(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】無線通信システムおよびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G08B 25/04 20060101AFI20241010BHJP
G06F 21/44 20130101ALI20241010BHJP
H04M 11/00 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
G08B25/04 H
G06F21/44
H04M11/00 302
(21)【出願番号】P 2020138459
(22)【出願日】2020-08-19
【審査請求日】2023-06-19
(31)【優先権主張番号】P 2019168911
(32)【優先日】2019-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(73)【特許権者】
【識別番号】000108085
【氏名又は名称】セコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 功昌
(72)【発明者】
【氏名】小暮 慶伍
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-053559(JP,A)
【文献】特開2017-027174(JP,A)
【文献】特開2013-210904(JP,A)
【文献】特開2011-205216(JP,A)
【文献】特開2004-023573(JP,A)
【文献】特開2013-114348(JP,A)
【文献】特開2017-090358(JP,A)
【文献】特開2009-005243(JP,A)
【文献】国際公開第2014/208045(WO,A1)
【文献】特開2016-149602(JP,A)
【文献】米国特許第06963282(US,B1)
【文献】特開2020-126650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 23/00 - 31/00
G08B 13/00 - 15/02
G08B 19/00 - 21/24
G08B 17/00
H04M 3/00
H04M 3/16 - 3/20
H04M 3/38 - 3/58
H04M 7/00 - 7/16
H04M 11/00 - 11/10
G06F 21/00
G06F 21/30 - 21/46
H04B 7/02 - 7/12
H04L 1/02 - 1/06
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
H04M 1/00
H04M 1/24 - 1/82
H04M 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セキュリティシステムに用いられる無線通信システムであって、
無線通信を実行可能な携帯装置と、
前記携帯装置と前記無線通信を行うことで前記携帯装置の認証のために用いられる認証情報を取得可能な設置装置と、
を備え、
前記携帯装置は、
前記無線通信を実行可能な携帯装置側無線通信部と、
前記携帯装置の振動の有無を検知する振動検知部と、
前記振動検知部において予め定められた第1期間前記振動が検知されない場合に、予め定められた信号である第1信号を、前記携帯装置側無線通信部を介して出力する第1信号送信部と、
前記振動検知部が、前記振動を検知していない未検知状態から前記振動を検知している検知状態に変化してから第2期間経過した後に、前記認証情報を、前記携帯装置側無線通信部を介して出力する認証情報送信部と、
予め定められた第2信号を受信する第2信号受信部と、
を有し、
前記設置装置は、
前記無線通信を実行可能な設置装置側無線通信部と、
前記設置装置側無線通信部を介して前記第1信号を受信する第1信号受信部と、
前記第1信号受信部により前記第1信号を受信した場合に、前記第2信号を、前記設置装置側無線通信部を介して出力する第2信号送信部と、
を有し、
前記認証情報送信部は、前記第2信号受信部により前記第2信号が受信され、その後に前記未検知状態から前記検知状態に変化した場合に、前記第2期間として前記第2信号を受信しない場合に比べてより短い期間を経過した後に、前記認証情報を出力する、セキュリティシステムに用いられる無線通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載のセキュリティシステムに用いられる無線通信システムにおいて、
前記設置装置は、前記取得した前記認証情報を用いて、前記携帯装置の認証を実行する、セキュリティシステムに用いられる無線通信システム。
【請求項3】
請求項1に記載のセキュリティシステムに用いられる無線通信システムにおいて、
前記セキュリティシステムは、前記携帯装置の認証を実行する制御装置を有し、
前記設置装置は、前記取得した前記認証情報を前記制御装置に対して送信する認証情報中継部をさらに有する、セキュリティシステムに用いられる無線通信システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のセキュリティシステムに用いられる無線通信システムにおいて、
前記認証情報送信部は、前記認証情報を第3期間ごとに繰り返し送信し、
前記認証情報送信部は、前記第2信号を受信した場合には、前記第2信号を受信しない場合に比べて前記第3期間を短く設定して前記認証情報を繰り返し送信する、セキュリティシステムに用いられる無線通信システム。
【請求項5】
請求項4に記載のセキュリティシステムに用いられる無線通信システムにおいて、
前記設置装置は、前記認証が失敗した場合に、認証失敗を示す信号である失敗信号を、前記設置装置側無線通信部を介して出力する失敗信号送信部を、さらに備え、
前記認証情報送信部は、前記失敗信号を受信した場合に、前記認証情報を前記第3期間ごとに繰り返し送信する、セキュリティシステムに用いられる無線通信システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のセキュリティシステムに用いられる無線通信システムにおいて、
前記携帯装置は、前記携帯装置の動作モードを、通常モードと、前記通常モードに比べて消費電力が少ないスリープモードとを含む複数の動作モードのいずれかに制御する動作モード制御部を、さらに備え、
前記動作モード制御部は、前記第1信号が出力された後に、前記動作モードを、前記スリープモードに制御する、セキュリティシステムに用いられる無線通信システム。
【請求項7】
セキュリティシステムに用いられる無線通信システムの制御方法であって、
前記無線通信システムは、
無線通信を実行可能な携帯装置と、
前記携帯装置と前記無線通信を行うことで前記携帯装置の認証のために用いられる認証情報を取得可能な設置装置と、
を有し
、
前記携帯装置において、前記携帯装置の振動の有無を検知する振動検知工程と、
前記携帯装置において、予め定められた第1期間前記振動が検知されない場合に、予め定められた信号である第1信号を、前記無線通信により出力する第1信号送信工程と、
前記設置装置において、前記無線通信を介して前記第1信号を受信する第1信号受信工程と、
前記設置装置において、前記第1信号を受信した場合に、第2信号を前記無線通信により出力する第2信号送信工程と、
前記携帯装置において、前記無線通信を介して前記第2信号を受信する第2信号受信工程と、
前記携帯装置において、前記振動を検知していない未検知状態から前記振動を検知している検知状態に変化してから第2期間経過した後に、前記認証情報を前記無線通信により出力する認証情報送信工程と、
を備え、
前記認証情報送信工程は、前記第2信号を受信し、その後に前記未検知状態から前記検知状態に変化した場合に、前記第2期間として前記第2信号を受信しない場合に比べてより短い期間を経過した後に、前記認証情報を出力する工程を含む、
セキュリティシステムに用いられる無線通信システムの制御方法。
【請求項8】
セキュリティシステムに用いられる無線通信システムが有する無線通信可能な携帯装置と設置装置とのうち、前記携帯装置が有するコンピュータに用いられるコンピュータプログラムであって
、
前記携帯装置の振動の有無を検知する振動検知機能と、
予め定められた第1期間前記振動が検知されない場合に、予め定められた信号である第1信号を、前記無線通信により出力する第1信号送信機能と、
前記振動を検知していない未検知状態から前記振動を検知している検知状態に変化してから第2期間経過した後
に前記携帯装置の認証のために用いられる認証情報を前記無線通信により出力する
機能であって、前記第1信号
に対して前記設置装置から出力された第2信号を受信し、その後に前記未検知状態から前記検知状態に変化した場合
