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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】ヒートポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 47/02 20060101AFI20241010BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
F25B47/02 550P
F25B1/00 399Y
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021036719
(22)【出願日】2021-03-08
(65)【公開番号】P2022136893
(43)【公開日】2022-09-21
【審査請求日】2023-08-08
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】弁理士法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 真典
(72)【発明者】
【氏名】川上 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 剛史
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 勝
【審査官】関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-156602(JP,A)
【文献】特開2005-345003(JP,A)
【文献】特開2014-228261(JP,A)
【文献】特開2014-040954(JP,A)
【文献】特開2016-121824(JP,A)
【文献】特開2019-173986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 47/02
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、膨張弁、熱源側熱交換器を冷媒配管で接続したヒートポンプ機構と、
前記ヒートポンプ機構から前記冷媒配管を介し冷媒の供給を受けて循環液との熱交換により負荷端末への前記循環液を加熱する負荷側熱交換器と、
前記圧縮機の吐出側を凝縮器としての前記負荷側熱交換器に連通させるとともに前記圧縮機の吸込側を蒸発器としての前記熱源側熱交換器に連通させる第1切替位置、及び、前記圧縮機の吐出側を凝縮器としての前記熱源側熱交換器に連通させるとともに前記圧縮機の吸込側を蒸発器としての前記負荷側熱交換器に連通させる第2切替位置、に切替可能な切替弁と、
前記循環液の実温度を検出する実温度検出手段と、
前記実温度検出手段により検出される前記実温度が所定の目標温度となるように前記圧縮機の回転数を制御する温調制御手段を備えた圧縮機制御手段と、
を有し、
前記切替弁を前記第1切替位置に切り替え、前記負荷側熱交換器での冷媒からの受熱を用いて前記負荷端末への前記循環液を加温する暖房運転を行うヒートポンプ装置において、
前記暖房運転中において所定の除霜開始条件が満たされたか否かを判定する開始判定手段と、
前記開始判定手段により前記除霜開始条件が満たされたと判定された後、前記切替弁を前記第2切替位置に切り替え、前記負荷側熱交換器での冷媒による受熱を用いて前記熱源側熱交換器の除霜運転を開始する除霜開始制御手段と、
前記除霜開始制御手段により前記除霜運転が開始された後、所定の除霜終了条件が満たされたか否かを判定する終了判定手段と、
前記終了判定手段により前記除霜終了条件が満たされたと判定された場合に、前記切替弁を前記第1切替位置に切り替え、前記暖房運転を再開する暖房再開制御手段と、
を有し、
前記圧縮機制御手段は、
前記暖房再開制御手段による前記暖房運転の再開時における前記圧縮機の回転数Nt5を、前記除霜運転の開始直前の前記圧縮機の回転数Nt2よりもXだけ低い回転数Nt2-Xに調整する回転数調整手段を備え、
前記回転数調整手段は、
前記Xを、当該暖房運転が再開された後に前記実温度検出手段により検出される前記循環液の前記実温度、若しくは、前記循環液の前記目標温度、に応じて決定する
ことを特徴とするヒートポンプ装置。
【請求項2】
前記開始判定手段により前記除霜開始条件が満たされたと判定された場合に、前記循環液の前記目標温度を高く補正する目標温度補正手段をさらに有し、
前記除霜開始制御手段は、
前記実温度検出手段により検出される前記循環液の前記実温度が、前記目標温度補正手段により高く補正された前記目標温度に達した後、前記切替弁を前記第2切替位置に切り替えて前記除霜運転を開始する
ことを特徴とする請求項1記載のヒートポンプ装置。
【請求項3】
前記循環液を通じる循環液配管に循環液加熱補助手段を設け、前記除霜運転中にこの循環液加熱補助手段により前記循環液を加熱する
ことを特徴とする請求項1記載のヒートポンプ装置。
【請求項4】
前記圧縮機制御手段は、
前記暖房運転の再開時の前記圧縮機の回転数を、前記回転数調整手段により決定された前記Xに基づく前記Nt2-Xに調整するとともに、
当該暖房運転が再開された後に前記実温度検出手段により検出される前記循環液の前記実温度が前記目標温度より所定値だけ低くなったことを契機に、前記圧縮機の回転数を、前記温調制御手段により前記実温度と所定の目標温度との偏差に応じて制御する
ことを特徴とする請求項1記載のヒートポンプ装置。
【請求項5】
圧縮機、膨張弁、熱源側熱交換器を冷媒配管で接続したヒートポンプ機構と、
前記ヒートポンプ機構から前記冷媒配管を介し冷媒の供給を受けて循環液との熱交換により負荷端末への前記循環液を加熱する負荷側熱交換器と、
前記圧縮機の吐出側を凝縮器としての前記負荷側熱交換器に連通させるとともに前記圧縮機の吸込側を蒸発器としての前記熱源側熱交換器に連通させる第1切替位置、及び、前記圧縮機の吐出側を凝縮器としての前記熱源側熱交換器に連通させるとともに前記圧縮機の吸込側を蒸発器としての前記負荷側熱交換器に連通させる第2切替位置、に切替可能な切替弁と、
前記循環液の実温度を検出する実温度検出手段と、
前記実温度検出手段により検出される前記実温度が所定の目標温度となるように前記圧縮機の回転数を制御する温調制御手段を備えた圧縮機制御手段と、
を有し、
前記切替弁を前記第1切替位置に切り替え、前記負荷側熱交換器での冷媒からの受熱を用いて前記負荷端末への前記循環液を加温する暖房運転を行うヒートポンプ装置において、
前記暖房運転中において所定の除霜開始条件が満たされたか否かを判定する開始判定手段と、
