(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】樹脂被覆部材
(51)【国際特許分類】
B32B 7/06 20190101AFI20241010BHJP
B32B 15/082 20060101ALI20241010BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20241010BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20241010BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20241010BHJP
E04F 13/12 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
B32B7/06
B32B15/082 B
B32B15/082 Z
B32B27/00 Z
B32B27/32 B
B32B27/40
E04F13/12 A
(21)【出願番号】P 2020191749
(22)【出願日】2020-11-18
【審査請求日】2023-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】509338994
【氏名又は名称】株式会社IHIインフラシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】武川 哲
(72)【発明者】
【氏名】中村 善彦
(72)【発明者】
【氏名】井合 雄一
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-169494(JP,A)
【文献】特開平04-212840(JP,A)
【文献】特開平01-009185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00、
E04F13/00-13/30、
C09J7/00-7/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼構造物を構成するための樹脂被覆部材であって、
鋼部材と、
前記
鋼部材の表面に被覆され、
ポリウレア、ウレタンおよび塩化ビニルから選択された一以上の樹脂よりなる樹脂層と、
を備え、
前記
鋼部材と前記樹脂層との間に設けられ、
フッ素樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂およびシリコーン樹脂より選択された一以上の剥離剤で形成される剥離層からなる剥離領域と、
前記
鋼部材と前記樹脂層との間に設けられ、前記剥離層を含まない非剥離領域と、
を有する、樹脂被覆部材。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂被覆部材であって、
前記剥離領域は、複数設けられており、お互いに離間している、樹脂被覆部材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の樹脂被覆部材であって、
前記
鋼部材と前記樹脂層との間の外周部は、前記非剥離領域で形成されている、樹脂被覆部材。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の樹脂被覆部材であって、
前記剥離領域は、ドット状またはライン状に設けられている、樹脂被覆部材。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の樹脂被覆部材であって、
前記
鋼部材と前記樹脂層との間の外周部に設けられ、接着剤または接着テープで形成される接着層を有する、樹脂被覆部材。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の樹脂被覆部材であって、
前記
鋼部材は、前記
鋼部材の表面に凹凸部を有しており、
前記剥離領域は、前記
鋼部材の凹凸部と前記樹脂層との間に設けられている、樹脂被覆部材。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載の樹脂被覆部材であって、
前記
鋼部材は、複数の部材板と、隣接する前記部材板を締結する締結部と、を有しており、
前記剥離領域は、前記
鋼部材の締結部と、前記樹脂層との間に設けられている、樹脂被覆部材。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つに記載の樹脂被覆部材であって、