は、前記第2期間として前記第2信号を受信しない場合に比べてより短い期間を経過した後に、前記認証情報を出力する
認証情報送信機能
と、
を前記コンピュータに実現させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、セキュリティシステムにおいて用いられる無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、無線タグと、無線タグの情報を無線通信により読み取る無線タグリーダとが監視等を行うためのセキュリティシステムにおいて用いられている。特許文献1のシステムにおいては、監視領域内に侵入した人が無線タグを携帯しているか否かを無線タグリーダを用いて判断し、また、無線タグの方向を無線タグリーダを用いて推定する。
無線タグは、その携帯性のため電源を内蔵する。このため、省電力の要請から、通常はスリープモードで動作し、所定の条件が満たされた場合に起動して無線タグリーダと無線通信を行う構成が採用され得る。例えば、振動を検知した場合に起動して無線タグリーダと無線通信を行い、かかる無線通信を利用して認証が行われ、認証成功の場合には、所定領域内の監視状態を非監視状態から監視状態に移行させる、或いはその逆に、監視状態から非監視状態に移行させる構成が採用され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成においては、例えば、家屋内を監視領域として無線タグリーダが玄関近傍に配置されており、帰宅したユーザが無線タグを玄関近傍に置いたままにしておいた場合、次回ユーザが外出するために無線タグを持ち出そうとした際に、無線タグが起動してから無線タグリーダとの通信圏外に至るまでの時間が短く、認証に必要な通信手順を完了できないおそれがある。この場合、認証が完了できずに非監視状態から監視状態に移行できない可能性がある。
【0005】
上記問題は、無線タグおよび無線タグリーダに限らず、携帯可能な任意の携帯装置と、かかる携帯装置から認証情報を取得可能な任意の設置装置とを備えるセキュリティシステムにおいて共通する。また、家屋内を監視領域として不法侵入者の有無を監視するセキュリティシステムに限らず、単に入退室を管理するだけのセキュリティシステムなど、携帯装置と設置装置とが無線通信を行って認証を行う任意のセキュリティシステム等においても共通する。このようなことから、セキュリティシステムにおいて、設置装置近傍に携帯装置が置かれた状態から携帯装置が持ち出される状況において携帯装置の認証が完了しないことを抑制可能な技術が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本開示の一形態によれば、セキュリティシステムにおいて用いられる無線通信システムが提供される。この無線通信システムは、無線通信を実行可能な携帯装置と、前記携帯装置と前記無線通信を行うことで前記携帯装置の認証のために用いられる認証情報を取得可能な設置装置と、を備え、前記携帯装置は、前記無線通信を実行可能な携帯装置側無線通信部と、前記携帯装置の振動の有無を検知する振動検知部と、前記振動検知部において予め定められた第1期間前記振動が検知されない場合に、予め定められた信号である第1信号を、前記携帯装置側無線通信部を介して出力する第1信号送信部と、前記振動検知部が、前記振動を検知していない未検知状態から前記振動を検知している検知状態に変化してから第2期間経過した後に、前記認証情報を、前記携帯装置側無線通信部を介して出力する認証情報送信部と、予め定められた第2信号を受信する第2信号受信部と、を有し、前記設置装置は、前記無線通信を実行可能な設置装置側無線通信部と、前記設置装置側無線通信部を介して前記第1信号を受信する第1信号受信部と、前記第1信号受信部により前記第1信号を受信した場合に、前記第2信号を、前記設置装置側無線通信部を介して出力する第2信号送信部と、を有し、前記認証情報送信部は、前記第2信号受信部により前記第2信号が受信され、その後に前記未検知状態から前記検知状態に変化した場合に、前記第2期間として前記第2信号を受信しない場合に比べてより短い期間を経過した後に、前記認証情報を出力する。
この形態の無線通信システムによれば、認証情報送信部は、第2信号受信部により第2信号を受信し、その後に未検知状態から検知状態に変化した場合に、第2期間として第2信号を受信しない場合に比べてより短い期間を経過した後に、認証情報を出力する。このため、携帯装置において設置装置から第2信号を受信できる状況、つまり、携帯装置と設置装置とが互いに第1信号と第2信号のやりとりが可能な程度の比較的狭い範囲内に存在する場合には、振動の未検知状態から検知状態に変化した場合に、第2期間として第2信号を受信しない場合に比べてより短い期間を経過した後に認証情報を出力できる。このため、ユーザが無線タグを持ち出そうとした際に、携帯装置が未検知状態から検知状態に変化してから設置装置との通信圏外に至るまでの間に、認証が完了できなくなることを抑制できる。したがって、設置装置近傍に携帯装置が置かれた状態から携帯装置が持ち出される状況において携帯装置の認証が完了しないことを抑制できる。
(2)上記形態のセキュリティシステムにおいて用いられる無線通信システムにおいて、前記設置装置は、前記取得した前記認証情報を用いて、前記携帯装置の認証を実行してもよい。
この形態のセキュリティシステムにおいて用いられる無線通信システムによれば、設置装置が携帯装置の認証を実行するので、携帯装置および設置装置とは異なる他の装置が認証を実行する構成に比べて、他の装置への認証情報や認証結果の送受信に要する時間を省略でき、認証に要する時間を短縮できる。
(3)上記(1)の形態のセキュリティシステムにおいて用いられる無線通信システムにおいて、前記セキュリティシステムは、前記携帯装置の認証を実行する制御装置を有し、前記設置装置は、前記取得した前記認証情報を前記制御装置に対して送信する認証情報中継部をさらに有してもよい。
この形態のセキュリティシステムにおいて用いられる無線通信システムによれば、携帯装置の認証を、設置装置とは異なる制御装置が実行し、設置装置は認証情報を制御装置に送信するので、設置装置の構成を簡素化して、設置装置の小型化、省電力化、低コスト化を図ることができる。
(4)上記形態のセキュリティシステムにおいて用いられる無線通信システムにおいて、前記認証情報送信部は、前記認証情報を第3期間ごとに繰り返し送信し、前記認証情報送信部は、前記第2信号を受信した場合には、前記第2信号を受信しない場合に比べて前記第3期間を短く設定して前記認証情報を繰り返し送信してもよい。
この形態の無線通信システムによれば、認証情報送信部は、第2信号を受信した場合には、第2信号を受信しない場合に比べて第3期間を短く設定して認証情報を繰り返し送信するので、携帯装置において設置装置から第2信号を受信できる状況、つまり、携帯装置と設置装置とが互いに第1信号と第2信号のやりとりが可能な程度の比較的狭い範囲内に存在する場合には、より短い時間間隔で認証情報を繰り返し送信できる。このため、一時的な通信障害などにより認証情報が制御装置に送られないことが生じた場合であっても、認証情報送信のリトライ間隔を短くできるので、携帯装置が通信圏外に至るまでの間に認証情報が制御装置に届かないことを抑制できる。
(5)上記形態のセキュリティシステムにおいて用いられる無線通信システムにおいて、前記設置装置は、前記認証が失敗した場合に、認証失敗を示す信号である失敗信号を、前記設置装置側無線通信部を介して出力する失敗信号送信部を、さらに備え、前記認証情報送信部は、前記失敗信号を受信した場合に、前記認証情報を前記第3期間ごとに繰り返し送信してもよい。
この形態の無線通信システムによれば、認証情報送信部は、失敗信号を受信した場合に、認証情報を第3期間ごとに繰り返し送信するので、失敗信号の受信の如何にかかわらず認証情報を繰り返し送信する構成に比べて、無駄な送信処理を行わずに済み、携帯装置の消費電力を低減できる。
(6)上記形態のセキュリティシステムにおいて用いられる無線通信システムにおいて、前記携帯装置は、前記携帯装置の動作モードを、通常モードと、前記通常モードに比べて消費電力が少ないスリープモードとを含む複数の動作モードのいずれかに制御する動作モード制御部を、さらに備え、前記動作モード制御部は、前記第1信号が出力された後に、前記動作モードを、前記スリープモードに制御してもよい。
この形態の無線通信システムにおいて、動作モード制御部は、第1信号が出力された後に、動作モードを、スリープモードに制御するので、第1信号が出力された後に携帯装置の動作モードをスリープモードに切り替えることができ、携帯装置の消費電力を抑えることができる。
