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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】油水分離フィルタ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 17/022 20060101AFI20241010BHJP
   B01D 63/08 20060101ALI20241010BHJP
   B01D 71/02 20060101ALI20241010BHJP
   B01D 71/32 20060101ALI20241010BHJP
   B01D 17/04 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
B01D17/022 502C
B01D17/022 502G
B01D63/08
B01D71/02
B01D71/32
B01D17/04 501D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020196139
(22)【出願日】2020-11-26
(65)【公開番号】P2022084333
(43)【公開日】2022-06-07
【審査請求日】2023-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】597065282
【氏名又は名称】三菱マテリアル電子化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100085372
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100129229
【弁理士】
【氏名又は名称】村澤 彰
(72)【発明者】
【氏名】白石 真也
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-138195(JP,A)
【文献】特開2016-074830(JP,A)
【文献】特開2020-143247(JP,A)
【文献】特開2016-064403(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 17/00-17/12
B01D 39/00-41/04
D06M 10/00-11/84
D06M 13/00-16/00
D06M 19/00-23/18
B01D 63/08
B01D 71/02
B01D 71/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と油を含む液体が流入する一面と、この一面に対向し前記液体が流出する他面との間を貫通する多数の気孔が繊維間に形成された不織布を含む油水分離フィルタであって、
前記不織布の繊維表面に撥水撥油性膜が形成され、
前記撥水撥油性膜は、下記の一般式(1)又は式(2)で示されるペルフルオロエーテル構造を含むフッ素系官能基成分(A)と、層状無機化合物(B)と、シリカゾルゲル(C)とを含み、
前記フッ素官能基成分(A)が、前記撥水撥油性膜を100質量%とするとき、0.3質量%~5.0質量%含まれ、
前記層状無機化合物(B)が、前記撥水撥油性膜を100質量%とするとき、0.5質量%~30質量%含まれ、
前記層状無機化合物(B)は、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スティブンサイト又はバーミキュライトのうち、いずれか1つ以上が含まれ、
前記油水分離フィルタの通気度が0.05ml/cm/秒~10ml/cm/秒であることを特徴とする油水分離フィルタ。
【化1】
上記式(1)及び式(2)中、p、q及びrは、それぞれ同一又は互いに異なる1~6の整数であって、直鎖状又は分岐状であってもよい。また上記式(1)及び式(2)中、Xは、炭素数2~10の炭化水素基であって、エーテル結合、CO-NH結合、O-CO-NH結合及びスルホンアミド結合から選択される1種以上の結合を含んでいてもよい。更に上記式(1)及び式(2)中、Yはシランの加水分解体又はシリカゾルゲルの主成分である。
【請求項2】
前記不織布が単一層により構成されるか、又は複数層の積層体により構成される請求項1記載の油水分離フィルタ。
【請求項3】
前記不織布を構成する繊維がポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ガラス、アルミナ、炭素、セルロース、パルプ、ナイロン及び金属からなる群より選ばれた1種又は2種以上の繊維である請求項1又は記載の油水分離フィルタ。
【請求項4】
請求項1に記載の油水分離フィルタの製造方法であって、
前記フッ素系官能基成分(A)を含むフッ素系化合物とケイ素アルコキシドとアルコールと前記層状無機化合物(B)と水を混合した混合液に触媒を添加混合して第1フッ素含有シリカゾルゲル液を調製する工程と、
前記第1フッ素含有シリカゾルゲル液と希釈用溶媒とを混合して撥水撥油性膜形成用液組成物を調製する工程と、
前記撥水撥油性膜形成用液組成物に不織布をディッピングする工程と、
前記ディッピングした不織布を脱液し乾燥する工程と
を含む油水分離フィルタの製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の油水分離フィルタの製造方法であって、
前記フッ素系官能基成分(A)を含むフッ素系化合物とケイ素アルコキシドとアルコールと水を混合した混合液に触媒を添加混合して第2フッ素含有シリカゾルゲル液を調製する工程と、
前記第2フッ素含有シリカゾルゲル液と前記層状無機化合物(B)と希釈用溶媒とを混合して撥水撥油性膜形成用液組成物を調製する工程と、
前記撥水撥油性膜形成用液組成物に不織布をディッピングする工程と、
前記ディッピングした不織布を脱液し乾燥する工程と
を含む油水分離フィルタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油と水が混ざりエマルジョン化した乳化油又は水溶性油のような水と油を含む液体を水と油に分離可能な油水分離フィルタ及びその製造方法に関する。更に詳しくは、撥水性及び撥油性(以下、撥水撥油性ということもある。)を有する撥水撥油性膜が不織布の繊維表面に形成された油水分離フィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、水と油を含む液体(以下、単に液体ということもある。)は、その油水の混合状態に応じて、水面に油が浮上する浮上油と、油の粒子が水中に浮遊している分散油と、油と水が混ざりエマルジョン化している乳化油又は水溶性油とに分類される。
【0003】
