IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ブリヂストンの特許一覧

特許7569669配管劣化診断方法、及び、配管劣化診断システム
<>
  • 特許-配管劣化診断方法、及び、配管劣化診断システム 図1
  • 特許-配管劣化診断方法、及び、配管劣化診断システム 図2
  • 特許-配管劣化診断方法、及び、配管劣化診断システム 図3
  • 特許-配管劣化診断方法、及び、配管劣化診断システム 図4
  • 特許-配管劣化診断方法、及び、配管劣化診断システム 図5
  • 特許-配管劣化診断方法、及び、配管劣化診断システム 図6
  • 特許-配管劣化診断方法、及び、配管劣化診断システム 図7
  • 特許-配管劣化診断方法、及び、配管劣化診断システム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】配管劣化診断方法、及び、配管劣化診断システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/954 20060101AFI20241010BHJP
   G01N 17/00 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
G01N21/954 A
G01N17/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020195499
(22)【出願日】2020-11-25
(65)【公開番号】P2022083893
(43)【公開日】2022-06-06
【審査請求日】2023-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 建郎
【審査官】橘 皇徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-194813(JP,A)
【文献】特開平10-153679(JP,A)
【文献】特開2020-187110(JP,A)
【文献】特開2020-129011(JP,A)
【文献】特開2009-175110(JP,A)
【文献】特開平09-311106(JP,A)
【文献】特開平09-273978(JP,A)
【文献】特開平07-318498(JP,A)
【文献】特開2019-138755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/954
G01N 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管の内部に撮影装置を挿入し、前記撮影装置により前記配管の内部の動画を撮影する、動画撮影ステップと、
処理部が、前記動画撮影ステップで撮影された前記動画から、複数の撮像画像を取得する、撮像画像取得ステップと、
前記処理部が、前記撮像画像取得ステップで取得した前記複数の撮像画像に基づいて、クラックの有無及び状態を検出する、クラック検出ステップと、
前記処理部が、前記クラック検出ステップの検出結果に基づいて、前記配管の劣化状態を診断する、診断ステップと、
を含む、配管劣化診断方法であって、
前記クラック検出ステップは、
前記処理部が、前記複数の撮像画像のそれぞれについて、クラックの有無を判定する、クラック有無判定ステップと、
前記処理部が、前記クラック有無判定ステップにおいてクラックが有ると判定した場合に、当該クラックの状態を判断する、クラック状態判断ステップと、
を含み、
前記配管劣化診断方法は、測定装置が、前記動画撮影ステップの前記撮影中において前記配管から前記撮影装置に作用する通管抵抗力を測定する、通管抵抗力測定ステップを、さらに含み、
前記撮像画像取得ステップにおいて、前記処理部は、前記動画のうち、単位時間当たりの前記通管抵抗力の変化率が所定値以上である時間帯の動画部分から、前記複数の撮像画像を取得する、配管劣化診断方法。
【請求項2】
前記クラック有無判定ステップにおいて、前記処理部は、前記複数の撮像画像のそれぞれについて、学習済みモデルに前記撮像画像を入力することで、クラックの有無の判定結果を前記学習済みモデルから取得し、
前記学習済みモデルは、配管の内部を撮像した学習画像とクラックの有無の判定結果とを関連付けた教師データを用いて、機械学習により生成されたものである、請求項1に記載の配管劣化診断方法。
【請求項3】
前記学習済みモデルは、配管の内部を撮像した学習画像と前記配管の周方向に延在するクラックの有無の判定結果とを関連付けた教師データを用いて、機械学習により生成されたものである、請求項に記載の配管劣化診断方法。
【請求項4】
前記クラック状態判断ステップにおいて、前記処理部は、前記クラック有無判定ステップにおいてクラックが有ると判定した前記撮像画像に基づいて、前記クラックの長さを算出する、請求項1に記載の配管劣化診断方法。
【請求項5】
前記クラック有無判定ステップにおいて、前記処理部は、前記複数の撮像画像のそれぞれについて、周方向に延在するクラックの有無を判定し、
前記クラック状態判断ステップにおいて、前記処理部は、前記クラック有無判定ステップにおいて周方向に延在するクラックが有ると判定した前記撮像画像から前記クラックの角度範囲を測定し、前記測定した前記クラックの角度範囲と前記配管の内周長さとに基づいて、前記クラックの長さを算出する、請求項1~のいずれか一項に記載の配管劣化診断方法。
【請求項6】
前記クラック状態判断ステップにおいて、前記処理部は、前記クラック有無判定ステップにおいて前記クラックが有ると判定した前記撮像画像に基づいて、前記クラックの深さを推定する、請求項1に記載の配管劣化診断方法。
【請求項7】
前記処理部が、出力部に、前記診断ステップの診断結果を出力させる、出力ステップを、さらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の配管劣化診断方法。
【請求項8】
前記配管は、可撓性を有するとともに、樹脂製である、請求項1~7のいずれか一項に記載の配管劣化診断方法。
【請求項9】
撮影装置と、
処理部と、
測定装置と、
備え、
前記処理部は、