(7)本開示の他の形態によれば、セキュリティシステムにおいて用いられる無線通信システムが提供される。この無線通信システムは、無線通信を実行可能な携帯装置と、前記携帯装置と前記無線通信を行うことで前記携帯装置の認証のために用いられる認証情報を取得可能な設置装置と、を備え、前記携帯装置は、前記無線通信を実行可能な携帯装置側無線通信部と、自身の起動から前記設置装置との認証通信を開始するまでに要する時間である起動通信時間を、前記設置装置との通信が実行されるたびに記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶されている前記起動通信時間の統計値を演算する統計値演算部と、前記認証通信の開始前に前記設置装置を探索するための無線信号を出力する際の出力電波強度を調整する電波強度調整部であって、前記統計値が小さい場合に、前記統計値が大きい場合に比べて前記出力電波強度をより弱く調整する電波強度調整部と、を有する。
この形態の無線通信システムによれば、統計値が小さい場合に、統計値が大きい場合に比べて出力電波強度がより弱く調整されるので、携帯装置100の消費電力が抑制される。また、設置装置の近傍に携帯装置が位置しているか否かの特定を、統計値を用いて簡易に且つ精度良く実現できる。
(8)本開示の他の形態によれば、セキュリティシステムにおいて用いられる無線通信システムが提供される。この無線通信システムは、無線通信を実行可能な携帯装置と、前記携帯装置と前記無線通信を行うことで前記携帯装置の認証のために用いられる認証情報を取得可能な設置装置と、を備え、前記携帯装置は、前記無線通信を実行可能な携帯装置側無線通信部と、自身の起動から前記設置装置との認証通信を開始するまでに要する時間である起動通信時間を、前記設置装置との通信が実行されるたびに記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶されている前記起動通信時間の統計値を演算する統計値演算部と、前記認証通信の開始前に前記設置装置を探索するための無線信号を出力する際の送信間隔を調整する送信間隔調整部であって、前記統計値が小さい場合に、前記統計値が大きい場合に比べて前記送信間隔をより短く調整する送信間隔調整部と、を有する
この形態の無線通信システムによれば、統計値が小さい場合に、統計値が大きい場合に比べて送信間隔が短く調整されるので、携帯装置と設置装置との距離が近い場合に、接続通信が未完了で携帯装置が設置装置の通信圏外となることを抑制できる。また、設置装置の近傍に携帯装置100が位置しているか否かの特定を、統計値を用いて簡易に且つ精度良く実現できる。
【0008】
本開示は、無線通信システム以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、無線通信システムを備えるセキュリティシステム、各システムの機能や各方法を実現するためのコンピュータプログラムを記憶した記憶媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施形態としての無線通信システムを適用したセキュリティシステムの利用例を模式的に示す説明図である。
【
図2】本開示の一実施形態としての無線通信システムを適用したセキュリティシステムの利用例を模式的に示す説明図である。
【
図3】無線通信システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図4】携帯装置の動作モードが通常モードからスリープモードに切り替わる際の携帯装置の動作モードの遷移と、携帯装置と設置装置とでやりとりされる信号を模式的に示す説明図である。
【
図5】携帯装置の動作モードがスリープモードから通常モードに切り替わる際の携帯装置の動作モードの遷移と、携帯装置と設置装置とでやりとりされる信号を模式的に示す説明図である。
【
図6】携帯装置の振動未検知を検知してからスリープモードへ切り替わるまでの処理手順を示すシーケンス図である。
【
図7】携帯装置の振動を検知してからユーザ操作に伴い家屋内が防犯状態に設定されるまでの処理手順を示すシーケンス図である。
【
図8】第2実施形態の無線通信システムの構成を示すブロック図である。
【
図9】第2実施形態の無線通信システムにおける認証処理を示すフローチャートである。
【
図10】第3実施形態における無線通信システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図11A】記憶部に記憶される起動通信時間の例を示す説明図である。
【
図11B】携帯装置と設置装置との間における通信シーケンス例を示す説明図である。
【
図12】第3実施形態の無線通信システムにおける電波強度制御処理を示すフローチャートである。
【
図13】電波強度制御処理が実行された場合における消費電力の変化の一例を示す説明図である。
【
図14】第4実施形態における無線通信システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図15】第4実施形態において電波強度制御処理が実行された場合における消費電力の変化の一例を示す説明図である。
【
図16】第5実施形態における無線通信システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図17】第5実施形態において電波強度制御処理が実行された場合における消費電力の変化の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
A.第1実施形態:
A1.システム構成:
図1および
図2は、本開示の一実施形態としての無線通信システム10を適用したセキュリティシステムの利用例を模式的に示す説明図である。無線通信システム10は、携帯装置100と設置装置200とを備え、セキュリティシステムにおいて用いられる。本実施形態において、セキュリティシステムは、住居等の家屋内の異常を検出して報知などの対処を行う、いわゆるホームセキュリティシステムである。携帯装置100は、ユーザにより携帯される。設置装置200は、本実施形態では、玄関に設置されている。なお、設置とは、玄関に取り付けられているだけでなく、棚に置かれていてもよい。
【0011】
図1および
図2に示すように、セキュリティシステムは、ユーザが携帯装置100を携帯した状態において設置装置200を操作することにより、家屋内を防犯状態に設定したり、防犯状態を解除したりすることを実現する。防犯状態では、例えば、窓や扉の開閉動作の有無が、ユーザやセキュリティ会社に報知される。そして、
図1に示すように、ユーザは、携帯装置100を所持して帰宅した際に、玄関付近の設置装置200の側に携帯装置100を置いた後、設置装置200の図示しない操作ボタンを押下することにより、家屋内の防犯状態を解除できる。また、
図2に示すように、ユーザは、外出時に、玄関近傍に置かれた携帯装置100を所持し、設置装置200の図示しない操作ボタンを押下することにより、家屋内を防犯状態に設定できる。但し、
図1および
図2のいずれの状況においても、携帯装置100が正規の携帯装置であることを確認するため、携帯装置100の認証のために用いられる認証情報を用いて、携帯装置100の認証が実行される。具体的には、携帯装置100に予め設定されているID等の認証情報が、設置装置200を介してホームセキュリティシステムが有する図示しない認証用の制御装置(後述の制御装置300)に送信され、認証が行われる。認証が成功した場合には、設置装置200での操作に応じて防犯状態の設定および解除が実行され、認証が失敗した場合には、設置装置200での操作は無効となる。無線通信システム10は、携帯装置100と設置装置200との間で無線通信を行い、携帯装置100から認証情報を取得可能であり、図示しないホームセキュリティシステムが有する認証用の制御装置(後述の制御装置300)に中継する。
【0012】
図3は、無線通信システム10の機能構成を示すブロック図である。携帯装置100は、電池によって動作するアクティブタイプの無線タグであり、状況に応じて動作モードを通常モードとスリープモードとのいずれか一方に選択的に切り替えて設定することにより、電池の消費を抑えている。具体的には、自身が携帯されている状態であるか否かを振動の有無により特定し、振動が無い場合、より具体的には、振動が所定時間継続して検出されない場合には、携帯されていない状態であると特定して、自身の動作モードをスリープモードに設定する。スリープモードでは、自身の振動の有無を検知する処理およびスリープモードから通常モードに復帰するための処理のみが実行可能であり、他の処理は停止している。他方、振動が有る場合、より具体的には、振動が所定時間継続して検出される場合には、携帯されている状態であると特定して、動作状態は、スリープモードから通常モードへと切り替わる。
【0013】