前記樹脂層と前記剥離層との密着力は、前記
鋼部材と前記剥離層との密着力よりも大きい、樹脂被覆部材。
【請求項9】
請求項1から
8のいずれか1つに記載の樹脂被覆部材であって、
前記
鋼部材は、前記
鋼部材の表面に塗膜が設けられている、樹脂被覆部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂被覆部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラント、橋梁、水門等の構造物に使用されている鋼部材等の部材の表面に、樹脂シートを被覆して、部材の防食性や防水性等を高めることが行われている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、鋼部材等の部材に被覆された樹脂シート等の樹脂層が経年劣化等した場合には、劣化した樹脂層を部材から剥離した後に、再び、新たな樹脂層を被覆することが行われている。また、部材が塗装されている場合には、塗膜が経年劣化等したときに、樹脂層を剥離した後に、部材を再塗装し、新たな樹脂層を被覆することが行われている。
【0005】
ここで樹脂層を部材から剥離するときに、樹脂層と部材とが強固に密着していると、上述したような樹脂層の剥離作業に多大な時間を要する可能性がある。一方、樹脂層と部材との密着性が低い場合には、樹脂層が部材から剥がれ易くなり、樹脂層と部材との間の隙間から水等の腐食媒体が入り易くなる。このため防食性や防水性等が低下する可能性がある。
【0006】
そこで本開示の目的は、樹脂層の剥離性と密着性とをバランスよく高めることができる樹脂被覆部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る鋼構造物を構成するための樹脂被覆部材は、鋼部材と、前記鋼部材の表面に被覆され、ポリウレア、ウレタンおよび塩化ビニルから選択された一以上の樹脂よりなる樹脂層と、を備え、前記部材と前記樹脂層との間に設けられ、フッ素樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂およびシリコーン樹脂より選択された一以上の剥離剤で形成される剥離層からなる剥離領域と、前記部材と前記樹脂層との間に設けられ、前記剥離層を含まない非剥離領域と、を有する。
【0008】
本開示に係る樹脂被覆部材において、前記剥離領域は、複数設けられており、お互いに離間していてもよい。
【0009】
本開示に係る樹脂被覆部材において、前記鋼部材と前記樹脂層との間の外周部は、前記非剥離領域で形成されていてもよい。
【0010】
本開示に係る樹脂被覆部材において、前記剥離領域は、ドット状またはライン状に設けられていてもよい。
【0011】
本開示に係る樹脂被覆部材は、前記鋼部材と前記樹脂層との間の外周部に設けられ、接着剤または接着テープで形成される接着層を有していてもよい。
【0012】
本開示に係る樹脂被覆部材において、前記鋼部材は、前記部材の表面に凹凸部を有しており、前記剥離領域は、前記鋼部材の凹凸部と前記樹脂層との間に設けられていてもよい。
【0013】
本開示に係る樹脂被覆部材において、前記鋼部材は、複数の部材板と、隣接する前記部材板を締結する締結部と、を有しており、前記剥離領域は、前記鋼部材の締結部と、前記樹脂層との間に設けられていてもよい。
【0014】
本開示に係る樹脂被覆部材において、前記樹脂層と前記剥離層との密着力は、前記鋼部材と前記剥離層との密着力よりも大きくてもよい。
【0018】
本開示に係る樹脂被覆部材において、前記鋼部材は、前記鋼部材の表面に塗膜が設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0019】
上記構成の樹脂被覆部材によれば、樹脂層の剥離性と密着性とをバランスよく高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本開示の第一実施形態において、樹脂被覆部材の構成を示す断面模式図である。
【
図2】本開示の第一実施形態において、樹脂被覆部材の構成を示す平面模式図である。
【
図3】本開示の第一実施形態において、
図1に示す剥離領域よりも大きな円形状でドット状に形成された剥離領域を示す図である。
【
図4】本開示の第一実施形態において、円形状でドット状に不規則に形成された剥離領域を示す図である。
【
