(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】降下物捕捉デバイス
(51)【国際特許分類】
G01W 1/00 20060101AFI20241010BHJP
G01N 1/02 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
G01W1/00 Z
G01N1/02 A
(21)【出願番号】P 2020167692
(22)【出願日】2020-10-02
【審査請求日】2023-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】595140170
【氏名又は名称】東京海上日動火災保険株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513204469
【氏名又は名称】一般社団法人日本海事検定協会
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】奥山 俊博
(72)【発明者】
【氏名】加藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】人見 朋子
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 純一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 隆
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-089727(JP,A)
【文献】国際公開第2010/113520(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第106525516(CN,A)
【文献】特開2017-032456(JP,A)
【文献】特開2017-036929(JP,A)
【文献】特開2012-107958(JP,A)
【文献】特開2020-071142(JP,A)
【文献】国際公開第2016/194463(WO,A1)
【文献】特開2008-089319(JP,A)
【文献】中国実用新案第210741951(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01W 1/00
G01N 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重力方向と交差する方向から飛来する降下物を捕捉し得るように、重力方向と交差する複数の方向に配向するように立設した複数のフィンと、
重力方向に沿って落下する降下物を捕捉し得るように配置されたフィルタと、
前記フィンの一部を露出させる開口を備え、前記フィン及びフィルタを収容する容器と、
を備え、
前記降下物をその発生源方向に応じて分類して捕捉できるように、
前記複数のフィンの捕捉面に粘着シートである捕捉領域が設けられている、
降下物捕捉デバイス。
【請求項2】
前記フィルタは、
一次フィルタと、
前記一次フィルタよりも小さな孔を有し、前記一次フィルタを通過した降下物を捕捉し得る二次フィルタと
を備える、請求項1に記載の降下物捕捉デバイス。
【請求項3】
前記開口から露出したフィンを収容するように前記開口を塞ぐ蓋部と、
をさらに備える、請求項1又は2に記載の降下物捕捉デバイス。
【請求項4】
前記容器に設けられた挿入開口に挿入し、取り外し可能に設けられたセパレータをさらに備え、
前記セパレータは、前記一次フィルタと前記二次フィルタとの間に設けられる、
請求項2に記載の降下物捕捉デバイス。
【請求項5】
前記容器が設置される台座をさらに備える、
請求項1~4のいずれかに記載の降下物捕捉デバイス。
【請求項6】
前記台座は、重力方向に沿って落下する降下物を捕捉する捕捉部をさらに備える、
請求項5に記載の降下物捕捉デバイス。
【請求項7】
前記容器は、透明材料により形成される、
請求項1~6のいずれかに記載の降下物捕捉デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車などの主に屋外に配置される対象に汚染や傷を生じさせる可能性のある降下物の調査に用いられる降下物捕捉デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
完成車は、汚染や傷等が生じないように生産拠点から消費地へと運搬されることが必要となる。多くの完成車が、生産拠点から消費地の物流網の中間点にある保管エリアにおいて保管される。このような保管エリアにおいて、降下物による完成車の汚染や傷が生じた場合の損害額は甚大なものとなる。このため、保護材により完成車を保護する一方、完成車に汚染や傷を生じさせる可能性のある降下物の発生原因を特定することが、将来的な降下物からの完成車の保護対策をする上で重要なものとなる。
【0003】
従来、降下物を捕捉する方法としては、簡易な平板又は水槽を設置しておき、降下物を捕捉することが行われていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の方法では、無風あるいは微風下において落下する降下物を捕捉することができるものの、強風下において飛来する降下物を捕捉することができなかった。このため、従来の方法では、捕捉可能な降下物が限定的であり、降下物の発生源方向ひいてはその発生原因を特定することができなかった。このように、降下物を確実に捕捉でき、降下物の発生源方向を特定可能な簡易な構造の降下物デバイスがあると、将来的な降下物からの完成車の保護対策をする上で有用なものとなる。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、降下物を確実に捕捉でき、降下物の発生源方向を特定可能な降下物捕捉デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明の降下物捕捉デバイスは、重力方向と交差する方向から飛来する降下物を捕捉し得るように立設したフィンと、重力方向に沿って落下する降下物を捕捉し得るように配置されたフィルタと、を備える。
