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特許7569703受電要素の受電制御方法及び受電要素の受電制御装置
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  • 特許-受電要素の受電制御方法及び受電要素の受電制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】受電要素の受電制御方法及び受電要素の受電制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/14 20060101AFI20241010BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20241010BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
H02J3/14 130
H02J13/00 311T
H02J7/00 P
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021019833
(22)【出願日】2021-02-10
(65)【公開番号】P2022122537
(43)【公開日】2022-08-23
【審査請求日】2023-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】村井 謙介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健太
(72)【発明者】
【氏名】池添 圭吾
【審査官】小林 秀和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/194010(WO,A1)
【文献】特開2012-075247(JP,A)
【文献】特開2009-136109(JP,A)
【文献】特開2013-162555(JP,A)
【文献】特開2020-182330(JP,A)
【文献】国際公開第2012/120976(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/14
H02J 13/00
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の受電要素を含む負荷群へ電力供給基点を経由して電気エネルギーを供給する電力システムにおいて、前記負荷群に含まれる受電要素が受電する電力である要素受電電力を、処理サイクルを繰り返すことにより制御する受電要素の受電制御方法であって、
前記処理サイクルには、
前記電力供給基点の状態によって作成される信号を受信し、
他の受電要素の受電よりも自己の受電が優先される度合いを示す前記受電要素の優先度を各々の受電要素の状態に基づき設定し、
前記要素受電電力が所定電力以下になると充電を停止するように前記要素受電電力を更新し、
更新後の前記要素受電電力を受電するように前記受電要素を制御し、
前記信号と前記優先度に基づいて前記優先度が高い受電要素の方が前記優先度が低い受電要素よりも前記要素受電電力が大きくなるように制御する
ことが含まれ、
前記受電要素が充電を開始する時間を各受電要素でずらしながら、所定条件に基づいて前記受電要素の充電を開始する
ことを特徴とする受電要素の受電制御方法。
【請求項2】
前記自己の最小充電電力で充電した際に過負荷になる可能性がある場合において、新たに受電要素が到着したとき、あるいは充電停止状態になったときから、与えられた指令回数が所定値を超えた場合、前記受電要素の充電を開始する
ことを特徴とする請求項1に記載の受電要素の受電制御方法。
【請求項3】
前記信号が使用可能電力を示す場合、前記使用可能電力に応じて充電停止から充電を開始する時刻を変化させて前記受電要素の充電を開始する
ことを特徴とする請求項1に記載の受電要素の受電制御方法。
【請求項4】
前記優先度が高いほど前記充電を開始する時間を早くする
ことを特徴とする請求項1または3に記載の受電要素の受電制御方法。
【請求項5】
乱数を用いて前記受電要素が充電を開始する時間を決定する
ことを特徴とする請求項1、3、4のいずれか1項に記載の受電要素の受電制御方法。
【請求項6】
前記受電要素が充電を開始した後は前記充電を停止させにくくする
ことを特徴とする請求項1に記載の受電要素の受電制御方法。
【請求項7】
新たに受電要素が到着した場合、前記新たに到着した受電要素が充電を開始する時間を早くする
ことを特徴とする請求項1に記載の受電要素の受電制御方法。
【請求項8】
複数の受電要素を含む負荷群へ電力供給基点を経由して電気エネルギーを供給する電力システムにおいて、前記負荷群に含まれる受電要素が受電する電力である要素受電電力を、処理サイクルを繰り返すことにより制御する受電要素の受電制御装置であって、
前記処理サイクルには、
前記電力供給基点の状態によって作成される信号を受信し、
他の受電要素の受電よりも自己の受電が優先される度合いを示す前記受電要素の優先度を各々の受電要素の状態に基づき設定し、
前記要素受電電力が所定電力以下になると充電を停止するように前記要素受電電力を更新し、
更新後の前記要素受電電力を受電するように前記受電要素を制御し、
前記信号と前記優先度に基づいて前記優先度が高い受電要素の方が前記優先度が低い受電要素よりも前記要素受電電力が大きくなるように制御する
ことが含まれ、
前記受電要素が充電を開始する時間を各受電要素でずらしながら、所定条件に基づいて前記受電要素の充電を開始する
