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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】フライ食品用衣材
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/157 20160101AFI20241010BHJP
   A23L 5/10 20160101ALI20241010BHJP
【FI】
A23L7/157
A23L5/10 E
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020064055
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021158987
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】505126610
【氏名又は名称】株式会社ニチレイフーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【氏名又は名称】藤井 宏行
(72)【発明者】
【氏名】石嵜 雄一
(72)【発明者】
【氏名】國▲崎▼ 皓矢
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特公昭62-028657(JP,B2)
【文献】特開2004-305134(JP,A)
【文献】特開2007-037449(JP,A)
【文献】特開昭61-019462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/157
A23L 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀粉、澱粉、および糖類を含む衣材原料の押出し成形物である、フライ食品用半膨化衣材であって、衣材原料中の糖類の含有量が、衣材原料の全量に対して10質量%以上である、フライ食品用半膨化衣材
【請求項2】
穀粉が、小麦粉、米粉、またはコーンフラワーである、請求項1に記載のフライ食品用半膨化衣材。
【請求項3】
押出し成形前の衣材原料の体積に対する、押出し成形物の体積膨張率が200%以下である、請求項1または2に記載のフライ食品用半膨化衣材。
【請求項4】
衣材原料が乳化剤をさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載のフライ食品用半膨化衣材。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載のフライ食品用半膨化衣材を含む、フライ用食品。
【請求項6】
最外層にフライ食品用半膨化衣材を備えるフライ用食品であって、
前記半膨化衣材が、穀粉、澱粉、および糖類を含む衣材原料の押出し成形物であり、
衣材原料中の糖類の含有量が、衣材原料の全量に対して10質量%以上である、
フライ用食品。
【請求項7】
穀粉、澱粉、および糖類を含む衣材原料をエクストルーダーに投入し、該衣材原料100質量部に対し5~15質量部の水の共存下でバレル内を加圧および加熱しながら押出し成形して、押出し成形物であるフライ食品用半膨化衣材を得る工程を含む、フライ食品用半膨化衣材の製造方法であって、衣材原料中の糖類の含有量が、衣材原料の全量に対して10質量%以上である、製造方法
【請求項8】
エクストルーダーのバレルの先端部の温度が100℃~140℃で行われる、請求項に記載の製造方法。
【請求項9】
穀粉が、小麦粉、米粉、またはコーンフラワーである、請求項またはに記載の製造方法。
【請求項10】
押出し成形前の衣材原料の体積に対する、押出し成形物の体積膨張率が200%以下である、請求項のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
衣材原料が乳化剤をさらに含む、請求項10のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
