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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】膜処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20230101AFI20241010BHJP
   B01D 63/08 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
C02F1/44 A
B01D63/08
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020173503
(22)【出願日】2020-10-14
(65)【公開番号】P2022064709
(43)【公開日】2022-04-26
【審査請求日】2023-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大川 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】奥村 洋一
(72)【発明者】
【氏名】冨田 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】前田 潤
(72)【発明者】
【氏名】小林 拓之
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-101869(JP,A)
【文献】国際公開第2017/208707(WO,A1)
【文献】特開2008-073676(JP,A)
【文献】特開2011-104502(JP,A)
【文献】特開2001-029952(JP,A)
【文献】国際公開第2013/125506(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/081443(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 63/08
C02F 1/44
C02F 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に第1方向と第2方向と、高さ方向とを有し、被処理液中に浸漬設置される複数の平膜エレメントを有する膜処理装置であって、
前記平膜エレメントは、膜面を対向させて第1方向に複数並んで配置され、
前記平膜エレメントの第2方向の一方側の端部には、平膜エレメントを保持する支持部材が設けられ、
前記平膜エレメントの下方には散気手段が設けられ、
前記平膜エレメントの下側縁は、第2方向の一方側の端部から他方側に向かって、上方に延びるように、または上方および水平方向に延びるように形成されていることを特徴とする膜処理装置。
【請求項2】
前記平膜エレメントは、第1方向の一方側に第1ろ過膜と他方側に第2ろ過膜を有し、第1ろ過膜と第2ろ過膜の間に、第1ろ過膜と第2ろ過膜の間隔を保持し、第1ろ過膜の透過液と第2ろ過膜の透過液が流れる流路材が設けられている請求項1に記載の膜処理装置。
【請求項3】
前記平膜エレメントは、第1ろ過膜、第2ろ過膜および流路材の下側縁が、第2方向の一方側から他方側に向かって、上方に延びるように、または上方および水平方向に延びるように形成されている請求項2に記載の膜処理装置。
【請求項4】
前記平膜エレメントは下端部に補助部材を有し、補助部材の下側縁が、第2方向の一方側から他方側に向かって、上方に延びるように、または上方および水平方向に延びるように形成されている請求項2に記載の膜処理装置。
【請求項5】
前記平膜エレメントは、膜面の周縁部に液不透過部を有し、周縁部の内方領域に液透過部を有し、
前記液透過部の上側縁は、第2方向の一方側から他方側に向かって、下方に延びるように、または下方および水平方向に延びるように形成されている請求項1~4のいずれか一項に記載の膜処理装置。
【請求項6】
第1方向に並んで配置された複数の平膜エレメントは共通の支持部材によって保持されている請求項1~5のいずれか一項に記載の膜処理装置。
【請求項7】
第1方向に並んで配置された複数の平膜エレメントはそれぞれ別の支持部材によって保持されている請求項1~5のいずれか一項に記載の膜処理装置。
【請求項8】
前記平膜エレメントは、ろ過膜を透過した透過液が取り出される取出部を有し、
前記取出部に連通して集水部が設けられている請求項1~7のいずれか一項に記載の膜処理装置。
【請求項9】
前記支持部材は前記集水部を兼ねている請求項8に記載の膜処理装置。
【請求項10】
第1方向に並んで配置された複数の平膜エレメントのうちの少なくとも一つの平膜エレメントは、隣接する平膜エレメントよりも下側縁の高さが高い請求項1~9のいずれか一項に記載の膜処理装置。
【請求項11】
平膜エレメントの第2方向の他方側の端縁に対向して、上下方向に延びる仕切り部材が設けられている請求項1~10のいずれか一項に記載の膜処理装置。
【請求項12】
前記散気手段は、第2方向の他方側より一方側の方が散気量が多くなるように設定されている請求項1~11のいずれか一項に記載の膜処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理液中に浸漬設置される複数の平膜エレメントを有する膜処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、被処理液中に浸漬設置される複数の平膜エレメントを有し、平膜エレメントの下方に散気手段が設けられた膜処理装置が知られている。このような膜処理装置では、平膜エレメントの下方に設置された散気手段から空気等のガスが供給されることにより、平膜エレメントの近傍に上向きの被処理液の流れが形成される。この際、被処理液に繊維や毛髪などの絡まりやすい夾雑物が含まれていると、これらが平膜エレメントの下側縁に引っ掛かったりして、ろ過膜表面に被処理液がスムーズに供給されなくなるおそれがある。その結果、ろ過膜表面の被処理液の流れが滞り、ろ過膜表面に懸濁物質が堆積して強固に付着し、ろ過膜が目詰まりを起こしやすくなる。繊維や毛髪等の夾雑物が平膜エレメントの下側縁に引っ掛かることの対策を施した膜処理装置として、例えば特許文献1には、隣り合う平膜エレメントの先端部の位置を異ならせた膜処理装置が開示され、特許文献2には、平膜エレメントの下部にし渣接触抑制部を設けた膜処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-198144号公報
