(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】水性ポリオルガノシロキサンハイブリッド分散液
(51)【国際特許分類】
C08G 81/00 20060101AFI20241010BHJP
C08L 83/06 20060101ALI20241010BHJP
C08L 29/04 20060101ALI20241010BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
C08G81/00
C08L83/06
C08L29/04 B
C08L101/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020047527
(22)【出願日】2020-03-18
【審査請求日】2023-01-30
(32)【優先日】2019-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モナ サイフリッド
(72)【発明者】
【氏名】ステファン ジルバー
(72)【発明者】
【氏名】ベレント ジャン デ ガンス
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル フィーデル
(72)【発明者】
【氏名】マルクス アラッキ
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/091901(WO,A1)
【文献】特表平09-501983(JP,A)
【文献】特開平07-053723(JP,A)
【文献】特開2004-323640(JP,A)
【文献】特開昭48-064138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/14
C08K 3/00 - 13/08
C08G81/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒と、
成分A)5重量部から95重量部、好ましくは10重量部から70重量部の、下記の一般式の1種または複数種のポリオルガノシロキサン
R
aSi(OR’)
bO
(4-a-b/2) 式(I)
この場合、0<a<2,0<b<2,およびa+b<4である、
場合により、成分B)0~20重量部、好ましくは1~10重量部の、下記の式の1種または複数種の直鎖状および/または分岐鎖ポリオルガノシロキサン
R”O-[R’”
2Si-O]
n- 式(II)
成分C)5重量部から95重量部、好ましくは30重量部から90重量部の有機ポリマー、
これらの式中において、R
a、R’、R”、およびR’”は、それぞれ独立して、1個から8個の炭素原子を有するアルキル基、または6個から20個の炭素原子を有する芳香族基であり、nは、4から250の範囲の数である、
を含む組成物の反応
により生成した少なくとも1種のポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂と、
を含むポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂溶液を、部分的に加水分解されたポリビニルアセテートをベースとする少なくとも1種の乳化剤
を含む乳化剤溶液を用いて乳化させて、前記有機溶媒を除去することを含む、水性ポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂分散液の製造方法であって、
該分散液は、該ポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂分散液に対して30.0重量%~70.0重量%、好ましくは45.0重量%~55.0重量%の固形分を有し、ならびに
前記有機溶媒の残留溶媒含有量が、該ポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂分散液に対して<6.0重量%、好ましくは<2.5重量%、より好ましくは<1.0重量%である、
水性ポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂分散液
の製造方法。
【請求項2】
前記有機ポリマーは、ポリエポキシド、ポリエステル、ポリアクリレートおよび/またはメタクリレートおよびそのコポリマー、ポリウレタン、セルロース誘導体、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィドおよびオキシド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテル、芳香族および脂肪族グリシジル官能性ポリマー、オリゴマー、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、ケトン-ホルムアルデヒド樹脂、ならびにポリビニルアルコール、ポリグリセロール、ポリビニルアセテート、その(部分)加水分解物および誘導体から選択されるポリビニル樹脂、フェノール樹脂、フルオロポリマー、アルキド樹脂、ならびにそれらの混合物の群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂分散液
の製造方法。
【請求項3】
前記有機ポリマーは、ヒドロキシル基および/または酸性水素を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂分散液
の製造方法。
【請求項4】
前記乳化剤は、10%~99%(mol/mol)の間、好ましくは50%から95%(mol/mol)の間、より好ましくは70%から90%(mol/mol)の間のアルコール分解レベルを有する部分的に加水分解されたポリビニルアセテートであることを特徴とする、請求項1~3
のいずれか1項に記載のポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂分散液
の製造方法。
【請求項5】
前記部分的に加水分解されたポリビニルアセテートは、4%ポリビニルアセテート水溶液において、DIN 53015に従って20℃で測定した場合の、1~50mPa・s、好ましくは1~40mPa・s、より好ましくは1~30mPa・sの粘度を有することを特徴とする、請求項1~4
のいずれか1項に記載のポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂分散液
の製造方法。
【請求項6】
アニオン性、カチオン性、両性イオン性、または非イオン性乳化剤の群から選択されるさらなる乳化剤を含むことを特徴とする、請求項1~5
のいずれか1項に記載のポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂分散液
の製造方法。
【請求項7】
前記分散液の引火点は、>30.0℃、好ましくは>60.0℃、より好ましくは>90.0℃であることを特徴とする、請求項1~6
のいずれか1項に記載のポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂分散液
の製造方法。
【請求項8】
前記ポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂対
前記少なくとも1種の乳化剤の重量比は、5~50の間、好ましくは7~40の間、より好ましくは10~30の間であることを特徴とする、請求項1~7
のいずれか1項に記載のポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂分散液
の製造方法。
【請求項9】
消泡剤、脱気剤、レオロジ添加剤、
保存料、基材濡れ剤、架橋剤、乾燥助剤、触媒、酸化防止剤、皮張り防止剤、沈降防止剤、増粘剤、融合助剤、成膜助剤、充填剤、顔料、および/または分散剤から選択されるさらなる添加剤を含むことを特徴とする、請求項1~8
のいずれか1項に記載のポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂分散液
の製造方法。
【請求項10】
使用される前記保存料は、防かび薬、殺菌剤、殺虫薬、殺藻剤、および/または除草剤であることを特徴とする、請求項
9に記載のポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂分散液
の製造方法。
【請求項11】
前記ポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂
の粒子の平均体積加重直径は、ISO 13320:2009に従って測定された場合の、0.1~10.0μmの間、好ましくは0.1~2.0μmの間、より好ましくは0.2~1.0μmの間、最も好ましくは0.2~0.7μmの間であることを特徴とする、請求項1~10
のいずれか1項に記載のポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂分散液
の製造方法。
【請求項12】
前記有機溶媒は、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、シクロヘキサノン、またはメチルシクロヘキサノンから選択されるケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸tert-ブチル、またはエチルイソブチレートから選択されるエステル、カーボネート、環状カーボネート、芳香族炭化水素、環状炭化水素、クラウンエーテルまたはエーテル、エステルエーテル、シロキサン、有機金属ゲルマニウム化合物の群から選択される溶媒またはこれらの1以上の溶媒の混合物であることを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載のポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂分散液の製造方法。
【請求項13】
前記有機溶媒は、50~150℃、好ましくは90℃~120℃の沸点範囲を有することを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載のポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂分散液の製造方法。
【請求項14】
前記有機溶媒は、ストリッピングガスの有無における減圧蒸留によって、水蒸気蒸留によって、または膜プロセス、薄膜エバポレータ、もしくは向流プロセスによって、除去されることを特徴とする、請求項1~13のいずれか1項に記載のポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂分散液の製造方法。
【請求項15】
前記ポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂溶液は、前記ポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂溶液に対して40.0~95.0重量%、好ましくは60.0~70.0重量%のポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂濃度を有することを特徴とする、請求項1~14のいずれか1項に記載のポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂分散液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性ポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂分散液、その調製プロセス、およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオルガノシロキサンと呼ばれる純粋なシリコーン樹脂は、その熱的安定性および耐候安定性において知られている。それらは、高い熱安定性のコーティングにおいて、または耐候外部用コーティングにおいて、コンクリート上への含浸のために使用される。ポリオルガノシロキサンの安定性を高めるため、それらは、他のポリマーで変性される。これらのポリマーとの当該シリコーン樹脂の相互の化学結合は、調製プロセスの初期において生じる。
【0003】
以下においてポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂と呼ばれる、既知の有機変性ポリオルガノシロキサン樹脂は、シリコーン-アルキド樹脂、シリコーン-ポリエステル樹脂、シリコーン-エポキシドハイブリッド樹脂、シリコーン-ポリウレタン樹脂、およびシリコーン-ポリアクリレート樹脂である。
【0004】
したがって、純粋なシリコーン樹脂の望ましい特性、例えば、熱的安定性、耐候安定性、および低い表面張力など、を、ポリエステルの望ましい特性、例えば、低い熱可塑性、高い弾性、および良好な顔料濡れ性など、と組み合わせることが可能である。
【0005】
シリコーン-ポリエステル樹脂の当該特性は、熱的に耐久性のある家庭用電化製品、例えば、トースタ、太陽灯ハウジング、ファンヒータ、およびストーブなど、における装飾コーティング、ならびに揚げ物用の深鍋および鍋釜類の外側コーティングにおいて、特に有利であることが分かっている。さらに、家庭用品のコーティングは、耐洗剤性でなければならない。これは、それらが、昨今における仕様になっていることであるが、皿洗い機中で、永久的に損傷することなく、界面活性剤を含有する高アルカリ洗浄組成物の存在下での洗浄に耐えなければならないことを意味する。コーティングの耐洗剤性は、一般的に、ラッカ配合物によって決定されるが、特に、使用される樹脂によって決定される。
【0006】
エポキシ樹脂の特性も、シリコーン樹脂の特性と組み合わせることができる。これらのシリコーン-エポキシハイブリッド樹脂は、純粋なシリコーン樹脂と比較して、より良好な金属接着性および防食性、ならびに化学物質に対するより良好な安定性において注目に値する。典型的な用途は、排気管のコーティングであるが、セラミック基板、例えば、全ての種類のせっ器など、またはコンクリートに対する塗装系でもある。この種類のコーティング系は、例えば、船体、水面の下および上の海洋設備、ならびに港湾施設のコーティングのために、船舶業においても使用される。
【0007】
典型的には、ポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂は、例えば、芳香族炭化水素、エステル、エーテル、またはケトン、例えばキシレン、トルエン、ソルベッソおよび酢酸メトキシプロピル、酢酸エチルおよび酢酸ブチルなどの有機溶媒中において提供される。溶剤型配合物の利点は、塗装の容易さ、良好なレベリング性、および基材上での初期フィルムの形成に存する。当該ポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂フィルムは、物理的に乾燥させるか、2成分系として反応によって硬化させるか、またはベーク処理することができる。室温で硬化する系も知られている。
【0008】
しかしながら、溶剤系は、毒物学的および生態学的欠点を有する。健康に有害なものもある、可燃性溶媒の高含有は、健康および安全性の理由および環境保護から、益々、批判的に見られている。さらに、溶媒の使用は、益々、世界中において法的規制を受けている。その上、多くの場合、環境ラベル(Blue Angel、Nordic Swanなど)、またはバリューチェーン(value creation chain)に沿った産業基準(RAL、IKEAなど)は、溶媒の完全除去または大幅な減少を必要としている。
【0009】
したがって、低溶媒または完全無溶媒系に対する探索が続けられている。先行技術は、ポリオルガノシロキサンと呼ばれる純粋なシリコーン樹脂に対する多数の提案された解決策を説明している。
【0010】
欧州特許第098940号には、液体オリゴマー性シロキサンが、ポリビニルアルコールまたはセルロースエーテルによって乳化されるプロセスについて記載されており、この場合、このエマルション中での当該液体オリゴオルガノシロキサンの縮合は、高粘度または固体のポリオルガノシロキサンを与える。このプロセスの欠点は、追加の技術的複雑さに存し、と言うのも、当該液体オリゴマー性シロキサンの合成は、ポリマー性オルガノシロキサンの合成とは異なる方法論を必要とし、エマルション中での縮合は、困難を伴うことによってのみ制御可能であるためである。
【0011】
独国特許第2158348号には、ゴムに対して架橋可能な高粘度シロキサンをベースとするエマルションを調製するためのプロセスについて記載されており、この場合、シロキサンをベースとする、少なくとも150%の水および少なくとも80%の乳化剤を含有する高希釈予備的エマルションが調製され、このエマルションは、溶媒/水混合物を蒸留除去することによって濃縮される。このプロセスは、比較的多量の乳化剤を必要とし、それは、性能プロファイルにおける著しい変化に起因して、多くの用途において望ましくなく、コストも増加させる。最大シロキサン含有量は45%であり、5%から7%は、当該エマルション中に残留する。