ことを特徴とする受電要素の受電制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受電要素の受電制御方法及び受電要素の受電制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の電力消費要素を含むグループ全体で消費される総消費電力の制約に基づいて各電力消費要素の消費電力を制御する方法が知られている(特許文献1)。特許文献1において、同報送信要素が、総消費電力の現在値と総消費電力の基準値との差の関数をグループ内に同報送信する。各電力消費要素は、この関数と自己に与えられた優先度とを用いて自己の消費電力を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6168528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
十分な充電可能電力がない場合新たな電気自動車は充電を開始しない。このとき、無理に充電を開始すると過負荷が発生するおそれがある。しかしながら特許文献1にはこのような過負荷に関する記載はない。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みて成されたものであり、その目的は、充電する際に発生しうる過負荷を低減することが可能な受電要素の受電制御方法及び受電要素の受電制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る受電要素の受電制御方法は、複数の受電要素を含む負荷群へ電力供給基点を経由して電気エネルギーを供給する電力システムにおいて負荷群に含まれる受電要素が受電する電力である要素受電電力を制御し、受電要素が充電を開始する時間を各受電要素でずらしながら、所定条件に基づいて受電要素の充電を開始する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、充電する際に発生しうる過負荷を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態に係る電力システムの概略構成図である。
図2図2は、受電制御装置の一動作例を説明するフローチャートである。
図3図3は、比較例を説明するグラフである。
図4図4は、過負荷の低減を説明するグラフである。
図5図5は、過負荷の低減を説明するグラフである。
図6図6は、過負荷の低減を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0010】
図1を参照して、本実施形態に係る電気自動車(受電要素の一例)の受電制御装置及びその周辺装置の構成を説明する。複数の電気自動車(EV1、EV2、EV3、・・・)を含む負荷群11へ、電力設備12(電力供給基点10の一例)を経由して電気エネルギーを供給する電力システムにおいて、受電制御装置は、負荷群11に含まれる電気自動車EV1が受電する電力である要素受電電力を、所定の処理サイクルを繰り返すことにより制御する。
【0011】
受電制御装置は、外部から電気信号を受信する受信装置21と、電気自動車EV1の状態を示す情報を取得する車両状態取得装置22と、電気自動車EV1の要素受電電力を算出する計算装置23とを備える。電気自動車EV1は、外部から電力を受ける受電装置24と、受電装置24が受けた電力(要素受電電力)を蓄えるバッテリ25と、バッテリ25が蓄える電気エネルギー又は要素受電電力に基づいて駆動するモータ26とを備える。
【0012】
「処理サイクル」には、(a)~(e)の処理ステップが含まれる。
(a)受信装置21は、電力設備12を経由して負荷群11の全体に送ることができる総送電電力の最大値(Pall_max)から、電力設備12を経由して負荷群11の全体に送っている総送電電力の現在値(Pall_now)を減じて得られる差分電力(△P)を示す情報を取得する。
(b)計算装置23は、他の電気自動車(EV2、EV3、・・・)の受電よりも自己(電気自動車EV1)の受電が優先される度合いを示す電気自動車EV1の優先度(β)を、電気自動車EV1のユーザの要求を表す数値に基づいて算出する。
(c)計算装置23は、取得した情報が示す差分電力(△P)に優先度(β)を乗じることにより要素差分電力(β△P)を算出する。
(d)計算装置23は、前回の処理サイクルにおける要素受電電力(Pt)に、要素差分電力(β△P)を加算することにより、要素受電電力(Pt+1)を更新する。
(e)計算装置23は、更新後の要素受電電力(Pt+1)を受電するように電気自動車EV1を制御する。
【0013】
ここで、本実施形態において、「電気自動車」は、電力設備12を経由して伝送される電力を受電する「蓄電要素」又は「受電要素」の一例である。蓄電要素は、受電した電力をバッテリ(二次電池、蓄電池、充電式電池を含む)に蓄える。「蓄電要素」には、車両(電気自動車、ハイブリッド車、建設機械、農業機械を含む)、鉄道車両、遊具、工具、家庭製品、日用品など、バッテリを備える、あらゆる機器及び装置が含まれる。
【0014】
「蓄電要素」は、電力設備12を経由して伝送される電力を受電する「受電要素」の一例である。「受電要素」には、「蓄電要素」の他に、受電した電力を蓄えずに消費する「電力消費要素」も含まれる。「電力消費要素」には、鉄道車両、遊具、工具、家庭製品、日用品など、が含まれる。「電力消費要素」は、電気自動車のように、バッテリを備えていても構わない。電気自動車が受電した電力をバッテリに蓄えずに、直接、モータへ電送し、モータの駆動力として消費する場合、電気自動車は「電力消費要素」の一例となる。このように、「電力消費要素」には、バッテリを備えるか否かに係わらず、受電した電力を蓄電せずに消費する、あらゆる機器及び装置が含まれる。
【0015】
「蓄電要素」及び「受電要素」は、いずれも受電制御装置による受電制御の単位構成を示す。即ち、蓄電要素又は受電要素を単位として本実施形態に係る受電制御が行われる。例えば、複数の電気自動車(EV1、EV2、EV3、・・・)の各々について、互いに独立して並列に本実施形態に係る受電制御が行われる。