【文献】特開2016-168546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1、2に開示された膜処理装置では、平膜エレメントの下側縁に繊維や毛髪等の夾雑物が引っ掛かりにくくしたり、あるいはこれらの夾雑物が引っ掛かってもろ過膜の損傷が起こりにくくすることができるが、一旦平膜エレメントの下側縁に繊維や毛髪等の夾雑物が引っ掛かると、それを除去することは難しい。そのため、処理を継続していくと、やがて平膜エレメントの下側縁に夾雑物が詰まって、ろ過膜表面に被処理液がスムーズに供給されなくなるおそれがある。またその結果、ろ過膜表面の被処理液の流れが滞って、ろ過膜表面に懸濁物質が堆積して強固に付着し、ろ過膜が目詰まりを起こしやすくなる。
【0005】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、平膜エレメントの下側縁に繊維や毛髪等の夾雑物が引っ掛かっても、これらの夾雑物が平膜エレメントの下側縁から抜けやすい膜処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決することができた本発明の膜処理装置とは、水平方向に第1方向と第2方向と、高さ方向とを有し、被処理液中に浸漬設置される複数の平膜エレメントを有する膜処理装置であって、平膜エレメントは、膜面を対向させて第1方向に複数並んで配置され、平膜エレメントの第2方向の一方側の端部には、平膜エレメントを保持する支持部材が設けられ、平膜エレメントの下方には散気手段が設けられ、平膜エレメントの下側縁は、第2方向の一方側から他方側に向かって、上方に延びるように、または上方および水平方向に延びるように形成されているところに特徴を有する。
【0007】
本発明の膜処理装置は、平膜エレメントの下側縁が、第2方向の一方側から他方側に向かって、上方に延びるように、または上方および水平方向に延びるように形成されているため、平膜エレメントの下側縁に繊維や毛髪などの夾雑物が引っ掛かっても、夾雑物が、散気手段から供給されるガスの流れやそれに伴う被処理液の上向きの流れの作用を受けながら、平膜エレメントの下側縁を第2方向の一方側から他方側に移動しやすくなる。平膜エレメントの下側縁を第2方向の他方側に移動した夾雑物は、平膜エレメントの第2方向の他方側からスムーズに抜けることができる。そのため、平膜エレメントの下側縁に夾雑物が詰まってろ過膜表面に被処理液がスムーズに供給されなくなったり、またその結果、ろ過膜表面の被処理液の流れが滞ってろ過膜表面に懸濁物が堆積して強固に付着することが、起こりにくくなる。
【0008】
平膜エレメントは、第1方向の一方側に第1ろ過膜と他方側に第2ろ過膜を有し、第1ろ過膜と第2ろ過膜の間に、第1ろ過膜と第2ろ過膜の間隔を保持し、第1ろ過膜の透過液と第2ろ過膜の透過液が流れる流路材が設けられていることが好ましい。この場合、平膜エレメントは、第1ろ過膜、第2ろ過膜および流路材の下側縁が、第2方向の一方側から他方側に向かって、上方に延びるように、または上方および水平方向に延びるように形成されていることが好ましい。このように平膜エレメントが形成されていれば、第1ろ過膜と第2ろ過膜の膜面積を広く確保することができ、平膜エレメントのろ過量を増やすことができる。一方、平膜エレメントは下端部に補助部材を有し、補助部材の下側縁が、第2方向の一方側から他方側に向かって、上方に延びるように、または上方および水平方向に延びるように形成されていてもよい。このように平膜エレメントが形成されていても、平膜エレメントの下側縁に引っ掛かった繊維や毛髪などの夾雑物が、平膜エレメントの下側縁を第2方向の他方側に移動しやすくなる。
【0009】
平膜エレメントは、膜面の周縁部に液不透過部を有し、周縁部の内方領域に液透過部を有し、液透過部の上側縁は、第2方向の一方側から他方側に向かって、下方に延びるように、または下方および水平方向に延びるように形成されていることが好ましい。このように液透過部の上側縁が形成されていれば、平膜エレメントの内部にガスが入り込んでも、入り込んだガスが平膜エレメントの第2方向の一方側から引き抜かれやすくなり、液透過部の上部にガスが溜まりにくくなる。そのため、ろ過膜のより広い部分が被処理液のろ過に有効に寄与できるようになる。
【0010】
第1方向に並んで配置された複数の平膜エレメントは共通の支持部材によって保持されていることが好ましい。これにより、膜処理装置の小型化を図ることが容易になる。一方、第1方向に並んで配置された複数の平膜エレメントはそれぞれ別の支持部材によって保持されていてもよい。
【0011】
平膜エレメントは、ろ過膜を透過した透過液が取り出される取出部を有し、取出部に連通して集水部が設けられていることが好ましい。これにより、ろ過膜を透過した透過液が集水部に集められ、透過液をまとめて膜処理装置から取り出すことができる。支持部材は集水部を兼ねているものであってもよく、これにより膜処理装置の小型化を図ることができる。
【0012】