前記開始判定手段により前記除霜開始条件が満たされたと判定された後、前記切替弁を前記第2切替位置に切り替え、前記負荷側熱交換器での冷媒による受熱を用いて前記熱源側熱交換器の除霜運転を開始する除霜開始制御手段と、
前記除霜開始制御手段により前記除霜運転が開始された後、所定の除霜終了条件が満たされたか否かを判定する終了判定手段と、
前記終了判定手段により前記除霜終了条件が満たされたと判定された場合に、前記切替弁を前記第1切替位置に切り替え、前記暖房運転を再開する暖房再開制御手段と、
を有し、
前記圧縮機制御手段は、
前記暖房再開制御手段による前記暖房運転の再開時における前記圧縮機の回転数を、前記除霜運転の開始直前の前記圧縮機の回転数よりも低い回転数に調整する回転数調整手段を備え、
前記回転数調整手段は、
前記暖房再開制御手段による前記暖房運転の再開時の前記圧縮機の回転数を、当該暖房運転が再開された後に前記実温度検出手段により検出される前記循環液の前記実温度、若しくは、前記循環液の前記目標温度、に応じた所定回転数に調整し、
前記圧縮機制御手段は、
前記暖房運転の再開時の前記圧縮機の回転数を、前記回転数調整手段により前記所定回転数に調整するとともに、
前記実温度検出手段により検出される前記循環液の前記実温度と、当該暖房運転の再開時に前記実温度検出手段により検出された前記実温度との温度偏差が、所定しきい値に到達したことを契機に、前記圧縮機の回転数を、前記温調制御手段により前記実温度と所定の目標温度との偏差に応じて制御する
ことを特徴とするヒートポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、冷媒からの受熱を用いて負荷端末への循環液を加温する暖房運転を行うヒートポンプ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種のヒートポンプ装置においては、特許文献1記載のように、圧縮機及び熱源側熱交換器を備えたヒートポンプ装置から冷媒配管を介して負荷側熱交換器へ冷媒を供給し、負荷端末への循環液を加熱して暖房を行うヒートポンプ装置において、加熱を一時停止させる際、循環液温度を一旦上昇(いわゆるホットチャージ)させてから加熱源の駆動を停止するものがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-46700号公報
【文献】特開2014-40954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、この種のヒートポンプ装置においては、暖房運転が一定時間継続すると熱源側熱交換器にて着霜が生じるため、その着霜を融解する除霜運転を行う必要がある。
【0005】
例えば上記特許文献1記載の技術では除霜運転について特に記載はないが、通常は、負荷側熱交換器を蒸発器として機能させ、かつ、熱源側熱交換器を凝縮器として機能させる。すなわち、切替弁(四方弁)により圧縮機の吐出側を凝縮器としての負荷側熱交換器に連通させるとともに圧縮機の吸込側を蒸発器としての熱源側熱交換器に連通させる暖房運転から、圧縮機を停止させた後に切替弁を切り替えることで、圧縮機の吐出側を凝縮器としての熱源側熱交換器に連通させるとともに圧縮機の吸込側を蒸発器としての負荷側熱交換器に連通させる。前記切り替えの後に圧縮機を起動すると、負荷側熱交換器にて循環液と熱交換して受熱し蒸発した冷媒は、圧縮機へ導かれ圧縮されて高温高圧となった後、熱源側熱交換器に導かれて放熱しながら凝縮し、このときの放熱によって、前述のようにして生じた着霜を融解することができる。またこのとき、除霜運転を開始する際において圧縮機の停止直前に前記のようにホットチャージを行えば、除霜運転中における循環液温度を比較的高めに維持でき、暖房環境における快適性の低下防止が図られることとなる。
【0006】
この除霜運転が終了すると、圧縮機を停止させた後に再度切替弁を切り替え、前述と同様、圧縮機の吐出側を負荷側熱交換器に連通させ圧縮機の吸込側を熱源側熱交換器に連通させる。この切り替えの後に圧縮機を起動することで、前述と同様の暖房運転を再開することができる。
【0007】
ここで、一般に、前記のように除霜運転が終了し暖房運転を再開するときの圧縮機の回転数は、例えば除霜運転を開始する直前の回転数と同じとすることで、速やかな循環液の加熱が図られるのが通常であった。しかしながら、前記のように除霜運転の開始直前にホットチャージが行われる場合にこのような回転数設定とすると、循環液配管や負荷端末や冷媒配管内に蓄積された熱により、除霜運転終了後の暖房運転再開時に循環液温度が急上昇して目標温度を大きく上回ってしまう(オーバーシュート)。圧縮機の回転数は、通常、実循環液温度が所定の目標温度となるように温調制御されるため、上記オーバーシュートの結果、本来暖房運転を継続しなければならないにもかかわらず、圧縮機が停止し暖房運転が停止してしまうという問題があった。
【0008】
なお、前記同様、暖房環境における快適性の低下を防止するために除霜運転中における循環液温度を比較的高めに維持する技術として、特許文献2記載のように、循環液が循環する循環液配管に循環液加熱補助手段(補助ヒータ)を設け、除霜運転中において負荷端末への循環液を加熱するものもある。この手法の場合も、暖房運転再開時の圧縮機の回転数を除霜運転開始直前の回転数と同じとすると、除霜運転中に循環液配管や負荷端末等に蓄積された熱によって前記同様のオーバーシュートが生じてしまい暖房運転が停止してしまうという問題が生じ得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1では、圧縮機、膨張弁、熱源側熱交換器を冷媒配管で接続したヒートポンプ機構と、前記ヒートポンプ機構から前記冷媒配管を介し冷媒の供給を受けて循環液との熱交換により負荷端末への前記循環液を加熱する負荷側熱交換器と、前記圧縮機の吐出側を凝縮器としての前記負荷側熱交換器に連通させるとともに前記圧縮機の吸込側を蒸発器としての前記熱源側熱交換器に連通させる第1切替位置、及び、前記圧縮機の吐出側を凝縮器としての前記熱源側熱交換器に連通させるとともに前記圧縮機の吸込側を蒸発器としての前記負荷側熱交換器に連通させる第2切替位置、に切替可能な切替弁と、前記循環液の実温度を検出する実温度検出手段と、前記実温度検出手段により検出される前記実温度が所定の目標温度となるように前記圧縮機の回転数を制御する温調制御手段を備えた圧縮機制御手段と、を有し、前記切替弁を前記第1切替位置に切り替え、前記負荷側熱交換器での冷媒からの受熱を用いて前記負荷端末への前記循環液を加温する暖房運転を行うヒートポンプ装置において、前記暖房運転中において所定の除霜開始条件が満たされたか否かを判定する開始判定手段と、前記開始判定手段により前記除霜開始条件が満たされたと判定された後、前記切替弁を前記第2切替位置に切り替え、前記負荷側熱交換器での冷媒による受熱を用いて前記熱源側熱交換器の除霜運転を開始する除霜開始制御手段と、前記除霜開始制御手段により前記除霜運転が開始された後、所定の除霜終了条件が満たされたか否かを判定する終了判定手段と、前記終了判定手段により前記除霜終了条件が満たされたと判定された場合に、前記切替弁を前記第1切替位置に切り替え、前記暖房運転を再開する暖房再開制御手段と、を有し、前記圧縮機制御手段は、前記暖房再開制御手段による前記暖房運転の再開時における前記圧縮機の回転数Nt5を、前記除霜運転の開始直前の前記圧縮機の回転数Nt2よりもXだけ低い回転数Nt2-Xに調整する回転数調整手段を備え、前記回転数調整手段は、前記Xを、当該暖房運転が再開された後に前記実温度検出手段により検出される前記循環液の前記実温度、若しくは、前記循環液の前記目標温度、に応じて決定するものである。