本出願人は、水と油を含む液体が流入する一面と、この一面に対向する他面との間を貫通する多数の気孔が繊維間に形成された不織布を含む油水分離フィルタであって、前記繊維表面に油水分離膜(本発明の「撥水撥油性膜」に相当する。)が不織布1m2当り0.1~30gの割合で形成され、油水分離膜は、撥水性及び撥油性の双方の機能を有するペルフルオロアミン構造のフッ素含有シランを含むシリカゾル加水分解物を有し、フッ素含有シランは、シリカゾル加水分解物中、0.01~10質量%の割合で含まれ、油水分離フィルタの通気度が0.05~10ml/cm2/秒であることを特徴とする油水分離フィルタを提案した(特許文献1(請求項1、段落[0016])参照。)。
【0004】
この油水分離フィルタでは、油水分離フィルタ内に液体が流入したときに、水と油を含む液体の油粒子が気孔の孔径より大きい場合には、物理的に水と油を含む液体の油粒子の通過を阻止する。そして水と油を含む液体の油粒子が気孔の孔径より僅かに小さい場合でも、不織布の繊維表面が化学的に乳化油又は水溶性油の油粒子を弾かせる。一方、ポリテトラフルオロエチレン等に代表される撥水撥油性を示す材料は、水酸基が無いため、不織布に通水性を付与することが困難であるが、上記本出願人が提案した発明は、油水分離膜が水酸基を有しているシリカゾル加水分解物を主成分としているため、不織布に通水性を付与することができる。この結果、水と油を含む液体が乳化油又は水溶性油であっても、油水分離フィルタに油が溜まり、水は油水分離フィルタを通過して、水と油に分離することができる。更に上記油水分離膜は、シリカゾル加水分解物を主成分として含むため、油水分離膜が不織布の繊維表面に強固に密着し耐久性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-42707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示される油水分離フィルタは、油水分離膜は、この膜を構成する化合物がフッ素含有シランを含むシリカゾル加水分解物のみであるため、寒冷地において寒さで凍結した後で、不織布を解凍し乾燥して使用する場合、不織布の繊維が膨張した後収縮するため、油水分離膜が不織布の繊維から剥離することがあり、油水分離フィルタの通気度が変化し、油水分離性能が劣化する課題があった。また、特許文献1に示されるフッ素含有シランは、ペルフルオロアミン構造であって、ペルフルオロ基が窒素を中心として結合しているため、剛直な構造を取り易い。そのため、液組成物中のフッ素の含有量を多くすると、油水分離膜が不織布の繊維に対する密着性が低下する場合があり、耐久性の観点からまだ改善すべき余地があった。また、ペルフルオロエーテル構造のフッ素系化合物と比較すると撥水性が強く発現するため、特許文献1に示される油水分離フィルタに水と油を含む液体を通過させると、ろ過液の通過時間が比較的長いという課題があった。
【0007】
本発明の目的は、乳化油又は水溶性油のような水と油を含む液体から油を除去するろ過効率が良好でありかつろ過液の通過時間が短くて済む油水分離フィルタを提供することにある。本発明の別の目的は、凍結後に解凍し乾燥して使用しても、油水分離フィルタの通気度が殆ど変化せず、油水分離性能が劣化しない油水分離フィルタを提供することにある。本発明の更に別の目的は、こうした油水分離フィルタを簡便に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点は、水と油を含む液体が流入する一面と、この一面に対向し前記液体が流出する他面との間を貫通する多数の気孔が繊維間に形成された不織布を含む油水分離フィルタであって、前記不織布の繊維表面に撥水撥油性膜が形成され、前記撥水撥油性膜は、下記の一般式(1)又は式(2)で示されるペルフルオロエーテル構造を含むフッ素系官能基成分(A)と、層状無機化合物(B)と、シリカゾルゲル(C)とを含み、前記フッ素官能基成分(A)が、前記撥水撥油性膜を100質量%とするとき、0.3質量%~5.0質量%含まれ、前記層状無機化合物(B)が、前記撥水撥油性膜を100質量%とするとき、0.5質量%~30質量%含まれ、前記層状無機化合物(B)は、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スティブンサイト又はバーミキュライトのうち、いずれか1つ以上が含まれ、前記油水分離フィルタの通気度が0.05ml/cm/秒~10ml/cm/秒であることを特徴とする油水分離フィルタである。
【0009】
【化1】
【0010】
上記式(1)及び式(2)中、p、q及びrは、それぞれ同一又は互いに異なる1~6の整数であって、直鎖状又は分岐状であってもよい。また上記式(1)及び式(2)中、Xは、炭素数2~10の炭化水素基であって、エーテル結合、CO-NH結合、O-CO-NH結合及びスルホンアミド結合から選択される1種以上の結合を含んでいてもよい。更に上記式(1)及び式(2)中、Yはシランの加水分解体又はシリカゾルゲルの主成分である。
【0011】
このYについて更に述べると、Yは、層状無機化合物(B)とシリカゾルゲル(C)とに結合する部位、又はシリカゾルゲル(C)に結合する部位である。具体例としては、Yとして、後述する式(3)又は式(4)において、Z部分が加水分解した構造が挙げられる。また、Yとして、式(3)又は式(4)のシラン化合物と、テトラエトキシシランやテトラメトキシシラン等のケイ素アルコキシドとを混合し、加水分解重合したシリカゾルゲルの主成分等も挙げられる。更に、Yとして、式(3)又は式(4)のシラン化合物と、テトラエトキシシランやテトラメトキシシラン等のケイ素アルコキシドと、エポキシ基やビニル基、エーテル基を含有したシラン等とを混合し、加水分解重合したシリカゾルゲルの主成分等も挙げられる。
【0014】
本発明の第の観点は、第1の観点に基づく発明であって、前記不織布が単一層により構成されるか、又は複数層の積層体により構成される油水分離フィルタである。
【0015】
本発明の第の観点は、第1又は第4の観点に基づく発明であって、前記不織布を構成する繊維がポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ガラス、アルミナ、炭素、セルロース、パルプ、ナイロン及び金属からなる群より選ばれた1種又は2種以上の繊維である油水分離フィルタである。
【0016】
本発明の第の観点は、第1の観点の油水分離フィルタの製造方法の発明であって、第1の観点の前記フッ素系官能基成分(A)を含むフッ素系化合物とケイ素アルコキシドとアルコールと前記層状無機化合物(B)と水を混合した混合液に触媒を添加混合して第1フッ素含有シリカゾルゲル液を調製する工程と、前記第1フッ素含有シリカゾルゲル液と希釈用溶媒とを混合して撥水撥油性膜形成用液組成物を調製する工程と、前記撥水撥油性膜形成用液組成物に不織布をディッピングする工程と、前記ディッピングした不織布を脱液し乾燥する工程と、を含む油水分離フィルタの製造方法である。
【0017】
