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特許7569665垂直離着陸機の自動着陸システム、垂直離着陸機および垂直離着陸機の着陸制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】垂直離着陸機の自動着陸システム、垂直離着陸機および垂直離着陸機の着陸制御方法
(51)【国際特許分類】
   B64D 45/08 20060101AFI20241010BHJP
   B64D 47/08 20060101ALI20241010BHJP
   B64C 13/18 20060101ALI20241010BHJP
   B64C 27/04 20060101ALI20241010BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
B64D45/08
B64D47/08
B64C13/18 Z
B64C27/04
G01B11/00 H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020189569
(22)【出願日】2020-11-13
(65)【公開番号】P2022078699
(43)【公開日】2022-05-25
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 智史
(72)【発明者】
【氏名】小島 徹
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 克実
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/175994(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/175993(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0122038(US,A1)
【文献】特表2017-534869(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0130864(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 13/18
B64C 27/04
B64C 39/02
B64D 45/08
B64D 47/08
B64F 1/00
B64F 1/18
B64U 10/10
B64U 70/93
B64U 70/97
G01B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直離着陸機に搭載された撮影装置と、
前記撮影装置で着陸目標点に設けられたマーカー群を撮影した画像に画像処理を施し、前記垂直離着陸機と前記着陸目標点との相対位置を取得する相対位置取得部と、
前記相対位置がゼロになるように、前記垂直離着陸機を制御する制御部と、
を備え、
前記着陸目標点は、前記垂直離着陸機が着陸する船舶上に設けられ、前記船舶における座標系である艦慣性系の位置座標となっており、
前記マーカー群は、互いに中心位置を異ならせて並べて設けられる複数のマーカーを含み、
前記マーカーの中心位置は、前記撮装置における座標系であるカメラ固定座標系の位置座標となっており、
前記垂直離着陸機の位置は、前記垂直離着陸機における座標系である航空機慣性系の位置座標となっており、
前記マーカーの前記中心位置と前記着陸目標点との距離であるオフセット量は、予め設定されており、
前記マーカーは、前記着陸目標点から離れた位置に配置されるものほど大きく、
前記相対位置取得部は、
前記画像内で認識した前記カメラ固定座標系における前記マーカーの前記中心位置を、前記垂直離着陸機の機首方位と前記垂直離着陸機の高度とに基づいて前記艦慣性系における前記垂直離着陸機と前記マーカーの前記中心位置との相対位置に変換し、前記オフセット量を加算することで、前記艦慣性系における前記垂直離着陸機と前記着陸目標点との前記相対位置に変換して、前記相対位置を取得する垂直離着陸機の自動着陸システム。
【請求項2】
前記マーカー群は、小マーカーと、前記小マーカーよりも前記着陸目標点から離れた位置に配置される大マーカーとを含む請求項1に記載の垂直離着陸機の自動着陸システム。
【請求項3】
前記マーカーは、1つずつに異なるID番号が割り付けられており、
前記相対位置取得部は、前記画像内で認識した前記マーカーから前記ID番号を取得し、前記ID番号に対応して予め記憶された前記マーカーと前記着陸目標点との距離に基づいて、前記相対位置を取得する
請求項1または請求項2に記載の垂直離着陸機の自動着陸システム。
【請求項4】
前記ID番号は、前記着陸目標点に近い前記マーカーほど小さい番号または大きい番号が割り当てられ、
前記相対位置取得部は、前記画像内で認識した最も前記ID番号が小さい前記マーカー、または、最も前記ID番号が大きい前記マーカーと、前記着陸目標点との距離に基づいて、前記相対位置を取得する
請求項3に記載の垂直離着陸機の自動着陸システム。
【請求項5】
前記相対位置取得部は、前記画像内で認識したすべての前記マーカーごとに、前記着陸目標点との距離に基づいて前記相対位置を算出し、算出したすべての前記相対位置の平均値を最終的な前記相対位置として取得する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の垂直離着陸機の自動着陸システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の垂直離着陸機の自動着陸システムを備えた垂直離着陸機。
【請求項7】
垂直離着陸機に搭載された撮影装置で、着陸目標点に設けられたマーカー群を撮影した画像に画像処理を施し、前記垂直離着陸機と前記着陸目標点との相対位置を取得するステップと、
前記相対位置がゼロになるように、前記垂直離着陸機を制御するステップとを備え、
前記着陸目標点は、前記垂直離着陸機が着陸する船舶上に設けられ、前記船舶における座標系である艦慣性系の位置座標となっており、
前記マーカー群は、互いに中心位置を異ならせて並べて設けられる複数のマーカーを含み、
前記マーカーの中心位置は、前記撮装置における座標系であるカメラ固定座標系の位置座標となっており、
前記垂直離着陸機の位置は、前記垂直離着陸機における座標系である航空機慣性系の位置座標となっており、
前記マーカーの前記中心位置と前記着陸目標点との距離であるオフセット量は、予め設定されており、
前記マーカーは、前記着陸目標点から離れた位置に配置されるものほど大きく、
前記相対位置を取得するステップは、
前記画像内で認識した前記カメラ固定座標系における前記マーカーの前記中心位置を、前記垂直離着陸機の機首方位と前記垂直離着陸機の高度とに基づいて前記艦慣性系における前記垂直離着陸機と前記マーカーの前記中心位置との相対位置に変換し、前記オフセット量を加算することで、前記艦慣性系における前記垂直離着陸機と前記着陸目標点との前記相対位置に変換して、前記相対位置を取得する垂直離着陸機の着陸制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直離着陸機の自動着陸システム、垂直離着陸機および垂直離着陸機の着陸制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、垂直離着陸機を着陸目標点へと誘導するための技術が知られている。例えば、特許文献1には、飛行体に搭載された撮像装置で取得した離着陸ターゲットの像に基づき、離着陸ターゲットと飛行体との位置関係を演算し、演算結果に基づき飛行体の離着陸を制御する自動離着陸システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特願2012-071645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の自動離着陸システムでは、離着陸ターゲットを同心多重に配置した図形(円形、矩形、三角形など)で形成している。ここで、例えば、着陸目標点が船舶などの移動体上に設けられている場合に移動体が動揺したり、垂直離着陸機の周囲で突風(ガスト)が発生したりすることがある。そのような場合、外乱の影響で、垂直離着陸機に搭載された撮影装置の撮影範囲内から離着陸ターゲットがはずれてしまう可能性がある。また、垂直離着陸機の高度が離着陸ターゲットから比較的に離れている場合、離着陸ターゲットが画像内で小さく映り、画像処理において認識できない可能性がある。このような要因により、垂直離着陸機を着陸目標点へと安定的に誘導できないおそれがある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、垂直離着陸機を着陸目標点へと、より精度良く安定的に誘導することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる垂直離着陸機の自動着陸システムは、垂直離着陸機に搭載された撮影装置と、前記撮影装置で着陸目標点に設けられたマーカー群を撮影した画像に画像処理を施し、前記垂直離着陸機と前記着陸目標点との相対位置を取得する相対位置取得部と、前記相対位置がゼロになるように、前記垂直離着陸機を制御する制御部と、を備え、前記マーカー群は、互いに中心位置を異ならせて並べて設けられる複数のマーカーを含み、前記マーカーは、前記着陸目標点から離れた位置に配置されるものほど大きく、前記相対位置取得部は、前記画像内で認識した前記マーカーと前記着陸目標点との距離に基づいて、前記相対位置を取得する。
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる垂直離着陸機は、上記垂直離着陸機の自動着陸システムを備える。
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる垂直離着陸機の着陸制御方法は、垂直離着陸機に搭載された撮影装置で、着陸目標点に設けられたマーカー群を撮影した画像に画像処理を施し、前記垂直離着陸機と前記着陸目標点との相対位置を取得するステップと、前記相対位置がゼロになるように、前記垂直離着陸機を制御するステップとを備え、前記マーカー群は、互いに中心位置を異ならせて並べて設けられる複数のマーカーを含み、前記マーカーは、前記着陸目標点から離れた位置に配置されるものほど大きく、前記相対位置を取得するステップは、前記画像内で認識した前記マーカーと前記着陸目標点との距離に基づいて、前記相対位置を取得する。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかる垂直離着陸機の自動着陸システム、垂直離着陸機および垂直離着陸機の着陸制御方法は、垂直離着陸機を着陸目標点へと、より精度良く安定的に誘導することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第一実施形態にかかる垂直離着陸機の自動着陸システムの一例を示す概略構成図である。