【0010】
また、請求項2では、前記開始判定手段により前記除霜開始条件が満たされたと判定された場合に、前記循環液の前記目標温度を高く補正する目標温度補正手段をさらに有し、前記除霜開始制御手段は、前記実温度検出手段により検出される前記循環液の前記実温度が、前記目標温度補正手段により高く補正された前記目標温度に達した後、前記切替弁を前記第2切替位置に切り替えて前記除霜運転を開始するものである。
【0011】
また、請求項3では、前記循環液を通じる循環液配管に循環液加熱補助手段を設け、前記除霜運転中にこの循環液加熱補助手段により前記循環液を加熱するものである。
【0013】
また、請求項4では、前記圧縮機制御手段は、前記暖房運転の再開時の前記圧縮機の回転数を、前記回転数調整手段により決定された前記Xに基づく前記Nt2-Xに調整するとともに、当該暖房運転が再開された後に前記実温度検出手段により検出される前記循環液の前記実温度が前記目標温度より所定値だけ低くなったことを契機に、前記圧縮機の回転数を、前記温調制御手段により前記実温度と所定の目標温度との偏差に応じて制御するものである。
【0014】
また、上記課題を解決するために、本発明の請求項5では、圧縮機、膨張弁、熱源側熱交換器を冷媒配管で接続したヒートポンプ機構と、前記ヒートポンプ機構から前記冷媒配管を介し冷媒の供給を受けて循環液との熱交換により負荷端末への前記循環液を加熱する負荷側熱交換器と、前記圧縮機の吐出側を凝縮器としての前記負荷側熱交換器に連通させるとともに前記圧縮機の吸込側を蒸発器としての前記熱源側熱交換器に連通させる第1切替位置、及び、前記圧縮機の吐出側を凝縮器としての前記熱源側熱交換器に連通させるとともに前記圧縮機の吸込側を蒸発器としての前記負荷側熱交換器に連通させる第2切替位置、に切替可能な切替弁と、前記循環液の実温度を検出する実温度検出手段と、前記実温度検出手段により検出される前記実温度が所定の目標温度となるように前記圧縮機の回転数を制御する温調制御手段を備えた圧縮機制御手段と、を有し、前記切替弁を前記第1切替位置に切り替え、前記負荷側熱交換器での冷媒からの受熱を用いて前記負荷端末への前記循環液を加温する暖房運転を行うヒートポンプ装置において、前記暖房運転中において所定の除霜開始条件が満たされたか否かを判定する開始判定手段と、前記開始判定手段により前記除霜開始条件が満たされたと判定された後、前記切替弁を前記第2切替位置に切り替え、前記負荷側熱交換器での冷媒による受熱を用いて前記熱源側熱交換器の除霜運転を開始する除霜開始制御手段と、前記除霜開始制御手段により前記除霜運転が開始された後、所定の除霜終了条件が満たされたか否かを判定する終了判定手段と、前記終了判定手段により前記除霜終了条件が満たされたと判定された場合に、前記切替弁を前記第1切替位置に切り替え、前記暖房運転を再開する暖房再開制御手段と、を有し、前記圧縮機制御手段は、前記暖房再開制御手段による前記暖房運転の再開時における前記圧縮機の回転数を、前記除霜運転の開始直前の前記圧縮機の回転数よりも低い回転数に調整する回転数調整手段を備え、前記回転数調整手段は、前記暖房再開制御手段による前記暖房運転の再開時の前記圧縮機の回転数を、当該暖房運転が再開された後に前記実温度検出手段により検出される前記循環液の前記実温度、若しくは、前記循環液の前記目標温度、に応じた所定回転数に調整し、前記圧縮機制御手段は、前記暖房運転の再開時の前記圧縮機の回転数を、前記回転数調整手段により前記所定回転数に調整するとともに、前記実温度検出手段により検出される前記循環液の前記実温度と、当該暖房運転の再開時に前記実温度検出手段により検出された前記実温度との温度偏差が、所定しきい値に到達したことを契機に、前記圧縮機の回転数を、前記温調制御手段により前記実温度と所定の目標温度との偏差に応じて制御するものである。
【発明の効果】
【0015】
この発明の請求項1によれば、ヒートポンプ機構において、圧縮機、膨張弁、熱源側熱交換器が冷媒配管で接続されている。暖房運転時には、切替弁が第1切替位置に切り替えられ、圧縮機の吐出側を凝縮器としての負荷側熱交換器に連通させるとともに圧縮機の吸込側を蒸発器としての熱源側熱交換器に連通させる。この状態で圧縮機を起動することで、熱源側熱交換器にて外気と熱交換して受熱し蒸発した冷媒は、圧縮機へ導かれ圧縮されて高温高圧となった後、負荷側熱交換器に導かれて放熱しながら凝縮する。これにより循環液が加温され、加温後の循環液が負荷端末へと導かれて暖房が行われる。その際、圧縮機制御手段に備えられた温調制御手段により、循環液の実温度が所定も目標温度になるように圧縮機の回転数が制御される(いわゆる温調制御)。
【0016】
暖房運転が一定時間継続すると、外気と熱交換を行う熱源側熱交換器にて着霜が生じるため、その着霜を融解する除霜運転を行う必要がある。請求項1によれば、所定の除霜運転開始条件が満たされるか否かが開始判定手段により判定される。前記の暖房運転の継続によって除霜運転開始条件が満たされると、その後、除霜開始制御手段により、切替弁が第2切替位置に切り替えられる。これにより、圧縮機の吐出側を凝縮器としての熱源側熱交換器に連通させるとともに圧縮機の吸込側を蒸発器としての負荷側熱交換器に連通させる。この切り替えの後に圧縮機を起動することで、負荷側熱交換器にて循環液と熱交換して受熱し蒸発した冷媒は、圧縮機へ導かれ圧縮されて高温高圧となった後、熱源側熱交換器に導かれて放熱しながら凝縮し、このときの放熱によって、前述のようにして生じた着霜を融解することができる。
【0017】
その後、所定の除霜終了条件が満たされたか否かが終了判定手段によって判定され、当該条件が満たされると除霜運転が終了し、圧縮機を停止させた後に暖房再開制御手段によって再度切替弁が切り替えられる。すなわち、前記と同様、圧縮機の吐出側が負荷側熱交換器に連通され圧縮機の吸込側が熱源側熱交換器に連通される。この切り替えの後に圧縮機を起動することで、前述と同様の暖房運転を再開することができる。