第1方向に並んで配置された複数の平膜エレメントのうちの少なくとも一つの平膜エレメントは、隣接する平膜エレメントよりも下側縁の高さが高く形成されていることが好ましい。このように平膜エレメントの下側縁が形成されていれば、平膜エレメントの下側縁に引っ掛かった夾雑物が第1方向に移動できる自由度が高まり、夾雑物が平膜エレメントの下側縁に強く拘束されにくくなる。そのため、平膜エレメントの下側縁に引っ掛かった夾雑物が、散気手段から供給されるガスの流れやそれに伴う被処理液の上向きの流れの作用を受けて、平膜エレメントの下側縁を第2方向の一方側から他方側に移動しやすくなる。
【0013】
膜処理装置には、平膜エレメントの第2方向の他方側の端縁に対向して、上下方向に延びる仕切り部材が設けられていてもよい。このように仕切り部材が設けられていれば、散気手段から供給されるガスの流れにより、平膜エレメントと仕切り部材の間に被処理液の上向きの流れが形成されやすくなる。そのため、平膜エレメントの下側縁を第2方向の他方側に移動した夾雑物が平膜エレメントの下側縁から抜けた後、仕切り部材に沿ってスムーズに上方に移動しやすくなる。
【0014】
散気手段は、第2方向の他方側より一方側の方が散気量が多くなるように設定されていることが好ましい。これにより、平膜エレメントの下側縁に引っ掛かった夾雑物が、散気手段から供給されるガスの流れによって、第2方向の一方側から他方側により移動しやすくなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の膜処理装置は、平膜エレメントの下側縁に繊維や毛髪などの夾雑物が引っ掛かっても、夾雑物が平膜エレメントの下側縁を第2方向の一方側から他方側に移動しやすく、夾雑物が平膜エレメントの第2方向の他方側からスムーズに抜けることができる。そのため、平膜エレメントの下側縁に夾雑物が詰まってろ過膜表面に被処理液がスムーズに供給されなくなったり、またその結果、ろ過膜表面の被処理液の流れが滞ってろ過膜表面に懸濁物が堆積して強固に付着することが、起こりにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の膜処理装置の構成例を表し、膜処理装置の斜視図を表す。
図2図1に示した膜処理装置の平膜エレメントの分解斜視図の例を表す。
図3図1に示した膜処理装置の平膜エレメントの分解斜視図の他の例を表す。
図4】平膜エレメントの平面形状の様々な例を表す。
図5】本発明の膜処理装置の他の構成例を表し、膜処理装置の斜視図を表す。
図6】本発明の膜処理装置の他の構成例を表し、膜処理装置の斜視図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の膜処理装置は、被処理液中に浸漬設置される複数の平膜エレメントを有し、平膜エレメントの下方に散気手段が設けられたものである。平膜エレメントはろ過膜を備え、被処理液をろ過膜によってろ過することにより透過液が得られる。本発明の膜処理装置は、平膜エレメントの下方に設置された散気手段から空気等のガスが供給されることにより、平膜エレメントの近傍に上向きの被処理液の流れが形成されるが、この際、被処理液に繊維や毛髪などの絡まりやすい夾雑物が含まれていると、これらが平膜エレメントの下側縁に引っ掛かったりして、ろ過膜表面に被処理液がスムーズに供給されなくなるおそれがある。その結果、ろ過膜表面の被処理液の流れが滞って、ろ過膜表面に懸濁物質が堆積して強固に付着し、ろ過膜が目詰まりを起こしやすくなる。本発明の膜処理装置は、このように被処理液中に繊維や毛髪などの絡まりやすい夾雑物が含まれるような場合でも、平膜エレメントによって被処理液のろ過を継続して行うことが容易になるものである。以下、本発明の膜処理装置について詳しく説明する。
【0018】
膜処理装置は、被処理液中に浸漬設置される複数の平膜エレメントを有する。平膜エレメントは例えば水槽内に設置され、水槽内に被処理液が貯められた状態で被処理液中に平膜エレメントが浸漬設置される。
【0019】
被処理液の種類は特に限定されないが、平膜エレメントにより被処理液のろ過を行うことから、被処理液には夾雑物や懸濁物質等の固形分が含まれていることが好ましい。被処理液としては、下水、し尿、下水処理やし尿処理に伴い発生するプロセス排水、食品工場や紙パルプ工場や化学工場等から発生する工場排水、家畜糞尿、家畜糞尿等の畜産廃棄物の処理により発生する排水、厨房排水、およびこれらの処理で用いられる活性汚泥等が挙げられる。
【0020】
平膜エレメントは平板状に形成され、平膜エレメントの主面にろ過膜を備える。平膜エレメントは、ろ過膜を挟んで被処理液が存在する被処理液側と透過液が存在する透過液側とを有する。被処理液側が平膜エレメントの外側(表面)となり、透過液側が平膜エレメントの内側(内部)となる。ろ過膜としては、被処理液に含まれる夾雑物や懸濁物質を捕捉し透過液を得ることができるものであればよく、例えば精密ろ過膜(MF膜)や限外ろ過膜(UF膜)等が挙げられる。ろ過膜は、精密ろ過膜よりも目の粗いものであってもよい。ろ過膜を構成する素材は特に限定されず、樹脂、セラミック、金属等が挙げられる。なお、薄くて軽量な平膜エレメントを得ることが容易な点から、ろ過膜は樹脂製であることが好ましい。
【0021】
平膜エレメントは、ろ過膜を透過した透過液が取り出される取出部を有することが好ましい。取出部は平膜エレメントの透過液側に設けられ、取出部を通って平膜エレメントの内部から透過液を取り出すことができる。取出部は、平膜エレメントの端面に設けたり、膜面に設けることができる。平膜エレメントの端面とは、平膜エレメントの膜面を取り囲む側面の部分を意味し、必ずしも面状に形成されていなくてもよい。
【0022】
取出部を通って平膜エレメントの内部から取り出された透過液は、集水部に集められることが好ましい。これにより、透過液をまとめて膜処理装置から取り出すことができる。集水部は、取出部に連通して設けられる。
【0023】