携帯装置100は、携帯装置側無線通信部110と、携帯装置側制御部120と、記憶部130と、振動センサ140とを備える。携帯装置側無線通信部110と、携帯装置側制御部120と、記憶部130と、振動センサ140とは、それぞれ内部バスに接続され、互いにデータのやりとりが可能に構成されている。
図3に示すように、携帯装置100は、携帯装置側無線通信部110を介して、設置装置200の設置装置側無線通信部210と無線接続可能に構成されている。
【0014】
携帯装置側無線通信部110は、発振器、変調回路、増幅回路、符号化回路、およびアンテナなどを有し、無線通信を実行する。かかる無線通信としては、例えば、426MHz帯や920MHz帯の周波数帯域を利用する特定小電力無線を用いてもよい。また例えば、IEEE802.11において規定される無線LAN(Local Area Network)を用いてもよい。
【0015】
携帯装置側制御部120は、CPU、ROM、RAMを備えるコンピュータとして構成されている。かかるCPUは、ROMに記憶されているプログラムを実行することにより、振動検知部121と、停止信号送信部122と、認証情報送信部123と、動作モード制御部124と、フラグ制御部125、応答信号受信部126として機能する。振動検知部121は、振動センサ140の検出結果に基づき携帯装置100自身の振動の有無を検知する。振動検知部121は、携帯装置100の振動有りと検知した場合は、携帯装置側無線通信部110を介して振動検知信号を設置装置200へ送信する。
【0016】
停止信号送信部122は、振動検知部121によって、予め定められた第1期間連続して振動が検知されない場合、予め定められた信号である停止信号を、携帯装置側無線通信部110を介して無線出力して設置装置200へ送信する。ここで、振動検知部121によって携帯装置100の振動が検知されなくなってから携帯装置100の動作モードが後述するスリープモードに変更するまでの間をスリープ待機状態と呼ぶ。このスリープ待機状態を経て、携帯装置100の動作モードはスリープモードに切り替わる。
【0017】
認証情報送信部123は、振動検知部121により振動が検知されない未検知状態から振動が検知される検知状態に変化してから、後述する第2期間が経過した後に、携帯装置100の認証情報を、携帯装置側無線通信部110を介して無線出力して設置装置200へ送信する。
【0018】
動作モード制御部124は、携帯装置100の動作モードが、通常モードまたはスリープモードのいずれか一方に選択的に設定されるように制御する。
【0019】
フラグ制御部125は、玄関付近フラグをオンまたはオフに設定する。玄関付近フラグとは、携帯装置100が玄関付近、より具体的には、設置装置200と無線通信可能な領域に存在するか否かを示すフラグであり、かかる領域に携帯装置100が存在する場合には玄関フラグはオンに設定され、かかる領域に携帯装置100が存在しない場合には玄関フラグはオフに設定される。フラグ制御部125は、携帯装置100が設置装置200から応答信号を受信した場合に、玄関付近フラグをオンに設定する。また、防犯状態が開始された旨の通知を設置装置200から受信した場合に、フラグ制御部125は、玄関付近フラグをオフに設定する。
【0020】
応答信号受信部126は、後述する応答信号送信部222から送られる予め定められた応答信号を、携帯装置側無線通信部110を介して受信する。
【0021】
記憶部130には、無線通信システム10の動作に必要なパラメータの値が記憶されている。例えば、上述の第1期間や第2期間の値が予め記憶されている。
【0022】
設置装置200は、携帯装置100と無線通信を行なうと共に、携帯装置100と制御装置300との間でやり取りされるデータ、例えば、認証情報を中継する。また、設置装置200は、図示しない操作部を備え、ユーザによるセキュリティに関わる操作の入力を受け付ける。設置装置200は、設置装置側無線通信部210と、設置装置側制御部220とを備える。設置装置側無線通信部210と設置装置側制御部220とは、それぞれ内部バスに接続され、互いにデータのやりとりが可能に構成されている。
【0023】
設置装置側無線通信部210は、携帯装置側無線通信部110と同様に、発振器、変調回路、増幅回路、符号化回路、およびアンテナなどを有し、携帯装置100および制御装置300と無線通信を実行する。かかる無線通信として、上述した426MHz帯や920MHz帯の周波数帯域を利用する特定小電力無線を用いてもよい。
【0024】
設置装置側制御部220は、応答信号送信部222と、停止信号受信部223と、認証情報中継部224とを備える。停止信号受信部223が携帯装置100から停止信号を受信した場合、応答信号送信部222は、予め定められた応答信号を、設置装置側無線通信部210を介して無線出力して携帯装置100へ送信する。したがって、携帯装置100では、応答信号受信部126において応答信号を受信することにより、動作モードが通常モードからスリープモードへ変更する前に、携帯装置100の位置が玄関付近であること、より正確には、設置装置200と無線通信可能な範囲、すなわち、電波の届く範囲内であることを特定できる。これに対して、携帯装置100の応答信号受信部126が応答信号を受信しなかった場合は、携帯装置100の位置が玄関付近ではないことを特定できる。
【0025】
認証情報中継部224は、携帯装置100から認証情報を受信した場合に、設置装置側無線通信部210を介して、取得した認証情報を制御装置300に送信する、いわゆる中継する役割を担う。
【0026】
制御装置300は、携帯装置100の認証を実行すると共に、設置装置200において受け付けられるユーザ操作に応じた要求を実行する。例えば、ユーザ操作が「防犯状態への設定」を要求する操作である場合には、家屋内を防犯状態に設定する。
【0027】
制御装置300は、制御装置側無線通信部310と、制御部320を備える。制御装置側無線通信部310は、発振器、変調回路、増幅回路、符号化回路、およびアンテナなどを有し、無線通信を実行する。
【0028】
制御部320は、認証部322を備える。認証部322は、設置装置200から中継されて受信した認証情報を基に認証を行う。具体的には、認証部322は、受信した認証情報のデータと予め登録されている認証情報のデータとを照合する。認証部322は、照合の結果、受信した認証情報のデータが予め登録されている認証情報のデータと一致する場合は、制御装置側無線通信部310を介して設置装置200へ認証成功の結果を送信する。認証部322は、照合の結果、受信した認証情報のデータが予め登録されている認証情報のデータと一致しない場合は、制御装置側無線通信部310を介して設置装置200へ認証失敗の結果を送信する。
【0029】
停止信号は、特許請求の範囲における第1信号に相当し、応答信号は第2信号に相当する。また、停止信号送信部122は、特許請求の範囲における第1信号送信部に相当し、停止信号受信部223は第1信号受信部に相当し、応答信号送信部222は第2信号送信部に相当し、応答信号受信部126は第2信号受信部に相当する。
【0030】
A2.処理の概略:
図4および
図5を用いて、携帯装置100および設置装置200における処理の概略を説明する。
図4は、携帯装置100の動作モードが通常モードからスリープモードに切り替わる際の携帯装置100の動作モードの遷移と、携帯装置100と設置装置200とでやりとりされる信号を模式的に示す説明図である。
図4に示す例では、携帯装置100の動作モードは、通常モード、スリープ待機状態、スリープモードに、この順序で切り替わっている。この携帯装置100の動作モードの切り替えは、例えば
図4に示すように、ユーザの帰宅時に生じ得る。
【0031】
携帯装置100では、振動検知部121により振動が検知されると、通常モードで動作し、所定の時間間隔で認証情報を含む信号rc1(以下、「認証信号rc1」と呼ぶ)を無線出力する。そして、
図4に示すように、ユーザの帰宅時に携帯装置100が設置装置200の近傍に位置する場合には、認証信号rc1が設置装置200によって受信され、認証が実行される。携帯装置100が玄関の棚に載置される等などにより振動が検出されなくなると、通常モードからスリープ待機状態に移行し、認証信号rc1の定期的な出力は停止する。そして、スリープ待機状態の開始から予め定められた第1期間連続して振動が検出されない場合、携帯装置100は、停止信号rc2を送信する。本実施形態において第1期間は10秒間である。なお、10秒間に限らず任意の時間であってもよい。設置装置200は、停止信号rc2を受信した場合には、応答信号rc3を出力する。携帯装置100が設置装置200の近傍に配置されている場合には、上述の停止信号rc2および応答信号rc3のやりとりが実現される。その後、携帯装置100の動作モードは、スリープ待機状態の開始から予め定められた期間(第1期間よりも長い期間)経過後にスリープモードに切り替わる。