【0007】
上記構成によれば、フィンにより重力方向と交差する方向から飛来する降下物が捕捉され、フィルタにより重力方向に沿って落下する降下物を捕捉されることから、降下物の発生源方向が特定される。
【0008】
前記フィルタは、一次フィルタと、前記一次フィルタよりも小さな孔を有し、前記一次フィルタを通過した降下物を捕捉し得る二次フィルタとを備えることが好ましい。これにより大きな粗大粒子は一次フィルタにより捕捉され、小さな粒子は二次フィルタにより捕捉される。これらフィルタによる降下物のサイズ別分別回収(捕集)は次工程の分析作業において、特に微細粒子の分画操作を軽減化させることを可能とする。
【0009】
重力方向と交差する複数の方向に配向するように立設した複数のフィンを備えることが好ましい。複数のフィンを備えることにより、降下物の発生源方向をさらに特定することが可能となる。
【0010】
前記フィンの一部を露出させる開口を備え、前記フィン及びフィルタを収容する容器と、前記開口から露出したフィンを収容するように前記開口を塞ぐ蓋部と、をさらに備えることが好ましい。不使用時には蓋部を閉めることによりフィンやフィルタに余計な汚染物が捕捉されるのを防止でき、使用時には蓋部を取り外して使用することにより必要な降下物の捕捉が可能となる。
【0011】
前記容器に取り外し可能に設けられたセパレータをさらに備えることが好ましい。これにより、捕捉された降下物が容器内に移動することが防止される。
【0012】
前記容器が設置される台座をさらに備えることが好ましい。これにより、捕捉デバイスの設置性や安定性が向上する。
【0013】
前記台座は、重力方向に沿って落下する降下物を捕捉する捕捉部をさらに備えていてもよい。
【0014】
前記容器は、透明材料により形成されることが好ましい。これにより、フィンやフィルタによる降下物の捕捉状況を視認することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、降下物を確実に捕捉でき、降下物の発生源方向を特定できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態に係る降下物捕捉デバイスの外観図である。
【
図2】本実施形態に係る降下物捕捉デバイスにおいて、蓋部及びセパレータを外した状態の外観図である。
【
図3】本実施形態に係る降下物捕捉デバイスにおいて、蓋部を外した状態の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について適宜図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、本実施形態に係る降下物捕捉デバイスの外観図である。
図2は、本実施形態に係る降下物捕捉デバイスにおいて、蓋部及びセパレータを外した状態の外観図である。
図3は、本実施形態に係る降下物捕捉デバイスにおいて、蓋部を外した状態の外観図である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態に係る降下物捕捉デバイス1は、容器2と、蓋部3と、捕捉部4aを備えるフィン4と、一次フィルタ5と、二次フィルタ6と、セパレータ7と、台座8と、捕捉部9と、方位磁石10とを備える。
【0020】
容器2は、フィン4と、一次フィルタ5と、二次フィルタ6と、セパレータ7とを収容するものである。容器2は、開口2aを備え、フィン4の少なくとも捕捉部4aが開口の外に露出するように構成される。容器2は、透明材料により形成されることが好ましく、例えば透明なプラスチック材料により形成される。これにより、フィン4やフィルタ5,6による降下物の捕捉状況を視認することができる。
【0021】
蓋部3は、容器2の開口2aから露出したフィン4を収容するように開口2aを塞ぐように構成されている。本実施形態では、蓋部3も容器2と同じ材料により形成されており、透明なプラスチック材料により形成される。降下物捕捉デバイス1の不使用時には蓋部3が設置され、降下物捕捉デバイスの使用時には蓋部3が取り外される。
【0022】
フィン4は、重力方向と交差する方向、すなわち横方向から飛来する降下物を捕捉し得るように立設しており、具体的には一次フィルタ5上に立設されている。フィン4の捕捉面は、横方向に配向しており、これにより横方向から飛来する降下物を捕捉できる。フィルタの捕捉面には、降下物を捕捉するための捕捉部4aが設けられている。捕捉部4aは、例えばゲルパッドのような粘着シートにより構成される。ゲルパッドの採用により風雨での捕捉物ロスが最小限に抑えられる。フィン4は、容器2の開口2aから取り外し可能に設けられている。
【0023】
本実施形態では、フィン4は、4つのフィン41~44を含み、フィン41,42とフィン43,44が互いに交差して(例えば、隣接するフィンと直交するように)配置されている。本実施形態では、それぞれのフィンの片方の面(例えば、交差軸に向かって各フィンの左側の面)に捕捉部4aが設けられているが、それぞれのフィンの両面に捕捉部4aが設けられていてもよい。4つのフィン4を設けることにより、降下物をその発生源方向に応じて4つに分類でき、降下物の発生源方向を4方位のいずれかに特定することができる。なお、フィン4の数に限定はなく、降下物をその発生源方向に応じてさらに細かく分類したい場合には5つ以上のフィン4を設けてもよい。
【0024】
本実施形態では、一次フィルタ5及び二次フィルタ2の2種類のフィルタが容器に配置されている。各フィルタは、地面に平行に設けられており、これにより、重力方向に沿って落下する降下物を捕捉し得る。なお、フィルタは、2枚に限定されず、1枚でも3枚以上でもよい。本実施形態では、2段階フィルタと適切な容器高さにより容器内に捕捉された降下物が風により出ていくことを防止できる。
