(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】シリコンウェーハ用リンス剤組成物
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20241010BHJP
B24B 55/06 20060101ALI20241010BHJP
C11D 1/68 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
H01L21/304 647A
H01L21/304 622Q
B24B55/06
C11D1/68
(21)【出願番号】P 2020209559
(22)【出願日】2020-12-17
【審査請求日】2023-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】山田 理絵
(72)【発明者】
【氏名】岡本 ゆきの
【審査官】今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-040828(JP,A)
【文献】特開2010-226089(JP,A)
【文献】特開2019-121795(JP,A)
【文献】特開2011-071285(JP,A)
【文献】特開2018-104497(JP,A)
【文献】特開平08-060182(JP,A)
【文献】特表平07-500322(JP,A)
【文献】特表2015-512959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 55/06
C11D 1/68
C09G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分A及び下記成分Bを含有する、研磨されたシリコンウェーハの表面をリンス処理するために用いられる、リンス剤組成物。
成分A:
下記一般式(I)で表される平均縮合度1.9以上のアルキルポリグルコシド
成分B:水
R-Gy (I)
ただし、式(I)中、Rは炭素数8~18のアルキル基を示し、Gは糖に由来する残基を示し、yは糖の平均縮合度を示し、1.9以上5以下の数である。
【請求項2】
成分Aに含まれる縮合度が1であるアルキルグリコシドの割合は、20%以上である、請求項
1に記載のリンス剤組成物。
【請求項3】
砥粒を実質的に含有しない、請求項1
又は2に記載のリンス剤組成物。
【請求項4】
研磨されたシリコンウェーハを、請求項1から
3のいずれかに記載のリンス剤組成物を用いてリンス処理する工程を含む、シリコンウェーハのリンス方法。
【請求項5】
下記工程(1)、(2)、及び(3)を含む、半導体基板の製造方法。
(1)被研磨シリコンウェーハを、砥粒を含む研磨液組成物を用いて研磨する工程。
(2)工程(1)で研磨されたシリコンウェーハを、請求項1から
3のいずれかに記載のリンス剤組成物を用いてリンス処理する工程。
(3)工程(2)でリンス処理されたシリコンウェーハを洗浄する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、研磨されたシリコンウェーハの表面をリンス処理するために用いられるリンス剤組成物、並びにこれを用いたリンス方法及び半導体基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体メモリの高記録容量化に対する要求の高まりから半導体装置のデザインルールは微細化が進んでいる。このため半導体装置の製造過程で行われるフォトリソグラフィーにおいて焦点深度は浅くなり、シリコンウェーハ(ベアウェーハ)の表面欠陥(LPD:Light point defects)や表面粗さ(Haze)の低減に対する要求はますます厳しくなっている。
【0003】
シリコンウェーハの品質を向上する目的で、シリコンウェーハを研磨する研磨工程には、シリコン単結晶インゴットを薄円板状にスライスすることにより得られたシリコンウェーハを平面化するラッピング(粗研磨)工程と、ラッピングされたシリコンウェーハをエッチングした後、シリコンウェーハ表面を鏡面化する仕上げ研磨工程とがある。特に研磨の最終段階で行われる仕上げ研磨工程は、Hazeの抑制と研磨されたシリコンウェーハ表面の濡れ性向上(親水化)によるパーティクルやスクラッチ、ピット等のLPDの低減とを目的として行われている。
【0004】
例えば、特許文献1及び特許文献2には、表面粗さの低減及びLPDの低減を目的として、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)やカチオン化ポリビニルアルコール(PVA)といった両親媒性高分子とアルキルポリグルコシド(AG)を含有する研磨液組成物が提案されている。
また、特許文献3には、基板表面の残留物低減を目的として、アルキルポリグルコシド(AG)を用いた太陽電池用シリコンウェーハの浸漬用洗浄剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-105954号公報