【0016】
本実施形態では、受電要素の一例として蓄電要素を挙げ、更に、蓄電要素の一例として、電気をエネルギー源とし、モータ26を動力源として走行する電気自動車(EV)を挙げる。しかし、本発明における受電要素及び蓄電要素をそれぞれ電気自動車(EV)に限定することは意図していない。
【0017】
本実施形態において、「電力設備12」は、電力供給基点10の一例である。「電力設備12」には、例えば、以下の<1>~<6>が含まれる。
<1>電気自動車EV用の「充電スタンド」
<2>住宅、オフィスビル、商業施設、工場、又は高速道路のパーキングエリア等の敷地内に設置された「変電装置」
<3>水力、火力、原子力などの「発電所」、発電された電力を所定の電圧へ変換する「変電所」
<4>変電所を経由して伝送された電力を分配するための様々な「配電設備」
<5>これらの装置又は設備の間を接続する「配線(ケーブル、フィーダーを含む)」、及び<6>近隣にある小規模な蓄電要素のエネルギーを束ね、1つの大規模な発電所のように機能させる「バーチャルパワープラント(仮想発電所:VPP)」
【0018】
本実施形態では、受電制御装置が、電気自動車EV1に搭載されている例を説明するが、勿論、受電制御装置は、短距離無線、無線LAN、無線WANなどの近距離無線通信技術、或いは、携帯電話通信網を利用して、電気自動車EV1の外部から電気自動車EV1の要素受電電力を制御してもよい。
【0019】
また、負荷群11に含まれる複数の電気自動車(EV1、EV2、EV3、・・・)のうちの1台の電気自動車EV1の構成を例に取り説明するが、負荷群11に含まれる他の電気自動車(EV2、EV3、・・・)も電気自動車EV1と同じ構成を有している。
【0020】
受電制御装置は、電力設備12を経由して電気自動車EV1が受電する電力を制御する。電気自動車EV1は、オンボードチャージャー(OBC)と呼ばれる受電装置24を備える。計算装置23は、受電装置24が電力設備12を経由して受電する電力を制御する。受電装置24が受電した電力は、バッテリ25に蓄えられる。又は、電気自動車EV1は、受電装置が受電した電力を、バッテリ25に蓄えず、駆動源としてのモータ26へ直接送電しても構わない。
【0021】
電力設備12を経由して電気自動車EV1へ供給される電力は、電流計測装置13により計測される。電流計測装置13により計測された電力値は、差分情報送信装置14へ送信される。
【0022】
1つの電力設備12を経由して、負荷群11に含まれる複数の電気自動車(EV1、EV2、EV3、・・・)に対して電気エネルギーが供給される。更に、1つの電力設備12を経由して、複数の電気自動車(EV1、EV2、EV3、・・・)のみならず、負荷群11に含まれる1又は2以上の他の電力消費要素15に対しても電気エネルギーが供給されてもよい。電力設備12を経由して電気エネルギーの供給を受ける複数の電気自動車(EV1、EV2、EV3、・・・)及び1又は2以上の他の電力消費要素15は、1つのグループ(負荷群11)を形成している。
【0023】
電流計測装置13は、電力設備12を経由して1つの負荷群11に含まれる全ての電気自動車(EV1、EV2、EV3、・・・)及び他の電力消費要素15へ送られている総送電電力の現在値(Pall_now)、換言すれば、負荷群11の全体の総送電電力を計測する。
【0024】
ここで、負荷群11の全体の電力容量、即ち、電力設備12を経由して負荷群11の全体に送ることができる総送電電力の最大値(Pall_max)が予め定められている。本実施形態に係る受電制御装置は、総送電電力の最大値(Pall_max)の制約に基づき、電気自動車EV1の要素受電電力を制御する。例えば、受電制御装置は、電流計測装置13が計測する総送電電力の現在値(Pall_now)が、電力の最大値(Pall_max)を超えないように、電気自動車EV1の受電電力を制御する。勿論、総送電電力の現在値(Pall_now)が電力の最大値(Pall_max)を一時的に超えることを許容するように、電気自動車EV1の受電電力を制御しても構わない。なお、総送電電力の最大値(Pall_max)は、固定値でもよく、固定値でなくてもよい。オフィスビル、商業施設、工場、高速道路のパーキングエリア等の施設内には、電気自動車EV用の充電スタンドのみならず、照明装置、空調装置、昇降装置など、電力を消費する施設内機器が存在する。これらの設備によっては、総送電電力の最大値が変動する場合がありうる。
【0025】
図1に示すように、本実施形態では、電力設備12、電流計測装置13及び電気自動車EV1の各々に対して、差分情報送信装置14が無線又は有線により通信可能に接続されている。電力設備12は、差分情報送信装置14へ総送電電力の最大値(Pall_max)を示す電気信号を送信する。電流計測装置13は、計測した総送電電力の現在値(Pall_now)を示す電気信号を差分情報送信装置14へ送信する。
【0026】
差分情報送信装置14は、計算部31と送信部32とを備える。計算部31は、(1)式に示すように、総送電電力の最大値(Pall_max)から総送電電力の現在値(Pall_now)を減ずることにより差分電力(△P)を算出する。送信部32は、差分電力(△P)を示す電気信号を、負荷群11に含まれる全ての電気自動車(EV1、EV2、EV3、・・・)に対して、移動体通信により送信(ブロードキャスト)する。差分電力(△P)を示す電気信号は受信装置21により受信され、計算装置23へ転送される。これにより、受電制御装置は、電力設備12を経由して負荷群11の全体に送ることができる総送電電力の最大値(Pall_max)から、電力設備12を経由して負荷群11の全体に送っている総送電電力の現在値(Pall_now)を減じて得られる差分電力(△P)を示す情報を取得することができる。
