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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】路側機
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
G08G1/09 C
G08G1/09 F
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020211846
(22)【出願日】2020-12-21
(65)【公開番号】P2022098349
(43)【公開日】2022-07-01
【審査請求日】2023-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(72)【発明者】
【氏名】荻島 由彦
(72)【発明者】
【氏名】田山地 剛義
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/142275(WO,A1)
【文献】特開2010-092248(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信により交差点に向かう車載器搭載車両の情報を取得して前記車載器搭載車両の将来位置を予測し、センサモジュールの出力に基づき前記交差点に向かう各車両の現在位置及び移動ベクトルを検出して前記各車両の将来位置を予測し、前記車載器搭載車両の情報と前記センサモジュールの出力に基づく前記各車両の情報とを比較して前記各車両のいずれかを前記車載機搭載車両と同一車両であると判定し、予測結果に基づき前記車載器搭載車両に対して他の車両の接触事故を回避し又は前記接触事故による被害を軽減するための情報を運転支援情報として送信するように構成され、
前記各車両の現在位置を過去に予測された対応する前記各車両の将来位置に基づき補正する機能を有する、路側機。
【請求項2】
前記各車両の現在位置及び移動ベクトルの検出と前記各車両の将来位置の予測とを所定時間毎に行い、今回の処理で検出された前記各車両の現在位置を前回の処理で予測された前記各車両の前記所定時間後の将来位置に基づき補正する、請求項1に記載の路側機。
【請求項3】
前記各車両のうち、前回の処理で現在位置が検出されたが今回の処理では現在位置が検出されない車両がある場合、前回の処理で予測された当該車両の前記所定時間後の将来位置に車両が存在するものと仮定して処理を継続する、請求項2に記載の路側機。
【請求項4】
前記各車両のうち、前回の処理で現在位置が検出されたが今回の処理では現在位置が検出されない車両がある場合、前回の処理で予測された当該車両の前記所定時間後の将来位置を今回の処理における当該車両の現在位置として用いて処理を継続する、請求項2又は3に記載の路側機。
【請求項5】
前記交差点に設けられた信号の信号制御情報を取得し、前記信号制御情報を加味して前記車載器搭載車両の将来位置及び前記各車両の将来位置を予測する、請求項1~4のいずれか一つに記載の路側機。
【請求項6】
前記車載器搭載車両の情報は、前記車載器搭載車両の位置、速度及び移動経路を含み、
前記車載器搭載車両の情報と前記各車両の現在位置及び移動ベクトルとに基づき前記各車両のいずれかを前記車載器搭載車両と同一の車両と判定する、請求項1~5のいずれか一つに記載の路側機。
【請求項7】
前記車載器搭載車両は、自動運転車両である、請求項1~6のいずれか一つに記載の路側機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交差点に設置され、車両(特に自動運転車両)に搭載された車載器と協働して交差点運転支援システムを構成し得る路側機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、交差点に設置された路側機から送信される物体検知センサによる検知情報を取得し、取得した検知情報に基づき、自車が当該交差点において対向車線を横切って走行していく方向に物体が存在し又は物体が移動してくることを判定した場合に警報を出力する車載器が記載されている。特許文献1において、前記物体検知センサは、例えばレーダセンサや画像センサで構成された車両検知センサであり、交差点に向かって走行してくる車両の状態(車両の有無、位置及び速度など)を検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-58868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記物体検知センサ(車両検知センサ)では、車両同士の重なりなどによって交差点に向かって走行してくる車両の一部を見落とす(車両の検知漏れが発生する)おそれがある。また、前記車載器は、前記路側機から送信された前記検知情報の中から自車に応じた情報を抽出して処理する必要があり、処理負荷が大きい。
【0005】
そこで、本発明は、交差点に向かう車両の見落としを防止すること及び交差点に向かう車両の車載器に対して個別の運転支援情報を提供することができる路側機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面によると、路側機が提供される。この路側機は、無線通信により交差点に向かう車載器搭載車両の情報を取得して前記車載器搭載車両の将来位置を予測し、センサモジュールの出力に基づき前記交差点に向かう各車両の現在位置及び移動ベクトルを検出して前記各車両の将来位置を予測し、前記車載器搭載車両の情報と前記センサモジュールの出力に基づく前記各車両の情報とを比較して前記各車両のいずれかを前記車載機搭載車両と同一車両であると判定し、予測結果に基づき前記車載器搭載車両に対して他の車両の接触事故を回避し又は前記接触事故による被害を軽減するための情報を運転支援情報として送信するように構成され、前記各車両の現在位置を過去に予測された対応する前記各車両の将来位置に基づき補正する機能を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、交差点に向かう車両の見落としを防止することができ、また、交差点に向かう車両に対して個別の運転支援情報を提供することができる路側機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る交差点運転支援システムのブロック図である。
図2】前記交差点運転支援システムが適用された交差点の一例を示す図である。
図3】前記交差点に向かう各車両の現在位置を確定する処理を説明するための図である。
図4】前記交差点に向かう各車両の現在位置を確定する処理を説明するため図である。
図5】前記交差点に向かう各車両の現在位置を確定する処理を説明するための図である。
図6】前記交差点に向かう各車両の現在位置を確定する処理を説明するための図である。
図7】前記交差点に向かう各車両の現在位置を確定する処理を説明するための図である。
図8】前記交差点に向かう各車両の現在位置を確定する処理を説明するための図である。
図9】前記交差点に向かう各車両の現在位置を確定する処理を説明するための図である。
図10】前記交差点に向かう各車両の現在位置を確定する処理を説明するための図である。
図11】前記交差点に向かう各車両の現在位置を確定する処理を説明するための図である。
図12】前記交差点に向かう各車両の現在位置を確定する処理を説明するための図である。
図13】交差点状況把握処理の一例を示すフローチャートである。
図14】車載器搭載車両把握処理の一例を示すフローチャートである。
図15】前記交差点に向かう車載器搭載車両についての第1接触判定処理を説明するための図である。
図16】前記第1接触判定処理(運転支援情報作成/送信処理を含む)の一例を示すフローチャートである。
図17】前記交差点内で右折待機している車載器搭載車両についての第2接触判定処理を説明するための図である。
図18】前記第2接触判定処理(運転支援情報作成/送信処理を含む)の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る交差点運転支援システムの構成を示すブロック図である。図1に示されるように、実施形態に係る交差点運転支援システム1は、主に交差点に設置された路側機2と車両に搭載された車載器3とで構成される。そして、交差点運転支援システム1は、前記交差点に関する運転支援情報を、路車間通信により、路側機2から車載器3(換言すれば、車載器3を搭載した車両である車載器搭載車両)に送信するように構成されている。
