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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】暗騒音発生装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/06 20060101AFI20241010BHJP
   F24F 13/02 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
F24F13/06 E
F24F13/02 H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021002018
(22)【出願日】2021-01-08
(65)【公開番号】P2022107213
(43)【公開日】2022-07-21
【審査請求日】2023-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(73)【特許権者】
【識別番号】591029921
【氏名又は名称】フジモリ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】黒木 拓
(72)【発明者】
【氏名】大脇 雅直
(72)【発明者】
【氏名】中牟田 篤
(72)【発明者】
【氏名】西野 嘉一
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-113988(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/06
F24F 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部屋の天井、又は、床、あるいは、間仕切り壁に設けられて、天井裏空間側、又は、床下空間側、あるいは、壁内空間側から部屋に空気を供給するための給気孔と、当該給気孔の内側に空気が通過する際の抵抗となる抵抗装置とを備え、
給気孔は、一端開口が、天井を形成する天井板に形成された貫通孔、又は、床を形成する床板に形成された貫通孔、あるいは、間仕切り壁を形成する壁板に形成された貫通孔を介して部屋に連通するとともに、他端開口が、建物の外部から空気を取込むためのダクトに連通するように設けられた筒部品により形成され、
当該給気孔を形成する筒部品は、ダクトに接続される他端開口側の径寸法が、一端開口側の径寸法よりも小さい構成であって、円筒部により形成された一端開口側円筒部と、当該一端開口側円筒部の径よりも小さい径の円筒部により形成された他端開口側円筒部と、一端開口側円筒部の他端開口縁と他端開口側円筒部の一端開口縁との間を塞ぐ塞板とを備えた円筒状部品により構成され、
抵抗装置は、一端開口側円筒部の内側に設置されたものであって、当該一端開口側円筒部の内径寸法に対応した外径寸法に形成されて当該一端開口側円筒部の内側に設置された円筒体と、当該円筒体の一端開口側に設けられた円形抵抗板と、当該円筒体の他端開口側に設けられた十字形抵抗板とを備え、
十字形抵抗板が円筒状部品の一端開口側円筒部の他端開口側の内側に位置されて、円形抵抗板が円筒状部品の一端開口側円筒部の一端開口側の内側に位置され、
十字形抵抗板は、
直径寸法が円筒体の直径寸法と対応した寸法の十字形板の内側にスリットが形成された構成のスリット付き十字形板であって、
十字の交差部に位置される中央板部と、当該中央板部より四方に延長して円筒体の他端開口側に接続された4つの各板部とを備え、
スリットが、各板部の延長方向に沿った各板部の中央部に形成されたことを特徴とする暗騒音発生装置。
【請求項2】
円形抵抗板は、
直径寸法が円筒体の直径寸法と対応した寸法の円形板を基にして形成されて、当該円形板の中心を基準として円形板の外周において互いに90°離れた4箇所の部分が円筒体の一端開口側に接続され、当該円形板の外周縁が外周に沿って除去された円形外周縁に形成された円形状板とされ、かつ、円形板の中心を基準として互いに90°離れた4箇所の部分を、接続部と連続して円形板の中心に向けて延長する4つの各板部として残し、互いに周方向に隣り合う板部と板部との間の円弧状板部に、円形板の中心を中心とした円弧状のスリットが形成されたとともに、円形外周縁と円筒体の内周面との間の空間により最外周スリットが形成されたことを特徴とする請求項に記載の暗騒音発生装置。
【請求項3】
円形抵抗板は、
直径寸法が円筒体の直径寸法と対応した寸法の円形板を基にして形成されて、円形板の中央に円形孔が形成され、当該円形板の中心を基準として円形板の外周において互いに90°離れた4箇所の部分が円筒体の一端開口側に接続され、当該円形板の外周縁が外周に沿って除去された円形外周縁に形成された円形状板とされ、かつ、円形板の中心を基準として互いに90°離れた4箇所の部分を、接続部と連続して円形板の中心に向けて延長する4つの各板部として残し、互いに周方向に隣り合う板部と板部との間の円弧状板部に、円形板の中心を中心とした円弧状のスリットが形成されたとともに、円形外周縁と円筒体の内周面との間の空間により最外周スリットが形成されたことを特徴とする請求項に記載の暗騒音発生装置。
【請求項4】
抵抗装置は、
円形抵抗板の最外周スリットのスリット幅が変更可能に構成されたことを特徴とする請求項又は請求項に記載の暗騒音発生装置。
【請求項5】
抵抗装置は、
十字形抵抗板の4つの板部と円形抵抗板の4つの板部とが周方向にずれて対向するように設けられた構成、
又は、
十字形抵抗板の4つの板部と円形抵抗板の4つの板部とが正対するように設けられた構成であることを特徴とする請求項乃至請求項のいずれか一項に記載の暗騒音発生装置。
【請求項6】
抵抗装置は、
十字形抵抗板と円形抵抗板との間の間隔が変更可能に構成されたことを特徴とする請求項乃至請求項のいずれか一項に記載の暗騒音発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室外からの生活音に対する暗騒音を室内に発生させる暗騒音発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近のマンション等の共同住宅においては、高断熱高気密化に伴い、建物外部から建物内部に入射する音のレベルが小さくなっており、住宅地では室内が夜間にA特性音圧レベルが20dB台前半になることもある。