前記撮影装置により配管の内部を撮影した動画から、複数の撮像画像を取得する、撮像画像取得処理と、
前記撮像画像取得処理で取得した前記複数の撮像画像に基づいて、クラックの有無及び状態を検出する、クラック検出処理と、
前記クラック検出処理の検出結果に基づいて、前記配管の劣化状態を診断する、診断処理と、
を行うように構成されており、
前記クラック検出処理は、
前記処理部が、前記複数の撮像画像のそれぞれについて、クラックの有無を判定する、クラック有無判定処理と、
前記処理部が、前記クラック有無判定処理においてクラックが有ると判定した場合に、当該クラックの状態を判断する、クラック状態判断処理と、
を含み、
前記測定装置は、前記動画の撮影中において前記配管から前記撮影装置に作用する通管抵抗力を測定するように構成されており、
前記撮像画像取得処理において、前記処理部は、前記動画のうち、単位時間当たりの前記通管抵抗力の変化率が所定値以上である時間帯の動画部分から、前記複数の撮像画像を取得する、配管劣化診断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管劣化診断方法、及び、配管劣化診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、配管の表面の一部を採取して配管の劣化状態を診断する方法がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-117212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の従来の方法では、配管の一部を採取する必要があることから、配管を傷つけるおそれがあった。
【0005】
本発明は、配管を傷つけることなく配管の劣化診断が可能な、配管劣化診断方法、及び、配管劣化診断システムを、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の配管劣化診断方法は、
配管の内部に撮影装置を挿入し、前記撮影装置により前記配管の内部の動画を撮影する、動画撮影ステップと、
処理部が、前記動画撮影ステップで撮影された前記動画から、複数の撮像画像を取得する、撮像画像取得ステップと、
前記処理部が、前記撮像画像取得ステップで取得した前記複数の撮像画像に基づいて、クラックの有無及び状態を検出する、クラック検出ステップと、
前記処理部が、前記クラック検出ステップの検出結果に基づいて、前記配管の劣化状態を診断する、診断ステップと、
を含む。
本発明の配管劣化診断方法によれば、配管を傷つけることなく配管の劣化診断が可能である。
【0007】
本発明の配管劣化診断方法において、
前記クラック検出ステップは、
前記処理部が、前記複数の撮像画像のそれぞれについて、クラックの有無を判定する、クラック有無判定ステップと、
前記処理部が、前記クラック有無判定ステップにおいてクラックが有ると判定した場合に、当該クラックの状態を判断する、クラック状態判断ステップと、
を含むと、好適である。
【0008】
本発明の配管劣化診断方法において、
前記クラック有無判定ステップにおいて、前記処理部は、前記複数の撮像画像のそれぞれについて、学習済みモデルに前記撮像画像を入力することで、クラックの有無の判定結果を前記学習済みモデルから取得し、
前記学習済みモデルは、配管の内部を撮像した学習画像とクラックの有無の判定結果とを関連付けた教師データを用いて、機械学習により生成されたものであると、好適である。
これにより、より正確にクラックの有無を判定することができる。
【0009】
本発明の配管劣化診断方法において、
前記学習済みモデルは、配管の内部を撮像した学習画像と前記配管の周方向に延在するクラックの有無の判定結果とを関連付けた教師データを用いて、機械学習により生成されたものであると、好適である。
これにより、クラック有無判定ステップにおいて、周方向に延在するクラックの有無を判定することができる。
【0010】
本発明の配管劣化診断方法において、
前記クラック状態判断ステップにおいて、前記処理部は、前記クラック有無判定ステップにおいてクラックが有ると判定した前記撮像画像に基づいて、前記クラックの長さを算出すると、好適である。
これにより、より正確にクラックの劣化診断をすることができる。
【0011】
本発明の配管劣化診断方法において、
前記クラック有無判定ステップにおいて、前記処理部は、前記複数の撮像画像のそれぞれについて、周方向に延在するクラックの有無を判定し、
前記クラック状態判断ステップにおいて、前記処理部は、前記クラック有無判定ステップにおいて周方向に延在するクラックが有ると判定した前記撮像画像から前記クラックの角度範囲を測定し、前記測定した前記クラックの角度範囲と前記配管の内周長さとに基づいて、前記クラックの長さを算出すると、好適である。
これにより、より正確にクラックの劣化診断をすることができる。
【0012】
本発明の配管劣化診断方法において、
前記クラック状態判断ステップにおいて、前記処理部は、前記クラック有無判定ステップにおいて前記クラックが有ると判定した前記撮像画像に基づいて、前記クラックの深さを推定してもよい。
【0013】
本発明の配管劣化診断方法において、
測定装置が、前記動画撮影ステップの前記撮影中において前記配管から前記撮影装置に作用する通管抵抗力を測定する、通管抵抗力測定ステップを、さらに含み、
前記撮像画像取得ステップにおいて、前記処理部は、前記動画のうち、単位時間当たりの前記通管抵抗力の変化率が所定値以上である時間帯の動画部分から、前記複数の撮像画像を取得すると、好適である。
これにより、より効率的にクラックの劣化診断をすることができる。
【0014】
本発明の配管劣化診断方法において、
前記処理部が、出力部に、前記診断ステップの診断結果を出力させる、出力ステップを、さらに含むと、好適である。
これにより、人が診断結果を知ることができる。
【0015】
本発明の配管劣化診断方法において、
前記配管は、可撓性を有するとともに、樹脂製であると、好適である。
【0016】
本発明の配管劣化診断システムは、
処理部を備え、
前記処理部は、
配管の内部を撮影した動画から、複数の撮像画像を取得する、撮像画像取得処理と、