【0011】
なお、以下では、前記車載器搭載車両が自動運転装置を備えた自動運転車両である場合について説明する。但し、これに限られるものではなく、前記車載器搭載車両がドライバーの運転を支援する運転支援装置を備えた運転支援車両であってもよい。この場合、以下の説明における自動運転装置が運転支援装置に読み替えられる。
【0012】
図1を参照すると、本実施形態において、路側機2は、外部と無線通信を行う路側機通信部21と、各種情報を記憶する路側機メモリ22と、各種処理を実行する路側機制御部23とを有している。
【0013】
また、路側機2は、図示省略のGNSS(Global Navigation Satellite System)レシーバなどの時刻情報を取得するための手段を有するとともに、交差点Xに設置された複数の信号機を制御する信号制御機4及び複数のセンサモジュール(ここでは第1~第4センサモジュール5A~5D)と有線又は無線で電気的に接続されている。このため、路側機2は、時刻情報を取得すること、信号制御機4から信号制御情報を取得すること及び第1~第4センサモジュール5A~5Dの出力(検出結果)を取得することが可能である。
【0014】
図2は、交差点運転支援システム1が適用された交差点の一例を示す図である。図2に示されるように、本実施形態において、交差点Xは、四差路(十字)交差点であり、交差点Xには、第1~第4車両用信号機41A~41Dと、第1~第4歩行者用信号機61A~61Dとが設置されている。そして、これらの信号機41A~41D、61A~61Dが信号制御機4によって制御される。
【0015】
第1~第4車両用信号機41A~41Dは、いわゆる両面型信号機であり、信号灯を前面側と背面側の両方に有している。第1~第4車両用信号機41A~41Dは、それぞれ支持アーム42A~42Dを介して第1~第4信号柱43A~43Dに取り付けられている。また、第1~第4歩行者用信号機61A~61Dは、それぞれ支持アーム62A~62Dを介して第1~第4信号柱43A~43Dに取り付けられている。
【0016】
路側機2及び信号制御機4は、例えば、第1~第4信号柱43A~43Dのいずれか(ここでは第2信号柱43B)に取り付けられる。但し、これに限られるものではなく、路側機2と信号制御機4とが別々の信号柱に取り付けられてもよいし、路側機2と信号制御機4とが一体化されていてもよい(一つの筐体内に収容されていてもよい)。あるいは、路側機2及び/又は信号制御機4が第1~第4信号柱43A~43D以外の場所に設置されてもよい。
【0017】
第1~第4センサモジュール5A~5Dは、交差点Xと交差点Xに至る道路の所定範囲とを斜め上方から俯瞰して監視する。交差点Xに至る道路とは、交差点Xに向かう車両が走行する道路のことをいう。また、前記所定範囲は、特に制限されないが、例えば、交差点Xから上流側に概ね150~200mまでの範囲であり得る。
【0018】
本実施形態において、第1~第4センサモジュール5A~5Dのそれぞれは、GNSSレシーバ51、路面検出部52及び物体検出部53を有している(図1参照)。GNSSレシーバ51は、主に位置情報及び時刻情報を取得するために用いられる。路面検出部52は、例えば、路面状態センサを含み、監視範囲の道路の路面状態(凹凸などの変形、乾燥、湿潤、積雪及び凍結など)を検出する。物体検出部53は、例えば、画像センサ(カメラ)、LiDARセンサ及び画像処理部を含み、特徴量などに基づき監視範囲における物体(特に車両)の存在及びその位置を検出する。つまり、第1~第4センサモジュール5A~5Dのそれぞれは、自身の監視範囲内にある道路の路面状態及び自身の監視範囲内に存在する各車両の位置を継続的に検出することが可能である。
【0019】
また、第1~第4センサモジュール5A~5Dのそれぞれは、検出結果を時刻情報と共に周期的に、すなわち、所定時間毎に路側機2に出力するように構成されている。換言すれば、路側機2は、第1~第4センサモジュール5A~5Dの出力(検出結果)を前記所定時間毎に入力する。前記所定時間は、特に制限されないが、本実施形態においては200msである。
【0020】
図2を参照すると、本実施形態において、第1センサモジュール5Aは、第1車両用信号機41Aを支持する支持アーム42Aに取り付けられている。第1センサモジュール5Aは、第1道路40Aを斜め上方から俯瞰するように設置されており、第1道路40Aの前記所定範囲及び交差点Xの一部(主に第1道路40Aを交差点X内に延長した部分)を監視する。第1道路40Aは、交差点Xに至る道路のうち第1車両用信号機41Aによって交通量等が制御される道路であり、交差点Xを挟んで第1センサモジュール5Aとは反対側に位置しており、ここでは2つの車両通行帯40A-1、40A-2を有している。第1センサモジュール5Aは、第1道路40Aを交差点Xに向かって走行してくる各車両の存在及びその位置を検出すること、第1道路40Aを走行した後に交差点X内で停止した車両及びその位置を検出すること、交差点X及び第1道路40Aの路面状態を検出することが可能である。第1センサモジュール5Aの検出結果は、前記所定時間毎に路側機2に出力される。
【0021】
第2センサモジュール5Bは、第2車両用信号機41Bを支持する支持アーム42Bに取り付けられている。第2センサモジュール5Bは、第2道路40Bを斜め上方から俯瞰するように設置されており、第2道路40Bの前記所定範囲及び交差点Xの一部(主に第2道路40Bを交差点X内に延長した部分)を監視する。第2道路40Bは、交差点Xに至る道路のうち第2車両用信号機41Bによって交通量等が制御される道路であり、交差点Xを挟んで第2センサモジュール5Bとは反対側に位置している。第2センサモジュール5Bは、第2道路40Bを交差点Xに向かって走行してくる車両の存在及びその位置を検出すること、第2道路40Bを走行した後に交差点X内で停止した車両及びその位置を検出すること、交差点X及び第2道路40Bの路面状態を検出することが可能である。第2センサモジュール5Bの検出結果は、前記所定時間毎に路側機2に出力される。
【0022】
第3センサモジュール5Cは、第3車両用信号機41Cを支持する支持アーム42Cに取り付けられている。第3センサモジュール5Cは、第3道路40Cを斜め上方から俯瞰するように設置されており、第3道路40Cの前記所定範囲及び交差点Xの一部(主に第3道路40Cを交差点X内に延長した部分)を監視する。第3道路40Cは、交差点Xに至る道路のうち第3車両用信号機41Cによって交通量等が制御される道路であり、交差点Xを挟んで第3センサモジュール5Cとは反対側に位置しており、ここでは2つの車両通行帯40C-1、40C-2を有している。第3センサモジュール5Cは、第3道路40Cを交差点Xに向かって走行してくる車両の存在及びその位置を検出すること、第3道路40Cを走行した後に交差点X内で停止した車両及びその位置を検出すること、交差点X及び第3道路40Cの路面状態を検出することが可能である。第3センサモジュール5Cの検出結果は、前記所定時間毎に路側機2に出力される。
【0023】
第4センサモジュール5Dは、第4車両用信号機41Dを支持する支持アーム42Dに取り付けられている。第4センサモジュール5Dは、第4道路40Dを斜め上方から俯瞰するように設置されており、第4道路40Dの前記所定範囲及び交差点Xの一部(主に第4道路40Dを交差点X内に延長した部分)を監視する。第4道路40Dは、交差点Xに至る道路のうち第4車両用信号機41Dによって交通量等が制御される道路であり、交差点Xを挟んで第4センサモジュール5Dとは反対側に位置している。第4センサモジュール5Dは、第4道路40Dを交差点Xに向かって走行してくる車両の存在及びその位置を検出すること、第4道路40Dを走行した後に交差点X内で停止した車両及びその位置を検出すること、交差点X及び第4道路40Dの路面状態を検出することが可能である。第4センサモジュール5Dの検出結果は、前記所定時間毎に路側機2に出力される。
【0024】