このように、建物外部から建物内部に入射する音のレベルが小さい環境の場合、室内において、室外からの生活音が聞こえてきて気になるという問題が生じている。尚、「室外からの生活音」とは、マンションにおける上層階や隣りの他住居からの生活音、一戸建ての建物における隣接する住宅からの生活音等のことを言う。
そこで、建物の外壁に形成された給気孔の内側に抵抗装置を設け、給気孔を介して室内に流入する音の大きさを大きくするようにした暗騒音(対象とする騒音の周辺環境に発生している対象騒音以外の総体的騒音)を発生させることにより、室外からの生活音が聞こえ難い室内環境を実現できるようにした方法が知られている(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-136091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した方法は、建物の外壁に形成された給気孔の内側に抵抗装置を設けて暗騒音を発生させる方法であるので、外壁に面して給気孔がない部屋には採用できないという課題があった。
本発明は、外壁に面して給気孔がない部屋であっても室外からの生活音が聞こえ難い室内環境を実現できるようにした暗騒音発生装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る暗騒音発生装置は、部屋の天井、又は、床、あるいは、間仕切り壁に設けられて、天井裏空間側、又は、床下空間側、あるいは、壁内空間側から部屋に空気を供給するための給気孔と、当該給気孔の内側に空気が通過する際の抵抗となる抵抗装置とを備え、給気孔は、一端開口が、天井を形成する天井板に形成された貫通孔、又は、床を形成する床板に形成された貫通孔、あるいは、間仕切り壁を形成する壁板に形成された貫通孔を介して部屋に連通するとともに、他端開口が、建物の外部から空気を取込むためのダクトに連通するように設けられた筒部品により形成され、当該給気孔を形成する筒部品は、ダクトに接続される他端開口側の径寸法が、一端開口側の径寸法よりも小さい構成であって、円筒部により形成された一端開口側円筒部と、当該一端開口側円筒部の径よりも小さい径の円筒部により形成された他端開口側円筒部と、一端開口側円筒部の他端開口縁と他端開口側円筒部の一端開口縁との間を塞ぐ塞板とを備えた円筒状部品により構成され、抵抗装置は、一端開口側円筒部の内側に設置されたものであって、当該一端開口側円筒部の内径寸法に対応した外径寸法に形成されて当該一端開口側円筒部の内側に設置された円筒体と、当該円筒体の一端開口側に設けられた円形抵抗板と、当該円筒体の他端開口側に設けられた十字形抵抗板とを備え、十字形抵抗板が円筒状部品の一端開口側円筒部の他端開口側の内側に位置されて、円形抵抗板が円筒状部品の一端開口側円筒部の一端開口側の内側に位置され、十字形抵抗板は、直径寸法が円筒体の直径寸法と対応した寸法の十字形板の内側にスリットが形成された構成のスリット付き十字形板であって、十字の交差部に位置される中央板部と、当該中央板部より四方に延長して円筒体の他端開口側に接続された4つの各板部とを備え、スリットが、各板部の延長方向に沿った各板部の中央部に形成されたことを特徴とする
該暗騒音発生装置によれば、ダクトを介して給気孔に流入した風が抵抗装置を経由することにより、給気孔を介して空気が部屋に流入する際の音の大きさが大きくなり、外壁に面して給気孔がない部屋であっても室外からの生活音が聞こえ難い室内環境を実現できるようなる。また、給気孔を形成する筒部品は、ダクトに接続される他端開口側の径寸法が、一端開口側の径寸法よりも小さいものを用いたので、建物の外部から空気を取込むためのダクトとして、筒部品の他端開口側の径寸法に対応した径寸法の小さいダクトを使用できるようになるため、ダクトを通す、天井裏空間、又は、床下空間、あるいは、壁内空間を、極力狭く設計できるようになり、室内空間を広く設計できるようになる。また、径寸法の小さいダクトを経由してきた空気(風)の速度を筒部品の一端開口側で落として部屋に送ることができるようになる。
即ち、室内空間を広く設計できる、外壁に面して給気孔がない部屋であっても室外からの生活音が聞こえ難い室内環境を実現できる、径寸法の小さいダクトを経由してきた空気(風)の速度を落として部屋に送ることができる、という効果が得られる。
また、当該暗騒音発生装置によれば、ダクトを介して給気孔に流入した風が十字形抵抗板及び円形抵抗板を経由することにより、給気孔を形成する円筒状部品を介して空気が部屋に流入する際の音の大きさが大きくなり、外壁に面して給気孔がない部屋であっても室外からの生活音が聞こえ難い室内環境を実現できるようなる。
また、当該暗騒音発生装置によれば、ダクトを介して円筒状部品に流入した風が十字形抵抗板及び円形抵抗板を経由する際に、風が十字形抵抗板の中央板部に衝突することにより、給気孔を形成する円筒状部品を介して空気が部屋に流入する際の音の大きさが大きくなり、外壁に面して給気孔がない部屋であっても室外からの生活音が聞こえ難い室内環境を実現できるようなる。
また、円形抵抗板は、直径寸法が円筒体の直径寸法と対応した寸法の円形板を基にして形成されて、当該円形板の中心を基準として円形板の外周において互いに90°離れた4箇所の部分が円筒体の一端開口側に接続され、当該円形板の外周縁が外周に沿って除去された円形外周縁に形成された円形状板とされ、かつ、円形板の中心を基準として互いに90°離れた4箇所の部分を、接続部と連続して円形板の中心に向けて延長する4つの各板部として残し、互いに周方向に隣り合う板部と板部との間の円弧状板部に、円形板の中心を中心とした円弧状のスリットが形成されたとともに、円形外周縁と円筒体の内周面との間の空間により最外周スリットが形成されたことを特徴とする。
当該暗騒音発生装置によれば、ダクトを介して円筒状部品に流入した風が十字形抵抗板及び円形抵抗板を経由する際に、空気(風)が十字形抵抗板の中央板部に衝突した後、十字形抵抗板の各板部間及びスリットを通過して、円形抵抗板の中央部の壁部に衝突したり、円形抵抗板のスリットを通過することにより、給気孔を形成する円筒状部品を介して空気が部屋に流入する際の音の大きさが大きくなり、外壁に面して給気孔がない部屋であっても室外からの生活音が聞こえ難い室内環境を実現できるようなる。
また、円形抵抗板は、直径寸法が円筒体の直径寸法と対応した寸法の円形板を基にして形成されて、円形板の中央に円形孔が形成され、当該円形板の中心を基準として円形板の外周において互いに90°離れた4箇所の部分が円筒体の一端開口側に接続され、当該円形板の外周縁が外周に沿って除去された円形外周縁に形成された円形状板とされ、かつ、円形板の中心を基準として互いに90°離れた4箇所の部分を、接続部と連続して円形板の中心に向けて延長する4つの各板部として残し、互いに周方向に隣り合う板部と板部との間の円弧状板部に、円形板の中心を中心とした円弧状のスリットが形成されたとともに、円形外周縁と円筒体の内周面との間の空間により最外周スリットが形成されたことを特徴とする。
