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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】炉内ライニング及びその施工方法
(51)【国際特許分類】
   F27D 1/16 20060101AFI20241010BHJP
   F27D 1/00 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
F27D1/16 Z
F27D1/00 N
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021016574
(22)【出願日】2021-02-04
(65)【公開番号】P2022119449
(43)【公開日】2022-08-17
【審査請求日】2024-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】平山 智起
(72)【発明者】
【氏名】能登谷 天勝
【審査官】杉田 隼一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-076971(JP,A)
【文献】特開2012-225633(JP,A)
【文献】特開2019-078435(JP,A)
【文献】特開2001-235288(JP,A)
【文献】実公昭49-001865(JP,Y1)
【文献】特開昭59-1984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 1/16
F27D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)炉殻の内面側にセラミックファイバー層を形成する工程と、
(B)前記セラミックファイバー層の表面を覆うように結晶質アルミナファイバーブランケットを配置する工程と、
(C)結晶質アルミナファイバーブランケット製の固定部材が前記結晶質アルミナファイバーブランケットを貫通して前記セラミックファイバー層に至るように、前記固定部材を装着することによって、前記セラミックファイバー層に対して前記結晶質アルミナファイバーブランケットを固定する工程と、
を含む、炉内ライニングの施工方法。
【請求項2】
前記固定部材が嵩密度130kg/m以上の結晶質アルミナファイバーブランケットからなる、請求項1に記載の炉内ライニングの施工方法。
【請求項3】
(C)工程は、
(c1)尖った先端部を有する挿入用工具で前記固定部材の表面の少なくとも一部を覆うことによって前記固定部材を補強することと、
(c2)前記挿入用工具とともに前記固定部材を前記セラミックファイバー層に至らせることと、
(c3)前記挿入用工具を引き抜くことと、
を含む、請求項1又は2に記載の炉内ライニングの施工方法。
【請求項4】
(C)工程において、前記セラミックファイバー層の前記表面の法線に対して0~75°の角度で前記固定部材を装着する、請求項1~3のいずれか一項に記載の炉内ライニングの施工方法。
【請求項5】
炉殻の内面側に配置されたセラミックファイバー層と、
前記セラミックファイバー層の表面を覆うように配置された結晶質アルミナファイバーブランケットと、
前記セラミックファイバー層に対して前記結晶質アルミナファイバーブランケットを固定する固定部材と、
を備え、
前記固定部材が前記結晶質アルミナファイバーブランケットを貫通して前記セラミックファイバー層に至るように配置されており、
前記固定部材の材質が結晶質アルミナファイバーブランケットである、炉内ライニング。
【請求項6】
前記固定部材が、
互いに並行して延びる第一部及び第二部と、
前記第一部と前記第二部との連結部と、
を有するU字状であり、
前記第一部及び前記第二部が前記セラミックファイバー層に至り且つ前記連結部が当該炉内ライニングの内面側に露出している、請求項5に記載の炉内ライニング。
【請求項7】
前記固定部材が、
短冊状の本体部と、
前記本体部よりも広い幅を有する頭部と、
を有し、
前記本体部が前記セラミックファイバー層に至り且つ前記頭部が当該炉内ライニングの内面側に露出している、請求項5に記載の炉内ライニング。
【請求項8】
前記セラミックファイバー層の前記表面の法線に対して0~75°の角度で前記固定部材が装着されている、請求項5~7のいずれか一項に記載の炉内ライニング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉内ライニング及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炉体の耐火構造として、炉殻の内面側に配置されたセラミックファイバーブロックと、これを覆うように配置されるクロス又はブランケットを備える炉内ライニングが知られている。セラミックファイバーブロックは、例えば、250mm程度の厚さを有し且つ炉殻の内面全体を覆うように配置されるため、炉体の規模やタイプにもよるが比較的大量に使用される。したがって、コストの観点から、繊維にならなかった粉塵(ショットと称される)を含む、比較的安価なセラミックファイバーブロックが一般に使用される。一方、これを覆うように配置されるクロス又はブランケットは、粉塵を極力含まないこと(ノンショットと称される)が求められるため、比較的高価な結晶質セラミックスアルミナファイバー製のものが使用される。