【0027】
【数1】
【0028】
なお、差分情報送信装置14は、送信部32を用いて、負荷群11に含まれる全ての電気自動車(EV1、EV2、EV3、・・・)の受信装置21に対して、無線通信により差分電力(△P)を示す情報を送信(ブロードキャスト)する。または、差分電力(△P)を示す情報の送信には有線による通信でもよい。
【0029】
図1に示す例において、差分情報送信装置14は、各電気自動車から送信される、例えばバッテリ25の充電率(SOC:STATE OF CHARGE)や受電を終了する時刻(T)など、各電気自動車の状態を示す信号を受信する受信装置を備えていなくてもよい。即ち、差分情報送信装置14と各電気自動車との間は、差分情報送信装置14から各電気自動車への片方向のみに通信できればよい。なお、双方向の通信も可能である。
【0030】
差分情報送信装置14は、例えば、コンピュータネットワークを介して、電力設備12、電流計測装置13、及び負荷群11に接続されたサーバであってもよい。或いは、差分情報送信装置14は、電力設備12の一部分として構成されていてもよい。
【0031】
車両状態取得装置22は、電気自動車EV1の状態を表す情報を取得する。例えば、「電気自動車EV1の状態」とは、電気自動車EV1のユーザの要求を表す数値である。電気自動車EV1のユーザの要求を表す数値は、電気自動車EV1の受電を終了する時刻(受電の終了時刻T)までの残り時間(T)である。残り時間(T)は、電気自動車EV1が受電を終了する時刻から算出可能である。残り時間(T)は、電気自動車EV1のバッテリ25を充電することができる残り時間である。
【0032】
例えば、自宅に帰宅したユーザが、自宅の駐車場にて電気自動車EV1のバッテリ25の充電を開始し、翌日の午前7時に電気自動車EV1にて外出する予定がある場合、翌日の午前7時から所定時間(5分)前の時刻を、受電の終了時刻として設定することができる。このように、“翌日の午前7時に外出したい”という「ユーザの要求」は、受電の終了時刻(午前6時55分=T)及び受電の終了時刻までの残り時間(T)を表している。「受電の終了時刻(T)」とは、電気自動車EV1が受電を続けることが可能な期間が終了する時刻を意味し、受電制御フロー(図2)において、受電を継続しない(S03でNO)と判断する時刻から区別される。
【0033】
受電の終了時刻(T)は、ユーザがスマートフォンなどの情報通信端末又は電気自動車EV1に搭載されたユーザインターフェースを用いて実際に設定した時刻であってもよい。又は、ユーザからの具体的な指示又は設定が無い場合、ユーザの過去の行動履歴(過去の出発時刻の履歴など)を調査して得られる統計データから推定される時刻であっても構わない。
【0034】
計算装置23は、電気自動車EV1のユーザの要求を表す数値(電気自動車EV1の状態)に基づいて、他の電気自動車(EV2、EV3、・・・)の受電よりも自己EV1の受電が優先される度合いを示す電気自動車EV1の優先度(β)を算出する。具体的に、計算装置23は、(2)式を用いて、現時刻(T)から受電の終了時刻(T)までの残り時間(T)から優先度(β)を算出する。(2)式において、Nは、負荷群11内で受電を行う電気自動車の総数を示す。
【0035】
【数2】
【0036】
(2)式に示すように、優先度(β)は残り時間(T)に反比例する。残り時間(T)が短くなるにつれて、優先度(β)は高くなる。(2)式は一例にすぎず、例えば、優先度(β)は、残り時間(T)を2以上のg回(gは正数)掛け算した「残り時間(T)のg乗」に反比例してもよい。
【0037】
電気自動車の総数(N)は、負荷群11における過去の受電履歴を調査して得られる統計データ(数量データ)であってもよいし、電力の現在値(Pall_now)から、おおよその電気自動車の総数(N)を推定することも可能である。総数(N)は差分電力(△P)と同様に差分情報送信装置14もしくは差分情報送信装置14に付随する装置から同報送信される。または、充電システムの位置情報や識別信号などで、総数(N)を特定してもよい。
【0038】
計算装置23は、(3)式に示すように、差分電力(△P)に優先度(β)を乗じることにより要素差分電力(β△P)を算出し、前回の処理サイクルにおける要素受電電力(Pt)に、要素差分電力(β△P)を加算することにより、要素受電電力(Pt+1)を更新する。なお、要素受電電力を示す記号「P」の添え字(右下付文字)「t」「t+1」は、「処理サイクル」の繰り返し回数を示す。tは、零を含む正の整数である。
【0039】
【数3】
【0040】
計算装置23は、受電装置24が更新後の要素受電電力(Pt+1)を受電するように受電装置24に対して指示信号を送信し、指示信号を受信した受電装置24は、更新後の要素受電電力(Pt+1)を、電力設備12を経由して受電する。
【0041】
受電制御装置は、(a)~(e)の処理ステップを含む「処理サイクル」を一定の周期で繰り返し実行することにより、電気自動車EV1の受電装置24が受電する電力(要素受電電力Pt)を制御する。
【0042】
次に、図2のフローチャートを参照して、図1の受電制御装置による受電制御方法の一例(基本例)を説明する。なお、当業者であれば、図1の受電制御装置の具体的な構成及び機能の説明から、受電制御装置による受電処理方法の具体的な手順を容易に理解できる。よって、ここでは、図1の受電制御装置による受電処理方法として、受電制御装置の主要な処理動作を説明し、詳細な処理動作の説明は、図1を参照した説明と重複するため割愛する。
【0043】
まず、ステップS01において、受信装置21は、計算部31により算出された差分電力(△P)を示す情報を取得する。処理はステップS02に進み、車両状態取得装置22は、電気自動車EV1の状態を示す情報の例として、受電の終了時刻(T)を示す情報を取得する。
