(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】ブリッジ増幅によるクラスタ生成のための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 9/16 20060101AFI20241010BHJP
C12N 9/24 20060101ALI20241010BHJP
C12Q 1/6806 20180101ALI20241010BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20241010BHJP
C12Q 1/6844 20180101ALI20241010BHJP
【FI】
C12N9/16
C12N9/24
C12Q1/6806 Z
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6844 Z
(21)【出願番号】P 2020572458
(86)(22)【出願日】2019-11-29
(86)【国際出願番号】 EP2019083173
(87)【国際公開番号】W WO2020114918
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-11-01
(32)【優先日】2018-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502279294
【氏名又は名称】イルミナ ケンブリッジ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100173473
【氏名又は名称】高井良 克己
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン マーク バウテル
(72)【発明者】
【氏名】オリバー ミラー
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-516074(JP,A)
【文献】国際公開第2007/010251(WO,A2)
【文献】特表2014-504153(JP,A)
【文献】特表2018-529353(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0129874(US,A1)
【文献】特表2016-537003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 9/16
C12N 9/24
C12Q 1/6806
C12Q 1/6869
C12Q 1/6844
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:
ウラシルDNAグリコシラーゼと、
エンドヌクレアーゼと、
3’→5’一本鎖DNAエキソヌクレアーゼ活性を含むエキソヌクレアーゼ
と
を含む組成物と、
複数の増幅部位を含むアレイと
を含む
キット。
【請求項2】
前記エキソヌクレアーゼが、エキソヌクレアーゼIである、請求項1に記載の
キット。
【請求項3】
前記エンドヌクレアーゼが、DNAグリコシラーゼリアーゼエンドヌクレアーゼVIIIである、請求項1または2に記載の
キット。
【請求項4】
i)ウラシル切断部位を含む二本鎖DNA基質;および/または
ii)脱塩基部位を含む二本鎖DNA基質
をさらに含む、
請求項1~3のいずれか一項に記載の
キット。
【請求項5】
前記二本鎖DNA基質が、一本鎖領域を含み、前記ウラシル切断部位および前記脱塩基部位が、二本鎖領域に存在する、請求項4に記載の
キット。
【請求項6】
前記アレイの各増幅部位が、前記増幅部位に付着した複数の前記二本鎖DNA基質を含む、請求項4または5に記載の
キット。
【請求項7】
以下の工程:
(a)複数の増幅部位を含むアレイを用意する工程であって、前記増幅部位が、
(i)前記増幅部位に付着した複数の捕捉核酸であって、
その第1集団が切断部位を含む捕捉核酸と、
(ii)複数のクローン二本鎖修飾標的核酸であって、
各二本鎖標的核酸の両鎖がそれらの5’末端で捕捉核酸に付着しており、
一方の鎖が前記切断部位を含む捕捉核酸に付着しており、
前記切断部位が各二本鎖分子の二本鎖領域に位置するクローン二本鎖修飾標的核酸とを含む、工程;
(b)前記切断部位に脱塩基部位を作り出すための少なくとも1つの酵素と、3’→5’一本鎖DNAエキソヌクレアーゼ活性を含むエキソヌクレアーゼとを含む組成物を前記アレイに接触させる工程であって、
切断が前記切断部位で起こり、
切断が、二本鎖標的核酸の一方の鎖を、前記増幅部位に付着している第1鎖と、前記増幅部位に付着していない第2鎖とに変え;
遊離3’末端を含む一本鎖捕捉核酸の長さがエキソヌクレアーゼによって短縮している、工程
を含む、配列決定反応のための核酸を調製する方法であって、
さらに、
i)前記切断部位に脱塩基部位を作り出すための少なくとも1つの酵素が、ウラシルDNAグリコシラーゼとエンドヌクレアーゼとを含み;および/または
ii)前記エンドヌクレアーゼがDNAグリコシラーゼリアーゼエンドヌクレアーゼVIIIである、
方法。
【請求項8】
前記切断部位に脱塩基部位を作り出すための少なくとも1つの酵素と、前記エキソヌクレアーゼとを前記アレイから除去する工程をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記切断された二本鎖標的核酸を、前記増幅部位に付着していない第2鎖を除去する条件にさらす工程をさらに含む、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2鎖を除去する条件が、変性剤を含み、前記変性剤が、捕捉核酸の第2集団に共有結合している標的核酸を含む固定化された一本鎖核酸をもたらし、前記捕捉核酸の第2集団が前記増幅部位に付着する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記変性剤が、ホルムアミドを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記固定化された一本鎖核酸を捕捉核酸の第1集団のメンバーに再アニーリングし、固定化された部分的に一本鎖の核酸を生成する工程をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
i)前記切断部位が、各二本鎖標的核酸の二本鎖領域の捕捉核酸領域に位置し;および/または
ii)前記切断部位が、ウラシルを含み、前記ウラシルDNAグリコシラーゼにより脱塩基部位が生成され、前記脱塩基部位が前記エンドヌクレアーゼにより切断される、
請求項7~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記エキソヌクレアーゼが、エキソヌクレアーゼIである、請求項7~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項9~11のいずれか一項に記載の固定化された一本鎖核酸または請求項12または13に記載の固定化された部分的に一本鎖の核酸の一本鎖領域にシーケンシングプライマーをハイブリダイズさせる工程をさらに含み、それにより配列決定反応のための一本鎖核酸を調製する、請求項9~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記方法が、配列決定反応を行い、前記固定化された一本鎖核酸または前記固定化された部分的に一本鎖の核酸の少なくとも1つの領域の配列を決定する工程をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記配列決定反応が、合成による配列決定を含む、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記捕捉核酸を増幅プライマーとして使用し、複数の標的核酸を増幅することにより前記アレイが作製される、請求項7~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
増幅することが、排除増幅を含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、とりわけ、特にサンプルから配列情報を取得することに関与する工程を減らすという文脈において、シーケンシング用のアンプリコンのクラスタを生成するための標的核酸の増幅に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代シーケンシング(NGS)技術は、単一の標的核酸から生成されたアンプリコンのモノクローン集団の高度に並列化されたシーケンシングに依存している。NGS法は、シーケンシング速度およびデータ出力を大幅に向上させ、その結果、現在のシーケンシングプラットフォームでの膨大なサンプルスループットをもたらした。鋳型の配列決定にかかる時間をさらに短縮することは非常に望ましいが、有用なシグナルノイズ比、強度、およびフィルタを通過するクラスタの割合の増加(これらの全てがデータ出力およびデータ品質の向上に貢献する)を維持する必要がある。鋳型の配列決定にかかる時間を短縮することは、別々の工程を合わせることによって達成することができる;しかしながら、別々の工程は、両立し難いために合わせることができない場合が多い。例えば、ある酵素の活性は、別の酵素の生成物によって阻害される可能性があるため、別々の工程で酵素を使用する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
次世代シーケンシング(NGS)技術は、単一の標的核酸から生成されたアンプリコンのモノクローン集団の高度に並列化されたシーケンシングに依存している。アンプリコンのモノクローン集団の生成および配列決定には複数の工程が必要であり、各工程は、サンプルの有用な配列データを取得するまでに必要な全体の時間を増加させる。例えば、複数の工程が、アンプリコンのモノクローン集団を生成するために必要であり、これには、アレイの増幅部位に存在する標的核酸に付着して増幅することが含まれる。本発明者らは、モノクローナルアンプリコンの生産において使用される2つの別々の工程を合わせることができることを発見した。標準的な常法では、モノクローナルアンプリコンの生成中に、増幅部位をエキソヌクレアーゼで処理し、次いで、別の工程において、所定の位置で単一ヌクレオチドギャップを選択的に生成するグリコシラーゼ酵素で処理する。単一ヌクレオチドギャップを生成すると、エキソヌクレアーゼの活性を阻害する構造である3’-リン酸も生成されるため、工程はこの順序で実行される。思いがけなく、本発明者らは、一次指標、読み取り品質、デュアルインデックス、またはゲノム構築指標にほとんどまたはまったく悪影響を与えることなく、エキソヌクレアーゼとグリコシラーゼとを合わせて1つの工程にまとめることができることを発見した。この結果、2つの工程が同時に実行されるため、シーケンシングがより高速になる。また、試薬の数および量を減らし、それによって消費者の全体的なコストを削減するという利点もある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書で提供されるのは、組成物である。一実施形態では、組成物は、ウラシルDNAグリコシラーゼと、エンドヌクレアーゼと、3’→5’一本鎖DNAエキソヌクレアーゼ活性を有するエキソヌクレアーゼとを含む。
【0005】
方法も提供される。一実施形態では、方法は、配列決定反応のための核酸を調製することである。該方法は、複数の増幅部位を有するアレイを用意する工程を含む。増幅部位は、増幅部位に付着した複数の捕捉核酸であって、その第1集団が切断部位を含む捕捉核酸を含む。増幅部位は、複数のクローン二本鎖修飾標的核酸であって、各二本鎖修飾標的核酸の両鎖がそれらの5’末端で捕捉核酸に付着しており、一方の鎖が切断部位を含む捕捉核酸に付着しており、切断部位が各二本鎖分子の二本鎖領域に位置するクローン二本鎖修飾標的核酸も含む。該方法はまた、切断部位に脱塩基部位を作り出すための少なくとも1つの酵素と、3’→5’一本鎖DNAエキソヌクレアーゼ活性を有するエキソヌクレアーゼとを含む組成物をアレイに接触させる工程であって、切断が切断部位で起こり、切断が、二本鎖標的核酸の一方の鎖を、増幅部位に付着している第1鎖と、増幅部位に付着していない第2鎖とに変え、遊離3’末端を含む一本鎖捕捉核酸の長さがエキソヌクレアーゼによって短縮している工程を含む。
【0006】
(定義)
本明細書で使用される用語は、別段の定めがない限り、関連技術における通常の意味で理解されるものとする。本明細書で使用されるいくつかの用語およびそれらの意味を、以下に示す。
【0007】
本明細書において使用するとき、「アンプリコン」という用語は、核酸に関して使用するとき、核酸をコピーした産物であって、核酸のヌクレオチド配列の少なくとも一部と同一または相補的であるヌクレオチド配列を有する産物を意味する。アンプリコンは、核酸、例えば標的核酸またはそのアンプリコンを鋳型として使用する様々な増幅方法のいずれかによって生成することができ、例えば、ポリメラーゼ伸長、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ローリングサークル増幅(RCA)、ライゲーション伸長、またはライゲーション連鎖反応が挙げられる。アンプリコンは、特定のヌクレオチド配列の単一コピー(例えば、ポリメラーゼ伸長産物)またはヌクレオチド配列の複数コピー(例えば、RCAのコンカテマー産物)を有する核酸分子であり得る。標的核酸の最初のアンプリコンは、通常、相補的コピーである。後続のアンプリコンは、最初のアンプリコンの生成後に、標的核酸から、または最初のアンプリコンから作製されるコピーである。後続のアンプリコンは、標的核酸に実質的に相補的であるか、または標的核酸と実質的に同一である配列を有することができる。
【0008】
本明細書において使用するとき、「増幅部位」という用語は、1つまたは複数のアンプリコンが生成され得るアレイ内またはアレイ上の部位を指す。増幅部位はさらに、その部位で生成された少なくとも1つのアンプリコンを含有する、保持する、または付着するように構成され得る。
【0009】
本明細書において使用するとき、「アレイ」という用語は、相対的な配置に応じて互いに区別することができる部位の集団を指す。アレイの異なる部位にある異なる分子は、アレイ内での部位の配置に応じて互いに区別することができる。アレイの個々の部位は、特定のタイプの1つまたは複数の分子を含むことができる。例えば、部位は、特定の配列を有する単一の標的核酸分子を含むことができ、または部位は、同じ配列(および/またはそれらの相補的配列)を有するいくつかの核酸分子を含むことができる。アレイの部位は、同じ基板上にありながらフィーチャを異にする場合がある。例示的なフィーチャには、基板内のウェル、基板内もしくは基板上のビーズ(もしくは他の粒子)、基板からの突起、基板上の隆起、または基板内のチャネルなどが挙げられるが、これらに限定されない。アレイの部位は、各々が異なる分子を持つ別々の基板であり得る。別々の基板に付着した異なる分子は、基板が連結している表面上でのそれら基板の配置、または液体もしくはゲル中での基板の配置に応じて識別することができる。別々の基板が表面上に配置されている例示的なアレイには、ウェル内にビーズを有するものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0010】
本明細書において使用するとき、「収容可能量」という用語は、部位および核酸材料に関して使用するとき、標的核酸由来のアンプリコンなどの核酸材料がその部位を占めることができる最大量を意味する。例えば、この用語は、特定の条件で部位を占めることができる核酸分子の総数を指すことができる。他の尺度も同様に使用することができ、例えば、核酸材料の総質量、または特定の条件で部位を占めることができる特定のヌクレオチド配列の総コピー数が挙げられる。典型的には、標的核酸に対する部位の収容可能量は、標的核酸のアンプリコンに対するその部位の収容可能量と実質的に同等となる。
【0011】
本明細書において使用するとき、用語「捕捉剤」は、標的分子(例えば、標的核酸)に付着、保持、または結合することができる材料、化学物質、分子、またはそれらの部位を指す。例示的な捕捉剤には、修飾標的核酸の少なくとも一部(例えば、ユニバーサル捕捉結合配列)に相補的である捕捉核酸、修飾標的核酸(もしくはそれに付着した連結部位)に結合することができる受容体-リガンド結合対のメンバー(例えば、アビジン、ストレプトアビジン、ビオチン、レクチン、炭水化物、核酸結合タンパク質、エピトープ、抗体など)、または修飾標的核酸(もしくはそれに付着した連結部位)と共有結合を形成することができる化学試薬が含まれるが、これらに限定されない。一実施形態では、捕捉剤は核酸である。核酸捕捉剤は、増幅プライマーとして使用することもできる。
