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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】車両用内装構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/02 20060101AFI20241010BHJP
   B60R 21/215 20110101ALI20241010BHJP
【FI】
B60R13/02 C
B60R21/215
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021036072
(22)【出願日】2021-03-08
(65)【公開番号】P2022136453
(43)【公開日】2022-09-21
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000100366
【氏名又は名称】しげる工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】菊地 淳悟
(72)【発明者】
【氏名】曽我 俊介
(72)【発明者】
【氏名】新谷 俊昭
【審査官】小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-105583(JP,A)
【文献】特開2013-052788(JP,A)
【文献】特開2016-052858(JP,A)
【文献】特開2005-053366(JP,A)
【文献】特開2009-067100(JP,A)
【文献】特開2009-234360(JP,A)
【文献】米国特許第06168186(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0391674(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102007027323(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102007033743(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/02
B60R 21/20 - 21/2165
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性変形可能なカバーと、上記カバーの裏側に配置されて上記カバーを支持する台座部材と、を備え、上記カバーの裏側において上記台座部材から離れた位置に、上記カバーを押し開いて車室内に展開可能なエアバッグが配置された車両用内装構造であって、
上記カバーの裏側には、上記エアバッグから遠い位置に第1ボス部が形成され、上記エアバッグに近い位置に第2ボス部が形成され、
上記台座部材は、上記第1ボス部に対応する第1連結板部と上記第2ボス部に対応する第2連結板部とを有し、
上記第1連結板部には貫通孔が形成され、上記第2連結板部には上記エアバッグ側の縁で開放された切欠き孔が形成されており、
上記第1連結板部と上記第1ボス部が、上記貫通孔に挿通された第1連結具により第1連結箇所で連結され、
上記第2連結板部と上記第2ボス部が、上記切欠き孔に挿通された第2連結具により第2連結箇所で連結されていることを特徴とする車両用内装構造。
【請求項2】
上記第2連結板部の縁からの上記切欠き孔の形成方向は、展開する上記エアバッグに上記カバーが押されたとき、上記第1連結箇所を支点として上記第2連結具が移動しようとする方向と平行であることを特徴とする請求項1に記載の車両用内装構造。
【請求項3】
上記第2連結箇所は、展開する上記エアバッグに押された上記カバーが上記第1連結箇所を中心に回転しようとする方向において、上記第1連結箇所より前方側に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用内装構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内装材の裏側にエアバッグを配置した車両用内装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の内装材の裏側には、エアバッグが配置され、車両の衝突時には車室内に展開し、乗員にかかる衝撃を緩和している。
【0003】