【0044】
処理はステップS03に進み、受電制御装置は、受電を継続するか否かを判断する。例えば、電気自動車EV1のユーザから受電終了の指示信号を受信した場合(S03でNO)、又は、現時刻が受電の終了時刻(T)となった場合、受電の継続を終了する。或いは、充電ポートの未接続を検知した場合など(S03でNO)、それから数分の内に、電気自動車EV1が移動を開始する可能性が高まるため、受電の継続を終了する。更に、バッテリ25の充電率(SOC)が目標値に達した場合(S03でNO)、受電の継続を終了する。これらの状況が無ければ(S03でYES)、受電制御装置は受電を継続する。
【0045】
処理はステップS04に進み、計算装置23は、(2)式を用いて、受電の終了時刻(T)から、電気自動車EV1の優先度(β)を算出する。処理はステップS05に進み、計算装置23は、(3)式に、差分電力(△P)及び優先度(β)を代入することにより、要素受電電力(Pt+1)を更新する。
【0046】
ステップS06へ進み、計算装置23は、受電装置24が更新後の要素受電電力(Pt+1)を受電するように受電装置24を制御する。受電制御装置は、ステップS01からステップS06までを単位とする処理サイクルを、ステップS03でNOと判定されるまで、繰り返し実行することにより、要素受電電力(P)を制御する。
【0047】
なお、要素受電電力(Pt+1)を更新する際に、前回の要素受電電力(Pt)から、一定の電力補正値(αPt)を減算することにより、更新後の要素受電電力(Pt+1)を補正してもよい。これにより差分電力(△P)を零に成り難くすることができる。これにより新たに受電を開始したい電気自動車は、早期に受電を開始することができる。
【0048】
次に図3~6を参照して受電制御方法の一例を説明する。
【0049】
まず最初に図3を参照して比較例を説明する。ここでいう比較例は、本実施形態に係る受電制御方法を使用しないケースである。図3には3つのグラフが示されている。3つのグラフの縦軸は、上から順に電力(kW)、SOC、優先度である。符号40はEV1の電力を示す。図3において電力が増えることは充電されていることを意味する。符号41はEV2の電力を示す。符号42はEV3の電力を示す。符号43は目標電力を示す。目標電力とは差分電力(△P)を意味する。符号44は合計電力を示す。合計電力とは、EV1~EV3の各電力を合計したものである。
【0050】
符号45はEV1のSOCを示す。符号46はEV2のSOCを示す。符号47はEV3のSOCを示す。時刻0において、EV1のSOCは60%であり、EV2のSOCは40%であり、EV3のSOCは20%である。時刻0とはEV1~EV3が所定場所(例えば充電スタンド)に到着する前の時刻である。符号48はEV1の優先度を示す。符号49はEV2の優先度を示す。符号50はEV3の優先度を示す。
【0051】
時刻10においてEV1~EV3が所定場所(例えば充電スタンド)に到着し、充電を開始したとする。SOCが低いほど優先度が高くなるため、時刻10において、EV3の優先度がもっとも高い。EV2の優先度がとの次に高い。充電開始後、目標電力が変化する。時刻70において、EV1及びEV2が充電を停止する。EV3の充電量が増加する。これにより、時刻120においてEV3のSOCがEV2のSOCより高くなり、EV2の優先度はEV3の優先度より高くなる。しかし、それにも関わらず、EV2の充電は開始されず、EV3の充電が継続する。その後、時刻165において、EV3のSOCがEV1のSOCより高くなり、EV1の優先度はEV3の優先度より高くなる。換言すればEV3の優先度がもっとも低くなる。しかし、それにも関わらず、EV1の充電は開始されず、EV3の充電が継続する。その後、時刻250において、EV3の充電が完了し、EV1~EV2の充電が開始される。その後、時刻440付近において、EV1~EV2の充電が完了する。
【0052】
以上説明したように、時刻125、160において優先度が入れ替わったにも関わらず、優先度にしたがった充電が行われていない。その理由の一つとして、充電可能電力が十分でなかったことが挙げられる。EV1あるいはEV2から見たとき、時刻125、160において、充電可能電力はおよそ0.8kW残っている。0.8kWとは目標電力から合計電力を引いた値である。0.8kWあれば自己(EV1とする)の充電を開始するための電力としては十分であるが、仮に他のEV(EV2とする)が同時に充電を開始した場合、過負荷が発生するおそれがある。自己のEVは他のEVの状態を知ることができないため、過負荷が発生するリスクを避けようとして、EV1もEV2も充電を開始しなかった。
【0053】
このような過負荷の発生を防止するための方策として、所定時間後に充電を開始する方法が考えられる。具体的には、図4に示すように、EV1が充電を開始する時刻と、EV2が充電を開始する時刻をずらす方法が考えられる。充電を開始する時刻をずらすことにより、図4に示すように、EV1もEV2も充電を開始することが可能となる。しかしながら、図4に示すように、EV2が充電を開始するタイミングで過負荷が発生している(3.8kWを超過している)。なお図4図3と同様に比較例である。
【0054】
そこで本実施形態では、各電気自動車で充電開始時間をずらしながら、所定条件に基づいて充電を開始する。この所定条件には様々な条件が含まれる。以下所定条件の例について説明する。
【0055】