図1に戻り、路側機2の路側機通信部21は、交差点Xを中心として少なくとも第1~第4センサモジュール5A~5Dの監視範囲を包含する通信エリアを有している。また、本実施形態において、路側機通信部21は、応答要求を周期的にブロードキャスト送信するとともに、当該応答要求に対する車載機3の応答を受信するように構成されている。
【0025】
路側機メモリ22には、少なくとも交差点X及び第1~第4道路40A~40Dに関する情報(地図データなど)が記憶されている。また、路側機メモリ22には、路側機2が取得した各種の情報等を記憶するための領域が確保されている。
【0026】
路側機制御部23は、路側機通信部21が前記応答要求に対する車載器3からの応答を受信すると、路側機通信部21を介して前記応答の送信元の車載機3との間で無線通信(セッション)を確立する。ここで、前記応答要求に対する応答を送信する車載器3は、通常、前記通信エリアの外側から前記通信エリア内に進入した車載器搭載車両の車載器3、すなわち、交差点Xに向かう車載器搭載車両に搭載されている車載器3である。したがって、路側機制御部23は、交差点Xに向かう車載器搭載車両(の車載器3)との間で前記無線通信(セッション)を確立し、確立された無線通信(セッション)を介して交差点Xに向かう車載器搭載車両の情報を取得することが可能である。なお、路側機制御部23が取得する車載器搭載車両の情報は、後述するように、車載器搭載車両の車両ID、車載器搭載車両の状態情報(速度、加速度及び位置)及び車載器搭載車両の経路情報(移動経路及び走行車線)を含む。
【0027】
また、路側機制御部23は、第1~第4センサモジュール5A~5Dの出力(検出結果)を前記所定時間(200ms)毎に入力(取得)すると共に信号制御機4から所定のタイミングで信号制御情報を取得する。前記信号制御情報は、第1~第4車両用信号機41A~41D及び第1~第4歩行者用信号機61A~61Dのそれぞれにおける灯色の切替タイミング(切替時刻)や各灯色の継続時間などを含む。
【0028】
そして、路側機制御部23は、取得された情報を路側機メモリ22に適宜記憶させると共に取得された情報(路側機メモリ22に記憶されている情報を含む)に基づいて後述するような各種処理を実行するように構成されている。
【0029】
図1を参照すると、本実施形態において、車載器3は、路側機2と同様に、外部と無線通信を行う車載器通信部31と、各種情報を記憶する車載器メモリ32と、各種処理を実行する車載器制御部33とを有している。また、車載器3は、自身(すなわち、車載器3)と共に車載機搭載車両に搭載されている自動運転装置6に電気的に接続されている。自動運転装置6は、自動運転のために必要な情報を適宜取得して前記車載器搭載車両の自動運転を行う装置である。前記自動運転のために必要な情報は、各種センサから取得される情報や車載器3から提供される(車載器3経由で取得される)情報などを含む。
【0030】
本実施形態において、自動運転装置6は、前記車載器搭載車両に搭載されている図示省略の速度センサ、加速度センサ及びGNSSレシーバなどから、前記車載機搭載車両の速度、前記車載器搭載車両の加速度、前記車載器搭載車両の位置及び時刻情報などを取得している。そのため、車載機3は、自動運転装置6から、時刻情報と共に、前記車載機搭載車両の速度、加速度及び位置などを前記車載器搭載車両の状態情報として取得することが可能である。但し、これに限られるものではなく、車載器3は、前記車載器搭載車両の状態情報を前記速度センサ、前記加速度センサ及び前記GNSSレシーバなどから直接取得してもよい。
【0031】
また、本実施形態において、自動運転装置6は、予め設定された移動経路(走行車線を含む。以下同じ。)に沿って設定速度で前記車載機搭載車両を走行させるように構成されている。そのため、車載機3は、自動運転装置6から前記車載器搭載車両の移動経路及び設定速度などを前記車載器搭載車両の経路情報として取得することが可能である。
【0032】
車載器3(車載器制御部33)は、車載器通信部31が路側機2(の路側機通信部21)からブロードキャスト送信された前記応答要求を受信すると、車載器通信部31を介して前記応答要求に対する応答を路側機2(の路側機通信部21)に送信するように構成されている。また、本実施形態において、車載器3(車載器制御部33)は、路側機2(の路側機通信部21)から送信された情報送信要求を受信すると、時刻情報を含む前記車載器搭載車両の情報を路側機2(の路側機通信部21)に送信するように構成されている。送信される前記車載器搭載車両の情報は、前記車載器搭載車両の車両ID、前記車載器搭載車両の状態情報(速度、加速度及び位置など)及び前記車載器搭載車両の経路情報(移動経路及び設定速度など)を含む。
【0033】
次に、路側機制御部23(すなわち、路側機2)が実行する処理について説明する。本実施形態において、路側機制御部23は、主に、交差点状況把握処理、車載器搭載車両把握処理、同一車両判定処理及び運転支援情報作成/送信処理を実行する。
【0034】
[交差点状況把握処理]
路側機制御部23は、第1~第4センサモジュール5A~5Dの出力に基づいて交差点Xの状況を把握する。具体的には、本実施形態において、路側機制御部23は、交差点X及び交差点Xに至る道路の路面状態を検出すること(路面状態の検出)、交差点Xに向かう各車両の情報を検出すること(車両情報の検出)、及び、交差点Xに向かう各車両の将来位置を予測すること(将来位置の予測)により、交差点Xの状況を把握する。
【0035】
(路面状態の検出)
路側機制御部23は、第1~第4センサモジュール5A~5Dの出力に基づいて交差点X及び交差点Xに至る道路(第1~第4道路40A~40D)の凹凸などの変形、乾燥、湿潤、積雪及び凍結などの路面状態を検出する。
【0036】
(車両情報の検出)
路側機制御部23は、第1~第4センサモジュール5A~5Dの出力に基づいて交差点Xに向かう新たな車両を検出すると、検出された車両に対してIDを付与する。また、路側機制御部23は、第1~第4センサモジュール5A~5Dの出力に基づいて交差点Xに向かう各車両の情報を検出する。具体的には、路側機制御部23は、第1~第4センサモジュール5A~5Dの出力に基づいて交差点Xに向かう各車両の現在位置を検出すると共に、検出された各車両の現在位置をそれぞれにIDに紐づけて路側機メモリ22に記憶させる。また、路側機制御部23は、交差点Xに向かう各車両の(最新の)現在位置と前回検出された交差点Xに向かう各車両の(過去の)現在位置とに基づいて交差点Xに向かう各車両の移動ベクトル(移動速度、移動方向)を算出(検出)する。但し、これに限られるものではなく、路側機制御部23は、交差点Xに向かう各車両の(最新の)現在位置と、前回検出された交差点に向かう各車両の現在位置を含む交差点Xに向かう各車両の過去複数回分の現在位置とに基づいて交差点Xに向かう各車両の移動ベクトルを検出(算出)してもよい。つまり、本実施形態において、路側機制御部23は、交差点Xに向かう各車両の現在位置及び移動ベクトルを交差点Xに向かう各車両の情報として検出する。
【0037】
(将来位置の予測)
路側機制御部23は、検出された交差点Xに向かう各車両の(最新の)現在位置と検出(算出)された交差点Xに向かう各車両の移動ベクトルとに基づき、信号制御機4からの信号制御情報を加味して交差点Xに向かう各車両の将来位置を予測する。本実施形態において、路側機制御部23は、交差点Xに向かう各車両の(最新の)現在位置を起点とし、交差点Xに向かう各車両の将来位置をn秒先(例えば、15~20秒先)まで前記所定時間(200ms)単位で予測(算出)する。具体的には、路側機制御部23は、交差点Xに向かう各車両が現在位置から交差点Xに向かって直進するものと仮定し、信号制御機4からの前記信号制御情報を加味することで交差点Xに向かう各車両の移動速度を適宜調整し、その上で交差点Xに向かう各車両の前記n秒先までの将来位置を前記所定時間(200ms)単位で予測(算出)する。但し、これに限られるものではない。路側機制御部23は、交差点X及び交差点Xに至る道路の路面状態を更に加味して交差点Xに向かう各車両の将来位置を予測(算出)するようにしてもよい。
【0038】
(現在位置の確定(補正))
