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特許7569626圧着端子を備えるフレキシブルプリント配線板
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  • 特許-圧着端子を備えるフレキシブルプリント配線板 図1
  • 特許-圧着端子を備えるフレキシブルプリント配線板 図2
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  • 特許-圧着端子を備えるフレキシブルプリント配線板 図4
  • 特許-圧着端子を備えるフレキシブルプリント配線板 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】圧着端子を備えるフレキシブルプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/2495 20180101AFI20241010BHJP
   H01R 4/2404 20180101ALI20241010BHJP
   H01R 12/68 20110101ALI20241010BHJP
【FI】
H01R4/2495
H01R4/2404
H01R12/68
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020068061
(22)【出願日】2020-04-06
(65)【公開番号】P2021166122
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2023-02-06
【審判番号】
【審判請求日】2024-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000230249
【氏名又は名称】メクテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 周三
(72)【発明者】
【氏名】三浦 裕
(72)【発明者】
【氏名】金山 知樹
【合議体】
【審判長】小川 恭司
【審判官】平城 俊雅
【審判官】内田 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-282773(JP,A)
【文献】特開2003-203703(JP,A)
【文献】特開2013-45818(JP,A)
【文献】特開2012-89710(JP,A)
【文献】特開2001-230007(JP,A)
【文献】特開平5-29786(JP,A)
【文献】特開昭62-249370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/59
H01R 12/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフィルムと、前記ベースフィルムの表面に設けられる金属箔により構成される回路と、前記回路を挟み込むように前記ベースフィルムに貼り合わされるカバーフィルムとを有するフレキシブルプリント配線板と、
圧着されることで、前記回路が設けられていない領域において前記フレキシブルプリント配線板を貫通し、かつ折り曲げ加工が施されて前記回路の一部に食い込む圧着片を複数備える圧着端子と、
を含む、圧着端子を備えるフレキシブルプリント配線板であって、
前記フレキシブルプリント配線板の一部の領域においては前記カバーフィルムが設けられずに前記回路の一部が露出されており、複数の前記圧着片のうちの少なくとも一部は、前記一部の領域に配されることで、前記カバーフィルムを貫通することなく前記回路の一部に食い込んでいることを特徴とする、圧着端子を備えるフレキシブルプリント配線板。
【請求項2】
複数の前記圧着片は、全て前記一部の領域に配されていることを特徴とする請求項1に記載の圧着端子を備えるフレキシブルプリント配線板。
【請求項3】
複数の前記圧着片の少なくとも一部は、前記一部の領域以外の領域に配されており、これらの圧着片は前記ベースフィルム及び前記カバーフィルムを貫通した状態で前記回路の一部に食い込んでいることを特徴とする請求項1に記載の圧着端子を備えるフレキシブルプリント配線板。
【請求項4】