所定条件には、「自己の最小充電電力で充電を開始した際に過負荷が発生する可能性がある場合において、新たに電気自動車が到着したとき、あるいは充電停止状態になったときから、与えられた指令回数が所定値を超えた場合」という条件が含まれる。この条件が満たされたとき、電気自動車は充電を開始する。指令回数は電力システム側から与えられる。既に電気自動車が存在する場合、充電可能電力がなかったとしても充電を開始することで入れ替えを起こすことができる。しかし、各電気自動車が常に充電を開始しようとすると、多くの電気自動車が同時に充電を開始することになるため、大きな過負荷が発生するとともに、その後に大きな抑制指令値が送られてくることから、全ての電気自動車の充電が停止するおそれがある。指令回数を与えるのは、電気自動車の重複を防ぐためである。もし充電停止がランダムであれば、重複する台数の平均値は[N台/M指令間隔]で与えることができるため、多くの電気自動車が同時に充電を開始することを防ぐことができる。
【0056】
指令回数は最大接続台数に比例するように与えてもよい。上述したように、重複する台数の平均値は[N台/M指令間隔]で与えられる。台数が多いと重複して過負荷が発生する可能性が高くなる。そこで、指令回数として総接続台数N台の影響を与えるようにする。総台数N台は事前に決めておく方法、同報送信によって送る方法、そして、βmax(=1/最大接続台数)を参照する方法などで与えることができる。また、重複したときのリスクを踏まえて与えるのが望ましい。もし多少の過負荷が許容されるのであれば(例えば30分値で合計電力量が一致すればよい場合など)においては時間を短縮させることができ、充電のリスクを許容しづらい場合には重複確率が3σになるような時間などを採用すればよい。最大接続台数に比例させるのが容易であるが、台数が多い場合には均等化しやすくなるため、想定される最大台数と許容される電力から確率を考慮して決めるのが最適である。100台中20台が重複する確率と、5台中1台が重複する確率は異なる。
【0057】
指令回数は電力システムの状態が変わる回数を考慮して与えてもよい。重複を避ける以外の判断材料としては、系統や電気自動車の状態が変わるまでは新たに起動させる必要はないことがあげられる。このため、最短では台数を基に算出し、それ以上の場合は系統の状態が変わる典型的な時間(例えば30分)で決めれば足りる。この項目は、1分単位で制御をする場合には両方とも似た値になるが、1秒単位で制御する場合には大きく異なる値になる。
【0058】
所定条件には、「差分情報送信装置14から送信されてくる信号が正の値である場合」という条件が含まれる。差分情報送信装置14から送信されてくる信号が正の値であるとは、この信号は使用可能電力を示す。受電制御装置は、使用可能電力に応じて充電停止から充電を開始する時刻を変化させ、電気自動車の充電を開始する。充電停止から充電を開始するまでの時間を所定値にすると、使用可能電力に関係になく充電をするために、以下の2つの事象が発生する。1つ目は使用可能電力が不足していることを示す信号(抑制信号)が出ているにもかかわらずに、充電する。2つ目は電力が比較的余っているにもかかわらず、充電を開始しない。そこで充電停止から充電再開までの時間を使用可能電力量(差分電力△P)に基づいて制御する。
【0059】
受電制御装置は使用可能電力が負の値のときには時間をカウントしない。使用可能電力が自己の最低充電電力よりも小さいときには時間をカウントしない。使用可能電力が負の値のときや、自己の最低充電電力よりも小さいときに充電を開始すると、過負荷が発生する。そこで、上述の状態のときには充電をしないようにする。ただし、それだけでは負の値が解消されたときにそれまで蓄積した電気自動車の多くが充電を開始することになる。そこで新たにカウントするという考え方を採用する。使用可能電力が負の値のときは時間をカウントしないようにすることで全体的に遅延をさせて、過負荷の発生を防止する。
【0060】
受電制御装置は使用可能電力に比例してカウント数を変化させる。充電停止から充電開始するまでの時間を変更して、所定ポイントを蓄積したら充電を開始するようにする。ここでポイントの与え方としては、使用可能電力に比例させることの望ましい。このようにポイントを与えることにより、確率的には使用可能電力に比例した台数が充電するようになる。例として、差分電力(△P)を起動電力で割った値を各指令値でのポイントとする。そして、閾値は最大接続台数で与える。これにより、平均的には差分電力(△P)を補完するのに最も適した台数が充電を開始することになる。このような条件で充電を開始することにより、図5に示すように、過負荷の発生を防止しつつ、充電することが可能となる。
【0061】
所定条件には優先度(β)の大きさが含まれる。優先度(β)が高いほど充電開始する時間を早くしてもよい。電気自動車の状態によらずに時間と外部条件のみで充電開始時間を決めた場合、以下の2つの課題が発生する可能性がある。1つ目の課題は、供給可能電力が一時的に低下する、一般負荷が急増するなどして、同時に充電が停止する電気自動車が増えた場合に、充電開始タイミングも重複する。2つ目の課題は、入れ替わりの可能性が高くて早く充電を開始したい電気自動車(優先度(β)の高い電気自動車)と、入れ替わりの可能性が低くて早く充電を開始する必要のない電気自動車(優先度(β)の低い電気自動車)とが充電を開始する確率が同じであるため、正しい入れ替わりが発生するまで無駄な時間を要する。入れ替えをスムーズにするには、これまで電気自動車の状態(つまり優先度(β))によって充電を開始するまでの時間を調整すればよく、優先度(β)が高い電気自動車ほど時間を短くする。なお、この方法は上述した「使用可能電力に応じて充電停止から充電を開始する時刻を変化させる」方法と共存させることができる。
【0062】
充電開始タイミングを優先度(β)の与え方にあった関数で与えてもよい。優先度(β)のばらつき具合を考慮することが望ましい。もし優先度(β)のバラつきがない場合には、同時に充電が開始する可能性があるためである。関数の与え方の一例として、(4)式が挙げられる。