本発明の第の観点は、第1の観点の油水分離フィルタの製造方法の発明であって、第1の観点の前記フッ素系官能基成分(A)を含むフッ素系化合物とケイ素アルコキシドとアルコールと水を混合した混合液に触媒を添加混合して第2フッ素含有シリカゾルゲル液を調製する工程と、前記第2フッ素含有シリカゾルゲル液と前記層状無機化合物(B)と希釈用溶媒とを混合して撥水撥油性膜形成用液組成物を調製する工程と、前記撥水撥油性膜形成用液組成物に不織布をディッピングする工程と、前記ディッピングした不織布を脱液し乾燥する工程とを含む油水分離フィルタの製造方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の第1の観点の油水分離フィルタは、水と油を含む液体が油水分離フィルタの一面から流入すると、液体の油粒子が気孔の孔径より大きい場合には、物理的に液体の油粒子の通過を阻止する。そして液体の油粒子が気孔の孔径より僅かに小さい場合でも、不織布の繊維表面が化学的に乳化油又は水溶性油の油粒子を弾かせる。また撥水撥油性膜が、フッ素系官能基成分(A)と、層状無機化合物(B)と、シリカゾルゲル(C)とを含むため、形成した膜の撥水性と撥油性が高い。また成膜したときに、層状無機化合物(B)同士がシリカゾルゲル(C)により、膜中で結合するため、膜の強度と膜の密着性を向上させることができる。この油水分離フィルタは、水と油を含む液体から油を除去するろ過効率が良好でありかつろ過液の通過時間が短くて済む利点がある。また、層状無機化合物(B)が、撥水撥油性膜を100質量%とするとき、0.5質量%~30質量%含まれるため、膜が不織布の繊維表面に良好に密着し、膜が剥離しにくく、膜の強度を高める。更に、撥水撥油性膜に含まれる層状無機化合物が、モンモリロナイト等であるため、モンモリロナイト等の有する多層構造及び大きな膨潤性により容量の大きな層間を有することで、より良好な膜の外観が得られ、かつ膜の強度もより高まる。
【0022】
本発明の第の観点の油水分離フィルタでは、不織布が単一層により構成される場合には、簡単な構成の油水分離フィルタになり、不織布が複数層の積層体により構成される場合には、流入する水と油を含む液体中の油粒子の粒径、油分の濃度等に応じて各層を構成することができる。
【0023】
本発明の第の観点の油水分離フィルタでは、不織布を構成する繊維の材質を、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ガラス、アルミナ、炭素、セルロース、パルプ、ナイロン及び金属から、流入する水と油を含む液体中の油粒子の粒径、油分の濃度等に応じて、選択を構成することができる。
【0024】
本発明の第の観点の油水分離フィルタの製造方法では、ケイ素アルコキシドとアルコールとフッ素系化合物と水とともに、層状無機化合物を混合し、これに触媒を加えて第1フッ素含有シリカゾルゲル液を調製するため、製造を簡略化することができる。この第1フッ素含有シリカゾルゲル液を希釈して撥水撥油性膜形成用液組成物を調製し、この撥水撥油性膜形成用液組成物に不織布をディッピングして不織布を脱液し乾燥することにより、油水分離フィルタが製造される。層状無機化合物がフッ素系化合物を含むシリカゾルゲル中に存在するため、液組成物を不織布の繊維表面にディッピングし乾燥したときに、膜が不織布の繊維表面に良好に密着し、膜が剥離しにくく、膜の強度を高める。
【0025】
本発明の第の観点の油水分離フィルタの製造方法では、ケイ素アルコキシドとアルコールとフッ素系化合物と水とを混合し、これに触媒を加えて第2フッ素含有シリカゾルゲル液を調製した後で、層状無機化合物と希釈用溶媒を加えて撥水撥油性膜形成用液組成物を調製する。第2フッ素含有シリカゾルゲル液を調製した後で層状無機化合物を加えるため、撥水撥油性膜形成用液組成物のバリエーションを増やせる利点がある。液組成物を不織布の繊維表面にディッピングし乾燥したときの効果は、第の観点の油水分離フィルタの製造方法の効果と同じである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明実施形態の油水分離フィルタを備えた油水分離装置の構成図である。
図2】本実施形態の単一層の不織布の断面図である。
図3】本実施形態の二層の不織布の断面図である。
図4】本実施形態の油水分離フィルタの第1の製造方法によるフロー図である。
図5】本実施形態の油水分離フィルタの第2の製造方法によるフロー図である。
図6】製造例及び比較製造例の各油水分離フィルタのろ過試験に用いた装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0029】
〔油水分離装置〕
図1に示すように、本実施形態の油水分離装置10は、水と油を含む液体11が流入する筒状の液体流入部12と、液体11の油を水から分離するシート状の油水分離フィルタ13と、油水分離フィルタ13で分離した水14を集める漏斗状の集水部16と、集水部16から流入する水14を貯える有底筒状の貯水部17とを備える。液体流入部12の上方には液体の流入管18が設けられ、貯水部17の底部には排水管19が設けられる。
【0030】
油水分離フィルタ13が不織布のみで構成される場合には、図示しないが、油水分離フィルタ13の下面全体には、液体流入部12内の液体の圧力にフィルタ13が耐えられるように、不織布を補強するための金属製の多孔質の支持板が設けられ、油水分離フィルタ13とこの支持板は液体流入部12と集水部16により挟持される。
【0031】
〔油水分離フィルタ〕
図2に示すように、本実施形態の油水分離フィルタ13は、不織布20とこの不織布の繊維表面に形成された撥水撥油性膜21とを備える。この油水分離フィルタ13の主たる構成要素である不織布20は、水と油を含む液体が流入する一面20aと、この一面20aに対向する、ろ過液が流出する他面20bを有し、単一層からなる。図3に示すように、不織布を、上層の不織布30と下層の不織布40の二層の積層体にして、油水分離フィルタ23を構成してもよい。この場合、上層の不織布30の上面が水と油を含む液体が流入する一面30aとなり、下層の不織布40の下面がこの一面30aに対向する、ろ過液が流出する他面40bとなる。不織布30の下面30bが不織布40の上面40aに密着する。なお、積層体は二層に限らず、三層、四層等の複数層から構成することもできる。
【0032】
図2中央の拡大図に示すように、不織布20は多数の繊維20cが絡み合って形成され、繊維と繊維の間には気孔20dが形成される。気孔20dは不織布20の一面20aと他面20bとの間を貫通する。不織布の繊維20cの表面には撥水撥油性膜21が形成される。不織布の目付は、100g/m2~400g/m2の範囲にあることが好ましく、200g/m2~350g/m2の範囲にあることが更に好ましいが、この範囲に限定されるものではない。撥水撥油性膜21は、前述した一般式(1)又は式(2)で示されるフッ素系官能基成分(A)と層状無機化合物(B)とシリカゾルゲル(C)とを含む。フッ素系官能基成分(A)は、撥水撥油性膜を100質量%とするとき、0.5質量%~5.0質量%含まれる。
【0033】