【0003】
特許文献1は、加熱炉、熱処理炉(焼鈍炉)等の炉内ライニングに関する発明を開示している。特許文献1によれば、炉内ライニング材から飛来する粉塵によって処理鋼板の表面に疵をつけることを防止し、耐熱クロスの断熱壁からの脱落・落下を経済的に防止することができるとされている。特許文献1の図1には、セラミックファイバーブロックと、その表面に配置されたアルミナクロスと、セラミックファイバーブロックにアルミナクロスを縫い付けているアルミナロープとを備える炉内ライニングが図示されている。
【0004】
特許文献2は、連続焼鈍処理設備等に施される炉内ライニングに関する発明を開示している。特許文献2によれば、この炉内ライニングは長期にわたって劣化が生じることのないとされている。特許文献2の図2には、非晶質セラミックファイバーブロックと、その表面に配置された結晶質アルミナ繊維ブランケットと、非晶質セラミックファイバーブロックに対して結晶質アルミナ繊維ブランケットを固定するU字型スタットピンとを備える炉内ライニングが図示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-364985号公報
【文献】特開2006-10107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の炉内ライニングは、炉内の雰囲気ガスによってはアルミナロープが比較的短時間で劣化するため、メンテナンス頻度の点で改善の余地があった。特許文献2に記載の炉内ライニングは劣化の課題は解消し得るものの、施工に時間を要する点で改善の余地があった。また、耐熱性に優れるスタットピンは高価であるため、特許文献2に記載の炉内ライニングは高コストである点でも改善の余地があった。
【0007】
本発明は、メンテナンス頻度を十分に低くすることができ且つ比較的短時間で施工できる炉内ライニング及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る炉内ライニングの施工方法は以下の工程を含む。
(A)炉殻の内面側にセラミックファイバー層を形成する工程。
(B)セラミックファイバー層の表面を覆うように結晶質アルミナファイバーブランケットを配置する工程。
(C)結晶質アルミナファイバーブランケット製の固定部材が結晶質アルミナファイバーブランケットを貫通してセラミックファイバー層に至るように、固定部材を装着することによって、セラミックファイバー層に対して結晶質アルミナファイバーブランケットを固定する工程。
【0009】
固定部材として、結晶質アルミナファイバーブランケット製のものを使用することで、固定部材の劣化が生じにくく、メンテナンス頻度を十分に低くすることができる。なお、固定部材を構成する結晶質アルミナファイバーブランケットは、セラミックファイバー層を覆う結晶質アルミナファイバーブランケットと同じ材質であっても、異なる材質であってもよいが、同じ材質であることが好ましい。例えば、セラミックファイバー層を覆うための結晶質アルミナファイバーブランケットを所定の形状に型抜きすることによって固定部材を得ることができる。固定部材を構成する結晶質アルミナファイバーブランケットの嵩密度は、固定部材の強度及び劣化抑制の観点から、130kg/m以上であることが好ましい。
【0010】
(C)工程は、簡便な挿入用工具を使用して実施できるため、比較的短時間で炉内ライニングを施工できる。装着工具としては、例えば、尖った先端部を有し且つ固定部材の表面の少なくとも一部を覆って補強できるものを使用すればよい。このような挿入用工具を使用する場合、(C)工程は、例えば、以下のステップを含む。
(c1)尖った先端部を有する挿入用工具で固定部材の表面の少なくとも一部を覆うことによって固定部材を補強すること。
(c2)挿入用工具とともに固定部材をセラミックファイバー層に至らせること。
(c3)挿入用工具を引き抜くこと。
【0011】
(C)工程において、セラミックファイバー層の表面の法線に対して0~75°の角度で固定部材を装着することが好ましい。例えば、セラミックファイバー層がセラミックファイバーからなるブランケットを折り畳んだり、積層させて構成された多層構造を有する場合、セラミックファイバー層の表面に対して斜めに固定部材を装着することで、セラミックファイバー層を構成する複数の層を貫通するように固定部材を装着することができる。これにより、固定部材によって結晶質アルミナファイバーブランケットをより一層安定的且つ確実に固定することができる。
【0012】