図2図2は、第一実施形態にかかる垂直離着陸機が着陸目標点に向かう様子を示す説明図である。
図3図3は、自動着陸システムの各座標系を示す説明図である。
図4図4は、マーカー群の一例を示す説明図である。
図5図5は、マーカー群に含まれるマーカーの一例を示す説明図である。
図6図6は、カメラ固定座標系において、マーカー群のうち、一部のみが画像内に映っている場合の一例を示す説明図である。
図7図7は、艦慣性系において、マーカー群のうち、一部のみが画像内に映っている場合の一例を示す説明図である。
図8図8は、艦慣性系において、マーカー群のうち、一部のみが画像内に映っている場合の一例を示す説明図である。
図9図9は、第一実施形態にかかる垂直離着陸機の着陸制御方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図10図10は、第一実施形態にかかる垂直離着陸機の着陸動作を示す説明図である。
図11図11は、アプローチモードにおける処理手順の一例を示すフローチャートである。
図12図12は、高高度ホバリングモードにおける処理手順の一例を示すフローチャートである。
図13図13は、低高度ホバリングモードにおける処理手順の一例を示すフローチャートである。
図14図14は、着陸モードにおける処理手順の一例を示すフローチャートである。
図15図15は、相対位置演算処理の一例を示すフローチャートである。
図16図16は、第二実施形態にかかる垂直離着陸機の自動着陸システムの一例を示す概略構成図である。
図17図17は、第二実施形態における高高度ホバリングモードの処理手順の一例を示すフローチャートである。
図18図18は、第二実施形態における低高度ホバリングモードの処理手順の一例を示すフローチャートである。
図19図19は、第三実施形態にかかる自動着陸システムを示す概略構成図である。
図20図20は、第三実施形態における高高度ホバリングモードの処理手順の一例を示すフローチャートである。
図21図21は、第三実施形態における低高度ホバリングモードの処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明にかかる垂直離着陸機の自動着陸システム、垂直離着陸機および垂直離着陸機の着陸制御方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
[第一実施形態]
図1は、第一実施形態にかかる垂直離着陸機の自動着陸システムの一例を示す概略構成図であり、図2は、第一実施形態にかかる垂直離着陸機が着陸目標点に向かう様子を示す説明図である。第一実施形態にかかる垂直離着陸機1は、回転翼機としての飛行体(例えばヘリコプタ、ドローン等)である。本実施形態において、垂直離着陸機1は、無人機である。なお、垂直離着陸機1は、前進、後進、横進、旋回、ホバリングが可能な飛行体であればよく、有人機であってもよい。また、垂直離着陸機1が無人機である場合、自動操縦による無人機の飛行制御中において、遠隔手動操縦が実行されたときには、遠隔手動操縦に基づく飛行制御が優先される。同様に、垂直離着陸機1が有人機である場合、自動操縦による有人機の飛行制御中において、手動操縦が実行されたときには、手動操縦に基づく飛行制御が優先される。本実施形態において、この垂直離着陸機1は、自動着陸システム100を搭載しており、自動着陸システム100により飛行が制御され、図2に示す着陸目標点2に着陸する。
【0013】
(着陸目標点)
本実施形態において、着陸目標点2は、図2に示すように、船舶5上に設けられている。したがって、垂直離着陸機1は、水上を移動する移動体としての船舶5に着陸(着船)する。ただし、着陸目標点2は、船舶5に限らず、地上を移動する移動体としての車両等に設けられてもよいし、移動しない設備、地面に設けられてもよい。なお、船舶5には、図示省略するが、着陸目標点2に垂直離着陸機1を着船させた際に、垂直離着陸機1を拘束するための拘束装置が設けられている。
【0014】
(座標系)
本実施形態において用いられる座標系は、図3に示すとおりである。図3は、自動着陸システムの各座標系を示す説明図である。自動着陸システム100では、船舶5における座標系である艦慣性系Sと、垂直離着陸機1における座標系である航空機慣性系Hと、垂直離着陸機1に設けられた後述するカメラ10における座標系であるカメラ固定座標系Cと、が用いられる。艦慣性系S及び航空機慣性系Hは、X軸、Y軸及びZ軸からなる3次元直交座標系である。カメラ固定座標系Cは、X軸及びY軸からなる2次元直交座標系である。艦慣性系Sの場合は着陸目標点2の中心位置(Sx、Sy)、航空機慣性系Hの場合は垂直離着陸機1の位置を原点として、機体制御を行う。
【0015】
(マーカー群)
着陸目標点2には、垂直離着陸機1が着陸目標点2の位置を捕捉するためのマーカー群7Gが設けられている。図4は、マーカー群の一例を示す説明図である。また、図5は、マーカー群に含まれるマーカーの一例を示す説明図である。図4では、艦慣性系Sで示すマーカー群7Gの位置となっており、図5では、カメラ固定座標系Cで示すマーカーの位置となっている。マーカー群7Gは、複数のマーカー7を含んでいる。図4に示すように、本実施形態において、各マーカー7は、例えば白黒の2色で色分けされたARマーカーであり、正方形状のマーカーである。なお、マーカー7は、ARマーカーに限らず、画像処理により着陸目標点2の位置を捕捉するための情報を取得することができるマーカーであればよい。また、マーカー群7Gは、船舶5に複数設けられてもよく、垂直離着陸機1は、異なるマーカー群7Gのいずれかに対応した着陸目標点2に誘導されるものであってもよい。
【0016】
本実施形態において、マーカー群7Gは、複数のマーカー7を含んで構成される。より詳細には、マーカー群7Gは、図4に示すように、小マーカー群72Gと、大マーカー群74Gとを含む。
【0017】
(小マーカー)
小マーカー群72Gは、着陸目標点2に設けられた小マーカー72(例えば、No.1)と、着陸目標点2の周囲に設けられた複数の小マーカー72とを含む。複数の小マーカー72は、互いに中心位置が異なるように並べて配置されている。No.1となる小マーカー72は、その中心位置が着陸目標点2の中心位置(Sx、Sy)と一致するように配置される。一方、No.1以外の小マーカー72は、着陸目標点2から中心位置をずらして配置されている。そして、小マーカー群72Gは、複数の小マーカー72が行列状に配置される。図3では、複数の小マーカー72が5行3列に配置される例を示しているが、行数及び列数は、特に限定されない。また、複数の小マーカー72は、行列状に配置される必要はなく、着陸目標点2の周囲に散点的に配置されてもよい。すなわち、隣り合う小マーカー72同士の距離が一定である必要はない。
【0018】
(大マーカー)
大マーカー群74Gは、小マーカー72よりも大きなサイズの複数の大マーカー74を含む。大マーカー74は、小マーカー72と中心位置が異なるように、また、互いに中心位置が異なるように並べて配置されている。大マーカー74は、着陸目標点2から中心をずらして配置されている。また、大マーカー74は、小マーカー72よりも、着陸目標点2から離れた位置に配置される。本実施形態では、大マーカー74は、着陸目標点2を中心として、小マーカー群72Gを囲むように配置されている。そして、大マーカー群74Gは、大マーカー74が行列状に配置される。図4では、大マーカー74が2行2列に配置される例を示しているが、行数及び列数は、特に限定されない。また、複数の大マーカー74は、行列状に配置される必要はなく、小マーカー群72Gよりも着陸目標点2から離れた位置に、散点的に配置されてもよい。すなわち、隣り合う大マーカー74同士の距離が一定である必要はない。
【0019】
(マーカーのID番号)
また、本実施形態において、各マーカー7は、ARマーカーとして、ID番号の情報を保持している。ID番号は、マーカー7の1つずつに異なる番号が割り付けられている。本実施形態において、ID番号は、着陸目標点2に近いマーカー7ほど、小さい番号が割り付けられている。図4に、ID番号の一例を示す。図示するように、着陸目標点2の中心と一致して配置された小マーカー72のID番号を“No.1”として、その周囲の小マーカー72に“No.2”から“No.15”までの番号、大マーカー74に“No.16”から“No.19”までの番号が割り付けられる。ただし、着陸目標点2からの距離が同じである小マーカー72bについては、互いのID番号を入れ替えてもよい。同様に、大マーカー74についても、着陸目標点2からの距離が同じであれば、互いのID番号を入れ替えてもよい。また、ID番号は、着陸目標点2に近いマーカー7ほど、大きい番号が割り付けられてもよい。
【0020】
(船舶)
船舶5は、図1に示すように、航法装置70と、データ伝送装置80と、操作表示部90とを備える。航法装置70は、例えば、慣性航法装置(INS:Inertial Navigation System)であり、船舶5のピッチ方向およびロール方向の姿勢角、船首方位、速度、加速度および位置座標等を取得する。なお、本実施形態において、航法装置70は、慣性航法装置に適用して説明するが、特に限定されず、いずれの航法装置70を用いてもよい。また、航法装置70は、本実施形態において、位置の計測精度を向上させるために、位置計測部としてのGPS(Global Positioning System)を含んだ慣性航法装置となっている。本実施形態では、GPSを含んだ慣性航法装置に適用して説明するが、GPSに特に限定されず、精度よく位置を計測可能な位置計測部であればよく、例えば、準天頂衛星システムを用いたものであってもよいし、航法装置70のみで精度よく位置を計測可能であれば、GPS等の位置計測部を省いた構成であってもよい。また、航法装置70は、各種データの少なくとも一部をセンサで取得するものとしてもよい。データ伝送装置80は、後述する自動着陸システム100に含まれ、垂直離着陸機1に搭載されたデータ伝送装置40と無線通信により各種信号をやり取りする。操作表示部90は、船舶5に乗員するオペレータが制御ステータスを把握し、各種指示を入力するユーザーインターフェースである。操作表示部90によりオペレータが入力する指示としては、例えば、後述する制御モードの移行指示が含まれる。移行指示の詳細については、後述する。操作表示部90で入力された指示は、データ伝送装置80からデータ伝送装置40へと送信される。また、垂直離着陸機1の制御ステータスは、データ伝送装置40からデータ伝送装置80へ送信される。つまり、データ伝送装置40及びデータ伝送装置80は双方向通信が可能となっている。
【0021】
(自動着陸システム)
第一実施形態にかかる垂直離着陸機の自動着陸システム100は、飛行中の垂直離着陸機1を着陸目標点2に着陸させるために、垂直離着陸機1の位置を制御するシステムである。自動着陸システム100は、垂直離着陸機1に搭載される。自動着陸システム100は、図1に示すように、カメラ10と、航法装置20と、制御部30と、データ伝送装置40とを備える。