【0018】
そして請求項1によれば、圧縮機制御手段に備えられた回転数調整手段により、前記暖房運転の再開時における圧縮機の回転数Nt5が、前記除霜運転の開始直前の前記圧縮機の回転数Nt2よりもXだけ低い回転数Nt2-Xに調整される。これにより、暖房環境における快適性の低下防止のために除霜運転中の循環液温度が高めに維持されて循環液配管や負荷端末に熱が蓄積されていたとしても、その蓄積された熱による循環液温度のオーバーシュートを防止することができる。この結果、温調制御手段の温調制御により圧縮機が停止することなく、暖房運転を継続することができる。
また、請求項1によれば、前記オーバーシュートを防止するために暖房運転再開時の圧縮機の回転数を前記のようにXだけ低く調整する際、再開時の回転数の値を、暖房運転再開後の循環液の実温度又は循環液の前記目標温度に応じてきめ細かく設定することができる。
【0019】
また、請求項2によれば、前記の暖房運転の継続によって除霜運転開始条件が満たされると、目標温度補正手段により循環液の目標温度が高く補正される。この結果、前記温調制御により圧縮機の回転数が増大するので、除霜運転開始のための圧縮機の停止よりも前に、循環液配管や負荷端末や冷媒配管内に熱を蓄積しておくことができる(いわゆるホットチャージ)。その後、循環液の前記実温度が前記目標温度補正手段により高く補正された前記目標温度に達したら、除霜開始制御手段により前記除霜運転が開始される。このように除霜運転開始時の圧縮機の停止直前にホットチャージを行うことで、除霜運転中における循環液温度を確実に比較的高めに維持でき、暖房環境における快適性の低下防止を確実に図ることができる。
【0020】
また、請求項3によれば、除霜運転が行われているとき、循環液配管に設けた循環液加熱補助手段が循環液を加熱する。これにより、除霜運転中における循環液温度を確実に比較的高めに維持でき、暖房環境における快適性の低下防止を確実に図ることができる。
【0022】
また、請求項4によれば、暖房運転再開時の圧縮機の回転数の値を前記のように設定した後、少なくとも循環液の実温度が目標温度より所定値だけ低くなるまではその設定した値を維持してから、元の温調制御に復帰させることができる。
【0023】
また、この発明の請求項5によれば、暖房運転再開時の圧縮機の回転数の値を前記のように設定した後、変動する循環液の実温度と再開時の循環液の実温度との温度偏差が所定しきい値に到達するまではその設定した値を維持してから、元の温調制御に復帰させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態のヒートポンプ装置の主要なユニットの外観構成図
図2】ヒートポンプ装置全体の回路構成図
図3】暖房運転時の作動を説明する図
図4】制御装置の機能的構成図
図5】除霜運転時の作動を説明する図
図6】圧縮機回転数の制限を行わない比較例における各種挙動を表すタイムチャート図
図7】圧縮機回転数の制限を行う本発明の一実施形態における各種挙動を表すタイムチャート図
図8】制御装置により実行される制御手順を表すフローチャート図
図9】圧縮機回転数の制限を行う手法を表す説明図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態を図1図9に基づいて説明する。
【0026】
本発明を適用した、本実施形態のヒートポンプ装置1の主要なユニットの外観構成を図1に示す。図1において、本実施形態のヒートポンプ装置1は、ヒートポンプユニット5(ヒートポンプ機構に相当)と、熱交換端末36(負荷端末に相当)に循環液L(例えば、水や不凍液)を循環させる、端末循環回路30と、を有している。
【0027】
本実施形態のヒートポンプ装置1全体の回路構成を図2に示す。図2に示すように、前記ヒートポンプ装置1は、前記ヒートポンプユニット5に備えられ、空気熱源を利用して前記熱交換端末36側の循環液Lを加熱または冷却可能な冷媒循環回路50と、前記端末循環回路30と、を有している。
【0028】
冷媒循環回路50は、能力可変の圧縮機53と、負荷側熱交換器としての熱交換器51と、膨張弁54と、熱源側熱交換器としての空気熱交換器55とが、冷媒配管52によって環状に接続されている。空気熱交換器55には、当該空気熱交換器55に外気を通風するための送風ファン56が設けられている。また、前記冷媒配管52には、前記冷媒循環回路50における冷媒C2(後述の図3及び図5参照)の流れ方向を切り換える四方弁58(切替弁に相当)が設けられている。
【0029】
前記熱交換器51は、例えばプレート式熱交換器で構成されており、前記冷媒C2を流通させる冷媒流路と前記循環液Lを流通させる流体流路とが各伝熱プレートを境にして交互に形成されているものである。
【0030】
また、圧縮機53から吐出された冷媒C2の温度は、冷媒吐出温度センサ52aによって検出される。同様に、前記膨張弁54から前記空気熱交換器55までの前記冷媒配管52に設けられた冷媒温度センサ52bによって、低圧側(暖房時)又は高圧側(冷房時や除霜時)の冷媒温度が検出される。なお、本実施形態では、この冷媒温度センサ52bにより検出される温度が、実質的に、空気熱交換器55内の冷媒温度として機能するものである。さらに、外気の温度が、外気温度検出手段としての外気温センサ57によって検出される。前記冷媒吐出温度センサ52a、冷媒温度センサ52b、及び前記外気温センサ57の検出結果は、制御装置62へ入力される。
【0031】
なお、前記冷媒循環回路50の前記冷媒C2としては、例えばR410AやR32等のHFC冷媒や二酸化炭素冷媒等の任意の冷媒を用いることができる。
【0032】
端末循環回路30は、前記熱交換器51と、ファンコイルや床暖房パネルやパネルコンベクタ等の2台の熱交換端末36A,36B(以下適宜、単に「熱交換端末36」と総称する)とが、循環液配管としての負荷配管31によって上流側から順に環状に接続されている。なお、この例では、2つの熱交換端末36が、適宜のヘッダ(図示せず)を介して互いに並列に前記端末循環回路30において接続されている。前記負荷配管31には、端末循環回路30に前記循環液Lを循環させる循環液循環ポンプ32と、循環液Lを貯留し端末循環回路30の圧力を調整するシスターン35とが設けられている。なお、熱交換端末36は、図2では2つが並列に設けられているが、1つまたは3つ以上設けられてもよく、数量や仕様が特に限定されるものではない。
【0033】
なお、負荷配管31には、熱交換端末36から熱交換器51に流入する循環液Lの戻り温度(実温度に相当)を検出する、実温度検出手段としての戻り液温度センサ34が設けられており、その検出結果は、前記制御装置62へ入力される。
【0034】