当該暗騒音発生装置によれば、ダクトを介して円筒状部品に流入した風が十字形抵抗板及び円形抵抗板を経由する際に、空気(風)が十字形抵抗板の中央板部に衝突した後、十字形抵抗板の各板部間及びスリットを通過して、さらに円形抵抗板の円形孔及びスリットを通過することにより、給気孔を形成する円筒状部品を介して空気が部屋に流入する際の音の大きさが大きくなり、外壁に面して給気孔がない部屋であっても室外からの生活音が聞こえ難い室内環境を実現できるようなる。
また、抵抗装置は、円形抵抗板の最外周スリットのスリット幅が変更可能に構成されたことを特徴とする。
当該暗騒音発生装置によれば、給気孔を形成する円筒状部品を介して空気が部屋に流入する際の音の大きさを調整できるようになる。
また、抵抗装置は、十字形抵抗板の4つの板部と円形抵抗板の4つの板部とが周方向にずれて対向するように設けられた構成、又は、十字形抵抗板の4つの板部と円形抵抗板の4つの板部とが正対するように設けられた構成であることを特徴とする。
当該暗騒音発生装置によれば、給気孔を形成する円筒状部品を介して空気が部屋に流入する際の音の大きさをさらに大きくできるようになる。
また、抵抗装置は、十字形抵抗板と円形抵抗板との間の間隔が変更可能に構成されたことを特徴とする。
当該暗騒音発生装置によれば、給気孔を形成する円筒状部品を介して空気が部屋に流入する際の音の大きさを調整できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】暗騒音発生装置を採用した建物の例を示す断面図。
図2】暗騒音発生装置を採用した建物の例を示す平面図。
図3】暗騒音発生装置を示す断面図。
図4】抵抗装置を示す斜視図(軸クロスタイプ)。
図5】抵抗装置を示す正面図、及び、背面図(軸クロスタイプ)。
図6】抵抗装置を示す斜視図、正面図、及び、背面図(軸正対タイプ)。
図7】抵抗装置を示す斜視図(軸クロスタイプ及び軸正対タイプ)。
図8】実験1の実験結果を示す図。
図9】実験2の実験結果を示す図。
図10】実験3の実験結果を示す図。
図11】実験4の実験結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
実施形態1の暗騒音発生装置は、図1に示すように、建物10の外部から建物10内に取り込んだ空気を天井裏空間11Sを介して建物10内の部屋12に給気するように構成された建物、例えば、24時間換気システムとして、建物10の外部から外気を建物10の内部に強制給気するとともに建物10の内部から建物10の外部に強制排気を行う第1種換気方式を採用している建物10において、部屋12の天井板11に設けられた給気孔1の内側に空気が通過する際の抵抗となる抵抗装置2を設けることにより、当該給気孔1を介して空気が部屋12に流入する際の音の大きさを大きくして、建物10の外壁9に面して給気孔がない部屋12であっても室外からの生活音が聞こえ難い室内環境を実現できるようにした暗騒音発生装置である。
尚、給気孔1の内側に空気が通過する際の抵抗となる抵抗装置2を設けない場合に当該給気孔1を介して空気が部屋12に流入する際に発生する音も暗騒音であり、本願発明では、厳密には、当該暗騒音に、抵抗装置2を通過する際に発生する音(無意味音)を付加していることになるが、本明細書においては、当該給気孔1の内側に設置された抵抗装置2を空気が通過する際に発生して部屋12内で聞こえる音を暗騒音と定義して説明するものとする。
【0008】
図1図2に示すように、24時間換気システムの第1種換気方式を採用する共同住宅(マンション)などの建物10においては、建物10の外部から建物10の内部に強制的に取り込んだ空気を建物10の内部の各部屋12,12…に分配し、かつ、特定の場所から建物10の外部に空気を強制排気するように構成されている。
そこで、実施形態1の暗騒音発生装置では、建物10の外部から建物10の内部に取り込んだ空気を建物10内の複数の各部屋12,12…に分配するために複数の各部屋12,12…の天井板11,11…に給気孔1,1…を設け、各給気孔1,1…の内側に抵抗装置2,2…を設けるようにした。
例えば、建物10は、図1図2に示すように、建物10の外部から外気を建物10の内部に取り込む給気手段13と、熱交換システム14と、特定の部屋(例えば寝室)の天井板11に設けられた内気取込孔17と、各部屋12,12…の各天井板11,11…に設けられた各給気孔1,1…と、各給気孔1,1…の内側に設けられた各抵抗装置2,2…と、建物10の内部の空気を建物10の外部に排気する排気手段15とを備えている。
【0009】
給気手段13は、例えば図示しないが、建物10の外壁9に形成された貫通孔と、当該貫通孔内に装着されて外気取込孔を形成する円筒体と、当該円筒体における熱交換システム14に近い他端開口側に設けられた給気ファン等の強制給気手段とを備えて、外気を天井裏空間11Sに取込む手段である。
【0010】
図2に示すように、熱交換システム14は、給気手段13により建物10の外部から取込まれた外気と特定の部屋(例えば寝室)から取込まれた内気とで熱交換処理を行った後、この熱交換処理後の空気を各部屋(各室内)12,12…に分配供給する装置である。
熱交換システム14としては、熱交換機能の他、空気洗浄機能を備えたものを用いてもよい。
尚、図2の建物10の平面図(間取図)において、Eは玄関、Cdは廊下、BRは寝室、UBはトイレ付浴室、Wは洗面室、Kは台所、WRは洋室、Cはクローゼット、JRは和室、LDはリビングダイニングルームである。
【0011】
図3に示すように、給気孔1は、一端開口1aが、天井を形成する天井板11に形成された貫通孔11aを介して部屋12に連通するとともに、他端開口1bが、建物10の外部から空気を取込むためのダクト16Cに連通するように設けられた筒部品としての円筒状部品1Aにより形成される。
【0012】
円筒状部品1Aは、円筒部により形成された一端開口側円筒部1Bと、当該一端開口側円筒部1Bの径よりも小さい径の円筒部により形成された他端開口側円筒部1Cと、一端開口側円筒部1Bの他端開口縁と他端開口側円筒部1Cの一端開口縁との間を塞ぐ円環板状の塞板1Dとを備えて構成される。