図5】本開示の第一実施形態において、四角形状でドット状に形成された剥離領域を示す図である。
【
図6】本開示の第一実施形態において、四角形状でライン状に形成された剥離領域を示す図である。
【
図7】本開示の第一実施形態において、樹脂被覆部材の製造方法を示すフローチャートである。
【
図8】本開示の第二実施形態において、樹脂被覆部材の構成を示す断面模式図である。
【
図9】本開示の第二実施形態において、樹脂被覆部材の構成を示す平面模式図である。
【
図10】本開示の第三実施形態において、樹脂被覆部材の構成を示す断面模式図である。
【
図11】本開示の第四実施形態において、樹脂被覆部材の構成を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔第一実施形態〕
以下に本開示の第一実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、樹脂被覆部材10の構成を示す断面模式図である。
図2は、樹脂被覆部材10の構成を示す平面模式図である。樹脂被覆部材10は、部材12と、部材12の表面に被覆されている樹脂層14と、を備えている。
【0022】
部材12は、鋼材等の金属材料で形成される金属部材や、コンクリート材料で形成されるコンクリート部材等で構成されている。部材12は、例えば、プラント、橋梁、水門等の構造物に使用されている構造部材等である。部材12は、例えば、平板部材等で構成されている。部材12は、防食性や防水性等を高めるために塗装されていてもよく、部材12の表面に塗膜が設けられていてもよい。
【0023】
樹脂層14は、部材12の表面に被覆されており、樹脂で形成されている。部材12の表面を樹脂層14で覆うことにより、部材12の表面を保護することができる。例えば、部材12の表面を樹脂層14で覆うことにより、部材12の防食性や防水性等を高めることができる。また、部材12の表面を樹脂層14で覆うことにより、部材12の表面の傷等の損傷を抑制することができる。樹脂層14の厚みは、例えば、100μmから3mmとすることが可能である。樹脂層14は、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂等で形成することが可能である。樹脂層14の樹脂には、例えば、ポリウレア樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂等を用いることができる。
【0024】
樹脂層14は、高弾性樹脂で形成されているとよい。樹脂層14が高弾性樹脂で形成されている場合には、樹脂層14が高い弾性力を有している。これにより樹脂層14にマイクロクラック等が生じた場合でも追従するので、樹脂層14の破断を抑制することができる。このような高弾性樹脂には、例えば、ポリウレア樹脂を用いるとよい。
【0025】
樹脂層14は、透明樹脂で形成されているとよい。樹脂層14が透明になるので、外側から部材12の表面状態を点検、観察等することができる。このような透明樹脂には、例えば、透明ポリウレア樹脂を用いるとよい。
【0026】
樹脂被覆部材10は、部材12と樹脂層14との間に設けられる剥離領域16と、部材12と樹脂層14との間に設けられる非剥離領域18と、を有している。部材12と樹脂層14との間に剥離領域16と非剥離領域18とを設けることにより、樹脂層14の剥離性と密着性とをバランスよく高めることができる。次に、剥離領域16と非剥離領域18とについて、詳細に説明する。
【0027】
剥離領域16は、部材12と樹脂層14との間に設けられ、剥離剤で形成される剥離層20から構成されている。剥離層20を設けることにより、樹脂層14と剥離層20との密着力及び部材12と剥離層20との密着力の少なくとも一方を、部材12と樹脂層14との密着力より小さくすることができる。剥離領域16では剥離層20を介在させることにより、部材12と樹脂層14との密着性が低下するので、部材12から樹脂層14を剥がすときに、樹脂層14を容易に剥がすことができる。
【0028】
剥離層20は、剥離剤で形成されている。剥離剤には、例えば、フッ素樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、水溶性樹脂等を用いることができる。
【0029】