下記特許文献1には、車両用内装構造としてフロントピラーのピラーガーニッシュ構造が記載されている。この構造は、フロントピラーのインナーパネルに取り付けられるエアバッグカバーとしてのガーニッシュを備え、ガーニッシュの裏側には、衝突時にフロントドアを覆うように車室内に展開し乗員を保護するカーテンエアバッグが配置されている。
【0004】
ガーニッシュの裏面には、カーテンエアバッグに対しフロントドアとは反対側の位置に、取付孔を有した取付ボスが形成されている。この取付ボスの取付孔には車室側から取付ボルトが通され、この取付ボルトが、フロントピラーのインナーパネルの取付孔に配置されたナットに螺合される。これにより、ガーニッシュはフロントピラーに取り付けられている。
【0005】
またガーニッシュの裏面には、取付ボスとカーテンエアバッグとの間に、ガーニッシュからインナーパネル側に突出してカーテンエアバッグの展開方向をフロントドア側に制御する規制壁が設けられている。
【0006】
カーテンエアバッグ展開時には、規制壁により取付ボス側へのカーテンエアバッグの膨張が規制され、カーテンエアバッグがフロントドア側に突出する。これにより、カーテンエアバッグに押されたガーニッシュでは、規制壁よりフロントドア側の部分が車室側に開かれるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2008-50004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1のピラーガーニッシュ構造では、ガーニッシュにおける規制壁よりフロントドア側の部分を扉状に開いてカーテンエアバッグを車室内に展開させている。そのため、ガーニッシュの開きが小さく、車室内へのカーテンエアバッグの展開が円滑でなかった。
【0009】
また、取付ボスや、ガーニッシュの押し開かれる部分に荷重が集中するため、取付ボスやガーニッシュが破損して、破片が飛散するおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題の少なくとも1つを解決するためになされた本発明の一態様に係る車両用内装構造は、
弾性変形可能なカバーと、上記カバーの裏側に配置されて上記カバーを支持する台座部材と、を備え、上記カバーの裏側において上記台座部材から離れた位置に、上記カバーを押し開いて車室内に展開可能なエアバッグが配置された車両用内装構造であって、
上記カバーの裏側には、上記エアバッグから遠い位置に第1ボス部が形成され、上記エアバッグに近い位置に第2ボス部が形成され、
上記台座部材は、上記第1ボス部に対応する第1連結板部と上記第2ボス部に対応する第2連結板部とを有し、
上記第1連結板部には貫通孔が形成され、上記第2連結板部には上記エアバッグ側の縁で開放された切欠き孔が形成されており、
上記第1連結板部と上記第1ボス部が、上記貫通孔に挿通された第1連結具により第1連結箇所で連結され、
上記第2連結板部と上記第2ボス部が、上記切欠き孔に挿通された第2連結具により第2連結箇所で連結されていることを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、カバーは、第1、第2ボス部と第1、第2連結板部の連結により台座部材に安定した状態で支持されている。エアバッグ展開時に、カバーがエアバッグに押されると、第2連結箇所では、第2連結板部の切欠き孔から第2連結具が外れ、第2ボス部と第2連結板部の連結状態が解除されるので、カバーは第1ボス部と第1連結板部との第1連結箇所を中心として弾性変形して開き、これによりエアバッグ展開を円滑に行なうことができる。
【0012】
好ましくは、上記第2連結板部の縁からの上記切欠き孔の形成方向は、展開する上記エアバッグに上記カバーが押されたとき、上記第1連結箇所を支点として上記第2連結具が移動しようとする方向と平行である。
上記構成によれば、エアバッグ展開時に第2連結具が移動しようとする方向と平行に切欠き孔が形成されているので、第2連結具が外れやすくなっている。また、第2連結板部が局所的な荷重を受けて破損し破片が飛散することを避けることができる。
【0013】
好ましくは、上記第2連結箇所は、展開する上記エアバッグに押された上記カバーが上記第1連結箇所を中心に回転しようとする方向において、上記第1連結箇所より前方側に配置されている。