前記撮像画像取得処理で取得した前記複数の撮像画像に基づいて、クラックの有無及び状態を検出する、クラック検出処理と、
前記クラック検出処理の検出結果に基づいて、前記配管の劣化状態を診断する、診断処理と、
を行うように構成されている。
本発明の配管劣化診断システムによれば、配管を傷つけることなく配管の劣化診断が可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、配管を傷つけることなく配管の劣化診断が可能な、配管劣化診断方法、及び、配管劣化診断システムを、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る配管劣化診断システムを概略的に示す概略図である。
図2】本発明の一実施形態に係る配管劣化診断方法を示すフローチャートである。
図3】配管内に撮影装置を通管する間における通管抵抗力を説明するための説明図である。
図4図1の学習済みモデルについて説明するための説明図である。
図5】クラックの長さの算出方法の説明図である。
図6】クラック進展特性の説明図である。
図7図6のクラック進展特性の基準時間と実際の時間との関係の説明図である。
図8】クラックが発生するメカニズムの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の配管劣化診断方法、及び、配管劣化診断システムは、任意の種類の配管の劣化状態を診断するために使用されることができ、可撓性を有する樹脂製の配管の劣化状態を診断するために使用されると好適なものであり、例えば、給水又は給湯用の可撓性を有する樹脂製の配管の劣化状態を診断するために使用されると好適なものである。
【0020】
以下、本発明に係る配管劣化診断方法、及び、配管劣化診断システムの実施形態について、図面を参照しながら例示説明する。
各図において共通する構成要素には同一の符号を付している。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る配管劣化診断システム1を示している。この配管劣化診断システム1は、配管Pにおけるクラックに着目して、配管Pの劣化状態を診断するように構成されている。配管劣化診断システム1が対象とする配管Pは、可撓性を有する配管であると好適であり、可撓性を有する樹脂製の配管であるとより好適であり、給水又は給湯用の可撓性を有する樹脂製の配管であるとさらに好適である。配管Pを構成し得る樹脂は、例えば、ポリブテン又は架橋ポリエチレンが挙げられる。
【0022】
ここで、まず、給水又は給湯用の可撓性を有する樹脂製の配管Pにおけるクラック発生のメカニズムについて、図8を参照しながら説明する。
図8は、配管Pを、曲げて配設された状態で示している。図8の配管Pは、給水又は給湯用の可撓性を有する樹脂製の配管である。図8に示すように、配管Pの中心軸線Oに沿う断面で観たときに、配管Pにおける曲げ部分では、配管Pの中心軸線Oに対して曲率中心C側の周壁部分に、圧縮方向の応力負荷が掛かるとともに、中心軸線Oに対して曲率中心Cとは反対側の周壁部分に、引張方向の応力負荷が掛かる。一方、一般的に、配管Pを構成する樹脂には、樹脂の酸化による劣化を抑制するために、酸化防止剤が添加されているが、その酸化防止剤は、配管Pの内周側から搬送流体中に流出する。また、一般的に、水道水には、消毒のために塩素が含まれているが、塩素は、樹脂の酸化による劣化を促進する作用がある。このように、配管Pを構成する樹脂内の酸化防止剤が徐々に減少することや、配管Pが常に配管P内の水に含まれる塩素に晒されること等に起因して、時間の経過とともに、配管Pは、内周側から徐々に劣化していく。また、配管P内の水が高温にされることも、配管Pの内周側の劣化に寄与し得る。配管Pの内周側の劣化がある程度進行すると、引張方向の応力負荷が常に掛かっている、中心軸線Oに対して曲率中心Cとは反対側の内周面部分に、配管Pの周方向に沿うクラックKが発生し易くなる。このように、配管においては、曲げて配設された場合に、長期間の使用後に、その曲げ部分で、配管の内周面に、周方向に延在するクラックが生じ易くなる。クラックは、配管Pの曲げ部分の曲げ半径(曲率半径)が小さいほど、生じ易くなる。クラックが生じた場合には、クラックが配管Pの周壁を貫通して、漏水の発生に至るおそれがある。
なお、一般的に、給水又は給湯用以外の用途の可撓性を有する樹脂製の配管にも、同様にして、曲げて配設された場合に、長期間の使用後に、その曲げ部分で、配管の内周面に、周方向に延在するクラックが生じ得る。
ここで、クラックに関し、「周方向に延在する」とは、略周方向に延在する場合も含む。
【0023】
図1に戻り、本実施形態の配管劣化診断システム1の構成を説明する。本実施形態の配管劣化診断システム1は、撮影装置2と、リール3と、送り出し装置4と、測定装置5と、ローカル端末6と、サーバ7と、クライアント端末8と、を備えている。
【0024】
撮影装置2は、配管Pの内部に挿入されることができるとともに、動画を撮影できるように構成されている。撮影装置2は、配管Pの内部に挿入されるように構成された、ケーブル状の挿入部21を有している。撮影装置2は、例えば、工業用内視鏡から構成される。
【0025】
リール3は、撮影装置2の挿入部21を巻き取るように構成されている。撮影装置2の挿入部21は、リール3に巻き掛けられている。
【0026】
送り出し装置4は、撮影装置2の挿入部21を所定の一定速度で配管P内へ送り出すように構成されている。
【0027】
測定装置5は、撮影装置2の挿入部21が配管P内に通管(挿入)される間において配管Pから撮影装置2の挿入部21に作用する力(以下、「通管抵抗力」という)を測定するように構成されている。測定装置5は、例えば、力センサーから構成される。
測定装置5は、図1に示すように、撮影装置2の挿入部21の先端部に装着されてもよいし、あるいは、撮影装置2の他の部分に装着されてもよい。
【0028】
ローカル端末6は、例えば、配管Pのある現場の付近に配置される。ローカル端末6は、例えば、パーソナルコンピュータ、タブレット、スマートホン、専用端末、サーバ等から構成される。