図2上部の更なる拡大図に示すように、撥水撥油性膜21は、層状無機化合物の粒子21aがバインダとしてのフッ素含有シリカゾルゲル21bで結着して構成される。層状無機化合物の粒子21aは、粉体状又はフレーク状である。撥水撥油性膜21は層状無機化合物の粒子21aを含むため、見かけ上、厚膜となり、繊維と繊維の間の気孔20dを狭くすることができる。また膜厚は、層状無機化合物粒子の粒子径と膜成分中の層状無機化合物粒子の含有割合を変えることにより制御することができる。
【0034】
繊維表面に撥水撥油性膜21が形成された油水分離フィルタ13の状態で、不織布20は0.05ml/cm2/秒~10ml/cm2/秒の通気度を有するように作製される。通気度が0.05ml/cm2/秒未満では、或いは目付が400g/m2を超えると、通水性に劣り、ろ過液を得るのが困難になる。通気度が10ml/cm2/秒を超えると、或いは不織布の目付が100g/m2未満であると、不織布の気孔20dの大きさが混合液体中の油粒子22よりも遙かに大きくなり、油粒子22が水とともに不織布の気孔を通して油水分離フィルタ13から抜け落ち、水と油とを分離することができない。通気度は0.1ml/cm2/秒~8ml/cm2/秒であることが好ましい。通気度はJIS-L1913:2000に記載のフラジール形試験機を用いて測定される。
【0035】
撥水撥油性膜21中のフッ素系官能基成分(A)の含有割合が0.3質量%未満では、撥油性の効果に乏しく、油粒子を弾く性能が不十分になる。フッ素系官能基成分(A)の含有割合が5.0質量%を超えると、成膜性に劣り、撥水撥油性膜の不織布への密着性が悪くなる。撥水撥油性膜中のフッ素系官能基成分(A)の含有割合は、0.5質量%~4質量%であることが好ましい。
【0036】
撥水撥油性膜を100質量%とするとき、撥水撥油性膜21には、層状無機化合物(B)が0.5質量%~30質量%含まれることが好ましく、0.8質量%~25質量%含まれることが更に好ましい。また、撥水撥油性膜を100質量%とするとき、シリカゾルゲル(C)が60質量%~99.5質量%含まれることが好ましく、64質量%~99質量%含まれることが更に好ましい。層状無機化合物(B)が0.5質量%未満では、油水分離フィルタを構成する不織布の繊維表面上の撥水撥油性膜が剥離し易く、30質量%を超えると、相対的にバインダとしてのシリカゾルゲル(C)の含有量が減って、膜の不織布の繊維表面への密着性が悪化して、膜が剥離し易い。シリカゾルゲル(C)が60質量%未満では、フッ素系官能基成分(A)及び層状無機化合物(B)を不織布の繊維表面に結着させるためのバインダとしての機能に劣り、膜の撥油性が低下し、かつ不織布の繊維表面上の膜が剥離し易く、99.5質量%を超えると、相対的に層状無機化合物(B)の含有量が減って、膜が剥離し易い。
【0037】
このような油水分離フィルタ13を備えた油水分離装置10の作用について説明する。図1に示すように、先ず油水分離フィルタ13を液体流入部12と集水部16により挟持する。次いで流入管18から水と油を含む液体11を液体流入部12に供給する。この実施形態の液体は乳化油又は水溶性油である。液体流入部12に貯えられた液体11は、油水分離フィルタ13を構成する不織布20の一面20a(図2)に接触する。ここで油水分離フィルタ13は所定の通気度を有するため、また油水分離膜21が撥水撥油性を示すため、乳化油中又は水溶性油中の水(図示せず)は、油水分離膜21に弾かれながらも、シリカゾルゲルの水酸基の存在により、図2の拡大図に示す繊維20cと繊維20cの間に形成された気孔20dを通過して他面20bに至り、不織布20を通過し、そこから滴下して集水部16に集められる。集められた水14は集水部16から貯水部17に流れ落ちて、貯水部17に溜まる。貯水部17に水14が一定量貯留された時点で、図示しない排水バルブを開いて排水管19より油と分離した水14を得る。
【0038】
その一方、図2の拡大図に示すように、不織布20の繊維表面に形成された油水分離膜21の撥油性により、また油水分離フィルタの所定の通気度を有するため、液体中の油粒子22は、気孔20dの孔径より粒径が大きい場合は勿論のこと、気孔20dの孔径より粒径が僅かに小さくても、油水分離フィルタ13を通過できず、不織布20の繊維20cと繊維20cの間に留まる。撥水撥油性膜21中に層状無機化合物粒子21aを含むため、膜が凹凸になり、油粒子22の膜への付着の程度は低い。これにより、油粒子22が不織布に捕集される。不織布20に溜まった油は、定期的に油水分離フィルタ13を油水分離装置10から取り外して、回収処理する。
【0039】
〔油水分離フィルタの製造方法〕
油水分離フィルタは次の第1の製造方法と第2の製造方法により、概略製造される。
【0040】
<第1の製造方法>
図4に示すように、ケイ素アルコキシド51とアルコール53とフッ素系官能基成分(A)を含むフッ素系化合物54と層状無機化合物55と水56と、必要に応じてアルキレン基成分52を混合し、この混合液に触媒57を加えることにより、第1フッ素含有シリカゾルゲル液58aを調製する。
この第1フッ素含有シリカゾルゲル液58aに希釈用溶媒59を混合して、撥水撥油性膜形成用液組成物60を調製する。この液組成物60に不織布20をディッピングする。続いて不織布20を脱液し、乾燥することにより油水分離フィルタ13を製造する。
【0041】
<第2の製造方法>
本実施形態の油水分離フィルタの第2の製造方法は、図5に示すように、先ず、ケイ素アルコキシド51とアルコール53とフッ素含有官能基成分(A)を含むフッ素系化合物54と水56とを混合して混合液を調製する。次いでこの混合液と触媒57とを混合してケイ素アルコキシドを加水分解することにより第2フッ素含有シリカゾルゲル液58bを調製する。この第2フッ素含有シリカゾルゲル液58bを溶媒59で希釈する際に、層状無機化合物55を添加し混合して、撥水撥油性膜形成用液組成物60を調製する。以下、第1の製造方法と同様にして、油水分離フィルタ13を製造する。
【0042】
第1及び第2の製造方法とも、上記混合液を調製する際に、成膜性を向上させるため、又は乾燥速度を向上させるために、アルコールとともに、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素を加えて混合してもよい。
第1の製造方法の長所は、最初に層状無機化合物を含む原料を混合するため、製造が簡略化できる点にある。また第2の製造方法の長所は、層状無機化合物を後から添加し混合するため、液組成物のバリエーションを簡単に増やせる点にある。
【0043】
〔不織布の準備〕
先ず、0.05ml/cm2/秒~15ml/cm2/秒の通気度を有する不織布を準備する。具体的には、後述する撥水撥油性膜が不織布の繊維表面に形成された油水分離フィルタになった状態で、0.05ml/cm2/秒~10ml/cm2/秒の通気度を有する不織布を準備する。撥水撥油性膜が厚膜に形成される場合には、通気度の大きい不織布が選定され、撥水撥油性膜が薄膜に形成される場合には、通気度の小さい不織布が選定される。