前記カバーフィルムにおける前記一部の領域との境界線は波形となるように形成されていることを特徴とする請求項3に記載の圧着端子を備えるフレキシブルプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧着端子を備えるフレキシブルプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フレキシブルプリント配線板に設けられた回路の一部に食い込む圧着片を複数備える圧着端子をフレキシブルプリント配線板に取り付ける技術が知られている(特許文献1参照)。このような技術においては、圧着片が、フレキシブルプリント配線板におけるベースフィルムとカバーフィルムとを貫通した状態で、かつ折り曲げ加工が施されて回路の一部に食い込むように構成されている。そのため、圧着片と回路との接触面積が狭く、電気的な接続が不十分になるおそれがある。フレキシブルフラットケーブルにおいては、導体の一部を被覆材から飛び出るように構成し、この導体の部分に圧着片を圧着させる技術が知られている。しかしながら、フレキシブルプリント配線板の場合には、導体は銅箔などにより構成されるため、強度が低く、そのような技術を適用することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第2803392号公報
【文献】特開2003-203703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、強度を保ちつつ、安定的な電気的接続を可能とする圧着端子を備えるフレキシブルプリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0006】
すなわち、本発明の圧着端子を備えるフレキシブルプリント配線板は、
ベースフィルムと、前記ベースフィルムの表面に設けられる金属箔により構成される回路と、前記回路を挟み込むように前記ベースフィルムに貼り合わされるカバーフィルムとを有するフレキシブルプリント配線板と、
圧着されることで、前記回路が設けられていない領域において前記フレキシブルプリント配線板を貫通し、かつ折り曲げ加工が施されて前記回路の一部に食い込む圧着片を複数備える圧着端子と、
を含む、圧着端子を備えるフレキシブルプリント配線板であって、
前記フレキシブルプリント配線板の一部の領域においては前記カバーフィルムが設けられずに前記回路の一部が露出されており、複数の前記圧着片のうちの少なくとも一部は、前記一部の領域に配されることで、前記カバーフィルムを貫通することなく前記回路の一部に食い込んでいることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、圧着片のうちの少なくとも一部は、カバーフィルムを貫通することなく、露出された回路の一部に食い込むように構成されるため、これらの圧着片と回路との接触面積を広くすることができる。また、この圧着部分においても、ベースフィルムが備えられているので、強度も確保される。
【0008】
複数の前記圧着片は、全て前記一部の領域に配されているとよい。
【0009】
また、複数の前記圧着片の少なくとも一部は、前記一部の領域以外の領域に配されてお
り、これらの圧着片は前記ベースフィルム及び前記カバーフィルムを貫通した状態で前記回路の一部に食い込んでいることも好適である。
【0010】
このような構成を採用すれば、一部の領域以外の領域に配された圧着片の部分において、強度をより一層確保させた状態で、圧着端子がフレキシブルプリント配線板に取り付けられる。
【0011】
前記カバーフィルムにおける前記一部の領域との境界線は波形となるように形成されているとよい。
【0012】
これにより、カバーフィルムに作用する応力を分散させることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、強度を保ちつつ、安定的な電気的接続を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は本発明の実施例1に係る圧着端子を備えるフレキシブルプリント配線板の概略構成図である。
図2図2は本発明の実施例1に係る圧着端子の概略構成図である。
図3図3は本発明の実施例1に係る圧着端子を備えるフレキシブルプリント配線板の模式的断面図である。
図4図4は本発明の実施例2に係る圧着端子を備えるフレキシブルプリント配線板の概略構成図である。
図5図5は本発明の実施例3に係る圧着端子を備えるフレキシブルプリント配線板の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0016】
(実施例1)
図1図3を参照して、本発明の実施例1に係る圧着端子を備えるフレキシブルプリント配線板について説明する。図1は本発明の実施例1に係る圧着端子を備えるフレキシブルプリント配線板の概略構成図であり、同図(a)は圧着端子を備えるフレキシブルプリント配線板の平面図の一部を示しており、同図(b)は圧着端子を備えるフレキシブルプリント配線板の側面図の一部を示している。図2は本発明の実施例1に係る圧着端子の概略構成図であり、同図(a)は圧着端子を後端から見た状態を示しており、同図(b)は圧着端子の側面図を示している。図3は本発明の実施例1に係る圧着端子を備えるフレキシブルプリント配線板の模式的断面図であり、図1(a)中のAA断面図である。なお、圧着端子について、図2では圧着される前の状態を示し、図1及び図3では、圧着された後の状態を示している。