ローカル端末6は、例えば、処理部61と、通信部62と、記憶部63と、入力部64と、表示部65とを、備える。
【0029】
処理部61は、例えばCPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサを1つ又は複数含んで構成される。処理部61は、記憶部63に記憶されたプログラム631を実行することにより、通信部62、記憶部63、入力部64、及び表示部65を含む、ローカル端末6の全体を制御するように構成されている。処理部61の具体的な処理については、後述する。
【0030】
通信部62は、例えば、通信インタフェースから構成される。通信部62は、他の装置(例えば、サーバ7、撮影装置2、及び/又は、測定装置5)との間で、無線通信及び/又は有線通信により、様々な情報を送受信するように構成されている。
【0031】
記憶部63は、例えば、1つ又は複数のROMや1つ又は複数のRAM等から構成される。また、記憶部63は、メモリカード(USB等)のような外部記憶装置から構成されてもよい。また、記憶部63は、処理部61を構成するプロセッサの内部メモリであってもよい。記憶部63は、処理部61によって実行されるプログラム631等を、記憶している。
【0032】
入力部64は、例えばキーボード、マウス、及び/又は押しボタン等から構成され、ユーザからの入力を受け付けるように構成されている。
ローカル端末6は、入力部64を備えていなくてもよい。
【0033】
表示部65は、例えば、ディスプレイ又はモニタ等から構成される。表示部65と入力部64でタッチパネルを構成してもよい。表示部65は、処理部61で処理した結果、入力部64で入力された情報、記憶部63が記憶する情報等、種々の情報を、表示するように構成されている。
ローカル端末6は、表示部65を備えていなくてもよい。
【0034】
サーバ7は、例えば、配管Pのある現場から遠隔の場所に配置される。
サーバ7は、処理部71と、通信部72と、記憶部73とを、備える。
【0035】
処理部71は、例えばCPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサを1つ又は複数含んで構成される。処理部71は、記憶部73に記憶されたプログラム731を実行することにより、通信部72及び記憶部73を含む、サーバ7の全体を制御するように構成されている。処理部71の具体的な処理については、後述する。
【0036】
通信部72は、例えば、通信インタフェースから構成される。通信部72は、他の装置(例えば、サーバ7、及び/又は、クライアント端末8)との間で、無線通信及び/又は有線通信により、様々な情報を送受信するように構成されている。
【0037】
記憶部73は、例えば、1つ又は複数のROMや1つ又は複数のRAM等から構成される。また、記憶部73は、メモリカード(USB等)のような外部記憶装置から構成されてもよい。また、記憶部73は、処理部71を構成するプロセッサの内部メモリであってもよい。記憶部73は、処理部71によって実行されるプログラム731と、学習済みモデル732と、教師データ733とを、記憶している。記憶部73は、教師データ733を記憶していなくてもよい。学習済みモデル732及び教師データ733については、図4を参照しつつ後述する。
【0038】
クライアント端末8は、例えば、配管Pの製造メーカー又はメンテナンス業者の従業者によって使用される。クライアント端末8は、例えば、パーソナルコンピュータ、タブレット、スマートホン、専用端末、サーバ等から構成される。
クライアント端末8は、例えば、処理部81と、通信部82と、記憶部83と、出力部84とを、備える。
【0039】
処理部81は、例えばCPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサを1つ又は複数含んで構成される。処理部81は、記憶部83に記憶されたプログラム831を実行することにより、通信部82、記憶部83、及び出力部84を含む、クライアント端末8の全体を制御するように構成されている。処理部81の具体的な処理については、後述する。
【0040】
通信部82は、例えば、通信インタフェースから構成される。通信部82は、他の装置(例えば、サーバ7)との間で、無線通信及び/又は有線通信により、様々な情報を送受信するように構成されている。
【0041】
記憶部83は、例えば、1つ又は複数のROMや1つ又は複数のRAM等から構成される。また、記憶部83は、メモリカード(USB等)のような外部記憶装置から構成されてもよい。また、記憶部83は、処理部81を構成するプロセッサの内部メモリであってもよい。記憶部83は、処理部81によって実行されるプログラム831等を、記憶している。
【0042】
出力部84は、サーバ7から受け取った診断結果等、種々の情報を、出力するように構成されている。出力部84は、文字、画像、動画等を表示するように構成された表示部(図示せず)を有してもよい。表示部は、例えば、ディスプレイ又はモニタ等から構成される。出力部84は、紙等の媒体に印刷するように構成された印刷部を有してもよい。印刷部は、例えば、プリンタ等から構成される。出力部84は、音声を出力するように構成された音声出力部を有してもよい。音声出力部は、例えば、スピーカー等から構成される。
【0043】
なお、上記とは別の見方をすると、配管劣化診断システム1は、処理部91と、記憶部92とを、備えている。
処理部91は、例えばCPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサを1つ又は複数含んで構成される。処理部91は、記憶部92に記憶されたプログラム93を実行することにより、様々な処理をするように構成されている。
記憶部92は、例えば、1つ又は複数のROMや1つ又は複数のRAM等から構成される。また、記憶部92は、メモリカード(USB等)のような外部記憶装置から構成されてもよい。また、記憶部92は、処理部91を構成するプロセッサの内部メモリであってもよい。記憶部92は、処理部91によって実行されるプログラム93と、学習済みモデル732と、教師データ733とを、記憶している。