【0012】
独国特許出願公開第4415322(A1)号には、有機溶媒、例えば、トルエン、に溶解させたポリマー性有機ケイ素化合物を使用して水性シロキサン樹脂エマルションを調製するためのプロセスが記載されており、この場合、エトキシル化トリグリセリドおよびエトキシル化トリデシルアルコールおよび水からなる乳化剤混合物の、当該ポリマー性有機ケイ素化合物への添加、ならびにもはや自由流動でない均一混合物の実現の後、当該有機溶媒は、溶媒/水混合物として除去され、その後、所望の最終濃度の実現のために必要な量の水と、場合により既知の添加剤が、均一に組み入れられる。このプロセスが、記載されているポリオルガノシロキサン以外の他の樹脂、例えば、ポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂、にとって好適であるという記載は、この文献にはない。
【0013】
さらに、国際公開第2015/091901号も先行技術により知られており、そこには、シリコーン変性ポリエステル樹脂の水性分散液について記載されており、この場合、当該分散液中の当該シリコーン変性ポリエステル樹脂の固形分との関連における当該水性分散液の残留溶媒含有量は、当該文献に記載されるプロセスに起因して、6重量%未満に達することができない。この欠点は、比較例において実証されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】欧州特許第098940号
【文献】独国特許第2158348号
【文献】独国特許出願公開第4415322(A1)号
【文献】国際公開第2015/091901号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明の目的は、他のコーティング特性およびそれぞれの用途のための利用価値の著しい減失なく、先行技術において知られるよりも低い固形分に関連する残留溶媒含有量のための、様々なコーティングにおいて使用可能な水性ポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂分散液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
当該目的は、驚くべきことに、請求項1に記載の水性ポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂分散液によって達成された。
【発明を実施するための形態】
【0017】
驚くべきことに、本発明による分散液は、当該ポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂分散液に対して30.0重量%~70.0重量%、好ましくは45.0重量%~55.0重量%の固形分において、当該ポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂分散液に対して<6.0重量%、好ましくは<2.5重量%、より好ましくは<1.0重量%の残留溶媒含有量を有することが見出された。
【0018】
本発明に従って選択された固形分は、貯蔵安定性、使用量、製剤化および使用における自由度に関して、使用者の要求を反映しているため、特に有利である。
【0019】
国際公開第2015/091901号によるプロセスによって製造された分散液は、ポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂分散液に対して30.0重量%の固形分において、せいぜい6重量%の残留溶媒含有量に達することが、比較例において示された。当該固形分が増加する場合、当該分散液における残留溶媒含有量も増加する。
【0020】
本発明との関連において、当該固形分は、ポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂および乳化剤からなる。
【0021】
本発明のさらなる利点は、職業上の安全性の側面である。少量の引火性溶媒を含有する製造物が使用される場合でさえ、いくつかの基本的な職業上の保護手段が必要である。例えば、引火点は、職業上の安全の注意を払うための重要な数値である。火災および爆発の危険性を避けるため、高い引火点を有する溶剤型製品は、低い引火点を有する製品より好ましい。
【0022】
驚くべきことに、本発明による分散液は、職業上の安全性に貢献することが見出された。これは、当該分散液中の残留溶媒含有量の減少に伴って引火点が高くなるためである。
【0023】
好ましくは、本発明によるポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂分散液は、>30.0℃、好ましくは>60.0℃、より好ましくは>90.0℃の、本出願において説明される方法による引火点を有する。
【0024】
原則として、当業者は、水性ポリマー分散液を二次および一次分散液として分類する。二次分散液は、慣習的に調製されたポリマーから形成され、次いで、後続のステップにおいて、溶液または溶融物から水性分散液に転化される。対照的に、一次分散液は、ポリマーそれ自体が、乳化剤の存在下での水性分散媒中における分散分布において直接的に得られるものである。全ての調製プロセスに共通することは、実質的に、モノマーが一部分においてポリマーを構築するために使用されること、またはこの構築がそのようなモノマーから排他的に達成されることである。
【0025】
欧州特許出願公開第0008090(A1)号には、安定な分散液が当該シリコーン-ポリエステル樹脂の調製の際の「酸性化された」ポリエステルの使用に基づいている、水混和性シリコーン-ポリエステル樹脂を調製するためのプロセスについて記載されている。非常に複雑なプロセスに加えて、このプロセスにおいて必要とされる25~110の酸価の結果として、当該ポリエステルの再解離(酸性エステル加水分解)のさらなる危険性が存在する。
【0026】
溶媒放出の低減に対する要求は、本発明による水性ポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂分散液により考慮することができる。
【0027】
好ましくは、当該ポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂は、有機ポリマー変性ポリオルガノシロキサンである。
【0028】
より好ましくは、当該ポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂は、
・成分A)5重量部から95重量部、好ましくは10重量部から70重量部の、下記の一般式の1種または複数種のポリオルガノシロキサン
RaSi(OR’)bO(4-a-b/2) 式(I)
この場合、0<a<2、0<b<2、およびa+b<4である、
・場合により、成分B)0~20重量部、好ましくは1~10重量部の、下記の式の1種または複数種の直鎖状および/または分岐鎖ポリオルガノシロキサン
R”O-[R’”2Si-O]n- 式(II)
・成分C)5重量部から95重量部、好ましくは30重量部から90重量部の有機ポリマー、
を含む組成物の反応生成物を含み、
これらの式中において、
Ra、R’、R”、およびR’”は、それぞれ独立して、1個から8個の炭素原子を有するアルキル基、または6個から20個の炭素原子を有する芳香族基であり、nは、4から250の範囲の数である。
【0029】
当該ポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂は、既知の方法において調製することができる。標準的方法は、独国特許出願公開第102013218976(A1)号、独国特許出願公開第102013218981(A1)号、米国特許第3,154,597号、または米国特許第3,170,962号に見出すことができる。当業者は、さらなる文献、例えば、「Silicone resins and their combination」 by Wernfried Heilen, chapter 2.2 Silicone combination resins/silicone resin hybrids, 2015、または「High Silicones and Silicone-Modified Materials strength Silicone-Urethane Copolymers: Synthesis and Properties」, Chapter 26, pp 395-407を承知している。
【0030】