本発明に係る炉内ライニングは、炉殻の内面側に配置されたセラミックファイバー層と、セラミックファイバー層の表面を覆うように配置された結晶質アルミナファイバーブランケットと、セラミックファイバー層に対して結晶質アルミナファイバーブランケットを固定する固定部材とを備え、固定部材が結晶質アルミナファイバーブランケットを貫通してセラミックファイバー層に至るように配置されており、固定部材の材質が結晶質アルミナファイバーブランケットである。この炉内ライニングによれば、固定部材が結晶質アルミナファイバーブランケット製であるため、劣化が生じにくく、メンテナンス頻度を十分に低くすることができる。
【0013】
結晶質アルミナファイバーブランケットを安定的且つ確実に固定する観点から、固定部材が互いに並行して延びる第一部及び第二部と、第一部と第二部との連結部とを有するU字状であり、第一部及び第二部がセラミックファイバー層に至り且つ連結部が当該炉内ライニングの内面側に露出していることが好ましい。固定部材が短冊状の本体部と、本体部よりも広い幅を有する頭部とを有し、本体部がセラミックファイバー層に至り且つ頭部が当該炉内ライニングの内面側に露出していてもよい。結晶質アルミナファイバーブランケットに固定部材の頭部を当接させることで、頭部とセラミックファイバー層とによって結晶質アルミナファイバーブランケットが挟まれた状態となり、より一層安定的且つ確実に結晶質アルミナファイバーブランケットを固定することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、メンテナンス頻度を十分に低くすることができ且つ比較的短時間で構築できる炉内ライニング及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は本発明に係る炉内ライニングを備える炉体の一例を模式的に示す斜視図である。
図2図2はセラミックファイバーブロックの構成を模式的に示す断面図である。
図3図3は固定部材の一例を模式的に示す斜視図である。
図4図4(a)はセラミックファイバー層の表面に対して垂直に固定部材を装着した状態を模式的に示す断面図であり、図4(b)はセラミックファイバー層の表面に対して斜め方向に固定部材を装着した状態を模式的に示す断面図である。
図5図5(a)及び図5(b)は炉内ライニングを施工する過程を模式的に示す断面図である。
図6図6は挿入用工具の一例を模式的に示す斜視図である。
図7図7は固定部材の他の例を模式的に示す平面図である。
図8図8(a)及び図8(b)は炉内ライニングの変形例を模式的に示す断面図であり、図8(c)及び図8(d)はこれらの炉内ライニングの施工に使用する挿入用工具を模式的に示す断面図である。
図9図9(a)及び図9(b)は炉内ライニングの変形例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0017】
図1は炉内ライニングを備える炉体の一例を模式的に示す斜視図である。図1に示す炉体20は、炉殻1と、炉殻1の内面1a側に設けられた炉内ライニング10とを備える。炉体20は、例えば、焼鈍炉であり、鋼板の焼鈍処理がなされる。なお、炉体20は、焼鈍処理用に限られず、鋼板の加熱処理等に用いられるものであってもよい。炉内ライニング10は、炉殻1の内面1a側に形成されたセラミックファイバー層5と、セラミックファイバー層5の表面5aを覆うように配置された結晶質アルミナファイバーブランケット7と、セラミックファイバー層5に対して結晶質アルミナファイバーブランケット7を固定する固定部材8とを備える。
【0018】
セラミックファイバー層5はセラミックスファイバーからなる。セラミックスファイバーの具体例として、リフラクトリーセラミックファイバー(RCF)及び生体溶解性繊維(BSF)が挙げられる。セラミックスファイバーはコストの点から、必ずしも結晶性が高くなくてもよく、比較的安価な非晶質セラミックファイバーであってもよい。セラミックファイバー層5の厚さは、例えば、100~400mm程度である。セラミックファイバー層5の嵩密度は、断熱性、施工性及びコスト等の観点から、例えば、80~200kg/mである。
【0019】
セラミックファイバー層5は、規則的に配置された複数のセラミックファイバーブロック3からなる。セラミックファイバーブロック3は、例えば、厚さ10~50mm程度のセラミックファイバーのブランケットを折り曲げた状態で積層させることによってブロック状に形成されている。図2に示されるように、セラミックファイバーブロック3は、多層構造を有し、層3aが炉殻1の内面1aに対して直交するように配置されている。これにより、セラミックファイバーブロック3の折り曲げ部3bによって表面5aが構成されている。図1に示すように、隣接する二つのセラミックファイバーブロック3の層3aが直交するように配置されていてもよい。なお、図2には折り曲げられたブランケットによって構成されるセラミックファイバーブロック3を例示したが、ブランケットを折り曲げずに単純に積層したブロック(不図示)であってもよい。
【0020】