本実施形態において、処理部91は、ローカル端末6の処理部61と、サーバ7の処理部71と、クライアント端末8の処理部81とから、構成されている。また、本実施形態において、記憶部92は、ローカル端末6の記憶部63と、サーバ7の記憶部73と、クライアント端末8の記憶部83とから、構成されている。また、本実施形態において、プログラム93は、ローカル端末6のプログラム631と、サーバ7のプログラム731と、クライアント端末8のプログラム831とから、構成されている。このように、本実施形態において、処理部91、記憶部92、及びプログラム93は、それぞれ、ローカル端末6、サーバ7、及びクライアント端末8の3つの装置に分散して設けられている。ただし、処理部91、記憶部92、及びプログラム93は、それぞれ、任意の1つの装置に集約して設けられてもよいし、あるいは、任意の複数の装置に分散して設けられてもよい。
【0044】
つぎに、図2図7を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る配管劣化診断方法について説明する。本実施形態に係る配管劣化診断方法は、上述した本発明の一実施形態に係る配管劣化診断システム1を用いるものである。
図2は、本発明の一実施形態に係る配管劣化診断方法を示すフローチャートである。図2に示すように、本実施形態に係る配管劣化診断方法は、動画撮影ステップS1と、通管抵抗力測定ステップS2と、フラグ処理ステップS3と、撮像画像取得ステップS4と、画像処理ステップS5と、クラック検出ステップS6と、診断ステップS7と、出力ステップS8とを、含む。以下、これらのステップについて、順番に説明する。
【0045】
動画撮影ステップS1では、図1に示すように、配管Pの内部に撮影装置2を挿入し、撮影装置2により配管Pの内部の動画を撮影する。
より具体的に、本実施形態では、図1に示すように、送り出し装置4によって、撮影装置2の挿入部21を、所定の一定速度で配管P内へ送り出す。その間、撮影装置2により、配管Pの内部の動画を撮影する。
撮影装置2が撮影した動画は、撮影中又は撮影後に、ローカル端末6に渡される。撮影装置2からローカル端末6へは、無線通信又は有線通信によって動画が渡されてもよいし、あるいは、メモリカード(USB等)のような外部記憶装置を介して動画が渡されてもよい。
【0046】
通管抵抗力測定ステップS2では、図1に示すように、動画撮影ステップS1の撮影中において、測定装置5が、配管Pから撮影装置2(具体的には、挿入部21)に作用する通管抵抗力を測定する。
通管抵抗力測定ステップS2は、動画撮影ステップS1と並行して行われる。
測定装置5は、連続的に、又は、所定時間間隔毎に、通管抵抗力を測定する。
測定装置5が測定した通管抵抗力の測定結果は、測定中又は測定後に、ローカル端末6に渡される。測定装置5からローカル端末6へは、無線通信又は有線通信によって通管抵抗力の測定結果が渡されてもよいし、あるいは、メモリカード(USB等)のような外部記憶装置を介して通管抵抗力の測定結果が渡されてもよい。
なお、撮影装置2の挿入部21が一定速度で配管P内に通管(挿入)される間、通管抵抗力(N)は、例えば図3に示すようになる。図3のグラフにおいて、横軸は通管中の時刻(秒)であり、縦軸は通管抵抗力(N)である。配管Pのうち、曲げ半径(曲率半径)が一定である部分では、図3において破線で示すように、単位時間当たりの通管抵抗力の変化率(増加率、傾き)は、一定となる。一方、配管Pのうち、曲げ半径が非一定である部分では、図3において実線で示すように、単位時間当たりの通管抵抗力の変化率(増加率、傾き)が、非一定となり、特に曲げ半径が小さい部分(曲げのきつい部分)Mでは、単位時間当たりの通管抵抗力の変化率(増加率、傾き)が特に大きくなる。
【0047】
フラグ処理ステップS3では、処理部91(本実施形態では、ローカル端末6の処理部61)が、通管抵抗力測定ステップS2で得られた通管抵抗力の測定結果に基づいて、動画撮影ステップS1で撮影された動画に対して、フラグ処理を行う。
ここで、本実施形態において、処理部91(本実施形態では、ローカル端末6の処理部61)は、当該動画のうち、単位時間当たりの通管抵抗力の変化率(増加率、傾き)が所定値以上である時間帯M(図3)の動画部分に、フラグ処理を行う。これにより、当該動画のうち、配管Pにおける曲げ半径が小さい部分(曲げのきつい部分)を撮影した時間帯Mの動画部分に、フラグ処理をすることができる。あるいは、処理部91(本実施形態では、ローカル端末6の処理部61)は、当該動画のうち、単位時間当たりの通管抵抗力の変化率(増加率、傾き)が所定値以上である時間帯Mを含む時間帯の動画部分に、フラグ処理を行ってもよい。この場合、当該動画のうち、配管Pにおける曲げ半径が小さい部分(曲げのきつい部分)を撮影した時間帯Mを含む時間帯の動画部分に、フラグ処理をすることができる。
なお、当該動画と、上記通管抵抗力の測定結果との紐づけは、例えば、時間(通管開始時点からの経過時間)により行うことができる。
処理部91(本実施形態では、ローカル端末6の処理部61)は、フラグ処理を、ユーザによる入力部64での操作によらずに、自動で行ってもよい。あるいは、処理部91(本実施形態では、ローカル端末6の処理部61)は、フラグ処理を、ユーザによる入力部64での操作に従って行ってもよい。この場合、例えば、表示部65には、動画撮影ステップS1で撮影された動画と、通管抵抗力測定ステップS2で得られた通管抵抗力の測定結果とが、表示され、ユーザは、表示部65に表示された動画及び測定結果を見ながら、上記動画部分を特定し、入力部64を操作することにより、当該動画部分にフラグ処理を行う。
フラグ処理ステップS3の後、ローカル端末6の処理部61は、通信部62に、上記フラグ処理を行った動画を、サーバ7の通信部72へと送信させる。
【0048】
撮像画像取得ステップS4では、処理部91(本実施形態では、サーバ7の処理部71)が、動画撮影ステップS1で撮影された動画(より具体的に、本実施形態では、フラグ処理ステップS3でフラグ処理された動画)から、複数の撮像画像を取得する、撮像画像取得処理を行う。