即ち、円筒状部品1Aは、一端開口側円筒部1Bと当該一端開口側円筒部1Bよりも小径の他端開口側円筒部1Cとを備えた、2つの異なる径の円筒部が組み合わされた段差付きの円筒部品である。言い換えれば、中心軸に沿った断面形状が凸状の段差付きの円筒部品である。
【0013】
具体的には、給気孔1は、貫通孔11aを貫通するように取付けられた円筒状部品1Aの内側貫通孔1Hにより形成される。
そして、当該内側貫通孔1Hは、一端開口側円筒部1Bの内面である内側貫通孔1HBと、他端開口側筒部1Cの内面である内側貫通孔1HCと、塞板1Dの内面1とで区画されて構成された段差付き内側貫通孔により形成される。
【0014】
尚、円筒状部品1Aにおける一端開口側円筒部1Bの一端開口(下端開口)1aの開口縁側には取付フランジ1Fが設けられている。当該円筒状部品1Aを他端開口側筒部1Cの他端開口(上端開口)1b側から貫通孔11aに貫通させて取付フランジ1Fの上面と天井板11の下面とを近接させた状態で、例えばビスやねじ等を取付フランジ1F及び天井板11に貫通させて図外の天井下地に締結することにより、当該円筒状部品1Aが天井板11に取付けられ、天井板11に部屋12と天井裏空間11Sとを連通させる給気孔1が形成されることになる。
また、円筒状部品1Aの一端開口1a側には、当該円筒状部品1Aの一端開口(給気孔1の部屋側開口)1aを開閉する例えばルーバー開閉部等の開閉体1Rを備えた蓋1Eが着脱自在に取付けられることが好ましい。
【0015】
排気手段15は、例えば図示しないが、特定の部屋12(例えば浴室や洗面室)の天井等に形成された貫通孔と、当該貫通孔内に装着されて内気排出孔を形成する円筒体と、当該筒体の天井裏空間等に位置される開口側に設けられた排気ファン等の強制排気手段とを備えて、建物内の空気を外部に排出するように構成された手段である。
【0016】
図1図2に示すように、給気手段13の外気送出口(上述した円筒体の他端開口)13aと熱交換システム14の外気取込口14aとがダクト16Aにより繋がれている。
また、図2に示すように、熱交換システム14の内気取込口14bと特定の部屋12(例えば寝室)の天井板11に設けられた内気取込孔17の天井裏側開口とがダクト16Bにより繋がれている。尚、特定の部屋は1つ以上であればよく、内気取込孔17も1つ以上であればよい。
そして、図1図2に示すように、熱交換システム14の処理済み空気送出口14cと各部屋12,12…の各天井板11,11…に設けられた各給気孔1,1…の各天井裏側開口(上述した円筒状部品1Aにおける一端開口側円筒部1Bの他端開口(上端開口)1b)とがダクト16C,16C…により繋がれている。
【0017】
尚、熱交換システム14の外気取込口14a及び内気取込口14bの近傍には給気ファンが設けられ、かつ、熱交換システム14の処理済み空気送出口14cの近傍には排気ファンが設けられている。
【0018】
従って、給気手段13により建物10の外部から建物10の内部に取込まれた外気が天井裏空間11Sに配置されたダクト16A、外気取込口14aを経由して熱交換システム14に取り込まれる。また、特定の部屋12(例えば寝室)の内気が天井板11に設けられた各内気取込孔17、天井裏空間11Sに配置されたダクト16B、内気取込口14bを経由して熱交換システム14に取り込まれる。そして、熱交換システム14により、外気と内気との熱交換処理が行われ、この熱交換処理後の空気が、処理済み空気送出口14c、ダクト16C,16C…、各部屋12,12…の各天井板11,11…に設けられた各給気孔1,1…、各給気孔1,1…内に設けられた抵抗装置2,2…を経由して各部屋12,12…に分配されて供給されることになる。
【0019】
また、24時間換気システムの第1種換気方式では、給気手段13により建物10の外部から建物10の内部に取込む空気量と、排気手段15により建物10の内部から建物10の外部に排気される空気量が等しくなるように調整される。
【0020】
実施形態1に係る暗騒音発生装置は、図3に示すように、部屋12の天井に設けられて天井裏空間11S側から部屋12に空気を供給するための給気孔1を形成する円筒状部品1Aと、当該円筒状部品1Aの内側に空気が通過する際の抵抗となる抵抗装置2とを備えた構成である。
【0021】
図3に示すように、抵抗装置2は、給気孔を形成する円筒状部品1Aにおける一端開口側円筒部1Bの内側貫通孔1HBの内径寸法に対応した外径寸法に形成されて当該一端開口側円筒部1Bの内側に設置された円筒体21と、当該円筒体21の他端開口21a側に設けられた十字形抵抗板22と、当該円筒体21の一端開口21b側に設けられた円形抵抗板23とを備える。
図4図3に示すように、円形抵抗板23は、円筒体21の一端開口21b側に取付けられて円筒状部品1A内に設置された場合に円筒状部品1Aのフランジ1Fが付いた一端開口1a側、即ち、部屋12側に位置される抵抗板である。
また、十字形抵抗板22は、円筒体21の他端開口21a側に取付けられて円筒状部品1A内に設置された場合に円筒状部品1Aのフランジ1Fがない他端開口1b側、即ち、ダクト16C側に位置される抵抗板である。
即ち、図3に示すように、抵抗装置2は、円筒体21の外周面と一端開口側円筒部1Bの内側貫通孔1HBの内周面とが近接状態に対向し、かつ、十字形抵抗板22が一端開口側円筒部1Bの他端開口側の内側に位置されて、円形抵抗板23が一端開口側円筒部1Bの一端開口1a側の内側に位置されるように、一端開口側円筒部1Bの内側に設置され、例えば溶接、接着、ねじ止め、係合手段等の取付手段により、一端開口側円筒部1Bの内側に固定状態に取付けられる。
【0022】
十字形抵抗板22は、図4図5(a)に示すように、例えば、所定板厚(例えば、板厚0.1mm~2mm程度)でかつ直径寸法が円筒体21の内周面又は外周面の直径寸法に対応した寸法の十字形板の内側にスリット(板を貫通する貫通孔)24が形成された構成のスリット付き十字形板である。
即ち、十字形抵抗板22は、十字の交差部に位置される正四角形状の中央板部25と、当該正四角形状の中央板部25の四角の各辺より四方に延長して円筒体21の他端開口21a側に接続された4つの各板部26,26…とを備える。
スリット24は、各板部26,26…の延長方向に沿った各板部26,26…の中央部に形成される。
尚、十字形抵抗板22の4つの各板部26,26…の延長端側が、円筒体21の他端開口21a側の内面、又は、円筒体21の他端開口21aの開口縁に、溶接、接着、ねじ止め、係合手段等の連結手段により連結されることにより、円筒体21の他端開口21a側に十字形抵抗板22設けられる。
【0023】