【文献】特開2017-155198号公報
【文献】特開2012-248738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2で提案されている研磨液組成物では、両親媒性高分子によるシリコンウェーハ表面へのシリカ付着が多いため、LPDの低減が十分ではない。さらに、特許文献1の実施例で使用されている平均縮合度1.3-1.7のアルキルポリグルコシド(AG)を半導体用シリコンウェーハのリンス処理に用いた場合、シリコンウェーハ表面の濡れ性が低下し、LPDの低減が十分ではない。
特許文献3には、アルキルポリグルコシド(AG)を半導体用シリコンウェーハのリンス工程で使用することについての記載がない。また、同文献の実施例で使用されている平均縮合度1.2及び1.8のアルキルポリグルコシド(AG)を半導体用シリコンウェーハのリンス処理に用いた場合、LPDの低減が十分ではない。
【0007】
そこで、本開示は、研磨されたシリコンウェーハ表面のLPDを低減できるリンス剤組成物、並びに、該リンス剤組成物を用いたリンス方法及び半導体基板の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、一態様において、下記成分A及び下記成分Bを含有する、研磨されたシリコンウェーハの表面をリンス処理するために用いられる、リンス剤組成物に関する。
成分A:平均縮合度1.9以上のアルキルポリグルコシド
成分B:水
【0009】
本開示は、一態様において、研磨されたシリコンウェーハを、本開示のリンス剤組成物を用いてリンス処理する工程を含む、シリコンウェーハのリンス方法に関する。
【0010】
本開示は、一態様において、下記工程(1)、(2)、及び(3)を含む、半導体基板の製造方法に関する。
(1)被研磨シリコンウェーハを、砥粒を含む研磨液組成物を用いて研磨する工程。
(2)工程(1)で研磨されたシリコンウェーハを、本開示のリンス剤組成物を用いてリンス処理する工程。
(3)工程(2)でリンス処理されたシリコンウェーハを洗浄する工程。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、研磨されたシリコンウェーハの表面のLPDを低減することができるリンス剤組成物、並びに、該リンス剤組成物を用いたリンス方法及び半導体基板の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、特定の縮合度を有するアルキルポリグルコシドを用いて、研磨されたシリコンウェーハの表面をリンス処理することで、ウェーハ表面の濡れ性を向上してLPDを低減できるという知見に基づく。
【0013】
すなわち、本開示は、一態様において、下記成分A及び下記成分Bを含有する、研磨されたシリコンウェーハの表面をリンス処理するために用いられる、リンス剤組成物(以下、「本開示のリンス剤組成物」ともいう)に関する。
成分A:平均縮合度1.9以上のアルキルポリグルコシド
成分B:水
【0014】
本開示によれば、一又は複数の実施形態において、研磨されたシリコンウェーハの表面のLPDを低減することができる。
【0015】
本開示の効果発現のメカニズムの詳細は明らかではないが、以下のように推察される。
疎水性のシリコンウェーハ表面に吸着した有機物やシリカ粒子等の砥粒を除去するためには、疎水基と親水基を有する界面活性剤で洗浄することが有効であることが知られている。ただし、界面活性剤が有する親水基が短いとリンス後のウェーハ表面の濡れ性が悪く、はっ水するとシリコンウェーハ表面にシリカ粒子が付着しやすくなり、シリコンウェーハの界面で再汚染が発生すると考えられる。
これに対し、本開示のリンス剤組成物を用いたリンス工程では、特定の縮合度をもつアルキルポリグルコシド(成分A)によってシリコンウェーハ表面を十分に親水的な表面に改質することにより、ウェーハ表面に残存するシリカ粒子数が低減されると推察される。
故に、洗浄工程に供される研磨後シリコンウェーハ上のシリカ粒子の残留量を顕著に低減することができ、シリコンウェーハのLPDの低減が実現されているものと推定される。
但し、本開示はこれらのメカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
【0016】
[アルキルポリグルコシド(成分A)]
本開示のリンス剤組成物に含まれるアルキルポリグルコシド(以下、「成分A」ともいう)は、平均縮合度1.9以上のアルキルポリグルコシドである。成分Aは、1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。成分Aとしては、好ましくは、一又は複数の実施形態において、下記一般式(I)で表される化合物が挙げられる。
R-Gy (I)
ただし、式(I)中、Rは炭素数8~18のアルキル基を示し、Gは糖に由来する残基を示し、yは糖の平均縮合度を示し、1.9以上5以下の数である。