ろ過膜によるろ過は、ろ過膜の被処理液側と透過液側の間の差圧を利用して行われる。ろ過は、ろ過膜の被処理液側を加圧することによって行ってもよく、ろ過膜の透過液側を減圧することによって行ってもよく、またその両方を組み合わせることにより行ってもよい。なお膜処理装置は、平膜エレメントが被処理液に浸漬設置されるため、ろ過膜の被処理液側は、ろ過膜の設置水深に基づく水圧によっていくらか加圧されることとなる。効率的にろ過を行う観点から、ろ過は、ろ過膜の透過液側を吸引ポンプ等により減圧することにより行うことが好ましい。従って、膜処理装置は、平膜エレメントの取出部や集水部に連通して吸引ポンプ等の減圧手段が設けられることが好ましい。
【0024】
平膜エレメントは、第1ろ過膜と第2ろ過膜を有することが好ましい。第1ろ過膜と第2ろ過膜は平膜エレメントの主面に互いの膜面が対向して設けられ、第1ろ過膜と第2ろ過膜の間の部分が平膜エレメントの透過液側となる。平膜エレメントはまた、第1ろ過膜と第2ろ過膜の間に流路材が設けられることが好ましい。流路材は、第1ろ過膜と第2ろ過膜の間隔を保持するスペーサーとして機能するとともに、第1ろ過膜と第2ろ過膜の間に第1ろ過膜の透過液と第2ろ過膜の透過液が流れる空間を形成する。流路材としては、フレーム、表面に溝が形成された板、織布、編布、不織布、網状体等を用いることができる。織布、編布、不織布、網状体は、内部の間隙が透過液の流路として機能することができる。第1ろ過膜と第2ろ過膜は、接着剤や溶着等の公知の接合手段により、流路材に接合されることが好ましい。
【0025】
平膜エレメントは、膜面の周縁部に液不透過部を有し、周縁部の内方領域に液透過部を有することが好ましい。液不透過部は、例えば、第1ろ過膜と第2ろ過膜をそれぞれの膜面の周縁部で互いにシールしたり、第1ろ過膜と第2ろ過膜をそれぞれの膜面の周縁部で流路材にシールすることにより、形成することができる。第1ろ過膜と第2ろ過膜との接合部、または第1ろ過膜または第2ろ過膜と流路材との接合部では、被処理液がろ過膜を透過しないように形成される。一方、液透過部は、被処理液がろ過膜を透過可能な部分として規定される。膜面の周縁部は、例えば、ろ過膜の周縁から50mm以内の領域(好ましくは30mm以内の領域であり、より好ましくは20mm以内の領域)として定めることができる。
【0026】
平膜エレメントの厚みは特に限定されないが、膜処理装置の小型化の観点から、15mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましく、7mm以下がさらに好ましい。平膜エレメントの膜面方向の大きさ(水平方向と高さ方向の長さ)は、例えば、30cm×30cmから200cm×200cmの間で適宜設定すればよい。
【0027】
膜処理装置は、水平方向に第1方向と第2方向と、高さ方向とを有し、平膜エレメントは、膜面を対向させて第1方向に複数並んで配置される。第1方向と第2方向は、水平方向に向き、互いに略直交する方向として規定される。平膜エレメントは、膜面が水平方向に対して略垂直となるように設置されることが好ましく、従って、平膜エレメントは、膜面が概ね第2方向と高さ方向に延在するように設置されることが好ましい。
【0028】
第1方向に並んで配置される平膜エレメントの数は2以上であれば特に限定されないが、3以上が好ましく、5以上がより好ましい。第1方向に並んで配置される平膜エレメントの数の上限は、膜処理装置を設置する水槽の大きさや被処理液の量や水質に応じて適宜設定すればよく、例えば50以下であってもよく、30以下または20以下であってもよい。
【0029】
第1方向に隣接して配置される平膜エレメントの膜面間隔は、1mm以上が好ましく、3mm以上がより好ましく、5mm以上がさらに好ましく、これにより、隣接する平膜エレメントの間に夾雑物が挟まりにくくなり、ろ過膜表面の被処理液の流れが確保されやすくなる。一方、第1方向に隣接して配置される平膜エレメントの膜面間隔の上限は、膜処理装置の小型化の観点から、80mm以下が好ましく、60mm以下がより好ましく、40mm以下がさらに好ましい。
【0030】
平膜エレメントの第2方向の一方側の端部には、平膜エレメントを保持する支持部材が設けられる。支持部材によって、平膜エレメントの第2方向の一方側の端部が膜処理装置の所定の位置に固定される。支持部材は、平膜エレメントの第2方向の一方側の端部のみに設けられ、他方側の端部には設けられない。従って、平膜エレメントは支持部材によって片持ちされることとなる。平膜エレメントの第2方向の他方側の端部は、ある程度自由に動ける非拘束の状態となる。
【0031】
支持部材は、平膜エレメントの第2方向の一方側の端部の高さ方向の全体を保持するように設けられてもよく、高さ方向の一部のみを保持するように設けられてもよい。なお、平膜エレメントが安定して保持されるようにする点から、支持部材は、平膜エレメントの第2方向の一方側の端部の上方1/3の領域の少なくとも一部と下方1/3の領域の少なくとも一部を保持するように設けられることが好ましい。
【0032】
支持部材は、例えば、高さ方向に延びる溝を有するように形成することができる。支持部材に形成された溝に平膜エレメントの第2方向の一方側の端部を嵌めることで、平膜エレメントを支持部材に保持させることができる。支持部材はまた、第1方向に並んで配置された複数の平膜エレメントを貫通する棒状部材として設けることもできる。支持部材は、平膜エレメントの第2方向の一方側に1つのみ設けられてもよく、高さ方向に並んで2つ以上設けられてもよい。
【0033】
第1方向に並んで配置された複数の平膜エレメントは共通の支持部材によって保持されていてもよく、それぞれ別の支持部材によって保持されていてもよい。前者の場合、支持部材は第1方向にある程度の長さを有し、1つの支持部材によって複数の平膜エレメントが保持されることとなる。膜処理装置は、1つの支持部材とそれによって保持された複数の平膜エレメントを1つのユニットとして取り扱うことができ、膜処理装置の取り扱い性を高めることができる。また、膜処理装置の小型化を図ることが容易になる。後者の場合、1つの支持部材によって1つの平膜エレメントが保持され、膜処理装置は、1つの支持部材とそれによって保持された1つの平膜エレメントを1つのユニットとして取り扱うことができる。