結晶質アルミナファイバーブランケット7は、ノンショットと称される性質を有する。すなわち、結晶質アルミナファイバーブランケット7はショットの原因となる粉塵の含有量が十分に小さい。このため、ショットを生じ得るセラミックファイバー層5を結晶質アルミナファイバーブランケット7で覆うことで、ショットによる不具合を十分に低減できる。結晶質アルミナファイバーブランケット7の厚さは、例えば、6~15mm程度である。結晶質アルミナファイバーブランケット7の嵩密度は、強度及び劣化抑制の観点から、130kg/m以上であることが好ましい。なお、この嵩密度の上限値は、例えば、160kg/mである。結晶質アルミナファイバーブランケット7として、例えば、45μm以上のショット含有率が3%以下のアルミナ繊維ブランケットを使用することができる。
【0021】
固定部材8は、セラミックファイバー層5に対して結晶質アルミナファイバーブランケット7を固定するためのものである。固定部材8は、結晶質アルミナファイバーブランケットを型抜き等によって所定の形状に加工したものである。固定部材8として、結晶質アルミナファイバーブランケット製のものを使用することで、固定部材8の劣化が生じにくく、メンテナンス頻度を十分に低くすることができる。固定部材8を構成する結晶質アルミナファイバーブランケットは、上記結晶質アルミナファイバーブランケット7と同じ材質であっても、異なる材質であってもよいが、同じ材質であることが好ましい。例えば、結晶質アルミナファイバーブランケット7を所定の形状に型抜きすることによって固定部材8を得ることができる。固定部材8を構成する結晶質アルミナファイバーブランケットの嵩密度は、固定部材8の強度及び劣化抑制の観点から、130kg/m以上であることが好ましい。なお、この嵩密度の上限値は、例えば、160kg/mである。
【0022】
図3は固定部材8の構成を模式的に示す斜視図である。この図に示すように、固定部材8はU字状である。すなわち、固定部材8は、互いに並行して延びる第一部8a及び第二部8bと、第一部8aと第二部8bとの連結部8cとを有する。第一部8a及び第二部8bがセラミックファイバー層5に至り且つ連結部8cが炉内ライニング10の内面側に露出している。U字状の固定部材8を使用することで、結晶質アルミナファイバーブランケット7を安定的且つ確実にセラミックファイバー層5に対して固定することができる。なお、固定部材8がセラミックファイバー層5及び結晶質アルミナファイバーブランケット7に装着された状態において固定部材8が容易には抜け落ちないのは各部材の間の摩擦力に起因する。
【0023】
図4(a)に示すように、セラミックファイバー層5の表面5aに対して垂直に固定部材8を装着してもよいし、図4(b)に示すように、セラミックファイバー層5の表面5aに対して斜め方向に固定部材8を装着してもよい。表面5aに対して斜め方向に固定部材8を装着することで、セラミックファイバー層5を構成するセラミックファイバーブロック3の層3aを固定部材8が貫通する傾向にある。これにより、固定部材によって結晶質アルミナファイバーブランケットをより一層安定的且つ確実に固定することができる。
【0024】
次に、炉内ライニング10の施工方法について説明する。炉内ライニング10の施工方法は以下の工程を含む。
(A)炉殻1の内面1a側にセラミックファイバー層5を形成する工程。
(B)セラミックファイバー層5の表面5aを覆うように結晶質アルミナファイバーブランケット7を配置する工程。
(C)固定部材8が結晶質アルミナファイバーブランケット7を貫通してセラミックファイバー層5に至るように、固定部材8を装着することによって、セラミックファイバー層5に対して結晶質アルミナファイバーブランケット7を固定する工程。
【0025】
図5(a)は、炉殻1の内面1a側に、複数のセラミックファイバーブロック3を配置することによって、セラミックファイバー層5を形成した状態を模式的に示す断面図である。なお、各セラミックファイバーブロック3は、例えば、ボルト及びナットによって炉殻1に固定される。
【0026】
図5(b)は、セラミックファイバー層5の表面5aを覆うように結晶質アルミナファイバーブランケット7を配置した状態を模式的に示す断面図である。固定部材8によって結晶質アルミナファイバーブランケット7が固定されるまで、例えば、ピン(不図示)を使用してセラミックファイバー層5に結晶質アルミナファイバーブランケット7を仮固定すればよい。
【0027】
図6は、(C)工程を実施するための挿入用工具の一例を模式的に示す斜視図である。この図に示す挿入用工具9は、固定部材8を補強して結晶質アルミナファイバーブランケット7及びセラミックファイバー層5に挿入するためのものである。挿入用工具9は、結晶質アルミナファイバーブランケット7及びセラミックファイバー層5に対して十分に高い強度を有しているとともに、尖った先端部を有する。挿入用工具9は、短冊状の固定部材8をU字状の曲げた状態で収容できるように構成されている。挿入用工具9は、U字状の固定部材8の外面、内面及び一方の側面を覆うように構成されており、固定部材の他方の側面側が開放されている。