ここで、前記ヒートポンプ装置1は、前記の四方弁58の切替によって、暖房運転、若しくは冷房運転、若しくは除霜運転(詳細は後述)を選択的に実行することができる。以下、各運転態様について順を追って説明する。
【0035】
<暖房運転>
図3に、暖房運転時の状態を示す。この図3に示す暖房運転時においては、前記冷媒循環回路50では、図示の切替位置(第1切替位置に相当)に前記四方弁58が切り替えられることで、圧縮機53から吐出された冷媒C2を、熱交換器51、膨張弁54、空気熱交換器55の順に流通させた後、圧縮機53に戻す流路を形成する。これにより、低温・低圧で吸入されたガス状態の冷媒C2が前記圧縮機53で圧縮されて高温・高圧のガスとなった後、凝縮器として機能する前記熱交換器51において、前記端末循環回路30を流れる循環液Lとの熱交換を行って前記循環液Lに熱を放出し加熱しながら高圧の液体に変化する。こうして液体となった冷媒C2は膨張弁54において減圧されて低圧の液体となって蒸発しやすい状態となり、蒸発器として機能する前記空気熱交換器55において、送風ファン56の作動により送られる空気と熱交換を行って蒸発してガスに変化することで吸熱し、低温・低圧のガスとして再び前記圧縮機53へと戻る。
【0036】
また、端末循環回路30では、循環液循環ポンプ32により送られる循環液Lは、前記熱交換器51において、前記空気熱交換器55で外気と熱交換し前記のように加熱された前記冷媒C2との熱交換を行って加熱される。加熱された前記循環液Lは、その後、前記熱交換端末36に供給されて被空調空間を加熱する。
【0037】
<冷房運転>
なお、以上においては暖房運転を例にとって説明したが、前記熱交換端末36として冷房可能な端末が用いられる場合には、前記四方弁58が切り替えられることで、前記圧縮機53から吐出された前記冷媒C2を、前記空気熱交換器55、前記膨張弁54、前記熱交換器51の順に流通させた後、前記圧縮機53に戻す流路を形成し、冷房運転を行うこともできる(詳細な説明は省略)。
【0038】
<制御装置>
次に、制御装置62について説明する。前記制御装置62は、詳細な図示を省略するが、各種のデータやプログラムを記憶する記憶部と、演算・制御処理を行う制御部とを備えている。
【0039】
図4に示すように、前記制御装置62は、圧縮機制御部62A(圧縮機制御手段に相当)と、膨張弁制御部62Bと、ファン制御部62Cと、四方弁制御部62Dと、を機能的に備えている。また制御装置62は、メインリモコン60aに対し、通信可能に接続されている(図1及び図2参照)。
【0040】
圧縮機制御部62Aは、前記戻り液温度センサ34により検出された前記戻り温水温度(図3参照)に応じて、前記圧縮機53の回転数を制御する。この例では、圧縮機制御部62Aに備えられた温調制御部62Aa(温調制御手段に相当)が温調制御を行い、前記戻り液温度センサ34により検出される戻り温水温度と例えば前記メインリモコン60aの操作に対応した所望の目標戻り温水温度(所定の目標温度に相当)との偏差に応じて前記圧縮機53の回転数が制御される。特にこの例では、前記戻り温水温度が前記目標戻り温水温度となるように、温調制御部62Aaによって圧縮機53の回転数が制御される。なお、目標温度補正部62Ab及び回転数調整部62Acについては後述する。
【0041】
膨張弁制御部62Bは、冷媒吐出温度センサ52aにより検出される冷媒C2の冷媒吐出温度に応じて、前記膨張弁54の弁開度を制御する。特にこの例では、膨張弁制御部62Bは、冷媒吐出温度センサ52aにより検出される冷媒C2の冷媒吐出温度が、例えば制御上の所望の目標温度となるように、前記膨張弁54の弁開度を制御する。
【0042】
ファン制御部62Cは、前記外気温センサ57により検出された外気の温度に応じて、前記送風ファン56の回転数を制御する。
【0043】
四方弁制御部62Dには、前記メインリモコン60aの操作による運転指示に対応した運転指示(例えば暖房運転、冷房運転等のうちいずれの運転開始及び運転停止を指示する制御信号)が入力される。また四方弁制御部62Dには、前記外気温センサ57により検出された外気の温度、及び、前記冷媒温度センサ52bにより検出される冷媒C2の冷媒温度も入力される。四方弁制御部62Dは、それらの入力に応じて、実際にヒートポンプ装置1をどのような運転態様(冷房運転、暖房運転、除霜運転等)で運転するかを決定し、対応する運転情報を、圧縮機制御部62A、膨張弁制御部62B、ファン制御部62Cへ出力するとともに、上記決定された運転態様に対応する制御信号を四方弁58へ出力し、四方弁58を切り替える。
【0044】
<着霜の発生>
ここで、前記の暖房運転が一定時間継続すると、前記空気熱交換器55において着霜が生じる。本実施形態では、前記圧縮機53等を運転する暖房運転中において空気熱交換器55で着霜が生じている場合に、制御装置62により、当該空気熱交換器55における着霜を融解する所定の除霜運転が行われる。
【0045】
<除霜運転>
図5に、除霜運転時の状態を示す。前記冷媒循環回路50では、図示の切替位置(第2切替位置に相当)に前記四方弁58が切り替えられることで、前記圧縮機53の吐出側に前記空気熱交換器55の入口側を連通するとともに、前記圧縮機53の吸入側に出口側が連通された前記熱交換器51の入口側に対し、前記空気熱交換器55の出口側を連通する。すなわち、前記圧縮機53から吐出された前記冷媒C2を、前記空気熱交換器55、前記膨張弁54、前記熱交換器51の順に流通させた後、前記圧縮機53に戻す流路を形成する。低温・低圧で吸入されたガス状態の前記冷媒C2は、前記圧縮機53で圧縮されて高温・高圧のガスとなった後、凝縮器として機能する前記空気熱交換器55において、前記送風ファン56の作動により送られる空気との熱交換を行って熱を放出しながら高圧の液体に変化する。このときの熱によって前記空気熱交換器55における着霜の融解が行われる。液体となった前記冷媒C2は前記膨張弁54において減圧されて低圧の蒸発しやすい状態となり、蒸発器として機能する前記熱交換器51において、前記端末循環回路30を流れる前記循環液Lと熱交換を行って蒸発した後、低温・低圧のガスとして再び前記圧縮機53へと戻る。
【0046】
このとき、前記端末循環回路30では、前記循環液循環ポンプ32により前記熱交換器51に流入した前記循環液Lが、前記熱交換器51において低圧の前記冷媒C2と熱交換し前記冷媒C2へ放熱した後、前記熱交換端末36を経て再び前記熱交換器51に流入する。
【0047】
<実施形態の特徴>
以上の基本構成及び作動であるヒートポンプ装置1において、本実施形態の特徴は、前記除霜運転を開始する直前のホットチャージと、前記除霜運転を終了し暖房運転を再開する時の圧縮機の制御態様にある。以下、その詳細を順を追って説明する。
【0048】
<ホットチャージ>