【0034】
平膜エレメントは、膜面が互いに対向しない形で、第2方向に並んで設けられてもよい。第2方向に並んで配置された平膜エレメントは、それぞれの膜面が略同一面上に存在するように配置されることが好ましい。このように第2方向に並んで配置された平膜エレメントは、共通の支持部材によって保持されてもよい。この場合、第2方向に並んで配置された平膜エレメントの間に支持部材が設けられ、当該支持部材によって第2方向に並んで配置された平膜エレメントが保持される。
【0035】
支持部材は、集水部を兼ねるものであってもよい。この場合、支持部材は内部に中空空間を有し、この中空空間を集水部として機能させることができる。平膜エレメントは、透過液の取出部を集水部に連結することで、透過液を平膜エレメントの内部から集水部に集めることができる。
【0036】
平膜エレメントの下方には散気手段が設けられる。散気手段により、平膜エレメントの下方から被処理液中に空気等のガスを供給することができる。被処理液が活性汚泥である場合は、散気手段により活性汚泥に酸素を供給することができ、これにより被処理液中に含まれる有機物の生物分解を促進することができる。散気手段としては、水処理に一般に用いられる散気装置を用いることができる。散気装置としては、例えば、メンブレン型散気装置、ディフューザー型散気装置、多孔型散気装置等が挙げられる。また、空気等を撹拌羽根で細分化しながら被処理液に供給する水中機械式撹拌装置を用いてもよい。
【0037】
散気手段により平膜エレメントの下方からガスを供給すると、平膜エレメントの近傍には上向きの被処理液の流れが形成される。この際、被処理液に繊維や毛髪などの絡まりやすい夾雑物が含まれていると、これらが平膜エレメントの下側縁に引っ掛かったりして、ろ過膜表面に被処理液がスムーズに供給されなくなるおそれがある。その結果、ろ過膜表面の被処理液の流れが滞って、ろ過膜表面に懸濁物質が堆積して強固に付着し、ろ過膜が目詰まりを起こしやすくなる。
【0038】
そこで、本発明の膜処理装置では、平膜エレメントの下側縁が、第2方向の一方側から他方側に向かって、上方に延びるように、または上方および水平方向に延びるように形成されている。すなわち、平膜エレメントの下側縁は、支持部材が設けられた第2方向の一方側から離れるにつれて上方に位置するように形成されている。なお、平膜エレメントの下側縁の一部は水平部であってもよい。このように平膜エレメントが形成されることにより、平膜エレメントの下側縁に繊維や毛髪などの夾雑物が引っ掛かっても、夾雑物が、散気手段から供給されるガスの流れやそれに伴う被処理液の上向きの流れの作用を受けながら、平膜エレメントの下側縁を第2方向の一方側から他方側に移動しやすくなる。平膜エレメントの第2方向の他方側の端部は支持部材によって保持されていないため、第2方向の他方側に移動した夾雑物は、支持部材によって邪魔されることなく、平膜エレメントの下側縁からスムーズに抜けることができる。そのため、平膜エレメントの下側縁に夾雑物が詰まってろ過膜表面に被処理液がスムーズに供給されなくなったり、またその結果、ろ過膜表面の被処理液の流れが滞ってろ過膜表面に懸濁物が堆積して強固に付着することが、起こりにくくなる。
【0039】
本発明の膜処理装置はまた、平膜エレメントの第2方向の他方側の端部が支持部材によって保持されていないため、平膜エレメントの第2方向の他方側の端部はある程度自由に動くことができる。そのため、隣接する平膜エレメントの間に夾雑物が入り込んでも、隣接する平膜エレメントの膜間距離が変動することによって、夾雑物が隣接する平膜エレメントの間から抜けやすくなる。特に、散気手段から供給されたガスが隣接する平膜エレメントの間に導入されることによって、平膜エレメントが揺動され、隣接する平膜エレメントの膜間距離が変動しやすくなる。
【0040】
本発明の膜処理装置は、平膜エレメントが第2方向の一方側の端部が支持部材によって保持され、他方側の端部が支持部材によって保持されない片持ち構造を有することにより、平膜エレメントが第1方向に変形した状態が固定化されないという効果も得られる。例えば平膜エレメントが、第2方向の両側の端部が支持部材によって保持される両持ち構造である場合、平膜エレメントが膨潤したりして変形すると、平膜エレメントは第1方向に変形するしかなく、その変形した状態が固定化される。その結果、隣接する平膜エレメントの膜間距離が狭くなる部分が生じ、夾雑物が平膜エレメントの間で詰まりやすくなる。しかし本発明の膜処理装置は、平膜エレメントが片持ち構造であることで、平膜エレメントが膨潤したりして変形しても、平膜エレメントは第2方向に変形することができ、また平膜エレメントが第1方向に変形してもその変形状態が固定化されず、隣接する平膜エレメントの膜間距離が部分的に狭まることが固定化されない。そのため、隣接する平膜エレメントの膜間距離をあらかじめ狭く設定することが可能となり、膜処理装置の小型化を図ることができる。
【0041】
平膜エレメントの下側縁は、第2方向の一方側から他方側に向かって上方に延びる傾斜部を有するように形成され、下側縁は水平方向に延びる水平部をさらに有していてもよい。平膜エレメントの下側縁の傾斜部は、直線状に傾斜していてもよく、曲線状に傾斜していてもよい。平膜エレメントの下側縁の傾斜部は、平膜エレメントの第2方向の長さの50%以上の範囲に形成されることが好ましく、60%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましい。平膜エレメントは、下側縁の全部が傾斜部から形成されていてもよい。
【0042】