剥離領域16は、少なくとも1つ設けられていればよく、複数設けられているとよい。剥離領域16が複数設けられている場合には、剥離領域16同士をお互いに離間させて設けるとよい。樹脂被覆部材10の使用中に、複数の剥離領域16の1つで部材12と樹脂層14との間に剥離が生じた場合でも、剥離領域16同士が非連続であり接触していないので、剥離の連鎖が抑制される。これにより、例えば、剥離領域16の剥離箇所から水等の腐食媒体が部材12と樹脂層14との間の隙間に入り込んだ場合でも、腐食媒体は非剥離領域18で囲まれているので、腐食媒体の更なる拡散を抑制することができる。
【0030】
剥離領域16は、部材12と樹脂層14との間にドット状(点状)またはライン状(線状)等に設けることができる。剥離領域16の形状は、例えば、円形状や多角形状等とすることが可能である。剥離領域16は、全ての剥離領域16が同じ大きさで形成されていてもよいし、異なる大きさで形成されていてもよい。剥離領域16は、規則的に配列して設けられていてもよいし、不規則に設けられていてもよい。
【0031】
例えば、
図1、2に示す樹脂被覆部材10では、剥離領域16は、円形状でドット状に形成されている。
図3から
図5は、他の剥離領域22、24、26、28の構成を示す平面模式図である。
図3は、
図1に示す剥離領域16よりも大きな円形状でドット状に形成された剥離領域22を示す図である。
図4は、円形状でドット状に不規則に形成された剥離領域24を示す図である。
図5は、四角形状でドット状に形成された剥離領域26を示す図である。
図6は、四角形状でライン状に形成された剥離領域28を示す図である。なお、
図1から
図6に示す剥離領域16、22、24、26、28の構成は、あくまで例示であり、剥離領域の構成は、これらに限定されることはない。
【0032】
非剥離領域18は、部材12と樹脂層14との間に設けられ、剥離層20を含まないで構成されている。非剥離領域18は、剥離層20を含まないので、樹脂層14と部材12とが直接密着している。これにより非剥離領域18では、部材12と樹脂層14との密着性が高められる。このように非剥離領域18では、部材12と樹脂層14との密着性が高められているので、水等の腐食媒体が部材12と樹脂層14との間に入り込むことを抑制できる。
【0033】
部材12と樹脂層14との間の外周部は、非剥離領域18で形成することができる。部材12と樹脂層14との間の外周部の全周が、非剥離領域18で形成されているとよい。部材12と樹脂層14との間の外周部では、部材12と樹脂層14との密着性が高まるので、樹脂被覆部材10の外側からの水等の腐食媒体の侵入を抑制することができる。
【0034】
樹脂層14と剥離層20との密着力は、部材12と剥離層20との密着力よりも大きいとよい。樹脂被覆部材10から樹脂層14を剥がすときに、樹脂層14に剥離層20が付着するので、樹脂層14と剥離層20とを略同時に剥離することができる。これにより部材12の表面に剥離層20が残留することが抑制されるので、樹脂層14の剥離作業を効率よく行うことができる。例えば、部材12がステンレス鋼で形成され、樹脂層14がポリウレア樹脂で形成され、剥離層20がポリビニルアルコール樹脂で形成されている場合には、樹脂層14を剥がすときに樹脂層14と剥離層20とを略同時に剥離することができるので、部材12の表面への剥離層20の残留を抑制できる。
【0035】
次に、樹脂被覆部材10の製造方法について説明する。
図7は、樹脂被覆部材10の製造方法を示すフローチャートである。樹脂被覆部材10の製造方法は、剥離層形成工程(S10)と、樹脂層形成工程(S12)と、を備えている。
【0036】
剥離層形成工程(S10)は、部材12の表面の一部のみに剥離剤で剥離層20を形成し、剥離層20からなる剥離領域16と、剥離層20を含まない非剥離領域18とを形成する工程である。まず、部材12の表面に剥離層20を形成する前に、部材12の表面を前処理するとよい。部材12が金属部材である場合には、酸洗処理、機械研磨、脱脂洗浄等をして前処理することができる。これらの前処理は、一般的な金属材料の前処理方法を適用可能である。
【0037】
次に、剥離層20の形成方法について説明する。剥離層20は、剥離剤をスプレー塗布、スタンピング等して形成することが可能である。剥離層20の形成には、シルクスクリーンのように剥離剤が透過する穴と、剥離剤が透過しない穴とが設けられたシート材や、メッシュ材等を用いてもよい。剥離剤には、上述したフッ素樹脂等の剥離剤を用いることができる。剥離剤には、一般的に市販されているものを使用可能である。
【0038】