すなわち、本実施形態では、前記暖房運転から前記除霜運転へと移行する場合、いったん圧縮機53を停止させた後、前記四方弁58の切替(前記第1切替位置から前記第2切替位置へ)が行われる。そのように圧縮機53の駆動を停止して加熱を一時停止させる際、その停止の前に、循環液Lの温度を一旦上昇させる、いわゆるホットチャージを行う。具体的には、前記圧縮機制御部62Aに備えられた前記目標温度補正部62Ab(目標温度補正手段に相当)が、前記の循環液Lの目標温度を高く補正する。これにより、前記温調制御部62Aaの行う温調制御により圧縮機53の回転数が増大するので、除霜運転開始のための圧縮機53の停止よりも前に、負荷配管31や熱交換端末36や冷媒配管52内に熱を蓄積しておくことができる。この結果、その後、図5に示した除霜運転が行われる際、除霜運転中における循環液Lの温度を比較的高めに維持でき、前記被空調空間における快適性の低下防止を図ることができる。
【0049】
<除霜運転終了後、暖房再開時に生じうる課題>
前記除霜運転が終了すると、圧縮機53を再度停止させた後に再び四方弁58が前記第2位置から第1位置へと切り替えられ、前述と同様、圧縮機53の吐出側を熱交換器51に連通させ圧縮機53の吸込側を空気熱交換器55に連通させる。この切り替えの後に圧縮機53を起動することで、前述と同様の暖房運転を再開することができる(図3参照)。
【0050】
ここで、通常、前記のように除霜運転が終了し暖房運転が再開するときの圧縮機53の回転数は、例えば除霜運転を開始する直前の回転数と同じとすることで、速やかな循環液の加熱が図られるのが通常であった。そのような挙動の一例を比較例として図6に示す。
【0051】
図6において、この例では、循環液Lの目標温度が40[℃]、これに対応する圧縮機53の回転数が80[rps]であった場合の例である。この例では、除霜運転(後述の時間t3~t4参照)が行われる前に、前記ホットチャージを行うために目標温度補正部62Abにより循環液Lの目標温度が40[℃]から50[℃]へと引き上げ(増大補正)されている(時間t0→時間t1参照)。これに伴い、圧縮機53の回転数は前記80[rps]から90[rps]へと増大し、ヒートポンプユニット5による暖房出力は6[kW]から7[kW]へ増大している。なおこの結果、ヒートポンプユニット5による消費電力も2[kW]から3[kW]へと増加している。
【0052】
この状態でその後時間t2において圧縮機53が停止され、四方弁58の切り替え(第1切替位置→第2切替位置)が行われる。この時間t2においてヒートポンプユニット5の暖房出力は0[kW]となり、消費電力も0[kW]となる。前記四方弁58の切り替えが完了した後、時間t3において圧縮機53が回転数90[rps]で起動され、除霜運転が開始される。除霜運転は時間t4まで実行され、その間、圧縮機53の回転数は90[rps]で維持される。消費電力も3[kW]に維持される。時間t4で除霜運転が終了すると、圧縮機53が再び停止され、四方弁58の切り替え(第2切替位置→第1切替位置)が行われる。この時間t4においてヒートポンプユニット5の消費電力は再び0[kW]となる。
【0053】
一方、前記時間t2以降、ヒートポンプユニット5による加熱が停止されることから循環液Lの温度は時間t5までなだらかに降下する。しかしながら、前記目標温度補正部62Abの目標温度の補正によるホットチャージにより、循環液Lの温度は除霜運転が終了する時間t4においてもまだ34[℃]程度と比較的高めに維持される。
【0054】
そして、前記四方弁58の切り替えが完了した後、時間t5において圧縮機53が前記暖房運転が再開される。その際、この比較例では、この暖房運転再開時(時間t5)の圧縮機53の回転数が、除霜運転を開始する直前(時間t2)の回転数と同じ90[rps]に制御されている。このような回転数設定の結果、前記した負荷配管31や熱交換端末36や冷媒配管52に蓄積された熱により、暖房運転を再開した時間t5以降、循環液Lの温度は急上昇する。そのため、前記温調制御部62Aaの温調制御により時間t6以降で圧縮機53の回転数が90[rps]から急激に減少し、暖房出力及び消費電力も急激に減少するが、循環液Lの温度は時間t7において目標温度40[℃]を大きく上回る約50[℃]に達する(オーバーシュート)。
【0055】
このオーバーシュートに対応し、前記温調制御部62Aaの制御による圧縮機53の回転数は、その後の時間t8で0[rps]となる。すなわち、圧縮機53は再び停止される。このように、暖房運転再開時の圧縮機53の回転数を、除霜運転を開始する直前と同じに制御すると、(除霜運転が終了し暖房運転が再開されたのであるから)本来暖房運転を継続しなければならないにもかかわらず、圧縮機53が停止され暖房運転が止まってしまうという課題が生じる。
【0056】
<実施形態の特徴>
そこで、本実施形態では、圧縮機制御部62Aに備えられた回転数調整部62Ac(回転数調整手段に相当)により、前記暖房運転の再開時における圧縮機53の回転数が、前記除霜運転の開始直前の前記圧縮機53の回転数よりも低い回転数に調整される。その調整内容の詳細を前記図6に対応する図7に示す。
【0057】
図7に示すように、本実施形態においては、前記図6と同様の時間t0~時間t4の挙動の後、暖房運転再開時(時間t5)の圧縮機53の回転数が、除霜運転を開始する直前(時間t2)の回転数(90[rps])よりも低い、60[rps]に制限制御される。この例では特に、前記ホットチャージが行われる前の、前記循環液Lの目標温度(40[℃])に対応して温調制御部62Aaにより制御されていた回転数(80[rps])よりもさらに低い値となっている。すなわち、この場合、温調制御部62Aaでの温調制御による圧縮機53の回転数の制御よりも、前記回転数調整部62Acによる調整のほうが優先されることとなる。
【0058】
この低く調整された圧縮機53の回転数は、その後所定期間、この例では時間t16までの間、維持される。この結果、循環液Lの温度は、除霜運転開始前の回転数と同じとする前述の比較例とは異なり、時間t5以降もゆっくりと上昇する挙動となり、時間t16において35[℃]程度となる。また時間t5~t16の間、ヒートポンプユニット5の暖房出力は5[kW]に抑えられ、消費電力も1[kW]程度に抑えられる。
【0059】
その後、この例では、前記時間t16以降は、前記回転数調整部62Acによる回転数の制限は解除され、前記循環液Lの目標温度(40[℃])に対応した温調制御部62Aaの制御により、圧縮機53の回転数はゆっくりと増大する。これに対応して循環液Lの温度は前記時間t16以降もゆっくりと増大し、時間t17において目標温度(40[℃])に達して、それ以降はこの目標温度で安定する。同様に、時間t16以降、ヒートポンプユニット5の暖房出力もゆっくりと上昇して時間t17で6[kW]に達して安定し、消費電力もゆっくりと上昇して時間t17で2[kW]に達して安定する挙動となる。この例では、時間t17の後の時間t18で圧縮機53の回転数は70[rps]となり安定する。