【0017】
<圧着端子を備えるフレキシブルプリント配線板>
本実施例に係る圧着端子を備えるフレキシブルプリント配線板(以下、適宜、「端子付きFPC10」と称する。)の構成について説明する。端子付きFPC10は、フレキシブルプリント配線板(以下、「FPC100」と称する。)と、FPC100に取り付けられた圧着端子200とを備えている。
【0018】
FPC100は、ベースフィルム110と、ベースフィルム110の表面に設けられる金属箔(銅箔など)により構成される回路120と、回路120を挟み込むようにベースフィルム110に貼り合わされるカバーフィルム130とを有している。なお、ベースフィルム110とカバーフィルム130との間には、これらを貼り付けるための接着層(不図示)が形成されるのが一般的である。そして、FPC100の一部の領域においては、カバーフィルム130が設けられずに回路120の一部が露出されるように構成されている。以下、この「一部の領域」を「露出領域R」と称する。
【0019】
圧着端子200は、不図示の圧着治具や圧着装置によって、FPC100に取り付けられる。本実施例では、4つの圧着端子200がFPC100に取り付けられた例を示している。ただし、製品によって、FPC100に取り付けられる圧着端子200の数が様々であることは言うまでもない。
【0020】
本実施例に係る圧着端子200は、メス端子の場合を示しており、オス端子の端子先端部が挿入されるボックス部210と、オス端子の端子先端部を弾性的に挟み込むための舌片部211とを備えている。そして、本実施例に係る圧着端子200は、複数の圧着片220を備えている。複数の圧着片220は、幅方向(端子先端から後端に向かう方向に対して垂直な方向)の両側に交互に並ぶように設けられている。なお、本実施例においては、4つの圧着片220が設けられる構成を示しているが、圧着片220の数は適宜設定することができる。
【0021】
圧着片220は、圧着されることで、FPC100を貫通し、かつ折り曲げ加工が施されて回路120の一部に食い込むように構成されている。なお、本発明においては、上記のような圧着片220を備えていれば、各種公知の圧着端子を採用し得る。また、本実施例においては、圧着端子がメス端子の場合を示しているが、本発明における圧着端子は同様の圧着片を備えるオス端子にも適用できる。
【0022】
そして、本実施例に係る端子付きFPC10においては、複数の圧着片220は、全て露出領域Rに配されるように構成されている(図1(a)参照)。これにより、全ての圧着片220においては、カバーフィルム130を貫通することなく回路120の一部に食い込んでいる。
【0023】
<本実施例に係る圧着端子を備えるフレキシブルプリント配線板の優れた点>
本実施例に係る端子付きFPC10によれば、全ての圧着片220は、カバーフィルム130を貫通することなく、露出された回路120の一部に食い込むように構成されるため、これらの圧着片220と回路120との接触面積を広くすることができる。すなわち、圧着片220がカバーフィルム130を貫通した状態で回路120の一部に食い込む場合には、圧着片220と回路120との接続部付近にカバーフィルム130の一部が入り込んでしまい易く、圧着片220と回路120との接触面積が狭くなり易い。これに対して、露出された回路120の一部に圧着片220を食い込ます構成を採用することで、圧着片220と回路120との接触面積を広くすることができる。従って、電気的な接続を安定させることが可能となる。また、圧着部分においても、ベースフィルム110が備えられているので、強度も確保される。従って、強度を保ちつつ、安定的な電気的接続を可能とすることができる。このように、強度を保ちつつ、安定的な電気的接続が可能なため、本実施例に係る端子付きFPC10は、振動や衝撃が作用し易い自動車用バッテリの電圧監視用途に好適に用いることができる。ただし、本実施例に係る端子付きFPC10は、このような用途に限らず、各種装置に適用し得る。
【0024】
(実施例2)
図4には、本発明の実施例2が示されている。上記実施例1では、複数の圧着片が、全て露出領域Rに配される場合の構成を示したが、本実施例では、複数の圧着片の少なくとも一部が、露出領域以外の領域に配される場合の構成を示す。その他の構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0025】