ここで、処理部91(本実施形態では、サーバ7の処理部71)は、当該動画の一部又は全部から、複数の撮像画像を取得する。例えば、処理部91(本実施形態では、サーバ7の処理部71)は、当該動画の一部又は全部を、フレーム毎に、静止画像である撮像画像に変換することにより、複数の撮像画像を取得する。ただし、処理部91(本実施形態では、サーバ7の処理部71)は、当該動画の一部又は全部を、複数のフレーム毎に、静止画像である撮像画像に変換することにより、複数の撮像画像を取得してもよい。
本実施形態では、撮像画像取得ステップS4において、処理部91(本実施形態では、サーバ7の処理部71)は、当該動画のうち、フラグ処理ステップS3でフラグ処理された動画部分(ひいては、単位時間当たりの通管抵抗力の変化率が所定値以上である時間帯Mの動画部分)から、複数の撮像画像を取得する。これにより、この後のクラック検出ステップS6において、配管Pのうち曲げ半径が小さい部分(曲げのきつい部分)について、重点的に、クラックの有無及び状態を検出することができるので、より効率的にクラックの劣化診断をすることができる。
【0049】
画像処理ステップS5では、処理部91(本実施形態では、サーバ7の処理部71)が、撮像画像取得ステップS4で取得した複数の撮像画像のそれぞれに対して、画像処理を行う。
ここで、処理部91(本実施形態では、サーバ7の処理部71)は、撮像画像をカラー画像から白黒画像にする白黒化処理を行うと、好適である。これに加えて又は代えて、処理部91(本実施形態では、サーバ7の処理部71)は、撮像画像のぼやけた部分をはっきりさせるようなエッジ強調処理を行うと、好適である。
画像処理ステップS5を行うことにより、この後のクラック検出ステップS6において、より正確に、クラックの有無及び状態を検出することができる。
【0050】
クラック検出ステップS6では、処理部91(本実施形態では、サーバ7の処理部71)は、撮像画像取得ステップS4で取得した複数の撮像画像(より具体的に、本実施形態では、画像処理ステップS5で画像処理がされた複数の撮像画像)に基づいて、クラックの有無及び状態を検出する、クラック検出処理を行う。
より具体的に、本実施形態において、クラック検出ステップS6は、クラック有無判定ステップと、クラック状態判断ステップとを、含む。
【0051】
まず、クラック有無判定ステップにおいて、処理部91(本実施形態では、サーバ7の処理部71)が、上記複数の撮像画像のそれぞれについて、クラックの有無を判定する、クラック有無判定処理を行う。ここで、処理部91(本実施形態では、サーバ7の処理部71)は、学習済みモデル732を用いて、クラックの有無を判定する。
ここで、図4を参照しつつ、学習済みモデル732について説明する。学習済みモデル732は、ニューラルネットワーク等の機械学習アルゴリズムに基づいて、教師データ733を用いて機械学習により生成されたものである。ニューラルネットワークを用いる場合、畳み込み処理を含む畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)を用いてもよいし、再帰的処理を含むリカレントニューラルネットワーク(RNN:Recurrent Neural Network)を用いてもよい。機械学習としては、ディープラーニングを採用してもよい。教師データ733は、配管の内部を撮像した学習画像LIとクラックの有無の判定結果(「クラック有り」又は「クラック無し」)JRとを関連付けたデータである。すなわち、教師データ733において、配管の内周面にクラックが有る学習画像LIに対しては「クラック有り」との判定結果JRが関連付けられており、配管の内周面にクラックが無い学習画像LIに対しては「クラック無し」との判定結果JRが関連付けられている。学習済みモデル732は、撮像画像TIが入力されると、クラックの有無の判定結果JRを出力するように構成されている。学習画像LIは、「クラック有り」の判定結果JRに対応付けられたものと「クラック無し」の判定結果JRに対応付けられたものとが、それぞれ複数ずつあると、判定精度を向上できるので、好適である。「クラック有り」の判定結果JRに対応付けられた複数の学習画像LIは、クラックの長さや周方向位置や数が様々であると、判定精度を向上できるので、好適である。クラックの有無の判定結果JRは、「クラック有り」及び「クラック無し」を、「〇」及び「×」等の記号で表してもよいし、あるいは、「1」及び「0」等の数値で表してもよいし、あるいは、「Y」及び「N」等の文字で表してもよい。
クラック有無判定ステップにおいて、処理部91(本実施形態では、サーバ7の処理部71)は、上記複数の撮像画像のそれぞれについて、学習済みモデル732に撮像画像TIを入力することで、クラックの有無の判定結果JRを学習済みモデル732から取得する。
本実施形態では、より具体的に、教師データ733は、配管の内部を撮像した学習画像LIと、周方向に延在するクラックの有無の判定結果JR(「クラック有り」又は「クラック無し」)とを、関連付けている。すなわち、教師データ733において、配管の内周面に周方向に延在するクラックが有る学習画像LIに対しては「クラック有り」との判定結果JRが関連付けられており、配管の内周面に周方向に延在するクラックが無い学習画像LIに対しては「クラック無し」との判定結果JRが関連付けられている。これにより、クラック有無判定ステップにおいて、処理部91(本実施形態では、サーバ7の処理部71)は、上記複数の撮像画像のそれぞれについて、周方向に延在するクラックの有無を判定する。
【0052】
処理部91(本実施形態では、サーバ7の処理部71)は、クラック有無判定ステップにおいてクラックが有ると判定した場合に、クラック状態判断ステップにおいて、当該クラックの状態を判断する、クラック状態判断処理を行う。
クラック状態判断ステップにおいて、処理部91(本実施形態では、サーバ7の処理部71)は、クラック有無判定ステップにおいてクラックが有ると判定した撮像画像TIに基づいて、クラックの長さを算出すると、好適である。ここで、処理部91(本実施形態では、サーバ7の処理部71)は、例えば、図5に示すように、撮像画像TIからクラックKの角度範囲θを測定し、測定したクラックKの角度範囲θと配管Pの内周長さとに基づいて、クラックKの長さを算出すると、好適である。すなわち、以下の式から算出することができる。