この場合、例えば、ポリオルガノシロキサンが、ヒドロキシル基を有する有機ポリマーと反応させられるか、または当該有機ポリマーが、好適なモノマー、または加水分解/アルコキシシランモノマーまたはシロキサンオリゴマーとの縮合または平衡化によるアルコキシシラン官能性を有する有機ポリマー、によって当該ポリオルガノシロキサンの存在下において調製される。
【0031】
好ましくは、当該ポリオルガノシロキサンは、直鎖状または1つにまたは複数に分岐したSi-OH-またはSiOR3-官能性ポリオルガノシロキサンである。
【0032】
ポリオルガノシロキサンは、文献において、シロキサンオリゴマー、アルコキシ官能性メチル-、フェニル-、およびメチル/フェニルシロキサン、ヒドロキシ官能性メチル-、フェニル-、およびメチル/フェニルシリコーン樹脂、またはシラノールとも呼ばれる。
【0033】
アルコキシ官能性メチル-、フェニル-、またはメチル/フェニルシロキサンオリゴマーは、KC-89S、KR-500、X40-9225、X40-9246、X40-9250、KR-401N、X-40-9227、KR-510、KR-9218、KR-213などの商標においてShinEtsuから得ることができる。
【0034】
メトキシ官能性メチル-、フェニル-、およびメチル/フェニルシロキサンは、Dow Corning(登録商標)US-CF 2403樹脂、US-CF 2405樹脂、3037中間体、3074中間体、RSN-5314中間体の商標においてDow Corningから入手することが可能である。シラノール官能性メチル/フェニル樹脂は、RSN-0409HS樹脂、RSN-0431HS樹脂、RSN-0804樹脂、RSN-0805樹脂、RSN-0806樹脂、RSN-0808樹脂、RSN-0840樹脂の商標において販売されている。
【0035】
アルコキシ官能性メチル/フェニル-、フェニル-、およびメチルシリコーン樹脂は、対応するシラノールに対して加水分解形態においても供給され、例えば、追加の名称REN50、REN60、REN80、KX、HK46、MSE100またはSY300、IC836、REN168、SY409、IC232、SY231、IC368、IC678を伴ってSILRES(登録商標)の商標においてWacker Chemieから市販されている。
【0036】
この種類のシリコーン樹脂の調製は、文献において長い間知られており(これに関しては、W. Noll - Chemie und Technologie der Silicone [Chemistry and Technology of the Silicones], Wiley-VCH Verlag GmbH & Co. KGaA, Weinheim, 1960を参照されたい)、ならびに、独国特許第3412648号明細書にも記載されている。
【0037】
当該有機ポリマーは、好ましくは、ポリエポキシド、ポリエステル、ポリアクリレートおよび/またはメタクリレートおよびそのコポリマー、ポリウレタン、セルロース誘導体、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィドおよびオキシド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテル、芳香族および脂肪族グリシジル官能性ポリマー、オリゴマー、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、ケトン-ホルムアルデヒド樹脂、ならびにポリビニルアルコール、ポリグリセロール、ポリビニルアセテート、その(部分)加水分解物および誘導体から選択されるポリビニル樹脂、フェノール樹脂、フルオロポリマー、アルキド樹脂、ならびにそれらの混合物を含む。
【0038】
好ましいのは、芳香族および/または脂肪族および/または脂環式モノカルボン酸および/またはジカルボン酸および/またはポリカルボン酸、ならびにその無水物および/またはエステルと、直鎖状および/または分岐鎖状の脂肪族および/または脂環式および/または芳香族ジオールおよび/またはポリオールとの反応生成物から選択されるポリエステルを使用することである。通例のカルボン酸の例は、フタル酸、無水フタル酸、ジメチルテレフタレート、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、コハク酸、無水コハク酸、セバシン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ドデカン二酸、アジピン酸、アゼライン酸、イソノナン酸、2-エチルヘキサン酸、ピロメリット酸、ピロメリット酸二無水物、トリメリット酸および/またはトリメリット酸無水物である。通例のジオールおよび/またはポリオールの例は、エチレングリコール、プロパン-1,2-および/または-1,3-ジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ブタン-1,2-および/または-1,4-ジオール、ブチルエチルプロパン-1,3-ジオール、メチルプロパン-1,3-ジオール、ペンタン-1,5-ジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセロール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンおよび/またはペンタエリトリトール、ならびにビスフェノールA、B、C、F、ノルボルニルエングリコール、1,4-ベンジルジメタノールおよび-エタノール、2,4-ジメチル-2-エチルヘキサン-1,3-ジオールである。
【0039】
好ましいのは、1分子あたり少なくとも2つの1,2-エポキシ基を有するエポキシ樹脂を使用することである。好適なエポキシ樹脂の例は、脂肪族または芳香族エポキシド:Hexion製のEponex(登録商標)およびEPON(登録商標)樹脂、Emerald Performance Materials Company製のEpalloy(登録商標)樹脂、Aditya Birla Chemicals製のEpotec(登録商標)樹脂、Nagase ChemteX製のDenacol(登録商標)樹脂、Huntsman製のAraldite(登録商標)樹脂、Allnex製のBeckopox(登録商標)、Dow Chemical Company製のVORAFORCE(登録商標)樹脂である。
【0040】
式(I)または式(II)に示されたシロキサン鎖の様々な断片は、統計的に分配され得る。統計分布は、任意の数のブロックと任意の配列とによるブロック状の構成を有し得るか、またはランダマイズされた分布にあり得、それらは、交互の構成も有し得るか、または当該鎖に沿って勾配を形成し得、特にそれらは、任意のハイブリッドも形成することができる。
【0041】
本明細書において列挙された指数および当該示された指数に対する値の範囲は、実際に存在する構造およびその混合物における可能な統計分布に対する平均値を意味するとして理解することができる。これは、まさにそういうものとしてそれ自体再生された構造式、例えば、式(I)にも適用される。
【0042】
語の断片「ポリ」は、本発明との関連において、分子中に1種または複数種のモノマーの少なくとも3つの繰り返し単位を有する化合物だけではなく、特に、分子量分布を有しかつ少なくとも200g/molの平均分子量を有する化合物の組成物も包含する。この定義は、たとえ、それらがOECDまたはREACHガイドラインに従うポリマーの定義に一致するように見えなくても、ポリマーのような化合物を意味することは、関心対象の産業分野において慣例であるという事実を考慮するものである。
【0043】
特に明記されない限り、百分率は、重量パーセントの数字である。
【0044】
以下において測定値が報告される場合、これらの測定は、特に明記されない限り、標準条件下(25℃および1013mbar)において実施した。
【0045】
以下において平均値が報告される場合、関心対象の値は、特に明記されない限り、重量平均である。
【0046】
より好ましくは、当該有機ポリマーは、ヒドロキシル基および/または酸性水素を含む。
【0047】
好ましくは、当該乳化剤は、10%~99%(mol/mol)の間、好ましくは50%から95%(mol/mol)の間、より好ましくは70%から90%(mol/mol)の間のアルコール分解レベルを有する部分的に加水分解されたポリビニルアセテートである。
【0048】
好ましくは、当該部分的に加水分解されたポリビニルアセテートは、DIN 53015に従って20℃において4%のポリビニルアセテート水溶液にて測定された場合の、1~50mPa・s、好ましくは1~40mPa・s、より好ましくは1~30mPa・sの粘度を有する。