【0032】
図5は、携帯装置100の動作モードがスリープモードから通常モードに切り替わる際の携帯装置100の動作モードの遷移と、携帯装置100と設置装置200とでやりとりされる信号を模式的に示す説明図である。
図5の例では、携帯装置100の動作モードは、スリープモードから振動検知期間の後、通常モードへと切り替わる。このような動作モードの遷移は、例えば
図5に示すように、ユーザが携帯装置100を携帯して外出する際に生じる。
図5に示すように、外出しようとするユーザが携帯装置100を所持すると、振動が検出され始め、第2期間連続して振動が検出されると、携帯装置100の動作モードはスリープモードから通常モードに切り替わり、認証信号rc1の送信が開始される。そして、かかる認証信号rc1に含まれる認証情報に基づき認証が実行されて成功すると、その後、ユーザによる設置装置200の操作(防犯状態に設定する操作)が受け付けられ、その後、家屋内は防犯状態に設定されることとなる。第2期間連続して振動が検出されてから通常モードに切り替わることで、ユーザが所持することで検出できる振動以外で通常モードに切り替わってしまうことを抑制でき、無駄に認証信号を送信して電池寿命が短くなってしまうことを防止できる。
【0033】
このような
図5に示す信号のやり取りでは、携帯装置100が設置装置200の近傍、すなわち玄関の近傍に載置された状態で動作モードがスリープモードに切り替わった場合には、通常モードに切り替わってから認証が完了するまでの間にユーザが屋外に出てしまい、携帯装置100と設置装置200との間の認証が完了しないおそれがある。しかし、本実施形態の無線通信システム10では、上述の第2期間を可変に設定することにより、上記のような場合であっても、認証が完了しなくなることを抑制している。以下、詳細な手順を
図6、
図7を用いて説明する。
【0034】
A3.処理の詳細:
図6は、携帯装置100の振動未検知を検知してからスリープモードへ切り替わるまでの処理手順を示すシーケンス図である。
図6では、
図4に示す停止信号rc2のやりとり、および応答信号rc3のやりとりを具体的に示している。
図7は、携帯装置100の振動を検知してからユーザ操作に伴い家屋内が防犯状態に設定されるまでの処理手順を示すシーケンス図である。
図7では、
図5に示す処理を具体的に示している。なお、
図6のシーケンスと
図7のシーケンスとは、ユーザの外出および帰宅が行われるたびに、交互に実行されることなる。
図6に示すシーケンス図の処理の前には、
図7に示す認証情報の通信処理がなされており、無線通信システム10は防犯解除状態に切り換えられている。
【0035】
図6に示すように、携帯装置100における振動検知部121が振動の未検知を検知する(ステップS102)。振動検知部121によって、予め定められた第1期間連続して振動の未検知を検知する(ステップS104)。携帯装置100における停止信号送信部122は、予め定められた信号である停止信号を、携帯装置側無線通信部110を介して無線出力して送信する(ステップS106)。上述のように、携帯装置100が載置された場所が、玄関近傍であり設置装置200と通信可能な位置であれば、
図6に示すように、停止信号は設置装置200の停止信号受信部223により受信される。設置装置200は、停止信号を受信すると、設置装置側無線通信部210を介して、受信した停止信号を制御装置300へと送信する(ステップS108)。
【0036】
また、設置装置200における応答信号送信部222は、停止信号受信部223が停止信号を受信した場合に、応答信号を、設置装置側無線通信部210を介して無線出力して送信する(ステップS110)。上述のように、携帯装置100が載置された場所が、玄関近傍であり設置装置200と通信可能な位置であれば、応答信号は携帯装置100の応答信号受信部126により受信される。フラグ制御部125は、応答信号受信部126により応答信号が受信された場合に、玄関フラグをONに設定する(ステップS112)。動作モード制御部124は、動作モードをスリープモードへ切り替える(ステップS114)。
【0037】
図7に示すように、振動検知部121が振動を検知する(ステップS202)。かかる振動検知が第2期間連続する場合、振動検知部121は、携帯装置側無線通信部110を介して振動検知信号を設置装置200へ送信する(ステップS204)。設置装置200は、設置装置側無線通信部210を介して、振動検知信号を受信した旨を通知する信号であるAckを携帯装置100へ送信する(ステップS206)。
【0038】
図6の処理において、フラグ制御部125の玄関付近フラグはONに設定されているので、第2期間として
図5における振動を検知する時間が、玄関近傍フラグがOFFである場合の時間T2に比べてより短い時間T1に短縮されて、認証情報送信が開始される。
図7に示すように、認証情報送信部123は、携帯装置側無線通信部110を介して認証情報を設置装置200へ送信する(ステップS208)。設置装置200における認証情報中継部224は、設置装置側無線通信部210を介して、受信した認証情報を制御装置300へ中継する(ステップS210)。
【0039】
制御装置300における認証部322において、認証が行われる(ステップS212)。前述したように、受信した認証情報と、認証部322に予め登録されている認証データとの照合が実行される。例えば、IDの照合である。制御装置側無線通信部310を介して、照合による認証結果が設置装置200へと送信される(ステップS214)。設置装置200は、設置装置側無線通信部210を介して認証結果を携帯装置100へと中継する(ステップS216)。
【0040】
認証結果が成功のとき、設置装置のボタンが押下されると(ステップS218)、設置装置200から設置装置側無線通信部210を介して、制御装置300に対して防犯開始要求の送信がなされる(ステップS220)。制御装置300は、制御装置側無線通信部310を介して、防犯状態へ移行したことを通知する送信を設置装置200へ行う(ステップS222)。設置装置200は、設置装置側無線通信部210を介して、携帯装置100に対して防犯状態へ移行した旨を中継する(ステップS224)。携帯装置100におけるフラグ制御部125は、玄関付近フラグをOFFに設定する(ステップS226)。
【0041】
以上説明した第1実施形態の無線通信システム10では、携帯装置100は、振動検知部121において予め定められた第1期間振動が検知されない場合に、予め定められた信号である停止信号を、携帯装置側無線通信部110を介して出力する停止信号送信部122を有し、設置装置200は、停止信号受信部223が停止信号を受信した場合に、予め定められた応答信号を、設置装置側無線通信部210を介して送信する応答信号送信部222を有しているので、携帯装置100は、設置装置200と通信可能な領域内である玄関付近に位置しているかを特定できる。また、携帯装置100は、振動検知部121が、振動を検知していない未検知状態から振動を検知している検知状態に変化してから第2期間経過した後に、認証情報を、携帯装置側無線通信部110を介して送信する認証情報送信部123を有する。そして、認証情報送信部123は、応答信号受信部126により応答信号を受信され、その後に未検知状態から検知状態に変化した場合に、第2期間として応答信号を受信しない場合に比べてより短い期間を経過した後に、認証情報を出力する。このため、ユーザが外出するために携帯装置100を持ち出そうとした際に、携帯装置100が起動してから設置装置200との通信圏外に至るまでの時間が短く、認証に必要な通信手順を完了できずに非監視状態から監視状態に移行できなくなることを抑制できる。したがって、設置装置200の近傍に携帯装置100が置かれた状態から携帯装置100が持ち出される状況において携帯装置100の認証が完了しないことを抑制できる。
【0042】
また、無線通信システム10において、携帯装置100は、携帯装置100の動作モードを、通常モードと、通常モードに比べて消費電力が少ないスリープモードとを含む複数の動作モードのいずれかに制御する動作モード制御部124を、さらに備え、動作モード制御部124は、停止信号が出力された後に、動作モードを、スリープモードに制御してもよい。このため、スリープモードへの切り替わりにより、消費電力を抑え電池寿命を長くすることができる。
【0043】
B.第2実施形態:
第2実施形態の無線通信システム10は、設置装置200において失敗信号送信部226をさらに備える点と、認証処理の詳細手順において、第1実施形態の無線通信システム10と異なる。第2実施形態の無線通信システム10における他の構成は、第1実施形態の無線通信システム10と同じであるので、同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。第2実施形態の認証処理では、認証情報送信部123は、第3期間ごとに認証情報を繰り返し送信し、失敗信号を受信した場合において、応答信号を受信した場合には、応答信号を受信しない場合に比べて第3期間を短く設定して送信が行われる。