【0022】
(撮影装置)
カメラ10は、垂直離着陸機1に図示しないジンバルを介して搭載された撮影装置である。カメラ10は、マーカー7を撮影することができれば、単眼カメラ、複眼カメラ、赤外線カメラ等であってもよい。カメラ10は、垂直離着陸機1から着陸目標点2に設けられたマーカー7を撮影するために設けられる。カメラ10は、図示しないジンバルを介して撮影方向を調整可能とされている。本実施形態において、カメラ10は、その撮影範囲(画角)B(図2参照)が、一例として、鉛直方向の真下を向くように制御部30によって制御される。なお、カメラ10は、撮影範囲Bが、鉛直方向に対して斜め前方側を向くように制御部30によって制御されてもよい。また、カメラ10は、ジンバルを省いてもよく、撮影方向が、例えば、鉛直方向の下方側を向くように、垂直離着陸機1の機体直下に固定してもよい。制御部30は、カメラ10で撮影された画像を、カメラ固定座標系Cで取得する。
【0023】
(航法装置)
航法装置20は、航法装置70と同様に、例えば、GPSを含んだ慣性航法装置となっている。なお、航法装置20も、航法装置70と同様に、GPS等の位置計測部を含む慣性航法装置であってもよいし、GPS等の位置計測部を省いた慣性航法装置であってもよく、特に限定されない。GPSを含んだ航法装置20は、垂直離着陸機1のピッチ方向およびロール方向の姿勢角、機首方位、垂直離着陸機1の機体速度、機体加速度および位置座標等を取得する。なお、航法装置20は、垂直離着陸機1の姿勢角を検出する姿勢角センサ、垂直離着陸機1の機体速度を検出する速度検出センサ、垂直離着陸機1の機体加速度を検出する加速度検出センサ、垂直離着陸機1の機首方位を検出するセンサを有するものであってもよい。航法装置20は、取得した垂直離着陸機1の姿勢角、機体速度、機体加速度および位置座標を制御部30に出力する。
【0024】
また、自動着陸システム100は、図1に示すように、垂直離着陸機1の地表面または水面からの高度を検出する高度センサ25を備えている。高度センサ25は、例えば、レーザ高度計であり、垂直離着陸機1から着陸目標点2までの相対高度Δh(図2参照)を計測している。なお、高度センサ25としては、電波高度計を用いてもよいし、気圧高度計を用いてもよく、いずれの高度計を用いてもよい。また、これらの高度計を、使用環境に応じて、すなわち地表面からの高度、海面からの高度を計測するために、適宜組み合わせて適用してもよい。高度センサ25は、検出した垂直離着陸機1の相対高度Δhを制御部30に出力する。なお、高度センサ25は、垂直離着陸機1の高度を計測して制御部30に出力し、制御部30は、後述する誘導演算部34において、垂直離着陸機1の高度に基づいて、着陸目標点2までの相対高度Δh(図2参照)を算出するものであってもよい。また、自動着陸システム100は、高度センサ25に限らず、後述する画像処理部32において、カメラ10で撮影したマーカー7を含む画像に画像処理を施すことで、垂直離着陸機1と船舶5との相対高度Δhを算出するものであってもよい。
【0025】
(制御部)
制御部30は、画像処理部32と、誘導演算部34と、飛行制御部36とを有する。なお、制御部30は、垂直離着陸機1に設けられた図示しないジンバルを介して、カメラ10の撮影方向を制御する図示しない撮影制御部を備えている。本実施形態では、上述したように、カメラ10の撮影範囲Bが鉛直方向の真下を向くように調整される。
【0026】
(画像処理部)
画像処理部32は、カメラ10で撮影された画像に画像処理を施して、小マーカー72及び大マーカー74の中心位置(図5参照)を算出する。まず、図5を参照しつつ、着陸目標点2の中心位置(Cx、Cy)と中心位置が一致する小マーカー72(No.1)を画像内で認識した場合について、説明する。ここでの中心位置(Cx、Cy)は、カメラ10で撮影された画像の中心を原点とするカメラ固定座標系Cにおける座標点であり、画像中心からの画素数により算出することができる。具体的に、画像処理部32は、図5に示すように、画像処理によって小マーカー72の角部同士の間を延びる対角線Ldを2つ特定し、特定した2つの対角線Ldの交点を中心位置(Cx、Cy)とする。なお、着陸目標点2は、小マーカー72の中心位置に限定されず、小マーカー72の四隅のいずれかであってもよいし、小マーカー72の中心位置からオフセットした位置であってもよい。
【0027】
なお、画像処理部32は、対角線Ldを1つのみ特定し、特定した対角線Ldの長さの中心位置を中心位置(Cx、Cy)としてもよい。また、画像処理部32は、対角線Ldを2つ以上特定し、特定した対角線Ldの長さの中心位置の平均となる位置を中心位置(Cx、Cy)としてもよい。さらに、画像処理部32は、正方形状の小マーカー72を射影変換による関数を用いて台形補正するとき、関数に基づいて正方形の中心位置(Cx、Cy)を算出してもよい。その際、小マーカー72の四隅の座標点、または小マーカー72の白黒に色分けされた境界の各点の座標点を用いて台形補正を行い、他の座標点は内挿補間により算出してもよい。
【0028】
次に、着陸目標点2となっている小マーカー72(No.1)の周囲に配置された複数の小マーカー72、または、大マーカー74のいずれかを画像内で認識した場合について、説明する。例えば、着陸目標点2が船舶5などの移動体上に設けられている場合に移動体が動揺したり、垂直離着陸機1の周囲で突風(ガスト)が発生したりすることがある。そのような外乱の影響で、垂直離着陸機1に搭載されたカメラ10の撮影範囲B内からマーカー群7Gの一部がはずれてしまう可能性がある。図6から図8は、マーカー群のうち、一部のみが画像内に映っている場合の一例を示す説明図である。
【0029】
図6に示すように、カメラ固定座標系Cにおいて、例えば、ID番号が“No.2”、“No,8”、“No.10”、“No.14”の小マーカー72が画像内で認識されたとする。このとき、画像処理部32は、認識した複数のマーカー7のうち、最もID番号が小さいマーカー7を用いて、小マーカー72の中心位置(Cx´,Cy´)を算出する。図6に示す例では、最もID番号が小さい“No.2”の小マーカー72を用いて、小マーカー72の中心位置(Cx´,Cy´)を算出する。小マーカー72の中心位置(Cx´,Cy´)を算出する手法は、上述した小マーカー72の中心を算出する手法と同様である。
【0030】
次に、図7に示すように、艦慣性系Sにおいて、小マーカー72の中心位置は、座標(Sx´,Sy´)となっており、着陸目標点2は、座標(Sx,Sy)となっている。着陸目標点2と小マーカー72の中心位置(Sx´,Sy´)との相対的な位置関係、すなわち距離は、(Dx,Dy)となる。
【0031】
次に、図8に示す例について説明する。図8に示す例は、垂直離着陸機1の高度が図5に示す例よりも高い場合であり、ID番号が“No.2”、“No,8”、“No.10”、“No.14”の小マーカー72と、ID番号が“No,18”の大マーカー74とが画像内に映っている。このとき、画像内の各小マーカー72が小さいことにより、画像処理部32が各小マーカー72を認識できず、大マーカー74だけを認識することができた場合を想定する。この場合、艦慣性系Sにおいて、大マーカー74の中心位置は、座標(Sx´´,Sy´´)となっており、着陸目標点2は、座標(Sx,Sy)となっている。着陸目標点2と大マーカー74の中心位置(Sx´´,Sy´´)との相対的な位置関係、すなわち距離(以下、オフセット量ともいう)は、(Dx,Dy)となる。なお、カメラ固定座標系Cにおける大マーカー74の中心位置は、を算出する手法は、上述した小マーカー72の中心を算出する手法と同様である。
【0032】
また、画像処理部32は、上述したように、カメラ10で撮影したマーカー7を含む画像に画像処理を施すことで、垂直離着陸機1と船舶5との相対高度Δhを算出するものであってもよい。さらに、画像処理部32は、カメラ10で撮影したマーカー7を含む画像に画像処理を施すことで、マーカー7の向きを特定し、航法装置20で取得される垂直離着陸機1の機首方位と対応づけることで、船舶5の船首方位を算出してもよい。なお、船舶5に、船首方位を算出するためのマーカーを別途設けてもよい。
【0033】
(誘導演算部)
誘導演算部34は、垂直離着陸機1を着陸目標点2に誘導するための垂直離着陸機1の制御量を算出する。制御量は、垂直離着陸機1の機体速度、姿勢角、姿勢角の変化レート等を調整するための制御量である。誘導演算部34は、制御量を算出するために、垂直離着陸機1と着陸目標点2との相対位置(X、Y)および垂直離着陸機1と着陸目標点2との相対速度を算出する。
【0034】
誘導演算部34は、画像処理部32で算出された小マーカー72または大マーカー74の中心位置(Cx´,Cy´)、(Cx´´,Cy´´)と、カメラ10の方位すなわち垂直離着陸機1の機首方位と、垂直離着陸機1の高度(着陸目標点2に対する相対高度Δh)と、着陸目標点2に対する各マーカー72,74のオフセット量(Dx,Dy)とに基づいて、垂直離着陸機1と着陸目標点2との相対位置(X、Y)を算出する。なお、本実施形態では、カメラ10の方位と垂直離着陸機1の機首方位とを一致させたが、特に限定されず、カメラ10の方位と垂直離着陸機1の機首方位とを一致させなくてもよい。このように、画像処理部32および誘導演算部34は、垂直離着陸機1と着陸目標点2との相対位置を取得する相対位置取得部として機能する。相対位置(X、Y)は、水平方向における垂直離着陸機1と着陸目標点2との距離となる。より詳細には、誘導演算部34は、画像処理部32で算出されたカメラ固定座標系Cにおける小マーカー72または大マーカー74の中心位置(Cx´,Cy´)、(Cx´´,Cy´´)を、垂直離着陸機1の機首方位と垂直離着陸機1の高度(着陸目標点2に対する相対高度Δh)とに基づいて艦慣性系Sにおける垂直離着陸機1とマーカー72、74の中心位置(Sx´,Sy´)、(Sx´´,Sy´´)との相対位置(X´、Y´)に変換し、さらに、オフセット量(Dx,Dy)を加算することで、艦慣性系Sにおける垂直離着陸機1と着陸目標点2との相対位置(X、Y)に変換する。このとき、誘導演算部34は、垂直離着陸機1の機首方位と垂直離着陸機1の高度(着陸目標点2に対する相対高度Δh)とに基づいて航空機慣性系Hにおける垂直離着陸機1と着陸目標点2との相対位置(X、Y)に直接的に変換してもよい。なお、艦慣性系Sは、着陸目標点2を原点として、船舶5の船首方位に沿った方向、船舶5の船首方位と水平方向で直交する方向、鉛直方向を直交軸とする座標系である。また、航空機慣性系Hは、図2及び図3に示すように、垂直離着陸機1を原点として、垂直離着陸機1の機首方位に沿った方向をX軸、垂直離着陸機1の機首方位と水平方向で直交する方向をY軸、鉛直方向をZ軸とする座標系である。
【0035】