請求項11のいずれか一項に記載の製造方法により得られた衣材を中種に付着させてフライ用食品を得る工程を含む、フライ用食品の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の製造方法により得られたフライ用食品を油ちょうしてフライ食品を得る工程を含む、フライ食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀粉、澱粉、および糖類を含む衣材原料の押出し成形物であるフライ食品用衣材に関する。
【背景技術】
【0002】
鶏のから揚げやフライドチキン、カツ等のパン粉を用いたフライ類等の揚げ物は、肉類、魚介類等の中具のジューシー感および衣のサクサク感を兼ね備えたものが良好な品質として好まれている。
【0003】
スーパーマーケットやコンビニエンスストア等において、このような揚げ物は、その場で油ちょうした後、常温または冷蔵して陳列したり、容器等に包装して販売されたり、また揚げ物の温かさを保持するために、電気ヒーター式等の店頭販売用ウォーマーケース内で保温した状態で陳列して販売されている。
【0004】
上記形態等で販売される揚げ物は、時間の経過とともに、中具のジューシー感が低下し、衣が硬くなり噛み切り難くなるとともに、衣のサクサク感が低下するという問題がある。例えば、ウォーマーケース内で保温した状態で陳列して販売される揚げ物の場合、保温時間にもよるが、通常、ウォーマー保温後、約4時間経過した場合には商品としての価値が著しく低下するおそれがあるため、廃棄されることが多い。
【0005】
また、コンビニエンスストアのウォーマーケースに陳列されているものは、どれも同じような見た目であり、差別化された外観は購買者の購買意欲の向上に必要不可欠である。
【0006】
これまでに、米を必須成分として、揚げ油の吸収量が少なく、食感の経時変化が少ない揚げ物用衣(特許文献1)が知られているが、衣は半膨化されたものではなく、ザクザク感や噛み切りやすさなどの点でさらなる改良が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-37449号公報
【発明の概要】
【0008】
本発明者らは、驚くべきことに、穀粉、澱粉、および糖類を含む衣材原料の押出し成形物をフライ食品用衣材として中種(具材)に付着させて作製したフライ食品は、スーパーマーケットやコンビニエンスストア等において常温でまたはウォーマーケースなどで長時間が保管しても、保管後の食感を維持できることを見出した。本発明は、これらの知見に基づくものである。
【0009】
本発明は、穀粉、澱粉、および糖類を含む衣材原料の押出し成形物であるフライ食品用半膨化衣材および該衣材の製造方法を開示する。
【0010】
本発明によれば以下の発明が提供される。
(1)穀粉、澱粉、および糖類を含む衣材原料の押出し成形物である、フライ食品用半膨化衣材。
(2)穀粉が、小麦粉、米粉、またはコーンフラワーである、(1)に記載の衣材。
(3)衣材原料中の糖類の含有量が、衣材原料の全量に対して、10質量%以上である、(1)または(2)に記載の衣材。
(4)押出し成形前の衣材原料の体積に対する、押出し成形物の体積膨張率が200%以下である、(1)~(3)のいずれかに記載の衣材。
(5)衣材原料が乳化剤をさらに含む、(1)~(4)のいずれかに記載の衣材。
(6)(1)~(5)のいずれかに記載の衣材を含む、フライ用食品。
(7)最外層にフライ食品用半膨化衣材を備えるフライ用食品であって、前記半膨化衣材が、穀粉、澱粉、および糖類を含む衣材原料の押出し成形物である、フライ用食品。
(8)穀粉、澱粉、および糖類を含む衣材原料をエクストルーダーに投入し、該衣材原料100質量部に対し5~15質量部の水の共存下でバレル内を加圧および加熱しながら押出し成形して、押出し成形物であるフライ食品用半膨化衣材を得る工程を含む、フライ食品用半膨化衣材の製造方法。
(9)エクストルーダーのバレルの先端部の温度が100℃~140℃で行われる、(8)に記載の衣材の製造方法。
(10)穀粉が、小麦粉、米粉、またはコーンフラワーである、(8)または(9)に記載の衣材の製造方法。