【0044】
図8は、第2実施形態の無線通信システム10の構成を示すブロック図である。
図8に示す失敗信号送信部226は、携帯装置100へ失敗信号を送信する役割を担う。失敗信号とは、認証が失敗したことを示す信号である。設置装置200は、制御装置300の認証部322において認証が失敗したことを制御装置300から通知された場合に、失敗信号送信部226は、設置装置側無線通信部210を介して失敗信号を無線出力する。
【0045】
図9は、第2実施形態の無線通信システム10における認証処理を示すフローチャートである。
図9に示す認証処理は、振動検知部121において、振動が検知されない未検知状態から振動が検知される検知状態に変化してから第2期間経過した後に始まる。認証情報送信部123は、認証情報である認証電文を作成する(ステップS331)。認証電文は、例えば、機器固有の複数番号を含み、かかる番号が1つ1つ送信される。認証情報送信部123は、全電文が送信されたか判定する(ステップS332)。認証情報送信部123が全電文を送信したと判定した場合には(ステップS332:Yes)、認証処理が終了する。認証情報送信部123が全電文を送信していないと判定した場合には(ステップS332:No)、認証情報送信部123は、携帯装置側無線通信部110を介して設置装置200へ電文を送信する(ステップS333)。ステップS333の処理は、
図7におけるステップS208に相当する。
【0046】
認証情報送信部123は、送信間隔である第3期間の時間、待機する(ステップS334)。待機する送信間隔は、携帯装置100が設置装置200から応答信号を受信していた場合には、応答信号を受信していない場合に比べて短く設定されている。認証結果が設置装置200経由で制御装置300から携帯装置100へ通知されたことによって、認証情報送信部123が電文送信成功と判定した場合は(ステップS335:Yes)、ステップS332へ戻る。認証情報送信部123が、電文送信が成功していないと判定した場合は(ステップS335:No)、ステップS333へ戻る。
図9に示される認証処理が終了すると、
図7におけるステップS218の処理であるボタン押下される。
【0047】
以上説明した第2実施形態の無線通信システム10によれば、第1実施形態の無線通信システム10と同様な効果を奏する。加えて、設置装置200は、制御装置300において認証が失敗したことを制御装置300から通知された場合に、認証失敗を示す信号である失敗信号を、設置装置側無線通信部210を介して出力する失敗信号送信部226を備える。また、認証情報送信部123は、認証情報を第3期間ごとに繰り返し送信し、失敗信号を受信した場合において、応答信号を受信した場合には、応答信号を受信しない場合に比べて第3期間を短く設定する。したがって、認証情報送信部123は、失敗信号を受信した場合に、認証情報を第3期間ごとに繰り返し送信するので、失敗信号の受信の如何にかかわらず認証情報を繰り返し送信する構成に比べて、無駄な送信処理を行わずに済み、携帯装置100の消費電力を低減できる。
【0048】
C.第3実施形態:
図10は、第3実施形態における無線通信システム10aの機能構成を示すブロック図である。第3実施形態の無線通信システム10aは、携帯装置100において停止信号送信部122と、応答信号受信部126とに代えて、記憶部130aと、統計値演算部127と、送信間隔調整部128と、電波強度調整部129と、フラグ制御部125aとを備える点と、設置装置200において応答信号送信部222と、停止信号受信部223とを備えない点と、電波強度制御処理が実行される点とにおいて、第1実施形態の無線通信システム10と異なる。第3実施形態の無線通信システム10aにおける他の構成は、第1実施形態の無線通信システム10と同じであるので、同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0049】
記憶部130aは、携帯装置100が起動してから認証通信を開始するまでに要する時間(以下、「起動通信時間」と呼ぶ)を、携帯装置100と設置装置200との通信が実行されるたびに記憶する。起動通信時間について、
図11Aと
図11Bを用いて説明する。
【0050】
図11Aは、記憶部130aに記憶される起動通信時間の例を示す説明図である。
図11Bは、携帯装置100と設置装置200との間における通信シーケンス例を示す説明図である。
【0051】
図11Bに示すように、携帯装置100では、振動が検出されて起動されると、アドバタイズ信号rs1、rs2が所定の時間間隔ごとに出力される。このアドバタイズ信号rs1、rs2は、携帯装置100の通信可能範囲に存在する他の機器を探索するための認証通信開始前の探索信号である。かかるアドバタイズ信号rs1、rs2が設置装置200に届くと、Ack信号rs3が設置装置200から出力されて携帯装置100に届く。このAck信号rs3は、設置装置200から携帯装置100に対して、いわば「付近にいるので接続しましょう」という趣旨の信号である。携帯装置100では、Ack信号rs3を受信すると、認証通信を開始する。具体的には、認証用の電文送信信号rs4が携帯装置100から出力されて設置装置200に届く。かかる電文送信信号rs4は、認証情報である携帯装置100自身の機器固有の番号、例えば、携帯装置100のMACアドレスを含んだ信号である。携帯装置100の振動検出から、かかる電文送信信号rs4の出力である認証通信開始までの時間は、本実施形態では「起動通信時間」と呼び、その都度特定されて記憶部130aに記憶される。また、後述するフラグの状態についても、記憶部130aに記憶される。
【0052】
電文送信後から認証電文の送信が成功したか否かの通信の流れは、
図11Bにおいては省略したが、かかる流れの概要を説明すると次のような流れとなる。まず、上述の第1および第2実施形態と同様に、認証情報が制御装置300へと中継され、制御装置300において認証が実行される。そして、認証が成功すると、設置装置200から携帯装置100へと認証許可信号が送信される。
【0053】
図11Aの例では、5日前から1日前までに測定された起動通信時間が記憶されている。なお、
図11Aでは、最も右側に、5日分の起動通信時間の実績の最頻値が表されている。
【0054】
図10に示す統計値演算部127は、記憶部130aに記憶された起動通信時間の統計値を演算する。本実施形態において、「起動通信時間の統計値」とは、記憶部130aに記憶されている起動通信時間における最頻値を意味する。
図11Aの例では、右端に示すように、最頻値として「2秒」が求められる。
【0055】
図10に示す送信間隔調整部128は、認証通信の開始前に設置装置200を探索するための無線信号を出力する際の送信間隔を調整する。電波強度調整部129は、認証通信の開始前に設置装置200を探索するための無線信号を出力する際の出力電波強度を調整する。
【0056】
フラグ制御部125aは、フラグをONまたはOFFに制御する。「フラグ」とは、玄関付近フラグである。携帯装置100が、設置装置200と無線通信可能な領域に存在する場合には、フラグはONに制御され、かかる領域に携帯装置100が存在しない場合にはフラグはOFFに制御される。具体的には、上述した最頻値を用いて行われ、かかる最頻値が所定の値よりも小さい場合には、フラグはONに制御され、かかる最頻値が所定の値以上の場合には、フラグはOFFに制御される。なお、かかる所定の値は予め実験等により定められている。
【0057】
C1.電波強度制御処理:
図12は、第3実施形態の無線通信システム10aにおける電波強度制御処理を示すフローチャートである。
図12に示す電波強度制御処理は、携帯装置100の起動によって始まる。本実施形態では、振動検知部121が振動センサ140から携帯装置100の振動を検知すると起動する。
【0058】
送信間隔調整部128および電波強度調整部129は、「記憶部130aに記憶されているフラグの状態がONであり、且つ、携帯装置100の起動からの経過時間tが予め定められた閾値時間Tthよりも小さい」状況か否かを判定する(ステップS400)。「フラグの状態がONであり、且つ、経過時間tが予め定められた閾値時間Tthよりも小さい」状況ではないと判定された場合(ステップS400:No)、送信間隔調整部128は、設置装置200への上述したアドバタイズ信号の送信間隔を通常の送信間隔に調整する(ステップS405)。「フラグの状態がONであり、且つ、経過時間tが予め定められた閾値時間Tthよりも小さい」状況ではないとは、携帯装置100が設置装置200付近(玄関付近)に存在しない状況と、携帯装置100の起動からの経過時間tが閾値時間Tth以上という状況とのうちの少なくとも一方が成立する状況である。このような状況では、電波強度調整部129は、設置装置200と通信する際の出力電波強度を通常の出力電波強度に調整する(ステップS410)。このように電波強度を調整する理由については後述する。なお、後述するように、送信間隔を短く設定した場合に、携帯装置100の起動から設置装置200の探索が完了して設置装置200から上述のAck信号rs3を受信するまでに要する時間が実験等により特定され、特定された時間、または、特定された時間に所定時間を加えた時間が、上述の閾値時間Tthとして設定される。