【0028】
挿入用工具9を使用する場合、(C)工程は、例えば、以下のステップを含む。
(c1)挿入用工具9で固定部材8の表面の少なくとも一部を覆うことによって固定部材8を補強すること。
(c2)挿入用工具9とともに固定部材8をセラミックファイバー層5に至らせること。
(c3)挿入用工具9を引き抜くこと。
【0029】
(c1)ステップは、挿入用工具9の開放部9aから挿入用工具9内に固定部材8を収容することによって実施できる。(c2)ステップは、挿入用工具9に固定部材8を収容した状態で、挿入用工具9を結晶質アルミナファイバーブランケット7及びセラミックファイバー層5に挿入することによって実施できる。(c2)ステップにおいて、セラミックファイバー層5の表面5aに対して垂直に固定部材8を挿入してもよいし(図4(a)参照)、セラミックファイバー層5の表面5aに対して斜め方向に固定部材8を挿入してもよい(図4(b))。後者の場合、セラミックファイバー層5の表面5aの法線に対して0°超75°以下の角度で固定部材を装着することが好ましい。この角度の下限値は、例えば10°であり、20°であってもよい。この角度の上限値は、例えば、45°であってもよい。なお、セラミックファイバー層5が薄い箇所に施工する場合、この角度は45°以上であってもよい。
【0030】
(c3)ステップは、次のように実施できる。まず、(c2)ステップの実施後、開放部9aから固定部材8の連結部8cが挿入用工具9の外に出るように、挿入用工具9の角度を変える。その後、挿入用工具9のみを引き抜けばよい。
【0031】
上記実施形態によれば、固定部材8として、結晶質アルミナファイバーブランケット製のものを使用することで、固定部材8の劣化が生じにくく、メンテナンス頻度を十分に低くすることができる。また、簡便な挿入用工具9を使用して結晶質アルミナファイバーブランケット7及びセラミックファイバー層5に固定部材8を効率的に挿入できるため、比較的短時間で炉内ライニング10を施工できる。
【0032】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、U字状の固定部材8を例示したが、固定部材は他の形状であってもよい。例えば、図7に示す固定部材18は、T字状であり、短冊状の本体部18aと、本体部18aよりも広い幅を有する頭部18bとを有する。この場合、本体部18aがセラミックファイバー層5に至り且つ頭部18bが炉内ライニングの内面側に露出する。結晶質アルミナファイバーブランケット7に頭部18bを当接させることで、頭部18bとセラミックファイバー層5とによって結晶質アルミナファイバーブランケット7が挟まれた状態となり、安定的且つ確実に結晶質アルミナファイバーブランケット7を固定することができる。
【0033】
図8(a)に示すように、セラミックファイバー層5の表面5aに対して垂直に本体部18aを挿入してもよいし、図8(b)に示すように、本体部18aが途中から曲がるように本体部18aを挿入してもよい。前者の場合、例えば、図8(c)に示す一対の挿入用工具19A,19Bで固定部材18を補強して挿入すればよい。一対の挿入用工具19A,19Bはいずれも尖った先端部を有し且つフラットな形状を有する。他方、後者の場合、例えば、図8(d)に示す一対の挿入用工具19C,19Dで固定部材18を補強して挿入すればよい。一対の挿入用工具19C,19Dはいずれも尖った先端部を有し且つ湾曲した形状を有する。
【0034】
図9(a)に示すように、本体部18aがセラミックファイバー層5に至り、途中から結晶質アルミナファイバーブランケット7の方向に曲がって結晶質アルミナファイバーブランケット7の外側にまで至る態様であってもよい。この場合、本体部18aと頭部18bとを係合させてもよい。また、図9(b)に示すように、本体部18aの先端側に頭部18bと同様の部材18cを設けて結晶質アルミナファイバーブランケット7が外れないようにしてもよい。このように、本体部18aの先端部が結晶質アルミナファイバーブランケット7の外側にまで至るようにするには、図8(d)に示す一対の挿入用工具19C,19Dよりも湾曲の大きい挿入用工具を使用すればよい。この場合、挿入用工具の先端部も結晶質アルミナファイバーブランケット7の外側にまで至るから、かかる挿入用工具は一対で構成されていなくてもよく、例えば、筒状であってもよい。
【符号の説明】
【0035】
1…炉殻、1a…内面、3…セラミックファイバーブロック、3a…層、3b…折り曲げ部、5…セラミックファイバー層、5a…表面、7…結晶質アルミナファイバーブランケット、8,18…固定部材、8a…第一部、8b…第二部、8c…連結部、9,19A,19B,19C,19D…挿入用工具、9a…開放部、10…炉内ライニング、18a…本体部、18b…頭部、18c…部材、20…炉体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9