離である。
【0066】
図8では、可動ミラー部10が支持部2に対して第1軸線X1周りに最大振れ角まで回転した(移動可能範囲における最大位置まで移動した)状態が示されている。光走査デバイス1Bにおいて、可動ミラー部10が支持部2に対して第1軸線X1周りに最大振れ角まで回転したときの可動ミラー部10と支持部2との間の最小距離をL5とする。最小距離L5は、例えば、光軸方向Aにおける第1可動部3と支持部2のベース部2aとの間の最小距離である。
図2に示されるように可動ミラー部10が磁界発生部Mと向かい合う場合、最小距離L5は、光軸方向Aにおける可動ミラー部10と磁界発生部Mとの間の最小距離である。他の例として、可動ミラー部10がパッケージ40の本体部41と向かい合う場合、最小距離L5は、可動ミラー部10が最大振れ角まで回転したときの光軸方向Aにおける可動ミラー部10と本体部41との間の最小距離である。
【0067】
光走査デバイス1Bでは、最小距離Lは、最小距離L4,L5の短い方である。この例では、最小距離L4は、最小距離L5と等しい。最小距離L4は、換言すれば、可動ミラー部10が支持部2に対して回転(移動)していない状態における支持部2と可動ミラー部10との間の最小距離である。最小距離Lは、換言すれば、可動ミラー部10が支持部2に対して回転可能範囲内において回転した場合における支持部2と可動ミラー部10との間の最小距離である。
【0068】
ミラーユニット100が光走査デバイス1,1A,1Bのいずれを備える場合においても、通気口80の最小幅Wは、可動ミラー部10とミラーユニット100において位置が固定された部分との間の最小距離Lよりも小さくされる。これにより、通気口80からパッケージ40内に進入した塵埃により可動ミラー部10の動作が阻害されるのを抑制することができる。
[作用及び効果]
【0069】
以上説明したように、ミラーユニット100のパッケージ40には、パッケージ40の内部と外部とを連通する通気口80が設けられている。これにより、通気口80を介してパッケージ40の内部と外部との間を通気することができ、その結果、パッケージ40内での結露の発生を抑制することができる。
【0070】
通気口80の最小幅Wが、可動ミラー部10とミラーユニット100において位置が固定された部分との間の最小距離Lよりも小さい。これにより、通気口80からパッケージ40内に進入した塵埃により可動ミラー部10の動作が阻害されるのを抑制することができる。
【0071】
通気口80の最小幅Wが、光軸方向Aから見た場合における支持部2と第1可動部3又は第2可動部4との間の最小距離Lよりも小さい。これにより、通気口80からパッケージ40内に進入した塵埃が支持部2と第1可動部3又は第2可動部4との間に挟まるのを抑制することができ、塵埃により可動ミラー部10の動作が阻害されるのを抑制することができる。
【0072】
通気口80の最小幅Wが、可動ミラー部10が支持部2に対して移動可能範囲における最大位置まで移動したときの可動ミラー部10とミラーユニット100において位置が固定された部分との間の最小距離Lよりも小さい。これにより、可動ミラー部10が支持部2に対して移動可能範囲における最大位置まで移動したときでも、通気口80からパッケージ40内に進入した塵埃により可動ミラー部10の動作が阻害されるのを抑制することができる。
【0073】
通気口80が、本体部41と窓部材51との間の隙間G1,G2によって構成されていてもよい。これにより、例えば本体部41に形成された貫通孔によって通気口80を構成する場合と比べて、通気口80を簡易に形成することができる。また、通気口80が窓部材51の近くに位置するため、窓部材51の近傍の空気の温度及び湿度がパッケージ40外の空気の温度及び湿度に近づき易く、結露の発生を一層抑制することができる。
【0074】
窓部材51が、本体部41の頂面45aに設けられた凸部63に接触するように頂面45a上に配置されており、隙間G1が、頂面45aと窓部材51との間に形成されている。これにより、通気口80を一層簡易に形成することができる。また、窓部材51と本体部41との間の接触面積を低減することができ、窓部材51と本体部41との間の熱膨張係数の差に起因する窓部材51の歪みを抑制することができる。
【0075】
通気口80が、窓部材51の一部が本体部41に接合されている一方で窓部材51の残部が本体部41に接合されていないことにより、構成されている。これにより、通気口80を簡易に形成することができる。また、窓部材51と本体部41との間の接触面積を低減することができ、窓部材51と本体部41との間の熱膨張係数の差に起因する窓部材51の歪みを抑制することができる。
[変形例]
【0076】
図9には、第1変形例のミラーユニット100Aが示されている。
図9に示される断面は、
図1のIX-IX線に沿った断面に対応する。ミラーユニット100Aでは、通気口80Aは、本体部41に形成された貫通孔によって構成されている。より具体的には、通気口80Aは、本体部41の側壁45における第2壁部47に形成され、Y方向に沿って延在している。通気口80Aは、例えば、延在方向に垂直な断面において円形状を呈している。ミラーユニット100Aにおいても、通気口80Aの最小幅Wは、可動ミラー部10とミラーユニット100において位置が固定された部分との間の最小距離Lよりも小さくされている。この場合、通気口80Aの最小幅Wは、延在方向に垂直な円形断面における直径である。通気口80Aの断面形状は円形状に限定されず、例えば矩形状であってもよい。第1変形例では、窓部材51と本体部41との間に隙間G1,G2が形成されず、窓部材51と本体部41との間が塞がれて気密に封止されていてもよい。