円形抵抗板23は、図4図5(b)に示すように、例えば、所定板厚(例えば、板厚0.1mm~2mm程度)でかつ直径寸法が円筒体21の内周面又は外周面の直径寸法と対応した寸法の円形板を基にして形成される。
即ち、円形抵抗板23は、上述した円形板の中心を基準として当該円形板の外周において互いに90°離れた4箇所の部分が接続部31として残されて円筒体21の一端開口21b側に接続され、当該円形板の外周縁が外周に沿って数mm程度除去された円形外周縁32に形成された円形状板であり、当該円形状板の内側に元の円形板の中心を中心とする円形孔33が形成されて、さらに、当該円形孔33の外周囲に複数の円弧状のスリット34,35,38が形成された構成の同心円弧状スリット付き円形板である。
【0024】
さらに、元の円形板の中心(円形孔33の中心)を基準として互いに90°離れた4箇所の部分を、接続部31と連続して元の円形板の中心に向けて延長する4つの各板部36,36…として残し、互いに周方向に隣り合う板部36と板部36との間の円弧状板部37,37…に、元の円形板の中心を中心とした円弧状のスリット34,35,38が形成された構成である。
円形抵抗板23の最も外周側に形成される最外周スリット38は、円形外周縁32と円筒体21の内周面との間の間隔がスリット幅となるスリットである。即ち、円形外周縁32と円筒体21の内周面との間の空間により最外周スリット38が形成されている。
4つの各板部36,36…にそれぞれ形成されたスリット34,34…は、円形孔33の中心を中心とした所定半径の円周に沿って形成された円弧状のスリットである。
また、4つの各板部36,36…にそれぞれ形成されたスリット35,35…は、円形孔33の中心を中心とした上述の所定半径よりも大きい半径の円周に沿って形成された円弧状のスリットである。
【0025】
そして、円形抵抗板23の4つの各接続部31,31…が、円筒体21の一端開口21b側の内面、又は、円筒体21の一端開口21bの開口縁に、例えば、溶接、接着、ねじ止め、係合手段等の連結手段により連結されることにより、円筒体21の一端開口21b側に円形抵抗板23が設けられて、円筒体21の内周面と円形抵抗板23の円形外周縁32との間に、円弧状の最外周スリット38,38…が形成される。
即ち、円形抵抗板23は、円形孔33の中心に近い方から順に、円弧状のスリット34,35,38を形成する構成、つまり、複数の同心の円弧状スリット34,35,38を備えたスリット付き円形板である。
【0026】
抵抗装置2は、図4図5に示すように、十字形抵抗板22の各板部26,26…と円形抵抗板23の各板部36,36…とが周方向にずれて対向するように設けられた構成の抵抗装置2(以下、軸クロスタイプという)であってもよいし、あるいは、図6に示すように、十字形抵抗板22の各板部26,26…と円形抵抗板23の各板部36,36…とが周方向にずれていない構成、即ち、各板部26,26…と各板部36,36…とが正対するように設けられた構成の抵抗装置2A(以下、軸正対タイプという)であってもよい。
【0027】
そして、図3に示すように、一端開口側円筒部1Bの内側に、抵抗装置2、又は、抵抗装置2Aが取付けられた円筒状部品1Aを製作する。次に、円形抵抗板23が部屋12に近い側に位置され、十字形抵抗板22が部屋12から遠い側、即ち、天井裏空間11S側(ダクト側)に位置されるように、円筒状部品1Aを上述したように天井板11に取付ける。そして、天井裏空間11Sにおいて、円筒状部品1Aの他端開口側円筒部1Cの他端開口(上端開口)1bとダクト16Cとを繋ぐことによって、部屋12の天井に暗騒音発生装置が設置されることになる。
【0028】
実施形態1の暗騒音発生装置は、給気孔1を形成する円筒状部品1Aが、一端開口側円筒部1Bと、一端開口側円筒部1Bの径よりも小さい径の円筒部により形成された他端開口側筒部1Cとを備えて構成され、抵抗装置2、又は、抵抗装置2Aは、円筒状部品1Aの一端開口側円筒部1Bの内径寸法に対応した外径寸法に形成されて当該一端開口側円筒部1Bの内側に設置された円筒体21と、当該円筒体21の他端開口側に設けられた十字形抵抗板22と、当該円筒体21の一端開口側に設けられた円形抵抗板23とを備え、十字形抵抗板22が円筒状部品1Aの一端開口側円筒部1Bの他端開口1a側の内側に位置されて、円形抵抗板23が円筒状部品1Aの一端開口側円筒部1Bの一端開口側の内側に位置された構成とした。
当該暗騒音発生装置によれば、一端開口側円筒部1Bと、一端開口側円筒部1Bの径よりも小さい径の円筒部により形成された他端開口側筒部1Cとを備えた構成の円筒状部品1Aを用いたので、建物の外部から空気を取込むためのダクトとして、他端開口側筒部1Cの径寸法に対応した径寸法の小さいダクトを使用できるようになり、図1に示すように、比較的内径寸法の小さいダクト16Cを天井裏空間11Sに配管できるようになるため、天井裏空間11Sの高さ寸法Sが極力低くなるように設計できるようになり、部屋12の室内空間を広く設計できるようになる。
また、径寸法の小さいダクト16C,径寸法の小さい円筒状部品1Aの他端開口側筒部1Cを経由してきた空気(風)の速度を円筒状部品1Aの一端開口側円筒部1Bで落として部屋12に送ることができるようになる。
また、当該暗騒音発生装置によれば、ダクト16Cを介して円筒状部品1Aに流入した空気が十字形抵抗板22及び円形抵抗板23を経由することにより給気孔1を形成する円筒状部品1Aを介して空気が部屋12に流入する際の音の大きさが大きくなり、外壁9に面して給気孔1がない部屋12であっても室外からの生活音が聞こえ難い室内環境を実現できるようになる。
【0029】
また、実施形態1の暗騒音発生装置によれば、熱交換システム14から、空気が、ダクト16C,16C…、各部屋12,12…の各天井板11,11…に設けられた各給気孔1,1…を介して各部屋12,12…に分配されて供給される場合において、空気が、各給気孔1,1…内に設けられた抵抗装置2又は抵抗装置2Aを通過する際に抵抗等によって音が発生する。即ち、給気孔1を形成する円筒状部品1A、抵抗装置2又は抵抗装置2Aを介して空気が部屋12に流入する際の音の大きさを大きくできる。
従って、建物10の外壁9に面して給気孔1がない部屋12であっても室外からの生活音が聞こえ難い室内環境を実現できるようになる。また、複数の部屋12,12…毎に、室外からの生活音が聞こえ難い室内環境を実現できる。
また、建物の換気方式を、第1種換気方式としたことにより、換気をスムーズにできるとともに、部屋12において、室外からの生活音が聞こえ難い室内環境を実現できる。
【0030】