図4は本発明の実施例2に係る圧着端子を備えるフレキシブルプリント配線板の概略構成図であり、同図(a)は圧着端子を備えるフレキシブルプリント配線板の平面図の一部を示しており、同図(b)は圧着端子を備えるフレキシブルプリント配線板の模式的断面図であり、同図(a)中のBB断面図である。
【0026】
本実施例に係る圧着端子を備えるフレキシブルプリント配線板(以下、適宜、「端子付きFPC10X」と称する。)の構成について説明する。本実施例に係る端子付きFPC10Xにおいても、実施例1の場合と同様に、FPC100と、FPC100に取り付けられた圧着端子200とを備えている。FPC100の基本的な構成については、上記実施例1の場合と同様である。また、圧着端子200の構成については、上記実施例1の場合と同様である。従って、これらの構成についての説明は省略する。
【0027】
そして、本実施例に係る端子付きFPC10Xにおいては、複数の圧着片220のうち少なくとも一部の圧着片220は露出領域Rに配され、残りの圧着片220は露出領域R以外の領域に配されている。なお、本実施例では、2つの圧着片220が露出領域Rに配され、残りの2つの圧着片220が露出領域R以外の領域に配されている。ただし、本発明においては、露出領域Rに配される圧着片と、露出領域R以外の領域に配される圧着片の配分は特に限定されるものではない。
【0028】
露出領域Rに配された圧着片220による圧着された状態については、実施例1において、説明した通りである。そして、露出領域R以外の領域に配された圧着片220においては、ベースフィルム110及びカバーフィルム130を貫通した状態で回路120の一部に食い込んでいる。
【0029】
以上のように本実施例に係る端子付きFPC10Xによれば、露出領域Rに配された圧着片220により、実施例1と同様の効果を得ることができる。そして、露出領域R以外の領域に配された圧着片220により、強度をより一層確保させた状態で、圧着端子200をFPC100に取り付けることができる。ここで、露出領域Rに配された圧着片220においては、強度は劣るものの、電気的接続の安定性に優れ、露出領域R以外の領域に配された圧着片220においては、電気的接続の安定性は劣るものの、強度は優れている。従って、これらのバランスを考慮して、使用環境等に応じて、露出領域Rに配される圧着片と、露出領域R以外の領域に配される圧着片の配分を設定するとよい。
【0030】
(実施例3)
図5には、本発明の実施例3が示されている。本実施例においては、上記実施例2で示した構成において、カバーフィルムにおける一部の領域(露出領域)との境界線が波形となるように形成される場合の構成を示す。その他の構成および作用については実施例1及び2と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0031】
図5は本発明の実施例2に係る圧着端子を備えるフレキシブルプリント配線板の概略構成図であり、より具体的には、圧着端子を備えるフレキシブルプリント配線板の平面図の一部を示している。
【0032】
本実施例に係る圧着端子を備えるフレキシブルプリント配線板(以下、適宜、「端子付きFPC10Y」と称する。)の構成について説明する。本実施例に係る端子付きFPC10Yにおいても、実施例1及び2の場合と同様に、FPC100と、FPC100に取り付けられた圧着端子200とを備えている。FPC100の基本的な構成については、上記実施例1の場合と同様である。また、圧着端子200の構成については、上記実施例1の場合と同様である。従って、これらの構成についての説明は省略する。
【0033】
そして、上記実施例2においては、カバーフィルム130における露出領域Rとの境界線が直線となるように形成されていたのに対して、本実施例においては、カバーフィルム130における露出領域Rとの境界線131が波形となるように形成される点のみが上記実施例2と異なっている。
【0034】
以上のように構成される本実施例に係る端子付きFPC10Yにおいても、上記実施例2の場合と同様の効果を得ることができることは言うまでもない。また、本実施例の場合には、カバーフィルム130における露出領域Rとの境界線131は波形となるように形成されているため、カバーフィルム130に作用する応力を分散させることができる。従って、カバーフィルム130が剥がれてしまうことをより確実に抑制することができる。
【符号の説明】
【0035】
10,10X,10Y 端子付きFPC
100 FPC
110 ベースフィルム
120 回路
130 カバーフィルム
131 境界線
200 圧着端子
210 ボックス部
211 舌片部
220 圧着片
R 露出領域
図1
図2
図3
図4
図5