(11)衣材原料中の糖類の含有量が、衣材原料の全量に対して、10質量%以上である、(8)~(10)のいずれかに記載の衣材の製造方法。
(12)押出し成形前の衣材原料の体積に対する、押出し成形物の体積膨張率が200%以下である、(8)~(11)のいずれかに記載の衣材の製造方法。
(13)衣材原料が乳化剤をさらに含む、(8)~(12)のいずれかに記載の衣材の製造方法。
(14)(8)~(13)のいずれかに記載の製造方法により得られた衣材を中種に付着させてフライ用食品を得る工程を含む、フライ用食品の製造方法。
(15)(14)に記載の製造方法により得られたフライ用食品を油ちょうしてフライ食品を得る工程を含む、フライ食品の製造方法。
【0011】
本発明のフライ食品用半膨化衣材を用いて作製したフライ食品は、スーパーマーケットやコンビニエンスストア等において常温でまたはウォーマーケースなどで長時間が保管しても、保管後の食感を維持できる点で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、フライ食品用半膨化衣材を表す。
図2図2は、フライ食品用半膨化衣材を170℃で1分間、油ちょうして更に膨化させた衣材を表す。
【発明の具体的説明】
【0013】
<フライ食品用半膨化衣材>
本発明は、穀粉、澱粉、および糖類を含む衣材原料の押出し成形物である、フライ食品用半膨化衣材である。本発明の半膨化衣材は、衣中に空隙が(多数)存在して、ある程度の硬さを有する骨格を有するものである。本発明の半膨化衣材は、膨化処理(例えば、エクストルーダー処理)により、処理前の衣材原料から膨化しているが、完全には膨化しきっておらず、油ちょうなどの加熱処理によりさらに膨化する余地がある状態の衣材である。
【0014】
本発明のフライ食品用半膨化衣材において衣材原料として含まれる穀粉は、特に限定されるものではないが、例えば、小麦、大麦、オーツ麦、トウモロコシ、米、馬鈴薯、タピオカおよび大豆等の穀物を挽いて得られる粉末が挙げられ、これらを単独または2種以上を組合せて用いてもよいが、これらの中でも小麦粉、米粉、またはコーンフラワーが好ましく、小麦粉が特に好ましい。
【0015】
本発明のフライ食品用半膨化衣材において衣材原料として含まれる穀粉の含有量は、特に限定されるものではないが、好ましくは、衣材原料の全量に対して5~90質量%であり、より好ましくは10~80質量%であり、さらに好ましくは50~70質量%である。
【0016】
本発明のフライ食品用半膨化衣材において衣材原料として含まれる澱粉は、特に限定されるものではないが、好ましくは、タピオカ澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、米澱粉、サゴ澱粉、甘藷澱粉、ハイアミロースコーンスターチ、および緑豆澱粉、並びにこれらの加工澱粉からなる群から選択される1種または2種以上であり、より好ましくは、タピオカ澱粉、小麦澱粉、およびコーンスターチ、並びにこれらの加工澱粉からなる群から選択される1種または2種以上であり、特に好ましくは、加工タピオカ澱粉である。また、本発明のフライ食品用半膨化衣材において衣材原料として含まれる澱粉は、α化されていない澱粉が好ましい。
【0017】
本発明のフライ食品用半膨化衣材において衣材原料として含まれる澱粉の含有量は、特に限定されるものではないが、好ましくは、衣材原料の全量に対して5~90質量%であり、より好ましくは10~85質量%であり、さらに好ましくは10~30質量%である。
【0018】
本発明のフライ食品用半膨化衣材において衣材原料として含まれる糖類は、特に限定されるものではないが、好ましくは、単糖またはオリゴ糖であり、より好ましくは、単糖、二糖、三糖、四糖、または五糖であり、さらに好ましくは、トレハロースまたはグルコースであり、特に好ましくは、トレハロースである。
【0019】