【0077】
第1変形例によっても、上記実施形態と同様に、通気口80Aを介してパッケージ40の内部と外部との間を通気することができ、その結果、パッケージ40内での結露の発生を抑制することができる。
【0078】
図10に示される第2変形例のミラーユニット100Bでは、通気口80Bは、本体部41の光入射開口41aによって構成されている。すなわち、ミラーユニット100Bでは、窓部材51が設けられておらず、光入射開口41aが窓部材51によって覆われていない。通気口80Bは、本体部41に接着された剥離可能なフィルム90により覆われている。フィルム90は、この例では、突起61の端面61cの全面に接着されている。ミラー7に垂直な断面において、フィルム90が本体部41に接着されている幅R1は、光入射開口41aの幅R2よりも狭い。幅R1は、本体部41の側壁45の厚さ(最小厚さ)R3よりも狭い。
【0079】
第2変形例によっても、上記実施形態と同様に、通気口80Bを介してパッケージ40の内部と外部との間を通気することができ、その結果、パッケージ40内での結露の発生を抑制することができる。また、通気口80Bが光入射開口41aによって構成されているため、通気口80Bを簡易に形成することができる。また、光入射開口41aが通気口80Bを兼ねているため、結露を効果的に抑制することができる(そもそも結露が生じない)。また、光入射開口41aから入射した光が可動ミラー部10に到達するまでの光路上に光を反射し得る要素が配置されていないため、迷光の発生を抑制することができる。また、通気口80Bが剥離可能なフィルム90により覆われているため、ミラーユニット100Bの搬送時等に通気口80Bからパッケージ40内に塵埃が進入するのを防止することができる。ミラーユニット100Bの使用時には、フィルム90を剥離して通気口80Bを開放することができる。更に、フィルム90が本体部41に接着されている幅R1が、光入射開口41aの幅R2よりも狭いため、フィルム90を剥がし易く、本体部41に接着剤が残り難い。なお、第2変形例において、突起61が設けられず、フィルム90が本体部41の側壁45の頂面45aに接着されていてもよい。
【0080】
本発明は、上記実施形態及び変形例に限られない。例えば、各構成の材料及び形状には、上述した材料及び形状に限らず、様々な材料及び形状を採用することができる。上記実施形態又は第1変形例において、通気口80,80Aが剥離可能なフィルムにより覆われていてもよい。通気口80は、窓部材51に形成された貫通孔によって構成されていてもよい。この場合、通気口80は光入射開口41aによって構成されているとみなすことができる。上記実施形態において、側壁45の頂面45aに凸部63が設けられなくてもよい。この場合でも、窓部材51の一部を本体部41に接合する一方で窓部材51の残部を本体部41に接合しないことにより、通気口80を構成することができる。上記実施形態において、側壁45の頂面45aに突起61が設けられなくてもよい。この場合、通気口80は、隙間G1のみによって構成されてもよい。
【0081】
上記実施形態、第1変形例及び第2変形例において、所定方向(或る方向)における通気口80,80A,80Bの最小幅Wが、可動ミラー部10とミラーユニット100において位置が固定された部分との間の最小距離Lよりも小さくされていてもよい。すなわち、上記実施形態、第1変形例及び第2変形例では、通気口80,80A,80Bの延在方向に垂直な全ての方向についての通気口80,80A,80Bの最小幅Wが最小距離Lよりも小さくなっていたが、通気口80,80A,80Bの延在方向に垂直な少なくとも1つの方向における通気口80,80A,80Bの最小幅Wが最小距離Lよりも小さくなっていればよく、延在方向に垂直な他の方向における通気口80,80A,80Bの最小幅は必ずしも最小距離Lよりも小さくなっていなくてもよい。
【0082】
本体部41は、光入射開口41aから入射した光が光走査デバイス1に入射可能となるように光走査デバイス1を収容及び保持していればよく、任意の構成を有していてよい。例えば、光走査デバイス1を支持するベース部が側壁45とは別体に構成されていてもよい。実施形態の光走査デバイス1では可動ミラー部10が電磁力により駆動されたが、可動ミラー部10は静電力又は圧電素子により駆動されてもよい。上記実施形態では、可動ミラー部10が第1軸線X1及び第2軸線X2周りに揺動可能(移動可能)に構成されていたが、可動ミラー部10は、光軸方向Aに沿って移動可能に構成されていてもよい。上記実施形態では、磁界発生部Mがパッケージ40の内部に配置されていたが、磁界発生部Mは、パッケージ40の外部に配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1…光走査デバイス(ミラーデバイス)、2…支持部、3…第1可動部、4…第2可動部、7…ミラー、10…可動ミラー部、40…パッケージ、41…本体部、41a…光入射開口、45a…頂面、51…窓部材、63…凸部(当接部)、80,80A,80B…通気口、90…フィルム、100,100A,100B…ミラーユニット、G1…隙間(通気口80)、G2…隙間(通気口80)、L…最小距離、W…最小幅。