【0059】
「フラグの状態がONであり、且つ、経過時間tが予め定められた閾値時間Tthよりも小さい」状況であると判定された場合(ステップS400:Yes)、送信間隔調整部128は、設置装置200への上述したアドバタイズ信号の送信間隔を、通常の送信間隔よりも短く調整する(ステップS415)。また、電波強度調整部129は、アドバタイズ信号を送信する際の出力電波強度を、通常の出力電波強度よりも弱く調整する(ステップS420)「フラグの状態がONであり、かつ、経過時間tが予め定められた閾値時間Tthよりも小さい」状況は、携帯装置100が設置装置200付近(玄関付近)に存在し、且つ、携帯装置100の起動からの経過時間が短いという状況である。このような状況において、設置装置200へのアドバタイズ信号の送信間隔を通常より短く調整することにより、携帯装置100が設置装置200と実行する認証通信が完了することなく携帯装置100が設置装置200の通信圏外となってしまうことを抑制できる。また、かかる状況において、アドバタイズ信号を送信する際の出力電波強度を、通常の出力電波強度よりも弱く調整することにより、調整しない構成に比べて携帯装置100における消費電力を低減できる。このとき、携帯装置100が玄関付近に存在するので、携帯装置100の出力電波強度が弱く調整されても、携帯装置100と設置装置200とは通信可能である。そして、携帯装置100の設置装置200へのアドバタイズ信号の送信間隔は短くなったものの、アドバタイズ信号の出力電波強度は弱く調整されているので携帯装置100の消費電力が抑制される。
【0060】
これに対して、ステップS405においては、「フラグの状態がONであり、且つ、経過時間tが予め定められた閾値時間Tthよりも小さい」状況ではないので、携帯装置100が設置装置200付近(玄関付近)に存在しない可能性が高い。このため、アドバタイズ信号の送信間隔が通常の送信間隔に調整されても、携帯装置100が設置装置200と実行する認証通信が完了することなく携帯装置100が設置装置200の通信圏外となってしまう可能性も低い。また、ステップS410において、アドバタイズ信号を送信する際の出力電波強度が通常の出力電波強度に調整されるので、設置装置200付近(玄関付近)に存在しない携帯装置100は、設置装置200との通信不可を抑制できる。そして、アドバタイズ信号の出力電波強度は通常に調整されたものの、携帯装置100の設置装置200へのアドバタイズ信号の送信間隔は通常に調整されているので携帯装置100の消費電力が抑制される。
【0061】
図13は、電波強度制御処理が実行された場合における消費電力の変化の一例を示す説明図である。
図13において、横軸は携帯装置100の起動からの経過時間tを示し、縦軸は携帯装置100の消費電力を示している。経過時間tが閾値時間Tthよりも小さい場合には、上述したステップS415とステップS420が実行される。このため、出力電波強度は通常に比べて弱くなり、消費電力は小さくなる。他方、アドバタイズ信号の出力頻度は増加するので、電力消費頻度は上昇する。このため、アドバタイズ信号の送信間隔が同じまま電波強度を弱くしない構成に比べて消費電力を抑えることができ、また、電波強度が同じままアドバタイズ信号の出力間隔を短くしない構成に比べて、携帯装置100が設置装置200から遠く離れてしまうまでに携帯装置100の認証処理が完了しないことを抑制できる。
【0062】
また、経過時間tが閾値時間Tth以上の場合には、上述したステップS405とステップS410が実行される。このため、出力電波強度は通常の電波強度へと増大するので消費電力は高い。他方、アドバタイズ信号の出力頻度は低減するので、電力消費頻度は低減する。これにより、アドバタイズ信号の送信間隔が同じまま出力電波強度を増大させる構成に比べて消費電力を抑えることができ、また、アドバタイズ信号の送信間隔が同じまま出力電波強度を増大させない構成に比べて、設置装置200と同様な機能を有する他の装置の探索が失敗することを抑制できる。この例からも理解できるように、本実施形態において、「通常の電波強度」とは、玄関付近とは異なり、より遠く離れた所に設置装置200と同様な機能を有する他の装置が設置されていても、かかる装置と携帯装置100との通信が成立する電波強度を意味する。
【0063】
なお、ステップS415とS420とが連続して実行されることから、送信間隔が通常の送信間隔よりも短くなる期間と、出力電波強度が通常の電波強度よりも弱くなる期間とは一致することとなる。本実施形態において、例えば、通常の出力電波強度は0dBmであるが、ステップS420が実行される場合には、-20dBmに調整される。
【0064】
認証情報送信部123は、上述した認証用の電文送信処理を行う(ステップS425)。認証情報送信部123は、認証電文の送信が成功したか否かを判定する(ステップS430)。
【0065】
送信が成功しなかったと判定された場合(ステップS430:No)、処理はステップS400へ戻る。他方、送信が成功したと判定された場合(ステップS430:Yes)、今回の起動通信時間が特定されて記憶部130aに記憶される(ステップS435)。その後、処理はステップS400へ戻る。
【0066】
以上説明した第3実施形態の無線通信システム10aによれば、設置装置200に対して通信する際の送信間隔を調整する送信間隔調整部128と、設置装置200と通信する際の出力電波強度を調整する電波強度調整部129とを備える。「携帯装置100の玄関付近フラグがONであり、且つ、携帯装置100の起動からの経過時間tが閾値時間Tthよりも小さい」状況である場合、アドバタイズ送信間隔が通常の送信間隔より短く調整され、設置装置200に対する出力電波強度が通常の強度の出力電波強度より弱く調整される。このため、携帯装置100が玄関付近に存在する場合、携帯装置100の起動から短期間の間は、アドバタイズ送信間隔を通常の送信間隔より短くして、認証処理が完了することなく携帯装置100が設置装置200の通信圏外となってしまうことを抑制できる。また、携帯装置100の起動から短期間の間は、携帯装置100からの出力電波強度は通常の強度よりも弱く調整されるので、携帯装置100の消費電力が抑制される。さらに、起動通信時間の最頻値が所定値よりも小さい場合には、携帯装置100が玄関付近に存在する可能性が高いので、設置装置200付近(玄関付近)に携帯装置100が位置しているか否かの特定を、かかる最頻値を用いて簡易に且つ精度良く実現できる。
【0067】
D.第4実施形態:
第4実施形態の無線通信システム10bは、携帯装置100において送信間隔調整部128を備えない点と、電波強度制御処理において送信間隔が調整されない点において、第3実施形態の無線通信システム10aと異なる。第4実施形態の無線通信システム10bにおける他の構成および他の処理は、第3実施形態の無線通信システム10aと同じであるので、同一の構成要素および処理には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0068】
図14は、第4実施形態における無線通信システム10bの機能構成を示すブロック図である。
図14に示すように、第4実施形態の無線通信システム10bでは、
図10と異なり、送信間隔調整部128のない構成となっている。
【0069】
図15は、第4実施形態において電波強度制御処理が実行された場合における消費電力の変化の一例を示す説明図である。
図15において、縦軸と横軸は、
図13と同様である。第4実施形態における電波強度制御処理においては、
図12に示す送信間隔を調整するステップS405およびステップS415が省略される。第4実施形態において、
図12に示すステップS420は、
図15に示す経過時間tが閾値時間Tthよりも小さい場合に相当する。
図15に示すように、電波強度調整部129は、携帯装置100の起動時から閾値時間Tthまでの間は、設置装置200と通信する際の出力電波強度を通常の出力電波強度よりも弱く調整する。携帯装置100が玄関付近に存在する場合、設置装置200との距離は近いので、携帯装置100の出力電波強度は弱くても設置装置200との通信は可能である。携帯装置100の出力電波強度が弱く調整されたことにより、携帯装置100の消費電力が抑制される。