本発明のフライ食品用半膨化衣材において衣材原料として含まれる糖類の含有量は、特に限定されるものではないが、好ましくは、衣材原料の全量に対して10質量%以上であり、より好ましくは、衣材原料の全量に対して13質量%以上であり、さらに好ましくは、衣材原料の全量に対して15質量%以上である。本発明のフライ食品用半膨化衣材において衣材原料として含まれる糖類の含有量の上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは、衣材原料の全量に対して30質量%以下であり、より好ましくは、衣材原料の全量に対して25質量%以下であり、さらに好ましくは、衣材原料の全量に対して20質量%以下である。衣材原料として含まれる糖類の含有量を上記の範囲とすることにより、油ちょうして衣材を再膨化させる際により好ましい膨張率となり、糖類が飴状にはならない点で好ましい。また、衣材原料として含まれる糖類の含有量を上記の範囲とすることにより、エクストルーダーで打ち出せないといった製造工程上の不具合が発生しにくい点でも好ましい。
【0020】
押出し成形前の衣材原料の体積に対する、押出し成形物の体積膨張率(%)(押出し成形物の体積/衣材原料の体積×100)は、特に限定されるものではないが、好ましくは200%以下、より好ましくは100%超200%以下(100%より大きく、200%以下)であり、さらに好ましくは105~150%であり、特に好ましくは105~120%である。
【0021】
本発明のフライ食品用半膨化衣材の大きさは、特に限定されるものではなく、中種の種類や大きさにより適切な大きさにすべきものであるが、1~10mmであることが好ましく、2~8mmであることがより好ましく、5~8mmであることが特に好ましい。
【0022】
本発明のフライ食品用半膨化衣材において衣材原料には、乳化剤をさらに含むことが好ましい。本発明のフライ食品用半膨化衣材に乳化剤をさらに含有させることにより、ザクザク感や衣のひき(噛み切りやすさなど)(衣のひきとは、噛み切りやすさに加えて歯にくっつくような一定の粘着性を含む概念である)の観点から好ましい。本発明のフライ食品用半膨化衣材に含有させる乳化剤としては、特に限定されるものではないが、食品用の乳化剤であればいずれのものを用いてもよく、例えば、レシチン、サポニン、カゼインナトリウムなどの天然の乳化剤や、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどの合成乳化剤のいずれを用いてもよいが、これらの中でも、グリセリン脂肪酸エステルおよび/またはショ糖脂肪酸エステルが好ましく、ポリグリセリンポリリシノレート、ショ糖ステアリン酸エステル、またはデカグリセリンステアレートが好ましい。
【0023】
本発明のフライ食品用半膨化衣材において衣材原料に含まれる乳化剤の含有量は、好ましくは衣材原料の全量に対して、0.01~1質量%であり、より好ましくは、衣材原料の全量に対して、0.1~1質量%である。本発明のフライ食品用半膨化衣材において衣材原料に乳化剤を上記の範囲で加えることにより、更にザクザク感が向上して好ましい食感を得ることができる。
【0024】
本発明のフライ食品用半膨化衣材の衣材原料として、上記の成分以外にも、本発明の効果を奏する限りにおいて、例えば、食塩、アミノ酸等の調味料、β-カロテン等の色素、香料、酸味料、pH調整剤、食物繊維、増粘剤、動物性または植物性タンパク質素材などを含んでいてもよい。
【0025】
本発明の別の態様によれば、(フライ用食品の)最外層にフライ食品用半膨化衣材を備えるフライ用食品であって、前記半膨化衣材が、穀粉、澱粉、および糖類を含む衣材原料の押出し成形物であるフライ用食品が提供される。また、本発明の別の態様によれば、上記の本発明のフライ食品用半膨化衣材を含むフライ用食品が提供される。本明細書において、フライ用食品(油ちょう用加工食品)とは、油ちょう等される前の食品(軽く油ちょうまたは油ちょうされた食品であってもよい)を意味し、例えば、一般な中種(具材)を用い、必要に応じて中種に粉末あるいは細かなフレークの付け粉を付着させ、これを溶き卵液またはバッター等で被覆し、さらに必要に応じてパン粉等のフレークを表面に付着させた食品を意味し、食用油脂で油ちょう等される前か、または表面のみ加熱する程度に軽く油ちょうするか、あるいは油ちょう後の食品である。