上記構成によれば、エアバッグ展開時、第1連結箇所を中心としたカバーの開きを妨げず、円滑なエアバッグ展開を促進することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、エアバッグ展開を円滑に行なうことができる車両用内装構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る車両用内装構造をリアピラーに適用した車両の側面図である。
図2】同車両用内装構造を構成するカバーを裏側(車外側)から見た図である。
図3】(A)図2の円部IIIAに相当する台座部材の拡大図である。(B)図2の円部IIIBに相当する台座部材の拡大図である。
図4図2のIV-IV線に沿う車両用内装構造の断面図である。
図5図2のV-V線に沿う車両用内装構造の断面図である。
図6】同車両用内装構造の図5と同様の断面図であって、エアバッグ展開時にカバーの端部が押し開かれた初期の状態を示す。
図7】同車両用内装構造の図4と同様の断面図であって、エアバッグ展開時にカバーが押し開かれ、第2連結板部の切欠き孔から第2連結具が外れた状態を示す。
図8】同車両用内装構造の図5と同様の断面図であって、エアバッグ展開時にカバーが押し開かれ、カバー及び台座部材が車体から離れた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態をなす車両用内装構造について、図1図8を参照して説明する。この実施形態は、自動車のリアピラーのピラートリム構造(内装構造)に本発明を適用したものである。
【0017】
図1に示すように、自動車1(車両)のリアピラー2は、車室の斜め後ろに配置され、ルーフ3から後方に延びて下方に傾斜している。リアピラー2には、下方前側にリアドアガラス4が設けられ、上方後側に、図4に示すリアガラス5が設けられ、車室側にリアピラー2の延び方向に沿って延びるピラートリム10が取り付けられている。
【0018】
ピラートリム10とリアピラー2との間には、図5に示すように、カーテンエアバッグ20と、リアピラー2に支持されピラートリム10を支持する台座部材30とが配置されている。
【0019】
リアピラー2は、ともに金属薄板からなる車室側のインナーパネル2aと車外側のアウターパネル2bとを有し、これらによって閉断面構造をなしている。インナーパネル2aには、車室側に延びるブラケット6が固定され、ブラケット6の車室側には係止孔6aが形成されている。
【0020】
エアバッグ20は、ルーフ3(図1)のサイド部からリアピラー2に沿って折り畳まれた状態で設けられている。ルーフ3のサイド部又はリアピラー2には、図示しないインフレータ(ガス発生器)が設けられている。このインフレータは、車両に取付けられた衝突検知センサからの出力を受けたときにエアバッグ20内にガスを供給し、これにより、エアバッグ20は車室側面に沿って車室内にカーテン状に展開して衝突時に乗員を保護する。
【0021】
ピラートリム10は、樹脂により弾性変形可能に形成され、リアピラー2を被覆し得る形状を有している。ピラートリム10は、リアドアガラス4(図1)側のピラートリム本体11と、リアガラス5側のカバー40とを有している。カバー40は、車室側からインナーパネル2aとエアバッグ20を覆っている。
【0022】
ピラートリム本体11のカバー40側の端部には、図4に示すように、上記インナーパネル2a側に延びる規制壁12が設けられている。規制壁12は、エアバッグ20の展開方向を規制する。規制壁12の基端には、係合溝13が形成されピラートリム10の延びる方向(長手方向)に延びている。この係合溝13は、ピラートリム本体11のリアドアガラス4(図1)側の部位よりインナーパネル2a側に凹んでいる。
【0023】
規制壁12と係合溝13の交差部には、図5図6に示す嵌合孔部14が、ピラートリム10の延びる方向(長手方向)に間隔をおいて複数(本実施形態では4つ)形成されている。
【0024】
カバー40は板状をなしており、車室側に向かって凸となるように湾曲している。カバー40の裏側(車外側)であってピラートリム本体11側の端部40aには、図2図5に示すように、上記インナーパネル2a側に突出する嵌合爪部40bが、ピラートリム10の延びる方向(長手方向)に間隔をおいて複数(本実施形態では4つ)設けられている。
【0025】
各嵌合爪部40bは、図5に示すように、カバー40とピラートリム本体11の組み付け状態において、上記ピラートリム本体11の各嵌合孔部14に嵌合されている。このとき、カバー40のピラートリム本体11側の端部40aは、ピラートリム本体11の係合溝13に係合している。
【0026】