また、誘導演算部34は、航法装置20で取得された垂直離着陸機1の地球座標系における位置座標と、船舶5の航法装置70で取得され、データ伝送装置40、80の通信により得られた船舶5の地球座標系における位置座標とに基づいて、垂直離着陸機1と着陸目標点2との相対位置(XGPS、YGPS)を算出する。したがって、誘導演算部34は、GPSにより取得された垂直離着陸機1の位置座標と、データ伝送装置40により取得した着陸目標点2が設けられた船舶5の位置座標とに基づいて、垂直離着陸機1と着陸目標点2との相対位置(XGPS、YGPS)を算出する第2の相対位置取得部として機能する。
【0036】
ここで、本実施形態において、制御部30は、各マーカー7の中心から着陸目標点2までの距離(Dx,Dy)を図示しない記憶部で予め記憶している。図3図6及び図7に示す例において、誘導演算部34は、画像処理部32において算出した“No.2”の小マーカー72の中心位置(Cx´,Cy´)に基づいて、艦慣性系Sにおける垂直離着陸機1と小マーカー72の中心位置(Sx´,Sy´)との相対位置(X´,Y´)を算出する。この後、誘導演算部34は、算出した相対位置(X´,Y´)に、予め記憶された距離(Dx,Dy)をオフセット量として加算することで、艦慣性系Sにおける垂直離着陸機1と着陸目標点2の中心位置(Sx、Sy)との相対位置(X、Y)を算出する。これにより、例えば外乱の影響により、画像内で一部のマーカー7しか認識できない場合にも、着陸目標点2の中心位置(Sx、Sy)にオフセットすることができる。なお、上述のように、小マーカー72(No.1)を用いて着陸目標点2の中心位置(Sx、Sy)にオフセットする場合は、距離(Dx,Dy)が値0であると言える。また、本実施形態では、小マーカー72(No.1)を着陸目標点2の中心位置(Sx、Sy)と一致させて配置したが、この構成は必須ではなく、小マーカー群72Gをすべて着陸目標点2の中心位置(Sx、Sy)からずらした小マーカー72で構成してもよい。
【0037】
次に、図8に示す例について説明する。誘導演算部34は、画像内で認識した最もID番号が小さい“No,18”の大マーカー74を用いて、垂直離着陸機1と着陸目標点2の中心位置(Sx、Sy)との相対位置(X、Y)を算出する。すなわち、上述したように、誘導演算部34は、画像処理部32において算出した大マーカー74の中心位置(Cx´´,Cy´´)に基づいて、艦慣性系Sにおける垂直離着陸機1と大マーカー74の中心位置(Sx´´,Sy´´)との相対位置(X´,Y´)を算出する。この後、誘導演算部34は、算出した相対位置(X´,Y´)に、予め記憶された距離(Dx,Dy)をオフセット量として加算することで、垂直離着陸機1と着陸目標点2の中心位置(Sx、Sy)との相対位置(X、Y)を算出する。これにより、垂直離着陸機1の高度が比較的に高く、画像内で大マーカー74しか認識できない場合にも、着陸目標点2の中心位置(Sx、Sy)にオフセットすることができる。このように、誘導演算部34は、小マーカー72及び大マーカー74のいずれを認識する場合であっても、上記した算出方法により、着陸目標点2の中心位置(Sx、Sy)にオフセットした相対位置(X、Y)を算出することができる。
【0038】
このように、少なくともカメラ10によりマーカー群7Gに含まれるマーカー7を少なくとも1つ捕捉できていれば、カメラ10で撮影したマーカー7に基づいて相対位置(X、Y)を算出することができる。つまり、相対位置(X、Y)の算出に際して、船舶5側とのデータ通信を行う必要がない。それにより、相対位置(X、Y)に基づいて垂直離着陸機1を制御するとき、航法装置20,70による誤差等の影響を受けないため、位置精度の向上を図ることができ、また、通信を行うことによる飛行制御の応答性の低下を抑制することができる。したがって、垂直離着陸機1を着陸目標点2へと、より精度良く着陸させることができる。そして、垂直離着陸機1の位置を着陸目標点2に対して精度良く制御することで、着陸目標点2の近傍に設けられた装置や構造物に垂直離着陸機1が干渉することを抑制することができる。
【0039】
また、誘導演算部34は、垂直離着陸機1と着陸目標点2との相対速度を算出する。したがって、誘導演算部34は、垂直離着陸機1と着陸目標点2との相対速度を取得する相対速度取得部として機能する。より詳細には、誘導演算部34は、例えば、航法装置20、70で取得される垂直離着陸機1の機体速度と船舶5の船体速度との差分により、相対速度を算出する。また、誘導演算部34は、相対位置(X、Y)の擬似微分に基づいて相対速度を算出してもよい。また、誘導演算部34は、垂直離着陸機1の機首方位と船舶5の船首方位との相対方位を算出する。
【0040】
また、誘導演算部34は、高度センサ25で検出された垂直離着陸機1の高度に基づいて、着陸目標点2までの相対高度Δhを算出する。したがって、高度センサ25および誘導演算部34は、垂直離着陸機1と着陸目標点2との相対高度Δhを取得する相対高度取得部として機能する。なお、画像処理部32において、カメラ10で撮影したマーカー7を含む画像に画像処理を施すことで、垂直離着陸機1と船舶5との相対高度Δhを算出する場合は、画像処理部32が相対高度取得部となる。
【0041】
そして、誘導演算部34は、相対位置(X、Y)、相対速度、相対方位および機体加速度に基づいて、フィードバック制御(例えばPID制御)により制御量を算出する。第一実施形態において、誘導演算部34は、相対位置(X、Y)および相対方位がゼロとなるように、フィードバック制御によって垂直離着陸機1の制御量を算出する。また、誘導演算部34は、相対速度が所定速度以内となるように、また、機体加速度が所定加速度以内となるように、フィードバック制御によって垂直離着陸機1の制御量を算出してもよい。所定速度以内および所定加速度以内としては、垂直離着陸機1が所定の相対高度Δhにおいて安定して飛行できているといえる状態であることを満たすような範囲となっている。例えば、所定速度としてはゼロであり、所定加速度としてはゼロである。誘導演算部34は、算出した制御量を飛行制御部36に出力する。誘導演算部34は、このような制御量の算出において、垂直離着陸機1を着陸目標点へと誘導して着陸させるために、垂直離着陸機1を複数の制御モードで制御する。複数の制御モードは、アプローチモードと、高高度ホバリングモードおよび低高度ホバリングモードを含むホバリングモードと、着陸モードとを含む。各制御モードの詳細については、後述する。なお、自動着陸システム100は、相対位置(X、Y)がゼロとなるように制御を行うが、実際には、垂直離着陸機1の船舶5への着陸後において、相対位置が誤差も含めてゼロになるとは限らず、垂直離着陸機1と着陸目標点2との位置が完全に一致するものではない。
【0042】
(飛行制御部)
飛行制御部36は、後述する誘導演算部34で算出された制御量にしたがって、垂直離着陸機1の各構成要素を制御して垂直離着陸機1を飛行させる。飛行制御部36は、制御量にしたがって各回転翼のブレードピッチ角、回転数等を制御し、垂直離着陸機1の機体速度、姿勢角、姿勢角の変化レート等を調整する。それにより、垂直離着陸機1は、着陸目標点2へと誘導される。なお、本実施形態では、画像処理部32および誘導演算部34を飛行制御部36とは別の機能部として説明するが、飛行制御部36、画像処理部32および誘導演算部34は、一体の機能部であってもよい。すなわち、飛行制御部36において画像処理部32および誘導演算部34の処理を行ってもよい。
【0043】
(垂直離着陸機の着陸制御方法)
次に、第一実施形態にかかる垂直離着陸機の着陸制御方法として、制御部30により垂直離着陸機1を着陸目標点2へと誘導して着陸させるための手順について説明する。図9は、第一実施形態にかかる垂直離着陸機の着陸制御方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。図10は、第一実施形態にかかる垂直離着陸機の着陸動作を示す説明図である。図11は、アプローチモードにおける処理手順の一例を示すフローチャートである。図12は、高高度ホバリングモードにおける処理手順の一例を示すフローチャートである。図13は、低高度ホバリングモードにおける処理手順の一例を示すフローチャートである。図14は、着陸モードにおける処理手順の一例を示すフローチャートである。また、図15は、相対位置演算処理の一例を示すフローチャートである。図9から図15に示す処理は、誘導演算部34により実行される。
【0044】
先ず、図9及び図10を参照して、垂直離着陸機1の着陸動作について説明する。垂直離着陸機1は、飛行状態から、船舶5に着陸(着船)する一連の着陸動作において、複数の制御モードを実行する。具体的に、垂直離着陸機1は、アプローチモードを実行するステップS1と、高高度ホバリングモードを実行するステップS2と、低高度ホバリングモードを実行するステップS3と、着陸モードを実行するステップS4とを順に行うことで、一連の着陸動作を行っている。また、垂直離着陸機1は、高高度ホバリングモード、及び低高度ホバリングモードの実行を中断して、着陸動作を中断する非常モードを実行するステップ(後述のステップS17)を行っている。
【0045】
図10に示すように、アプローチモードは、船舶5からの指令により、垂直離着陸機1を船舶5の甲板上に進入させ、着陸目標点2上において、垂直離着陸機1をホバリングさせるモードとなっている。高高度ホバリングモードは、垂直離着陸機1が、甲板上のマーカー群7Gをカメラ10により捕捉し、着陸目標点2がカメラ10の撮影範囲(画角)Bの中心にくるように、ホバリングするモードとなっている。低高度ホバリングモードは、垂直離着陸機1が降下を行い、高高度ホバリングモードよりも低高度でホバリングを行うモードとなっている。着陸モードは、垂直離着陸機1が着陸目標点2に着陸するモードとなっている。非常モードは、船舶5への垂直離着陸機1の着陸動作を中断して上昇するモードとなっている。
【0046】
垂直離着陸機1は、これらの制御モードを実行することにより、船舶5に対して着陸動作を実行する。次に、図11から図15を参照して、各制御モードについて、具体的に説明する。
【0047】
(アプローチモード)
誘導演算部34は、ステップS1として、アプローチモードを実行する。アプローチモードについて、図11を参照しながら詳細に説明する。誘導演算部34は、ステップS31として、航法装置20、70すなわちGPSで得られた位置座標から相対位置(XGPS、YGPS)を算出(生成)している。
【0048】
次に、誘導演算部34は、ステップS32として、アプローチモードボタンがオンされているか否かを判定する。アプローチモードボタンは、船舶5の操作表示部90に設けられた制御モードの移行指示を入力するためのボタンであり、船舶5に乗員するオペレータによってオンオフされる。オペレータは、垂直離着陸機1の船舶5への着船の準備が整ったら、アプローチモードボタンをオンする。制御部30は、アプローチモードボタンがオンとなっていないと判定した場合(ステップS32でNo)、ステップS1の処理を継続する。一方、制御部30は、アプローチモードボタンがオンとなっていると判定した場合(ステップS32でYes)、ステップS33の処理に進む。
【0049】