(クラックKの長さ)=(配管Pの内周長さ)×(クラックKの角度範囲θ°)/360°
ここで、「クラックKの角度範囲θ」とは、配管Pの中心軸線Oを中心とする、クラックKの周方向の一端から他端までの角度範囲(すなわち、クラックKの周方向両端と配管Pの中心軸線Oとを結んでなる角の角度)を指す。また、「配管Pの内周長さ」とは、配管Pの内周面の円周長さを指す。
配管Pの内周長さの情報は、例えば、予め、任意のタイミングで、ローカル端末6又はクライアント端末8からサーバ7に伝えられる。
クラック状態判断ステップにおいて、処理部91(本実施形態では、サーバ7の処理部71)は、クラック有無判定ステップにおいてクラックが有ると判定した撮像画像TIに基づいて、クラックの深さを推定してもよい。ここで、処理部91(本実施形態では、サーバ7の処理部71)は、例えば、上述のように算出したクラックKの長さに基づいて、クラックKの深さを推定すると、好適である。一般的に、クラックKは、長さが長いほど、深さが大きいという関係が成り立つ。よって、処理部91(本実施形態では、サーバ7の処理部71)は、例えば、上述のように算出したクラックKの長さが長いほど、深さが大きいように、クラックKの深さを推定すると、好適である。
【0053】
診断ステップS7において、処理部91(本実施形態では、サーバ7の処理部71)は、クラック検出ステップS6の検出結果に基づいて、配管Pの劣化状態を診断する、診断処理を行う。
ここで、処理部91(本実施形態では、サーバ7の処理部71)は、配管Pの劣化状態の診断として、例えば、配管Pの劣化度合を評価してもよいし、あるいは、配管Pの残存寿命を推定してもよい。
診断ステップS7において、処理部91(本実施形態では、サーバ7の処理部71)は、クラック検出ステップS6のクラック状態判断ステップにおいて算出したクラックKの長さに基づいて、配管Pの劣化状態を診断してもよい。この場合、処理部91(本実施形態では、サーバ7の処理部71)は、クラック検出ステップS6のクラック状態判断ステップにおいて算出したクラックKの長さが長いほど、劣化度合が高いと評価する、あるいは、より短い残存寿命を推定すると、好適である。あるいは、診断ステップS7において、処理部91(本実施形態では、サーバ7の処理部71)は、クラック検出ステップS6のクラック状態判断ステップにおいて算出したクラックKの深さに基づいて、配管Pの劣化状態を診断してもよい。この場合、処理部91(本実施形態では、サーバ7の処理部71)は、クラック検出ステップS6のクラック状態判断ステップにおいて算出したクラックKの深さが大きいほど、劣化度合が高いと評価する、あるいは、より短い残存寿命を推定すると、好適である。あるいは、診断ステップS7において、処理部91(本実施形態では、サーバ7の処理部71)は、クラック検出ステップS6のクラック状態判断ステップにおいて算出したクラックKの長さ及びクラックKの深さに基づいて、配管Pの劣化状態を診断してもよい。この場合、処理部91(本実施形態では、サーバ7の処理部71)は、クラック検出ステップS6のクラック状態判断ステップにおいて算出したクラックKの長さが長いほど、また、クラック検出ステップS6のクラック状態判断ステップにおいて算出したクラックKの深さが大きいほど、劣化度合が高いと評価する、あるいは、より短い残存寿命を推定すると、好適である。
なお、処理部91(本実施形態では、サーバ7の処理部71)は、クラック検出ステップS6のクラック状態判断ステップにおいて複数のクラックKの長さを算出した場合、そのうち最も長いクラックKの長さを用いて、診断ステップS7において配管Pの劣化状態を診断すると、好適である。同様に、処理部91(本実施形態では、サーバ7の処理部71)は、クラック検出ステップS6のクラック状態判断ステップにおいて複数のクラックKの深さを推定した場合、そのうち最も深いクラックKの深さを用いて、診断ステップS7において配管Pの劣化状態を診断すると、好適である。
また、処理部91(本実施形態では、サーバ7の処理部71)は、クラック検出ステップS6のクラック有無判定ステップにおいて、いずれの撮像画像においてもクラックが無いと判定した場合は、クラックKの長さ及び/又は深さを0mmとして、診断ステップS7において配管Pの劣化状態を診断すると、好適である。
【0054】
ここで、図6図7を参照しつつ、診断ステップS7において、処理部91(本実施形態では、サーバ7の処理部71)が、クラック検出ステップS6のクラック状態判断ステップにおいて算出したクラックKの長さに基づいて、配管Pの残存寿命を推定する方法の一例について、説明する。本例において、処理部91(本実施形態では、サーバ7の処理部71)は、図6に示すようなクラック進展特性を用いる。クラック進展特性は、基準時間とクラックの長さとの関係を表すものであり、すなわち、基準時間の経過とともにクラックの長さがどのように進展するかを表すものである。クラック進展特性は、予め、試験(例えば、促進試験)を実施した結果に基づいて、準備される。なお、前記促進試験としては、例えば、配管Pを曲げた状態で配管P内に通水し、配管P内を通る水の塩素濃度や温度を通常よりも高くするものが挙げられる。促進試験の結果に基づいてクラック進展特性を準備する場合、基準時間は、促進試験における試験時間とするとよい。図6の例のクラック進展特性においては、クラックの長さが所定閾値Lt(mm)であるときに、配管Pが寿命に達する(すなわち、残存寿命が0年)ものと設定されている。図6からわかるように、クラックKの長さが長いほど、より短い残存寿命が推定されることとなる。また、図7の表に例示するように、本例のクラック進展特性においては、基準時間と実際の時間との関係が、これまでの配管Pの使用期間に応じて決定される。具体的には、これまでの配管Pの使用期間が短いほど、より長い基準時間が実際の1年に対応付けられる。このようにすることで、クラックの長さだけでなく、配管Pの実際の使用頻度をも考慮して、残存寿命を推定することができる。よって、例えば、これまでの使用期間が24年であり、クラック検出ステップS6のクラック状態判断ステップにおいて算出したクラックKの長さがLt/2mmである場合は、クラックKの長さが所定閾値Ltに達するまでに掛かる基準時間が(T5-T3)時間であり(図6)、また、基準時間の100時間が実際の1年に対応することから(図7)、残存寿命は、(T5-T3)/100年(=(T5-T3)時間/(100時間/1年))と推定される。また、例えば、これまでの使用期間が12年であり、クラック検出ステップS6のクラック状態判断ステップにおいて算出したクラックKの長さがLt/2mmである場合は、クラックKの長さが所定閾値Ltに達するまでに掛かる基準時間が(T5-T3)時間であり(図6)、また、基準時間の200時間が実際の1年に対応することから(図7)、残存寿命は、(T5-T3)/200年(=(T5-T3)時間/(200時間/1年))と推定される。