【0049】
好ましくは、当該乳化剤は、いかなる結合されたシランも含まない。
【0050】
他の乳化剤、例えば、アニオン性、カチオン性、または非イオン性乳化剤、と一緒に本発明による乳化剤を使用することも想像できる。何種類かの乳化剤が使用される場合、これらは、本発明の乳化剤系と見なされるべきである。
【0051】
乳化剤もしくは乳化剤系に対するポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂の重量比は、好ましくは5~50の間、好ましくは7~40の間、より好ましくは10~30の間である。
【0052】
所望の場合、当該ポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂分散液は、好ましくは、消泡剤、脱気剤、レオロジ添加剤、保存料、基材濡れ剤、架橋剤、乾燥助剤、触媒、酸化防止剤、皮張り防止剤、沈降防止剤、増粘剤、融合助剤、成膜助剤、充填剤、顔料、および/または分散剤から選択されるさらなる添加剤を含む。
【0053】
好ましくは、当該顔料は、有機または無機顔料あるいはカーボンブラック顔料である。無機顔料の例としては、酸化鉄、酸化クロム、または酸化チタンが挙げられる。好適な有機顔料は、例えば、アゾ顔料、金属錯体顔料、アントラキノイド顔料、フタロシアニン顔料、および多環式顔料、特にチオインジゴ、キナクリドン、ジオキサジン、ピロロピロール、ナフタレンテトラカルボン酸、ペリレン、イソアミドリン(イソアミドリノン)、フラバントロン、ピラントロン、またはイソビオラントロンの一連のものである。使用されるカーボンブラックは、ガスブラック、ランプブラック、またはファーネスブラックであり得る。これらのカーボンブラックは、追加的に、後酸化されてもよく、および/またはビーズに転化されてもよい。
【0054】
場合により、さらなる添加剤を加えることも可能である。この文脈における添加剤は、本発明による分散液の特性に対して望ましい効果を有する任意の成分である。お互いに独立して1種または複数種の添加剤を加えることが可能である。本明細書の以下において一覧されるのは、本発明による分散液のために使用することができるいくつかの添加剤である。当該列挙は、非包括的である。有利に使用可能な添加剤は、とりわけ、濡れおよび分散添加剤である。本発明による分散液のために使用することができる多数の濡れおよび分散添加剤が、市販において入手可能である。これらの分散添加剤は、例えば、先行術において十分に周知であるポリマークラス、例えば、スチレン-無水マレイン酸コポリマー、アクリレート、ポリエーテル、例えば、酸化スチレンポリエーテルなど、ポリエステル、アミノポリエステル、ポリウレタン、およびアミノポリエーテル、に由来する。当該添加剤は、異なるトポロジ、例えば、直鎖状、分岐鎖状、くし型、または星型など、を有し得る。典型的には、濡れおよび分散添加剤は、結合基と安定化側鎖とに分けられる不均質構造を有する。
【0055】
顔料と同様に、本発明による分散液において充填剤を使用することも可能である。好適な充填剤は、例えば、カオリン、タルク、マイカ、他のシリケイト、石英、クリストバライト、ウォラストナイト、パーライト、珪藻土、繊維充填剤、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、ガラス、または炭酸カルシウムをベースとするものである。
【0056】
脱泡剤または脱気剤の使用は、加工作業または製造作業において導入された空気の量を積極的に減じるために有利であり得る。その例としては、場合により、粒子成分、例えば、シリカなど、を充填した、鉱油または植物油をベースとするもの、またはポリエーテルシロキサンをベースとするものが挙げられる。
【0057】
さらなる添加剤の例は、バインダー、染料、表面添加剤、相溶化剤、濡れおよび展着剤、架橋剤、レオロジ添加剤、増粘剤、UV安定化剤、および保存料を含み得る。
【0058】
好ましくは、使用される保存料は、防かび薬、殺菌剤、殺虫薬、殺藻剤、および/または除草剤である。
【0059】
好ましくは、当該ポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂粒子の平均体積加重直径は、ISO 13320:2009に従って測定された場合の、0.1~10.0μmの間、好ましくは0.1~2.0μmの間、より好ましくは0.2~1.0μmの間、最も好ましくは0.2~0.7μmの間である。本発明の場合、粒子の平均体積加重直径は、Beckman Coulter製のCoulter LS 13320機器を用いて特定することができる。
【0060】
好ましくは、当該ポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂分散液は、当該分散液に対して、30.0重量%~70.0重量%、好ましくは45.0重量%~55.0重量%の固形分を有する。
本発明はさらに、
a.有機溶媒を含むポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂溶液を、部分的に加水分解されたポリビニルアセテートをベースとする少なくとも1種の乳化剤を含む乳化剤溶液を用いて乳化させることと、
b.当該溶媒を除去することと、
を含む、水性ポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂分散液を製造するプロセスを提供する。
【0061】
好ましいのは、ステップa)においてさらに水を加えることである。したがって、例えば、このステップにおける当該固形分を固定するか、または、少なくとも、所望の固形分の範囲内に当該固形分を含ませることが可能である。
【0062】
好ましくは、ステップb)の後、当該水性ポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂分散液に対して当該固形分を調節することが可能である。
【0063】
より好ましくは、ステップa)において所望の固形分範囲を含ませること、およびステップb)後の本発明の水性ポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂分散液の当該固形分を設定することの両方が可能である。
【0064】
したがって、本発明の方法は、開始時に当該固形分を予め決めることができる、洗練された製造方法を可能にする。必要であれば、微調整を下流に含ませることができる。
【0065】
好ましいのは、10%~99%(mol/mol)の間、好ましくは50%から95%(mol/mol)の間、より好ましくは70%から90%(mol/mol)の間のアルコール分解レベルを有する部分的に加水分解されたポリビニルアセテートを使用することである。
【0066】
好ましくは、当該乳化剤は、結合したシランを全く含まない。
【0067】
好ましくは、当該部分的に加水分解されたポリビニルアセテートは、4%ポリビニルアセテート水溶液において、DIN 53015に従って20℃で測定した場合の、1~50mPa・s、好ましくは1~40mPa・s、より好ましくは1~30mPa・sの粘度を有する。
【0068】
そのような乳化剤は、例えば、Mowiol、Elvanol、またはPoval(Kuraray)、Gohsenol(Nippon Gohsei)、Selvol(Sekisui社)、Polyviol(Wacker)のブランド名において入手可能である。
【0069】
好ましくは、アニオン性、カチオン性、両性イオン性、または非イオン性乳化剤の群から選択されるさらなる乳化剤を使用することも可能である。
【0070】
好ましくは、使用される当該ポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂は、
・成分A)5重量部から95重量部、好ましくは10重量部から70重量部の、下記の一般式の1種または複数種のポリオルガノシロキサン
RaSi(OR’)bO(4-a-b/2) 式(I)
この場合、0<a<2、0<b<2、およびa+b<4である、
・場合により、成分B)0~20重量部、好ましくは1~10重量部の、下記の式の1種または複数種の直鎖状および/または分岐鎖状ポリオルガノシロキサン
R”O-[R’”2Si-O]n- 式(II)
・成分C)5重量部から95重量部、好ましくは30重量部から90重量部の有機ポリマー
を含む組成物の反応生成物を含み、
これらの式中において、