誘導演算部34は、ステップS33として、ステップS31で生成した相対位置(XGPS、YGPS)がゼロとなるように、フィードバック制御を実行する。これにより、誘導演算部34は、水平方向において垂直離着陸機1を着陸目標点2に向けて飛行させる。また、誘導演算部34は、算出された垂直離着陸機1の機首方位と船舶5の船首方位との相対方位が、一例として、ゼロとなるように、フィードバック制御を実行する。これにより、誘導演算部34は、水平方向において垂直離着陸機1の機首方位が船舶5の船首方位と一致するように飛行させる。なお、一例として、誘導演算部34は、相対方位がゼロとなるようにフィードバック制御を実行したが、特に限定されず、相対方位がゼロでなくてもよい。さらに、誘導演算部34は、高度センサ25により計測された相対高度Δhが第1相対高度Δh1となるように、フィードバック制御を実行する。これにより、誘導演算部34は、鉛直方向において、垂直離着陸機1を初期高度から第1相対高度Δh1(図2参照)まで降下させつつ、第1相対高度Δh1に維持させる。第1相対高度Δh1は、例えば、20mである。このように、アプローチモードでは、相対位置(XGPS、YGPS)がゼロとなるように制御することで、垂直離着陸機1が着陸目標点2の所定の圏内となるように、垂直離着陸機1を飛行制御している。
【0050】
誘導演算部34は、ステップS34として、画像相対位置演算処理を実行し、垂直離着陸機1と着陸目標点2との水平方向の距離としての相対位置(X、Y)を算出する。画像相対位置演算処理の詳細については、後述する。
【0051】
誘導演算部34は、ステップS35として、ステップS34で算出された垂直離着陸機1と着陸目標点2との水平方向の距離としての相対位置(X、Y)が第1しきい値以内であるか否かを判定する。第1しきい値は、カメラ10により、着陸目標点2を捉え続けるのに十分な距離となる値として設定される。誘導演算部34は、相対位置(X、Y)が第1しきい値以内でないと判定した場合(ステップS35でNo)、ステップS31以降の処理を再び実行する。つまり、垂直離着陸機1は、カメラ10により、着陸目標点2を捉えられない、換言すれば、着陸目標点2に十分近づいていないとして、ステップS33以降の処理を再び実行する。そして、誘導演算部34は、垂直離着陸機1が、カメラ10により、着陸目標点2を捉え続けるのに十分な距離となるまで、ステップS33以降の処理が繰り返し実行される。誘導演算部34は、相対位置(X、Y)が第1しきい値以内であると判定した場合(ステップS35でYes)、垂直離着陸機1が、カメラ10により、着陸目標点2を捉え続けるのに十分な距離である、つまり、着陸目標点2に十分近づいているとして、アプローチモードを終了し、次の制御モードへと移行する。
【0052】
(高高度ホバリングモード)
図9の説明に戻る。誘導演算部34は、アプローチモードを終了すると、ステップS2として、高高度ホバリングモードを実行する。高高度ホバリングモードについて、図12を参照しながら詳細に説明する。高高度ホバリングモードにおいて、誘導演算部34は、図12のステップS41に示すように、画像相対位置演算処理で算出された相対位置(X、Y)がゼロとなるように、フィードバック制御を実行する。また、誘導演算部34は、算出された垂直離着陸機1の機首方位と船舶5の船首方位との相対方位が、一例として、ゼロとなるように、フィードバック制御を実行する。さらに、誘導演算部34は、高度センサ25により計測された相対高度Δhが第1相対高度Δh1となるように、フィードバック制御を実行する。これにより、誘導演算部34は、鉛直方向において、垂直離着陸機1を着陸目標点2直上においてホバリングさせながら、第1相対高度Δh1に維持させる。そして、誘導演算部34は、ステップS42として、再び画像相対位置演算処理を実行する。
【0053】
誘導演算部34は、ステップS43として、ステップS42で算出された相対位置(X、Y)が第2しきい値以内であるか否か、および、低高度ホバリングモードボタンがオンされているか否かを判定する。第2しきい値は、アプローチモードにおける第1しきい値以下となる値として設定される。また、低高度ホバリングモードボタンは、船舶5の操作表示部90に設けられた制御モードの移行指示を入力するためのボタンであり、船舶5に乗員するオペレータによってオンオフされる。オペレータは、垂直離着陸機1が第1相対高度Δh1において安定して飛行できているか否かを目視で確認し、垂直離着陸機1が安定して飛行できている場合に、低高度ホバリングボタンをオンする。ステップS43は、高高度ホバリングモードから低高度ホバリングモードへと移行するための第1の条件が成立しているか否かを判定している。すなわち、第一実施形態において、第1の条件は、相対位置(X、Y)が第2しきい値以内となる他、オペレータにより低高度ホバリングモードへのモード移行の指示がなされたことを含む。
【0054】
誘導演算部34は、相対位置(X、Y)が第2しきい値以内でないと判定した場合(ステップS43でNo)、ステップS41以降の処理を再び実行する。また、誘導演算部34は、低高度ホバリングモードボタンがオンされていないと判定した場合(ステップS43でNo)にも、ステップS41以降の処理を再び実行する。そして、誘導演算部34は、垂直離着陸機1が、着陸目標点2に対する相対位置(X、Y)が第2しきい値以内となるまで、ステップS41以降の処理が繰り返し実行される。誘導演算部34は、相対位置(X、Y)が第2しきい値以内であり、かつ、低高度ホバリングモードボタンがオンされていると判定した場合(ステップS43でYes)、高高度ホバリングモードを終了し、次の制御モードへと移行する。
【0055】
(低高度ホバリングモード)
図9の説明に戻る。誘導演算部34は、高高度ホバリングモードを終了すると、ステップS3として、低高度ホバリングモードを実行する。低高度ホバリングモードについて、図13を参照しながら詳細に説明する。低高度ホバリングモードにおいて、誘導演算部34は、図13のステップS51に示すように、画像相対位置演算処理で算出された相対位置(X、Y)がゼロとなるように、フィードバック制御を実行する。また、誘導演算部34は、算出された垂直離着陸機1の機首方位と船舶5の船首方位との相対方位が、一例として、ゼロとなるように、フィードバック制御を実行する。さらに、誘導演算部34は、高度センサ25により計測された相対高度Δhが第1相対高度Δh1よりも低い第2相対高度Δh2となるようにフィードバック制御する。これにより、誘導演算部34は、垂直離着陸機1を着陸目標点2直上においてホバリングさせながら、垂直離着陸機1の高度を第2相対高度Δh2(図2参照)まで降下させる。第2相対高度Δh2は、例えば、3mである。このとき、誘導演算部34は、垂直離着陸機1の降下速度を第1降下速度とする。第1降下速度は、例えば、0.6m/sである。そして、誘導演算部34は、ステップS52として、再び画像相対位置演算処理を実行する。
【0056】
誘導演算部34は、ステップS53として、ステップS52で算出された相対位置(X、Y)が第3しきい値(所定しきい値)以内であるか否か、および、着陸モードボタンがオンされているか否かを判定する。第3しきい値は、高高度ホバリングにおける第2しきい値以下となる値として設定される。また、着陸モードボタンは、船舶5の操作表示部90に設けられた制御モードの移行指示を入力するためのボタンであり、船舶5に乗員するオペレータによってオンオフされる。オペレータは、垂直離着陸機1が第2相対高度Δh2において安定して飛行できているか否かを目視で確認し、垂直離着陸機1が安定して飛行できている場合に、着陸モードボタンをオンする。ステップS53は、低高度ホバリングモードから着陸モードへと移行するための第2の条件(所定条件)が成立しているか否かを判定している。すなわち、第一実施形態において、第2の条件は、相対位置(X、Y)が第3しきい値以内となる他、オペレータにより着陸モードへのモード移行の指示がなされたことを含む。なお、オペレータは、垂直離着陸機1が安定していない場合であっても、着陸モードボタンをオンにしてもよい。
【0057】
誘導演算部34は、相対位置(X、Y)が第3しきい値以内でないと判定した場合(ステップS53でNo)、ステップS51以降の処理を再び実行する。また、誘導演算部34は、着陸モードボタンがオンされていないと判定した場合(ステップS53でNo)にも、ステップS51以降の処理を再び実行する。そして、誘導演算部34は、垂直離着陸機1が、着陸目標点2に対する相対位置(X、Y)が第3しきい値以内となる位置にあり、かつ、第2相対高度Δh2まで降下するように、ステップS51以降の処理が繰り返し実行される。誘導演算部34は、相対位置(X、Y)が第3しきい値以内であり、かつ、着陸モードボタンがオンされていると判定した場合(ステップS53でYes)、低高度ホバリングモードを終了し、次の制御モードへと移行する。
【0058】
(着陸モード)
図9の説明に戻る。誘導演算部34は、低高度ホバリングモードを終了すると、ステップS4として、着陸モードを実行する。着陸モードについて、図14を参照しながら詳細に説明する。着陸モードにおいて、誘導演算部34は、図14のステップS61に示すように、画像相対位置演算処理で算出された相対位置(X、Y)がゼロとなるように、フィードバック制御を実行する。また、誘導演算部34は、算出された垂直離着陸機1の機首方位と船舶5の船首方位との相対方位が、一例として、ゼロとなるように、フィードバック制御を実行する。さらに、誘導演算部34は、高度センサ25により計測された相対高度Δhが第3相対高度Δh3となるまでの間、降下率を一定とする垂直速度制御を実行している。降下率は、単位時間当たりに降下する高度の度合いである。誘導演算部34は、垂直速度制御において、垂直離着陸機1の降下速度を第2降下速度としている。これにより、誘導演算部34は、垂直離着陸機1の相対高度Δhを第3相対高度Δh3(図2参照)まで降下させる。第3相対高度Δh3は、例えば10cmである。また、第2降下速度は、例えば、1.0m/sである。なお、本実施形態では、着陸モードにおいて垂直離着陸機1を速やかに着陸目標点2に着陸させるために、第2降下速度を上記第1降下速度よりも大きく設定したが、第1降下速度および第2降下速度は、いずれが大きく設定されてもよいし、同じ値であってもよい。さらに、誘導演算部34は、垂直離着陸機1の高度が第3相対高度Δh3に到達すると、第3相対高度Δh3に到達したときの、垂直離着陸機1の姿勢角に関する制御量を保持したまま、垂直離着陸機1をさらに降下させる。なお、姿勢角のみではなく、相対位置(X、Y)、相対方位、及び相対速度に関する制御量について、全てを保持した状態、全てを保持していない状態、または、一部を保持した状態で、垂直離着陸機1を着陸目標点2に着陸させるものとしてもよい。
【0059】