【0017】
上記式(I)中、Rは、LPDの低減の観点から、炭素数8~18のアルキル基である。アルキル基の炭素数が、LPDの低減の観点から、8以上が好ましく、10以上がより好ましく、そして、保存安定性の観点から、18以下が好ましく、16以下がより好ましく、14以下が更に好ましく、12以下が更に好ましく、10以下が更に好ましい。よって、前記アルキル基の炭素数は、LPDの低減及び濡れ性向上の観点から、8~16が好ましく、8~14がより好ましく、10~12が更に好ましい。Rは、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。
【0018】
上記式(I)中、Gは、LPDの低減の観点から、糖に由来する残基であり、例えば、グルコースに由来する残基が挙げられる。平均縮合度yは、LPDの低減の観点から、1.9以上であって、2以上が好ましく、2.1以上がより好ましく、2.2以上が更に好ましく、2.3以上が更に好ましく、2.4以上が更に好ましく、2.5以上が更に好ましく、2.6以上が更に好ましく、2.7以上が更に好ましく、そして、5以下であって、4以下が好ましく、3.5以下がより好ましく、3.4以下が更に好ましく、3.3以下が更に好ましく、3.2以下が更に好ましく、3.1以下が更に好ましく、3.0以下が更に好ましい。平均縮合度とは、糖に由来する残基の平均値であり、核磁気共鳴分光(NMR)法により測定できる。具体的には、実施例に記載の方法により測定できる。
【0019】
成分Aは、例えば、酸性触媒の存在下で糖と過剰のアルコールを反応させて、反応後の反応液から未反応のアルコールを留去することにより製造できる。例えば、酸性触媒の存在下で糖と過剰のアルコールとを反応させた後、アルキルポリグリコシドと未反応のアルコールを含有する反応液に無機酸塩を添加し、次いで未反応のアルコールを蒸留により留去する方法により製造できる。
【0020】
成分Aに含まれる縮合度が1であるアルキルグリコシドの割合は、LPDの低減及び濡れ性の観点から、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上、更に好ましくは30%以上、更に好ましくは40%以上であり、そして好ましくは70%以下、より好ましくは60%以下、更に好ましくは50%以下である。縮合度1のアルキルグリコシドの測定方法は、上述の平均縮合度と同様に、NMRにより測定できる。
【0021】
本開示のリンス剤組成物中の成分Aの含有量は、濡れ性向上及びLPDの低減の観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上であり、そして、同様の観点から、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下である。成分Aが2種以上の組合せである場合、成分Aの含有量はそれらの合計含有量をいう。なお、本開示において、1質量%は10,000質量ppmである。
【0022】
[水(成分B)]
本開示のリンス剤組成物は、媒体として水(以下、「成分B」ともいう)を含有する。成分Bとしては、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水等が挙げられる。本開示のリンス剤組成物中の成分Bの含有量は、成分A及び後述する任意成分を除いた残余とすることができる。
【0023】
[任意成分(助剤)]
本開示のリンス剤組成物は、本開示の効果が妨げられない範囲で、pH調整剤、防腐剤、アルコール類、キレート剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、及び酸化剤から選ばれる少なくとも1種の任意成分をさらに含むことができる。
【0024】
<pH調整剤>
pH調整剤としては、塩基性化合物、酸性化合物、及びこれらの塩等が挙げられる。前記酸性化合物の塩としては、好ましくは、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、及びアミン塩から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくは、アンモニウム塩である。塩基性化合物が塩の形態を取る場合の対イオンとしては、好ましくは水酸化物イオン、塩化物イオン及びヨウ化物イオンから選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくは水酸化物イオン及び塩化物イオンから選ばれる少なくとも1種である。
【0025】
(塩基性化合物)
塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、水酸化アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N一メチルエタノールアミン、N-メチル-N,N一ジエタノ-ルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、N,N-ジブチルエタノールアミン、N-(β-アミノエチル)エタノ-ルアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン・六水和物、無水ピペラジン、1-(2-アミノエチル)ピペラジン、N-メチルピペラジン、ジエチレントリアミン、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウムが挙げられる。これらの塩基性化合物は2種以上を用いてもよい。塩基性化合物としては、シリコンウェーハのHazeの低減とLPDの低減の両立の観点、リンス剤組物の保存安定性の向上の観点からアンモニアがより好ましい。
【0026】
(酸性化合物)
酸性化合物としては、硫酸、塩酸、硝酸又はリン酸等の無機酸、酢酸、シュウ酸、コハク酸、グリコール酸、リンゴ酸、クエン酸又は安息香酸等の有機酸等が挙げられる。
【0027】
<防腐剤>
防腐剤としては、ベンザルコニウムクロライド、ベンゼトニウムクロライド、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、(5-クロロ-)2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、過酸化水素、又は次亜塩素酸塩等が挙げられる。
【0028】
<アルコール類>
アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、2-メチル-2-プロパノオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。本発明のリンス剤組成物におけるアルコール類の含有量は、0.01質量%~10質量%が好ましい。
【0029】
<キレート剤>
キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸アンモニウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、トリエチレンテトラミン六酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸ナトリウム等が挙げられる。本発明のリンス剤組成物におけるキレート剤の含有量は、0.01~1重量%が好ましい。
【0030】
<アニオン性界面活性剤>
アニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸石鹸、アルキルエーテルカルボン酸塩等のカルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩等のスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩等の硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル等のリン酸エステル塩などが挙げられる。
【0031】
<ノニオン性界面活性剤>
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン(硬化)ヒマシ油等のポリエチレングリコール型と、ショ糖脂肪酸エステル等の多価アルコール型及び脂肪酸アルカノールアミド等が挙げられる。
【0032】
<酸化剤>
酸化剤としては、過マンガン酸、ペルオキソ酸等の過酸化物、クロム酸、又は硝酸、並びにこれらの塩等が挙げられる。
【0033】
本開示のリンス剤組成物は、一又は複数の実施形態において、LPDの低減の観点から、砥粒を実質的に含有しないことが好ましい。例えば、本開示のリンス剤組成部中の砥粒の含有量は、0.1質量%以下が好ましく、0.01質量%以下がより好ましく、実質的に0質量%が更に好ましい。
【0034】
[リンス剤組成物のpH]
本開示のリンス剤組成物の25℃におけるpHは、LPDの低減、洗浄時間の短縮化、及び、リンス剤組成物の保存安定性向上の観点から、2以上が好ましく、2.5以上がより好ましく、3以上が更に好ましく、3.5以上が更により好ましく、4以上が更により好ましく、そして、同様の観点から、12以下が好ましく、10以下がより好ましく、9以下が更に好ましく、8以下が更により好ましく、7以下が更により好ましく、6.5以下が更により好ましい。pHの調整は、必要に応じて、pH調整剤を適宜添加して行うことができる。ここで、25℃におけるpHは、pHメータを用いて測定でき、具体的には、実施例に記載の方法で測定できる。
【0035】
[リンス剤組成物の製造方法]
本開示のリンス剤組成物は、例えば、成分Aと、成分Bと、必要に応じて任意成分とを公知の方法で配合する工程を含む製造方法によって製造できる。本開示において「配合する」とは、成分A,成分B、及び必要に応じて任意成分を、同時に又は任意の順に混合することを含む。前記配合は、例えば、ホモミキサー、ホモジナイザー、超音波分散機及び湿式ボールミル等の混合器を用いて行うことができる。本開示のリンス剤組成物の製造方法における各成分の好ましい配合量は、上述した本開示のリンス剤組成物中の各成分の好ましい含有量と同じとすることができる。