即ち、まず、熱交換システム14からの空気が、径の小さいダクト16C及び円筒状部品1Aの他端開口側筒部1C内を速度が上がった状態で通過して十字形抵抗板22の中央板部25に衝突して音が発生するので、給気孔1を形成する円筒状部品1Aを介して空気が部屋12に流入する際の音の大きさが大きくなる。
また、空気が十字形抵抗板22の中央板部25に衝突した後、十字形抵抗板22の各板部26,26間及びスリット24を通過して、さらに、円形抵抗板23の円形孔33及び円弧状のスリット34,35,38を通過することにより、給気孔1を形成する円筒状部品1Aを介して空気が部屋12に流入する際の音の大きさが大きくなる。
【0031】
実施形態2
抵抗装置2(軸クロスタイプ)又は抵抗装置2A(軸正対タイプ)の円形抵抗板23は、図7に示すように、中央の円形孔33が形成されていない構成であってもよい。換言すれば、円形抵抗板23は、中央部分の円形孔33を備えずに、中央部分が円形孔33のない壁部分39となっており、貫通孔としては、上述したスリット34,35,38のみを備えた構成であってもよい。
即ち、実施形態2における、図7(a),(b)に示すように、抵抗装置2(軸クロスタイプ)、又は、抵抗装置2A(軸正対タイプ)の円形抵抗板23は、直径寸法が円筒体21の直径寸法と対応した寸法の円形板を基にして形成されて、当該円形板の中心を基準として円形板の外周において互いに90°離れた4箇所の部分が接続部31として残されて円筒体21の一端開口21b側に接続され、当該円形板の外周縁が外周に沿って除去された円形外周縁に形成された円形状板とされる。また、円形板の中心を基準として互いに90°離れた4箇所の部分を、接続部31と連続して円形板の中心に向けて延長する4つの各板部36として残し、互いに周方向に隣り合う板部36と板部36との間の円弧状板部に、円形板の中心を中心とした円弧状のスリット34,35が形成されたとともに、円形外周縁と円筒体21の内周面との間の空間により最外周スリット38が形成された構成である。
尚、図7(a)は、円形抵抗板23の中央部分が円形孔33の形成されていない壁部分39に形成されて貫通孔としてはスリット34,35,38のみを備えた軸クロスタイプの抵抗装置2の斜視図を示し、図7(b)は、円形抵抗板23の中央部分が円形孔33の形成されていない壁部分39に形成されて貫通孔としてはスリット34,35,38のみを備えた軸正対タイプの抵抗装置2Aの斜視図を示す。
【0032】
実施形態2の暗騒音発生装置によれば、給気孔1を形成する円筒状部品1Aに流入した空気が十字形抵抗板22及び円形抵抗板23を経由する際に、空気が十字形抵抗板22の中央板部25に衝突した後、十字形抵抗板22の各板部26,26間及びスリット24を通過して、円形抵抗板23の中央部の壁部分39に衝突したり、円形抵抗板23のスリット34,35,38を通過することにより、給気孔1を形成する円筒状部品1Aを介して空気が部屋12に流入する際の音の大きさが大きくなり、外壁9に面して給気孔1がない部屋12であっても室外からの生活音が聞こえ難い室内環境を実現できるようなる。
【0033】
尚、本発明による暗騒音発生装置の効果を確認するため、以下のような実験を行った。
【0034】
・実験方法
無響室内に天井を模擬した天井模型を設置し、天井模型に円筒状部品1Aを貫通させて給気孔1を形成するとともに、給気孔1を形成する円筒状部品1Aの一端開口側円筒部1Bの内側貫通孔1HBの内側に、抵抗装置(抵抗装置2(軸クロスタイプ)又は抵抗装置2A(軸正対タイプ))を設置した。即ち、一端開口側円筒部1Bの一端開口側に円形抵抗板23が位置して一端開口側円筒部1Bの他端開口側に十字形抵抗板22が位置するように、一端開口側円筒部1Bの内側に抵抗装置を設置して、当該抵抗装置が設置された円筒状部品1Aの他端開口側から一端開口側に向けて空気を通過させる実験装置を作製し、抵抗装置の試験体の違いによる効果の違いを検証した。
尚、実験では、天井模型の裏面において円筒状部品1Aの他端開口側を囲む密閉ボックスを設け、この密閉ボックスと送風ファンとを約20mのダクトで繋ぐとともに、ダクトの途中に消音ボックスを設置した構成として、送風ファンから発生する音が測定されないように、送風ファンから密閉ボックス内側の抵抗装置に送風するようにした。
1/3オクターブバンド音圧レベル及びA特性音圧レベルの測定では、マイクロフォンのヘッドケースの中心位置を、円筒状部品1Aの一端開口の中心位置から1m離れた位置に固定した。尚、マイクロフォンのヘッドケースの中心位置及び円筒状部品1Aの一端開口の中心位置は、無響室の床から1.4mの高さに設定した。
そして、送風ファンを駆動して風が抵抗装置を通過する際に発生する音の音圧レベルを測定した。
尚、稼働音は定常的な音であるため、20秒間の等価音圧レベルを求めた。
換気量は、風量計を用いて測定した。
【0035】
・実験1
各試験体の違いにより、風量とA特性音圧レベルとの関係がどのようになるかを検証する実験。
・実験2
各試験体の違いにより、1/3オクターブバンド音圧レベル及びA特性音圧レベルがどのようになるかを検証する実験。
・実験3
円形抵抗板23の最外周スリット38のスリット幅を変化させることによって、風量とA特性音圧レベルとの関係がどのようになるかを検証する実験。
・実験4
十字形抵抗板22と円形抵抗板23との間の間隔を変化させることによって、A特性音圧レベルがどのようになるかを検証する実験。
【0036】
実験1乃至実験4において、円筒状部品1A、及び、抵抗装置は、以下の諸元のものを使用した。
(1)円筒状部品1A
・全長 130mm。
・一端開口側円筒部1Bの内径 99.6mm、一端開口側円筒部1Bの筒部全長 70mm。
・他端開口側筒部1Cの内径 48.8mm、他端開口側筒部1Cの筒部全長 60mm。
・板厚 0.6mm。
(2)抵抗装置2、抵抗装置2A
・円筒体21の筒長 50mm(実験4を除く)、外径 90mm。
・十字形抵抗板22の中央板部25の正四角形の一辺の長さ寸法 15mm、板部26の板幅 15mm、スリット24のスリット幅 5mm、スリット24の長さ 30mm。
・円形抵抗板23の最内周側スリット34のスリット幅 1.5mm、最内周側スリット34と最外周スリット38との間に位置される中間側スリット35のスリット幅 2mm、板部36の板幅 10mm。
・円形孔33を有する場合、当該円形孔33の直径 40mm。
【0037】
実験1,2で測定した各試験体は、以下のとおりである。
・試験体A=円筒状部品1A内に抵抗装置を備えない試験体。
・試験体B=円筒状部品1A内に、円形孔及びスリットを有した円形抵抗板を備えた軸クロスタイプ(実施形態1)の抵抗装置を備えた試験体。