【0012】
「P5」および「P7」という用語は、核酸捕捉剤を指すときに使用され得る。「P5’」(P5プライム)および「P7’」(P7プライム)という用語は、それぞれP5およびP7の相補体を指す。任意の適切な核酸捕捉剤を、本明細書に提示される方法で使用することができ、P5およびP7の使用は、例示的な実施形態にすぎないことが理解されよう。フローセル上でのP5およびP7などの核酸捕捉剤の使用は、国際公開第2007/010251号、国際公開第2006/064199号、国際公開第2005/065814号、国際公開第2015/106941号、国際公開第1998/044151、および国際公開第2000/018957号の開示によって例示されるように、当該技術分野で知られている。当業者であれば、核酸捕捉剤が増幅プライマーとしても機能し得ることを認識するであろう。例えば、任意の適切な核酸捕捉剤は、固定化されていても溶液中であっても、フォワード増幅プライマーとして機能することができ、配列(例えば、ユニバーサル捕捉結合配列)へのハイブリダイゼーションおよび配列増幅のための本明細書に提示の方法において有用であり得る。同様に、任意の適切な核酸捕捉剤は、固定化されていても溶液中であっても、リバース増幅プライマーとして機能することができ、配列(例えば、ユニバーサル捕捉結合配列)へのハイブリダイゼーションおよび配列増幅のための本明細書に提示の方法において有用であり得る。入手可能な一般知識および本開示の教示を考慮すると、当業者であれば、本明細書に提示されるような標的核酸の捕捉および増幅に適した配列を設計し、使用する方法を理解するであろう。
【0013】
本明細書において使用するとき、「ユニバーサル配列」という用語は、2つ以上の標的核酸に共通する配列領域を指すが、この分子は互いに異なる配列領域も有する。分子群の異なるメンバーに存在するユニバーサル配列は、ユニバーサル捕捉結合配列などのユニバーサル配列の一部に相補的な捕捉核酸の集団を使用して、複数の異なる核酸の捕捉を可能にすることができる。ユニバーサル捕捉結合配列の非限定的な例としては、P5プライマーおよびP7プライマーと同一または相補的配列が挙げられる。同様に、分子群の異なるメンバーに存在するユニバーサル配列は、ユニバーサルプライマー結合部位などのユニバーサル配列の一部に相補的なユニバーサルプライマーの集団を使用して、複数の異なる核酸の複製または増幅を可能にすることができる。本明細書に記載されているように、標的核酸分子は、例えば、その異なる標的配列の一端または両端にユニバーサルアダプタ(本明細書ではアダプタとも呼ばれる)を付着させるように、修飾され得る。
【0014】
本明細書において使用するとき、用語「アダプタ(adapter)」およびその誘導体、例えば、ユニバーサルアダプタは、一般に、標的核酸にライゲーションされ得る任意の直鎖オリゴヌクレオチドを指す。いくつかの実施形態では、アダプタは、サンプル中に存在する任意の標的配列の3’末端または5’末端に対して、実質的に非相補的である。いくつかの実施形態では、適切なアダプタの長さは、約10~100ヌクレオチド、約12~60ヌクレオチド、および約15~50ヌクレオチドの範囲である。一般に、アダプタは、ヌクレオチドおよび/または核酸の任意の組み合わせを含むことができる。いくつかの態様では、アダプタは、1つまたは複数の位置に1つまたは複数の切断可能な基を含むことができる。別の態様では、アダプタは、プライマーの少なくとも一部、例えば捕捉核酸と実質的に同一であるか、または実質的に相補的である配列を含むことができる。いくつかの実施形態では、アダプタは、下流のエラー修復、識別、または配列決定を支援するために、インデックスまたはタグとも呼ばれるバーコードを含むことができる。用語「アダプタ(adaptor)」および「アダプタ(adapter)」は、交換可能に使用される。
【0015】
本明細書において定義するとき、「サンプル」およびその誘導体は、その最も広い意味で使用され、標的核酸を含むと推測される任意の標本、培養物などを含む。いくつかの実施形態では、サンプルは、DNA、RNA、PNA、LNA、キメラまたはハイブリッド形態の核酸を含む。サンプルには、1つまたは複数の核酸を含む任意の生物学、臨床、外科、農業、大気または水生ベースの標本を含めることができる。この用語には、ゲノムDNA、新鮮凍結またはホルマリン固定パラフィン包埋核酸標本などの任意の単離された核酸サンプルも含まれる。また、サンプルは、単一個体からのものであってもよく、遺伝的に関連するメンバーからの核酸サンプル群であってもよく、遺伝的に関連しないメンバーからの核酸サンプルであってもよく、腫瘍サンプルおよび正常組織サンプルなどの単一個体からの核酸サンプル(マッチした)であってもよく、または母体被験体から得られた母体DNAおよび胎児DNAなどの2つの異なる形態の遺伝物質を含有する単一供給源からのサンプルであってもよく、または植物DNAもしくは動物DNAを含有するサンプル中のコンタミ細菌DNAの存在もあり得るということが想定される。いくつかの実施形態では、核酸材料の供給源には、例えば、新生児スクリーニングに典型的に使用されるような、新生児から得られた核酸を含めることができる。
【0016】
本明細書において使用するとき、用語「クローン集団」および「モノクローン集団」は交換可能に使用され、特定のヌクレオチド配列に関して均一である核酸の集団を指す。均一な配列は、典型的には少なくとも10ヌクレオチド長であるが、例えば、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも250、少なくとも500、または少なくとも1000ヌクレオチド長など、さらに長いものであってもよい。クローン集団は、単一の標的核酸に由来することができる。典型的には、クローン集団の全ての核酸は、同一のヌクレオチド配列を有することになる。少数の突然変異(例えば、増幅人工産物に起因する)が、クローン性から逸脱することなくクローン集団内で起こり得ることが理解されよう。少数の異なる標的核酸(例えば、増幅されなかった標的核酸または限定的に増幅された標的核酸に起因する)が、クローン性から逸脱することなくクローン集団内で起こり得ることも理解されよう。
【0017】
本明細書において使用するとき、「異なる(different)」という用語は、核酸に関して使用するとき、核酸が互いに同一ではないヌクレオチド配列を有することを意味する。2つ以上の核酸は、それらの全長にわたって異なるヌクレオチド配列を有し得る。あるいは、2つ以上の核酸は、それらの長さのかなりの部分にわたって異なるヌクレオチド配列を有し得る。例えば、2つ以上の核酸は、互いに異なる標的ヌクレオチド配列部分を有する一方で、互いに同一であるユニバーサル配列領域も有し得る。本明細書において使用するとき、「異なる」という用語は、増幅部位に関して使用するとき、増幅部位が同じアレイ上の明らかに別の位置に存在することを意味する。
【0018】
本明細書において使用するとき、「流体アクセス」という用語は、流体中の分子および流体と接触している部位に関して使用するとき、分子が流体中または流体を通って移動し、部位に接触したり、部位に入る能力を指す。この用語は、分子が部位から離れたり、部位から出て溶液に入る能力を指すこともできる。流体アクセスは、分子が部位に入ること、部位に接触すること、部位から離れることおよび/または部位から出ることを妨げる障壁がないときに生じることができる。しかしながら、流体アクセスは、アクセスが完全に妨げられない限り、拡散が遅延され、減少され、または変化しても存在すると理解される。
【0019】
本明細書において使用するとき、「二本鎖」という用語は、核酸分子に関して使用するとき、核酸分子中の実質的に全てのヌクレオチドが相補的ヌクレオチドに水素結合していることを意味する。部分的に二本鎖の核酸では、そのヌクレオチドの少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%が、相補的ヌクレオチドに水素結合することができる。
【0020】
本明細書において使用するとき、「各々(each)」という用語は、品々の集合に関して使用するとき、集合中の個々の品を指すことを意図しているが、文脈上明らかに他の定めがない限り、必ずしも集合中のあらゆる品を指すものではない。
【0021】
本明細書において使用するとき、「排除体積」という用語は、特定の分子によって占められる空間であって、他のそのような分子が排除された空間の体積を指す。
【0022】
本明細書において使用するとき、「格子間領域」という用語は、基板内または表面上の領域であって、基板または表面の他の領域を隔てる領域を指す。例えば、格子間領域は、アレイのあるフィーチャを、アレイの別のフィーチャから隔てることができる。互いに隔てられた2つの領域は、互いに接触しておらず、不連続なものであり得る。別の例では、格子間領域は、フィーチャの第1部分を、フィーチャの第2部分から隔てることができる。格子間領域によってもたらされた隔たりは、部分的または完全な隔たりであり得る。格子間領域は、典型的には、表面上のフィーチャの表面材料とは異なる表面材料を有する。例えば、アレイのフィーチャが有する捕捉剤の量または濃度は、格子間領域に存在するその量または濃度を超えている可能性がある。いくつかの実施形態では、捕捉剤は、格子間領域には存在しない場合がある。
【0023】
本明細書において使用するとき、用語「ポリメラーゼ」は、当該技術分野でのその使用と一致することが意図されており、例えば、核酸分子の相補的複製を、その核酸を鋳型鎖として使用して生成する酵素が含まれる。典型的には、DNAポリメラーゼは、鋳型鎖に結合し、次いで核酸の成長鎖の3’末端の遊離ヒドロキシル基にヌクレオチドを順次付加しながら鋳型鎖を下降する。DNAポリメラーゼは、典型的にはDNA鋳型から相補的DNA分子を合成し、RNAポリメラーゼは、典型的にはDNA鋳型からRNA分子を合成する(転写)。ポリメラーゼは、プライマーと呼ばれる短いRNAまたはDNA鎖を使用して、鎖の成長を開始することができる。本明細書に詳細に記載されているように、ポリメラーゼを増幅の間に使用してクローンクラスタを生成することができ、配列決定反応の間に使用して核酸の配列を決定することができ、これらの各態様において異なるポリメラーゼを使用することができる。いくつかのポリメラーゼは、鎖に塩基を付加している部位の上流で、鎖を置換させることができる。そのようなポリメラーゼは鎖置換性であると言われ、これは、ポリメラーゼによって読み取られる鋳型鎖から相補鎖を剥がす活性を有することを意味する。鎖置換活性を有する例示的なポリメラーゼには、Bsu(枯草菌)、Bst(バチルス・ステアロサーモフィルス)ポリメラーゼのラージフラグメント、エキソクレノウポリメラーゼ、またはシーケンシンググレードT7エキソポリメラーゼが含まれるが、これらに限定されない。いくつかのポリメラーゼは、それらの前にある鎖を分解し、それを効率的に後ろの成長鎖に置き換える(5’エキソヌクレアーゼ活性)。いくつかのポリメラーゼは、それらの後ろにある鎖を分解する活性(3’エキソヌクレアーゼ活性)を有する。いくつかの有用なポリメラーゼは、突然変異または別の方法により改変され、3’および/または5’エキソヌクレアーゼ活性が低下しているか除去されている。
【0024】
本明細書において使用するとき、「核酸」という用語は、当該技術分野でのその使用と一致することが意図されており、天然に存在する核酸およびそれらの機能的アナログを含む。特に有用な機能的アナログは、配列特異的な様式で核酸にハイブリダイズすることができるか、または特定のヌクレオチド配列の複製用の鋳型として使用することができる。天然に存在する核酸は、一般に、ホスホジエステル結合を含有する骨格を有する。アナログ構造は、当該技術分野で知られている様々なものが含まれる代替の骨格連結を有することができる。天然に存在する核酸は、一般に、デオキシリボース糖(例えば、デオキシリボ核酸(DNA)中に見られる)またはリボース糖(例えば、リボ核酸(RNA)中に見られる)を有する。核酸は、当該技術分野で知られているこれらの糖部位の様々なアナログを含有することができる。核酸は、天然塩基または非天然塩基を含むことができる。これに関して、天然デオキシリボ核酸は、アデニン、チミン、シトシンまたはグアニンから選択される1つまたは複数の塩基を有することができ、リボ核酸は、ウラシル、アデニン、シトシンまたはグアニンから選択される1つまたは複数の塩基を有することができる。核酸に含めることができる有用な非天然塩基は、当該技術分野で知られている。「標的」という用語は、核酸に関して使用するとき、本明細書に記載の方法または組成物の文脈における核酸の意味的識別子として意図されており、他に明示的に示されるもののほか、核酸の構造または機能を必ずしも限定するものではない。各末端にユニバーサル配列を有する標的核酸、例えば各末端にユニバーサルアダプタを有する標的核酸は、修飾標的核酸と呼ばれ得る。
【0025】
本明細書において使用するとき、「輸送(transport)」という用語は、流体を通る分子の移動を指す。この用語には、分子の濃度勾配に沿った移動(例えば、受動拡散)などの受動輸送が含まれ得る。この用語は、分子がその濃度勾配に沿ってまたはその濃度勾配に逆らって移動することができるような能動輸送も含まれ得る。したがって、輸送には、エネルギーを加えて、1つまたは複数の分子を所望の方向に、または増幅部位などの所望の場所に移動させることが含まれ得る。
【0026】
本明細書において使用するとき、「速度(rate)」という用語は、輸送、増幅、捕捉、または他の化学的プロセスに関して使用するとき、化学反応速度論および生化学反応速度論におけるその意味と一致することが意図されている。最大速度(例えば、飽和時)、定常状態前の速度(例えば、平衡前)、反応速度定数、または当該技術分野で知られている他の尺度に関して、2つのプロセスの速度を比較することができる。特定の実施形態では、特定のプロセスの速度を、そのプロセスの完了までの合計時間に関して決定することができる。例えば、増幅速度は、増幅が完了するまでにかかる時間に関して決定することができる。しかしながら、特定のプロセスの速度では、そのプロセスの完了までの合計時間に関して決定される必要はない。
【0027】
用語「および/または」は、列挙された要素のうちの1つもしくは全て、または列挙された要素のうちの任意の2つ以上の組み合わせを意味する。
【0028】
「好ましい」および「好ましくは」という用語は、特定の状況下で、特定の利益をもたらす可能性のある本発明の実施形態を指す。しかしながら、他の実施形態も、同じまたは他の状況下で好ましい場合がある。さらに、1つまたは複数の好ましい実施形態の列挙は、他の実施形態が有用でないことを意味するものではなく、他の実施形態を本発明の範囲から除外することを意図するものではない。
【0029】
「含む(comprises)」という用語およびその変形は、これらの用語が本明細書および特許請求の範囲に現れる場合、限定的な意味を持たない。
【0030】
本明細書において、実施形態が「挙げられる(include)」、「含む(includes)」、または「含んでいる(including)」などの語を用いて記載されている場合は常に、「からなる(consisting of)」および/または「本質的にからなる(consisting essentially of)」という用語で記載される別の類似の実施形態も提供されることが理解されよう。
【0031】
別段の記載がない限り、「a」、「an」、「the」、および「少なくとも1つ」は交換可能に使用され、1つまたは複数を意味する。
【0032】
核酸のエキソヌクレアーゼ媒介分解などの事象の発生に「適している」条件、すなわち「適切な」条件とは、そのような事象の発生を妨げない条件である。したがって、これらの条件は、事象を可能にし、増やし、促進し、および/または助長する。
【0033】
本明細書において使用するとき、組成物、物品、もしくは核酸の文脈において「提供する」とは、組成物、物品、もしくは核酸を作製すること、組成物、物品、もしくは核酸を購入すること、または別の方法で化合物、組成物、物品、核酸を入手することを意味する。
【0034】
また、本明細書において、端点による数値範囲の列挙は、その範囲内に包含される全ての数値を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【0035】
本明細書全体を通して、「一実施形態」、「実施形態」、「特定の実施形態」、または「いくつかの実施形態」などへの参照は、実施形態に関連して記載される特定の特徴、構成、組成物、または特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれていることを意味する。したがって、本明細書中の様々な箇所でのそのような言い回しの出現は、必ずしも本開示の同じ実施形態を参照しているわけではない。さらに、特定の特徴、構成、組成物、または特性は、1つまたは複数の実施形態において、任意の適切な方法で組み合わせられる場合がある。