【0044】
この不織布としては、例えば、セルロース混合エステル性のメンブレンフィルタ、ガラス繊維ろ紙、ポリエチレンテレフタレート繊維とガラス繊維を混用した不織布(安積濾紙社製、商品名:340)がある。このように不織布は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ガラス、アルミナ、炭素、セルロース、パルプ、ナイロン及び金属からなる群より選ばれた1種又は2種以上の繊維から作られる。繊維は、2以上の繊維を混合した繊維でもよい。繊維の太さ(繊維径)は、上記通気度が得られるように、0.01μm~10μmの太さが好適であるが、この範囲に限定されるものではない。不織布の厚さは、油水分離フィルタが単一層である場合には、0.2mm~0.8mm、複数層の積層体である場合には、積層体の厚さが0.2mm~1.6mmになる厚さが好ましい。本発明の撥水撥油性膜形成材料の主成分がシリカゾルゲルであるときには、繊維との密着性を得るために、繊維に水酸基をもつ材料が好ましい。その中でも、ガラス、アルミナ、セルロースナノ繊維等は、繊維径も細いものがあり、通気度を上記範囲内の低い値にすることができる。
【0045】
前述したように不織布が図2に示すように複数の不織布30、40を積層した積層体である場合、水と油を含む液体が流入する側の不織布30を構成する繊維をガラス繊維にすることにより、シリカゾルゲルを主成分として含む撥水撥油性膜が、より一層強固にガラス繊維に密着し、不織布の繊維から剥離しにくくなる。
【0046】
〔撥水撥油性膜形成用液組成物の第1の製造方法〕
〔第1フッ素含有シリカゾルゲル液の調製〕
先ず、ケイ素アルコキシドとしてのテトラメトキシシラン又はテトラエトキシシランと、沸点が120℃未満の炭素数1~4の範囲にあるアルコールと、上述した式(1)又は式(2)で表されるフッ素系官能基成分(A)を含むフッ素系化合物と、層状無機化合物(B)と、水とを混合して混合液を調製する。このときアルキレン基成分となるエポキシ基含有シランを一緒に混合してもよい。このケイ素アルコキシドとしては、具体的には、テトラメトキシシラン(TMOS)、そのオリゴマー又はテトラエトキシシラン(TEOS)、そのオリゴマーが挙げられる。例えば、耐久性の高い撥水撥油性膜を得る目的には、テトラメトキシシランを用いることが好ましく、一方、加水分解時に発生するメタノールを避ける場合は、テトラエトキシシランを用いることが好ましい。
【0047】
上記層状無機化合物としては、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スティブンサイト等のスメクタイト系層状無機化合物又はバーミキュライトが前述した理由で好ましい。
【0048】
上記アルキレン基成分となるエポキシ基含有シランとしては、具体的には、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン又は多官能エポキシシランが挙げられる。アルキレン基成分はケイ素アルコキシドとアルキレン基成分の合計質量に対して1質量%~40質量%、好ましくは2.5質量%~20質量%含まれる。アルキレン基成分が下限値の1質量%未満では、水酸基を含まない不織布に膜を形成した場合に、不織布への密着性が不十分になる。また上限値の40質量%を超えると、形成した膜の耐久性が低くなる。アルキレン基成分を上記1質量%~40質量%の範囲になるようにエポキシ基含有シランを含むと、エポキシ基も加水分解重合過程において開環して重合に寄与し、これにより乾燥過程にレベリング性が改善し膜厚さが均一になる。なお、不織布がガラス等の親水基を含む場合には、アルキレン基成分の含有量は極少量であるか、若しくはゼロでもよい。一方、不織布が親水基を含まない場合には、このアルキレン基成分をシリカゾルゲル(C)中、0.5質量%~20質量%含むことが好ましい。
【0049】
沸点が120℃未満の炭素数1~4の範囲にあるアルコールは、上述したアルコールが挙げられる。特にメタノール又はエタノールが好ましい。これらのアルコールは、ケイ素アルコキドとの混合がしやすいためである。上記水としては、不純物の混入防止のため、イオン交換水や純水等を使用するのが望ましい。ケイ素アルコキシドに、或いはケイ素アルコキシドとエポキシ基含有シランに、炭素数1~4の範囲にあるアルコールと水を添加して、好ましくは10℃~30℃の温度で5分~20分間撹拌することにより混合液を調製する。
【0050】
上記調製された混合液に触媒を添加混合すると、第1フッ素含有シリカゾルゲル液が調製される。この触媒としては、有機酸、無機酸又はチタン化合物が例示される。このとき液温を好ましくは30℃~80℃の温度に保持して、好ましくは1時間~24時間撹拌する。これにより、第1フッ素含有シリカゾルゲル液が調製される。なお、次の工程のために、第1フッ素含有シリカゾルゲル液にアルコールを添加混合してもよい。
【0051】
上記アルコールを添加混合した場合には、第1フッ素含有シリカゾルゲル液は、第1フッ素含有シリカゾルゲル液を100質量%とするとき、ケイ素アルコキシドを2質量%~50質量%、炭素数1~4の範囲にあるアルコールを3質量%~90質量%、フッ素系官能基成分(A)を0.02質量%~1.5質量%、層状無機化合物(B)を0.05質量%~10質量%、水を0.1質量%~40質量%、触媒として0.01質量%~5質量%の割合で含有することが好ましい。アルキレン基成分となるエポキシ基含有シランを混合した場合には、エポキシ基含有シランを最大30質量%まで含有することが好ましい。
【0052】
ケイ素アルコキシドを2質量%~50質量%の割合で含有するのは、下限値の2質量%未満では、ケイ素アルコキシドが加水分解して加水分解物(シリカゾルゲル)になったときに、撥水撥油性膜において、フッ素系官能基成分(A)及び層状無機化合物(B)を不織布の繊維表面に結着させるためのバインダとしての機能に劣るからであり、上限値の50質量%を超えると、相対的に層状無機化合物(B)の含有量が減って、膜が剥離し易くなるからである。またケイ素アルコキシドの濃度が50質量%を超えると、第1フッ素含有シリカゾルゲル液がゲル化してしまうからである。
【0053】
またフッ素系官能基成分(A)を0.02質量%~1.5質量%の割合で含有するのは、下限値の0.02質量%未満では、撥油性の効果に乏しく、油粒子を弾く性能が不十分になるからであり、上限値の1.5質量%を超えると、撥水撥油性膜において、膜の不織布への密着性が悪くなるからである。また層状無機化合物(B)を0.05質量%~10質量%の割合で含有するのは、下限値の0.05質量%未満では、油水分離フィルタを構成する不織布の繊維表面上の撥水撥油性膜が剥離し易くなるからであり、上限値の10質量%を超えると、相対的にバインダとしてのシリカゾルゲル(C)の含有量が減って、膜の不織布の繊維表面への密着性が悪化して、膜が剥離し易くなるからである。
【0054】