ところで、第1~第4センサモジュール5A~5Dによる車両の検出では、例えば車両同士の重なり(いわゆるオクルージョン)が原因で交差点Xに向かう車両の見落とし(検出漏れ)が発生するおそれがある。車両の見落としが発生すると、見落とされた車両の現在位置や移動ベクトルが検出(算出)されないことになって、実際には当該車両が存在するにもかかわらず、存在しないもとのとして処理されてしまう。
【0039】
そこで、本実施形態において、路側機制御部23は、交差点Xに向かう各車両の現在位置を必要に応じて過去に予測された対応する将来位置に基づいて補正することで交差点Xに向かう各車両の現在位置を確定し、これによって、上述のような不都合の発生を防止している。具体的には、路側機制御部23は、今回の処理で検出された各車両の(最新の)現在位置(現在位置が検出されなかった場合を含む)を必要に応じて前回の処理で予測された各車両の前記所定時間(200ms)後の将来位置を用いて補正することによって各車両の現在位置を確定する。
【0040】
図3図12は、交差点Xに向かう各車両の現在位置を確定する処理(現在位置の補正を含む)を説明するための図である。なお、以下の説明においては、今回の処理時刻を時刻Tとし、前回の処理時刻を時刻T-1としている。また、「前回の処理で予測された車両の前記所定時間後の(すなわち、時刻Tにおける)将来位置」を単に『前回の処理で予測された車両の将来位置』という。
【0041】
図3は、今回の処理で初めて車両Aを検出した場合を示している。この場合、路側機制御部23は、車両AにID(ここでは「ID1」)を付与すると共に、検出された車両Aの現在位置を路側機メモリ22に「ID1」に紐づけて記憶させる。
【0042】
図4は、前回の処理で車両A(ID:ID1)の将来位置が予測されたが今回の処理では車両が検出されなかった場合を示している。この場合、路側機制御部23は、前回の処理で予測された車両Aの将来位置に車両Aが存在するものと仮定して処理を継続する。すなわち、路側機制御部23は、前回の処理で予測された車両Aの将来位置を今回の車両Aの現在位置として採用(仮確定)する。また、路側機制御部23は、仮確定された車両Aの現在位置を路側機メモリ22に「ID1」に紐づけて記憶させる。そして、予め設定された一定時間が経過するまでの間に仮確定された車両Aの現在位置の近傍(例えば、車両Aの前方10m以内)に車両が検出されない場合、路側機制御部23は、車両Aが存在しなくなったものと判断し、車両A及び路側機メモリ22の「ID1」に紐づけられた情報を消去する。
【0043】
図5は、前回の処理で車両A(ID1)の将来位置が予測され、今回の処理で車両A(ID1)及び車両B(ID:ID2)の現在位置が検出され、且つ、今回の処理で検出された車両A(ID1)及び車両B(ID2)の現在位置がいずれも前回の処理で予測された車両A(ID1)の将来位置とほぼ等しい(車両Aと車両Bとが重複している)場合を示している。この場合、路側機制御部23は、車両A及び車両Bは一台の車両(つまり、車両A)であると判断する。前記所定時間は微小時間であるため、新たな車両Bが出現することは考えられないからである。そして、路側機制御部23は、検出された二つの現在位置のうち、前回の処理で予測された車両A(ID1)の将来位置に近い方(ここでは、車両B(ID2)の現在位置)を車両Aの現在位置として採用(確定)する。また、その後は車両Aが車両Bとして検出される可能性が高いので、路側機制御部23は、車両AのIDを「ID1」から車両BのIDである「ID2」に更新し、路側機メモリ22において「ID1」に紐づけられていた情報を「ID2」に紐づける。
【0044】
図6は、前回の処理で予測された車両A(ID1)及び車両B(ID2)の将来位置と、今回の処理で検出された車両A(ID1)及び車両B(ID2)の現在位置とがほぼ等しい場合を示している。この場合、路側機制御部23は、今回の処理で検出された(最新の)現在位置をそのまま車両A(ID1)及び車両B(ID2)の現在位置として採用する(確定する)。また、路側機制御部23は、路側機メモリ22内において今回の処理で検出された車両Aの現在位置を「ID1」に紐づけて記憶させ、今回の処理で検出された車両Bの現在位置を「ID2」に紐づけて記憶させる。
【0045】
図7は、前回の処理で予測された車両A(ID1)の将来位置と今回の処理で検出された車両B(ID2)の現在位置とがほぼ等しく、前回の処理で予測された車両B(ID2)の将来位置と今回の処理で検出された車両A(ID1)の現在位置とがほぼ等しい場合を示している。なお、車両B(ID2)は、車両A(ID1)の後方を走行していた車両である(前回の処理で検出された現在位置を参照)。
【0046】
この場合、路側機制御部23は、車両Aと車両Bとの間でIDの入れ替わりが発生したと判断する。前記所定時間は微小時間であるため、車両Aと車両Bとが入れ替わることは考えられないからである。そして、路側機制御部23は、前回の処理で予測された車両A(ID1)の将来位置とほぼ等しい位置である車両B(ID2)の現在位置を車両Aの現在位置として採用(確定)し、前回の処理で予測された車両B(ID2)の将来位置とほぼ等しい位置である車両A(ID1)の現在位置を車両Bの現在位置として採用する(確定する)。つまり、路側機制御部23は、今回の処理で検出された車両A、Bの現在位置を前回の処理で予測された車両A、Bの将来位置に基づいて補正する。また、その後もIDが入れ替わった状態が維持される可能性が高いので、路側機制御部23は、車両AのIDを「ID1」から「ID2」に更新すると共に車両BのIDを「ID2」から「ID1」に更新する。さらに、路側機制御部23は、路側機メモリ22において「ID1」に紐づけられていた情報と「ID2」に紐づけられていた情報とを入れ替える。すなわち、「ID1」に紐づけられていた情報を「ID2」に紐づけると共に、「ID2」に紐づけられていた情報を「ID1」に紐づける。
【0047】
図8は、前回の処理で将来位置が予測された車両B(ID2)が今回の処理では現在位置が検出されておらず、前回の処理で将来位置が予測されなかった車両A(ID1)が今回の処理では現在位置が検出されており、且つ、今回の処理で検出された車両A(ID1)の現在位置が前回の処理で予測された車両B(ID2)の将来位置とほぼ等しい場合を示している。なお、車両B(ID2)は、車両A(ID1)の後方を走行していた車両である(前回の処理で検出された現在位置を参照)。
【0048】
この場合、路側機制御部23は、車両Aは既に監視範囲外に移動済みであると判断すると共に、今回の処理で現在位置が検出された車両Aは実際にはIDが車両AのIDに置き換えられた車両Bである(すなわち、車両BのIDが車両AのIDに置き換えられたもの)と判断する。そして、路側機制御部23は、前回の処理で予測された車両B(ID2)の将来位置とほぼ等しい位置である車両A(ID1)の現在位置を車両Bの現在位置として採用(確定)する。つまり、路側機制御部23は、今回の処理で検出された(検出されなかった)車両A、Bの現在位置を前回の処理で予測された車両A、Bの将来位置に基づいて補正する。また、その後もIDが置き換えられた状態が維持される可能性が高いので、路側機制御部23は、車両BのIDを「ID2」から「ID1」に更新する。さらに、路側機制御部23は、路側機メモリ22において「ID1」に紐づけられていた情報(既に監視範囲外に移動済みの車両Aに関する情報)を消去し、「ID2」に紐づけられていた情報を「ID1」に紐づける。
【0049】
図9は、前回の処理で予測された車両A(ID1)の将来位置と今回の処理で検出された車両A(ID1)の現在位置とがほぼ等しく、前回の処理で将来位置が予測された車両B(ID2)が今回の処理では現在位置が検出されておらず、前回の処理で現在位置の検出も将来位置の予測もなされなかった車両C(ID:ID3)が今回の処理では現在位置が検出されており、且つ、今回の処理で検出された車両C(ID3)の現在位置が前回の処理で予測された車両B(ID2)の将来位置とほぼ等しい場合を示している。なお、車両B(ID2)は、車両A(ID1)の後方を走行していた車両である(前回の処理で検出された現在位置を参照)。
【0050】