誘導演算部34は、ステップS62として、カメラ10で少なくとも1つのマーカー7を捕捉できているか否か、すなわち着陸目標点2を捕捉できているか否かを判定する。カメラ10で少なくとも1つのマーカー7を捕捉できているか否かは、後述する画像相対位置演算処理のステップS12と同様の処理により算出することができる。誘導演算部34は、カメラ10で少なくとも1つのマーカー7を捕捉できていると判定した場合(ステップS62でYes)、ステップS63として、画像処理により相対位置(X、Y)を算出する。相対位置(X、Y)は、後述する画像相対位置演算処理のステップS14と同様の処理により算出することができる。一方、誘導演算部34は、カメラ10でマーカー7を1つも捕捉できていないと判定した場合(ステップS62でNo)、ステップS63の処理を省略し、ステップS64に進む。本実施形態において、着陸モードにおいては、垂直離着陸機1が着陸目標点2に十分に接近した状態であり、カメラ10でマーカー7を一時的に捕捉できないことがあったとしても、着陸目標点2の近傍に着陸できるとして、着陸モードを継続して実行する。なお、垂直離着陸機1が有人機の場合は、着陸モードの実行中において、パイロットの判断に基づいて着陸モードの実行を中断してもよい。
【0060】
飛行制御部36は、ステップS64として、垂直離着陸機1が着陸目標点2に着陸したか否かを判定する。垂直離着陸機1が着陸目標点2に着陸したか否かは、例えば垂直離着陸機1の図示しない脚部に接触式のセンサを設けておくこと等により、判定することができる。飛行制御部36は、垂直離着陸機1が着陸目標点2に着陸していないと判定した場合(ステップS64でNo)、再びステップS61以降の処理を実行する。これにより、垂直離着陸機1が着陸目標点2に着陸するまで、ステップS61の手順により垂直離着陸機1が降下するように制御される。そして、飛行制御部36は、垂直離着陸機1が着陸目標点2に着陸したと判定した場合(ステップS64でYes)、誘導演算部34は、着陸モードを終了する。これにより、図9に示す処理ルーチンも終了する。
【0061】
(画像相対位置演算処理)
次に、画像相対位置演算処理について、図15を参照しながら説明する。画像相対位置演算処理において、誘導演算部34は、ステップS11として、非常モードボタンがオフされているか否かを判定する。非常モードボタンは、船舶5の操作表示部90に設けられており、船舶5に乗員するオペレータによってオンオフされる。オペレータは、船舶5へ垂直離着陸機1が着陸することを中断すべきであると判断したとき、非常モードボタンをオンする。具体的には、オペレータは、例えば風の影響や何らかの故障の発生等によって垂直離着陸機1の飛行状態が不安定であることを目視により確認した場合に、非常モードボタンをオンする。
【0062】
誘導演算部34は、ステップS11において、非常モードボタンがオンされていると判定した場合(ステップS11でNo)、ステップS17として、非常モードの実行へと移行する。非常モードにおいて、誘導演算部34は、垂直離着陸機1をいったん船舶5から十分に離れた所定高度(例えば20m)まで上昇させ、現在の相対位置(X、Y)を維持させる。誘導演算部34は、図9に示す高高度ホバリングモードを実行するステップS2、及び低高度ホバリングモードを実行するステップS3の実行中において、非常モードを実行可能となっている。誘導演算部34は、非常モードの実行により、垂直離着陸機1をいったん船舶5から十分に離れた高度まで上昇させると、再び図9に示す処理をステップS1から改めて再開する。
【0063】
一方、誘導演算部34は、非常モードボタンがオフされていると判定した場合(ステップS11でYes)、ステップS12として、カメラ10で少なくとも1つのマーカー7を捕捉できているか否かを判定する。カメラ10で少なくとも1つのマーカー7を捕捉できているか否かは、カメラ10で撮影された画像内に、小マーカー72または大マーカー74の中心位置(Cx´,Cy´)、(Cx´´,Cy´´)を算出可能な情報が得られているか否かで判定することができる。つまり、カメラ10で撮影した画像の範囲内において、マーカー群7Gに含まれる複数のマーカー7のうち、少なくとも1つを画像処理によって認識できるか否かで判定することができる。
【0064】
誘導演算部34は、カメラ10で少なくとも1つのマーカー7を捕捉できていると判定した場合(ステップS12でYes)、ステップS13として、目標非捕捉カウンタを値0に設定する。そして、誘導演算部34は、ステップS14として、小マーカー72または大マーカー74の中心位置(Cx´,Cy´)、(Cx´´,Cy´´)と、カメラ10の方位(すなわち、同じ方位となる垂直離着陸機1の機首方位)と、垂直離着陸機1の高度(着陸目標点2に対する相対高度Δh)と、着陸目標点2に対する各マーカー72,74のオフセット量(Dx,Dy)とに基づいて、垂直離着陸機1と着陸目標点2との相対位置(X、Y)を算出する。上述したように、相対位置(X、Y)は、画像処理部32で算出されたカメラ固定座標系Cにおける小マーカー72または大マーカー74の中心位置(Cx´,Cy´)、(Cx´´,Cy´´)を、艦慣性系Sにおける垂直離着陸機1とマーカー72、74の中心位置(Sx´,Sy´)、(Sx´´,Sy´´)との相対位置(X´、Y´)に変換し、さらに、オフセット量(Dx,Dy)を加算することで、艦慣性系Sにおける垂直離着陸機1と着陸目標点2との相対位置(X、Y)に変換することで算出される。
【0065】
一方、誘導演算部34は、ステップS12において、カメラ10でマーカー7を1つも捕捉できていないと判定した場合(ステップS12でNo)、ステップS15として、目標非捕捉カウンタに値1を加算し、ステップS16として、目標非捕捉カウンタが所定値以内であるか否かを判定する。誘導演算部34は、目標非捕捉カウンタが所定値以内であると判定した場合(ステップS16でYes)、再びステップS11以降の処理を実行する。誘導演算部34は、目標非捕捉カウンタが所定値以内でないと判定した場合(ステップS16でNo)、ステップS17に進み、非常モードの実行へと移行する。すなわち、誘導演算部34は、目標非捕捉カウンタが所定値を超えることで、カメラ10でマーカー7を1つも連続して捕捉できない時間が所定時間以上となったと判断し、非常モードを実行する。
【0066】
以上説明したように、第一実施形態にかかる垂直離着陸機の自動着陸システム100は、垂直離着陸機1に搭載されたカメラ10(撮影装置)と、カメラ10で着陸目標点2に設けられたマーカー群7Gを撮影した画像に画像処理を施し、垂直離着陸機1と着陸目標点2との相対位置(X、Y)を取得する画像処理部32および誘導演算部34(相対位置取得部)と、相対位置(X、Y)がゼロになるように、垂直離着陸機1を制御する制御部30と、を備え、マーカー群7Gは、互いに中心位置を異ならせて並べて設けられる複数のマーカー7を含み、マーカー7は、着陸目標点2から離れた位置に配置されるものほど大きく、画像処理部32および誘導演算部34は、画像内で認識したマーカー7と着陸目標点2との距離(Dx,Dy)に基づいて、相対位置(X、Y)を取得する。
【0067】
この構成により、例えば、着陸目標点2が船舶5などの移動体上に設けられている場合に移動体が動揺したり、垂直離着陸機1の周囲で突風(ガスト)が発生したりするといった外乱が発生しても、マーカー群7Gに含まれる複数のマーカー7のいずれかを画像内で捕捉しやすくなる。また、着陸目標点2から離れた位置に配置されるマーカー7ほど大きいため、垂直離着陸機1の高度、すなわちマーカー群7Gまでの距離が比較的に大きい場合にも、大きいサイズのマーカー7を画像内で認識しやすくなる。そのため、垂直離着陸機1から着陸目標点2をより安定的に捕捉することができる。したがって、本実施形態にかかる垂直離着陸機1、垂直離着陸機1の自動着陸システム100、垂直離着陸機1の自動着陸方法によれば、垂直離着陸機1を着陸目標点2へと、より安定的に誘導することが可能となる。
【0068】
また、マーカー群7Gは、小マーカー72と、小マーカー72よりも着陸目標点2から離れた位置に配置される大マーカー74とを含む。この構成により、垂直離着陸機1の高度が比較的に高く、画像内で小マーカー72を認識できない場合にも、大マーカー74を認識しやすくなり、着陸目標点2をより安定的に捕捉することができる。また、垂直離着陸機1の高度が比較的に低い場合には、大マーカーよりも小さく、かつ、着陸目標点2の近くに設けられた小マーカー72により、着陸目標点2をより安定的に捕捉することができる。
【0069】
なお、ここでは、小マーカー72と大マーカー74との2種類の大きさのマーカー7を用いたが、マーカー群7Gは、3種類以上の大きさのマーカー7を含んでもよい。その場合、大きいマーカー7ほど着陸目標点2から離れた位置に配置されることが好ましい。また、マーカー群7Gは、単一の大きさのマーカー7のみで構成されてもよい。
【0070】
また、マーカー7は、1つずつに異なるID番号が割り付けられており、画像処理部32および誘導演算部34は、画像内で認識したマーカー7からID番号を取得し、ID番号に対応して予め記憶されたマーカー7と着陸目標点2との距離(Dx,Dy)に基づいて、相対位置(X、Y)を取得する。この構成により、マーカー7が保持する情報をID番号のみとすることができるため、マーカー7として簡易なものを用いることが可能となる。
【0071】
また、ID番号は、着陸目標点2に近いマーカー7ほど小さい番号が割り当てられ、画像処理部32および誘導演算部34は、画像内で認識した最もID番号が小さいマーカー7と、着陸目標点2との距離(Dx,Dy)に基づいて、相対位置(X、Y)を取得する。この構成により、着陸目標点2に近い位置に配置されるマーカー7をID番号の大きさで容易に判定することができる。また、当該マーカー7と着陸目標点2との距離(Dx,Dy)に基づいて、着陸目標点2の中心位置(Sx,Sy)にオフセットした相対位置(X、Y)を精度良く得ることが可能となる。
【0072】
なお、ID番号は、着陸目標点2に近いマーカー7ほど大きい番号が割り当てられ、画像処理部32および誘導演算部34は、画像内で認識した最もID番号が大きいマーカー7と、着陸目標点2との距離(Dx,Dy)に基づいて、相対位置(X、Y)を取得するものであってもよい。
【0073】
また、画像内で、ID番号が同じマーカー7を複数認識したときには、いずれのマーカー7を用いてもよいが、画像中央に近いマーカー7を優先的に用いることが好ましい。それにより、画像端部の近傍における歪みの影響を受けないようにして、着陸目標点2の中心位置(Sx,Sy)にオフセットした相対位置(X,Y)をより精度良く算出することができる。
【0074】
また、画像処理部32および誘導演算部34は、画像内で認識したすべてのマーカー7ごとに、着陸目標点2との距離(Dx,Dy)に基づいて相対位置(X、Y)を算出し、算出したすべての相対位置(X,Y)の平均値を最終的な相対位置(X,Y)として取得してもよい。より詳細には、画像処理部32において、画像内に認識したすべてのマーカー7について、1つずつ、上述した手法により着陸目標点2の中心位置(Sx,Sy)にオフセットした相対位置(X,Y)を算出する。そして、算出したすべての相対位置(X,Y)の平均値を、その時点における最終的な相対位置(X,Y)として取得する。