【0063】
【数4】
【0064】
β=0のときにTの待機時間となり、β=βmaxのときにT-Tになる。本方式では最長待機時間をTで与えることができる。T=Tと置くことでβmaxのときに待機することなく充電を開始することができる。本方式ではβは1-SOCなどのある程度一様に分布することが望ましい。T、Tは時間である。
【0065】
関数の与え方の他の例として(5)式が挙げられる。
【0066】
【数5】
【0067】
(5)式は、βを1/Tで与える場合に望ましい。
【0068】
関数の与え方の他の例として(6)式が挙げられる。
【0069】
【数6】
【0070】
(6)式は、SOCが所定値を越えると1/10になるときに望ましい。
【0071】
乱数を用いて充電を開始する時間を決定してもよい。上述の所定条件では、指令回数を与える、差分電力(△P)を用いて充電を開始する時刻を設定する、優先度(β)に応じて充電を開始する時刻を設定するという方法を述べた。これらの方法を用いたとしても優先度(β)が時間の関数になっていない場合(つまりSOCなど充電しなければ変わらない状態のみの関数となっている場合)においては、同時に充電が開始して過負荷が発生する可能性がある。これは、優先度(β)の高い電気自動車から充電をすることにより優先度(β)の集中が発生するため、優先度(β)に応じて補正する効果が失われる可能性があるからである。そこで乱数を用いて充電を開始する時間を決定することも可能である。乱数の幅はN台分に相当しておくようにしておけば、平均して同時充電をする台数を1台にすることができる。なお、この方法は上述した「使用可能電力に応じて充電停止から充電を開始する時刻を変化させる」方法や「優先度(β)が高いほど充電を開始する時間を早くする」方法と共存させることができる。
【0072】
充電開始後は充電を停止させにくくするようにしてもよい。これは換言すれば充電開始直後に直ぐに停止しないようにする方法である。上述の所定条件では充電を停止してから、充電を開始するまでの時間について述べた。この条件は充電開始後の動作を定めることにより、充電開始後に低優先度電気自動車と高優先度電気自動車との間で適切な電力融通を図るものである。上述のいずれかの方法により十分な充電可能電力がない中で充電を開始すると、過負荷が発生する可能性がある。ここではわずかながらに発生する過負荷も含む。過負荷が発生すると差分情報送信装置14からは充電電力を抑制する指令が送られてくる。もし充電を開始した電気自動車の充電電力が最低電力である場合、充電を開始した電気自動車の優先度(β)が高いとしても、他の電気自動車と電力融通することなく、すぐに停止することになる。充電開始直後には従来よりも充電停止しづらくするように調整を行うことで電力融通をする時間を確保できるようになる。
【0073】
また充電開始後、所定指令回数では充電を停止しないようにしてもよい。所定指令回数では充電を停止させることがなければ、その回数の中で過負荷が収まるとともに電気自動車間で電力調整が行われれば、高優先度電気自動車は充電を継続することができる。この回数は過負荷から定常化するまでの指令回数や、電力システムが電力融通に要する指令回数以上にしておけばよい。
【0074】
また充電開始電力を高くしてもよい。所定指令回数では充電を停止しないようにした場合、以下の2つの課題が発生する可能性がある。1つ目は、過負荷が発生したとしてもその時間帯では停止しないため、過負荷時間が長くなることがある。2つ目は、低優先度と高優先度の電気自動車が同時もしくは近接した指令で充電を開始した場合に両方が充電を行うことで両方ともに規定値を下回り充電を行えなくなることがある。このような課題を解決するため、過負荷量と優先度(β)に応じて充電停止までの時間を調整することが有効となる。この一つの方法として充電開始電力を最低電力値よりも高くすることが有効となる。この場合、最低電力と起動電力の差分の電力によるマージンを与えることにより、小さな過負荷では停止しなくなるが、大きな過負荷では停止するようになる。また、優先度(β)が小さい電気自動車は電力が早く低下するため先に停止し、優先度(β)の高い電気自動車は充電を継続できるようになる。また本方式を採用することにより、優先度(β)に応じて停止時間が変わるため、充電開始までを所定時間としておいても停止時間をばらけさせることができる。本方式によれば図6に示すように、過負荷の発生を防止しつつ、充電することが可能となる。
【0075】
充電を開始してから停止するまでの時間である起動継続時間を優先度(β)によって決めてもよい。最低時間を優先度(β)によって与えてもよい。
【0076】
また最低時間を使用可能電力に応じて変化させてもよい。この場合、充電を開始するときと同様の考え方である。最低動作する時間を所定にすると過負荷が大きいにもかかわらず動作してしまう、あるいは高優先度電気自動車と低優先度電気自動車が同様に停止してしまうことがあるなどの課題がある。そこで、連続運転時間を優先度や使用可能電力に応じて変化させる。これにより過負荷が大きいときには短時間で停止し過負荷を防止することができる、高優先度電気自動車よりも低優先度電気自動車が先に停止して、高優先度電気自動車の充電を行うことができる、などの効果を得ることができる。
【0077】
また仮想的な電力値を与えて評価してもよい。上述した所定条件では電力を実際に与えていた。これにより、以下の2つの課題が起こる可能性がある。1つ目は、充電開始時に過負荷が大きくなる。2つ目は、過負荷によって他の電気自動車を無駄に停止させてしまう。そこで充電を開始する電力を実際に最低電力にするのではなく、内部パラメータとして大きくしておきその値を用いて充電停止の判断をすることとする。これにより、実際に充電を開始する電力を大きくするのと同様に過負荷になったときにすぐに停止することを防止することができるとともに、過負荷量や優先度(β)に応じて停止時間が変わるため、高優先度電気自動車の方が充電しやすくなる。さらに、過負荷量を低減できるとともに、より優先度(β)に応じた制御を行うことが可能となる。