Ra、R’、R”、およびR’”は、それぞれ独立して、1個から8個の炭素原子を有するアルキル基、または6個から20個の炭素原子を有する芳香族基であり、nは、4から250の範囲の数である。
【0071】
好ましくは、当該ポリオルガノシロキサンは、直鎖状または1つにまたは複数に分岐したSi-OH-またはSiOR3-官能性ポリオルガノシロキサンである。市販のポリオルガノシロキサンは、上記において説明されている。
【0072】
当該有機ポリマーは、好ましくは、ポリエポキシド、ポリエステル、ポリアクリレートおよび/またはメタクリレートおよびそのコポリマー、ポリウレタン、セルロース誘導体、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィドおよびオキシド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテル、芳香族および脂肪族グリシジル官能性ポリマー、オリゴマー、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、ケトン-ホルムアルデヒド樹脂、ならびにポリビニルアルコール、ポリグリセロール、ポリビニルアセテート、その(部分)加水分解物および誘導体から選択されるポリビニル樹脂、フェノール樹脂、フルオロポリマー、アルキド樹脂、ならびにそれらの混合物を含む。
【0073】
より好ましくは、当該有機ポリマーは、好ましくはポリエポキシド、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリウレタン、およびセルロース誘導体の群から選択される、ヒドロキシル基を有する有機ポリマーを含む。
【0074】
好ましいのは、芳香族および/または脂肪族および/または脂環式モノカルボン酸および/またはジカルボン酸および/またはポリカルボン酸、ならびにその無水物および/またはエステルと、直鎖状および/または分岐鎖状の脂肪族および/または脂環式および/または芳香族ジオールおよび/またはポリオールとの反応生成物から選択されるポリエステルを使用することである。通例のカルボン酸の例は、フタル酸、無水フタル酸、ジメチルテレフタレート、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、コハク酸、無水コハク酸、セバシン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ドデカン二酸、アジピン酸、アゼライン酸、イソノナン酸、2-エチルヘキサン酸、ピロメリット酸、ピロメリット酸二無水物、トリメリット酸および/またはトリメリット酸無水物である。通例のジオールおよび/またはポリオールの例は、エチレングリコール、プロパン-1,2-および/または-1,3-ジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ブタン-1,2-および/または-1,4-ジオール、ブチルエチルプロパン-1,3-ジオール、メチルプロパン-1,3-ジオール、ペンタン-1,5-ジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセロール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンおよび/またはペンタエリトリトール、ならびにビスフェノールA、B、C、F、ノルボルニルエングリコール、1,4-ベンジルジメタノールおよび-エタノール、2,4-ジメチル-2-エチルヘキサン-1,3-ジオールである。
【0075】
好ましいのは、1分子あたり少なくとも2つの1,2-エポキシ基を有するエポキシ樹脂である。好適なエポキシ樹脂の例は、脂肪族または芳香族エポキシド:Hexion製のEponex(登録商標)およびEPON(登録商標)樹脂、Emerald Performance Materials Company製のEpalloy(登録商標)樹脂、Aditya Birla Chemicals製のEpotec(登録商標)樹脂、Nagase ChemteX製のDenacol(登録商標)樹脂、Huntsman製のAraldite(登録商標)樹脂、Allnex製のBeckopox(登録商標)、Dow Chemical Company製のVORAFORCE(登録商標)樹脂である。
【0076】
好ましくは、当該溶媒は、当該ポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂の調製において使用された有機溶媒または有機溶媒の混合物である。
【0077】
当該溶媒は、好ましくは、半有機溶媒であってもよい。
【0078】
好ましいのは、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、シクロヘキサノン、またはメチルシクロヘキサノンから選択されるケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、酢酸イソブチル、または酢酸tert-ブチルから選択されるエステル、カーボネート、例えば、ジアルキルカーボネートまたは環状カーボネート、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、またはグリセロールカーボネートなど、芳香族炭化水素、例えば、キシレンなど、環状炭化水素、例えば、シクロヘキサンなど、クラウンエーテルまたはエーテル、例えば、ジブチルエーテルなど、エステルエーテル、例えば、酢酸メトキシプロピルなど、シロキサン、例えば、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、またはデカメチルシクロペンタシロキサンなど、有機金属ゲルマニウム化合物、例えば、テトラメチルゲルマニウムなど、の群から選択される溶媒を使用することである。当業者に既知の他の溶媒または異なる溶媒の混合物を使用することも想像できる。
【0079】
より好ましくは、標準圧力または1013mbarでの当該有機溶媒またはその混合物は、50℃~150℃、好ましくは90℃~120℃の沸点範囲を有する。
【0080】
好ましくは、当該溶媒は、ストリッピングガスの有無における減圧蒸留によって、水蒸気蒸留によって、または(拡散)膜プロセスもしくは薄膜エバポレータによって、除去される。
【0081】
好ましくは、当該ポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂溶液は、当該ポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂溶液に対して40.0重量%~95.0重量%、好ましくは60.0重量%~70.0重量%のポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂濃度を有する。
【0082】
好ましくは、濃度が、乳化剤溶液に対して5~40重量%の間、好ましくは10~30重量%の間、より好ましくは15~25重量%の間である、乳化剤水溶液または乳化剤系水溶液が使用される。
【0083】
本発明によるプロセスは、溶媒の除去が乳化剤溶液の存在下において行われる点において、国際公開第2015/091901号とは異なっている。当該溶媒が当該ポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂からかなりの程度まで除去可能であることは、驚くべきことであった。当該ポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂の出発溶媒濃度に関係なく、安定性、したがって、当該ポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂分散液の加工性、を損なうことなく、少ない残留溶媒含有量を生じさせることは可能である。
【0084】
国際公開第2015/091901号によるプロセスは、第1のステップにおけるシリコーンポリエステルハイブリッド樹脂の溶媒の除去、第2のステップにおける濃縮された乳化剤溶液による依然として加工可能な樹脂の均質化、ならびに第3のステップにおける当該分散液を製造するための水の添加による分散について記載している。当該文献には、第1のステップにおける温度および所要時間に関して何も書かれていない。したがって、本発明によるプロセスの利点も、時間節約に通じる製造ステップの減少に存する。
【0085】
したがって、本発明は、本発明によるプロセスによって製造された本発明の水性ポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂分散液も提供する。