【0036】
本明細書の説明において、特定の実施形態は、明確にするために、単独で記載され得る。特定の実施形態の特徴が別の実施形態の特徴と互換性がないことが明記されていない限り、特定の実施形態は、1つまたは複数の実施形態に関連して本明細書に記載されている互換性のある特徴の組み合わせを含むことができる。
【0037】
個別の工程を含む本明細書に開示された任意の方法では、工程は、任意の実行可能な順序で実施され得る。また、適宜、2つ以上の工程の任意の組み合わせが同時に実施され得る。
【0038】
本発明の上記概要は、本発明の開示の各実施形態または全ての実施を説明することを意図したものではない。以下の説明は、例示的な実施形態をより具体的に実証するものである。本出願全体にわたっていくつかの箇所で、実施例のリストを通じてガイダンスが提供され、それら実施例は様々な組み合わせで使用され得る。どの場合も、列挙されたリストは代表的なグループとしてのみ機能し、排他的なリストとして解釈されるべきではない。
【0039】
本開示の例示的な実施形態の以下の詳細な説明は、以下の図面と併せて読むと最もよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1A】本明細書に提示される開示の様々な態様に従って、シーケンシング用の核酸を調製する実施形態の概略図である。
【
図1B】本明細書に提示される開示の様々な態様に従って、シーケンシング用の核酸を調製する実施形態の概略図である。
【
図1C】本明細書に提示される開示の様々な態様に従って、シーケンシング用の核酸を調製する実施形態の概略図である。
【
図1D】本明細書に提示される開示の様々な態様に従って、シーケンシング用の核酸を調製する実施形態の概略図である。
【
図2】エキソヌクレアーゼI活性に対する3’-リン酸およびDNAグリコシラーゼの効果を示す図である。左のパネルは、フローセルの各レーンにDNAグリコシラーゼおよびエキソヌクレアーゼが存在することを示している。DNAグリコシラーゼを最初に添加し、続いてエキソヌクレアーゼを添加した。例外はレーン4で、DNAグリコシラーゼおよびエキソヌクレアーゼを同時に添加した。中央のパネルは、上から下に1~8の番号を付けたレーンを備えるフローセルで、レーン3~5にシグナルがないことを示している。右のパネルは、レーンの蛍光の結果を示しており、レーン3~5は実質的に蛍光がない。
【
図3】実施例1および3に記載のシーケンシング実行の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
模式図は、必ずしも縮尺どおりではない。図中で使用されている同様の番号は、同様の構成要素、工程などを指す。しかしながら、番号を使用して所与の図の構成要素を参照することは、同じ番号でラベル付けされた別の図の構成要素を限定することを意図していないことが理解されよう。さらに、異なる番号を使用して構成要素を参照することは、その異なる番号の構成要素が、他の番号の構成要素と同一または類似のものではあり得ないことを示すことを意図していない。
【0042】
(例示的実施形態の詳細な説明)
本明細書では、核酸のシーケンシングに関連する方法および組成物を開示する。本開示は、配列決定反応のための核酸の調製、クローンクラスタの生成、および表面上での核酸のアレイの作製を含む方法を提供する。一実施形態では、方法は、複数の増幅部位を含むアレイを提供することを含む。各増幅部位は、複数の二本鎖アンプリコンを含む。例えば、
図1Aでは、増幅部位10は、複数の二本鎖アンプリコン11のうちの1つのメンバーで示されている。
【0043】
複数の捕捉核酸が、増幅部位の表面に付着している。少なくとも2つの捕捉核酸の集団が存在し、いくつかの実施形態では、3つ以上の集団が存在する。捕捉核酸の少なくとも1つの集団は、切断部位を含む。一実施形態では、切断部位はウラシル残基を含む。各二本鎖アンプリコン分子はブリッジ構造にあり、それらの5’末端で捕捉核酸に付着しており、それらの3’末端ではアレイに付着していない。切断部位は、各二本鎖分子の二本鎖領域に位置する。例えば、
図1Aに示すように、捕捉核酸の2つの集団が示されている。1つの集団は、各アンプリコンの一端に付着した13、または増幅部位10の表面には結合しているがアンプリコン11には付着していない13’のいずれかで示されている。捕捉核酸の第2集団も、各アンプリコンのもう一方の末端に付着した14、または増幅部位10の表面には結合しているがアンプリコン11には付着していない14’のいずれかで示されている。
図1Aには、切断部位(捕捉核酸13上にXでマークされている)も示されている。
【0044】
本方法は、切断部位で一本鎖DNAを切断する酵素と、3’→5’一本鎖DNAエキソヌクレアーゼ活性を有するエキソヌクレアーゼとを、アレイの増幅部位に接触させる工程をさらに含む。エキソヌクレアーゼは、遊離3’-OH末端を含む一本鎖捕捉核酸を分解するように作用する。例えば、
図1Bに示すように、アンプリコン11の切断部位Xは切断され、短縮した捕捉核酸13’’を残す。付着していない捕捉核酸13’および14’は、増幅部位10にはもはや存在しない。
【0045】
一実施形態では、付着している鎖の配列は、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼを使用して決定することができ、ここで、短縮した捕捉核酸(
図1Bの13’’)の3’末端は、DNA合成を開始するためのプライマーとして使用される。いくつかの実施形態では、切断部位で一方のDNA鎖を切断する酵素は、短縮した捕捉核酸の3’末端を修飾し、3’-リン酸で終結する。この3’-リン酸は、配列決定反応を開始する前にホスファターゼによって除去することができる。
【0046】
付着している鎖を配列決定する代わりに、本方法は、切断された二本鎖アンプリコンを変性条件にさらして、アレイに付着していない切断された鎖(
図1Bの15’)の部分を除去する工程を含むことができる。これにより、固定化された一本鎖核酸が得られる。例えば、
図1Cに示すように、付着していないDNA鎖は、付着している鎖16にはもはやハイブリダイズしておらず、失われている。
【0047】
一実施形態では、固定化された一本鎖核酸は、短縮した捕捉核酸13’’に再アニーリングすることができる。例えば、
図1Dに示すように、付着しているDNA鎖16は、短縮した捕捉核酸13’’に再アニーリングする。
【0048】
(アレイ)
本明細書に記載の方法で使用される増幅部位のアレイは、1つまたは複数の基板として存在することができる。アレイに使用することができる基板材料の例示的なタイプには、ガラス、修飾ガラス、機能化ガラス、無機ガラス、ミクロスフェア(例えば、不活性粒子および/または磁性粒子)、プラスチック、多糖類、ナイロン、ニトロセルロース、セラミック、樹脂、シリカ、シリカベースの材料、炭素、金属、光ファイバーまたは光ファイバー束、ポリマー、およびマルチウェル(例えば、マイクロタイター)プレートが挙げられる。例示的なプラスチックとしては、アクリル、ポリスチレン、スチレンと他の材料とのコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、およびTeflon(商標)が挙げられる。例示的なシリカベースの材料には、シリコンおよび様々な形態の変性シリコンが挙げられる。
【0049】
特定の実施形態では、基板は、ウェル、チューブ、チャネル、キュベット、ペトリ皿、ボトルなどの容器内または容器の一部であり得る。特に有用な容器は、例えば、米国特許第8,241,573号明細書またはBentley et al., Nature 456:53-59 (2008)に記載されているようなフローセルである。例示的なフローセルは、Illumina社(カリフォルニア州サンディエゴ)から市販されているものである。別の特に有用な容器は、マルチウェルプレートまたはマイクロタイタープレートのウェルである。
【0050】
いくつかの実施形態では、アレイの増幅部位を、表面上のフィーチャとして構成することができる。フィーチャは、任意の様々な所望の形態で存在することができる。例えば、部位は、ウェル、くぼみ、チャネル、隆起、盛り上がった領域、ペグ、ポストなどであり得る。一実施形態では、増幅部位は、ビーズを含有することができる。しかしながら、特定の実施形態では、部位は、ビーズまたは粒子を含有している必要はない。例示的な部位には、454 LifeSciences(Rocheの子会社、バーゼル、スイス)またはIon Torrent(Life Technologiesの子会社、カールスバッド、カリフォルニア州、米国)が販売する商用シーケンシングプラットフォームに使用される基板に存在するウェルが挙げられる。ウェルを有する他の基板には、例えば、エッチングされた光ファイバーおよび米国特許第6,266,459号明細書;米国特許第6,355,431号明細書;米国特許第6,770,441号明細書;米国特許第6,859,570号明細書;米国特許第6,210,891号明細書;米国特許第6,258,568号明細書;米国特許第6,274,320号明細書;米国特許第8,262,900号明細書;米国特許第7,948,015号明細書;米国特許出願公開第2010/0137143号明細書;米国特許第8,349,167号明細書、または国際公開第00/63437号に記載されている他の基板が挙げられる。いくつかの例では、基板は、ウェル内にビーズを使用する用途について、これらの参考文献に例示されている。ウェル含有基板は、ビーズの有無にかかわらず、本開示の方法または組成物で使用することができる。いくつかの実施形態では、基板のウェルは、米国特許第9,512,422号明細書に記載されているように、ゲル材料(ビーズの有無を問わない)を含むことができる。
【0051】
アレイの増幅部位は、ガラス、プラスチック、または本明細書で例示される他の材料などの非金属表面上の金属フィーチャであり得る。金属層は、湿式プラズマエッチング、乾式プラズマエッチング、原子層堆積、イオンビームエッチング、化学気相成長、真空スパッタリングなどの当該技術分野で知られている方法を用いて表面上に堆積させることができる。例えば、FlexAL(登録商標)、OpAL(登録商標)、Ionfab300Plus(登録商標)、またはOptofab3000(登録商標)システム(Oxford Instruments、英国)が挙げられる、任意の様々な市販の装置を適宜使用することができる。金属層は、Thornton, Ann. Rev. Mater. Sci. 7:239-60 (1977)に記載されているように、電子ビーム蒸着またはスパッタリングによって堆積させることもできる。本明細書で例示されるような金属層堆積技法は、フォトリソグラフィ技法と組み合わせて、表面上に金属領域またはパッチを形成することができる。金属層堆積技法とフォトリソグラフィ技法を組み合わせる例示的な方法は、米国特許第8,778,848号明細書および米国特許第8,895,249号明細書に記載されている。
【0052】
フィーチャのアレイは、スポットまたはパッチの格子として表示することができる。フィーチャは、繰り返しパターンまたは不規則な非繰り返しパターンに配置することができる。特に有用なパターンは、六角形パターン、直線パターン、格子パターン、鏡映対称性を有するパターン、回転対称性を有するパターンなどである。非対称パターンも有用である。ピッチは、異なる組の最近傍フィーチャ間で同じであってもよく、またはピッチは、異なる組の最近傍フィーチャ間でばらつきがあってもよい。特定の実施形態では、アレイのフィーチャは、各々、約100nm2、250nm2、500nm2、1μm2、2.5μm2、5μm2、10μm2、100μm2、または500μm2よりも大きい面積を有することができる。代替的または追加的に、アレイのフィーチャは、各々、約1mm2、500μm2、100μm2、25μm2、10μm2、5μm2、1μm2、500nm2、または100nm2よりも小さい面積を有することができる。実際、領域は、上記で例示されたものから選択される上限と下限との間の範囲にあるサイズを有することができる。
【0053】
表面上にフィーチャのアレイを含む実施形態では、フィーチャは、格子間領域によって隔てられており、不連続なものであり得る。アレイを高密度、中密度、または低密度とすることができるように、フィーチャのサイズおよび/または領域間の間隔を変えることができる。高密度アレイは、約15μm未満で隔てられた領域を有することを特徴とする。中密度アレイは、約15~約30μmで隔てられた領域を有する一方で、低密度アレイは、30μmよりも大きく隔てられた領域を有する。本開示で有用なアレイは、100μm未満、50μm未満、10μm未満、5μm未満、1μm未満、または0.5μm未満で隔てられた領域を有し得る。
【0054】
特定の実施形態では、アレイは、ビーズまたは他の粒子の集合物を含むことができる。粒子は、溶液中に懸濁させることも、基板の表面上に配置することもできる。溶液中のビーズアレイの例は、Luminex(オースティン、テキサス州、米国)によって商品化されたものである。表面上にビーズが配置されているアレイの例には、BeadChipアレイ(Illumina社、サンディエゴ、カリフォルニア州、米国)などの、ビーズがウェル内に配置されているもの、または454 LifeSciences(Rocheの子会社、バーゼル、スイス)もしくはIon Torrent(Life Technologiesの子会社、カールズバッド、カリフォルニア州、米国)のシーケンシングプラットフォームで使用される基板が挙げられる。表面上にビーズが配置されている他のアレイは、米国特許第6,266,459号明細書;米国特許第6,355,431号明細書;米国特許第6,770,441号明細書;米国特許第6,859,570号明細書;米国特許第6,210,891号明細書;米国特許第6,258,568号明細書;米国特許第6,274,320号明細書;米国特許出願公開第2009/0026082 A1号明細書;米国特許出願公開第2009/0127589 A1号明細書;米国特許出願公開第2010/0137143 A1号明細書;米国特許出願公開第2010/0282617 A1号明細書;または国際公開第00/63437号に記載されている。上記参考文献のいくつかは、ビーズをアレイ基板内にまたはアレイ基板上に装填する前に、標的核酸をビーズに付着させる方法を記載している。しかしながら、増幅プライマーを含むようにビーズを作製することができ、次いで、そのビーズを使用してアレイに装填することができ、それにより、本明細書に記載の方法で使用するための増幅部位が形成されることが理解されよう。本明細書で先に述べたように、基板は、ビーズなしで使用することができる。例えば、増幅プライマーは、ウェルに直接、またはウェル内のゲル材料に付着させることができる。したがって、参考文献は、本明細書に記載の方法および組成物で使用するために変更することができる材料、組成物または装置を例示するものである。
【0055】
アレイの増幅部位は、標的核酸に結合することができる複数の捕捉剤を含むことができる。一実施形態では、捕捉剤は、捕捉核酸を含む。捕捉核酸のヌクレオチド配列は、標的核酸のユニバーサル配列に相補的である。いくつかの実施形態では、捕捉核酸は、標的核酸の増幅のためのプライマーとして機能することもできる。いくつかの実施形態では、捕捉核酸の1つの集団は、P5プライマーまたはその相補体を含む。いくつかの実施形態では、増幅部位は、複数の第2捕捉核酸も含み、この第2捕捉核酸は、P7プライマーまたはその相補体を含むことができる。いくつかの実施形態では、捕捉核酸は、切断部位を含むことができる。捕捉核酸における切断部位は、本明細書においてより詳細に記載される。
【0056】