【0036】
本開示において、「リンス剤組成物中の各成分の含有量」は、リンス剤組成物の使用時、すなわち、リンス剤組成物をリンス処理に使用する時点における前記各成分の含有量をいう。
【0037】
[リンス剤組成物の濃縮液]
本開示のリンス剤組成物は、その保存安定性が損なわれない範囲で濃縮された状態で保存及び供給されてもよい。この場合、製造及び輸送コストを更に低くできる点で好ましい。本開示のリンス剤組成物の濃縮液は、使用時に各成分の含有量が上述した各成分の含有量となるように水で適宜希釈して使用すればよい。濃縮倍率としては、希釈した後の研磨時の濃度を確保できれば、特に限定するものではないが、製造及び輸送コストを更に低くできる観点から、好ましくは2倍以上、より好ましくは10倍以上、更に好ましくは20倍以上である。
【0038】
本開示のリンス剤組成物が濃縮液である場合、本開示のリンス剤組成物の濃縮液中の成分Aの含有量は、製造及び輸送コストを低くする観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、そして、保存安定性の向上の観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
【0039】
本開示のリンス剤組成物が濃縮液である場合、本開示のリンス剤組成物の濃縮液の25℃におけるpHは、好ましくは1.5以上、より好ましくは1.7以上、更に好ましくは2以上であり、そして、好ましくは12以下、より好ましくは11以下、更に好ましくは10以下である。
【0040】
[半導体基板の製造方法]
本開示のリンス剤組成物は、一又は複数の実施形態において、砥粒を含む研磨液組成物を用いて研磨された後のシリコンウェーハの表面に残った残渣を除去するために用いられる。
本開示のリンス剤組成物は、一又は複数の実施形態において、半導体基板の製造過程における、シリコンウェーハの研磨工程後のリンス工程に用いられる。
すなわち、本開示は、一態様において、下記工程(1)、(2)及び(3)を含む、半導体基板の製造方法(以下、「本開示の半導体基板製造方法」ともいう)に関する。
(1)被研磨シリコンウェーハを、砥粒を含む研磨液組成物を用いて研磨する工程(以下、「研磨工程」ともいう)。
(2)工程(1)で研磨されたシリコンウェーハ(以下、「研磨後シリコンウェーハ」ともいう)を、本開示のリンス剤組成物を用いてリンス処理する工程(以下、「リンス工程」ともいう)。
(3)工程(2)でリンス処理されたシリコンウェーハ(以下、「リンス後シリコンウェーハ」ともいう)を洗浄する工程(以下、「洗浄工程」ともいう)。
【0041】
<被研磨シリコンウェーハ>
被研磨シリコンウェーハとしては、例えば、単結晶100面シリコンウェーハ、111面シリコンウェーハ、110面シリコンウェーハ等が挙げられる。シリコンウェーハの抵抗率としては、ウェーハ表面上の残留物低減の観点から、好ましくは0.0001Ω・cm以上、より好ましくは0.001Ω・cm以上、更に好ましくは0.01Ω・cm以上、更により好ましくは0.1Ω・cm以上であり、そして、好ましくは100Ω・cm以下、より好ましくは50Ω・cm以下、更に好ましくは20Ω・cm以下である。同様の観点から、シリコンウェーハの抵抗率は、好ましくは0.0001Ω・cm以上100Ω・cm以下、より好ましくは0.001Ω・cm以上100Ω・cm以下、更に好ましくは0.01Ω・cm以上100Ω・cm以下、更に好ましくは0.1Ω・cm以上100Ω・cm以下であり、更に好ましくは0.1Ω・cm以上50Ω・cm以下、更に好ましくは0.1Ω・cm以上20Ω・cm以下である。
【0042】
<工程(1):研磨工程>
前記研磨工程には、シリコン単結晶インゴットを薄円板状にスライスすることにより得られたシリコンウェーハを平面化するラッピング(粗研磨)工程と、ラッピングされたシリコンウェーハをエッチングした後、シリコンウェーハ表面を鏡面化する仕上げ研磨工程とがある。本開示のリンス剤組成物は、上記仕上げ研磨工程の後に用いられるとより好ましい。
【0043】
前記研磨工程では、例えば、研磨パッドを貼り付けた定盤に被研磨シリコン基板を押し付けて、3~20kPaの研磨圧力で被研磨シリコン基板を研磨することができる。研磨圧力とは、研磨時に被研磨シリコン基板の被研磨面に加えられる定盤の圧力をいう。前記研磨工程では、例えば、研磨パッドを貼り付けた定盤に被研磨シリコン基板を押し付けて、好ましくは15℃以上、より好ましくは20以上、そして、好ましくは40℃以下、より好ましくは30℃以下の研磨液組成物の温度及び研磨パッド表面温度で被研磨シリコン基板を研磨することができる。
【0044】