【0086】
本発明によるプロセスのさらなる利点は、本発明によるプロセスによって製造された水性ポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂分散液の引火点の上昇である。
【0087】
同様に、本発明は、コーティング材料、ならびにコーティング剤および塗料、基板コーティング、接着剤、構造接着剤、コンパウンディングマトリックスおよびサイズ剤における、本発明のポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂分散液の利用も提供する。使用のさらなる分野は、印刷用インクまたは3D印刷材料の製造においてである。
【0088】
本発明によるポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂分散液を含む組成物でコーティングされた本発明による基板、とりわけベーキングトレイ、ベーキングティン、鍋、金属ポットなど、も、同様に包含される。基板は、好ましくは、セラミック基板、ポリマー基板、または金属基板である。
【0089】
本発明の主題は、下記の実施例によって説明されるが、これらの例示の実施形態に本発明を制限することは意図しない。
【0090】
方法:
粒子サイズの測定
当該分散液の粒子サイズは、ISO 13320:2009に従って特定される。Beckman-Coulter製のLS13320機器を使用した。当該粒子サイズは、屈折率nd=1.51と仮定して計算した。計算された平均粒子直径は体積加重される。
【0091】
固形分の特定
不揮発性成分の含有量は、DIN EN ISO 3251:2008に従って特定され、本発明との関連において、固形分の特定のために、当該ポリオルガノシロキサンの試験および当該ポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂溶液の試験は、180℃において60分間行い、当該分散液に対しては、105℃において60分間行われる。
【0092】
粘度の特定
明記されない限り、粘度は、ブルックフィールドLV-DV-I+スピンドル粘度計を用いて特定した。ブルックフィールド粘度計は、回転体としての規定されたスピンドルセットを備える回転式粘度計である。使用される回転体は、LVスピンドルセットからのものであった。粘度の温度依存性のため、測定の間、当該粘度計および測定液体の温度を、±-0.5℃の正確さにおいて一定に維持した。LVスピンドルセットに加えて、使用したさらなる材料は、サーモスタテータブル(thermostatable)水浴、0~100℃の温度計(1℃以下の目盛り)、およびタイマ(0.1秒以下のスケール値)であった。測定のため、100mlの試料を、広口フラスコに入れ、事前に較正した後、温度制御条件下において、および気泡の不在下において当該測定を実施した。粘度を特定するため、スピンドルが印の位置まで当該製造物に浸かるように、当該粘度計を試料に対して位置決めした。測定は、スタートボタンを起動させることによって開始し、最大測定可能トルクの50%(±20%)である最も好ましい測定領域において測定が行われることを確保するために注意を払った。測定結果は、粘度計においてmPa・sにおいて示され、密度(g/ml)で除すことによって、mm2/秒において粘度を与えた。
【0093】
残留溶媒含有量
残留溶媒含有量の特定は、European Pharmacopoeia 5.4 Residual solventsに従って実施した。
【0094】
Konig振子硬度
振子硬度のKonig測定(DIN 53157またはEN ISO 1522)のために、使用する手段は、揺動する振子の減衰である。2つのステンレスボールを有する振子を、コーティングフィルム上に位置する。振子の揺動の持続時間、振幅、および振子の幾何学的寸法の間には物理的関係が存在する。当該コーティングの粘弾性挙動は、硬度に対する決定的な要因である。振子が揺動動作に設定される場合、ボールは、当該表面上を転がり、その結果、それに圧力を加える。より大きいまたはより小さい回復は、弾性に依存する。弾性力の不在は、振子運動における著しい減衰を生じる。対照的に、高い弾性力は、わずかな減衰のみを生じる。
「Konig」振子硬度:
振動における揺動数
1周期=1.4秒
【0095】
さらなる条件
%の数字が、本発明との関連において与えられる場合、関心対象の数字は、明記されない限り、重量%である。組成物の場合、当該%の数字は、明記されない限り、当該組成物全体に対するものである。以下の実施形態において平均が報告される場合、これらは、明記されない限り、数平均である。本明細書の以下において測定値が報告される場合、これらの測定は、明記されない限り、101,325Paの圧力、23℃の温度、および約40%の周囲相対大気湿度において特定されたものである。
【0096】
引火点の特定
引火点は、DIN EN ISO 2719に従って、Pensky-Martens法により、閉鎖型るつぼにおいて引火点テスタを用いて特定した。
【0097】
閉鎖型るつぼを伴う当該Pensky-Martens引火点テスタは、当該引火点を測定する。ここでは、着火源が試料の蒸気相に点火することができる最も低い温度が読み取られる。
【0098】
70mlの表5の本発明による各分散液を使用した。測定前に、当該試料を以下のように前処理した:>2.0重量%の残留溶媒含有量を有する当該分散液を10℃に冷却し、直ちに分析した。残留溶媒含有量≦2.0%の分散液は、15℃に冷却した。
【0099】
全ての分散液を、50重量%の固形分に調節した。
【0100】
1.5℃/分の加熱速度および120rpmの撹拌速度を選択した。空気圧力は、994mbarであった。補正は、測定最大誤差より小さいため、変換は行わなかった。
材料および設備
・ガラス板、Glaserei Glanzer製:90×150×5mm
・PVCシート、 KVG Kunststoff Betriebs GmbH製、Mat No: 4364002858
・300μmのバーアプリケータ、Simex製
・300μmのキューブ型アプリケータ、TQC GmbH製
・テフロンディスクを有するディスパーマット(Dispermat)、VMA Getzmann製
・広口ガラス瓶
・閉鎖型るつぼを有する引火点テスタ-PMA4(半自動)、Petrotest製
・Silikopon(登録商標) EW、Evonik Industries製
・Poval(登録商標) 04-88、Kuraray製
・Poval(登録商標) 03-80、Kuraray製
・Poval(登録商標) 18-88、Kuraray製
・Gohsenol(登録商標) KL-03、Nippon Gohsei製
・Gohsenol(登録商標) KL-05、Nippon Gohsei製
・Tergitol(登録商標) 15-S-5、DOW Chemical製
【実施例】
【0101】
本発明による水性ポリオルガノシロキサンハイブリッド分散液の調製
本発明による水性ポリオルガノシロキサンハイブリッド分散液の調製のため、最初に、溶媒系ポリオルガノシロキサンハイブリッド溶液を調製する。次いで、当該溶媒を、本発明による方法によって除去する。
【0102】
1.ポリエステルによる溶媒系ポリオルガノシロキサンハイブリッド溶液の調製(これは、簡素化のため、本明細書の以下においてシリコーン-ポリエステルハイブリッド溶液と呼ぶ)
1.1 成分Aとしてのポリオルガノシロキサンの調製
使用した溶媒:メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルプロピルケトン(MPK)、酢酸エチル(EtAc)、酢酸イソブチル(iBuAc)、エチルイソブチレート(EtiBu)。
【0103】
最初に、3種のポリオルガノシロキサンPOS 1、POS 2、およびPOS 3を、下記の表1のパラメータによって、欧州特許第0157318号に従って調製した。
【0104】
POS 4は、Dow Corningから市販されているポリオルガノシロキサンである。
【0105】
【0106】
1.2 成分Cとしてのヒドロキシ官能性ポリエステルの調製
当該ヒドロキシ官能性ポリエステルPES 1~PES 5を、独国特許第3728414(C1)号に記載のプロセスによって、トリメチロールプロパン、イソフタル酸、およびエチレングリコールのエステル化により調製した。固形分および粘度は、表2に従って溶媒によって調節した。
【0107】
【0108】