カバー40は、図4図2に示すように、その裏側であってリアガラス5側の位置に2つの取付ボス41F,41R(第1ボス部)を有し、これら取付ボス41F,41Rよりピラートリム本体11側の位置に2つの取付ボス42F,42R(第2ボス部)を有している。
【0027】
取付ボス41F,42Fは、カバー40の延びる方向(長手方向)の前方側に配置され、取付ボス41R,42Rは、後方側に配置されている。また、前方側の取付ボス42Fは、図4に示すように、取付ボス41Fとエアバッグ20の間に配置され、後方側の取付ボス42Rも取付ボス部41Rとエアバッグ20の間に配置されている。
【0028】
取付ボス41F,42F,41R,42Rはそれぞれ、図4に示すように、カバー40裏面から車外側に突出する周壁43と、この周壁43の先端側を閉塞するように設けられた支持部44と、を有している。これら支持部44のうち取付ボス42F,42R(第2ボス部)の支持部44は、それぞれ取付ボス41F,41R(第1ボス部)の支持部44に対して、車室側に奥まって配置されている。
【0029】
各支持部44において、その中央部は、支持部44のその他の部分より厚みが大きく形成されており、周壁43の突出方向に形成された穿設孔44aを有している。穿設孔44aは、取付ボス41Fではリベット孔として提供され支持部44を貫通しており、取付ボス41R,42F,42Rではタッピング孔として提供され、支持部44を貫通させてもよく、車外側から車室側に延びる非貫通孔としてもよい。
【0030】
台座部材30は、図2に示すように、上記カバー40における車体前方側の取付ボス41F,42Fと、車体後方側の取付ボス部41R,42Rとに跨ってカバー40の延び方向(長手方向)に長く延びる形状をなしている。
台座部材30は、その延び方向(長手方向)において、車体前方側の端部に連結板部31F(第1連結板部)と連結板部32F(第2連結板部)を有し、車体後方側の端部に連結板部31R(第1連結板部)と連結板部32R(第2連結板部)を有し、中間部に3つのクリップ台座33を有している。
【0031】
以下、連結板部31F,31R(第1連結板部)、連結板部32F,32R(第2連結板部)、クリップ台座33の順に説明する。
連結板部31F(第1連結板部)は、台座部材30の車体前方側、リアガラス5側に配置されており、この連結板部31Fよりピラートリム本体11側に連結板部32F(第2連結板部)が配置されている。連結板部31Fと連結板部32Fは、上記取付ボス41F,42Fの支持部44,44の高低差に対応して形成されており、つなぎ板部34により連なって段差状をなしている。
【0032】
連結板部31R(第1連結板部)は、台座部材30の車体後方側、リアガラス5側に配置されており、この連結板部31Rよりピラートリム本体11側に連結板部32R(第2連結板部)が配置されている。連結板部31Rと連結板部32Rは、上記取付ボス41R,42Rの支持部44,44の高低差に対応して形成されており、つなぎ板部34により連なって段差状をなしている。
【0033】
連結板部31F,31R(第1連結板部)は、図3(A),(B)に示すように、貫通孔35を有するとともに、図4に示すように、車室側の面における貫通孔35を含む部分に係合凹部36を有している。連結板部31Fの係合凹部36には、上記取付ボス41Fの支持部44の中央部が係合しており、連結板部31Rの係合凹部36には、上記取付ボス41Rの支持部44の中央部が係合している。
【0034】
図2図4に示すように、連結板部31Fの車外側と、上記取付ボス41Fの支持部44の車室側は、ブラケット7により挟持されている。ブラケット7を介してリベット8(第1連結具)の軸部が、支持部44の穿設孔44a及び連結板部31Fの貫通孔35に挿通されており、リベット8の軸端が打ちつぶされることにより、連結板部31Fと取付ボス41Fは連結されている。この、連結板部31Fと取付ボス41Fの連結箇所を連結箇所C1f(第1連結箇所)とする。
【0035】
連結板部31Rは、図2に示すように、図3(A)に示す貫通孔35に挿通されたタッピングスクリュー9A(第1連結具)が取付ボス41Rの穿設孔44aに雌ねじを形成しながら座金を連結板部31Rに当接させるまでねじ込まれることにより、取付ボス41Rに連結されている。この、連結板部31Rと取付ボス41Rの連結箇所を連結箇所C1r(第1連結箇所)とする。
【0036】
次に、連結板部32F,32R(第2連結板部)について説明する。