【0060】
以上のようにして、本実施形態では、暖房運転の再開時(時間t5)における圧縮機53の回転数が除霜運転の開始直前(時間t2)の回転数よりも低く調整されることにより、前記比較例のように圧縮機53が停止することなく、暖房運転を継続することができる。
【0061】
<制御手順>
上述した手法を実現するために、制御装置62が実行する制御手順を、図8に示す。
【0062】
図8において、まずS2で、前記リモコン60に設けられた暖房運転スイッチ(図示省略)の操作を介して操作者から暖房運転の開始指示があったか否かが判定される。なお以下適宜、この暖房運転スイッチが操作されることを「運転スイッチON」のように称する(図示も同様)。運転スイッチがONされたらYes判定され、S4へ移行する。
【0063】
S4では、(前記四方弁58が前記第1切替位置になっている状態で)圧縮機制御部62Aにより圧縮機53が起動されて暖房運転が開始される。その後、圧縮機制御部62Aの前記温調制御部62Aaにより、圧縮機53の回転数の温調制御が開始される。その後、S65へ移行する。
【0064】
S6では、所定の除霜準備運転条件を満たしているか否かが判定される。この除霜準備運転条件とは、暖房運転中において前記空気熱交換器55で着霜が生じており除霜が必要であるか否かを判定する指標である。ここでは、前記外気温センサ57によって検出される外気温及び前記冷媒温度センサ52bによって検出される前記空気熱交換器55内の冷媒温度に基づいて前記除霜準備運転条件が規定されている。詳細には、前記外気温センサ57によって検出される外気温が所定範囲(例えば-10℃以上、かつ、2℃未満)であり、かつ、前記外気温センサ57によって検出される外気温から前記空気熱交換器55内の冷媒温度を差し引いた温度差が所定範囲(例えば8℃より大きい)という条件となる。すなわち、外気温がかなり低く、しかも、空気熱交換器55内の冷媒の温度がその外気温よりもかなり低い場合は、除霜が必要なほど着霜量が多い状態であると推定されるからである。そして、S6において前記除霜準備運転条件を満たしている場合にはYes判定され、S15へ移行する。
【0065】
S15では、所定の除霜開始条件を満たしているか否かが判定される。なお、このS15を実行する制御装置62が開始判定手段として機能する。この例では、上記S6での条件、すなわち外気温が前記所定範囲(例えば-10℃以上、かつ、2℃未満)でかつ前記外気温と前記空気熱交換器55内の冷媒温度との温度差が所定範囲(例えば8℃より大きい)という条件を満たした状態で所定時間(例えば数分程度)が経過したこと、が除霜開始条件となる。前記除霜開始条件が満たされた場合にはS15がYes判定され、S16へ移行する。
【0066】
S16では、前記目標温度補正部62Abにより、前記の循環液Lの目標温度が高く補正される。前記したように、この目標温度の上昇により、温調制御部62Aaによる制御の結果、負荷配管31や熱交換端末36や冷媒配管52内に熱が蓄積される、前記ホットチャージが実行される。
【0067】
その後、S17で、この時点で戻り液温度センサ34により検出されている前記戻り温度が、S16で補正された後の前記目標温度に到達したか否かが判定される。目標温度に到達するまではNo判定となってループ待機し、目標温度に到達したらYes判定されて、S18へ移行する。
【0068】
S18では、圧縮機制御部62Aにより、圧縮機53の駆動が停止される。その後、S19で、除霜運転を行うために、四方弁制御部62Dにより、前記四方弁58が前記第1切替位置から前記第2切替位置へと切り替えられる。これにより、前記四方弁58が、前記圧縮機53の吐出側に前記空気熱交換器55の入口側を連通するとともに前記圧縮機53の吸入側に出口側が連通された前記熱交換器51の入口側に対し前記空気熱交換器55の出口側を連通するように切り替えられる。その後、S20へ移行する。
【0069】
S20では、圧縮機制御部62Aにより圧縮機53が起動され、前記図5に示した除霜運転が開始される。前記S19を実行する四方弁制御部62D及びS20を実行する圧縮機制御部62Aが除霜開始手段として機能する。
【0070】
その後、S30で、圧縮機制御部62Aにより、所定の除霜終了条件を満たしているか否かが判定される。このS30を実行する圧縮機制御部62Aが、終了判定手段として機能する。前記除霜終了条件とは、除霜運転中において前記空気熱交換器55で着霜が十分に融解して除霜が完了しているか否かを判定する指標である。この場合は、前記冷媒温度センサ52bによって検出される前記空気熱交換器55内の冷媒温度に基づいて前記除霜終了条件が規定されている。詳細には、前記空気熱交換器55内の冷媒温度が所定値(例えば8℃)以上である状態が一定期間(例えば60秒程度)以上継続するという条件となる。この条件が満たされる場合には、前記空気熱交換器55における着霜が十分に融解して除霜が完了しているものと推定されるからである。そして、S30において前記除霜終了条件を満たしている場合にはYes判定され、S35へ移行する。
【0071】
S35では、圧縮機制御部62Aにより、圧縮機53の駆動が停止される。その後S40で、四方弁制御部62Dにより、前記四方弁58が再び前記第1切替位置に切り替えられる。すなわち、前記圧縮機53の吐出側に対し前記熱交換器51の入口側を連通するとともに前記圧縮機53の吸入側に出口側が連通された前記空気熱交換器55の入口側に対し前記熱交換器51の出口側を連通するように切り替えられる。
【0072】
その後、S50で、圧縮機制御部62Aにより圧縮機53が起動され、前記図3に示した除霜運転が開始される。前記S40を実行する四方弁制御部62D及び前記S50を実行する圧縮機制御部62Aが暖房再開制御手段として機能する。
【0073】
その後、S60で、前記回転数調整部62Acが、圧縮機制御部62Aの回転数を、前記除霜運転の開始直前の前記圧縮機53の回転数よりも低い回転数への制限(調整)を開始する。具体的には、例えば除霜運転の開始直前の前記圧縮機53の回転数の値からXだけ引いた所定回転数へと調整する(単位はすべて[rpm])。このXの値は、S50で暖房運転が再開された後に前記戻り液温度センサ34により検出される前記循環液Lの戻り温度、若しくは、前記循環液Lの前記目標温度に応じて決定される。
【0074】
このようなXの値の決定手法の一例を図9により説明する。図9に示すように、この例では、Xの値は、X=50[℃],X=40[℃],X=30[℃],X=20[℃]の4つに区分されている。これら4つの区分は、制御ハンチングを防ぎ制御安定性を向上する等の目的で、温度上昇側と温度低下側とでヒステリシスを持たせたものとなっている。