この場合、路側機制御部23は、今回の処理で現在位置が検出された車両Cは実際には別の新たな車両と認識された結果として新たなIDである「ID3」が付与された車両Bであると判断する。そして、路側機制御部23は、今回の処理で検出された車両A(ID1)の現在位置をそのまま車両A(ID1)の現在位置として採用する(確定する)と共に前回の処理で予測された車両B(ID2)の将来位置とほぼ等しい位置である車両C(ID3)の現在位置を車両Bの現在位置として採用する(確定する)。つまり、路側機制御部23は、今回の処理で検出された(検出されなかった)車両A~Cの現在位置を前回の処理で予測された車両A、Bの将来位置に基づいて補正する。また、その後も車両BのIDとして「ID3」が維持される可能性が高いので、路側機制御部23は、車両BのIDを「ID2」から「ID3」に更新し、路側機メモリ22において「ID2」に紐づけられていた情報を「ID3」に紐づける。
【0051】
図10は、前回の処理で車両A(ID1)及び車両B(ID2)の将来位置が予測されたが今回の処理では車両A(ID1)の現在位置が検出されずに車両B(ID2)及び車両C(ID3)の現在位置が検出され、今回の処理で検出された車両B(ID2)の現在位置が前回の処理で予測された車両A(ID1)の将来位置とほぼ等しく、且つ、今回の処理で検出された車両C(ID3)の現在位置が前回の処理で予測された車両B(ID2)の将来位置とほぼ等しい場合を示している。なお、車両B(ID2)は、車両A(ID1)の後方を走行していた車両である(前回の処理で検出された現在位置を参照)。
【0052】
この場合、路側機制御部23は、今回の処理で現在位置が検出された車両Bは実際にはIDが車両BのIDに置き換えられた車両Aであると判断すると共に、今回の処理で現在位置が検出された車両Cは実際には別の新たな車両と認識された結果として新たなIDである「ID3」が付与された車両Bであると判断する。そして、路側機制御部23は、前回の処理で予測された車両A(ID1)の将来位置とほぼ等しい位置である車両Bの現在位置を車両Aの現在位置として採用(確定)し、前回の処理で予測された車両B(ID2)の将来位置とほぼ等しい位置である車両Cの現在位置を車両Bの現在位置として採用(確定)する。つまり、路側機制御部23は、今回の処理で検出された(検出されなかった)車両A~Cの現在位置を前回の処理で予測された車両A、Bの将来位置に基づいて補正する。また、路側機制御部23は、車両AのIDを「ID1」から「ID2」に更新すると共に車両BのIDを「ID2」から「ID3」に更新する。さらに、路側機制御部23は、路側機メモリ22において「ID2」に紐づけられていた情報を「ID3」に紐づけると共に「ID1」に紐づけられていた情報を「ID2」に紐づける。
【0053】
図11(A)は、前回の処理で車両A(ID1)及び車両B(ID2)の将来位置が予測されたが今回の処理では車両A(ID1)の現在位置のみが検出され、且つ、今回の処理で検出された車両A(ID1)の現在位置が前回の処理で予測された車両A(ID1)の将来位置にほぼ等しい場合を示している。なお、車両B(ID2)は、車両A(ID1)の後方を走行していた車両である(前回の処理で検出された現在位置を参照)。
【0054】
この場合、路側機制御部23は、前回の処理で予測された車両Bの将来位置に車両Bに相当する車両Xが存在するものと仮定し、車両Xに仮IDである「IDx」を付与して処理を継続する。前記所定時間は微小時間であるため、車両Bが消失することは考えられないからである。そして、路側機制御部23は、今回の処理で検出された車両A(ID1)の現在位置をそのまま車両A(ID1)の現在位置として採用する(確定する)一方、前回の処理で予測された車両Bの将来位置を車両X(IDx)の現在位置として採用(仮確定する)。また、路側機制御部23は、路側機メモリ22において、車両BのIDである「ID2」に紐づけられていた情報を仮IDである「IDx」に紐づける。
【0055】
その後、図11(B)に示されるように、今回の処理において前回の処理で予測された車両Xの将来位置とほぼ同じ位置に車両C(ID:ID3)の現在位置が検出されると、路側機制御部23は、車両X(IDx)を車両C(ID3)に更新するとともに、路側機メモリ22において、仮IDである「IDx」に紐づけられていた情報を「ID3」に紐づける。
【0056】
なお、図11(A)の場合、路側機制御部23は、オクルージョンによって今回の処理では車両B(ID2)の現在位置が検出されなかったものと判断し、前回の処理で予測された車両B(ID2)の将来位置を今回の車両B(ID2)が存在するものと仮定して処理を継続してもよい。この場合、路側機制御部23は、今回の処理で検出された車両A(ID1)の現在位置をそのまま車両A(ID1)の現在位置として採用する(確定する)一方、前回の処理で予測された車両B(ID2)の将来位置を車両Bの現在位置として採用する(確定する)ことができる。
【0057】
図12(A)は、前回の処理で車両A(ID1)及び車両B(ID2)の将来位置が予測されたが今回の処理では車両B(ID2)の現在位置のみが検出され、且つ、今回の処理で検出された車両B(ID2)の現在位置が前回の処理で予測された車両A(ID1)の将来位置にほぼ等しい場合を示している。なお、車両B(ID2)は、車両A(ID1)の後方を走行していた車両である(前回の処理で検出された現在位置を参照)。
【0058】
この場合、路側機制御部23は、今回の処理で現在位置が検出された車両Bは実際にはIDが車両BのIDに置き換えられた車両Aであると判断すると共に、前回の処理で予測された車両Bの将来位置に車両Bに相当する車両Xが存在するものと仮定し、車両Xに仮IDである「IDx」を付与して処理を継続する。前記所定時間は微小時間であるため、車両Aと車両Bとが入れ替わったり、車両Aや車両Bが消失したりすることは考えられないからである。そして、路側機制御部23は、前回の処理で予測された車両A(ID1)の将来位置とほぼ等しい位置である車両B(ID2)の現在位置を車両Aの現在位置として採用する(確定する)一方、前回の処理で予測された車両Bの将来位置を車両X(IDx)の現在位置として採用(仮確定する)。また、路側機制御部23は、車両AのIDを「ID1」から「ID2」に更新し、路側機メモリ22内において車両BのIDである「ID2」に紐づけられていた情報を仮IDである「IDx」に紐づけると共に、「ID1」に紐づけられていた情報を「ID2」に紐づける。
【0059】
その後、図12(B)に示されるように、今回の処理において前回の処理で予測された車両Xの将来位置とほぼ同じ位置に車両C(ID:ID3)の現在位置が検出されると、路側機制御部23は、車両X(IDx)を車両C(ID3)に更新するとともに、路側機メモリ22において、仮IDである「IDx」に紐づけられていた情報を「ID3」に紐づける。
【0060】
図13は、路側機制御部23(すなわち、路側機2)が実行する交差点状況把握処理の一例を示すフローチャートである。図13において、ステップS1では、第1~第4センサモジュール5A~5Dの出力(検出結果)が入力されたか否かを判定する。そして、第1~第4センサモジュール5A~5Dの出力が入力されるとステップS2に進む。
【0061】
ステップS2では、ステップS1で入力された第1~第4センサモジュール5A~5Dの出力に基づき交差点X及び交差点Xに至る道路(第1~第4道路40A~40D)の路面状態(凹凸などの変形、乾燥、湿潤、積雪及び凍結など)を検出する。
【0062】
ステップS3では、第1~第4センサモジュール5A~5Dの出力に基づいて交差点Xに向かう各車両の現在位置を検出する。
【0063】
ステップS4では、交差点Xに向かう各車両の現在位置を確定する。具体的には、ステップS3で検出された交差点Xに向かう各車両の現在位置を、必要に応じて前回のステップS6で予測された交差点Xに向かう各車両の将来位置に基づいて補正することで交差点Xに向かう各車両の現在位置を確定する。確定された交差点Xに向かう各車両の現在位置は路側機メモリ22に記憶される。
【0064】
ステップS5では、交差点Xに向かう各車両の移動ベクトル(移動速度及び移動方向)を検出(算出)する。具体的には、ステップS4で確定された交差点Xに向かう各車両の現在位置と、前回のステップS4で確定された交差点Xに向かう各車両の(過去の)現在位置とに基づいて交差点Xに向かう各車両の移動ベクトルを検出(算出)する。
【0065】