炭素数1~4の範囲にあるアルコールの割合を上記範囲に限定したのは、アルコールの割合が下限値未満では、ケイ素アルコキシドが、溶液中に溶解せず分離してしまうこと、ケイ素アルコキシドの加水分解反応中に反応液がゲル化し易くなるからであり、一方、上限値を超えると、加水分解に必要な水、触媒量が相対的に少なくなるために、加水分解の反応性が低下して、重合が進まず、膜の密着性が低下するからである。水の割合を上記範囲に限定したのは、下限値未満では加水分解速度が遅くなるために、重合が進まず、撥水撥油性膜の密着性が不十分になり、一方、上限値を超えると加水分解反応中に反応液がゲル化し、水が多過ぎるためケイ素アルコキシド化合物がアルコール水溶液に溶解せず、分離する不具合を生じるからである。
【0055】
シリカゾルゲル中のSiO2濃度(SiO2分)は1質量%~40質量%であるものが好ましい。このSiO2濃度が下限値未満では、重合が不十分であり、膜の密着性の低下やクラックの発生が起こり易く、上限値を超えると、相対的に水の割合が高くなりケイ素アルコキシドが溶解せず、反応液がゲル化する不具合を生じる。
【0056】
有機酸、無機酸又はチタン化合物は加水分解反応を促進させるための触媒として機能する。有機酸としては酢酸、ギ酸、シュウ酸が例示され、無機酸としては塩酸、硝酸、リン酸が例示され、チタン化合物としてはテトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、乳酸チタン等が例示される。触媒は上記のものに限定されない。上記触媒の割合を上記範囲に限定したのは、下限値未満では反応性に乏しく重合が不十分になるため、膜が形成されず、一方、上限値を超えても反応性に影響はないが、残留する酸により、膜の形成された不織布が腐食等を生じ易い。
【0057】
フッ素系官能基成分(A)を含むフッ素系化合物は、下記一般式(3)又は式(4)で示される。これらの式(3)又は式(4)中のペルフルオロエーテル基としては、より具体的には、下記式(5)~(13)で示されるペルフルオロエーテル構造を挙げることができる。
【0058】
【化2】
【0059】
【化3】
【0060】
【化4】
【0061】
また、上記式(3)及び式(4)中のXとしては、下記式(14)~(18)で示される構造を挙げることができる。なお、下記式(14)はエーテル結合、下記式(15)はエステル結合、下記式(16)はアミド結合、下記式(17)はウレタン結合、下記式(18)はスルホンアミド結合を含む例を示している。
【0062】
【化5】
【0063】
ここで、上記式(14)~(18)中、R2及びR3は炭素数が0から10の炭化水素基、R4は水素原子又は炭素数1から6の炭化水素基である。R3の炭化水素基の例とは、メチレン基、エチレン基等のアルキレン基が挙げられ、R4の炭化水素基の例とは、メチル基、エチル基等のアルキル基の他、フェニル基等も挙げられる。本実施の形態の撥水撥油性膜形成用液組成物に含まれるフッ素系化合物は、分子内に酸素原子に炭素数が6以下の短鎖長のペルフルオロアルキル基とペルフルオロアルキレン基が複数結合したペルフルオロエーテル基を有しており、分子内のフッ素含有率が高いため、形成した膜に優れた撥水撥油性を付与することができる。
【0064】
また、上記式(3)及び式(4)中、R1は、メチル基、エチル基等が挙げられる。
【0065】
また、上記式(3)及び式(4)中、Zは、加水分解されてSi-O-Si結合を形成可能な加水分解性基であれば特に限定されるものではない。このような加水分解性基としては、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基などのアリールオキシ基、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基などのアラルキルオキシ基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、バレリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基などのアシルオキシ基等が挙げられる。これらの中でも、エトキシ基を適用することが好ましい。
【0066】
ここで、上記式(3)又は式(4)で表されるペルフルオロエーテル構造を有するフッ素系官能基成分を含むフッ素系化合物の具体例としては、例えば、下記式(19)~(27)で表される構造が挙げられる。なお、下記式(19)~(27)中、Rはメチル基又はエチル基である。
【0067】
【化6】
【0068】
【化7】
【0069】
〔撥水撥油性膜形成用液組成物の第2の製造方法〕
第2の製造方法では、混合液に層状無機化合物を含ませることなく、第2フッ素含有シリカゾルゲル液を調製し、この第2フッ素含有シリカゾルゲル液に層状無機化合物と希釈用溶媒を加えて、撥水撥油性膜形成用組成物を製造する。上記以外は、第1の製造方法と同じである。
【0070】
〔撥水撥油性膜形成用液組成物〕
本実施の形態の撥水撥油性膜形成用液組成物は、第1フッ素含有シリカゾルゲル液を希釈用溶媒で希釈して製造されるか、又は第2フッ素含有シリカゾルゲル液に層状無機化合物と希釈用溶媒を加えて製造される。この希釈用溶媒としては、水と炭素数1~4のアルコールとの混合溶媒であるか、或いは水と炭素数1~4のアルコールと前記炭素数1~4のアルコール以外の有機溶媒との混合溶媒である。炭素数1~4のアルコールとともに用いられるアルコール以外の有機溶媒としては、沸点が120℃以上160℃未満の第1溶媒と、沸点が160℃以上220℃以下の第2溶媒が挙げられる。第1溶媒は沸点が120℃未満の炭素数1~4の範囲にあるアルコールと第2溶媒の中間の沸点を有することから、塗膜の乾燥時に前記アルコールと第2溶媒の沸点差に伴う塗膜の乾燥速度の大きな差を緩和する作用があり、第2溶媒は第1溶媒よりも高沸点であり、塗膜の乾燥速度が遅いことから塗膜の急激な乾燥を防止して急激な乾燥に伴う膜の不均一性を防止する作用があり、前記アルコールは沸点が最も低いことから塗膜の乾燥を速くする作用がある。このように沸点の異なる3種類の溶媒を用いることにより溶媒の乾燥速度を調整して、より的確にかつ効率的に塗膜を成膜性良く形成することができる。
【0071】
本実施の形態の撥水撥油性膜形成用液組成物がフッ素含有官能基成分(A)と層状無機化合物(B)とシリカゾルゲル(C)を含むため、不織布の繊維表面に成膜したときに、従来の液組成物と比較して、より一層優れた撥油性能を付与するとともに、撥水撥油性膜の不織布の繊維表面への密着性に優れ、剥離しにくい高い強度の撥水撥油性膜が得られる。
【0072】
〔不織布の繊維表面への撥水撥油性膜の形成方法〕
本実施形態の不織布の繊維表面に撥水撥油性膜を形成するには、撥水撥油性膜形成用液組成物に不織布をディッピングして液組成物から引上げ、大気中、室温で不織布を水平な金網等の上に拡げて一定の液分量になるまで脱液する。別法として、引き上げた不織布を振り払って余分な液を除去するか、或いは引き上げた不織布をマングルロール(絞り機)に通して脱液する。脱液した不織布は、大気中、25℃~140℃の温度で0.5時間~24時間乾燥する。これにより、図2中央の拡大図に示すように、不織布20を構成している繊維20cの表面に撥水撥油性膜21が形成される。脱液量が少ない場合には、撥水撥油性膜は厚膜に不織布の繊維表面に形成され、脱液量が多い場合には、撥水撥油性膜は薄膜に不織布の繊維表面に形成される。