【0070】
図12に示すステップS410は、
図15に示す経過時間tが閾値時間Tth以上の場合に相当する。かかる場合は、
図13における経過時間tが閾値時間Tth以上の場合と同様である。
【0071】
以上説明した第4実施形態の無線通信システム10bによれば、設置装置200と通信する際の出力電波強度を調整する電波強度調整部129を備える。携帯装置100が設置装置200付近(玄関付近)に存在する場合に、携帯装置100の起動から短期間の間は、出力電波強度が通常の強度よりも弱く調整されるので、携帯装置100の消費電力が抑制される。また、第3実施形態の無線通信システム10aと同様に、起動通信時間の最頻値が所定値よりも小さい場合には、携帯装置100が玄関付近に存在する可能性が高いので、設置装置200付近(玄関付近)に携帯装置100が位置しているか否かの特定を、かかる最頻値を用いて簡易に且つ精度良く実現できる。
【0072】
E.第5実施形態:
第5実施形態の無線通信システム10cは、携帯装置100において電波強度調整部129を備えない点と、電波強度制御処理において、携帯装置100の出力電波強度が調整されない点において、第3実施形態の無線通信システム10aと異なる。第5実施形態の無線通信システム10cにおける他の構成および他の処理は、第3実施形態の無線通信システム10aと同じであるので、同一の構成要素および処理には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0073】
図16は、第5実施形態における無線通信システム10cの機能構成を示すブロック図である。
図16に示すように、第5実施形態の無線通信システム10cでは、
図10と異なり、電波強度調整部129のない構成となっている。
【0074】
図17は、第5実施形態において電波強度制御処理が実行された場合における消費電力の変化の一例を示す説明図である。
図17において、縦軸と横軸は、
図13と同様である。第5実施形態における電波強度制御処理においては、
図12に示す電波強度を調整するステップS410およびステップS420が省略される。第5実施形態において、
図12に示すステップS415は、
図15に示す経過時間tが閾値時間Tthよりも小さい場合に相当する。
図17に示すように、送信間隔調整部128は、携帯装置100の起動時から閾値時間Tthまでの間は、設置装置200と通信する際のアドバタイズ信号の送信間隔を通常の送信間隔より短く調整する。携帯装置100が玄関付近に存在する場合、設置装置200との距離は近いので、携帯装置100の起動から短期間で設置装置200との接続通信を完了させる必要がある。携帯装置100からのアドバタイズ信号の送信間隔が通常の送信間隔より短く調整されることにより、設置装置200との接続通信が未完了で携帯装置100が設置装置200の通信圏外となることを抑制できる。
【0075】
図12に示すステップS405は、
図15に示す経過時間tが閾値時間Tth以上の場合に相当する。かかる場合は、
図13における経過時間tが閾値時間Tth以上の場合と同様である。
【0076】
以上説明した第5実施形態の無線通信システム10cによれば、設置装置200と通信する際のアドバタイズ信号の送信間隔を調整する送信間隔調整部128を備える。携帯装置100が設置装置付近(玄関付近)に存在する場合に、携帯装置100の起動時から短期間の間、設置装置200に対するアドバタイズ信号の送信間隔が通常の送信間隔より短く調整されるので、設置装置200との接続通信が未完了で携帯装置100が設置装置200の通信圏外となることを抑制できる。また、第3実施形態の無線通信システム10aと同様に、起動通信時間の最頻値が所定値よりも小さい場合には、携帯装置100が玄関付近に存在する可能性が高いので、設置装置200付近(玄関付近)に携帯装置100が位置しているか否かの特定を、かかる最頻値を用いて簡易に且つ精度良く実現できる。
【0077】
F.他の実施形態:
(F1)各実施形態における無線通信システム10は、ホームセキュリティシステムに適用されていたが、他の任意の種類のセキュリティシステムに適用されてもよい。例えば、企業において居室や倉庫や機械室等を監視するためのセキュリティシステムに適用されてもよい。
【0078】
(F2)各実施形態では、無線通信システム10における携帯装置100は無線タグであったが、携帯電話機など無線タグ以外の携帯可能な任意の無線の装置であってもよい。
【0079】
(F3)第2実施形態の無線通信システム10において、設置装置200は失敗信号送信部226を備えていたが、備えていなくてもよい。かかる構成においては、認証情報送信部123は、認証情報を第3期間ごとに繰り返し送信し、認証情報送信部123は、応答信号を受信した場合には、応答信号を受信しない場合に比べて第3期間を短く設定して認証情報を繰り返し送信する。このような構成によれば、携帯装置100において設置装置200から応答信号を受信できる状況、つまり、携帯装置100と設置装置200とが互いに停止信号と応答信号のやりとりが可能な程度の比較的狭い範囲内に存在する場合には、より短い時間間隔で認証情報を繰り返し送信できる。このため、一時的な通信障害などにより認証情報が制御装置300に送られないことが生じた場合であっても、認証情報送信のリトライ間隔を短くできるので、携帯装置100が通信圏外に至るまでの間に認証情報が制御装置300に届かないことを抑制できる。また、失敗信号を備える構成に比べて設置装置200の構成および認証処理の手順を簡易にできる。
【0080】
(F4)各実施形態における無線通信システム10における設置装置200は、制御装置300と無線接続されていたが、IEEE802.3等で規定される有線LANなどを用いて有線接続されてもよい。
【0081】
(F5)第3実施形態における無線通信システム10aにおいて、携帯装置100の起動は振動検知部121によって携帯装置100の振動が検知された状態としていたが、これに限られない。携帯装置100の起動は、例えば、携帯装置100のユーザがボタン操作するときであってもよい。
【0082】
(F6)第3実施形態における無線通信システム10aにおいて、携帯装置100が玄関付近に存在するか否かを判定する際に、起動通信時間の最頻値を用いていたが、これに限られない。起動通信時間の平均値や中央値を用いてもよい。
【0083】
(F7)各実施形態では、制御装置300が携帯装置100の認証を実行していたが、本開示はこれに限定されない。制御装置300に代えて設置装置200が、取得した認証情報を用いて、携帯装置100の認証を実行してもよい。かかる構成によれば、設置装置200が携帯装置100の認証を実行するので、携帯装置100および設置装置200とは異なる他の装置が認証を実行する構成に比べて、他の装置への認証情報や認証結果の送受信に要する時間を省略でき、認証に要する時間を短縮できる。また、第2実施形態において、設置装置200は制御装置300から認証が失敗した旨の信号を受信していたが、本開示はこれに限定されない。設置装置200が認証を実行して、認証が失敗したと判定した場合に、失敗信号を送信してもよい。
【0084】
(F8)各実施形態では、認証情報中継部224が認証情報を制御装置300に送信していたが本開示はこれに限定されない。認証情報中継部224を省略し、設置装置側無線通信部210が、認証情報中継部224に相当する機能を備えてもよい。
【0085】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した形態中の技術的特徴に対応する各実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0086】
10…無線通信システム、10a…無線通信システム、10b…無線通信システム、10c…無線通信システム、100…携帯装置、110…携帯装置側無線通信部、120…携帯装置側制御部、121…振動検知部、122…停止信号送信部、123…認証情報送信部、124…動作モード制御部、125…フラグ制御部、125a…フラグ制御部、126…応答信号受信部、127…統計値演算部、128…送信間隔調整部、129…電波強度調整部、130…記憶部、130a…記憶部、140…振動センサ、200…設置装置、210…設置装置側無線通信部、220…設置装置側制御部、222…応答信号送信部、223…停止信号受信部、224…認証情報中継部、226…失敗信号送信部、300…制御装置、310…制御装置側無線通信部、320…制御部、322…認証部、T1…時間、T2…時間、Tth…閾値時間、rc1…認証信号、rc2…停止信号、rc3…応答信号、rs1…アドバタイズ信号、rs3…Ack信号、rs4…電文送信信号、t…経過時間