樹脂層形成工程(S12)は、剥離層20を設けた部材12の表面に、樹脂を被覆して樹脂層14を形成する工程である。樹脂層14は、剥離層20を設けた部材12の表面に、未硬化樹脂を吹付けまたは塗布等した後に、加熱等により樹脂硬化して形成することができる。樹脂には、上述したポリウレア樹脂等を用いることができる。樹脂には、一般的に市販されているものを使用可能である。このようにして樹脂被覆部材10を製造することができる。
【0039】
以上、上記構成の樹脂被覆部材によれば、部材と、部材の表面に被覆され、樹脂で形成される樹脂層と、を備え、部材と樹脂層との間に設けられ、剥離剤で形成される剥離層からなる剥離領域と、部材と樹脂層との間に設けられ、剥離層を含まない非剥離領域と、を有している。これにより、樹脂層の剥離性と密着性とをバランスよく高めることができる。
【0040】
例えば、部材の表面が塗装されている場合には、塗膜の経年劣化等により部材の表面を再塗装する場合がある。このような場合には、樹脂被覆部材の樹脂層を剥がしてから、部材の表面の劣化した塗膜を除去し、部材の表面に再塗装が行われる。通常、部材と樹脂層との密着力は高いので、樹脂被覆部材から樹脂層を剥がす際には、樹脂層が部材から剥がれにくく、多大な労力を要する。これに対して部材と樹脂層との間に剥離領域が設けられている場合には、樹脂層が部材から剥離し易くなるので、樹脂層を容易に剥がすことができる。また、非剥離領域では、部材と樹脂層との密着力が高いので、樹脂被覆部材の使用中に、防食性や防水性等を確保することができる。
【0041】
〔第二実施形態〕
以下に本開示の第二実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、上記の実施形態と同様の構成には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。第二実施形態は、第一実施形態に対して、部材と樹脂層との間の外周部に接着層が設けられている点において相違している。次に、第二実施形態の樹脂被覆部材について詳細に説明する。
【0042】
図8は、樹脂被覆部材30の構成を示す断面模式図である。
図9は、樹脂被覆部材30の構成を示す平面模式図である。樹脂被覆部材30は、部材12と樹脂層14との間の外周部に、接着層32が設けられている。これにより部材12と樹脂層14との間の外周部において、部材12と樹脂層14との密着性が更に高められるので、樹脂被覆部材30の外側から樹脂層14と部材12との間に水等の腐食媒体の侵入を更に抑制することができる。また、部材12の表面の外周部は、通常、平坦で形成されているので、樹脂層14を剥がすときには、工具(皮スキ、グラインダ等)を用いて樹脂層14を容易に剥離することができる。接着層32は、接着剤や接着テープ等で形成することが可能である。接着剤や接着テープ等については、一般的な樹脂系接着剤等の市販品を用いることができる。
【0043】
接着層32は、部材12と樹脂層14との間の外周部の一部のみに設けられていてもよいが、部材12と樹脂層14との間の外周部の全周に設けられているとよい。また、接着層32は、部材12と樹脂層14との間の外周部のみに設けられており、部材12と樹脂層14との間の外周部以外の箇所には設けられていないとよい。接着層32は、部材12と樹脂層14との間の外周部のみに設けられていることにより、樹脂層14を剥がすときに容易に剥離することができる。
【0044】
樹脂層14と接着層32との接着力は、部材12と接着層32との接着力よりも大きいとよい。樹脂層14を剥がすときに、樹脂層14に接着層32が付着するので、樹脂層14と接着層32とを略同時に剥がすことができる。これにより、部材12の表面に接着層32が残留することを抑制できるので、樹脂層14の剥離作業を容易に行うことができる。
【0045】
樹脂層14と接着層32との接着力は、樹脂層14の機械的強度よりも小さいとよい。樹脂層14と接着層32との接着力を樹脂層14の機械的強度よりも小さくすることにより、樹脂層14を剥がすときに、樹脂層14の破断を抑制して、樹脂層14を剥離することができる。これにより樹脂層14の剥離作業性を高めることが可能となる。
【0046】
次に、樹脂被覆部材30の製造方法について説明する。樹脂被覆部材30の製造方法は、第一実施形態の樹脂被覆部材10の製造方法と、剥離層形成工程が相違している。剥離層形成工程では、第一実施形態の剥離層形成工程(S10)と同様にして剥離領域16と非剥離領域18とを形成すると共に、部材12の表面の外周部に接着剤や接着テープ等で接着層32を形成する。樹脂層形成工程は、第一実施形態の樹脂層形成工程(S12)と同様であるので詳細な説明を省略する。