【0075】
この構成により、画像内で認識したすべてのマーカー7に基づいて、相対位置(X,Y)をより精度良く取得することができる。また、画像内で認識したすべてのマーカー7を用いるため、いずれのマーカー7を優先的に用いるかを予め設定しておく必要がなくなり、各マーカー7のID番号を任意に設定することが可能となる。
【0076】
また、マーカー7は、ID番号の情報に代えて、着陸目標点2との距離(Dx,Dy)の情報を保持するものであってもよい。その場合、画像処理部32は、画像内で認識したマーカー7のいずれかから、画像処理により、着陸目標点2との距離(Dx,Dy)の情報を取得し、取得した距離(Dx,Dy)に基づいて、着陸目標点2の中心位置(Sx,Sy)にオフセットした相対位置(X,Y)を算出する。この場合、画像内でマーカー7を複数認識したときには、いずれのマーカー7を用いてもよいが、着陸目標点2に近いマーカー7を優先的に用いることが好ましい。
【0077】
[第二実施形態]
次に、第二実施形態にかかる垂直離着陸機の自動着陸システム200および着陸制御方法について説明する。図16は、第二実施形態にかかる垂直離着陸機の自動着陸システムの一例を示す概略構成図である。第二実施形態にかかる自動着陸システム200は、図16に示すように、自動着陸システム100からデータ伝送装置40を省略した構成である。また、自動着陸システム200は、誘導演算部34に代えて、誘導演算部34Aを備える。自動着陸システム200の他の構成は、自動着陸システム100と同様であるため、説明を省略し、同じ構成要素には同じ符号を付す。また、誘導演算部34Aは、以下に説明する部分を除き、誘導演算部34と同様の機能を有するため、同様の機能については説明を省略する。
【0078】
また、第二実施形態において、船舶5は、データ伝送装置80および操作表示部90を備える必要がない。なお、図16においては、航法装置70を省略しているが、これは、垂直離着陸機1と船舶5との間で航法装置70により取得されるデータのやり取りを必要としないためである。
【0079】
第二実施形態において、自動着陸システム200は、船舶5側とのデータ通信を行わない。そのため、相対速度の算出に際して、船舶5から船体速度を取得することができない。そこで、第二実施形態において、誘導演算部34は、垂直離着陸機1と着陸目標点2との相対位置(X、Y)に基づいて相対速度を算出する。具体的には、誘導演算部34Aは、相対位置(X、Y)を擬似微分して相対速度を算出する。
【0080】
次に、第二実施形態における着陸制御方法の詳細について説明する。第二実施形態において、誘導演算部34Aは、図9に示すフローチャートのステップS1の処理を実行せず、他の手法により、カメラ10の撮影範囲Bにマーカー7が捕捉される程度まで、垂直離着陸機1を船舶5すなわち着陸目標点2に接近させる。他の手法としては、例えば、垂直離着陸機1にレーザー照射装置を搭載し、船舶5に向けてレーザーを照射して、反射波を垂直離着陸機1側で受信することにより、垂直離着陸機1と船舶5との相対位置を取得して、相対位置に基づいて垂直離着陸機1を船舶5(着陸目標点2)へと誘導させる等の手法が挙げられる。
【0081】
誘導演算部34Aは、カメラ10の撮影範囲Bにマーカー7が捕捉される程度まで、垂直離着陸機1が船舶5すなわち着陸目標点2に十分に接近すると、図15に示す画像相対位置演算処理のステップS14と同様の処理により相対位置(X、Y)を算出し、算出した相対位置(X、Y)が第1しきい値以内となると、図9のステップS2(図12)およびステップS3(図13)の処理に替えて、図17および図18に示す処理を実行する。図17は、第二実施形態における高高度ホバリングモードの処理手順の一例を示すフローチャートである。図18は、第二実施形態における低高度ホバリングモードの処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0082】
図17を参照しながら、第二実施形態における高高度ホバリングモードについて説明する。図17のステップS41AおよびステップS42Aは、図12のステップS41およびステップS42と同様の処理であるため、説明を省略する。なお、第二実施形態において、画像相対位置演算処理は、図15に示す処理と同様である。
【0083】
誘導演算部34Aは、ステップS43Aとして、ステップS42Aで算出された相対位置(X、Y)、垂直離着陸機1の姿勢角(ピッチ方向およびロール方向)の変化レートおよび相対速度が、対応する第1判定しきい値以内であるか否かを判定する。相対位置(X、Y)の対応する第1判定しきい値は、第一実施形態における第2しきい値である。また、姿勢角の変化レートおよび相対速度の対応する第1判定しきい値は、パラメータごとに個別に設定される。姿勢角の変化レートおよび相対速度に対応する第1判定しきい値は、第一実施形態においてオペレータが低高度ホバリングモードボタンをオンすることに代えて設けられるものである。したがって、姿勢角の変化レートおよび相対速度に対応する第1判定しきい値は、垂直離着陸機1が第1相対高度Δh1において安定して飛行できているといえる状態であることを満たすように設定される。
【0084】
誘導演算部34Aは、相対位置(X、Y)が対応する第1判定しきい値すなわち第2しきい値以内でないと判定した場合(ステップS43AでNo)、ステップS41A以降の処理を再び実行する。また、誘導演算部34Aは、姿勢角の変化レートおよび相対速度が対応する第1判定しきい値以内でないと判定した場合(ステップS43AでNo)にも、ステップS41A以降の処理を再び実行する。
【0085】
一方、誘導演算部34Aは、相対位置(X、Y)が第2しきい値以内であり、かつ、姿勢角の変化レートおよび相対速度が対応する第1判定しきい値以内であると判定した場合(ステップS43AでYes)、高高度ホバリングモードを終了し、低高度ホバリングモードへと移行する。ステップS43Aは、高高度ホバリングモードから低高度ホバリングモードへと移行するための第1の条件が成立しているか否かを判定している。すなわち、第二実施形態において、第1の条件は、相対位置(X、Y)が第2しきい値以内となる他、姿勢角の変化レートおよび相対速度が対応する第1判定しきい値以内であることを含む。
【0086】
図18を参照しながら、第二実施形態における低高度ホバリングモードについて説明する。図18のステップS51AおよびステップS52Aは、第一実施形態における図13のステップS51およびステップS52と同様の処理であるため、説明を省略する。
【0087】
誘導演算部34Aは、ステップS53Aとして、ステップS52Aで算出された相対位置(X、Y)、垂直離着陸機1の姿勢角(ピッチ方向およびロール方向)の変化レート、相対方位、相対速度、姿勢角(ロール方向、ピッチ方向)、着陸目標点2の水平方向の角度(ロール方向、ピッチ方向)および相対高度Δhが、対応する第2判定しきい値以内であるか否かを判定する。相対位置(X、Y)の対応する第2判定しきい値とは、第一実施形態における第3しきい値である。また、相対高度Δhの第2判定しきい値とは、第2相対高度Δh2である。相対高度Δhの第2判定しきい値は、低高度ホバリングモードにおいて、垂直離着陸機1が第2相対高度Δh2まで降下し安定したことを自動的に判定するために設けられる。
【0088】
また、垂直離着陸機1の姿勢角の変化レート、相対方位、相対速度、姿勢角、着陸目標点2の水平方向の角度の対応する第2判定しきい値は、パラメータごとに個別に設定される。なお、着陸目標点2の水平方向の角度は、船舶5の着陸目標点2が設けられた面の水平方向における角度であり、画像処理部32において、カメラ10で撮影されたマーカー7の画像に画像処理を施すことで算出することができる。姿勢角の変化レート、相対方位、相対速度、姿勢角、着陸目標点2の水平方向の角度に対応した第2判定しきい値は、第一実施形態においてオペレータが着陸モードボタンをオンすることに代えて設けられるものである。したがって、姿勢角の変化レート、相対方位、相対速度、姿勢角、着陸目標点2の水平方向の角度に対応した第2判定しきい値は、垂直離着陸機1が第2相対高度Δh2において安定して飛行できているといえる状態であることを満たすように設定される。なお、姿勢角の変化レート、相対速度の第2判定しきい値は、第1判定しきい値よりも小さな値であってもよいし、第1判定しきい値と同じ値であってもよい。
【0089】
誘導演算部34Aは、相対位置(X、Y)が対応する第2判定しきい値すなわち第3しきい値以内でないと判定した場合(ステップS53AでNo)、ステップS51A以降の処理を再び実行する。また、誘導演算部34Aは、相対高度Δhが対応する第1判定しきい値すなわち第2相対高度Δh2以内でないと判定した場合(ステップS53AでNo)、ステップS51A以降の処理を再び実行する。さらに、誘導演算部34Aは、姿勢角の変化レート、相対方位、相対速度、姿勢角、着陸目標点2の水平方向の角度が対応する第2判定しきい値以内でないと判定した場合(ステップS53AでNo)にも、ステップS51A以降の処理を再び実行する。
【0090】
一方、誘導演算部34Aは、相対位置(X、Y)が第2判定しきい値すなわち第3しきい値以内であり、相対高度Δhが第2相対高度Δh2以内であり、かつ、姿勢角の変化レート、相対方位、相対速度、姿勢角、着陸目標点2の水平方向の角度が対応する第2判定しきい値以内であると判定した場合(ステップS53AでYes)、低高度ホバリングモードを終了し、着陸モードへと移行する。ステップS53Aは、低高度ホバリングモードから着陸モードへと移行するための第2の条件(所定条件)が成立しているか否かを判定している。すなわち、第二実施形態において、第2の条件は、相対位置(X、Y)が第3しきい値以内となる他、姿勢角の変化レート、相対方位、相対速度、姿勢角、着陸目標点2の水平方向の角度および相対高度Δhが対応する第2判定しきい値以内であることを含む。
【0091】
以上のように、第二実施形態においては、高高度ホバリングモードおよび低高度ホバリングモードの他の制御例について説明した。このような第二実施形態においても、第一実施形態と同様に、複数のマーカー7を含むマーカー群7Gを用いて相対位置(X,Y)を取得することで、垂直離着陸機1を着陸目標点2へと、より安定的に誘導することが可能となる。
【0092】
また、第二実施形態にかかる垂直離着陸機の自動着陸システム200は、カメラ10で撮影したマーカー7に基づいて相対位置(X、Y)を算出でき、また、相対位置(X、Y)に基づいて相対速度を算出することができる。したがって、相対位置(X、Y)および相対速度の算出に際して、船舶5側とのデータ通信を行う必要がない。それにより、相対位置(X、Y)および相対速度に基づいて垂直離着陸機1を制御するとき、データ通信を行う必要がないことから、システムを簡素化することができる。
【0093】