前記研磨工程で使用される研磨剤組成物は、特に限定されないが、シリカ粒子を含有する。シリカ粒子としては、コロイダルシリカ、フュームドシリカ、粉砕シリカ、及びそれらを表面修飾したシリカ等が挙げられる。研磨速度向上及び表面粗さ(ヘイズ)低減とウェーハ表面上の表面欠陥(LPD)低減の観点から、コロイダルシリカが好ましい。シリカ粒子は、1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。シリカ粒子の含有量は、研磨剤組成物中、例えば、0.05質量%以上10質量%以下が挙げられる。
前記研磨剤組成物は、研磨速度向上と表面粗さ(ヘイズ)低減と表面欠陥(LPD)低減とを達成する観点から、好ましくはノニオン性水溶性高分子、より好ましくは分子内にアルキレンオキサイド基又は水酸基を有し、重量平均分子量が1,000以上50万未満であるノニオン性水溶性高分子を含有する。本開示において、「水溶性」とは、水(20℃)に対して0.5g/100mL以上の溶解度、好ましくは2g/100mL以上の溶解度を有することをいう。前記ノニオン性高分子が分子内にアルキレンオキサイド基を有する場合、アルキレンオキサイド基としては、例えば、エチレンオキサイド基、プロピレンオキサイド基等が挙げられる。前記ノニオン性高分子は、研磨速度向上と表面粗さ(ヘイズ)低減と表面欠陥(LPD)低減とを達成する観点から、ポリグリセリン、ヒドロキシアルキルセルロース、ポリビニルアルコール、及びポリヒドロキシエチルアクリルアミドから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
前記研磨液組成物のpHは、研磨速度の向上と保存安定性とを両立する観点から、8.5超が好ましく、9以上がより好ましく、9.5以上が更に好ましく、10以上が更に好ましく、そして、表面品質を向上する観点から、14以下が好ましく、13以下がより好ましく、12.5以下が更に好ましく、12以下が更に好ましく、11.5以下が更に好ましく、11以下が更に好ましい。
前記研磨液組成物は、媒体として水を含み、研磨液組成物中の水の含有量は、砥粒及び前記ノニオン性高分子および後述する任意成分の残余とすることができる。前記研磨液組成物は、一又は複数の実施形態において、水溶性高分子、塩基性化合物、pH調整剤、防腐剤、アルコール類、キレート剤等の任意成分を含んでいてもよい。
【0045】
<工程(2):リンス工程>
前記リンス工程では、例えば、工程(1)で研磨されたシリコンウェーハ(以下、「研磨後シリコンウェーハ」ともいう)とパットとの間に本開示のリンス剤組成物を供給し、研磨後シリコンウェーハとパットとが接した状態で、パットを研磨後シリコンウェーハに対して相対運動させる。リンス工程におけるリンス処理は、研磨工程で用いられる研磨装置を用いて行える。パッドの回転数、研磨後シリコンウェーハの回転数、パッドを備えた研磨装置に設定される荷重、本開示のリンス剤組成物の供給速度等は、研磨工程おける対応する条件と同じでもよいし異なっていてもよい。リンス時間は、砥粒の付着抑制の観点から、好ましくは1秒以上、より好ましくは3秒以上であり、生産性の向上の観点から、好ましくは60秒以下、より好ましくは30秒以下である。ここで、リンス時間とは、リンス剤組成物を供給している時間を意味する。
【0046】
前記リンス工程は、本開示のリンス剤組成物を用いて行われるリンス処理の前に、リンス液として水を用いる水リンス処理を含んでいてもよい。水リンス処理時間は、好ましくは2秒以上30秒以下である。
【0047】
前記リンス工程で使用されるパッドは、研磨工程で使用されるパッドと同じでよく、不織布タイプ、スウェードタイプ等のいずれの種類のものであってもよい。また、研磨工程で使用されたパッドは交換せずに、そのままリンス工程に用いてもよく、この場合は、パッド中に研磨液組成物の砥粒が若干含まれていてもよい。前記リンス工程は、前記研磨工程の直後、研磨装置に取り付けられたままのシリコンウェーハに対して行うこともできる。
【0048】
前記リンス工程で使用されるリンス剤組成物の温度としては、例えば、5~60℃が挙げられる。
【0049】
リンス工程は、少なくとも仕上げ研磨工程の後に行うのが好適であるが、粗研磨工程及び仕上げ研磨工程の各工程の後に、各々行ってもよい。
【0050】
<工程(3):洗浄工程>
前記洗浄工程では、例えば、工程(2)でリンス処理されたシリコンウェーハ(以下、「リンス後シリコンウェーハ」ともいう)を、洗浄剤に浸漬するか、又は、リンス後シリコンウェーハの洗浄されるべき面に洗浄剤を射出する。洗浄剤には、従来から公知の洗浄剤を用いればよく、例えば、オゾン、過酸化水素、アンモニア、塩酸、硫酸、フッ酸及びオゾン水から選ばれる少なくとも1種を含む無機物洗浄剤が挙げられる。洗浄時間は、洗浄方法に応じて設定すればよい。
【0051】
本開示の半導体基板製造方法は、素子分離膜の形成工程、層間絶縁膜の平坦化工程、金属配線の形成工程等をさらに含んでいてもよい。
【0052】
[シリコンウェーハのリンス方法]