【0047】
以上、上記構成によれば、第一実施形態の効果を奏すると共に、部材と樹脂層との間の外周部において、部材と樹脂層との密着力がより高くなるので、樹脂被覆部材の防食性や防水性等をより向上させることができる。
【0048】
〔第三実施形態〕
以下に本開示の第三実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、上記の実施形態と同様の構成には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。第三実施形態は、第一実施形態と主に部材の構成が相違している。次に、第三実施形態の樹脂被覆部材について詳細に説明する。
【0049】
図10は、樹脂被覆部材40の構成を示す断面模式図である。樹脂被覆部材40の部材42は、部材42の表面に凹凸部44を有している。部材42の凹凸部44は、特に限定されないが、突起、ウエブ、フランジ等で構成することができる。部材42は、平坦部と、凹凸部44と、を備えることができる。
【0050】
部材42の平坦部には、剥離領域16と、非剥離領域18とを設けることができる。剥離領域16は、部材42の表面に形成した剥離層20で構成されている。なお、部材42の平坦部には、剥離領域16を設けないようにしてもよく、部材42の平坦部は、非剥離領域18のみで構成されるようにしてもよい。
【0051】
部材42の凹凸部44には、剥離領域46が設けられている。剥離領域46は、部材42の凹凸部44に形成した剥離層48で構成されている。剥離領域46は、部材42の凹凸部44の全面に設けられていてもよいし、部材42の凹凸部44の一部のみに設けられていてもよい。部材42の凹凸部44の一部のみに剥離領域46を設ける場合には、部材42の凹凸部44の表面に、剥離層48をドット状やライン状に設けるとよい。
【0052】
樹脂層14が部材42の凹凸部44に直接被覆される場合には、凹凸部44のアンカー効果により樹脂層14の密着力がより強固になる。このため、樹脂層14を剥がすときに、樹脂層14の破断等が生じて、樹脂層14の剥離作業性が低下する。一方、部材42の凹凸部44に剥離層48を形成して剥離領域46を設けることにより、部材42の凹凸部44と樹脂層14との密着力が低下するので、樹脂層14を剥がすときに樹脂層14を部材42から剥離し易くすることができる。また、上述したように凹凸部44はアンカー効果により密着力がより強固になるので、凹凸部44に剥離領域46を設けた場合でも、樹脂層14との密着力をある程度得ることができる。
【0053】
部材42の凹凸部44の剥離層48は、部材42の平坦部の剥離層20の剥離剤と同じ剥離剤を適用してもよいし、異なる剥離剤を適用してもよい。部材42の凹凸部44の剥離層48と、部材42の平坦部の剥離層20とを同じ剥離剤で形成することにより、樹脂被覆部材40の生産性を向上させることができる。また、部材42の凹凸部44の剥離層48と、部材42の平坦部の剥離層20とを異なる剥離剤で形成する場合には、凹凸部44の剥離層48は、平坦部の剥離層20よりも剥離作用が強い剥離剤を用いるとよい。上述したように凹凸部44はアンカー効果により樹脂層14との密着力がより強固になるからである。
【0054】
次に、樹脂被覆部材40の製造方法について説明する。樹脂被覆部材40の製造方法は、第一実施形態の樹脂被覆部材10の製造方法と、剥離層形成工程が相違している。剥離層形成工程では、第一実施形態の剥離層形成工程(S10)と同様にして剥離領域16と非剥離領域18とを形成すると共に、部材42の凹凸部44の表面に剥離領域46を形成する。部材42の凹凸部44の剥離層48の形成方法については、部材42の平坦部の剥離層20の形成方法と同様の方法で行うことができる。樹脂層形成工程は、第一実施形態の樹脂層形成工程(S12)と同様であるので詳細な説明を省略する。
【0055】
上記構成の樹脂被覆部材によれば、第一実施形態の効果を奏すると共に、部材の表面に凹凸部がある場合でも、樹脂層の剥離性と密着性とをバランスよく高めることができる。
【0056】
〔第四実施形態〕
以下に本開示の第四実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、上記の実施形態と同様の構成には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。第四実施形態は、上記の実施形態と主に部材の構成が相違している。次に、第四実施形態の樹脂被覆部材について詳細に説明する。