特定の実施形態では、捕捉核酸などの捕捉剤を増幅部位に付着させることができる。例えば、捕捉剤は、アレイのフィーチャの表面に付着させることができる。付着は、ビーズ、粒子またはゲルなどの中間構造を介して行うことができる。ゲルを介したアレイへの捕捉核酸の付着の例は、米国特許第8,895,249号明細書に記載されており、Illumina社(サンディエゴ、カリフォルニア州、米国)から市販されているか、または国際公開第2008/093098号に記載されているフローセルによってさらに例示される。本明細書に記載の方法および装置において使用することができる例示的なゲルには、アガロースなどのコロイド構造を有するもの;ゼラチンなどのポリマーメッシュ構造を有するもの;またはポリアクリルアミド、SFA(例えば、米国特許第2011/0059865 A1号明細書を参照)またはPAZAM(例えば、米国仮特許出願第61/753,833号明細書および米国特許第9,012,022号明細書を参照)などの架橋ポリマー構造を有するものが挙げられるが、これらに限定されない。ビーズを介した付着は、本明細書に先に記載した説明および引用参考文献に例示されるように達成することができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、アレイ基板の表面上のフィーチャは、表面の格子間領域によって隔てられており、不連続なものである。アレイのフィーチャと比べて、捕捉剤の量または濃度が実質的に低い格子間領域が有利である。捕捉剤を欠く格子間領域は、特に有利である。例えば、格子間領域における捕捉剤が比較的少量であること、または捕捉剤がないことは、標的核酸、およびその後に生成されるクラスタを、所望のフィーチャへ有利に局在化する。特定の実施形態では、フィーチャは、表面の凹状フィーチャ(例えば、ウェル)であり得、フィーチャは、ゲル材料を含み得る。ゲル含有フィーチャは、ゲルが実質的に存在しない表面の格子間領域か、ゲルが存在する場合にはゲルが核酸の局在化を支持することが実質的にできない表面の格子間領域によって、互いに隔てられ得る。ウェルなどのゲル含有フィーチャを有する基板の製造および使用のための方法および組成物は、米国仮出願第61/769,289号明細書に記載されている。
【0058】
(標的核酸)
本明細書に記載の方法で使用されるアレイは、二本鎖修飾標的核酸を含む。「標的核酸」、「標的フラグメント」、「標的核酸フラグメント」、「標的分子」および「標的核酸分子」という用語は交換可能に使用され、そのヌクレオチド配列の同定が望まれる核酸分子を指す。標的核酸は、本質的に既知または未知の配列の任意の核酸であってよい。それは、例えば、ゲノムDNAまたはcDNAのフラグメントであり得る。シーケンシングは、標的分子の全体または一部の配列を決定する結果となり得る。標的は、ランダムにフラグメント化された一次核酸サンプルから得ることができる。一実施形態では、各標的フラグメントの末端に、ユニバーサル増幅配列、例えばユニバーサルアダプタに存在する配列を配置することによって、標的を増幅に適した鋳型に加工することができる。各末端にユニバーサルアダプタを有する標的核酸は、「修飾標的核酸」と呼ばれ得る。ユニバーサルアダプタについては、本明細書で詳述している。
【0059】
一次核酸サンプルは、サンプルからの二本鎖DNA(dsDNA)形態(例えば、ゲノムDNAフラグメント、PCRおよび増幅産物など)に由来するものでもよく、またはサンプルからのDNAまたはRNAとしての一本鎖形態に由来し、dsDNA形態に変換されたものであってもよい。例として、当該技術分野でよく知られている標準的な技法を用いて、mRNA分子を、本明細書に記載の方法での使用に適した二本鎖cDNAにコピーしてもよい。一次核酸サンプルからのポリヌクレオチド分子の正確な配列は、概して本開示にとって重要ではなく、既知のものであっても未知のものであってもよい。
【0060】
一実施形態では、一次核酸サンプルからの一次ポリヌクレオチド分子は、DNA分子である。より具体的には、一次ポリヌクレオチド分子は、生物の遺伝的相補体全体を表し、イントロン配列およびエクソン配列の両方、ならびにプロモーター配列およびエンハンサー配列などの非コード調節配列を含むゲノムDNA分子である。一実施形態では、ポリヌクレオチド配列またはゲノムDNAの特定のサブセット、例えば、特定の染色体を使用することができる。さらにより具体的には、一次ポリヌクレオチド分子の配列は知られていない。さらにより具体的には、一次ポリヌクレオチド分子は、ヒトゲノムDNA分子である。DNA標的フラグメントを、任意のランダムフラグメント化処理の前または後、ユニバーサルアダプタ配列のライゲーションの前または後に、化学的または酵素的に処理してもよい。
【0061】
核酸サンプルには、ゲノムDNA(gDNA)などの高分子量物質を含めることができる。サンプルには、ホルマリン固定パラフィン包埋されたDNAサンプルまたはアーカイブされたDNAサンプルから得られた核酸分子などの低分子量物質を含めることができる。別の実施形態では、低分子量物質には、酵素的または機械的にフラグメント化されたDNAが含まれる。サンプルには、無細胞循環DNAを含めることができる。いくつかの実施形態では、サンプルには、生検、腫瘍、スクレイピング、スワブ、血液、粘液、尿、血漿、精液、毛髪、レーザキャプチャマイクロダイセクション、外科的切除、および他の臨床または実験室で得られたサンプルから得られた核酸分子を含めることができる。いくつかの実施形態では、サンプルは、疫学的、農業的、法医学的または病原性サンプルであり得る。いくつかの実施形態では、サンプルには、ヒトまたは哺乳動物源などの動物から得られた核酸分子を含めることができる。別の実施形態では、サンプルには、植物、細菌、ウイルス、または真菌などの非哺乳動物源から得られた核酸分子を含めることができる。いくつかの実施形態では、核酸分子の供給源は、アーカイブされているか絶滅したサンプルまたは種であってもよい。
【0062】
さらに、本明細書に開示の方法および組成物は、品質が低い核酸分子を有する核酸サンプル、例えば、法医学サンプルからの分解されたおよび/またはフラグメント化されたゲノムDNAを増幅するのに有用である場合がある。一実施形態では、法医学サンプルには、犯罪現場から、行方不明者DNAデータベースから、法医学調査に関連する研究所から、または法執行機関、1つもしくは複数の軍隊、もしくは任意のそのような要員によって得られた法医学サンプルから得られた核酸を含めることができる。核酸サンプルは、精製サンプルであっても、例えば、唾液、血液、もしくは他の体液を含浸させ得る口腔スワブ、紙、布、または他の基材から得られたクルードDNA含有溶解液であってもよい。このように、いくつかの実施形態では、核酸サンプルには、少量の、またはフラグメント化されたゲノムDNAなどのDNAの一部を含めてもよい。いくつかの実施形態では、標的配列は、血液、痰、血漿、精液、尿、および血清を含むがこれらに限定されない1つまたは複数の体液中に存在し得る。いくつかの実施形態では、標的配列を、毛髪、皮膚、組織サンプル、剖検、または被害者の遺体から得ることができる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の標的配列を含む核酸を、死後の動物またはヒトから得ることができる。いくつかの実施形態では、標的配列には、微生物、植物または昆虫DNAなどの非ヒトDNAから得られた核酸を含めることができる。いくつかの実施形態では、標的配列または増幅された標的配列は、人物同定の目的に向けられる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法を、法医学サンプルの特徴の同定に使用することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、1つもしくは複数の標的特異的プライマーまたは既知のプライマー設計基準を使用して設計された1つもしくは複数の標的特異的プライマーを使用するヒト同定方法に使用することができる。一実施形態では、少なくとも1つの標的配列を含む法医学サンプルまたはヒト同定サンプルは、既知のプライマー設計基準を使用した任意の1つまたは複数の標的特異的プライマーを使用して増幅することができる。
【0063】
生体サンプルの供給源の追加の非限定的な例には、患者から得られるサンプルと同様に、全生物を含めることができる。生体サンプルは、任意の生体液または組織から得ることができ、液体流体および組織、固体組織、ならびに乾燥、凍結、および固定形態などの保存形態を含む様々な形態であり得る。サンプルは、任意の生体組織、細胞、または流体であり得る。そのようなサンプルには、痰、血液、血清、血漿、血球(例えば、白血球)、腹水、尿、唾液、涙、痰、膣液(排出物)、医療処置中に得られた洗浄液(例えば、生検、内視鏡検査、もしくは手術中に得られた骨盤またはその他の洗浄液)、組織、乳頭吸引液、コア針または細針生検サンプル、細胞含有体液、浮遊核酸、腹膜液、および胸水、またはそれらから得られた細胞が含まれるが、これらに限定されない。生体サンプルはまた、組織学的目的のために採取された凍結切片もしくは固定切片などの組織の切片、または顕微解剖した細胞もしくはそれらの細胞外部分を含んでもよい。いくつかの実施形態では、サンプルは、例えば、全血サンプルなどの血液サンプルであり得る。別の例では、サンプルは、未処理の乾燥血液スポットサンプルである。さらに別の例では、サンプルは、ホルマリン固定パラフィン包埋サンプルである。さらに別の例では、サンプルは唾液サンプルである。さらに別の例では、サンプルは乾燥唾液スポットサンプルである。
【0064】
標的核酸を得ることができる例示的な生体サンプルには、例えば、真核生物、例えば、げっ歯動物、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、アンガレート、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシ、ネコ、イヌ、霊長類、ヒトもしくは非ヒト霊長類などの哺乳動物;シロイヌナズナ、トウモロコシ、モロコシ、オートムギ、コムギ、イネ、キャノーラ、もしくはダイズなどの植物;コナミドリムシなどの藻類;シノラブディティス・エレガンスなどの線虫;キイロショウジョウバエ、蚊、ミバエ、ミツバチもしくはクモなどの昆虫;ゼブラフィッシュなどの魚;爬虫類;カエルもしくはアフリカツメガエルなどの両生類;キイロタマホコリカビ;ニューモシスチス・カリニ、トラフグ、サッカロマイセス・セレビシエもしくはシゾサッカロミセス・ポンベなどの酵母などの真菌;または熱帯熱マラリア原虫からのものを含めることができる。標的核酸は、細菌、大腸菌、ブドウ球菌もしくは肺炎マイコプラズマなどの原核生物;古細菌;C型肝炎ウイルスもしくはヒト免疫不全ウイルスなどのウイルス;またはウイロイドにも由来し得る。標的核酸は、均質な培養物もしくは生物集団か、または代替的に、例えば共同体もしくは生態系内のいくつかの異なる生物群に由来し得る。
【0065】
ランダムフラグメント化とは、酵素的、化学的、または機械的な方法により、一次核酸サンプルからポリヌクレオチド分子を無秩序にフラグメント化することを指す。そのようなフラグメント化方法は、当該技術分野で知られており、標準的な方法を使用する(Sambrook and Russell, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, third edition)。一実施形態では、フラグメント化は、しばしばタグメンテーションと呼ばれるプロセスを用いて達成され得る。タグメンテーションは、トランスポゾン複合体を使用し、単一工程のフラグメント化およびライゲーションに統合して、ユニバーサルアダプタを付加する(Gundersonら、国際公開第2016/130704号)。明確にするために、大きな核酸片の小さなフラグメントを、そのような小さなフラグメントの特異的PCR増幅を介して生成することは、大きな核酸配列片が無傷のままである(すなわち、PCR増幅によってフラグメント化されていない)ため、大きい核酸片をフラグメント化することとは同等ではない。さらに、ランダムフラグメント化は、切断を含むおよび/または切断の周囲のヌクレオチドの配列同一性または位置に関係なくフラグメントを生成するように設計されている。特に、ランダムフラグメント化は、噴霧化または超音波化などの機械的手段によるものであり、長さ約50塩基対~長さ約1500塩基対、特に長さ約50~700塩基対、特に長さ約50~400塩基対のフラグメントを生成する。中でも特に、長さ約50~約150塩基対の小さなフラグメントを生成するために、この方法が使用される。
【0066】
機械的手段(例えば、噴霧化、超音波化、およびハイドロシェア)によるポリヌクレオチド分子のフラグメント化は、平滑末端ならびに3’-および5’-突出末端が不均一に混在したフラグメントをもたらす。したがって、例えば、クローニングベクターの平滑部位への挿入に最適な末端を生成するために、当該技術分野で知られている方法またはキット(Lucigen DNA terminator End Repair Kit)を用いてフラグメント末端を修復することが望ましい。特定の実施形態では、核酸の集団のフラグメント末端は平滑末端である。より具体的には、フラグメント末端は平滑末端であり、リン酸化されている。リン酸部位は、例えば、ポリヌクレオチドキナーゼを用いた酵素処理を介して導入することができる。
【0067】
標的核酸の集団は、本明細書に記載の方法または組成物の特定の用途に望ましいまたは適切な平均鎖長を有することができる。例えば、平均鎖長は、約100,000ヌクレオチド、約50,000ヌクレオチド、約10,000ヌクレオチド、約5,000ヌクレオチド、約1,000ヌクレオチド、約500ヌクレオチド、約100ヌクレオチド、または約50ヌクレオチド未満であり得る。代替的または追加的に、平均鎖長は、約10ヌクレオチド、約50ヌクレオチド、約100ヌクレオチド、約500ヌクレオチド、約1,000ヌクレオチド、約5,000ヌクレオチド、約10,000ヌクレオチド、約50,000ヌクレオチド、または約100,000ヌクレオチド超であり得る。標的核酸の集団の平均鎖長は、本明細書に記載の最大値と最小値との間の範囲にあり得る。増幅部位で生成された(または本明細書で別の方法で作製もしくは使用される)アンプリコンは、上記で例示したものから選択される上限値と下限値との間の範囲にある平均鎖長を有し得ることが理解されよう。
【0068】
いくつかの例では、標的核酸の集団は、そのメンバーの長さを最大にする条件下で生成することができるか、別の方法でそうなるように構成することができる。例えば、本明細書に記載の方法の1つまたは複数の工程で使用されるか、特定の組成物中に存在するメンバーの最大長は、100,000ヌクレオチド未満、50,000ヌクレオチド未満、10,000ヌクレオチド未満、5,000ヌクレオチド未満、1,000ヌクレオチド未満、500ヌクレオチド未満、100ヌクレオチド未満、または50ヌクレオチド未満であり得る。代替的または追加的に、標的核酸の集団は、そのメンバーの長さを最小にする条件下で生成することができるか、別の方法でそうなるように構成することができる。例えば、本明細書に記載の方法の1つまたは複数の工程で使用されるか、特定の組成物中に存在するメンバーの最小長は、10ヌクレオチド超、50ヌクレオチド超、100ヌクレオチド超、500ヌクレオチド超、1,000ヌクレオチド超、5,000ヌクレオチド超、10,000ヌクレオチド超、50,000ヌクレオチド超、または100,000ヌクレオチド超であり得る。集団内の標的核酸の最大鎖長および最小鎖長は、上記の最大値と最小値との間の範囲にあり得る。増幅部位で生成された(または本明細書で別の方法で作製もしくは使用される)アンプリコンは、上記で例示した上限値と下限値との間の範囲の最大鎖長および/または最小鎖長を有し得ることが理解されよう。
【0069】
特定の実施形態では、例えば、デオキサアデノシン(A)などの単一のデオキシヌクレオチドを、PCR産物などのDNA分子の3’末端に付加する非鋳型依存性末端トランスフェラーゼ活性を有するTaqポリメラーゼまたはクレノウエキソマイナスポリメラーゼなどの特定のタイプのDNAポリメラーゼの活性により、標的フラグメント配列を単一の突出ヌクレオチドで調製する。そのような酵素を使用して、二本鎖標的フラグメントの各鎖の平滑末端の3’末端に、単一のヌクレオチド「A」を付加することができる。したがって、「A」を、Taqまたはクレノウエキソマイナスポリメラーゼとの反応によって、二本鎖標的フラグメントの各末端修復鎖の3’末端に付加することができ、一方、ユニバーサルアダプタポリヌクレオチド構築物は、ユニバーサルアダプタの二本鎖核酸の各領域の3’末端に存在して互換性のある「T」突出を有するT構築物であり得る。この末端修飾はまた、各末端にユニバーサルアダプタを有する標的核酸の形成に偏りがあるような、ベクターおよび標的の両方の自己ライゲーションを防止する。
【0070】
いくつかの例では、そのような供給源に由来する標的核酸を、本明細書の方法または組成物で使用する前に増幅することができる。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ローリングサークル増幅(RCA)、多重置換増幅(MDA)、またはランダムプライム増幅(RPA)を含むがこれらに限定されない様々な既知の増幅技法のいずれかを使用することができる。本明細書に記載の方法または組成物で使用する前の標的核酸の増幅は、任意選択であることが理解されよう。そのため、本明細書に記載の方法および組成物のいくつかの実施形態では、標的核酸を使用前に増幅することはない。標的核酸は、任意選択で、合成ライブラリに由来し得る。合成核酸は、天然DNAまたはRNA組成物を有し得、またはそれらのアナログであり得る。
【0071】
(ユニバーサルアダプタ)