平膜エレメントの下側縁は、次のような形状で、第2方向の一方側から他方側に向かって上方に延びるように形成されることが好ましい。すなわち、平膜エレメントの下側縁の第2方向の長さをL1とし、平膜エレメントの下側縁の下端から上端までの高さ方向の長さをL2としたとき、L2/L1は0.1以上が好ましく、0.3以上がより好ましく、0.5以上がさらに好ましく、また1.2以下が好ましく、1.0以下がより好ましく、0.8以下がさらに好ましい。このように平膜エレメントの下側縁が形成されることにより、平膜エレメントの下側縁に引っ掛かった夾雑物が、平膜エレメントの下側縁に沿って第2方向の一方側から反対側に移動しやすくなるとともに、ろ過膜の膜面積を広く確保することが容易になる。
【0043】
平膜エレメントは、ろ過膜の膜面積を広く確保する観点から、第1ろ過膜と第2ろ過膜が平膜エレメントの下側縁の近傍まで延在していることが好ましい。この場合、平膜エレメントは、第1ろ過膜、第2ろ過膜および流路材の下側縁が、第2方向の一方側から他方側に向かって、上方に延びるように、または上方および水平方向に延びるように形成されることとなる。第1ろ過膜と第2ろ過膜は、例えば、平膜エレメントの下側縁から50mm以内の範囲まで延在していることが好ましく、30mm以内がより好ましく、20mm以内がさらに好ましい。第1ろ過膜と第2ろ過膜は平膜エレメントの下側縁まで延在していてもよい。平膜エレメントはまた、液透過部の下側縁が、第2方向の一方側から他方側に向かって、上方に延びるように、または上方および水平方向に延びるように形成されることが好ましい。
【0044】
平膜エレメントは下端部に補助部材を有し、この補助部材の下側縁が、第2方向の一方側から他方側に向かって、上方に延びるように、または上方および水平方向に延びるように形成されていてもよい。この場合、第1ろ過膜と第2ろ過膜と流路材の下側に補助部材が設置されることとなる。例えば、既存の平膜エレメントは長方形状に形成され、下側縁が水平に延びるように形成されているが、この既存の平膜エレメントに、下側縁が第2方向の一方側から他方側に向かって上方に延びるように、または上方および水平方向に延びるように形成された補助部材を取り付けることで、平膜エレメントの下側縁に繊維や毛髪などの夾雑物が引っ掛かりにくくなるように形成することができる。
【0045】
平膜エレメントの上側縁の形状は特に限定されない。なお平膜エレメントは、液透過部の上側縁が、第2方向の一方側から他方側に向かって水平または下方に延びるように形成されていることが好ましい。このように液透過部の上側縁が形成されていれば、平膜エレメントの内部にガスが入り込んでも、平膜エレメントの第2方向の他方側の上部にガスが溜まりにくくなり、ろ過膜のより広い部分が被処理液のろ過に有効に寄与できるようになる。より好ましくは、平膜エレメントは、液透過部の上側縁が、第2方向の一方側から他方側に向かって、下方に延びるように、または下方および水平方向に延びるように形成される。これにより、平膜エレメントの内部に入り込んだガスが、平膜エレメントの第2方向の一方側から引き抜かれやすくなり、液透過部の上部にガスが溜まることが起こりにくくなる。
【0046】
第1方向に並んで配置された複数の平膜エレメントは、下側縁の高さが揃っていてもよく、一部または全部の高さが異なっていてもよい。なお、第1方向に並んで配置された複数の平膜エレメントのうち少なくとも一つの平膜エレメントが、隣接する平膜エレメントよりも下側縁の高さが高く形成されていると、平膜エレメントの下側縁に夾雑物が引っ掛かりにくくなる点で好ましい。この場合、第1方向に並んで配置された複数の平膜エレメントの下側縁の高さが不均一に形成されることにより、平膜エレメントの下側縁に引っ掛かった夾雑物が第1方向に移動できる自由度が高まり、夾雑物が平膜エレメントの下側縁に強く拘束されにくくなる。そのため、平膜エレメントの下側縁に引っ掛かった夾雑物が、散気手段から供給されるガスの流れやそれに伴う被処理液の上向きの流れの作用を受けて、平膜エレメントの下側縁を第2方向の一方側から他方側に移動しやすくなる。
【0047】
第1方向に並んで配置された複数の平膜エレメントの下側縁は、例えば、1つおきに高さが高くなるように形成されていてもよく、2つおきに高さが高くなるように形成されていてもよく、3つおきに高さが高くなるように形成されていてもよく、また2つ連続して高さが高くなるように形成されていてもよく、3つ連続して高さが高くなるように形成されていてもよく、これらは特に限定されない。第1方向に並んで配置された複数の平膜エレメントの下側縁の高さは、2通りであってもよく、3通りであってもよく、それ以上であってもよい。
【0048】
第1方向に並んで配置された複数の平膜エレメントの下側縁は、例えば、第1方向に並んで配置された複数の平膜エレメントのうち、第1方向の最も一方側に配置された平膜エレメントと最も他方側に配置された平膜エレメント以外の平膜エレメントの少なくとも1つが、隣接する平膜エレメントよりも下側縁の高さが高く形成されていることが好ましい。このように平膜エレメントが形成されていれば、平膜エレメントの下側縁の高さが高く形成された箇所により広い隙間が形成され、夾雑物が平膜エレメントの下側縁により引っ掛かりにくくなる。
【0049】
第1方向に並んで配置された複数の平膜エレメントは、隣り合う平膜エレメントの下側縁の高さが異なるように形成されていることも好ましい。このように平膜エレメントが形成されていれば、第1方向に並んで配置された複数の平膜エレメントの下側の全体にわたって膜間の隙間が広く形成され、夾雑物が平膜エレメントの下側縁により引っ掛かりにくくなる。
【0050】