・試験体C=円筒状部品1A内に、円形孔を備えずにスリットのみを有した円形抵抗板を備えた軸クロスタイプ(実施形態2)の抵抗装置を備えた試験体。
・試験体D=円筒状部品1A内に、円形孔及びスリットを有した円形抵抗板を備えた軸正対タイプの抵抗装置(実施形態1)を備えた試験体。
・試験体E=円筒状部品1A内に、円形孔を備えずにスリットのみを有した円形抵抗板を備えた軸正対タイプの抵抗装置(実施形態2)を備えた試験体。
【0038】
実験1では、各試験体A乃至E毎に、通過風量を変化させた場合に、A特性音圧レベルがどのように変化するかを検証した。
実験1の実験結果を図8に示す。
実験1の実験結果から以下の傾向が判明した。
(1)各試験体A乃至Eでは、風量が大きくなるといずれも発生する音(A特性音圧レベル)が大きくなる。
(2)抵抗装置を備えた試験体B乃至Eの場合、抵抗装置を備えない試験体Aと比べて、発生する音(A特性音圧レベル)は大きくなる。
(3)特に、円形孔を備えずにスリットのみを有した円形抵抗板を備えた抵抗装置を用いた試験体C,Eの場合、発生する音(A特性音圧レベル)は大きくなる。
【0039】
実験2では、風量40.0m/hとして、各試験体A乃至E毎に、1/3オクターブバンド中心周波数-音圧レベルを測定した。
実験2の実験結果を図9に示す。
実験2の実験結果から以下の傾向が判明した。
(1)抵抗装置を備えた試験体B乃至Eの場合、抵抗装置を備えない試験体Aと比べて、特に中高周波数帯域において発生する音(音圧レベル)は大きくなる。
(2)円形孔を備えずにスリットのみを有した円形抵抗板を備えた抵抗装置を用いた試験体C,Eの場合、特に、1kHz以上の周波数帯域において、発生する音(音圧レベル)が大きくなる傾向が見られる。
【0040】
実験1,2では、一端開口側円筒部1Bと他端開口側円筒部1Cとの境界の開口の中心と十字形抵抗板22の中央板部25の中心とが一致するように、抵抗装置が一端開口側円筒部1Bの内側に設置されたため、ダクト及び他端開口側円筒部1C内を通過してきた流速の早い空気が十字形抵抗板22の中央板部25に衝突するとともに、隣り合う板部26と板部26との間、及び、スリット24を通過して、抵抗装置の内側に入り、円形抵抗板23の円形孔33及びスリット34,35,38を通過したり、あるいは、円形抵抗板23のスリット34,35,38を通過する。
この場合、まず、ダクト及び他端開口側円筒部1C内を通過してきた流速の早い空気が中央板部25に衝突するので、発生する音(音圧レベル)が大きくなる。
また、空気が円形抵抗板23のスリット34,35,38を通過する際に音が発生するので、発生する音(音圧レベル)が大きくなる。
さらに、円形抵抗板23の円形孔33がない場合は、空気が当該円形孔33のない壁部分39に衝突するので、発生する音(音圧レベル)がさらに大きくなる。
【0041】
実験1,2の結果から、円形孔33を備えずにスリット34,35,38のみを有した円形抵抗板23を備えた抵抗装置を用いた場合に、給気孔1を形成する円筒状部品1Aを介して空気が部屋に流入する際の音の大きさが大きくなり、外壁9に面して給気孔1がない部屋12であっても室外からの生活音が聞こえ難い室内環境を実現できるようなることがわかった。
【0042】
実験3で測定した各試験体は、以下のとおりである。
・試験体1=円筒状部品1A内に抵抗装置を備えない試験体。
・試験体2=円筒状部品1A内に、スリットのみを有して最外周スリット38の幅を1mmとした円形抵抗板を備えた軸クロスタイプの抵抗装置を備えた試験体。
・試験体3=円筒状部品1A内に、スリットのみを有して最外周スリット38の幅を5mmとした円形抵抗板を備えた軸クロスタイプの抵抗装置を備えた試験体。
・試験体4=円筒状部品1A内に、スリットのみを有して最外周スリット38の幅を1mmとした円形抵抗板を備えた軸正対タイプの抵抗装置を備えた試験体。
・試験体5=円筒状部品1A内に、スリットのみを有して最外周スリット38の幅を5mmとした円形抵抗板を備えた軸正対タイプの抵抗装置を備えた試験体。
【0043】
実験3では、各試験体1乃至5毎に、通過風量を変化させた場合に、A特性音圧レベルがどのように変化するかを検証した。
実験3の実験結果を図10に示す。
実験3の実験結果から以下の傾向が判明した。
(1)各試験体1乃至5では、風量が大きくなるといずれも発生する音(A特性音圧レベル)が大きくなる。
(2)抵抗装置を備えた試験体2乃至5の場合、抵抗装置を備えない試験体1と比べて、発生する音(A特性音圧レベル)は大きくなる。
(3)特に、最外周スリット38の幅を変更することで、発生音の大きさが変化し、最外周スリット38の幅を1mmとした円形抵抗板を備えた抵抗装置を用いた試験体2,4の場合、最外周スリット38の幅を5mmとした円形抵抗板を備えた抵抗装置を用いた試験体3,5と比べて、発生する音(A特性音圧レベル)は大きくなる傾向があることがわかった。
【0044】
実験4では、軸クロスタイプ、及び、軸正対タイプの抵抗装置において、十字形抵抗板22と円形抵抗板23との間の間隔を、10mm、20mm、30mmに変化させた試験体、即ち、円筒体21の全長を変えた抵抗装置の試験体を作製して、A特性音圧レベルを測定し、当該間隔の違いにより、A特性音圧レベルがどのように変化するかを検証した。尚、実験4は、風量20m/hで測定した。
軸クロスタイプの抵抗装置は、スリットのみを有して最外周スリット38の幅を1mmとした円形抵抗板を備えた軸クロスタイプの抵抗装置を用いた。
軸正対タイプの抵抗装置は、スリットのみを有して最外周スリット38の幅を1mmとした円形抵抗板を備えた軸正対タイプの抵抗装置を用いた。
【0045】
実験4の実験結果を図11に示す。
実験4の実験結果から以下の傾向が判明した。
(1)十字形抵抗板22と円形抵抗板23との間の間隔を変えることで発生音の大きさが変化し、間隔を狭くすると発生音が大きくなり、間隔を広くすると発生音が小さくなる傾向があることがわかった。
【0046】
実施形態3
実施形態1,2では、円筒体21と十字形抵抗板22と円形抵抗板23とを備えた抵抗装置が円筒状部品1Aの一端開口側円筒部1Bの内側に設置されて構成された暗騒音発生装置を例示したが、暗騒音発生装置は、円筒状部品1Aの一端開口側円筒部1Bの内周面に、十字形抵抗板22と円形抵抗板23とが直接取付けられた構成としてもよい。
即ち、十字形抵抗板22が一端開口側円筒部1Bの他端開口側の内側に位置されて、円形抵抗板23が一端開口側円筒部1Bの一端開口1a側の内側に位置されるように、一端開口側円筒部1Bの内周面に、十字形抵抗板22と円形抵抗板23とが直接取付けられた構成の暗騒音発生装置としてもよい。