本開示は、一態様において、研磨されたシリコンウェーハを、本開示のリンス剤組成物を用いてリンス処理をする工程(リンス工程)を含む、シリコンウェーハのリンス方法(以下、「本開示のリンス方法」ともいう)に関する。本開示のリンス方法におけるリンス工程は、上述した本開示の半導体基板製造方法におけるリンス工程(2)と同様にして行うことができる。本開示のリンス方法によれば、本開示のリンス剤組成物を用いるので、研磨後シリコンウェーハ上の砥粒の残留量を顕著に低減することができ、加えて、砥粒の凝集も抑制できるので、リンス処理後に行われるシリコンウェーハの洗浄の時間の短縮化とLPDの低減が可能である。
【実施例】
【0053】
以下、実施例により本開示をさらに詳細に説明するが、これらは例示的なものであって、本開示はこれら実施例に制限されるものではない。
【0054】
1.各種パラメータの測定方法
[アルキルポリグルコシドの平均縮合度]
アルキルポリグルコシド(AG)の平均縮合度は下記条件で固相抽出することで多糖類を除去した後、後述する方法で算出した。
(固相抽出)
メタノール、イオン交換水でコンディショニングを行ったのち、サンプル(2mL)をチャージし、アセトニトリル水溶液(5wt%:10mL)にて糖成分を溶出させ、その後メタノール(10mL)でAG成分を溶出させた。
カラム:InertSep C18 2000mg(GLサイエンス)
サンプル:2wt%(アセトニトリル5wt%水溶液にて溶解)
【0055】
(平均縮合度算出方法)
リンス剤組成物の調製に用いたアルキルポリグルコシドの平均縮合度は固相抽出後、核磁気共鳴分光(NMR)法で下記条件を適用し測定し、得られたチャート中のピークに基づき算出した。
装置:Mercury400BB(400 MHz, Varian社製)
観測幅:6410.3Hz
データポイント:64 K
パルス幅:45 μS
パルス遅延時間:10秒
積算回数:64回
測定温度:室温
スピン:×16
溶媒:pyridine-d5 (D2O数滴滴下)
縮合度算出方法:
縮合度={[(3.5~5.3ppmに出現する酸素原子隣接位のプロトン数)/(0~2.0ppmに出現するアルキル部分のプロトン数)]-2}/7
【0056】
[リンス剤組成物のpH]
リンス剤組成物及びその濃縮液の25℃におけるpH値は、pHメータ(東亜ディーケーケー株式会社製、「HM-30G」)を用いて測定した値であり、pHメータの電極をリンス剤組成物又はその濃縮物へ浸漬して1分後の数値である。
【0057】
2.リンス剤組成物の調製(実施例1~6及び比較例1~3)
表1に示すアルキルポリグルコシド(成分A又は非成分A)及びイオン交換水を攪拌混合し、必要に応じて塩酸水溶液又は28質量%アンモニア水(キシダ化学(株)試薬特級)を用いて、25℃におけるpHを4に調整し、実施例1~6及び比較例1~3のリンス剤組成物の濃縮液(濃縮倍率:20倍)を得た。
なお、表1に示す成分A又は非成分Aの含有量は、濃縮液を20倍に希釈して得たリンス剤組成物についての値である。イオン交換水の含有量は、アルキルポリグルコシド(成分A又は非成分A)、塩酸又はアンモニアを除いた残余である。
【0058】
各リンス剤組成物の調製に用いたアルキルポリグルコシド(成分A又は非成分A)の詳細は表1及び下記のとおりである。
(成分A)
A1:アルキルポリグルコシド[炭素数10の直鎖アルキル基、平均糖縮合度2.1]
A2:アルキルポリグルコシド[炭素数10の直鎖アルキル基、平均糖縮合度2.7]
A3:アルキルポリグルコシド[炭素数12の直鎖アルキル基、平均糖縮合度2.1]
A4:アルキルポリグルコシド[炭素数12の直鎖アルキル基、平均糖縮合度2.3]
A5:アルキルポリグルコシド[炭素数10の直鎖アルキル基、平均糖縮合度3.4]
A6:アルキルポリグルコシド[炭素数12の直鎖アルキル基、平均糖縮合度2.9]
(非成分A)
A7:アルキルポリグルコシド[炭素数10の分岐アルキル基、平均糖縮合度1.3]
A8:アルキルポリグルコシド[炭素数 9の直鎖アルキル基、平均糖縮合度1.5]
A9:アルキルポリグルコシド[炭素数 9の直鎖アルキル基、平均糖縮合度1.6]
【0059】
(アルキルグリコシドの合成方法)
上記アルキルポリグリコシドは、酸性触媒の存在下で糖と過剰のアルコールを反応させて、アルキルポリグリコシドと未反応のアルコールを含有する反応液に無機酸塩を添加し、次いで未反応のアルコールを蒸留により留去する方法により製造した。
【0060】
3.リンス方法