平膜エレメントの下方に設置される散気手段は、第2方向の他方側より一方側の方が散気量が多くなるように設定されていることが好ましい。これにより、平膜エレメントの下側縁に引っ掛かった夾雑物が、散気手段から供給されるガスの流れによって、第2方向の一方側から他方側により移動しやすくなる。散気手段が、第2方向の他方側より一方側の方が散気量が多くなるように設けられる態様としては、平膜エレメントの下方に、第2方向の他方側よりも一方側により多くの散気装置を設ける態様、平膜エレメントの下方に設けた散気装置に、第2方向の他方側よりも一方側により多くまたはより密に散気口を設ける態様、平膜エレメントの下方に設けた散気装置のうち、第2方向の他方側に設けた散気装置へのガス供給量を他方側に設けた散気装置へのガス供給量を多くする態様等が挙げられる。
【0051】
膜処理装置は、平膜エレメントの第2方向の他方側の端縁に対向して、上下方向に延びる仕切り部材が設けられていてもよい。この場合、仕切り部材は、平膜エレメントの第2方向の延長上に設けられる。このように仕切り部材が設けられていれば、散気手段から供給されるガスの流れにより、平膜エレメントと仕切り部材の間に被処理液の上向きの流れが形成されやすくなる。そのため、平膜エレメントの下側縁を第2方向の他方側に移動した夾雑物が平膜エレメントの下側縁から抜けた後、仕切り部材に沿ってスムーズに上方に移動しやすくなる。仕切り部材は、平膜エレメントの第2方向の他方側の端縁から100cm以内に設置されることが好ましく、80cm以内がより好ましく、50cm以内がさらに好ましい。一方、平膜エレメントと仕切り部材の間を夾雑物がスムーズに上方に移動できるようにする点から、仕切り部材は、平膜エレメントの第2方向の他方側の端縁から5cm以上離れて設置されることが好ましく、10cm以上離れて設置されることがより好ましい。
【0052】
仕切り部材は、仕切り部材の上側縁の少なくとも一部が被処理液の水面より下に位置することが好ましく、仕切り部材の下側縁の少なくとも一部が水槽の底面より上に位置することが好ましい。また、仕切り部材の第2方向の他方側には被処理液が存在することが好ましい。このように仕切り部材を設置することにより、仕切り部材の第2方向の一方側に上向きの流れが形成され他方側に下向きの流れが形成され、仕切り部材を挟んで循環流を形成することができる。
【0053】
次に、本発明の膜処理装置の構成例について図面を参照して説明する。なお、本発明の膜処理装置は図面に示された実施態様に限定されるものではない。
【0054】
図1および図2には、本発明の膜処理装置の構成例を示した。図1は膜処理装置の斜視図を表し、図2図1に示した膜処理装置の平膜エレメントの分解斜視図の一例を表す。なお図面において、矢印xは水平方向の第1方向を表し、矢印yは水平方向の第2方向を表し、矢印zは高さ方向を表す。
【0055】
膜処理装置1(1A)は、複数の平膜エレメント2を有する。平膜エレメント2は、被処理液中に浸漬設置され、膜面を対向させて第1方向xに複数並んで配置される。平膜エレメント2の第2方向yの一方側の端部には、平膜エレメント2を保持する支持部材8が設けられ、平膜エレメント2の第2方向yの他方側の端部は自由端として存在する。図1に示した膜処理装置1Aでは、第1方向xに並んで配置された複数の平膜エレメント2が1つの支持部材8によって保持されている。支持部材8には、高さ方向zに延びる溝が複数形成されており、各溝に平膜エレメント2が挿入され、保持されている。
【0056】
図2に示すように、平膜エレメント2は、第1ろ過膜3Aと第2ろ過膜3Bの間に流路材4が配されて構成されている。流路材4は、第1ろ過膜3Aと第2ろ過膜3Bの間隔を保持するスペーサーとして機能するとともに、第1ろ過膜3Aと第2ろ過膜3Bを透過した透過液が流れる流路として機能する。図2では、第1ろ過膜3Aと第2ろ過膜3Bが流路材4よりも一回り大きく形成され、第1ろ過膜3Aと第2ろ過膜3Bが周縁部の接合部5で互いに接合されている。第1ろ過膜3Aと第2ろ過膜3Bの接合部5は液不透過部となっており、周縁部の内方領域が液透過部となっている。なお、第1ろ過膜3Aと第2ろ過膜3Bの周縁部の一部は、第1ろ過膜3Aと第2ろ過膜3Bが互いに接合されておらず、第1ろ過膜3Aと第2ろ過膜3Bを透過した透過液が取り出される取出部6となっている。
【0057】
図1では、支持部材8の内部に中空部が形成され、この中空部が集水部9として機能するようになっている。平膜エレメント2の取出部6は、支持部材8の内部の集水部9に連通するように、支持部材8に取り付けられる。各平膜エレメント2のろ過膜3を透過した透過液は、取出部6を通って集水部9に集められる。集水部9は減圧ポンプにより減圧され、これにより被処理液のろ過膜3の透過が促進されるとともに、ろ過膜3を透過した透過液が取出部6を通って集水部9に集められる。
【0058】
平膜エレメント2の下方には散気手段10が設けられる。散気手段10の散気口11から被処理液中に空気等のガスが供給される。散気手段10から被処理液中にガスを供給することにより、平膜エレメント2の近傍には上向きの被処理液の流れが形成される。
【0059】
平膜エレメント2の下側縁は、第2方向yの一方側から他方側に向かって上方および水平方向に延びるように形成されている。このように平膜エレメント2が形成されることにより、平膜エレメント2の下側縁に繊維や毛髪などの夾雑物が引っ掛かっても、夾雑物が、散気手段10から供給されるガスの流れやそれに伴う被処理液の上向きの流れの作用を受けながら、平膜エレメント2の下側縁を第2方向yの一方側から他方側に移動しやすくなる。平膜エレメント2の下側縁を第2方向yの他方側に移動した夾雑物は、平膜エレメント2の第2方向yの他方側からスムーズに抜けることができる。なお、図面には示されていないが、平膜エレメント2の下側縁の全部が、第2方向yの一方側から他方側に向かって上方に延びるように形成されていてもよい。
【0060】
平膜エレメント2は、図2に示すように、第1ろ過膜3Aと第2ろ過膜3Bと流路材4の下側縁が、第2方向yの一方側から他方側に向かって、上方に延びるように、または上方および水平方向に延びるように形成されることが好ましい。このように平膜エレメント2が形成されていれば、第1ろ過膜3Aと第2ろ過膜3Bの膜面積を広く確保することができ、平膜エレメント2のろ過量を増やすことができる。