本明細書に記載の方法または組成物で使用する標的核酸は、各末端に付着したユニバーサルアダプタを含む。各末端にユニバーサルアダプタを有する標的核酸は、「修飾標的核酸」と呼ばれ得る。本明細書に記載の方法で使用する標的核酸の各末端にユニバーサルアダプタを付着させる方法は、当業者に知られている。付着は、ライゲーションを用いた標準的なライブラリ調製技法(米国特許出願公開第2018/0305753号明細書)を介して、またはトランスポザーゼ複合体を用いたタグメンテーション(Gundersonら、国際公開第2016/130704号)を介して行うことができる。
【0072】
一実施形態では、サンプル、例えばフラグメント化されたサンプルからの二本鎖標的核酸は、最初に同一のユニバーサルアダプタ分子(「ミスマッチアダプタ」、その一般的特徴は以下に定義され、Gormleyら、米国特許第7,741,463号明細書、およびBignellら、米国特許第8,053,192号明細書にさらに記載されている)を、二本鎖標的核酸の5’末端および3’末端にライゲーションすることによって処理される。一実施形態では、ユニバーサルアダプタは、後続する配列決定のために標的核酸をアレイ上に固定化するのに必要なユニバーサル捕捉結合配列を含む。別の実施形態では、PCR工程を使用して、固定化および配列決定の前に、標的核酸の各末端に存在するユニバーサルアダプタをさらに修飾する。例えば、最初のプライマー伸長反応は、ユニバーサルプライマー結合部位を用いて行われ、そこで個々の標的核酸の両鎖に相補的な伸長産物が形成され、ユニバーサル捕捉結合配列を付加する。得られたプライマー伸長産物、および任意選択で増幅されたそのコピーは、固定化され、その後配列決定され得る修飾標的核酸のライブラリを集合的に提供する。「ライブラリ」という用語は、それらの3’末端および5’末端に既知の共通配列を含む標的核酸群を指し、3’および5’修飾ライブラリと呼ばれることもある。
【0073】
本開示の方法で使用されるユニバーサルアダプタは、「ミスマッチ」アダプタと呼ばれるが、それは、本明細書で詳細に説明するように、アダプタが配列ミスマッチの領域を含むため、すなわち、完全に相補的なポリヌクレオチド鎖をアニーリングすることによってそれらが形成されるわけではないためである。
【0074】
本明細書で使用するためのミスマッチアダプタは、2本の部分的に相補的なポリヌクレオチド鎖をアニーリングすることによって形成され、2本の鎖がアニーリングされたときに、少なくとも1つの二本鎖領域(二本鎖核酸の領域とも呼ばれる)と、少なくとも1つの一致しない一本鎖領域(一本鎖非相補的核酸鎖の領域とも呼ばれる)とを提供する。
【0075】
ユニバーサルアダプタの二本鎖領域は短い二本鎖領域であり、典型的には、2つの部分的に相補的なポリヌクレオチド鎖をアニーリングすることによって形成された、5個以上の連続する塩基対を含む。この用語は、2本の鎖がアニーリングされる核酸の二本鎖領域を指し、特定の構造的コンフォメーションを意味するものではない。
【0076】
二本鎖領域が機能を失うことなく可能な限り短いことは、一般的に有利である。この文脈において、「機能」とは、当業者にはよく知られているであろう酵素触媒による核酸ライゲーション反応の標準的な反応条件(例えば、酵素に適したライゲーション緩衝液中での、4℃~25℃の範囲の温度でのインキュベーション)の下で、ユニバーサルアダプタを標的分子にライゲーションしている間、ユニバーサルアダプタを形成する2本の鎖が部分的にアニーリングされたままであるような、安定した二本鎖を形成する二本鎖領域の能力を指す。二本鎖領域が、プライマー伸長反応またはPCR反応のアニーリング工程で通常使用される条件下で安定であることは、必ずしも必要ではない。
【0077】
ユニバーサルアダプタの二本鎖領域は、典型的には、ライゲーションで使用される全てのユニバーサルアダプタにおいて同一である。ユニバーサルアダプタは、各標的分子の両端にライゲーションされるため、修飾標的核酸は、ユニバーサルアダプタの二本鎖領域に由来する相補的配列によって挟まれることになる。修飾標的核酸構築物中の二本鎖領域、ひいてはそれに由来する相補的配列が長ければ長いほど、プライマー伸長および/またはPCRで使用されるアニーリング条件の下で、修飾標的核酸構築物が、内部自己相補的なこれらの領域において、折り返してそれ自身と塩基対を形成し得る可能性が高くなる。したがって、この影響を低減するために、二本鎖領域の長さが20以下、15以下、または10以下の塩基対であることが一般的に好ましい。標準的なワトソン-クリック塩基対よりも強い塩基対合を示す非天然ヌクレオチドを含めることにより、二本鎖領域の安定性が向上し、したがってその長さが潜在的に短くなる可能性がある。
【0078】
一実施形態では、ユニバーサルアダプタの2本の鎖は、二本鎖領域において100%相補的である。二本鎖領域内で1つまたは複数のヌクレオチドミスマッチが許容され得ることは、その2本の鎖が標準的なライゲーション条件下で安定な二本鎖を形成することができる場合に限ることが理解されよう。
【0079】
本明細書で使用するユニバーサルアダプタは、一般に、アダプタの「ライゲーション可能な」末端、例えば、ライゲーション反応において二本鎖標的核酸に接合される末端を形成する二本鎖領域を含むことになる。ユニバーサルアダプタのライゲーション可能な末端は平滑であってもよく、または他の実施形態では、ライゲーションを助長/促進するために、1つまたは複数のヌクレオチドの短い5’または3’突出が存在してもよい。ユニバーサルアダプタのライゲーション可能な末端の5’末端ヌクレオチドは、典型的には、標的ポリヌクレオチドの3’ヒドロキシル基へのホスホジエステル結合を可能にするようにリン酸化される。
【0080】
「不適合領域」という用語は、ユニバーサルアダプタの領域、すなわち一本鎖非相補的核酸鎖の領域を指し、その領域では、ユニバーサルアダプタを形成する2本のポリヌクレオチド鎖の配列は、プライマー伸長またはPCR反応の標準的なアニーリング条件下で、その2本の鎖が互いに完全にはアニーリングすることができない程度の非相補性を示す。不適合領域(単数または複数)は、増幅反応におけるアニーリング条件下でその2本の鎖が一本鎖形態に戻る場合に限って、酵素触媒ライゲーション反応の標準的な反応条件下である程度のアニーリングを示す可能性がある。
【0081】
「不適合領域」は、二本鎖領域(単数または複数)を形成する同じ2本のポリヌクレオチド鎖の異なる部分によって提供されることが理解されたい。アダプタ構築物におけるミスマッチは、一方の鎖が他方の鎖よりも長く、その鎖の一方に一本鎖領域が存在するような形態をとることができるか、または2本の鎖がハイブリダイズせず、したがって両方の鎖に一本鎖領域を形成するように選択された配列の形態をとることができる。ミスマッチは「バブル」の形態をとることもあり、そのバブルでは、ユニバーサルアダプタ構築物(単数または複数)の両端は互いにハイブリダイズして二本鎖を形成することができるが、中央領域はそうできない。不適合領域を形成する鎖(単数または複数)の部分は、同じ2本の鎖の他の部分がアニーリングして1つまたは複数の二本鎖領域を形成する条件下ではアニーリングしない。誤解を避けるために、後に標的配列へのライゲーションを受けるポリヌクレオチド二本鎖の3’末端の一本鎖突出または一塩基突出は、本開示の文脈では「不適合領域」を構成しないことを理解されたい。
【0082】
不適合領域の長さの下限は、典型的には、機能によって、例えば、i)プライマー伸長、PCRおよび/もしくは配列決定用のプライマーの結合(例えば、ユニバーサルプライマー結合部位へのプライマーの結合)、またはii)修飾標的核酸を表面に固定化するための、捕捉核酸へのユニバーサル捕捉結合配列の結合に適した配列を提供する必要性によって決定されることになる。理論的には、不適合領域の長さに上限はないが、一般的には、例えば、ライゲーション工程に続く修飾標的核酸構築物からの未結合ユニバーサルアダプタの分離を容易にするために、ユニバーサルアダプタの全長を最小にすることが有利であることを除く。したがって、不適合領域は、50未満、または40未満、または30未満、または25未満の連続するヌクレオチド長であることが一般的に好ましい。
【0083】
一本鎖非相補的核酸鎖の領域は、3’末端に少なくとも1つのユニバーサル捕捉結合配列を含む。ユニバーサルアダプタの3’末端は、アレイの増幅部位に存在する捕捉核酸にハイブリダイズするユニバーサル捕捉結合配列を含む。任意選択で、ユニバーサルアダプタの5’末端は、標的核酸の各末端に付着した第2ユニバーサル捕捉結合配列を含み、そこで第2ユニバーサル捕捉結合配列は、アレイの増幅部位に存在する異なる捕捉核酸にハイブリダイズする。
【0084】
一本鎖非相補的核酸鎖の領域は、典型的には、少なくとも1つのユニバーサルプライマー結合部位も含む。ユニバーサルプライマー結合部位は、ユニバーサルアダプタにライゲーションされた標的核酸の増幅および/または配列決定に使用することができるユニバーサル配列である。
【0085】
一本鎖非相補的核酸鎖の領域は、少なくとも1つのインデックスを含むこともできる。インデックスは、アレイ上の特定の標的核酸の供給源に特徴的なマーカーとして使用することができる(米国特許第8,053,192号明細書)。一般に、インデックスは、ライブラリ調製工程の一部として標的核酸に付加されるユニバーサルアダプタの一部であるヌクレオチドの合成配列である。したがって、インデックスは、特定のサンプルの標的分子の各々に付着する核酸配列であり、その存在は、標的分子が単離されたサンプルまたは供給源を示すか、または識別するために使用される。一実施形態では、デュアルインデックスシステムを使用することができる。デュアルインデックスシステムでは、標的核酸に付着したユニバーサルアダプタは、2つの異なるインデックス配列を含む(米国特許出願公開第2018/0305750号明細書、米国特許出願公開第2018/0305751号明細書、米国特許出願公開第2018/0305752号明細書、および米国特許出願公開第2018/0305753号明細書)。
【0086】
好ましくは、インデックスは、最大20ヌクレオチド長、より好ましくは1~10ヌクレオチド長、最も好ましくは4~6ヌクレオチド長であってもよい。4ヌクレオチドインデックスは、同じアレイ上で256サンプルを多重化する可能性を与え、6塩基インデックスは、同じアレイ上で4096サンプルを処理することを可能にする。
【0087】
一実施形態では、ユニバーサル捕捉結合配列は、二本鎖標的フラグメントにライゲーションしているときはユニバーサルアダプタの一部であり、別の実施形態では、ユニバーサルプライマー伸長結合部位は、ユニバーサルアダプタが二本鎖標的フラグメントにライゲーションした後に、ユニバーサルアダプタに付加される。付加は、PCRなどの増幅ベースの方法を含む常法を用いて達成することができる。
【0088】
ユニバーサルアダプタの正確なヌクレオチド配列は、概して本開示にとって重要ではなく、所望の配列要素が最終的に複数の異なる修飾標的核酸の共通配列に含まれるように使用者が選択することができ、例えば、ユニバーサル捕捉結合配列ならびにユニバーサル増幅プライマーおよび/またはシーケンシングプライマーの特定のセットに対する結合部位を提供する。追加の配列要素は、例えば、ライブラリ内の標的核酸の配列決定、インデックスの配列決定、またはライブラリ内の標的核酸の増幅に由来する産物の配列決定に、例えば固体支持体上で最終的に使用されるシーケンシングプライマー用の結合部位を提供するために含まれてもよい。
【0089】
ユニバーサルアダプタの正確なヌクレオチド配列は、概して本開示に限定されないが、不適合領域における個々の鎖の配列は、標準的なアニーリング条件下で自己アニーリング、ヘアピン構造の形成などを引き起こし得る内部自己相補性をいずれの個々の鎖も示さないようなものでなければならない。不適合領域における鎖の自己アニーリングは、この鎖への増幅プライマーの特異的結合を妨げるか、減少させる可能性があるため、回避する必要がある。
【0090】
ミスマッチアダプタは、好ましくは2本のDNA鎖から形成されるが、混在するホスホジエステルおよび非ホスホジエステル骨格連結によって連結された天然および非天然ヌクレオチドの混在(例えば、1つまたは複数のリボヌクレオチド)を含んでもよい。
【0091】
(ユニバーサルアダプタのライゲーションおよび増幅)
ライゲーション方法は当該技術分野で知られており、標準的な方法を使用する。そのような方法は、DNAリガーゼなどのリガーゼ酵素を使用して、この場合はユニバーサルアダプタおよび二本鎖標的核酸の2本のポリヌクレオチド鎖の末端の接合を、共有結合が形成されるように達成または触媒する。ユニバーサルアダプタは、標的フラグメント上に存在する3’-OHへのライゲーションを容易にするために、5’-リン酸部位を含んでいてもよい。二本鎖標的核酸は、剪断工程から残った、または酵素処理工程を用いて付加された5’-リン酸部位を含み、末端修復され、任意選択で突出した塩基または複数の塩基によって伸長され、ライゲーションに適した3’-OHを与える。この文脈において、接合とは、前は共有結合していなかったポリヌクレオチド鎖の共有結合を意味する。本開示の特定の態様では、そのような接合は、2つのポリヌクレオチド鎖間のホスホジエステル連結の形成によって起こるが、他の共有結合手段(例えば、非ホスホジエステル骨格連結)が使用されてもよい。
【0092】
本明細書で議論されるように、一実施形態では、ライゲーションで使用されるユニバーサルアダプタは完全であり、ユニバーサル捕捉結合配列ならびに他のユニバーサル配列、例えばユニバーサルプライマー結合部位およびインデックス配列を含む。結果として得られる複数の修飾標的核酸を使用して、シーケンシング用に固定されたサンプルを調製することができる。
【0093】
また、本明細書で議論するように、一実施形態では、ライゲーションに使用されるユニバーサルアダプタは、ユニバーサルプライマー結合部位およびインデックス配列を含み、ユニバーサル捕捉結合配列を含まない。結果として得られる複数の修飾標的核酸をさらに修飾し、ユニバーサル捕捉結合配列などの特定の配列を含めることができる。ユニバーサル捕捉結合配列などの特定の配列を、二本鎖標的フラグメントにライゲーションするユニバーサルプライマーに付加する方法には、PCRなどの増幅ベースの方法が挙げられ、それらは当該技術分野で知られており、例えば、Bignellら(米国特許第8,053,192号明細書)およびGundersonら(国際公開第2016/130704号)に記載されている。
【0094】
ユニバーサルアダプタが修飾されているそれらの実施形態では、増幅反応が調製される。増幅反応の内容は当業者に知られており、増幅反応に必要な適切な基質(例えば、dNTP)、酵素(例えば、DNAポリメラーゼ)、および緩衝成分を含む。一般に、増幅反応は、増幅反応の各サイクルのプライマーアニーリング工程で遭遇する条件下で、増幅されるポリヌクレオチド配列の一部、例えば修飾標的核酸に特異的にアニーリングすることが可能な、少なくとも2本の増幅プライマー(しばしば「フォワード」および「リバース」プライマー(プライマーオリゴヌクレオチド)と称される)を必要とする。プライマーが、最初の増幅サイクルで修飾標的核酸にアニーリングしないヌクレオチド配列を含む場合、この配列は増幅産物にコピーされ得ることが理解されよう。例えば、ユニバーサル捕捉結合配列、例えば修飾標的核酸にアニーリングしない配列を有するプライマーの使用では、そのユニバーサル捕捉結合配列は、結果として得られるアンプリコンに組み込まれることになる。
【0095】
増幅プライマーは、通常、一本鎖ポリヌクレオチド構造である。それらはまた、天然および非天然の塩基の混在、ならびに天然および非天然の骨格連結を含み得るが、それは、非天然修飾が、プライマーとしての機能(増幅反応の条件の間に鋳型ポリヌクレオチド鎖にアニーリングし、鋳型鎖に相補的な新しいポリヌクレオチド鎖の合成の開始点として機能する能力として定義される)を妨げない場合に限る。プライマーは、エキソヌクレアーゼ耐性を高めるためのホスホロチオエートなどの非ヌクレオチド化学修飾をさらに含み得るが、ここでも、それは修飾がプライマーの機能を妨げない場合に限る。
【0096】
(クラスタを生成するための増幅 )
増幅部位を含むアレイであって、その各増幅部位が二本鎖アンプリコンのクローン集団(クラスタとも呼ばれる)を含むアレイは、当業者に知られている方法を用いて作製することができる。一実施形態では、等温増幅法が使用され、部位に播種した個々の標的核酸から二本鎖アンプリコンのクローン集団を生成することを含む。いくつかの実施形態では、増幅反応は、それぞれの増幅部位の収容可能量を満たすのに十分な数のアンプリコンが生成されるまで進行する。このようにして既に播種された部位を収容可能量まで満たすと、後続の標的核酸がその部位へ着地することが阻止され、それによってその部位にアンプリコンのクローン集団が生成される。したがって、いくつかの実施形態では、アンプリコンが生成されて増幅部位の収容可能量を満たす速度が、個々の標的核酸が個々の増幅部位に輸送される速度を上回ることが望ましい。