フライ用食品は、製造した直後に油ちょう処理を行ってフライ食品としてもよいが、冷凍または冷蔵保存し、その後に油ちょう処理を行ってフライ食品としてもよい。冷凍または冷蔵の方法は特に限定されるものではなく、常法により行うことができる。例えば、冷凍保存の場合、エアーブラスト式凍結法、セミエアーブラスト式凍結法、コンタクト式凍結法等の凍結法に従ってフライ用食品を凍結した後に、-18℃以下で保存する方法や、液化窒素や液化炭酸を噴霧してフライ用食品を凍結した後に、-18℃以下で保存する方法を用いることができる。特に、凍結方法としては、-35℃前後での急速冷凍が望ましい。中種としては、具体的には、野菜系統のものとして、たまねぎ、にんじん、いんげん、三つ葉、ししとう、じゃがいも、長いも、しめじ、まいたけ等を利用することができ、また、エビ、タコ、イカ、または帆立貝などの魚介類や、牛、豚、または鶏等の食肉類または野菜系統のものと食肉類の混合物も使用可能であるが、これらの中でも、鶏肉、豚肉、または牛肉が好ましい。
【0026】
本発明の別の態様によれば、(フライ食品の)最外層にフライ食品用半膨化衣材を備えるフライ食品(油ちょう処理されたフライ食品)であって、前記半膨化衣材が、穀粉、澱粉、および糖類を含む衣材原料の押出し成形物であるフライ食品が提供される。また、本発明の別の態様によれば、本発明のフライ用食品の油ちょう物であるフライ食品が提供される。本明細書において、フライ食品(油ちょう食品)は、油ちょうする以外は、フライ用食品の製造方法や中種(具材)等と同じであってもよい。油ちょう処理は、製造された直後のフライ用食品、または製造された後に冷凍若しくは冷蔵保存されたフライ用食品を、140~200℃の食用油脂中で30~600秒間油ちょう加熱することにより、行うことができる。このようにして製造されたフライ食品は、製造後すぐに食卓に供されてもよく;冷凍または冷蔵保存し、その後、マイクロ波調理等の二次調理を施した後に食卓に供されてもよく;常温またはウォーマーケースなどで保存された後に食卓に供されてもよい。
【0027】
本発明のフライ食品は、製造後に20~75℃において保存してもよい。フライ食品を上記温度において保存する方法は特に限定されるものではないが、例えば、ホットウォーマー等の加温器または保温器を用いて、その内部でフライ食品を保存する方法が挙げられる。本発明のフライ食品を製造後に上記のように保存しても本発明の効果を奏する。
【0028】
本発明のフライ食品用半膨化衣材は、油ちょう処理を行うことにより、油ちょう前に比べて体積が、好ましくは1.5~6倍、より好ましくは2~5倍に更に膨化し、ザクザク感や、衣のひきのない(噛み切りやすいなどの)食感を更に達成でき、また電子レンジやオーブントースター等で温め直しても同様の効果を更に達成できる。
【0029】
<フライ食品用半膨化衣材の製造方法>
本発明のフライ食品用半膨化衣材の製造方法は、穀粉、澱粉、および糖類を含む衣材原料をエクストルーダーに投入し、該衣材原料100質量部に対し5~15質量部の水の共存下でバレル内を加圧および加熱しながら押出し成形して(好ましくは、押出し成形して半膨化させ)、押出し成形物であるフライ食品用半膨化衣材を得る工程を含む方法である。
【0030】
フライ食品用半膨化衣材は、まず穀粉、澱粉、および糖類を含む衣材原料をミキサーでプレミックスして、ミックス粉にしたものを、エクストルーダーに投入する。これらの成分以外にも、前記衣材原料には、本発明の効果を奏する限りにおいて、後述する乳化剤、食塩、アミノ酸等の調味料、β-カロテン等の色素、香料、酸味料、pH調整剤、食物繊維、増粘剤、動物性または植物性タンパク質素材などを含んでいてもよい。
【0031】
衣材原料をエクストルーダーに投入後、衣材原料(ミックス粉)100質量部に対して5~15質量部(好ましくは、8~12質量部)の水の共存下でバレル内を加圧および加熱しながら押出し成形して半膨化させる。
【0032】