【0057】
図11は、樹脂被覆部材50の構成を示す断面模式図である。樹脂被覆部材50の部材52は、継ぎ手部材で構成されている。部材52は、複数の部材板54と、隣接する部材板54を締結する締結部56と、を有している。締結部56の締結方法は、特に限定されないが、例えば、ボルト継手等で構成することができる。
【0058】
図11に示す樹脂被覆部材50では、締結部56がボルト継手で構成されている。締結部56は、隣接する部材板54の突合せ端部同士の上側と下側とに添接板58を重ねて配置した状態で、各部材板54と各添接板58の重ね合わせ部に穿設してあるボルト孔に対して、ボルト60が挿通されている。添接板58の上側に突出するボルト60の先端部には、ワッシャ(図示せず)が嵌め込まれ、ナット62が螺着している。これにより、締結部56は、隣接する部材板54の突合せ端部同士を、添接板58を介して連結させている。
【0059】
部材板54の平坦部には、剥離領域16と、非剥離領域18とが設けられている。剥離領域16は、部材板54の表面に形成した剥離層20で構成されている。なお、部材板54の平坦部には、剥離領域16を設けないようにしてもよく、部材板54の平坦部は、非剥離領域18のみで構成されるようにしてもよい。
【0060】
締結部56には、剥離領域64が設けられている。剥離領域64は、剥離層66で構成されている。剥離領域64は、添接板58の表面、ボルト60の頭部の表面、添接板58の上側に突出するボルト60の先端部の表面、ナット62の表面等に設けられている。剥離領域64は、締結部56の全面に設けられていてもよいし、締結部56の一部のみに設けられていてもよい。部材52の締結部56の一部のみに剥離領域64を設ける場合には、添接板58の表面、ボルト60の頭部の表面、添接板58の上側に突出するボルト60の先端部の表面、ナット62の表面等に剥離層48をドット状やライン状に設けるとよい。
【0061】
樹脂層14が部材52の締結部56に直接被覆される場合には、締結部56のアンカー効果により樹脂層14の密着力がより強固になる。このため、樹脂層14を剥がすときに、樹脂層14の破断等が生じて剥離作業性が低下する。一方、部材52の締結部56に剥離層66を設けて剥離領域64を形成することにより、部材52の締結部56と樹脂層14との密着力を低下させて、樹脂層14を剥がすときに樹脂層14を部材52から剥離し易くすることができる。また、上述したように締結部56はアンカー効果により密着力がより強固になるので、締結部56に剥離層66を設けた場合でも、樹脂層14との密着力をある程度得ることができる。
【0062】
部材52の締結部56の剥離層66は、部材板54の剥離層20の剥離剤と同じ剥離剤を適用してもよいし、異なる剥離剤を適用してもよい。部材52の締結部56の剥離層66と、部材板54の剥離層20とを同じ剥離剤で形成することにより、樹脂被覆部材50の生産性を向上させることができる。また、部材52の締結部56の剥離層66と、部材板54の剥離層20とを異なる剥離剤で形成する場合には、締結部56の剥離層66は、部材板54の剥離層20よりも剥離作用が強い剥離剤を用いるとよい。上述したように締結部56はアンカー効果により樹脂層14との密着力がより強固になるからである。
【0063】
次に、樹脂被覆部材50の製造方法について説明する。樹脂被覆部材50の製造方法は、第一実施形態の樹脂被覆部材10の製造方法と、剥離層形成工程が相違している。剥離層形成工程では、第一実施形態の剥離層形成工程(S10)と同様にして剥離領域16と非剥離領域18とを形成すると共に、部材52の締結部56の表面に剥離領域64を形成する。部材52の締結部56の剥離層66の形成方法については、部材板54の剥離層20の形成方法と同様の方法で行うことができる。樹脂層形成工程は、第一実施形態の樹脂層形成工程(S12)と同様であるので詳細な説明を省略する。
【0064】
上記構成の樹脂被覆部材によれば、第一実施形態の効果を奏すると共に、部材に締結部がある場合でも、樹脂層の剥離性と密着性とをバランスよく高めることができる。
【符号の説明】
【0065】
10、30、40、50 樹脂被覆部材
12、42、52 部材
14 樹脂層
16、46、64 剥離領域
18 非剥離領域
20、48、66 剥離層
32 接着層
44 凹凸部
54 部材板
56 締結部
58 添接板
60 ボルト
62 ナット