【0078】
また、前回充電を停止した電気自動車よりも、到着した後にまだ充電を開始していない電気自動車の方が充電開始までの時間を短くしてもよい。到着した電気自動車も充電を開始する必要がある。到着した電気自動車はまだ全体に対して優先度(β)が低いか否か判断されておらず、優先度(β)が高い可能性がある。そこで到着した電気自動車は自己の優先度(β)の確認をするために、既に充電をした後に充電が停止した電気自動車よりも優先的に充電開始する機会を与える。
【0079】
なお放電する場合にも同様の方法を用いればよい。これまでは充電する方向に対して説明した。放電する場合においても既存技術では同様の課題が発生する。つまり、既に放電をしている電気自動車が存在した場合、差分電力(△P)が小さくなるため、放電を行っていない電気自動車は新たに放電を開始しようとしない。放電する電気自動車が追加されないため、既に放電をしている電気自動車は放電を継続し続けることになる。これによって、優先度(β)にひずみが生じる。放電に関しても充電と同じように放電開始のタイミングを調整する。調整方法として、所定時間による放電開始制御、過放電時間帯を無視した制御、優先度(β)に応じた制御、乱数を用いた制御などが挙げられる。これにより放電のみを行う電気自動車を回避することができ、優先度(β)の高い電気自動車が適切に放電を行うようになる。
【0080】
放電する場合と充電する場合の停止のカウント開始タイミングは別々に扱う。過放電時間帯を無視した制御、及び過負荷時間帯を無視した制御以外において、停止のタイミングからカウントを開始すると、いずれか一方を選択し、反対側の選択肢を選ばないことになる。例えば優先度(β)が低い電気自動車の場合は、停止になってから次の判断は放電を選択し、その放電が終わった後、再度カウントを開始するとまた放電を選択することになり、連続して放電のみを選択することになってしまう。そこで、充電と放電のカウントの回数はそれぞれ別途取り扱うこととし、充電している間と放電している間は値を更新しないこととする。
【0081】
(作用効果)
以上説明したように、本実施形態に係る受電制御装置によれば、以下の作用効果が得られる。
【0082】
受電制御装置は、複数の受電要素を含む負荷群11へ電力供給基点10を経由して電気エネルギーを供給する電力システムにおいて、負荷群11に含まれる受電要素が受電する電力である要素受電電力を、処理サイクルを繰り返すことにより制御する。処理サイクルには、電力供給基点の状態によって作成される信号を受信し、他の受電要素の受電よりも自己の受電が優先される度合いを示す受電要素の優先度を各々の受電要素の状態に基づき設定し、要素受電電力が所定電力以下になると充電を停止するように要素受電電力を更新し、更新後の要素受電電力を受電するように受電要素を制御し、信号と優先度に基づいて優先度が高い受電要素の方が優先度が低い受電要素よりも要素受電電力が大きくなるように制御する、ことが含まれる。受電要素が充電を開始する時間を各受電要素でずらしながら、所定条件に基づいて受電要素の充電を開始する。これにより充電する際に発生しうる過負荷を低減することができる。以下所定条件について説明する。
【0083】
自己の最小充電電力で充電した際に過負荷になる可能性がある場合において、新たに受電要素が到着したとき、あるいは充電停止状態になったときから、与えられた指令回数が所定値を超えた場合、受電要素の充電を開始してもよい。これにより多くの電気自動車が同時に充電を開始することを防ぐことができ、充電する際に発生しうる過負荷を低減することができる。
【0084】
信号が使用可能電力を示す場合、使用可能電力に応じて充電停止から充電を開始する時刻を変化させて受電要素の充電を開始してもよい。これにより過負荷の発生を防止しつつ、充電することが可能となる。
【0085】
優先度が高いほど充電を開始する時間を早くしてもよい。これにより過負荷の発生を防止しつつ、充電することが可能となる。
【0086】
乱数を用いて受電要素が充電を開始する時間を決定してもよい。これにより過負荷の発生を防止しつつ、充電することが可能となる。
【0087】
受電要素が充電を開始した後は充電を停止させにくくしてもよい。これにより電力融通をする時間を確保できるようになる。
【0088】
新たに受電要素が到着した場合、新たに到着した受電要素が充電を開始する時間を早くしてもよい。これにより過負荷の発生を防止しつつ、新たに到着した電気自動車は素早く充電を開始することができる。
【0089】
上述の実施形態に記載される各機能は、1または複数の処理回路により実装され得る。処理回路は、電気回路を含む処理装置等のプログラムされた処理装置を含む。処理回路は、また、記載された機能を実行するようにアレンジされた特定用途向け集積回路(ASIC)や回路部品等の装置を含む。
【0090】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0091】
本発明は受電要素側で電力を調整する方式(電力量を所定割合で減ずる方法など)であっても、信号送信側で電力を調整する方式(充電可能電力をプラスマイナスを切り替えることで調整する方式など)であっても、適用可能である。
【符号の説明】
【0092】
10 電力供給基点
11 負荷群
13 電流計測装置
14 差分情報送信装置
15 電力消費要素
21 受信装置
22 車両状態取得装置
23 計算装置
24 受電装置
25 バッテリ
26 モータ
31 計算部
32 送信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6