ステップS6では、ステップS4で確定された交差点Xに向かう各車両の現在位置、ステップS5で検出(算出)された交差点Xに向かう各車両の移動ベクトル(移動速度、移動方向)及び信号制御機4からの信号制御情報に基づき交差点Xに向かう各車両の将来位置を予測(算出)する。具体的には、ステップS4で確定された現在位置を起点とし、前記信号制御情報に基づき移動速度を調整しつつ、前記n秒先までの将来位置を所定時間(200ms)単位で予測(算出)する。なお、ステップS2で検出された交差点X及び交差点Xに至る道路の路面状態を加味して交差点Xに向かう各車両の将来位置を予測(算出)するようにしてもよい。予測(算出)された交差点Xに向かう各車両の将来位置は、路側機メモリ22に記憶される。そして、ステップS6の処理が終了するとステップS1に戻る。
【0066】
[車載器搭載車両把握処理]
本実施形態において、路側機制御部23は、前記無線通信(セッション)を介して交差点Xに向かう車載器搭載車両の情報を取得することにより、交差点Xに向かう車載器搭載車両を把握する。具体的には、路側機制御部23は、路側機通信部21を介して前記情報送信要求を交差点Xに向かう車載器搭載車両(の車載器3)に周期的(例えば、200ms毎)に送信し、前記情報送信要求を受信した車載器搭載車両の車載器3から送信される当該車載器搭載車両の情報を受信する。これにより、路側機制御部23は、交差点Xに向かう車載器搭載車両の情報、すなわち、前記車載器搭載車両の車両ID、前記車載器搭載車両の状態情報(速度、加速度及び位置など)及び前記車載器搭載車両の経路情報(移動経路及び設定速度など)を周期的(例えば、200ms毎)に取得する。
【0067】
また、路側機制御部23は、取得された交差点Xに向かう車載器搭載車両の情報に基づき、信号制御機4からの信号制御情報を加味して交差点Xに向かう車載器搭載車両の将来位置を予測する。具体的には、本実施形態において、路側機制御部23は、交差点Xに向かう各車両の場合と同様、交差点Xに向かう車載器搭載車両の現在位置を起点とし、前記信号制御情報に基づき速度を調整しつつ、交差点Xに向かう車載器搭載車両の将来位置を前記n秒先まで前記所定時間(200ms)単位で予測(算出)する。但し、これに限られるものではない。路側機制御部23は、交差点X及び交差点Xに至る道路の路面状態を更に加味して交差点Xに向かう車載器搭載車両の将来位置を予測(算出)するようにしてもよい。
【0068】
図14は、路側機制御部23(すなわち、路側機2)が実行する車載器搭載車両把握処理の一例を示すフローチャートである。この処理は車載器搭載車両毎に実行される。図14において、ステップS11では、交差点Xに向かう車載器搭載車両(の車載器3)との間で無線通信(セッション)が確立しているか否かを判定する。そして、前記無線通信(セッション)が確立している場合にはステップS12に進む。
【0069】
ステップS12では、前記無線通信(セッション)により交差点Xに向かう車載器搭載車両の情報、すなわち、交差点Xに向かう車載器搭載車両の車両ID、状態情報(速度、加速度及び位置など)及び経路情報(移動経路及び設定速度など)を取得する。具体的には、上述のように、前記情報送信要求を交差点Xに向かう車載器搭載車両(の車載器3)に送信することにより、交差点Xに向かう車載器搭載車両の情報を取得する。取得された交差点Xに向かう車載器搭載車両の情報は、路側機メモリ22に記憶される。
【0070】
ステップS13では、ステップS12で取得された車載器搭載車両の情報及び信号制御機4からの信号制御情報に基づいて交差点Xに向かう車載器搭載車両の将来位置を予測(算出)する。具体的には、交差点Xに向かう車載器搭載車両の将来位置を前記n秒先まで所定時間(200ms)単位で予測(算出)する。予測(算出)された交差点Xに向かう車載器搭載車両の将来位置は、路側機メモリ22に記憶される。そして、ステップS13の処理が終了するとステップS11に戻る。
【0071】
[同一車両判定処理]
上述のように、本実施形態において、路側機制御部23は、第1~第4センサモジュール5A~5Dの出力に基づいて交差点Xに向かう各車両の情報を検出(算出)している(交差点状況把握処理)。また、路側機制御部23は、前記無線通信(セッション)により交差点Xに向かう車載器搭載車両の情報を取得している(車載器搭載車両把握処理)。ここで、交差点Xに向かう車載器搭載車両は、交差点Xに向かう車両に他ならない。そのため、路側機制御部23は、一台の車載器搭載車両に関する情報を二重に(重複して)取得していることになり、その結果、交差点Xの状況を誤って把握してしまう(一台の車載器搭載車両を二台の車両と誤認する)おそれがある。また、後述するように、本実施形態において、路側機制御部23は、車載器搭載車両と他の車両との接触事故の可能性の有無を判定しているところ、一台の車載器搭載車両を二台の車両(車載器搭載車両と他の車両)と誤認してしまうと、当該二台の車両が接触すると判定(すなわち、誤判定)してしまうおそれもある。
【0072】
このようなおそれを解消するため、本実施形態において、路側機制御部23は、交差点Xに向かう各車両のいずれかを車載器搭載車両と同一の車両であると判定する同一車両判定処理を実行しており、これにより、一台の車載器搭載車両を二台の車両と誤認してしまうことを防止している。具体的には、路側機制御部23は、次のようにして交差点Xに向かう各車両のいずれかを車載器搭載車両と同一の車両であると判定する。
【0073】
路側機制御部23は、前記無線通信(セッション)を介して取得した交差点Xに向かう車載器搭載車両の情報と(図14のステップS12を参照)、第1~第4センサモジュール5A~5Dの出力に基づき検出した交差点Xに向かう各車両の情報(図13のステップS4及びS5を参照)とを比較する。この比較は、車載器搭載車両ごとに行われる。そして、路側機制御部23は、各車両の中から、現在位置が車載器搭載車両の位置に最も近く(略一致し)且つ移動方向が前記車載器搭載車両の移動経路に沿っている車両を抽出し、この抽出された車両を前記車載器搭載車両と同一の車両であると判定する。これにより、路側機制御部23は、前記抽出された車両と前記車載器搭載車両とを同一の車両(車載器搭載車両)として認識する(取り扱う)ことになり、上述のようなおそれが解消される。
【0074】
[運転支援情報作成/送信処理]
本実施形態において、路側機制御部23は、交差点Xに向かう車載器搭載車両に対し、対応する信号情報を運転支援情報として作成して無線通信により送信する。対応する信号情報とは、交差点Xに向かう車載器搭載車両が従うべき信号機に関する信号制御情報のことである。例えば、車載器搭載車両が第1道路40A(車両通行帯40A-1又は40A-2)を走行している場合には第1車両用信号機41Aに関する信号制御情報が前記対応する信号情報であり、車載器搭載車両が第4道路40Dを走行している場合には第4車両用信号機41Dに関する信号制御情報が前記対応する信号情報である。
【0075】
また、本実施形態において、路側機制御部23は、車載器搭載車両と他の車両との接触事故(衝突事故を含む。以下同じ。)の可能性の有無を判定する接触判定処理を実行し、前記接触事故の可能性があると判定された場合には、当該車載器搭載車両に対して、前記接触事故を回避するための情報又は前記接触事故による被害を軽減するための情報を運転支援情報として作成して無線通信により送信する。
【0076】
路側機制御部23は、基本的は、交差点Xに向かう車載器搭載車両の予測された将来位置と交差点Xに向かう各車両の予測された将来位置とを比較し、交差点Xに向かう各車両の中に、同一時刻に車載器搭載車両とほぼ同じ位置(換言すれば、同じ位置とみなせる範囲として予め設定された判定範囲)に位置することが予測される車両がある場合、当該車載器搭載車両と他の車両との接触事故の可能性があると判定する。
【0077】
ここで、車載器搭載車両と他の車両との接触事故は、車載器搭載車両が交差点X内における対向道路部分を横切って走行する場合、すなわち、車載器搭載車両が交差点Xを右折する場合に特に発生し易い。そこで、以下では、車載器搭載車両V1が交差点X内における対向道路部分XCを横切って走行する(交差点Xを右折する)場合における接触判定処理について具体的に説明する。なお、ここでは車載器搭載車両が第1道路40Aを走行している又は走行してきた車載器搭載車両V1である場合について説明するが、第2道路40B、第3道路40C又は第4道路40Dを走行している又は走行してきた車載器搭載車両についても同様である。