図6に示すようなクラック進展特性のデータや、図7に示すような基準時間と実際の時間との関係を表すデータは、予め、記憶部92(本実施形態では、サーバ7の記憶部73)に記憶されている。
配管Pのこれまでの使用期間の情報は、例えば、予め、任意のタイミングで、ローカル端末6又はクライアント端末8からサーバ7に伝えられる。
【0055】
診断ステップS7の後、サーバ7の処理部71は、通信部72に、診断結果(例えば、劣化度合の情報又は残存寿命の情報)を、クライアント端末8の通信部82へと送信させる。
【0056】
出力ステップS8において、処理部91(本実施形態では、クライアント端末8の処理部81)は、出力部84に、診断ステップS7の診断結果を出力させる、出力処理を行う。これにより、人(本実施形態では、クライアント端末8を使用する人)が、当該診断結果を知ることができる。
その後、例えば、クライアント端末8を使用する人から、配管Pが配設された建物の管理者等へ、当該診断結果を記載したレポートが送られる。これにより、管理者等は、配管Pの劣化状態を知ることができ、必要に応じて配管Pの交換等の対策を取ることができる。
【0057】
上述した実施形態に係る配管劣化診断システム1及び配管劣化診断方法によれば、配管を傷つけることなく配管の劣化診断が可能である。
【0058】
以上、本発明の一実施形態に係る配管劣化診断システム1及び配管劣化診断方法について説明したが、本発明の配管劣化診断システム及び配管劣化診断方法は、上述のものに限られず、様々な変形例も含む。
【0059】
例えば、通管抵抗力測定ステップS2及びフラグ処理ステップS3は、行わなくてもよい。この場合、配管劣化診断システム1は、測定装置5を備えなくてもよい。また、この場合、配管劣化診断システム1は、送り出し装置4を備えなくてもよく、動画撮影ステップS1において、人が撮影装置2の挿入部21を配管P内に通管(挿入)するようにしてもよい。この場合、撮像画像取得ステップS4において、処理部91(例えば、サーバ7の処理部71)は、動画撮影ステップS1で撮影された動画の全部から、複数の撮像画像を取得する。
【0060】
また、本明細書で説明する各例において、配管劣化診断システム1は、リール3を備えなくてもよい。
【0061】
また、本明細書で説明する各例において、画像処理ステップS5は、行わなくてもよい。
【0062】
また、本明細書で説明する各例において、出力ステップS8は、行わなくてもよい。
【0063】
また、本明細書で説明する各例において、上述したローカル端末6の機能は、撮影装置2に備えられていてもよい。その場合、配管劣化診断システム1は、ローカル端末6を備えなくてもよい。
【0064】
また、本明細書で説明する各例において、配管劣化診断システム1が対象とする配管Pは、給水又は給湯用以外の用途の可撓性を有する樹脂製の配管であってもよいし、また、可撓性を有する非樹脂製の配管であってもよいし、また、可撓性の無い配管であってもよい。
【0065】
また、本明細書で説明する各例において、配管劣化診断システム1は、周方向に延在するクラックに限らず、任意の方向に延在するクラックに着目して、配管Pの劣化状態を診断するように構成されてもよい。
【0066】
また、本明細書で説明する各例において、配管劣化診断システム1は、ビルディング・インフォメーション・モデリング(BIM:Building Information Modeling)を記憶部92が予め記憶し、処理部91がBIMを用いるようにされていてもよい。BIMは、配管Pが配設された建物の全体を3次元的に表す3次元データである。BIMは、配管Pの情報も含む。例えば、処理部91は、BIMを用いて、配管Pのうち特に曲げ半径が小さい部分を予め特定し、フラグ処理ステップS3において、動画撮影ステップS1で撮影された動画のうち、配管Pのうち特に曲げ半径が小さい部分を撮影した時間帯又はそれを含む時間帯の動画部分に、フラグ処理をするようにしてもよい。この場合、配管劣化診断システム1は、測定装置5を備えなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の配管劣化診断方法、及び、配管劣化診断システムは、任意の種類の配管の劣化状態を診断するために使用されることができ、可撓性を有する樹脂製の配管の劣化状態を診断するために使用されると好適なものであり、例えば、給水又は給湯用の可撓性を有する樹脂製の配管の劣化状態を診断するために使用されると好適なものである。
【符号の説明】
【0068】
1:配管劣化診断システム、 2:撮影装置、 21:挿入部、 3:リール、 4:送り出し装置、 5:測定装置、
6:ローカル端末、 61:処理部、 62:通信部、 63:記憶部、 631:プログラム、 64:入力部、 65:表示部、
7:サーバ、 71:処理部、 72:通信部、 73:記憶部、 731:プログラム、 732:学習済みモデル、 733:教師データ、
8:クライアント端末、 81:処理部、 82:通信部、 83:記憶部、 831:プログラム、 84:出力部、
91:処理部、 92:記憶部、 93:プログラム、
P:配管、 K:クラック、 O:配管の中心軸線、
LI:学習画像、 TI:撮像画像、 JR:判定結果
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8