【実施例
【0073】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。先ず、第1フッ素含有シリカゾルゲル液を調製するための合成例1~6及び比較合成例1~2を説明し、次いでこれらの合成例及び比較合成例を用いた撥水撥油性膜形成用液組成物の製造に関する実施例1~6及び比較例1~2を説明する。次にこれらの実施例及び比較例を用いた油水分離フィルタの製造に関する製造例1~6及び比較製造例1~4を説明する。
【0074】
〔第1フッ素含有シリカゾルゲル液を調製するための合成例1~6、比較合成例1~2〕
<合成例1>
合成例1は、図4に示すフロー図に基づく。先ず、ケイ素アルコキシドとしてテトラエトキシシラン(TEOS)の平均5量体(コルコート社製、商品名:エチルシリケート40)112.5gに、有機溶媒としてエタノール(EtOH:沸点78.3℃)144.1gと、フッ素系官能基成分として上述した式(19)で表されるフッ素系化合物(R:エチル基)0.09g(0.03質量%)と、層状無機化合物としてスメクトン-ST(クニミネ工業社製、スティブンサイト)0.23gとを添加し混合した。次に、イオン交換水43.0gを添加し、セパラブルフラスコ内で25℃の温度で5分間撹拌することにより混合液を調製した。次に、この混合液に、触媒として濃度35質量%の塩酸0.06gを添加し、40℃で2時間撹拌した。これにより第1フッ素含有シリカゾルゲル液(I)を調製した。この調製内容を以下の表1及び表2に示す。表1は質量(g)で、表2は質量割合(%)でそれぞれ示す。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
<合成例2~5及び比較合成例1~2>
合成例2~5及び比較合成例1~2は、図4に示すフロー図に基づく。表1~表2に示すように、合成例1と異なるケイ素アルコキシドを用いた。即ち、ケイ素アルコキシドとしてテトラメトキシシラン(TMOS)の3~5重合体(三菱化学社製、商品名:MKCシリケートMS51)を用いた。また表1~表2に示すように、フッ素含有官能基成分となるフッ素系化合物、層状無機化合物及び触媒の各種類を選定した。層状無機化合物として、合成例2と合成例5は、ラポライト-RDS(BYK社製、ヘクトライト)を、合成例3は、クニピア-G10(クニミネ工業社製、モンモリロナイト)を、合成例4は、スメクトン-SWF(クニミネ工業社製、ヘクトライト)を、比較合成例1と2は、ラポライト-RD(BYK社製、ヘクトライト)をそれぞれ用いた。触媒として、合成例4~5及び比較合成例1~2の塩酸は、合成例1と同一の濃度35質量%の塩酸を用い、合成例2の硝酸は、濃度60質量%の硝酸を用いた。また合成例3の酢酸は、濃度99質量%の酢酸を用いた。
【0078】
表1~表2に示すように、ケイ素アルコキシド、エタノール、フッ素系化合物、層状無機化合物及び水の各添加量を合成例1のそれらと変更して、それらを合成例1と同様に混合して混合液を調製した。表1~表2に示すように、混合液に合成例1と同一又は異なる触媒を合成例1と同様に添加混合して、6種類の第1フッ素含有シリカゾルゲル液(II)~(V)、(VII)~(VIII)を調製した。フッ素含有官能基成分として式(20)~式(23)及び式(27)で表わされるフッ素系化合物の式中のRはすべてエチル基である。
【0079】
<合成例6>
合成例6は、図5に示すフロー図に基づく。先ず、表1~表2に示すように、ケイ素アルコキシド、エタノール、フッ素系化合物、水及び塩酸の各添加量を合成例1のそれらと変更して、これらを合成例1と同様に混合して混合液を調製した。これにより第2フッ素含有シリカゾルゲル液(VI)を調製した。合成例6では層状無機化合物を混合液に含ませなかった。フッ素含有官能基成分として式(27)で表わされるフッ素系化合物の式中のRはエチル基である。
【0080】
〔撥水撥油性膜形成用液組成物の調製のための実施例1~6及び比較例1~2〕
<実施例1>
合成例1で得られた第1フッ素含有シリカゾルゲル液(I)10gに希釈用溶媒として工業アルコール(AP-7、日本アルコール産業社製)90gを添加し混合し、撥水撥油性膜形成用液組成物を調製した。この内容を以下の表3に示す。また溶媒を除いた撥水撥油性膜形成用液組成物中のフッ素含有官能基成分(A)と、層状無機化合物(B)と、シリカゾルゲル(C)の配合割合を以下の表4に示す。上記配合割合は、撥水撥油性膜中におけるフッ素含有官能基成分(A)と、層状無機化合物(B)と、シリカゾルゲル(C)の配合割合に相当する。
【0081】
【表3】
【0082】
【表4】
【0083】
<実施例2~5及び比較例1~2>
合成例2~5及び比較合成例1~2でそれぞれ得られた実施例2~5及び比較例1~2について、表3に示すように、合成例2~5及び比較合成例1~2で得られた第1フッ素含有シリカゾルゲル液(II)~(V)、(VII)~(VIII)10gに、それぞれ希釈用溶媒として工業アルコール(AP-7、日本アルコール産業社製)90gを添加し混合して、実施例2~5及び比較例1~2の各撥水撥油性膜形成用液組成物を調製した。また溶媒を除いたこれらの撥水撥油性膜形成用液組成物中のフッ素含有官能基成分(A)と、層状無機化合物(B)と、シリカゾルゲル(C)の配合割合を以下の表4に示す。
【0084】
<実施例6>
実施例6では、合成例6で得られた第2フッ素含有シリカゾルゲル液(VI)30gに層状無機化合物として、ラポライト-RD(BYK社製、ヘクトライト)0.005gと工業アルコール(AP-7、日本アルコール産業社製)70gを添加し混合して、実施例6の撥水撥油性膜形成用液組成物を調製した。また溶媒を除いたこの撥水撥油性膜形成用液組成物中のフッ素含有官能基成分(A)と、層状無機化合物(B)と、シリカゾルゲル(C)の配合割合を上記表4に示す。
【0085】
〔油水分離フィルタの製造のための製造例1~6及び比較製造例1~4〕
<製造例1>
油水分離フィルタの基材として、PET繊維とガラス繊維の混合繊維(質量比でPET:ガラス=80:20)からなる、通気度が2.1ml/cm2/sの安積ろ紙社製不織布を用いた。この一層からなる不織布を実施例1で得られた撥水撥油性膜形成用液組成物にディッピングし、余分な液を振り払い、室温で24時間乾燥させ、通気度が2.0ml/cm2/秒の油水分離フィルタを作製した。この内容を以下の表5に示す。
【0086】
【表5】
【0087】
<製造例2~6及び比較製造例1~4>
製造例2~6及び比較製造例1~4について、油水分離フィルタの基材である通気度が製造例1と同一のPET繊維とガラス繊維の混合繊維からなるけれども、表5に示すように、通気度が同一又は異なる不織布を用いて、実施例2~6及び比較例1~2で得られた撥水撥油性膜形成用液組成物にディッピングし、製造例1と同様の方法で、表5に示す通気度を有する油水分離フィルタを作製した。