リンス剤組成物(濃縮液)をイオン交換水で20倍に希釈して得たリンス剤組成物(pH5)を、リンス処理の開始直前にフィルター(アドバンテック株式会社製コンパクトカートリッジフィルター「MCP-LX-C10S」))にてろ過を行い、下記のリンス条件で下記のシリコンウェーハ(直径200mmのシリコン片面鏡面ウェーハ(伝導型:P、結晶方位:100、抵抗率0.1Ω・cm以上100Ω・cm未満)に対してリンス処理を行った。当該リンス処理に先立って、シリコンウェーハに対して市販の研磨液組成物を用いてあらかじめ粗研磨を実施した。その後、下記の条件で仕上げ研磨を行い、その直後に各リンス剤組成物を用いて下記の条件でリンス処理をした。なお、粗研磨を終了し仕上げ研磨に供したシリコンウェーハのHazeは、2.680(ppm)であった。Hazeは、KLA Tencor社製「Surfscan SP1-DLS」を用いて測定される暗視野ワイド斜入射チャンネル(DWO)での値である。
【0061】
[仕上げ研磨に使用した研磨液組成物]
仕上げ研磨に使用した研磨液組成物は、シリカ粒子(扶桑化学工業(株)社製の“PL-3”)、HEC(ヒドロキシエチルセルロース、ダイセル(株)社製の“SE-400”、重量平均分子量25万)、PEG(ポリエチレングリコール、和光純薬工業(株)社製の“PEG6000”、和光一級、重量平均分子量6,000)、アンモニア水(キシダ化学(株)社製、試薬特級)、イオン交換水を攪拌混合して濃縮液を調製した。そして、該濃縮液を使用直前にイオン交換水で40倍に希釈して仕上げ研磨用の研磨液組成物を得た。仕上げ研磨用の研磨液組成物中の各成分の含有量は、シリカ粒子が0.17質量%、HECが0.01質量%、アンモニアが0.01質量%、PEGが0.0008質量%であった。仕上げ研磨用の研磨液組成物のpHは10であった。
【0062】
[仕上げ研磨条件]
研磨機:岡本工作製片面8インチ研磨機「GRIND-X SPP600s」
研磨パッド:東レコーテックス社製スエードパッド(アスカー硬度:64,厚さ:1.37mm,ナップ長:450μm,開口径:60μm)
シリコンウェーハ研磨圧力:100g/cm2
定盤回転速度:60rpm
研磨時間:5分
研磨液組成物の供給速度:150g/分
研磨液組成物の温度:23℃
キャリア回転速度:60rpm
【0063】
[リンス条件]
研磨機:岡本工作製片面8インチ研磨機「GRIND-X SPP600s」
研磨パッド:東レコーテックス社製スエードパッド(アスカー硬度:64,厚さ:1.37mm,ナップ長:450μm,開口径:60μm)
シリコンウェーハリンス圧力:60g/cm2
定盤回転速度:30rpm
リンス時間:20秒
リンス剤組成物の供給速度:1000 mL/分
リンス剤組成物の温度:23℃
キャリア回転速度:30rpm
【0064】
4.洗浄方法
リンス処理後、シリコンウェーハに対して、オゾン洗浄と希フッ酸洗浄を下記のとおり行った。オゾン洗浄では、20ppmのオゾンを含んだ水溶液をノズルから流速1L/minで600rpmで回転するシリコンウェーハの中央に向かって3分間噴射した。このときオゾン水の温度は常温とした。次に希フッ酸洗浄を行った。希フッ酸洗浄では、0.5質量%のフッ化水素アンモニウム(特級:ナカライテクス株式会社)を含んだ水溶液をノズルから流速1L/minで600rpmで回転するシリコンウェーハの中央に向かって5秒間噴射した。上記オゾン洗浄と希フッ酸洗浄を1セットとして計2セット行い、最後にスピン乾燥を行った。スピン乾燥では1500rpmでシリコンウェーハを回転させた。
【0065】
5.評価
[シリコンウェーハのLPDの評価]
洗浄後のシリコンウェーハ表面のLPDの評価には、表面粗さ測定装置「Surfscan SP1-DLS」(KLA Tencor社製)を用いて、シリコンウェーハ表面上の粒径が45nm以上のパーティクル数を測定することによって評価した。LPDの評価結果は、数値が小さいほど表面欠陥が少ないことを示す。LPDの測定は、各々4枚のシリコンウェーハに対して行い、各々平均値を下記の表に示した。
なお、比較例1~3は、パーティクル数が多く、測定不可能であった。
【0066】
[シリコンウェーハ表面の濡れ性の評価(シリコンウェーハの濡れ面積)]
前処理として、40×40mm角にカットしたシリコンウェーハを、1%希フッ酸水溶液に3分浸漬させ酸化膜を除去した後、超純水で10秒洗浄し、エアブロー乾燥を行った。その後、上記仕上げ研磨に使用した研磨液組成物と同じ研磨液組成物を用いて5分間研磨後、超純水で水リンスを10秒間実施し、その後上記に記載した各リンス剤組成物を用いて20秒リンスした。その後、超純水を張った桶にシリコンウェーハを浸漬させ、引き上げ10秒後、水平にシリコンウェーハを固定した際の親水化部面積を画像解析により算出した。なお、シリコンウェーハの全面が濡れている場合を100%とした。
<評価基準>
A:100%
B:80%超100%未満
C:80%以下
【0067】
【0068】
上記表1に示すとおり、実施例1~6のリンス剤組成物は、比較例1~3のリンス剤組成物に比べて、研磨されたシリコンウェーハ表面のLPDを低減できていることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本開示のリンス剤組成物は、研磨されたシリコンウェーハ表面のLPDを低減できるため、表面欠陥が低減されたシリコンウェーハを製造でき、半導体基板の量産において有用である。