【0097】
いくつかの実施形態では、増幅方法には、固相増幅、ポロニー増幅、コロニー増幅、エマルジョンPCR、ビーズRCA、表面RCA、または表面SDAが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、溶液中の遊離DNA分子か、または一端のみが適切なマトリックスにつながれたDNA分子の増幅をもたらす増幅方法が使用される。いくつかの実施形態では、両方のPCRプライマーが表面に付着するブリッジPCRに頼る方法(例えば、国際公開第2000/018957号、米国特許第7,972,820号明細書;米国特許第7,790,418号明細書およびAdessi et al., Nucleic Acids Research (2000): 28(20): E87を参照)が使用される。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、同一のアンプリコンの空間的クラスタリングを維持する多重増幅を参照して、「ポリメラーゼコロニー技術」、すなわち「ポロニー」を作り出すことができる(ハーバード分子技術グループおよびリッパー計算遺伝学センターのウェブサイトを参照)。これらには、例えば、in situポロニー(Mitra and Church, Nucleic Acid Research 27, e34, Dec. 15, 1999)、in situローリングサークル増幅(RCA)(Lizardi et al., Nature Genetics 19, 225, July 1998)、ブリッジPCR(米国特許第5,641,658号明細書)、ピコタイターPCR(Leamon et al., Electrophoresis 24, 3769, November 2003)、およびエマルジョンPCR(Dressman et al., PNAS 100, 8817, Jul. 22, 2003)が含まれる。いくつかの実施形態では、結合平衡除外に頼る方法が使用され、ここでは、リコンビナーゼ促進性増幅および等温条件がライブラリを増幅する(米国特許第9,309,502号明細書、米国特許第8,895,249号明細書、米国特許第8,071,308号明細書)。
【0098】
いくつかの実施形態では、第2標的核酸がその部位で増幅を開始する前に増幅部位が収容可能量まで満たされていなくても、見かけのクローン性を達成することができる。いくつかの条件下では、第1標的核酸の増幅は、その部位に輸送される第2標的核酸からのコピーの生成を効果的に打ち負かすか、圧倒するのに十分な数のコピーが作られる時点まで進行し得る。例えば、直径が500nmよりも小さい円形フィーチャ上でブリッジ増幅プロセスを使用する実施形態では、第1標的核酸の指数関数的増幅の14サイクル後では、同じ部位での第2標的核酸からのコンタミネーションは、Illuminaシーケンシングプラットフォームでの合成による配列決定分析に悪影響を与えるには不十分な数のコンタミアンプリコンを生成することが判明している。
【0099】
アレイ内の増幅部位は、全ての実施形態において完全にクローン性である必要はない。むしろ、いくつかの用途では、個々の増幅部位は、主に第1標的核酸からのアンプリコンで占められてよく、また、低レベルの第2標的核酸からのコンタミアンプリコンを含んでもよい。アレイは、コンタミネーションレベルがアレイのその後の使用に許容できない影響を及ぼさない限り、低レベルのコンタミアンプリコンを含む1つまたは複数の増幅部位を有することができる。例えば、アレイを検出用途で使用する場合、許容可能なコンタミネーションレベルは、検出技法のシグナルノイズまたは分解能に対して、許容できない形では影響を与えることがないレベルであろう。したがって、見かけのクローン性は、概して、本明細書に記載の方法によって作られたアレイの特定の使用または用途に関係することになる。特定の用途のために個々の増幅部位で許容され得るコンタミネーションの例示的なレベルには、多くても0.1%、0.5%、1%、5%、10%、または25%のコンタミアンプリコンが含まれるが、これらに限定されるものではない。アレイは、これらの例示的なレベルのコンタミアンプリコンを有する1つまたは複数の増幅部位を含むことができる。例えば、アレイ内の増幅部位の最大5%、10%、25%、50%、75%、さらには100%に、いくつかのコンタミアンプリコンが含まれている可能性がある。
【0100】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法で有用なアレイを作る方法は、増幅が起こっているときに標的核酸が増幅部位に(例えば拡散を介して)輸送される条件下で実施することができる。したがって、いくつかの増幅方法は、後続アンプリコンの形成に対して比較的遅い輸送速度および比較的遅い第1アンプリコン生成の両方を利用することができる。例えば、本明細書に記載の増幅反応は、(i)第1アンプリコンの生成、および(ii)アレイの他の部位での後続アンプリコンの生成と同時に、標的核酸が溶液から増幅部位に輸送されるように実施することができる。特定の実施形態では、増幅部位で後続アンプリコンが生成される平均速度は、標的核酸が溶液から増幅部位に輸送される平均速度を上回ることができる。いくつかの例では、個々の増幅部位において、それぞれの増幅部位の収容可能量を満たすのに十分な数のアンプリコンを単一の標的核酸から生成することができる。アンプリコンが生成されて各増幅部位の収容可能量を満たす速度は、例えば、個々の標的核酸が溶液から増幅部位に輸送される速度を上回ることができる。
【0101】
増幅部位で標的核酸を増幅するための組成物は、本明細書では「増幅試薬」と呼ばれ、典型的には、増幅部位で標的核酸のコピーを迅速に作ることができる。本開示の方法で使用される増幅試薬は、通常、ポリメラーゼおよびヌクレオチド三リン酸(NTP)を含む。当該技術分野で知られている種々のポリメラーゼのいずれも使用することができるが、いくつかの実施形態では、エキソヌクレアーゼ陰性であるポリメラーゼを使用することが好ましい場合がある。本発明の実施形態における使用に適した核酸ポリメラーゼの例としては、DNAポリメラーゼ(クレノウフラグメント、T4 DNAポリメラーゼ、Bst(バチルス・ステアロサーモフィルス)ポリメラーゼなど)、熱安定性DNAポリメラーゼ(Taq、Vent、Deep Vent、Pfu、Tfl、および9°N DNAポリメラーゼなど)、ならびにそれらの遺伝子改変誘導体(TaqGold、VENTexo、Pfu exo)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、増幅試薬には、リコンビナーゼ、アクセサリータンパク質、およびリコンビナーゼ促進性増幅のための一本鎖DNA結合(SSB)タンパク質を含めることができる。
【0102】
NTPは、DNAコピーが作られる実施形態では、デオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP)であり得る。典型的には、4つの天然種、dATP、dTTP、dGTPおよびdCTPが、DNA増幅試薬中に存在することになる;しかしながら、必要に応じて、アナログを使用することができる。NTPは、RNAコピーが作られる実施形態では、リボヌクレオチド三リン酸(rNTP)であり得る。典型的には、4つの天然種、rATP、rUTP、rGTPおよびrCTPが、RNA増幅試薬中に存在することになる;しかしながら、必要に応じて、アナログを使用することができる。NTPは、蛍光基または放射性基で修飾することができる。核酸の検出可能性および/または機能的多様性を高めるために、多種多様な合成的に修飾された核酸が化学的および生物学的方法向けに開発されてきた。これらの官能基化/修飾された分子(例えば、ヌクレオチドアナログ)は、天然の重合酵素と完全に適合性があり、天然の対応物の塩基対合および複製特性を維持することができる。
【0103】
結果として、増幅溶液の他の成分がポリメラーゼの選択に追加され、それらは、各ポリメラーゼの活性を支持するのに有効であると当該技術分野で知られている化合物に本質的に相当する。ジメチルスルホキシド(DMSO)、ウシ血清アルブミン(BSA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ベタイン、Triton X-100、変性剤(例えば、ホルムアミド)、またはMgCl2などの化合物の濃度は、最適な増幅のために重要であることが先行技術でよく知られており、したがって、操作者は、そのような濃度を、以下に示す実施例および一般に利用可能な知識に基づいて、本開示の方法向けに容易に調整することができる。
【0104】
増幅反応が起こる速度は、増幅反応の活性成分の1種もしくは複数種の濃度または量を増加させることによって速めることができる。例えば、ポリメラーゼ、ヌクレオチド三リン酸、またはプライマーの量または濃度。いくつかの例では、量または濃度を増加させる(または別のやり方で本明細書に記載の方法において操作する)増幅反応の1種もしくは複数種の活性成分は、増幅反応の非核酸成分である。
【0105】
増幅速度は、温度を調整することによっても、本明細書に記載の方法で増加させることができる。例えば、1つもしくは複数の増幅部位における増幅速度は、変性または他の有害事象のために反応速度が下がる最高温度まで増幅部位(単数または複数)の温度を上げることによって、速めることができる。最適または所望の温度は、使用中の増幅成分の既知の特性から、または所与の増幅反応混合物について経験的に決定することができる。そのような調整は、プライマーの融解温度(Tm)の先験的予測に基づいて、または経験的に行うことができる。特定の実施形態では、増幅反応の温度は、少なくとも35℃~70℃以下である。例えば、増幅反応は、少なくとも35℃~42℃以下の温度、または少なくとも57℃~63℃以下の温度であり得る。
【0106】
増幅反応が起こる速度は、1種または複数種の増幅試薬の活性を高めることにより速めることができる。例えば、ポリメラーゼの伸長速度を増加させる補因子を、ポリメラーゼが使用されている反応に添加することができる。いくつかの実施形態では、マグネシウム、亜鉛、またはマンガンなどの金属補因子をポリメラーゼ反応に添加することができ、またはベタインを添加することができる。
【0107】
(シーケンシングのための固定化サンプルの調製)
ブリッジ増幅の結果は、増幅部位におけるクローン性の「ブリッジ」増幅産物の集団である。アンプリコン酸の両鎖は、増幅部位の表面上に5’末端で固定化されており、ここでのこの付着は、捕捉核酸の元の付着に由来する(例えば、二本鎖アンプリコン11が「ブリッジした」向きで描かれている
図1Aを参照)。増幅部位内のアンプリコンはクローン性であり、単一の標的核酸の増幅に由来するか、または本明細書に記載されているような許容可能なレベルの別のアンプリコンを含む。
【0108】
多数の未使用の捕捉核酸が増幅後に増幅部位の表面上に残り、ブリッジ二本鎖アンプリコンの鎖の各々の遊離3’末端に加えて、ブリッジ増幅産物のクローンクラスタを形成する。未使用の捕捉核酸の存在は、ノイズの増加の一因となり得るため、通常、ヌクレアーゼが未使用の捕捉核酸を分解するのに適した条件下でアレイをヌクレアーゼと接触させることによって除去される。一実施形態では、ヌクレアーゼはエキソヌクレアーゼであり、例えば、3’→5’一本鎖DNAエキソヌクレアーゼ活性を有するエキソヌクレアーゼである。そのようなエキソヌクレアーゼの例はエキソヌクレアーゼIである。ヌクレアーゼ処理に続いてアレイを洗浄し、ヌクレアーゼならびにその結果生じたヌクレオチドおよび/または核酸を増幅部位から除去する。
【0109】
シーケンシングを容易にするために、二本鎖ブリッジ構造の鎖の一方を表面から選択的に除去し、シーケンシングプライマーを残りの固定化された鎖へ効率的にハイブリダイズさせることができる。特定の鎖の選択的除去を、本明細書では「直鎖化」と呼ぶ。直鎖化に適切な方法の例は、本明細書に記載されており、国際公開第2007/010251号および米国特許出願公開第2012/0309634号明細書にさらに詳細に記載されている。
【0110】
一実施形態では、直鎖化は、ブリッジ二本鎖アンプリコンの一方の鎖を切断し、次いで、その結果生じた構造を、増幅部位表面にもはや付着していない鎖を除去する条件にさらすことによって達成される。切断は、切断部位を含む捕捉核酸の使用によって達成することができる。切断部位は、典型的には、ブリッジ構造の一方の鎖のかなりの割合が増幅部位の表面から遊離し(もはや固定化されず)、除去工程後に消失しやすくなる位置にある。例えば、
図1Bに示すように、アンプリコン11の切断部位Xは、短縮した捕捉核酸13’’を残して切断される。ブリッジ構造の一方の鎖16は、その5’末端で増幅部位10に固定化されたままであり、他方の鎖15’は、Xでの切断のためにもはや固定化されていない。一実施形態では、鎖16の3’末端は、短縮した捕捉核酸13’’の相補的塩基にアニーリングしたままであり、それにより、直鎖化後にブリッジ構造を維持する。ブリッジ構造を維持する鎖16の3’末端と短縮した捕捉核酸13’’との間の相補的塩基の数は、一般的な条件に応じて異なり、当業者が決定することができる。
【0111】
一実施形態では、切断部位を処理してヌクレオチドを除去し、脱塩基部位を作る。「脱塩基部位」とは、塩基成分が除去された核酸中のヌクレオチド位置である。脱塩基部位は、人工的な条件下で化学的に形成することも、酵素の作用によって形成することもできる。一旦形成されると、脱塩基部位は(例えば、エンドヌクレアーゼまたは他の一本鎖切断酵素での処理、熱またはアルカリへの曝露によって)切断され得、核酸の部位特異的切断の手段を提供する。
【0112】
一実施形態では、固定化されたアンプリコンの一方の鎖の所定の位置に、脱塩基部位を形成してもよい。これは、例えば、所定の位置に特定のヌクレオチドを組み込むことによって達成することができる。
【0113】
一実施形態では、増幅部位の表面に付着した捕捉核酸の1種にデオキシウリジン(U)が組み込まれている。そこで、酵素ウラシルDNAグリコシラーゼ(UDG)を使用してウラシル塩基を除去し、一方の鎖上に脱塩基部位を作り出すことができる。次いで、この脱塩基部位を含むポリヌクレオチド鎖を、エンドヌクレアーゼ(例えば、DNAグリコシラーゼリアーゼエンドヌクレアーゼVIII)、熱またはアルカリで処理することにより、脱塩基部位で切断することができる。特定の実施形態では、New Englad Biolabs(NEB#M5505S)から入手可能なUSER試薬を使用して、固定化されたウラシル塩基での単一ヌクレオチドギャップを生成する。一実施形態では、適切なグリコシラーゼと1種または複数種の適切なエンドヌクレアーゼとを典型的には少なくとも約2:1の活性比で含む混合物に、増幅部位をさらす。エンドヌクレアーゼ酵素で処理すると、切断部位に3’-リン酸部位が生じ、これはアルカリホスファターゼなどの適切なホスファターゼで除去することができる。例えば、
図1Bに示すように、切断部位XがUSER試薬を用いて生成された場合、短縮した捕捉核酸13’’は3’-リン酸基で終結する。
【0114】
一実施形態では、増幅部位の表面に付着した捕捉核酸の1種に8-オキソグアニンが組み込まれている。そこで、酵素FPGグリコシラーゼを使用して8-オキソグアニン塩基を除去し、一方の鎖上に脱塩基部位を生成することができる。別の実施形態では、増幅部位の表面に付着した捕捉核酸の1種にデオキシイノシンが組み込まれており、そこで、酵素AlkAグリコシラーゼを使用してデオキシイノシン塩基を除去し、一方の鎖上に脱塩基部位を生成することができる。
【0115】
この方法の利点には、切断された鎖上の遊離3’リン酸基を遊離させる選択肢が含まれ、これは、ホスファターゼ処理後、相補鎖の領域を配列決定するための開始点を提供することができる(例えば、
図1Bの鎖16の領域を配列決定する)。切断反応は、DNAに天然には存在しない残基、例えばデオキシウリジンを必要とするが、その他の点では配列関係に依存しないため、非天然塩基が1つだけ含まれていれば、グリコシラーゼ媒介切断が二本鎖中の他の望ましくない位置で発生する可能性はない。ウラシルに対するUDGの作用によって生成された固定化アンプリコンの二本鎖区分の脱塩基部位の切断によって得られる別の利点は、切断によって形成された遊離3’ヒドロキシル基で開始される合成による配列決定で取り込まれる最初の塩基が常にTであるということである。その結果、このようにして切断されて配列決定鋳型を生成するアレイの異なる増幅部位にある全てのクローンクラスタについて、アレイ全体に渡って普遍的に取り込まれる最初の塩基はTになる。これにより、配列決定実行の開始に当たり、配列に依存しない個々のクラスタ強度のアッセイを提供することができる。