1.3 溶媒系シリコーン-ポリエステルハイブリッド溶液の調製(変形例1)
当該シリコーン-ポリエステルハイブリッド溶液SiPES 6~SiPES 11を、欧州特許第0092701号によるプロセスによって調製した。
【0109】
当該シリコーン-ポリエステルハイブリッド溶液SiPES 12を、欧州特許第1072660号によるプロセスによって調製した。
【0110】
この場合、表1および2の成分AおよびCを使用した。表3は、さらなる関連データを示している。
【0111】
【0112】
1.4 溶媒系シリコーン-ポリエステルハイブリッド溶液の調製(変形例2)
当該シリコーン-ポリエステルハイブリッド溶液剤SiPES 1~SiPES 5を、独国特許出願公開第102013218981号の実施例1によるプロセスによって調製した。
【0113】
この場合、当該有機ポリマーをモノマーとして使用した。表4は、このシリコーン-ポリエステルハイブリッド溶液SiPES 1~SiPES 5の関連データを示している。
【0114】
【0115】
1.5 溶媒系のエポキシ系ポリオルガノシロキサンハイブリッド溶液(単純化のために、本明細書の以下においてシリコーン-ポリエポキシドハイブリッド溶液と呼ぶ)
Evonik Industries社から市販されているSilikopon(登録商標) EWを使用した。
【0116】
2.ポリオルガノシロキサンハイブリッド分散液の調製
上記の溶媒系シリコーン-ポリエステルハイブリッド溶液(変形例1および2)と、下記の方法説明ではポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂と呼ばれる上記の溶媒系シリコーン-ポリエポキシドハイブリッド溶液を使用した。
【0117】
2.1 方法1、実施例:
最初に、脱イオン水中におけるPoval(登録商標) 4-88の20%溶液100.0グラムを、室温において容器に入れた。続いて、適切な量の溶媒に溶解させた360.0グラムのポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂を加えた。この場合、スターラシステムの速度は、1000rpmである。成果物は、非常に粘性のペーストであり、当該樹脂の添加が終わった後、1000rpmにおいてさらに60分間撹拌した。続いて、140.0グラムの脱塩水を加える。次のステップにおいて、当該溶媒を蒸留によって除去する。このために、温度を50℃に上げ、圧力を40mbarに下げる。続いて、当該分散液の固形分を特定する。続いて、撹拌しながら脱塩水を加えることによって、当該分散液を固形分50.0%に調節する。
【0118】
2.2 方法2、実施例:
乳化剤溶液が、脱イオン水中におけるPoval(登録商標) 3-80の20%溶液であることを除いて、方法1と同様。
【0119】
2.3 方法3、実施例:
乳化剤溶液が、脱イオン水中におけるPoval(登録商標) 18-88の12.5%溶液であることを除いて、方法1と同様。
【0120】
2.4 方法4、実施例:
乳化剤溶液が、脱イオン水中におけるGohsenol(登録商標) KL-03の20%溶液であることを除いて、方法1と同様。
【0121】
2.5 方法5、実施例:
乳化剤溶液が、脱イオン水中におけるGohsenol(登録商標)KL-05の20%溶液であることを除いて、方法1と同様。
【0122】
2.6 方法6、実施例:
脱イオン水中におけるPoval(登録商標) 4-88の20%溶液70.0グラムと、脱イオン水中におけるTergitol(登録商標) 15-S-5の50%溶液30.0グラムを、最初に、室温において容器に入れることを除いて、方法1と同様。
【0123】
粒子サイズ、引火点、および残留溶媒含有量を、調製した各分散液E1~E30について特定した。当該値は、表5に見出すことができる。
【0124】
全ての分散液を、50重量%の固形分に調節した。
【0125】
【0126】
本発明による分散液の残留溶媒含有量は、6重量%未満であった。本発明による分散液の引火点は、全ての事例において、比較例(VE24)の引火点より高かった。とりわけ、<1重量%の残留溶媒含有量を有する本発明による分散液の場合、当該分散液は、水含有量に起因して沸騰したため、>100℃の引火点を報告しているが、これは引火点を特定することが不可能であったことによる
【0127】
比較例VE24は、6.1重量%の残留溶媒含有量および50重量%の固形分を有する分散液であった。この残留溶媒含有量を有するVE24を作製するため、本発明によるプロセスを、都合よく早めに終了した。引火点は、それに対応して低かった。
【0128】
したがって、本発明によるプロセスは、水性ポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂分散液の引火点を高めることができることを見出すことが可能であった。
【0129】
3. 本明細書の以下において「Wacker」と呼ばれる国際公開第2015/091901号の限定
Wackerの実施例5、6、7、10、11、および12による、40重量%溶媒含有量を有するシリコーン変性ポリエステル樹脂を使用し、「Wacker」プロセスによって分散液を作製した。
【0130】
このために、当該シリコーンポリエステル樹脂を、樹脂塊が、当該樹脂が依然として加工可能であるような、ある粘度になるまで、最高90℃で減圧蒸留した。加工性は、次のステップにおいて乳化を可能にするために必要である。国際公開第2015/091901号では、温度および持続時間について詳細は開示されていないため、水の沸点未満の温度を使用した。次いで、固形分を特定した。
【0131】
85重量%以上の固形分では、当該樹脂塊は、もはや、加工可能ではないことが見出された。それは、もはや、乳化可能ではなかった。
【0132】
80重量%の最大固形分において、当該樹脂塊は、依然として、適切な加工性を有しており、それを、当該ポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂分散液に対して30重量%の固形分を有する分散液の製造のために使用した。理論上、この分散液は、結果として、6重量%の残留溶媒含有量を生じる。追加の水により希釈することによって、この分散液の残留溶媒含有量を減らすことが想像できるが、その場合、それに対応して、当該分散液の固形分も減少する。
【0133】
したがって、本発明による分散液を実現するために、国際公開第2015/091901号によるプロセスを使用することができない。
【0134】
性能試験
1.塗工および硬化方法
1.1 方法1:2成分イソシアネート架橋
実施例の分散液E1~E15を、3:1の比率においてBayhydur(登録商標) 3100と混合し、Q-Lab製のQ-Panel(登録商標)アルミニウム色試験パネル(Alloy 3003H14;0.025インチ厚(0.6mm);むき出しのミル仕上げ)の上にスパイラルコーティングバーによって塗工した。未乾燥フィルム厚は100μmである。室温で24時間乾燥させた後、成果物は、乾燥フィルム厚50μmの透明な無欠陥フィルムである。当該試験パネルを、23℃および65%相対湿度において10日間熟成させた。
【0135】
1.2 方法2:熱架橋
実施例の分散液E16~E23およびE25~E30を、Q-Lab製のQ-Panel(登録商標)アルミニウム色試験パネル(Alloy 3003H14;0.025インチ厚(0.6mm);むき出しのミル仕上げ)の上にスパイラルコーティングバーによって塗工した。未乾燥フィルム厚は100μmである。室温で0.5時間乾燥させた後、成果物は、乾燥フィルム厚50μmの透明な無欠陥フィルムである。室温でのこのフラッシュオフタイムの後、当該風乾させた試験パネルを、空気循環オーブンにおいて250℃で15分間ベーク処理した。
【0136】
同様に、溶媒系SiPES 1、SiPES 2、SiPES 8、SiPES 9、およびSiPES 12を塗工し、硬化させた。
【0137】
4.振子硬度の測定
当該フィルムを、Konig振子硬度(DIN 53 157)によってキャラクタリゼーションした。
【0138】
この値は、表6に見出すことができる。
【0139】
【0140】
本発明の水性分散液は、溶媒系ポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂とちょうど同じぐらい良好な振子硬度値を有することが見出された。振子硬度は、本発明によるポリオルガノシロキサンハイブリッド樹脂分散液の最終コーティングの使用における耐久性に関して、直接的結論を与えるため、振子硬度は重要である。