衣材原料のエクストルーダーへの投入後のエクストルーダーのバレルの先端部(半膨化衣材の出口部分)の圧力は、特に限定させるものではないが、好ましくは、1Mpa~15Mpaで行われ、より好ましくは、1.5Mpa~4.0Mpaで行われる。バレル内の圧力はスクリューの回転速度、バレル内温度、エクストルーダー開口部の開口径等を適宜調節することにより調節することができる。
【0033】
衣材原料のエクストルーダーへの投入後のエクストルーダーのバレルの先端部(半膨化衣材の出口部分)の温度は、特に限定させるものではないが、好ましくは、100℃~140℃で行われ、より好ましくは、130℃~135℃で行われる。エクストルーダーのバレルの先端部の温度を上記のような低温の範囲とすることにより、より好ましい半膨化の衣材を作製することができ、また衣材原料の焦げ付きを防止できる。
【0034】
衣材原料のエクストルーダーへの投入後のバレル内のスクリューの回転速度は、例えば、200rpm~900rpmで行われ、好ましくは300rpm~500rpmで行われる。
【0035】
本発明のフライ食品用半膨化衣材を製造するために用いられるエクストルーダーは1軸であっても、2軸でもよいが、好ましくは2軸エクストルーダーが好ましい。2軸エクストルーダーとしは、どのような方式のものでもよいが、株式会社スエヒロEPM社製の2軸エクストルーダーを好適に用いることができる。
【0036】
衣材原料のエクストルーダーへの投入後にバレル内で加圧等の上記の処理を行い、押出し成形して半膨化させた後は、グライダー(例えば、グライダー内部でカッターが回転して目的のサイズまで砕く)でサイズが0.5~10mm(好ましくは、1~10mm)となるように調整(カット)し、場合によりシフターにより目的の分画として、最後にドライヤー乾燥(例えば、140℃の熱風で乾燥)して、例えば、水分値が10%以下となる程度まで乾燥して、本発明のフライ食品用半膨化衣材を得ることができる。
【0037】
エクストルーダーに投入される衣材原料に含まれる穀粉、澱粉、および糖類並びのそれらの含有量は、本発明のフライ食品用半膨化衣材において衣材原料として含まれる穀粉、澱粉、および糖類と同じであってよい。
【0038】
本発明のフライ食品用半膨化衣材の製造方法において、押出し成形前の衣材原料の体積に対する、押出し成形物の体積膨張率(%)(押出し成形物の体積/衣材原料の体積×100)は、特に限定されるものではないが、本発明のフライ食品用半膨化衣材における、押出し成形前の衣材原料の体積に対する、押出し成形物の体積膨張率と同じであってもよい。
【0039】
本発明のフライ食品用半膨化衣材の製造方法において、エクストルーダーに投入される衣材原料には、乳化剤をさらに含むことが好ましいが、このような乳化剤およびその乳化剤の含有量は、上記の本発明のフライ食品用半膨化衣材において衣材原料に含まれてもよい乳化剤およびその乳化剤の含有量と同じであってもよい。
【0040】
本発明の別の態様によれば、本発明のフライ食品用半膨化衣材の製造方法により得られた衣材を中種(具材)に付着させて(好ましくは、衣材をフライ用食品の最外層に付着させて)フライ用食品を得る工程を含むフライ用食品の製造方法が提供される。本発明のフライ食品用半膨化衣材の製造方法により得られた衣材を、唐揚げ類のまぶし粉またはパン粉フライ類のパン粉に一部または全部使用してもよい。また、フライ食品用半膨化衣材の製造方法により得られた本発明の衣材は、下記実施例のように小麦粉(水を適量含んでもよい)などと混合してブレッダー衣(フライ食品用衣材)として使用してよいが、ブレッダー衣中の本発明の衣材が20質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0041】
本発明の別の態様によれば、本発明のフライ用食品の製造方法により得られたフライ用食品が提供される。
【0042】
本発明の別の態様によれば、本発明のフライ用食品の製造方法により得られたフライ用食品を油ちょうしてフライ食品を得る工程を含むフライ食品の製造方法が提供される。
【0043】
本発明の別の態様によれば、本発明のフライ食品の製造方法により得られたフライ食品が提供される。
【実施例
【0044】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【0045】