連結板部32F(第2連結板部)は、図3(B)に示すように、長穴を半分にした形状に切り欠いた切欠き孔37を有している。切欠き孔37の一端は、連結板部32Fおけるエアバッグ20側の縁で開放されており、抜出口37aとなっている。切欠き孔37は、抜出口37aから奥に向かって、ガイド部37b、収容部37cを有している。
【0037】
収容部37cの奥部は、半円形をなし、その内径は図2図4に示すタッピングスクリュー9B(第2連結具)の軸部の外径よりわずかに大きく形成されている。収容部37cの奥部と反対側は、一定幅で直線状に延びており、ガイド部37bを経て抜出口37aに連なっている。
【0038】
なお、切欠き孔37のガイド部37b及び抜出口37aの形成方向は、取付ボス41F(第1ボス部)と連結板部31F(第1連結板部)の連結箇所C1f(第1連結箇所)を支点としてカバー40が車室側に押されたとき、取付ボス42F(第2ボス部)のタッピングスクリュー9Bが移動しようとする方向となっている。
【0039】
連結板部32Fは、図2図4に示すように、その切欠き孔37の収容部37c(図3(B))に挿通されたタッピングスクリュー9Bが取付ボス42Fの穿設孔44aに雌ねじを形成しながら座金を連結板部32Fに当接させるまでねじ込まれることにより、取付ボス42Fに連結されている。この、連結板部32Fと取付ボス42Fの連結箇所を連結箇所C2f(第2連結箇所)とする。
【0040】
連結板部32R(第2連結板部)は、図3(A)に示すように、角丸四角形を半分にした形状に切り欠いた切欠き孔38を有している。切欠き孔38の一端は、連結板部32Rにおけるエアバッグ20側の縁で開放されており、抜出口38aとなっている。切欠き孔38は、抜出口38aから奥に向かって、ガイド部38b、収容部38cを有している。
【0041】
収容部38cの奥部は、半角丸四角形をなしている。収容部38cの奥部と反対側は、タッピングスクリュー9C(第2連結具)(図2)の軸部の外径よりわずかに大きい一定幅で直線状に延びており、ガイド部38bを経て抜出口38aに連なっている。
【0042】
切欠き孔38のガイド部38b及び抜出口38aの形成方向は、取付ボス41R(第1ボス部)と連結板部31R(第1連結板部)の連結箇所C1r(第1連結箇所)を支点としてカバー40が車室側に押されたとき、取付ボス42R(第2ボス部)のタッピングスクリュー9Cが移動しようとする方向となっている。
【0043】
連結板部32Rは、図2図4に示すように、その切欠き孔38の収容部38cに挿通されたタッピングスクリュー9Cが取付ボス42Rの穿設孔44aに雌ねじを形成しながら座金を連結板部32Rに当接させるまでねじ込まれることにより、取付ボス42Rに連結されている。この、連結板部32Rと取付ボス42Rの連結箇所を連結箇所C2r(第2連結箇所)とする。
【0044】
次に、クリップ台座33について説明する。
各クリップ台座33は、図2図5に示すように、車外側に突出する箱状に形成され、周壁部33aとその先端側(車外側)を塞ぐ座面部33bとを有している。車体前方側の2つのクリップ台座33では、周壁部33a及び座面部33bがそれぞれ連なって設けられている。各クリップ台座33は、図5に示すように、ピラートリム本体11側の周壁部33aに形成された逃げ孔33cと、座面部33aに形成された装着孔33dとを有している。
【0045】
各クリップ台座33にはクリップ50(連結部材)が装着され、このクリップ50と上記ブラケット6を介して各クリップ台座33は上記リアピラー2のインナーパネル2aに連結され、ひいては、台座部材30がリアピラー2に連結され支持される。台座部材30はリアピラー2にブラケット6を介さずに連結され支持されてもよい。台座部材30がリアピラー2に連結され支持されるとは、台座部材30がリアピラー2に間接的に連結され支持されること及び直接的に連結され支持されることの双方を意味するものとする。
【0046】
クリップ50は樹脂により弾性変形可能に形成され、図2図5に示すように、一端部に連結部51と、他端部に引掛部56と、中間部に、連結部51と引掛部56をつなぐ連繋部57とを有している。
【0047】
図3(A)、図5に示すように、連結部51はフランジ部52を有し、フランジ部52の一方の側に弾性スペーサ53と係止固定部54とを有するとともに、他方の側に、係着部55を有している。
【0048】
フランジ部52の片方の板面は台座部材30への座面として提供される。弾性スペーサ53は板状をなして、フランジ部52の内側部分から延びており、外側に向かうにつれてフランジ部52から遠ざかるように形成されている。
【0049】