【0047】
実施形態4
上述した実験3を考慮して、実施形態4では、円形抵抗板23の最外周スリット38のスリット幅を変更可能な暗騒音発生装置とした。即ち、円形抵抗板23の最外周スリット38のスリット幅を変更可能とするため、円形抵抗板23の中心から円形外周縁32までの距離が異なるように形成された複数種の円形抵抗板23を備え、これら複数種の円形抵抗板23が、円筒体21の一端開口21b側、又は、一端開口側円筒部1Bの他端側の内周面に対して着脱可能に構成された暗騒音発生装置とした。
実施形態4の暗騒音発生装置によれば、最外周スリット38のスリット幅を調整することで、給気孔1を介して空気が部屋12に流入する際の音の大きさ、即ち、発生させる暗騒音の大きさを調整可能な暗騒音発生装置を提供できる。
【0048】
実施形態5
上述した実験4を考慮して、実施形態5では、十字形抵抗板22と円形抵抗板23との間の間隔が変更可能に構成された暗騒音発生装置とした。
実施形態5の暗騒音発生装置によれば、十字形抵抗板22と円形抵抗板23との間の間隔を調整することで、給気孔1を介して空気が部屋12に流入する際の音の大きさ、即ち、発生させる暗騒音の大きさを調整可能な暗騒音発生装置を提供できる。
【0049】
尚、実施形態では、暗騒音発生装置や内気取込孔を天井に設けた例を示したが、暗騒音発生装置や内気取込孔17を床に設けるようにしてもよい。この場合、給気手段、熱交換システム、ダクト等は、床下空間に設ければよい。
即ち、本発明の暗騒音発生装置は、床板に取付けることにより、当該暗騒音発生装置を介して空気が部屋12に流入する際の音の大きさを大きくできる。また、ダクトを通す床下空間を極力狭く設計できるようになり、室内空間を広く設計できるようになる。また、径寸法の小さいダクトを経由してきた空気(風)の速度を円筒状部品1Aの他端開口側円筒部1C側で落として部屋12に送ることができるようになる。
【0050】
また、暗騒音発生装置や内気取込孔17を、壁内空間を有した間仕切り壁に設けるようにしてもよい。この場合、ダクト等は、壁内空間に設ければよい。
即ち、本発明の暗騒音発生装置は、壁板に取付けることにより、当該暗騒音発生装置を介して空気が部屋12に流入する際の音の大きさを大きくできる。また、ダクトを通す壁内空間を極力狭く設計できるようになり、室内空間を広く設計できるようになる。また、径寸法の小さいダクトを経由してきた空気(風)の速度を円筒状部品1Aの他端開口側円筒部1C側で落として部屋12に送ることができるようになる。
【0051】
また、内気取込孔17内に抵抗装置を設けて暗騒音発生装置を構成してもよい。
【0052】
熱交換システムを備えない構成としてもよい。
この場合、強制給気手段、及び、強制排気手段のいずれか一方、又は、両方を備えない構成としてもよい。
このような場合、建物外部から、天井裏空間、床下空間、壁内空間を経由する空気を部屋内に給気するために、給気孔1に給気ファンを設ければよい。
【0053】
また、実施形態では、建物の外部から建物の内部に取り込んだ空気を建物内の複数の各部屋に分配するために複数の各部屋の天井に暗騒音発生装置を設けた例を示したが、必ずしも、建物内の複数の各部屋に分配する構成とする必要はない。即ち、建物内の特定の1つの部屋の天井、又は、床、あるいは、間仕切り壁に暗騒音発生装置を設けることにより、当該暗騒音発生装置を介して空気が部屋に流入する際の音の大きさを大きくするようにすればよい。
【0054】
上述した給気手段13の円筒体、給気孔1を形成する筒部品としての円筒状部品1A、排気手段15の円筒体は、必ずしも円筒体でなくともよく、例えば角筒体などの筒体であってもよい。
【0055】
また、実施形態では、給気孔1を形成する筒部品として、一端開口側円筒部と一端開口側円筒部の径よりも小さい他端開口側円筒部とを備えた段差付きの円筒状部品1Aを例示したが、他端開口側円筒部の代わりに他端開口側円錐状筒部を備えた構成としてもよい。即ち、他端開口側円筒部の代わりに、当該他端開口側円錐状筒部は、筒部品の他端から一端開口側円筒部にかけて径が漸次大きくなるように形成された当該他端開口側円錐状筒部を備えた筒部品を使用してもよい。
また、給気孔1を形成する筒部品は、筒部品の他端開口から一端開口側に向けて径が漸次大きくなるように形成された円錐状筒部品や角錐状筒部品を使用してもよい。この場合、筒部品の内側に設置される抵抗装置は、筒体が、円錐状筒体や角錐状筒体により形成されたものを使用すればよい。
【0056】
即ち、給気孔1を形成する筒部品は、一端開口が、天井を形成する天井板11、又は、床を形成する床板、あるいは、間仕切り壁を形成する壁板に形成された貫通孔を介して部屋12に連通するとともに、他端開口が、建物の外部から空気を取込むためのダクトに連通するように設けられた筒部品により形成され、当該給気孔1を形成する筒部品は、ダクトに接続される他端開口側の径寸法が、一端開口側の径寸法よりも小さい構成のものであればよい。
そして、本願発明では、十字形抵抗板がダクト側に位置されて、円形抵抗板が部屋側に位置されるように、筒部品の内側に抵抗装置が設置された構成の暗騒音発生装置であればよい。
【0057】
また、抵抗装置は、円形抵抗板、十字形抵抗板のいずれか一方のみを備えた構成であってもよい。
即ち、抵抗装置は、給気孔の内側に空気が通過する際の抵抗となるものであれば、どのような構成であってもかまわない。
【0058】
また、筒部品の材質、抵抗装置の材質は、特に限定されない。例えば、合成樹脂、金属等により筒部品や抵抗装置を形成すればよい。
【0059】
筒部品や抵抗装置は、3D(立体)プリンター等を用いた一体成形されたものを用いても構わない。
【0060】
また、実施形態では、建物としてマンション等の共同住宅を例示したが、本発明は、一戸建て、ホテル、事務所、その他の建物にも適用可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 給気孔、1A 円筒状部品(筒部品)、1B 一端開口側円筒部、
1C 他端開口側円筒部、1D 塞板、2,2A 抵抗装置、10 建物、
11 天井板、12 部屋、21 円筒体、22 十字形抵抗板、23 円形抵抗板、
24 スリット、25 中央板部、26 板部、31 接続部、32 円形外周縁、
33 円形孔、34,35 スリット、36 板部、37 円弧状板部、
38 最外周スリット。
図1
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