【0116】
エキソヌクレアーゼを添加する工程および直鎖化する工程は、必然的に別個の工程であることが当業者には知られている。エンドヌクレアーゼ酵素で処理すると、切断部位に3’-リン酸部位が生じ、3’-リン酸の存在は、エキソヌクレアーゼIの活性を阻害することが知られている(Lehman and Nussbaum, 1964, J. Biol. Chem., 239: 2628-2636)。本発明者らは、酵素を合わせることにより、エキソヌクレアーゼ工程と直鎖化工程との両方を同時に起こすことができるという思いがけない驚くべき発見をした。これらの2つの工程を1つに減らすと、2つの工程が同時に実行されるため、シーケンシングの実行が高速になる。さらに、両方の工程を合わせても、一次指標、読み取り品質、デュアルインデックス、またはゲノム構築指標に悪影響を与えない。
【0117】
脱塩基部位の生成および切断は、もはや表面に固定化されていない鎖上の遊離5’末端をもたらす(例えば、
図1Bに示すように、ブリッジ構造の一方の鎖16は、その5’末端で増幅部位10に固定化されたままであり、他方の鎖15’は、Xでの切断のためにもはや固定化されていない)。この鎖は、増幅部位を適当な条件にさらすことにより、表面から完全に除去することができる。一実施形態では、除去は変性によって行われる。変性は、熱的または等温的に、例えば化学的変性を用いて行うことができる。化学的変性剤は、尿素、水酸化物、もしくはホルムアミドまたは他の類似の試薬であり得る。別の実施形態では、除去は、5’→3’活性を有するエキソヌクレアーゼ、例えばラムダエキソヌクレアーゼまたはT7エキソヌクレアーゼで処理することによって達成することができる。付着していない鎖を除去すると、ポリメラーゼの鋳型として作用し得る一本鎖が残る。
【0118】
任意選択で、増幅部位で核酸の3’末端を修復する。エキソヌクレアーゼは、直鎖化の後に、核酸の3’末端のヌクレオチドの一部を除去することができる。限定するつもりはないが、3’末端はわずかに「ブリージング」している可能性があり、その結果、少数のヌクレオチドが一本鎖になり、エキソヌクレアーゼが分解に利用可能になる。修復は、ヌクレオチドを、DNAポリメラーゼ、例えばブリッジ増幅に使用されるDNAポリメラーゼにさらすことによって達成することができる。
【0119】
付着していない鎖の除去は、任意選択である。一実施形態では、脱塩基部位の生成後に残った3’-ホスフェート基は除去され、切断された捕捉核酸(
図1B、短縮した捕捉核酸13’’)の末端に3’-ヒドロキシル基が残る。この捕捉核酸は、鎖置換活性を有するポリメラーゼのプライマーとして使用することができる。ポリメラーゼは、固定化された鎖(
図1B、鎖16)を鋳型として使用して相補鎖を合成する際に、付着していない鎖(
図1B、鎖15’)を置換する。
【0120】
(組成物)
本明細書に記載の増幅クラスタリング法の最中、またはそれに続いて、異なる組成物が生じる可能性がある。一実施形態では、組成物は、グリコシラーゼ、エンドヌクレアーゼ、およびエキソヌクレアーゼを含む。一実施形態では、エキソヌクレアーゼは、エキソヌクレアーゼIなどの3’→5’一本鎖DNAエキソヌクレアーゼ活性を有する。一実施形態では、組成物中に存在し得るグリコシラーゼの1種はウラシルDNAグリコシラーゼであり、エンドヌクレアーゼはDNAグリコシラーゼリアーゼエンドヌクレアーゼVIIIである。一実施形態では、組成物中に存在し得るグリコシラーゼの1種はFPGグリコシラーゼであり、エンドヌクレアーゼはDNAグリコシラーゼリアーゼエンドヌクレアーゼVIIIである。一実施形態では、組成物中に存在し得るグリコシラーゼの1種はAlkAグリコシラーゼであり、エンドヌクレアーゼはDNAグリコシラーゼリアーゼエンドヌクレアーゼVIIIである。組成物は、ウラシル切断部位、8-オキソグアニン切断部位、またはデオキシイノシン切断部位を含む二本鎖DNA基質を含むことができる。組成物は、脱塩基部位を含む二本鎖DNA基質を含むことができる。いくつかの実施形態では、組成物の二本鎖DNA基質は一本鎖領域を含むことができ、ここで、ウラシル切断部位および脱塩基部位は二本鎖領域に存在する。複数の増幅部位を含むアレイも提供され、ここで、各増幅部位は、増幅部位に付着した複数の二本鎖DNA基質を含む。
【0121】
(配列決定における使用/配列決定の方法)
本開示のアレイは、本明細書に記載の方法によって作製され、増幅部位で増幅されて直鎖化されたアンプリコンを含み、任意の様々な用途に使用することができる。特に有用な用途は、核酸配列決定である。一例として、合成による配列決定(SBS)がある。SBSでは、核酸鋳型(例えば、標的核酸またはそのアンプリコン)に沿った核酸プライマーの伸長をモニターし、鋳型中のヌクレオチドの配列を決定する。根底にある化学プロセスは、重合であり得る(例えば、ポリメラーゼ酵素によって触媒されるように)。特定のポリメラーゼベースのSBSの実施形態では、蛍光標識されたヌクレオチドは、プライマーに付加されたヌクレオチドの順序および種類の検出を利用して鋳型の配列を決定することができるような鋳型依存的方法でプライマーに付加される(それによってプライマーを伸長させる)。本明細書に記載のアレイの異なる部位にある複数の異なる鋳型を、異なる鋳型に対して発生する事象がアレイ内のそれらの位置によって区別され得る条件下において、SBS技法にかけることができる。
【0122】
フローセルは、本開示の方法によって製造されるアレイであって、試薬の送達をサイクルで繰り返すことを伴うSBSまたは他の検出技法にかけられるアレイを収容するための便利なフォーマットを提供する。例えば、第1SBSサイクルを開始するために、1種または複数種の標識ヌクレオチド、DNAポリメラーゼなどを、核酸鋳型のアレイを収容するフローセルに流し込む/通すことができる。プライマー伸長により標識ヌクレオチドが取り込まれたアレイの部位を検出することができる。任意選択で、ヌクレオチドは、一旦ヌクレオチドがプライマーに付加するとそれ以上のプライマー伸長を終結させる可逆的終結特性をさらに備えることができる。例えば、可逆的ターミネーター部位を有するヌクレオチドアナログをプライマーに付加させ、デブロッキング剤が送達されてその部位を除去するまで後続の伸長が生じないようにすることができる。したがって、可逆的ターミネーターを使用する実施形態では、デブロッキング試薬をフローセルに送達することができる(検出が起こる前または後に)。様々な送達工程の間に洗浄を行うことができる。次いで、このサイクルをn回繰り返して、プライマーをnヌクレオチド分だけ伸長させ、それによって長さnの配列を検出することができる。本開示の方法によって製造されたアレイでの使用に容易に適合させることができる例示的なSBS手順、流体システムおよび検出プラットフォームは、例えば、Bentley et al., Nature 456:53-59 (2008)、国際公開第04/018497号;米国特許第7,057,026号明細書;国際公開第91/06678号;国際公開第07/123,744号;米国特許第7,329,492号明細書;米国特許第7,211,414号明細書;米国特許第7,315,019号明細書;米国特許第7,405,281号明細書、および米国特許第8,343,746号明細書に記載されている。
【0123】
パイロシーケンシングなどのサイクル反応を利用する他の配列決定手順を使用することができる。パイロシーケンシングでは、特定のヌクレオチドが新生核酸鎖に取り込まれる際の無機ピロリン酸(PPi)の放出を検出する(Ronaghi, et al., Analytical Biochemistry 242(1), 84-9 (1996); Ronaghi, Genome Res. 11(1), 3-11 (2001); Ronaghi et al. Science 281(5375), 363 (1998);米国特許第6,210,891号明細書;米国特許第6,258,568号明細書および米国特許第6,274,320号明細書)。パイロシーケンシングでは、放出されたPPiは、ATPスルホリラーゼによってアデノシン三リン酸(ATP)に直ちに変換されることで検出することができ、生成されたATPのレベルは、ルシフェラーゼによって生成された光子を介して検出することができる。このように、発光検出システムを介して配列決定反応をモニターすることができる。蛍光ベースの検出システムに使用される励起放射線源は、パイロシーケンス手順には必要ではない。パイロシーケンシングの本開示のアレイへの適用に使用することができる有用な流体システム、検出器、および手順は、例えば、WIPO公開特許出願2012/058096号、米国特許出願公開第2005/0191698 A1号明細書;米国特許第7,595,883号明細書、および米国特許第7,244,559号明細書に記載されている。
【0124】
ライゲーションによる配列決定反応も有用であり、例えば、Shendure et al. Science 309:1728-1732 (2005);米国特許第5,599,675号明細書;および米国特許第5,750,341号明細書に記載されている。いくつかの実施形態は、例えば、Bains et al., Journal of Theoretical Biology 135(3), 303-7 (1988); Drmanac et al., Nature Biotechnology 16, 54-58 (1998); Fodor et al., Science 251(4995), 767-773 (1995);および国際公開第1989/10977号に記載のような、ハイブリダイゼーションによる配列決定手順を含むことができる。ライゲーションによる配列決定およびハイブリダイゼーションによる配列決定手順の両方において、アレイの部位に存在する鋳型核酸(例えば、標的核酸またはそのアンプリコン)を、オリゴヌクレオチドの送達および検出の反復サイクルにかける。本明細書に記載されているか、または本明細書に引用されている参考文献に記載のようなSBS法の流体システムは、ライゲーションによる配列決定手順またはハイブリダイゼーションによる配列決定手順用の試薬の送達に容易に適合させることができる。典型的には、オリゴヌクレオチドは蛍光標識されており、SBS手順に関して本明細書または引用文献に記載されているものと同様の蛍光検出器を使用して検出することができる。
【0125】
いくつかの実施形態では、DNAポリメラーゼ活性のリアルタイムモニタリングを伴う方法を使用することができる。例えば、ヌクレオチドの取り込みは、フルオロフォア含有ポリメラーゼとγ-リン酸標識ヌクレオチドとの間の蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)相互作用を通じて、またはゼロモード導波路(ZMW)で検出することができる。FRETベースの配列決定用の技法および試薬は、例えば、Levene et al. Science 299, 682-686 (2003); Lundquist et al. Opt. Lett. 33, 1026-1028 (2008); Korlach et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 105, 1176-1181 (2008)に記載されている。
【0126】
いくつかのSBSの実施形態は、ヌクレオチドが伸長産物に取り込まれる際に放出されるプロトンの検出を含む。例えば、放出されたプロトンの検出に基づく配列決定は、Ion Torrent(ギルフォード、コネチカット州、Life Technologiesの子会社)から市販されている電気検出器および関連技法を使用することができ、または米国特許出願公開第2009/0026082 A1号明細書;米国特許出願公開第2009/0127589 A1号明細書;米国特許出願公開第2010/0137143 A1号明細書;もしくは米国特許出願公開第2010/0282617 A1号明細書に記載されている配列決定方法およびシステムを使用することができる。本明細書に記載の標的核酸を増幅する方法は、プロトンを検出するために使用される基板に容易に適用することができる。より具体的には、本明細書に記載の方法を使用して、プロトンを検出するために使用されるアレイの部位でアンプリコンのクローン集団を生成することができる。
【0127】
例えば、本明細書に記載の方法によって作製された本開示のアレイの有用な用途は、遺伝子発現解析である。遺伝子発現は、デジタルRNAシーケンシングと呼ばれるものなどのRNAシーケンシング技法を用いて検出または定量化することができる。RNAシーケンシング技法は、上述のものなどの当該技術分野で知られている配列決定方法論を用いて実施することができる。遺伝子発現は、アレイへの直接ハイブリダイゼーションにより実施されるハイブリダイゼーション技法を使用して、またはその産物がアレイ上で検出されるマルチプレックスアッセイを使用して、検出もしくは定量化することもできる。例えば、本明細書に記載の方法によって作製された本開示のアレイを使用して、1つもしくは複数の個体からのゲノムDNAサンプルの遺伝子型を決定することもできる。本開示のアレイ上で実施することができるアレイベースの発現およびジェノタイピング分析のための例示的な方法は、米国特許第7,582,420号明細書;米国特許第6,890,741号明細書;米国特許第6,913,884号明細書もしくは米国特許第6,355,431号明細書または米国特許出願公開第2005/0053980 A1号明細書;米国特許出願公開第2009/0186349 A1号明細書もしくは米国特許出願公開第2005/0181440 A1号明細書に記載されている。
【0128】
本明細書に記載の方法で作製されたアレイの別の有用な用途は、単細胞シーケンシングである。インデックス作成法と組み合わせて、単細胞シーケンシングをクロマチンアクセシビリティ解析で使用して数千の単細胞における活性調節エレメントのプロファイルを作成することができ、単細胞全ゲノムライブラリを作製することができる。本開示のアレイで実施することができる単細胞シーケンシングの例は、米国特許出願公開第2018/0023119 A1号明細書、米国仮特許出願第62/673,023号明細書および米国仮特許出願第62/680,259号明細書に記載されている。
【0129】
本明細書に記載の方法の利点は、任意の様々な核酸ライブラリからアレイを迅速的かつ効率的に作製することである。したがって、本開示は、本明細書に記載の方法の1つまたは複数を使用してアレイを作製することが可能な統合システムであって、さらに、本明細書に例示されるものなどの当該技術分野で知られている技法を使用してアレイ上の核酸を検出することが可能な統合システムを提供する。したがって、本開示の統合システムは、ポンプ、バルブ、リザーバ、流体ラインなどの増幅部位のアレイに、増幅試薬を送達することが可能な流体構成要素を含むことができる。特に有用な流体構成要素は、フローセルである。フローセルは、本開示のアレイを作製するため、およびアレイを検出するために、統合システムにおいて構成および/または使用することができる。例示的なフローセルは、例えば、米国特許出願公開第2010/0111768 A1号明細書および米国特許第8,951,781号明細書に記載されている。フローセルについて例示されているように、統合システムの流体構成要素の1種または複数種を、増幅方法および検出方法に使用することができる。例として核酸配列決定の実施形態を取り上げると、統合システムの流体構成要素の1種または複数種を、本明細書に記載の増幅方法に、および本明細書に記載のものなどの配列決定方法におけるシーケンシング試薬の送達に使用することができる。あるいは、統合システムは、増幅方法を実施し、検出方法を実施するための別個の流体システムを含むことができる。核酸のアレイを作製することができ、さらに核酸の配列を決定することができる統合シーケンシングシステムの例としては、Illumina社(サンディエゴ、カリフォルニア州)のMiSeq(商標)、HiSeq2500(商標)、NextSeq(商標)、MiniSeq(商標)、NovaSeq(商標)およびiSeq(商標)シーケンシングプラットフォーム、ならびに米国特許第8,951,781号明細書に記載されているデバイスが挙げられるが、これらに限定されない。そのようなデバイスは、本明細書に記載のガイダンスに従ってアレイを作るように変更することができる。
【0130】
本明細書に記載の方法を実施することができるシステムは、検出デバイスと統合されている必要はない。むしろ、独立型システムまたは他のデバイスと統合されたシステムも可能である。そのような実施形態では、統合システムの文脈で上記に例示したものと同様の流体構成要素を使用することができる。
【0131】