係止固定部54は、円柱状の軸部54aを有し、その軸方向の中間部の外周面に係止突起54bを有している。係止突起54bは、軸部54aの径方向に対向して一対設けられ、それぞれ、軸部54aの先端側から基端側に向かって厚くなるくさび形状を有している。
【0050】
係着部55は、図5に示すように、先端部に比べ基端部が膨出した形状を有しており、台座部材30の装着孔33dに圧入可能な大きさに形成されている。
【0051】
連繋部57は、帯状をなして係着部55に連なって延びている。引掛部56は、連繋部57の先端でT字形状をなしている。
【0052】
クリップ50のクリップ台座33への装着は、引掛部56、連繋部57及び係着部55をクリップ台座33の座面部33bの装着孔33dからクリップ台座33内に差し込んで、係着部55を装着孔33dに圧入して係着することによりなされる。クリップ50の装着状態で、座面部33bは係着部55とフランジ部52により挟持されており、所定の荷重が加わったときには、装着孔33dが係着部55を乗り越え、クリップ50がクリップ台座33から外れるようになっている。
【0053】
また、クリップ50の装着状態で、引掛部56と連繋部57の一部は、クリップ台座33の周壁部33aの逃げ孔33cからクリップ台座33の外部に出ている。この状態から、クリップ50が装着孔33dから外れた場合、引掛部56が装着孔33dの周縁の座面部33bに引っ掛かるようになっている。
【0054】
クリップ50によるクリップ台座33とインナーパネル2aとの連結は、クリップ50の係止固定部54が、インナーパネル2aから延びるブラケット6の係止孔6aに係止されることによりなされる。係止孔6aの周縁において、一方の面に係止固定部54の係止突起54bの基端面が当接し、他方の面に、弾性スペーサ53が当接している。これにより、クリップ50は、ブラケット6に抜け止め状態で固定されており、ひいては、クリップ50はインナーパネル2aに固定され、台座部材30は、クリップ50及びブラケット6を介してインナーパネル2aに支持されている。
【0055】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
エアバッグ20の展開時には、図6に示すように、膨張するエアバッグ20がカバー40のピラートリム本体11側の部分を押す。これにより、カバー40は、リアガラス5側の取付ボス41F,41Rと連結板部31F,31Rとのそれぞれの連結箇所C1f,C1rを中心として車室側に回転しようとするため、カバー40の嵌合爪部40bとピラートリム本体11の嵌合孔部14との嵌合が外れ、カバー40とピラートリム本体11との間に開口Aが形成される。この開口Aからエアバッグ20は車室側面に沿ってカーテン状に展開する。
【0056】
カバー40がエアバッグ20に押されるとき、エアバッグ20に近い位置にある連結板部32F,32R(第2連結板部)の切欠き孔37,38では、タッピングスクリュー9B,9Cの軸部がガイド部37b,38bに沿って抜出口37a,38aに向かって移動して、図7に示すように、タッピングスクリュー9B,9Cはそれぞれ抜出口37a,38aから抜け出て、切欠き孔37,38から外れる。すなわち、取付ボス42F,42R(第2ボス部)と連結板部32F,32R(第2連結板部)のそれぞれの連結箇所C2f,C2r(第2連結箇所)の連結が解除されるので、カバー40は41F,41R(第1ボス部)と31F,31R(第1連結部)の連結箇所C1f,C1r(第2連結箇所)を中心として台座部材30に対して弾性変形して開く。これにより、エアバッグ展開を円滑に行なうことができる。
【0057】
連結板部32F,32R(第2連結板部)のそれぞれのガイド部37b,38b及び抜出口37a,38aの形成方向は、カバー40がエアバッグ20に押され取付ボス41F,41R(第1ボス部)と連結板部31F,31R(第1連結板部)の連結箇所C1f,C1r(第1連結箇所)を中心として回転するように弾性変形しようとしたときにタッピングスクリュー9B,9C(第2連結具)が引っ張られる方向と平行である。すなわち、タッピングスクリュー9B,9Cが外れる方向を明確にする切欠き孔37,38は、タッピングスクリュー9B,9Cが外れやすい方向に形成されている。これにより、連結箇所C1f,C1rを中心とした弾性変形によるカバー40の開きやすさを高めている。
【0058】