【0078】
図15は、交差点Xに向かう車載器搭載車両についての接触判定処理(以下「第1接触判定処理」という)を説明するための図である。図15において、交差点Xに向かって第1道路40A(の車両通行帯40A-2)を走行している車載器搭載車両V1は、交差点Xを右折しようとしている。すなわち、車載器搭載車両V1は、交差点X内における対向道路部分XCを横切って走行しようとしている。この場合、車載器搭載車両の将来位置は、図中に破線で示された矢印上に予測されることになる。なお、交差点X内における対向道路部分XCとは、交差点X内を車載器搭載車両V1とは逆向きに車両が走行し且つ右折時に車載器搭載車両V1が進入する交差点X内の道路部分のことをいい、ここでは車載器搭載車両V1が走行している第1道路40A(の車両通行帯40A-2)の対向道路に相当する第3道路40C(の車両通行帯40C-1)を交差点X内に延長した部分が該当する。
【0079】
この場合、路側機制御部23は、車載器搭載車両V1が交差点Xを右折する際に他の車両と接触(衝突を含む。以下同じ。)するおそれがあるか否か、具体的には、第1道路40A(の車両通行帯40A-2)を走行している車載器搭載車両V1と、第1道路40A(の車両通行帯40A-2)の対向道路に相当する第3道路40C(の車両通行帯40C-1)を走行している車両VOとの接触事故の可能性を判定する。
【0080】
本実施形態において、路側機制御部23は、車載器搭載車両V1の情報及び信号制御機4からの前記信号制御情報に基づき車載器搭載車両V1が交差点Xにおいて右折開始位置Xs(車載器搭載車両V1の将来位置に該当する)に到達する時刻と、車載器搭載車両V1が交差点Xにおける右折終了位置Xe(車載器搭載車両V1の将来位置に該当する)を通過する(交差点Xから進出する)時刻とを予測する。すなわち、路側機制御部23は、車載器搭載車両V1が交差点Xの右折を開始する時刻(以下「交差点右折開始時刻」という)と、車載器搭載車両V1が交差点Xの右折を終了する時刻(以下「交差点右折終了時刻」という)とを予測する。この予測は、路側機制御部23が車載器搭載車両V1の情報を取得する度に行われ、交差点右折開始時刻及び交差点右折終了時刻が更新される。
【0081】
また、路側機制御部23は、交差点Xに向かう各車両の予測された将来位置、特に、車載器搭載車両V1が走行している第1道路40A(の車両通行帯40A-2)の対向道路に相当する第3道路40C(の車両通行帯40C-1)を交差点Xに向かって走行する車両VOの予測された将来位置を確認する。
【0082】
そして、路側機制御部23は、前記交差点右折開始時刻から前記交差点右折終了時刻までの間に対向道路部分XC内に位置することが予測される車両VOがある場合、車載器搭載車両V1と他の車両(ここでは車両VO)との接触事故の可能性があると判定する。
【0083】
ここで、路側機制御部23は、路面状態によって車両の速度や車両の制動距離などが変動することを考慮して、車載器搭載車両V1に応じた対象道路の路面状態を加味して前記交差点右折開始時刻及び/又は前記交差点右折終了時刻を調整するようにしてもよい。なお、車載器搭載車両V1に応じた対象道路とは、車載器搭載車両V1が走行する第1道路40A(特に車両通行帯40A-2)、交差点X内の道路及び第1道路40Aの対向道路に相当する(車載器搭載車両V1とは逆向きに車両が走行する)第3道路40Cのうちの少なくとも一つのことをいう。例えば、路側機制御部23は、前記対象道路の路面状態が湿潤である場合には前記対象道路の路面状態が乾燥である場合に比べて前記交差点右折終了時刻を遅くするように調整することができ、前記対象道路の路面状態が積雪や凍結である場合には前記交差点右折終了時刻をさらに遅くするように調整することができる。
【0084】
路側機制御部23は、車載器搭載車両V1と他の車両との接触事故の可能性があると判定した場合、前記接触事故の危険度に応じて、前記接触事故を回避するための情報又は前記接触事故による被害を軽減するための情報を運転支援情報として作成し、作成された運転支援情報を車載器搭載車両V1(の車載器3)に送信する。
【0085】
例えば、車載器搭載車両V1が現在の速度のまま移動すると他の車両(ここでは車両VO)と接触する可能性が高いが、車載器搭載車両V1が0.2G程度で減速することで他の車両(車両VO)との接触事故を回避できる場合(換言すれば、載器搭載車両V1が右折開始位置Xsまでに停止できる場合)、路側機制御部23は、通常減速を行うことを指示する内容の運転支援情報(以下「第1運転支援情報」という)を作成して車載器搭載車両V1に送信する。
【0086】
また、車載器搭載車両V1が現在の速度のまま移動すると他の車両(車両VO)と接触する可能性が高いが、車載器搭載車両V1が0.3G程度で減速することで他の車両(車両VO)との接触事故を回避できる場合、路側機制御部23は、強めの減速を行うことを指示する内容の運転支援情報(以下「第2運転支援情報」という)を作成して車載器搭載車両V1に送信する。
【0087】
さらに、車載器搭載車両V1が現在の速度のまま移動すると他の車両(車両VO)と接触する可能性が高いが、車載器搭載車両V1が0.5Gで減速することで他の車両(車両VO)との接触事故を回避できる場合、路側機制御部23は、急減速を行うことを指示する内容の運転支援情報(以下「第3運転支援情報」という)を作成して車載器搭載車両V1に送信する。
【0088】
さらにまた、車載器搭載車両V1が0.5Gで減速したとしても他の車両(車両VO)との接触事故を回避できない可能性が高い場合、路側機制御部23は、他の車両(車両VO)との接触事故による被害を軽減するために最大限の減速を行うことを指示する内容の運転支援情報(以下「第4運転支援情報」という)を作成して車載器搭載車両V1に送信する。
【0089】
図16は、交差点Xに向かう車載器搭載車両についての第1接触判定処理(運転支援情報の作成及び送信処理を含む)の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは、例えば、路側機2と車載器搭載車両V1(の車載器3)との間で無線通信(セッション)が確立されると開始される。
【0090】
図16において、ステップS21では、車載器搭載車両V1の情報、すなわち、車載器搭載車両V1の状態情報(速度、加速度及び位置など)及び経路情報(移動経路及び設定速度など)を取得する。
【0091】
ステップS22では、ステップS21で取得された車載器搭載車両V1の情報(特に移動経路)に基づいて車載器搭載車両V1が交差点Xを右折しようとしているか否かを判定する。車載器搭載車両V1が交差点Xを右折しようとしている場合にはステップS23に進む。一方、車載器搭載車両V1が交差点Xを右折しようとしていない場合や車載器搭載車両V1が交差点Xの右折を終了している場合には本フローチャートを終了する。
【0092】
ステップS23では、車載器搭載車両V1の右折時に車載器搭載車両V1と他の車両が接触する可能性があるか否か、すなわち、車載器搭載車両V1と他の車両との接触事故の可能性があるか否かを判定する。具体的には、路側機制御部23は、ステップS21で取得された車載器搭載車両V1の情報と信号制御機4からの前記信号制御情報とに基づいて車載器搭載車両V1の交差点右折開始時刻及び交差点右折終了時刻を予測する。また、路側機制御部23は、交差点Xに向かう各車両(特に、第3道路40Cを交差点Xに向かって走行する車両VO)の予測された将来位置を確認する。そして、路側機制御部23は、前記交差点右折開始時刻から前記交差点右折終了時刻までの間に対向道路部分XC内の位置することが予測される車両VOが存在する場合、車載器搭載車両V1と他の車両との接触事故の可能性があると判定する。車載器搭載車両V1と他の車両との接触事故の可能性があると判定した場合にはステップS24に進み、車載器搭載車両V1と他の車両との接触事故の可能性がないと判定した場合にはステップS21に戻る。
【0093】
ステップS24では、車載器搭載車両V1と他の車両との接触事故を回避するため又は車載器搭載車両V1と他の車両との接触事故による被害を軽減するための運転支援情報を作成する。作成される運転支援情報は、前記第1~第4運転支援情報のうちのいずれかである。