【0061】
図3には、図1に示した膜処理装置の平膜エレメントの分解斜視図の他の一例を示したが、平膜エレメント2は下端部に補助部材7を有し、補助部材7の下側縁が、第2方向yの一方側から他方側に向かって上方および水平方向に延びるように形成されていてもよい。あるいは図面には示されていないが、補助部材7の下側縁の全部が、第2方向yの一方側から他方側に向かって上方に延びるように形成されていてもよい。このように平膜エレメント2が形成されていても、平膜エレメント2の下側縁に引っ掛かった繊維や毛髪などの夾雑物が、平膜エレメント2の下側縁を第2方向yの他方側に移動しやすくなる。
【0062】
図4には、平膜エレメントの平面形状の様々な例を示した。図4では、図面の左側が第2方向yの一方側に対応し、右側が第2方向yの他方側に対応する。また、平膜エレメントの膜面の液透過部を一点鎖線で囲んで示している。
【0063】
図4(a)には、図1の膜処理装置1Aに備えられた平膜エレメント2の平面図が示されており、平膜エレメント2の下側縁は傾斜部と水平部から構成されている。図4(a)の平膜エレメント2の下側縁は、第2方向yの一方側から他方側に向かって上方および水平方向に延びるように形成されている。図4(b)の平膜エレメント2は、下側縁が傾斜部のみから構成されており、第2方向yの一方側から他方側に向かって上方に延びるように形成されている。図4(a)と図4(b)では、平膜エレメント2の下側縁は傾斜部がいずれも直線状に形成されている。一方、図4(c)に示すように、平膜エレメント2の下側縁の傾斜部は曲線状に形成されていてもよい。いずれの場合も、平膜エレメント2の下側縁に繊維や毛髪などの夾雑物が引っ掛かっても、これら夾雑物が平膜エレメント2の下側縁を第2方向yの他方側に移動しやすくなる。
【0064】
平膜エレメント2は図4(d)に示すように、液透過部(一点鎖線で囲まれた部分)の上側縁が、第2方向yの一方側から他方側に向かって下方に延びるように形成されていることも好ましい。このように液透過部の上側縁が形成されていれば、平膜エレメント2の内部にガスが入り込んでも、入り込んだガスが平膜エレメント2の第2方向yの一方側から引き抜かれやすくなり、液透過部の上部にガスが溜まりにくくなる。そのため、ろ過膜3のより広い部分が被処理液のろ過に有効に寄与できるようになる。なお、液透過部の上側縁は、第2方向yの一方側から他方側に向かって下方および水平方向に延びるように形成されていても、同様の効果が得られる。
【0065】
図1では、散気手段10に散気口11が第2方向yの他方側よりも一方側により多く設けられている。その結果、散気手段10からは、第2方向yの他方側より一方側の方により多くのガスを供給できるようになっている。このように散気手段10からガスが供給されると、平膜エレメント2の下側縁に引っ掛かった夾雑物が、散気手段10から供給されるガスの流れによって、第2方向yの一方側から他方側により移動しやすくなる。
【0066】
図5および図6には、本発明の膜処理装置の他の構成例を示した。なお図5および図6の膜処理装置の説明において、上記と重複する説明は省略する。
【0067】
図5に示した膜処理装置1(1B)は、図1に示した膜処理装置1Aとは、支持部材8と取出部6と集水部9に関する構成が異なる。膜処理装置1Bでは、第1方向xに並んで配置された複数の平膜エレメント2に支持部材8が貫通して設けられ、これにより平膜エレメント2が支持部材8によって保持されている。支持部材8は、平膜エレメント2の第2方向yの一方側の端部の上部と下部を貫通するように2つ設けられている。支持部材8は、このように設けられていてもよい。なお、平膜エレメント2の支持部材8が貫通した部分では、透過液が平膜エレメント2の外に漏れないようになっている。
【0068】
図5に示した膜処理装置1Bではまた、集水部9が支持部材8とは別に設けられている。各平膜エレメント2には第2方向yの一方側の端面に取出部6が設けられ、取出部6が集水部9に連通して設けられている。平膜エレメント2の透過液は取出部6を通って集水部9に集められる。
【0069】
図6に示した膜処理装置1(1C)は、図1に示した膜処理装置1Aに仕切り部材12が設けられたものである。仕切り部材12は、平膜エレメント2の第2方向yの他方側の端縁に対向して、上下方向に延びるように設けられている。このように仕切り部材12が設けられることにより、平膜エレメント2と仕切り部材12の間に、散気手段10から供給されるガスの流れに伴う被処理液の上向きの流れがより強く形成される。そのため、平膜エレメント2の下側縁を第2方向yの他方側に移動した夾雑物が平膜エレメント2の下側縁から抜けた後、仕切り部材12に沿ってスムーズに上方に移動しやすくなり、夾雑物が平膜エレメント2に再び引っ掛かることが起こりにくくなる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の膜処理装置は、下水やし尿等生活排水、下水処理やし尿処理に伴い発生するプロセス排水、食品工場、紙パルプ工場、化学工場等から発生する工場排水、家畜糞尿、家畜糞尿等の畜産廃棄物の処理により発生する排水等の処理に用いることができる。また、膜分離活性汚泥法(MBR)のように、活性汚泥中に浸漬設置して、活性汚泥から処理水を取り出すのに用いることもできる。
【符号の説明】
【0071】
1,1A,1B,1C:膜処理装置
2:平膜エレメント
3:ろ過膜、3A:第1ろ過膜、3B:第2ろ過膜
4:流路材
5:接合部
6:取出部
7:補助部材
8:支持部材
9:集水部
10:散気手段
11:散気口
12:仕切り部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6