比較試験例3~4では、それぞれ実施例5~6で得られた撥水撥油性膜形成用液組成物を用いて、製造例1と同様の方法で、表5に示す通気度を有する油水分離フィルタを作製した。
【0088】
<比較試験及び評価>
製造例1~6及び比較製造例1~4で得られた10種類の油水分離フィルタについて、膜の凍結試験を行う前と後で、ろ過液の濁度、ろ過液の油濃度及びろ過液の通過時間をそれぞれ調べた。
【0089】
具体的には、先ず、10種類の膜の凍結試験を行う前の油水分離フィルタをそれぞれ別々に、図6に示す油水分離試験装置100に取り付けた。この試験装置100では、図1に示した油水分離装置10に対応する要素の各符号に100を加えて、試験装置100の各符号を示している。この油水分離試験装置100では、乳化油としては、日立産機製スクリュー圧縮機用油HISCREW OIL NEXT0.25gとイオン交換水5リットルとを9000rpmで3分間混合し、白濁した油濃度が50ppmである乳化油(水と油を含む液体)を用いた。この乳化油を液体流入部112に供給し、油水分離フィルタ113でろ過した。油水分離フィルタ113を通過して貯水部(枝付きフラスコ)117に貯えられたろ過液114を採取し、以下に述べる方法で、(a)ろ過液の濁度と(b)ろ過液の油濃度と(c)ろ過液の通過時間を評価した。
【0090】
次に、10種類の膜の凍結試験を行った後の油水分離フィルタをそれぞれ別々に、図6に示す油水分離試験装置100に取り付けた。以下、膜の凍結試験前の油水分離フィルタと同様にして、以下に述べる方法で、(a)ろ過液の濁度と(b)ろ過液の油濃度と(c)ろ過液の通過時間を評価した。これらの結果を以下の表6に示す。
【0091】
膜の凍結は、先ず、油水分離フィルタを容器に入れた水にディッピングし、-22℃の温度で20時間保持して、油水分離フィルタを凍結させ、次いで、40℃の温水を容器に流入して、油水分離フィルタを解凍した後、脱水し、露点温度マイナス50℃の湿度条件で、24時間保持して油水分離フィルタを乾燥することにより、行った。
【0092】
【表6】
【0093】
(a) ろ過液の濁度
油水分離フィルタを通過した液であるろ過液の濁度は、ラコムテスター濁度計TN-100(アズワン社製)を用いて測定した。濁度は小さい方が油水分離性が良く、1.5以下が合格水準であり、『良好』である。これを超える場合は『不良』である。
【0094】
(b) ろ過液の油濃度
油水分離フィルタを通過した液であるろ過液の油濃度は、油分測定計(堀場製作所社製、OCMA-555)を用いてろ過液の残留油分を測定し、ろ過液の油濃度とした。この油分測定計の検出限界は油種により異なるが、用いた乳化油では1ppmである。なお、表6の『ろ過液の油濃度』において、『<1』は油分測定計の検出限界以下であることを示し、2ppm以下であれば『良好』であり、2ppmを超えると『不良』である。
【0095】
(c) ろ過液の通過時間
油水分離フィルタを通過したろ過液の通過時間の測定は、上記乳化油の全量が、吸引ポンプの作動を開始した時から、油水分離フィルタ113を通過して貯水部(枝付きフラスコ)117に到達するまでの時間を測定した。200秒以下を『良好』とし、200秒を超える場合を『不良』とした。
【0096】
また、膜の凍結試験後のろ過液の通過時間が膜の凍結試験前のろ過液の通過時間と比較して、その差が±10秒以内の場合を『良好』とし、その差が10秒を超えるけれどもろ過液の通過時間200秒以下の場合を『やや良好』とし、ろ過液の通過時間が200秒を超える場合を『不良』とした。
【0097】
表6から明らかなように、比較製造例1の油水分離フィルタでは、フッ素系官能基成分(A)が、溶媒を除いた撥水撥油性膜形成用液組成物、即ち撥水撥油性膜を100質量%とするときに、0.1質量%と少な過ぎたため(表4参照。)、形成した膜に撥油性を付与できず、膜の凍結試験前後とも、ろ過液の濁度が2.0であって『不良』であり、ろ過液の油濃度が3ppmであって『不良』であり、通過時間は200秒を超えており『不良』であった。また凍結前後の通過時間の差は+6秒であったが、通過時間が200秒を超えているため、『不良』であった。
【0098】
比較製造例2の油水分離フィルタでは、フッ素系官能基成分(A)が、溶媒を除いた撥水撥油性膜形成用液組成物、即ち撥水撥油性膜を100質量%とするときに、7質量%と多過ぎたため(表4参照。)、形成した膜の不織布への密着性が悪く、膜の凍結試験前後とも、ろ過液の油濃度が1ppm未満であって『良好』であったけれども、ろ過液の濁度が1.7以上であって『不良』であり、通過時間は200秒を超えており『不良』であった。また凍結前後の通過時間の差は+16秒であって通過時間が200秒を超えているため『不良』であった。
【0099】
比較製造例3の油水分離フィルタでは、油水分離フィルタの通気度が0.03ml/cm/sと低過ぎる値であったため、膜の凍結試験前後とも、ろ過液の濁度が0.5未満であって『良好』であり、ろ過液の油濃度が1ppm未満で『良好』であったけれども、通過時間は200秒を超えており『不良』であった。また凍結前後の通過時間の差は-19秒であって通過時間が200秒を超えているため『不良』であった。
【0100】
比較製造例4の油水分離フィルタは、油水分離フィルタの通気度が11.3ml/cm/sと高過ぎる値であったため、膜の凍結試験前後とも、ろ過液の濁度が4以上であって『不良』であり、ろ過液の油濃度が7以上であって『不良』であり、通過時間も200秒を超えており『不良』であった。また凍結前後の通過時間の差は+25秒であって通過時間が200秒を超えているため『不良』であった。
【0101】
それに対して、製造例1~6の油水分離フィルタでは、第1の観点の発明の要件を満たしていることから、膜の凍結試験前後とも、ろ過液の濁度が1.5以下であって『良好』であり、ろ過液の油濃度が2以下であって『良好』であり、通過時間も200秒以下であって『良好』であった。なお、製造例6は、第2フッ素含有シリカゾルゲル液に層状無機化合物を添加混合したため、凍結後の形成した膜の凹凸が大きくなり、凍結前後の通過時間の差は+132秒であったが、凍結後の通過時間が180秒であり200秒以下であったため、『やや良好』であり合格基準内であった。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の油水分離フィルタは、油がエマルジョン化した乳化油又は水溶性油から、油を分離して水を回収する必要のある分野に用いられる。
【符号の説明】
【0103】
10 油水分離フィルタ
20 不織布
20a 不織布の一面
20b 不織布の他面
20c 不織布の繊維
20d 不織布の気孔
21 撥水撥油性膜
21a 層状無機化合物粒子
21b フッ素含有シリカゾルゲル
22 油粒子
図1
図2
図3
図4
図5
図6