切欠き孔37,38を形成して、エアバッグ20の展開時にタッピングスクリュー9B,9Cがそれぞれ連結板部32F,32R(第2連結板部)から外れるようにしているため、カバー40の取付ボスや台座部材30の連結板部に荷重が集中することを避け、カバー40や台座部材30が破損して破片が飛散することを防止できる。
【0059】
連結箇所C2f,C2r(第2連結箇所)は、展開するエアバッグ20に押されたカバー40が連結箇所C1f,C1r(第1連結箇所)を中心に回転しようとする方向において、連結箇所C1f,C1r(第1連結箇所)より前方側に配置されているため、連結箇所C1f,C1r(第1連結箇所)を中心とするカバー40の開き動作が妨げられない。これにより、円滑なエアバッグ展開を促進することができる。
【0060】
また、カバー40がエアバッグ20に押されるとき、図6に示すクリップ50及びブラケット6を介した台座部材30とインナーパネル2aとの連結箇所では、図8に示すように、エアバッグ20からカバー40を経て台座部材30に伝わる荷重により、クリップ台座33の装着孔33dがクリップ50の係着部55から外れる。すなわち、台座部材30がクリップ50の連結部51から外れ、カバー40及び台座部材30は、クリップ50の引掛部56が台座部材30の座面部33bに引っ掛かるまで連繋部57の長さ分だけブラケット6から離れる。すなわち、カバー40がその開き方向に弾性変形するだけでなく、カバー40と台座部材30がインナーパネル2aから離れるという、2段の開き動作が行われる。これにより、エアバッグ20が通る開口Aを広くすることができ、エアバッグ展開を円滑に行なうことができる。
【0061】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
上記実施形態では、エアバッグ20から遠い位置にある第1連結箇所とエアバッグ20に近い位置にある第2連結箇所を、カバー40の車体前方側及び車体後方側に2組設けているが、1組又は3組以上設けてもよい。
上記実施形態では、車体前方側の連結箇所C1f(第1連結箇所)では、リベット8により連結し、車体後方側の連結箇所C1r(第1連結箇所)では、タッピングスクリュー9Aにより連結しているが、いずれの第1連結箇所においても、リベット、タッピングスクリュー、又はその他の連結具により連結してもよい。
上記実施形態では、連結箇所C2f,C2r(第2連結箇所)において、連結板部32F,32R(第2連結板部)に切欠き孔37,38を形成する構造により、第2連結箇所での連結が解除されるようにしているが、その他の構造により第2連結箇所での連結が解除されるようにしてもよい。
上記実施形態では、リアピラーのピラートリム構造(内装構造)について説明しているが、本発明をフロントピラーのピラートリム構造等、その他の車両用内装構造に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、内装材の裏側にエアバッグを配置した車両用内装構造に適用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 自動車
2 リアピラー
2a インナーパネル
2b アウターパネル
3 ルーフ
4 リアドアガラス
5 リアガラス
6 ブラケット
7 ブラケット
8 リベット(第1連結具)
9A タッピングスクリュー(第1連結具)
9B,9C タッピングスクリュー(第2連結具)
10 ピラートリム
11 ピラートリム本体
12 規制壁
13 係合溝
14 嵌合孔部
20 カーテンエアバッグ
30 台座部材
31F,31R 連結板部(第1連結板部)
32F,32R 連結板部(第2連結板部)
33 クリップ台座
33a 周壁部
33b 底面部
33c 逃げ孔
33d 装着孔
34 つなぎ板部
35 貫通孔
36 係合凹部
37,38 切欠き孔
37a,38a 抜出口
37b,38b ガイド部
37c,38c 収容部
40 カバー
40a ピラートリム本体側の端部
40b 嵌合爪部
41F,41R 取付ボス(第1ボス部)
42F,42R 取付ボス(第2ボス部)
43 周壁
44 支持部
44a 穿設孔
50 クリップ(連結部材)
51 連結部
52 フランジ部(連結部)
53 弾性スペーサ(連結部)
54 係止固定部(連結部)
54a 軸部(連結部)
54b 係止突起(連結部)
55 係着部(連結部)
56 引掛部
57 連繋部
A 開口
C1f,C1r 連結箇所(第1連結箇所)
C2f,C2r 連結箇所(第2連結箇所)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8