試験例:フライドチキンの食感の評価
<衣材の製造方法>
下記の表1に記載の衣材の組成に基づいてミックス粉(例10および11以外)を調製して、そのミックス粉に対して水を10~15質量%程度加えた。次に、2軸エクストルーダー(株式会社スエヒロEPM社製)を用いて、温度70~135℃、水分10~15%、スクリューの回転数300~500rpmで処理し、その後、グラインダーでサイズが1~8mmとなるように調整(カット)した。最後に水分値が10%を切る程度にまで乾燥させ、衣材を得た。例1~9の衣材は半膨化状態であり(図1参照)、エクストルーダーで処理する前の衣材原料に比べて、例1では9%、例8では218%体積が増加した。すなわちエクストルーダーで処理する前の衣材原料に対して、例1では109%、例8では318%の体積変化となった。この体積変化(体積膨張率)は、具体的には、エクストルーダー処理前の衣材原料(粉)(50g)およびエクストルーダー処理後の衣材(50g)を200mlのメスシリンダーでそれぞれ体積測定を行い、体積膨張率(%)((エクストルーダー処理後の衣材の体積)/(エクストルーダー処理前の衣材原料の体積)×100)を求めた。
なお、衣材のサイズが1.4mm以下、1.4~2.8mm、2.8~5mm、5~8mmについて、下記表1の例1の組成にて、下記評価項目および評価基準に基づいて衣のザクザク感を評価したところ、意外にも5~8mmの衣材のサイズが最もザクザク感が良好であることが分かった。
【0046】
下記の表1で用いられた衣材原料中の小麦粉、澱粉、および糖、およびについて以下のものを用いた。
小麦粉:バイオレット(薄力粉)(日清製粉株式会社製)
タピオカ加工澱粉:ネオビス(商標)T-100(日本食品化工株式会社製)
トレハロース:トレハ(商標)(株式会社林原製)
ブドウ糖:グル・ファイナル(商標)(サンエイ糖化株式会社製)
【0047】
下記の表1で用いられた衣材原料中の乳化剤(1)~(3)について以下のものを用いた。
乳化剤(1):ポリグリセリンポリリシノレート(製品名:ポエム(商標)PR-300)、理研ビタミン株式会社製)
乳化剤(2):ショ糖ステアリン酸エステル(製品名:リョートー(商標)シュガーエステル、三菱ケミカルフーズ株式会社製)
乳化剤(3):デカグリセリンステアレート(製品名:ポエム(商標)J-0081HV)、理研ビタミン株式会社製)
【0048】
<ブレッダー衣の調製>
(1)小麦粉のみを衣材原料として用いた場合(例10)は、小麦粉100%をブレッダー衣(中種に最外層として付着させる衣)として使用した。
(2)例10以外については、小麦粉に小麦粉100gに対して水を10g加え、その水と小麦粉を混合したものを5mmメッシュでふるいをかけた。そのふるいをかけ終わったものと衣材(半膨化衣材)とを4:3で混合した。
【0049】
<フライドチキンの製造>
(1)原料の鶏生肉を80g±2gに包丁でカットした。
(2)調味液(食塩3.0%、リン酸塩(商品名:リン酸塩No.35、株式会社第一化成製)3.0%、グルタミン酸ナトリウム3.0%、砂糖1.8%、水89.2%)を、生肉100gに対して16.8gになるように計量し、生肉とともにポリエチレン袋に投入した。
(3)袋の中に空気がたまり膨らむように開口部をシールした。
(4)タンブラー(真空マッサージタンブラーMG-40型)で常圧、チルド温度帯(約5℃)にて12rpmで60分間マッサージした。
(5)マッサージ後の生肉をボールにとり、打ち粉として馬鈴薯澱粉(商品名:スタビローズ1000、松谷化学工業株式会社製)をマッサージ前の生肉100gに対し3.0gをゴムべらで、まんべんなく混ざるまで混合した。
(6)(5)で得られたものに、バッター液(水60%、小麦粉40%で混合したもの)をマッサージ後の生肉100gに対し22.5gになるように付着させた。
(7)(6)で得られたものに、マッサージ前の生肉100gに対し20.0gになるように、上記で調製したブレッダー衣を付着させた。