また、第二実施形態においては、オペレータからの移行指示を必要とせず、垂直離着陸機1を安定して飛行させながら、高高度ホバリングモードから低高度ホバリングモード、低高度ホバリングモードから着陸モードへと自動的に移行させることができる。したがって、高高度ホバリングモードから低高度ホバリングモードへの移行、低高度ホバリングモードから着陸モードへの移行に際して、船舶5との間でデータのやり取りを行う必要がない。
【0094】
[第三実施形態]
次に、第三実施形態にかかる垂直離着陸機1の自動着陸システム300および着陸制御方法について説明する。図19は、第三実施形態にかかる自動着陸システムを示す概略構成図である。第三実施形態にかかる自動着陸システム300は、図19に示すように、第二実施形態にかかる自動着陸システム200の画像処理部32に代えて画像処理部32B、誘導演算部34Aに代えて誘導演算部34Bを備える。自動着陸システム300の他の構成は、自動着陸システム200と同様であるため、説明を省略し、同じ構成要素には同じ符号を付す。また、画像処理部32B、誘導演算部34Bは、以下に説明する部分を除き、画像処理部32、誘導演算部34と同様の機能を有するため、同様の機能については説明を省略する。
【0095】
また、第三実施形態において、船舶5は、第二実施形態と同様に、データ伝送装置80および操作表示部90を備える必要がない。なお、図19においては、航法装置70を省略しているが、これは、垂直離着陸機1と船舶5との間で航法装置70により取得されるデータのやり取りを必要としないためである。
【0096】
また、第三実施形態において、船舶5は、マーカー群7Gに接続された操作表示部95を備えている。そして、第三実施形態において、マーカー群7Gに含まれる複数のマーカー7は、例えば液晶ディスプレイといった図示しない表示装置に表示され、そのマーカー形状が可変とされている。マーカー7は、高高度ホバリングモードから低高度ホバリングモードへの移行を指示するための形状、低高度ホバリングモードから着陸モードへの移行を指示するための形状を少なくとも含んでいる。マーカー群7Gに含まれる複数のマーカー7は、高高度ホバリングモードから低高度ホバリングモードへの移行を指示するための形状、低高度ホバリングモードから着陸モードへの移行を指示するための形状へと、すべて一斉に変更される。また、各マーカー7は、いずれの形状であっても、第一実施形態と同様のID番号の情報または距離(Dx,Dy)の情報を含む。なお、マーカー群7G全体が1つの表示装置に表示されてもよいし、各マーカー7が1つずつ、あるいは、複数単位で個別の表示装置に表示されてもよい。
【0097】
画像処理部32Bは、カメラ10で撮影された画像を画像処理することで、画像内のマーカー7の形状を特定し、特定した形状に基づいた指示を誘導演算部34Bに出力する。具体的には、画像処理部32Bは、マーカー7が高高度ホバリングモードから低高度ホバリングモードへの移行を指示するための形状であると特定した場合、高高度ホバリングモードから低高度ホバリングモードへの移行指示を誘導演算部34Bに出力する。また、画像処理部32Bは、マーカー7が低高度ホバリングモードから着陸モードへの移行を指示するための形状であると特定した場合、低高度ホバリングモードから着陸モードへの移行指示を誘導演算部34Bに出力する。
【0098】
誘導演算部34Bは、第二実施形態の誘導演算部34Aと同様の手法で相対速度を算出する。それにより、第二実施形態と同様に、船舶5から船体速度を取得することなく、相対速度を取得することができる。
【0099】
次に、第三実施形態における着陸制御方法について説明する。第三実施形態において、誘導演算部34Bは、第二実施形態と同様に、図9に示すフローチャートのステップS1からステップS3の処理を実行せず、他の手法により、カメラ10の撮影範囲Bにマーカー7が捕捉される程度まで、垂直離着陸機1を船舶5すなわち着陸目標点2に接近させる。そして、誘導演算部34Bは、カメラ10の撮影範囲Bにマーカー7が捕捉される程度まで、垂直離着陸機1が船舶5すなわち着陸目標点2に十分に接近すると、図15に示す画像相対位置演算処理のステップS14と同様の処理により相対位置(X、Y)を算出し、算出した相対位置(X、Y)が第1しきい値以内となると、図9のステップS2(図12)およびステップS3(図13)の処理に替えて、図20および図21に示す処理を実行する。図20は、第三実施形態における高高度ホバリングモードの処理手順の一例を示すフローチャートである。図21は、第三実施形態における低高度ホバリングモードの処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0100】
図20を参照しながら、第三実施形態における高高度ホバリングモードについて説明する。図20のステップS41BおよびステップS42Bは、図12のステップS41およびステップS42と同様の処理であるため、説明を省略する。なお、第三実施形態においても、画像相対位置演算処理は、図15に示す処理と同様である。
【0101】
誘導演算部34Bは、ステップS43Bとして、ステップS42Bで算出された相対位置(X、Y)が第2しきい値以内であるか否か、および、マーカー7が低高度ホバリングモードへの移行を示す形状となっているか否かを判定する。マーカー7が低高度ホバリングモードへの移行を示す形状となっているか否かは、第一実施形態においてオペレータが低高度ホバリングモードボタンをオンすることに代えて設けられるものである。オペレータは、垂直離着陸機1が第1相対高度Δh1において安定して飛行できているか否かを目視で確認し、垂直離着陸機1が安定して飛行できている場合に、操作表示部95により、マーカー7を低高度ホバリングモードへの移行を示す形状に変化させる。
【0102】
誘導演算部34Bは、相対位置(X、Y)が対応する第2しきい値以内でないと判定した場合(ステップS43BでNo)、ステップS41B以降の処理を再び実行する。また、誘導演算部34Bは、マーカー7が低高度ホバリングモードへの移行を示す形状となっていないと判定した場合(ステップS43BでNo)にも、ステップS41B以降の処理を再び実行する。これにより、垂直離着陸機1は、第一実施形態と同様に、着陸目標点2に対する相対位置(X、Y)が第2しきい値以内となる位置にあり、かつ、第1相対高度Δh1が維持されるように、フィードバック制御によって飛行が制御される。
【0103】
誘導演算部34Bは、相対位置(X、Y)が第2しきい値以内であり、マーカー7が低高度ホバリングモードへの移行を示す形状となっていると判定した場合(ステップS43BでYes)、高高度ホバリングモードを終了し、低高度ホバリングモードへと移行する。第三実施形態において、ステップS43Bは、高高度ホバリングモードから低高度ホバリングモードへと移行するための第1の条件が成立しているか否かを判定している。すなわち、第三実施形態において、第1の条件は、相対位置(X、Y)が第2しきい値以内となる他、マーカー7が低高度ホバリングモードへの移行を示す形状となっていることを含む。
【0104】
図21を参照しながら、第三実施形態における低高度ホバリングモードについて説明する。図21のステップS51BおよびステップS52Bは、第一実施形態における図13のステップS51およびステップS52と同様の処理であるため、説明を省略する。
【0105】
誘導演算部34Bは、ステップS53Bとして、ステップS52Bで算出された相対位置(X、Y)が第3しきい値以内であるか否か、および、マーカー7が着陸モードへの移行を示す形状となっているか否かを判定する。マーカー7が着陸モードへの移行を示す形状となっているか否かは、第一実施形態において、オペレータが着陸モードボタンをオンすることに代えて設けられるものである。オペレータは、垂直離着陸機1が第2相対高度Δh2において安定して飛行できているか否かを目視で確認し、垂直離着陸機1が安定して飛行できている場合に、操作表示部95により、マーカー7を着陸モードへの移行を示す形状に変化させる。
【0106】
誘導演算部34Bは、相対位置(X、Y)が対応する第2しきい値以内でないと判定した場合(ステップS53BでNo)、ステップS51B以降の処理を再び実行する。また、誘導演算部34Bは、マーカー7が着陸モードへの移行を示す形状となっていないと判定した場合(ステップS53BでNo)にも、ステップS51B以降の処理を再び実行する。これにより、垂直離着陸機1は、第一実施形態と同様に、着陸目標点2に対する相対位置(X、Y)が第3しきい値以内となる位置にあり、かつ、第2相対高度Δh2が維持されるように、フィードバック制御によって飛行が制御される。
【0107】
誘導演算部34Bは、相対位置(X、Y)が第3しきい値以内であり、マーカー7が着陸モードへの移行を示す形状となっていると判定した場合(ステップS53BでYes)、低高度ホバリングモードを終了し、着陸モードへと移行する。第三実施形態において、ステップS53Bは、低高度ホバリングモードから着陸モードへと移行するための第2の条件(所定条件)が成立しているか否かを判定している。すなわち、第三実施形態において、第2の条件は、相対位置(X、Y)が第3しきい値以内となる他、マーカー7が着陸モードへの移行を示す形状となっていることを含む。
【0108】
以上のように、第三実施形態においては、各マーカー7のマーカー形状が可変である例について説明した。このような第三実施形態においても、第一実施形態と同様に、複数のマーカー7を含むマーカー群7Gを用いて相対位置(X,Y)を取得することで、垂直離着陸機1を着陸目標点2へと、より安定的に誘導することが可能となる。
【0109】
また、第三実施形態にかかる垂直離着陸機の自動着陸システム300においても、相対位置(X、Y)および相対速度の算出に際して、船舶5側とのデータ通信を行う必要がない。それにより、相対位置(X、Y)および相対速度に基づいて垂直離着陸機1を制御するとき、データ通信を行う必要がないことから、システムを簡素化することができる。
【0110】
また、第三実施形態においては、オペレータからのモード移行の指示をデータ通信により受信することなく、マーカー形状の変化に基づいて、高高度ホバリングモードから低高度ホバリングモード、低高度ホバリングモードから着陸モードへの移行を実行することができる。したがって、高高度ホバリングモードから低高度ホバリングモード、低高度ホバリングモードから着陸モードへの移行に際して、船舶5との間でデータのやり取りを行う必要がなく、通信せずにモード移行を指示することができ、例えば、電波封鎖環境下においてもモード移行を指示することができる。
【符号の説明】
【0111】
1 垂直離着陸機
2 着陸目標点
5 船舶
7 マーカー
7G マーカー群
72 小マーカー
72G 小マーカー群
74 大マーカー
74G 大マーカー群
10 カメラ
20,70 航法装置
25 高度センサ
30 制御部
32,32B 画像処理部
34,34A,34B 誘導演算部
36 飛行制御部
40,80 データ伝送装置
90,95 操作表示部
100,200,300 自動着陸システム
図1
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