【0094】
ステップS25では、ステップS24で作成された運転支援情報を車載器搭載車両V1に送信する。そして、ステップS25の処理が終了するとステップS21に戻る。
【0095】
図17は、交差点X内で右折待機している車載器搭載車両に対する接触判定処理(以下「第2接触判定処理」という)を説明するための図である。図17において、第1道路40A(の車両通行帯40A-2)を走行してきた車載器搭載車両V1は、交差点Xを右折するため交差点X内で待機している。換言すれば、車載器搭載車両V1は、交差点Xおける右折開始位置Xsに停止している。この場合、車載器搭載車両の将来位置は、図中に破線で示された矢印上に予測されることになる。
【0096】
この場合、路側機制御部23は、車載器搭載車両V1が右折開始位置Xsから標準的な加速度で発進した場合に右折終了位置Xeを通過する(交差点Xから進出する)までに要する時間(以下「交差点通過所要時間」という)を算出する。算出される交差点通過所要時間は、交差点Xの大きさなどに応じて異なるが、概ね6秒から10秒である。なお、路側機制御部23は、前記交差点通過所要時間を算出することに代えて、予め設定された前記交差点通過所要時間を用いるようにしてもよい。
【0097】
また、路側機制御部23は、交差点Xに向かう各車両の予測された将来位置、特に、車載器搭載車両V1が走行している第1道路40A(の車両通行帯40A-2)の対向道路に相当する第3道路40C(の車両通行帯40C-1)を交差点Xに向かって走行する車両VOの予測された将来位置を確認する。
【0098】
そして、路側機制御部23は、現在時刻から現在時刻に前記交差点通過所要時間を加算した時刻である車載器搭載車両V1の交差点進出時刻までの間に対向道路部分XC内の位置することが予測される車両VOが存在する場合に、車載器搭載車両V1と他の車両との接触事故の可能性があると判定する。
【0099】
ここで、路側機制御部23は、路面状態によって車載器搭載車両V1の加速度などが変動することを考慮して、車載器搭載車両V1に応じた対象道路、特に交差点X内の道路の路面状態を加味して前記交差点通過所要時間、ひいては前記交差点通過時刻を調整するようにしてもよい。例えば、路側機制御部23は、前記対象道路の路面状態が湿潤である場合には前記対象道路の路面状態が乾燥である場合に比べて前記交差点通過所要時間を長く(前記交差点通過時刻を遅く)するように調整することができる。
【0100】
路側機制御部23は、車載器搭載車両V1と他の車両との接触事故の可能性があると判定した場合、前記接触事故を回避するために右折待機の継続を指示する(発進禁止を指示する)内容の運転支援情報を作成して車載器搭載車両V1(の車載器3)に送信する。一方、路側機制御部23は、車載器搭載車両V1と他の車両との接触事故の可能性がないと判定した場合、右折(発進)を許可する内容の運転支援情報を作成して車載器搭載車両V1(の車載器3)に送信する。
【0101】
図18は、交差点X内で右折待機している車載器搭載車両についての第2接触判定処理(運転支援情報作成/送信処理を含む)の一例を示すフローチャートである。この処理は、例えば、車載器搭載車両V1が交差点X内で右折待機を開始したことが確認されると(右折開始位置Xsに停止したことが確認されると)開始される。
【0102】
図18において、ステップS31では、車載器搭載車両V1の交差点通過所要時間、すなわち、車載器搭載車両V1が右折開始位置Xsを発進してから右折終了位置Xeを通過する(交差点Xから進出する)までに要する時間を算出する。
【0103】
ステップ32では、現在時刻にステップS31で算出された交差点通過所要時間を加算して車載器搭載車両V1の交差点進出時刻を算出する。
【0104】
ステップS33では、車載器搭載車両V1が発進した場合に車載器搭載車両V1と他の車両が接触する可能性があるか否か、すなわち、車載器搭載車両V1と他の車両との接触事故の可能性があるかを判定する。具体的には、路側機制御部23は、交差点Xに向かう各車両(特に、第3道路40Cを交差点Xに向かって走行する車両VO)の予測された将来位置を確認する。そして、路側機制御部23は、現在時刻からステップS32で算出された交差点進出時刻までの間に対向道路部分XC内に位置することが予測される車両VOが存在する場合に、車載器搭載車両V1と他の車両との接触事故の可能性があると判定する。車載器搭載車両V1と他の車両との接触事故の可能性があると判定した場合にはステップS34に進み、車載器搭載車両V1と他の車両との接触事故の可能性がないと判定した場合にはステップS36に進む。
【0105】
ステップS34では、右折待機の継続を指示する内容の運転支援情報を作成し、ステップS35では、ステップS34で作成された運転支援情報を車載器搭載車両V1(の車載器3)に送信する。そして、ステップS35の処理が終了するとステップS32に戻る。
【0106】
ステップS36では、右折(発進)を許可する内容の運転支援情報を作成し、ステップS37では、ステップS36で作成された運転支援情報を車載器搭載車両V1(の車載器3)に送信する。そして、ステップS37の処理が終了すると本フローを終了する。
【0107】
実施形態に係る交差点運転支援システム1において、路側機2は、無線通信により交差点Xに向かう車載器搭載車両の情報を取得して前記車載器搭載車両の将来位置を予測すると共に第1~第4センサモジュール5A~5Dの出力(検出結果)に基づき交差点Xに向かう各車両の現在位置及び移動ベクトルを検出して前記各車両の将来位置を予測し、予測結果に基づき得られる運転支援情報を前記車載器搭載車両(の車載器3)に送信するように構成されている。また、路側機2は、検出された前記各車両の現在位置を過去に予測された対応する将来位置に基づき補正する機能を有している。具体的には、路側機2は、交差点Xに向かう各車両の現在位置の検出、交差点Xに向かう各車両の移動ベクトル(移動速度、移動方向)の検出(算出)及び交差点Xに向かう各車両の将来位置の予測を所定時間毎に行い、今回の処理で検出された各車両の現在位置を前回の処理で予測された各車両の前記所定時間後の将来位置に基づき補正する。また、路側機2は、交差点Xに向かう各車両の中に、前回の処理では現在位置が検出されたが今回の処理では現在位置が検出されない車両がある場合、前回の処理で予測された当該車両の前記所定時間後の将来位置に車両が存在するものと仮定して処理を継続する。
【0108】
このため、本実施形態における路側機2によれば、交差点Xに向かう車両の見落としを防止することができると共に、交差点Xに向かう車両の車載器搭載車両に対して個別の運転支援情報を提供することができる。
【0109】
また、路側機2は、前記車載器搭載車両の情報及び前記各車両の情報に基づき将来における前記車載器搭載車両と他の車両との接触事故の可能性の有無を判定し、前記接触事故の可能性があると判定した場合には、前記接触事故を回避するための情報又は前記接触事故による被害を軽減するための情報を前記運転支援情報として前記車載器搭載車両に送信するように構成されている。
【0110】
このため、交差点Xにおける前記車載器搭載車両と他の車両との接触事故の発生を大幅に低減することができ、また、かりに前記車載器搭載車両と他の車両との接触事故は発生した場合であってもその被害を大幅に軽減することができる。
【0111】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて変形及び変更が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0112】
1…交差点運転支援システム、2…路側機、3…車載器、4…信号制御機、5A~5D…第1~第4センサモジュール、6…自動運転装置、21…路側機通信部、22…路側機メモリ、23…路側機制御部、31…車載器通信部、32…車載器メモリ、33…車載器制御部、40A~40D…第1~第4道路、41A~41D…第1~第4車両用信号機、V1…車載器搭載車両、VO…車両、X…交差点、XC…対向道路部分、Xe…右折終了位置、Xs…右折開始位置
図1
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