本明細書に記載の方法を実行することが可能なシステムは、検出能力と統合されているか否かにかかわらず、本明細書に記載の方法、技法、またはプロセスの1つまたは複数の工程を実行するための命令セットを遂行することが可能なシステムコントローラを含むことができる。例えば、命令は、ブリッジ増幅条件下でアレイを作製するための工程の実行を指示することができる。任意選択で、命令は、本明細書に前述した方法を使用して核酸を検出するための工程の実行をさらに指示することができる。有用なシステムコントローラは、任意のプロセッサベースまたはマイクロプロセッサベースのシステムを含むことができ、マイクロコントローラ、縮小命令セットコンピュータ(RISC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、論理回路、および本明細書に記載の機能を実行することができる任意の他の回路またはプロセッサを使用するシステムが含まれる。システムコントローラの命令セットは、ソフトウェアプログラムの形式であってもよい。本明細書において使用するとき、用語「ソフトウェア」および「ファームウェア」は交換可能であり、コンピュータによって実行されるためにメモリに格納された任意のコンピュータプログラムを含み、RAMメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、EEPROMメモリ、および不揮発性RAM(NVRAM)メモリが含まれる。ソフトウェアは、システムソフトウェアまたはアプリケーションソフトウェアなど、様々な形式のものであってもよい。さらに、ソフトウェアは、別個のプログラムの集合体の形式であってもよいし、より大きなプログラム内のプログラムモジュールまたはプログラムモジュールの一部の形式であってもよい。また、ソフトウェアは、オブジェクト指向プログラミングの形式でモジュール化されたプログラミングを含んでいてもよい。
【0132】
例えば、本明細書に記載の方法によって作製された本開示のアレイを、検出方法に使用する必要はないことが理解されよう。むしろ、アレイは、核酸ライブラリを保存するために使用することができる。したがって、アレイは、その中にある核酸を保存する状態で保管することができる。例えば、アレイは、乾燥状態、凍結状態(例えば、液体窒素中)、または核酸を保護する溶液中に保管することができる。代替的または追加的に、アレイは、核酸ライブラリを複製するために使用することができる。例えば、アレイを使用して、アレイ上の1つまたは複数の部位から複製アンプリコンを作製することができる。
【0133】
ここで、
図1Aを参照すると、複数の二本鎖アンプリコン11のうちの1つのメンバーを有する増幅部位10の概略図が示されている。図示されている二本鎖アンプリコン11は、第1鎖15および第2鎖16を含む。捕捉核酸の2つの集団も示されている。第1集団は、第1鎖15の一端で13に付着しているか、または増幅部位10の表面の13’に結合しているかのいずれかで示されている。捕捉核酸の第2集団も、第2鎖16の一端で14に付着しているか、または増幅部位10の表面の14’に結合しているかのいずれかで示されている。
図1Aには、切断部位(捕捉核酸13上にXでマークされている)も示されている。一実施形態では、捕捉核酸13は、P5捕捉核酸を含むことができ、他の捕捉核酸14は、P7捕捉核酸を含むことができる。
【0134】
図1Bは、第1鎖に付着した捕捉核酸13の切断部位Xの切断を示している。捕捉核酸13の切断は、(i)短縮した鎖15’および(ii)短縮した捕捉核酸13’’をもたらす。短縮した鎖15’は、もはや増幅部位10に付着していない。短縮した捕捉核酸13’’は、3’リン酸で終結し得る。図示されている実施形態では、鎖16の3’末端に存在するヌクレオチドは、短縮した捕捉核酸13’’の3’末端に存在するヌクレオチドにアニーリングしたままである。付着していない捕捉核酸13’および14’は、エキソヌクレアーゼIなどのエキソヌクレアーゼの作用のために、もはや増幅部位10には存在しない。
【0135】
図1Cは、
図1Bのアンプリコンを変性条件にさらした結果を示している。増幅部位10に付着していない短縮した鎖15’は鎖16から引き離され、鎖16の3’末端のヌクレオチドは、短縮した捕捉核酸13’’の3’末端に存在するヌクレオチドにアニーリングしない。
【0136】
図1Dは、再アニーリングの結果を示している。付着していた鎖16は、短縮した捕捉核酸13’’に再アニーリングする。
【0137】
(例示的な実施形態)
(実施形態1)
以下を含む組成物:
ウラシルDNAグリコシラーゼと、
エンドヌクレアーゼと、
3’→5’一本鎖DNAエキソヌクレアーゼ活性を含むエキソヌクレアーゼ。
(実施形態2)
エキソヌクレアーゼが、エキソヌクレアーゼIである、実施形態1に記載の組成物。
(実施形態3)
エンドヌクレアーゼが、DNAグリコシラーゼリアーゼエンドヌクレアーゼVIIIである、実施形態1または2に記載の組成物。
(実施形態4)
ウラシル切断部位を含む二本鎖DNA基質をさらに含む、実施形態1~3のいずれか一項に記載の組成物。
(実施形態5)
脱塩基部位を含む二本鎖DNA基質をさらに含む、実施形態1~4のいずれか一項に記載の組成物。
(実施形態6)
二本鎖DNA基質が、一本鎖領域を含み、ウラシル切断部位および脱塩基部位が、二本鎖領域に存在する、実施形態1~5のいずれか一項に記載の組成物。
(実施形態7)
複数の増幅部位を含むアレイをさらに含み、各増幅部位が、増幅部位に付着した複数の二本鎖DNA基質を含む、実施形態1~6のいずれか一項に記載の組成物。
(実施形態8)
以下の工程を含む、配列決定反応のための核酸を調製する方法:
(a)複数の増幅部位を含むアレイを用意する工程であって、増幅部位が、
(i)増幅部位に付着した複数の捕捉核酸であって、
その第1集団が切断部位を含む捕捉核酸と、
(ii)複数のクローン二本鎖修飾標的核酸であって、
各二本鎖標的核酸の両鎖がそれらの5’末端で捕捉核酸に付着しており、
一方の鎖が切断部位を含む捕捉核酸に付着しており、
切断部位が各二本鎖分子の二本鎖領域に位置するクローン二本鎖修飾標的核酸とを含む、工程;
(b)切断部位に脱塩基部位を作り出すための少なくとも1つの酵素と、3’→5’一本鎖DNAエキソヌクレアーゼ活性を含むエキソヌクレアーゼとを含む組成物をアレイに接触させる工程であって、
切断が切断部位で起こり、
切断が、二本鎖標的核酸の一方の鎖を、増幅部位に付着している第1鎖と、増幅部位に付着していない第2鎖とに変え;
遊離3’末端を含む一本鎖捕捉核酸の長さがエキソヌクレアーゼによって短縮している、工程。
(実施形態9)
切断部位に脱塩基部位を作り出すための少なくとも1つの酵素が、ウラシルDNAグリコシラーゼとエンドヌクレアーゼとを含む、実施形態8に記載の方法。
(実施形態10)
エンドヌクレアーゼがDNAグリコシラーゼリアーゼエンドヌクレアーゼVIIIである、実施形態8または9に記載の方法。
(実施形態11)
切断部位に脱塩基部位を作り出すための少なくとも1つの酵素と、エキソヌクレアーゼとをアレイから除去する工程をさらに含む、実施形態8~10のいずれか一項に記載の方法。
(実施形態12)
切断された二本鎖標的核酸を、増幅部位に付着していない第2鎖を除去する条件にさらす工程をさらに含む、実施形態8~11のいずれか一項に記載の方法。
(実施形態13)
第2鎖を除去する条件が、変性剤を含み、変性剤が、捕捉核酸の第2集団に共有結合している標的核酸を含む固定化された一本鎖核酸をもたらし、捕捉核酸の第2集団が増幅部位に付着している、実施形態8~12のいずれか一項に記載の方法。
(実施形態14)
変性剤がホルムアミドを含む、実施形態8~14のいずれか一項に記載の方法。
(実施形態15)
固定化された一本鎖核酸を捕捉核酸の第1集団のメンバーに再アニーリングし、固定化された部分的に一本鎖の核酸を生成する工程をさらに含む、実施形態8~14のいずれか一項に記載の方法。
(実施形態16)
切断部位が、各二本鎖標的核酸の二本鎖領域の捕捉核酸領域に位置する、実施形態8~15のいずれか一項に記載の方法。
(実施形態17)
切断部位が、ウラシルを含み、ウラシルDNAグリコシラーゼにより脱塩基部位が生成され、脱塩基部位がエンドヌクレアーゼにより切断される、実施形態8~16のいずれか一項に記載の方法。
(実施形態18)
エキソヌクレアーゼが、エキソヌクレアーゼIである、実施形態8~17のいずれか一項に記載の方法。
(実施形態19)
実施形態13に記載の固定化された一本鎖核酸または実施形態15に記載の固定化された部分的に一本鎖の核酸の一本鎖領域にシーケンシングプライマーをハイブリダイズさせる工程をさらに含み、それにより配列決定反応のための一本鎖核酸を調製する、実施形態8~18のいずれか一項に記載の方法。
(実施形態20)
配列決定反応を行い、固定化された一本鎖核酸または固定化された部分的に一本鎖の核酸の少なくとも1つの領域の配列を決定する工程をさらに含む、実施形態8~19のいずれか一項に記載の方法。
(実施形態21)
配列決定反応が、合成による配列決定を含む、実施形態8~20のいずれか一項に記載の方法。
(実施形態22)
捕捉核酸を増幅プライマーとして使用し、複数の標的核酸を増幅することによりアレイが作製される、実施形態8~21のいずれか一項に記載の方法。
(実施形態23)
増幅が排除増幅を含む、実施形態8~22のいずれか一項に記載の方法。
【実施例】
【0138】
本発明は、以下の実施例によって例示される。特定の実施例、材料、量、および手順は、本明細書に記載の本発明の範囲および趣旨に従って広く解釈されることが理解されよう。
【0139】
(例1)
(一般的なアッセイ方法および条件)
特に断りのない限り、ここでは、本明細書に記載の実施例で使用する一般的なアッセイ条件を記載する。
【0140】
実験は、v2.5 HiSeqXフローセル(ILMN)をcBot(ILMN)で使用して行った。
図2については、クラスタを増幅することなくフローセルを使用し、P5およびP7表面プライマーを基質として使用して酵素活性を試験した。実験中、様々な酵素混合物をフローセルにポンプで送り込み、37℃で15分間インキュベートした。エキソヌクレアーゼIおよびUSER酵素は、いずれもNew England Biolabsから供給された。インキュベーション後、フローセルレーンをHT2洗浄緩衝液(Illumina)で洗浄し、表面プライマーの有無を、HT1ハイブリダイゼーション緩衝液(Illumina)中でのフルオロフォアTET標識P5’およびP7’オリゴのハイブリダイゼーションを介して決定した。蛍光シグナルを、Typhoonフラットベッドイメージャー(GE Healthcare Life Sciences)でスキャンすることにより検出した。
【0141】
図3については、クラスタの播種および増幅は、変性DNA鋳型(ヒトTruSeq Nanoライブラリ)をExAmp混合中で最終濃度300pMに混合し、これをフローセルにポンプで送り込み、37℃で1時間インキュベートすることによって達成した。次いで、フローセルの異なるレーンを、図表に詳述するように、酵素および処理の様々な組み合わせで処理した。「修復」とは、エキソヌクレアーゼ工程中にかじられる可能性のある鎖の末端を埋めるために通常行われる3サイクルのブリッジ増幅を指す。「USERExo」とは、USERとExoIとを合わせた混合物を指す。これらの工程の後、クラスタをシーケンシングプライマーとハイブリダイズさせ、標準的な方法および試薬(ILMN)を用いてHiSeqXでシーケンシングした。
【0142】
(例2)
(エキソヌクレアーゼ反応と直鎖化反応とを合わせることができる)
ゲノム配列決定に使用することができるクラスタを生成するための標準的な方法は、標的核酸をクラスタにハイブリダイズさせる工程、標的核酸を増幅させ、次いでクラスタをエキソヌクレアーゼIで処理して過剰な遊離表面プライマーを除去する工程を含む。別の工程では、次いで、二本鎖DNA(dsDNA)の特定の領域に単一ヌクレオチドギャップを生成させることにより固定化された鎖を直鎖化し、配列決定のための鋳型を生成する。本発明者らは、エキソヌクレアーゼと直鎖化工程とを合わせることができるかどうかを試験した。表面プライマーが付着した増幅部位を備えるフローセルのレーンを、エキソヌクレアーゼ1、dsDNAの特定領域に単一ヌクレオチドギャップを生成させる酵素(ウラシルDNAグリコシラーゼとDNAグリコシラーゼリアーゼエンドヌクレアーゼVIIIとの組み合わせ)、または両方の組み合わせで処理した。
【0143】
図2は、処理なし(レーン1および8)またはウラシルDNAグリコシラーゼおよびDNAグリコシラーゼリアーゼエンドヌクレアーゼVIIIでの処理(レーン2)が表面プライマーの損失をもたらさなかったのに対し、エキソヌクレアーゼIでの処理(レーン5)が実質的に全ての表面プライマーの損失をもたらしたことを示している。ウラシルDNAグリコシラーゼおよびDNAグリコシラーゼリアーゼエンドヌクレアーゼVIIIと、それらに続くエキソヌクレアーゼI(レーン3)での処理、ならびにエキソヌクレアーゼをウラシルDNAグリコシラーゼおよびDNAグリコシラーゼリアーゼエンドヌクレアーゼVIIIと合わせた混合物での処理(レーン4)は、実質的に全ての表面プライマーの損失をもたらした。これは、思いがけない、驚くべきことであったが、その理由は、ウラシルDNAグリコシラーゼとDNAグリコシラーゼリアーゼエンドヌクレアーゼVIIIとの組み合わせでdsDNAを処理すると3’リン酸が生じ、3’リン酸の存在はエキソヌクレアーゼIの活性を阻害することが知られているためである(Lehman and Nussbaum, 1964, J. Biol. Chem., 239: 2628-2636)。
【0144】
(例3)
(エキソヌクレアーゼ処理と直鎖化とを同時に行うと、シーケンシングに有用な鋳型が得られる)
DNAグリコシラーゼとエキソヌクレアーゼとの同時使用がシーケンシング指標に悪影響を及ぼしたかどうかを判断するために、DNAグリコシラーゼとエキソヌクレアーゼとの様々な組み合わせを使用して生成されたクラスタを含むフローセル上で、シーケンシング実行を行った。各実行の品質スコアを4連で決定し、
図3に示す。予想通り、P5プライマーの芝を用いた配列反応を含む標準レーン(エキソヌクレアーゼなし、修復なし)は、50半ばのQ30を示した(矢印、
図3を参照)。他の全てのレーンはほぼ同等であり、DNAグリコシラーゼとエキソヌクレアーゼとを単一工程で使用した反応は、約93%のQ30で最良のR2読み取りをもたらした。
【0145】
本明細書に引用した全ての特許、特許出願、および刊行物、ならびに電子的に利用可能な資料(例えば、GenBankおよびRefSeqにおけるヌクレオチド配列提出物、ならびにSwissProt、PIR、PRF、PDBにおけるアミノ酸配列提出物、ならびにGenBankおよびRefSeqにおけるアノテーションされたコード領域からの翻訳が含まれる)の完全な開示は、その全体が参照により組み込まれるものとする。刊行物中において参照されている補足資料(補足表、補足図、補足資料および方法、ならびに/または補足実験データなど)も同様に、その全体が参照により組み込まれるものとする。本出願の開示と、参照により本明細書に組み込まれる文書の開示(単数または複数)との間に矛盾が存在する場合には、本出願の開示が優先されるものとする。前述の発明を実施するための形態および実施例は、理解を明確にするためだけに与えられたものである。そこから不必要な制限は理解されない。本発明は、示され記載されている正確な詳細に限定されるものではなく、当業者にとって明らかな変更は、特許請求の範囲によって定義される本発明の内に含まれることになる。
【0146】
別段の記載がない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される成分の量、分子量などを表す全ての数値は、全ての場合において「約」という用語で修飾されているものと理解されたい。したがって、別段の指示がない限り、本明細書および特許請求の範囲に記載されている数値パラメータは、本発明による取得が試みられる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。少なくとも、均等論を特許請求の範囲に限定しようとするものではなく、各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効数字の数を踏まえて、通常の四捨五入法を適用して解釈されるべきである。
【0147】
本発明の広い範囲を記載する数値範囲およびパラメータは近似値であるものの、特定の実施例に示した数値は、可能な限り正確に報告されたものである。しかしながら、全ての数値は、それぞれの試験測定で見られる標準偏差から必然的に生じる範囲を本質的に含有する。
【0148】
全ての見出しは、読者の便宜のためのものであり、特段の記載がない限り、見出しに続く文章の意味を制限するために使用されるべきではない。