(8)(7)で得たものを170℃で1分間油ちょうした後、コンベクションオーブン(株式会社フジマック製)で120℃、80%(相対湿度40.8%)の条件で9分間加熱し、中心品温を約80℃にした。
(9)(8)で得たフライドチキンを、速やかに約-35℃の冷凍庫により凍結させ、その後約-18℃にて保管した。
【0050】
<官能評価項目と方法>
熟練した専門パネル5名により、フライドチキンの食感について評価を、下記の評価項目および評価基準に基づいて行った。下記の例1~11の衣材を用いたそれぞれのフライドチキンの揚げたてを約65℃に保温したホットウォーマーに4時間保管し、保管後のフライドチキンの衣のザクザク感および衣のひき(噛み切りやすさなど)を各項目で油ちょう直後を最高点の5点とし点数化を行った。また、4時間経過後の小麦粉のみの例10の各項目1点とし、それを一つの基準とした。なお、熟練した専門パネル5名の間に評点の差はほとんどなく、評点の違いが僅かであっても明らかに食感が違うものであった。
【0051】
また、上記の「フライドチキンの製造」の(8)の油ちょうの前後での衣材の体積変化を測定して、体積膨張率として求めた(例えば、油ちょう前の半膨化状態の衣材(例1の衣材原料を用いた)としては図1を参照、この衣材を170℃で1分間油ちょう後の衣材については図2を参照)。
<衣材の体積変化の測定>
(1)下記の例1~11の衣材をふるいにかけ、メッシュサイズ1.4mmより大きく、2.8mmより小さいものをサンプリングした。
(2)サンプリングした衣材を200mlメスシリンダーに50mlになるように体積測定した。
(3)50mlに測定したものを、170℃で1分間油ちょうした。
(4)油を切って、再度200mlのメスシリンダーに入れ、体積を測定した。
(5)油ちょう前の衣材の体積と、油ちょう後の衣材の体積とから、体積膨張率(%)((油ちょう後の衣材の体積)/(油ちょう前の衣材の体積)×100)を求めた。その結果を下記表2に記載した。
【0052】
<評価項目および評価基準>
衣のザクザク感
1点:ザクザク感がない
2点:ザクザク感がわずかにある
3点:ザクザク感がわずかにあるものの、品質上許容される
4点:ザクザク感があり、品質上許容される
5点:ザクザク感が非常にあり、品質上許容される
【0053】
衣のひき(噛み切りやすさなど)
1点:噛み切りにくく、品質面で改良が求められる
2点:やや噛み切りにくく、品質面で改良が求められる
3点:やや噛み切りにくいものの、品質上許容される
4点:噛み切りやすく、品質上許容される
5点:非常に噛み切りやすく、品質上許容される
【0054】
総合評価(衣の品質)
A:衣の品質が非常に良好である
B:衣の品質が良好である
C:衣の品質としては許容できるものの、AおよびBと比較して明らかに劣る

【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
上記表2の結果から、例1~9の穀粉、澱粉、および糖類を含む衣材原料の押出し成形物をフライ食品用の衣材料として用いた場合には、例10の穀粉(小麦粉)のみを含む衣材原料の押出し成形物および押出し成形物ではない例11に比べて、ザクザク感および衣のひきが優れたものであった。
また、衣材原料中の糖類の含有量が、衣材原料の全量に対して、10質量%以上である(より好ましくは、13質量%以上である)の押出し成形物(例1~7)をフライ食品用の衣材料として用いた場合には、10質量%未満であるの押出し成形物(例8および9)に比べて、ザクザク感、衣のひき、および総合評価のいずれも良好なものであった。特に、衣材原料中の糖類の含有量のみを変え、小麦粉含有量および澱粉含有量を適宜調製した例3と例7とを比較すると、衣材原料の全量に対して、衣材原料中の糖類の含有量を13質量%以上とした例7の方が、衣材原料中の糖類の含有量が10質量%とした例3に比べて、衣のひきおよび総合評価が明らかに優れたものとなった。
さらに、衣材原料に乳化剤を添加した押出し成形物(例1、4、および5)をフライ食品用の衣材料として用いた場合には、乳化剤を添加していない押出し成形物(例6)と比較して、ザクザク感および衣のひきのいずれもが良好であることが分かった。
図1
図2