【0025】
一次フィルタ5は、大きめ孔を有するフィルタからなり、これにより大きな降下物を捕捉できる。一次フィルタ5は、例えば、目開き(孔)が1mmのナイロンメッシュからなる。
【0026】
二次フィルタ6は、一次フィルタ5よりも小さな孔を有し、一次フィルタ5を通過した降下物を捕捉する。二次フィルタ6は、例えば、目開き(孔)が5μmのナイロンメッシュからなる。これにより、一次フィルタ5を通過した小さな降下物が二次フィルタ6により捕捉できる。
【0027】
セパレータ7は、容器2に設けられた挿入開口2bに挿入し、取り外すことができるように構成されている。セパレータ7は、容器2の挿入開口2bに挿入した場合、容器の上下の空間を遮断し、降下物の上下移動を防止できるように構成されている。本実施形態では、セパレータ7は、一次フィルタ5と二次フィルタ6との間に設けられており、この場合セパレータ7を挿入することによりフィルタ5,6間での捕捉した降下物の移動を防止できる。なお、セパレータ7は、一次フィルタ5と二次フィルタ6の間以外の領域に設けられてもよく、例えば、フィン4と一次フィルタ5との間の領域に設けられてもよい。セパレータ7は、容器2と同様の材料により形成され、例えば透明なプラスチック板からなる。
【0028】
台座8は、その上に容器2が設置されるものである。容器2は、台座8上に接着固定されている。台座8を設けることにより、容器2の転倒を防止して、捕捉デバイス1の設置性や安定性を向上できる。台座8は、金属材料、プラスチック材料のいずれでもよいが、例えば、容器2と同じ透明なプラスチック材料から構成される。
【0029】
台座8の一部に捕捉部9が設けられていてもよい。捕捉部9の構成は、フィンに設けられた捕捉部4aと同様の構成であり、例えば粘着シートにより構成される。二次フィルタ6の下方における台座8の部分には、排水孔8aが設けられている。これにより、捕捉対象以外の液体、例えば雨水等は排水孔8aを通って外部に排出可能となっている。また、台座8には、三脚にワンタッチで取り付け可能な取付孔8bが設けられている。台座8を三脚に取り付けることにより、地表面からの土埃の影響を抑え降下物に特化して捕捉できる。また、三脚によって捕捉高さの調整を自由に行うことができる。三脚を用いる場合、三脚中央に錘を取り付けることにより耐強風性を向上できる。
【0030】
台座8には、方位磁石10が取り付けられている。方位磁石10によってデバイスを設置する際において、デバイスを正しい方位に向けることを可能とする。
【0031】
上記の降下物捕捉デバイス1は、未使用時又は不使用時には、蓋部3及びセパレータ7が取り付けられた状態にある。これにより、不使用時に不要物がフィン4やフィルタ5,6に捕捉されることが防止される。
【0032】
降下物捕捉デバイス1を使用する際には、降下物を検出した箇所や、降下物の有無を確認したい箇所などに降下物捕捉デバイス1を設置し、降下物捕捉デバイス1の蓋部3及びセパレータ7が取り外される。設置する際には、後に発生源の方向を特定できるようにするため、方位磁石10を利用して降下物捕捉デバイス1を設置時に特定の方向(例えば北)に合わせておくことが好ましい。この状況で、降下物捕捉デバイス1を一定期間(例えば数日間)設定し、容器を通じて降下物の捕捉状況をモニタしておく。
【0033】
降下物の捕捉が済んだ後、降下物捕捉デバイス1の蓋部2を被せ、セパレータ7を挿入することにより、降下物を容器内に留めておくことが可能となる。
【0034】
以降の手順としては、蓋部3を被せた状態の降下物捕捉デバイス1が分析センターによって分析・解析され降下物捕捉デバイス1に捕捉された降下物の種類及びその発生源の方向を特定することができる。
【0035】
本実施形態に係る降下物捕捉デバイス1は、完成車のダメージに繋がりやすい降下物及びその発生源の方向を特定するために使用される。このような降下物としては、プラント関連では鉄粉、リン酸系化合物、ケミカル系ミストがある。また、自然現象関連では、火山性降下物、花粉、粒子状物質が挙げられる。工事関連では、ペイントミスト、コンクリートスプレー、石灰系パウダーが挙げられる。降下物の種類と発生源方向を特定できれば、完成車の保護対策をする上で有用なものとなる。
【0036】
本実施形態に係る降下物捕捉デバイスによれば、降下物を確実に捕捉できる。すなわち、微風時に天空から舞い降りる降下物をフィルタ5,6により捕捉でき、風の強さが一定以上ある場合には横方向から吹き付ける降下物をフィン4により捕捉できる。また、本実施形態に係る降下物捕捉デバイスによれば、降下物の発生源方向を特定できる。さらに、本実施形態に係る降下物捕捉デバイスは、電力が不要な簡易な構造であり、設置場所に置くだけで降下物を捕捉できる。捕捉した降下物の分析は、蓋部3を被せて分析センター等の所定の機関に送付するだけでよい。
【0037】
なお、以上説明した実施形態及び実施例は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るととともに、本発明にはその等価物も含まれる。即ち、各実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、各実施形態が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。さらに、図面の寸法組成比率は図示の組成比率に限られるものではない。また、各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能であることは言うまでもなく、これらも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0038】
1…降下物捕捉デバイス、2…容器、2a…開口、2b…挿入開口、3…蓋部、4…フィン、4a…捕捉部、5…一次フィルタ、6…二次フィルタ、7…セパレータ、8…台座、8a…排水孔、8b…取付孔、9…捕捉部、10…方位磁石。