【0075】
すなわち、前記戻り温度又は目標温度(以下適宜、「循環液戻り温度等」という)が上昇挙動にある場合は、それら循環液戻り温度等度<40[℃]の範囲がX=20[℃]に決定され、40[℃]≦循環液戻り温度等<50[℃]の範囲がX=30[℃]に決定され、50[℃]≦循環液戻り温度等<60[℃]の範囲がX=40[℃]に決定され、60[℃]<循環液戻り温度等の範囲がX=50[℃]に決定される。
【0076】
一方、循環液戻り温度等が低下挙動にある場合は、循環液戻り温度等>55[℃]の範囲がX=50[℃]に決定され、55[℃]≧循環液戻り温度等>45[℃]の範囲がX=40[℃]に決定され、45[℃]≧循環液戻り温度等>35[℃]の範囲がX=30[℃]に決定され、35[℃]>循環液戻り温度等の範囲がX=20[℃]に決定される。
【0077】
但しXの値は固定的に定数として定められていてもよい。
【0078】
図8に戻り、前記S60の後、所定の条件が満たされたことを契機にS70へ移行し、前記S60で開始された前記圧縮機53の回転数の制限が解除される。この結果、これ以降は、前記温調制御部62Aaによる温調制御によって圧縮機53の回転数が制御されることになる。前記所定の条件としては、例えば、以下の(ア)(イ)の2つが考えられる。
【0079】
(ア)暖房運転再開後に検出される前記循環液Lの戻り温度が前記目標温度より所定値だけ低くなったこと;
例えば、前記戻り液温度センサ34により検出される前記循環液Lの戻り温度が目標温度よりもY[℃]低くなった場合である。このYの値としては、前記オーバーシュートが発生しない程度の値、例えば10以上15以下とすることができる。
あるいは、前記戻り液温度センサ34により検出される前記循環液Lの戻り温度が目標温度よりもZ[℃]以上低くなった状態が5分継続した場合である。このZの値としては、前記戻り温度が前記目標温度に到達できないことを予測した条件である、例えば10以上15以下とすることができる。
【0080】
(イ)暖房運転再開後に検出される前記循環液Lの前記戻り温度と、暖房運転の再開時に検出された前記循環液Lの戻り温度との温度偏差△Tが、所定しきい値に到達したこと;
例えば、暖房運転再開後に前記戻り液温度センサ34により検出される前記循環液Lの戻り温度が、暖房運転再開時に前記戻り液温度センサ34により検出された前記循環液Lの戻り温度よりもY′[℃]だけ高くなった場合である。このY′の値としては、戻り温度の温度上昇具合が、前記オーバーシュートが発生しない程度に収まる値、例えば5以上10以下とすることができる。
【0081】
以上のようにしてS70において前記圧縮機53の回転数の制限が解除されたら、S80へ移行する。
【0082】
S80では、前記メインリモコン60aに設けられた運転停止スイッチ(図示省略)の操作を介して操作者から暖房運転の停止指示があったか否かが判定される。なお以下適宜、この運転停止スイッチが操作されることを「運転スイッチOFF」のように称する(図示も同様)。運転スイッチがOFFされない間はS80がNo判定され、S5に戻って上述の手順が繰り返される。運転スイッチがOFFされたらS80がYes判定されてS85へ移行し、圧縮機制御部62Aにより圧縮機53が駆動停止されて暖房運転が停止され、このフローを終了する。
【0083】
<実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態のヒートポンプ装置1においては、圧縮機制御部62Aに備えられた温調制御部62Aaにより、循環液Lの戻り温度が所定も目標温度になるように圧縮機53の回転数が制御される(いわゆる温調制御)。そして、暖房運転が一定時間継続した後に生じた空気熱交換器55の着霜を融解するための除霜運転が行われる際には、まず、所定の除霜運転開始条件が満たされるか否かが判定される(S15参照)。前記の暖房運転の継続によって除霜運転開始条件が満たされると、目標温度補正部62Abにより循環液の目標温度が高く補正される。この結果、前記温調制御により圧縮機53の回転数が増大するので、後述の除霜運転開始のための圧縮機53の停止よりも前に、循環液配管や熱交換端末36や冷媒配管52内に熱を蓄積しておく(いわゆるホットチャージ)ことができる。
【0084】
その後、四方弁58が第2切替位置に切り替えられ圧縮機53が起動されることで除霜運転が開始され(S19,S20参照)、空気熱交換器55からの放熱によって、前述のようにして生じた着霜を融解することができる。またこのとき、前述のように除霜運転開始時の圧縮機53の停止直前にホットチャージが行われているため、除霜運転中における循環液Lの温度を比較的高めに維持でき、暖房環境における快適性の低下防止が図られる。
【0085】
その後、所定の除霜終了条件が満たされたか否かが判定され(S30参照)、当該条件が満たされると除霜運転が終了し、圧縮機53を停止させた後に再度四方弁58が第1切替位置に切り替えられる(S40,S50参照)。すなわち、この切り替えの後に圧縮機53を起動することで、前述と同様の暖房運転を再開することができる。
【0086】
このとき、本実施形態では、圧縮機制御部62Aに備えられた回転数調整部62Acにより、前記暖房運転の再開時における圧縮機53の回転数が、前記除霜運転の開始直前の前記圧縮機53の回転数よりも低い回転数に調整される。これにより、このときの圧縮機53の回転数を除霜運転開始前の回転数と同じとする比較例のような、前記蓄積された熱による循環液温度のオーバーシュートを防止することができる。この結果、温調制御部62Aaの温調制御により圧縮機53が停止することなく、暖房運転を継続することができる。
【0087】
また、本実施形態では特に、前記回転数調整部62Acは、前記暖房運転の再開時の前記圧縮機53の回転数を、当該暖房運転が再開された後に前記戻り液温度センサ34により検出される前記循環液Lの前記戻り温度、若しくは、前記循環液Lの目標温度、に応じた所定回転数に調整する。
これにより、前記オーバーシュートを防止するために暖房運転再開時の圧縮機53の回転数を前記のように低く調整する際、再開時の回転数の値を、暖房運転再開後の循環液Lの戻り温度又は循環液Lの前記目標温度に応じてきめ細かく設定することができる。
【0088】
また、本実施形態では特に、前記圧縮機制御部62Aは、前記暖房運転が再開された後に前記戻り液温度センサ34により検出される前記循環液Lの戻り温度が前記目標温度より所定値だけ低くなったことを契機に、前記圧縮機53の回転数を、前記温調制御部62Aaにより温調制御する。
これにより、暖房運転再開時の圧縮機53の回転数の値を前記のように設定した後、少なくとも循環液Lの戻り温度が目標温度より所定値だけ低くなるまではその設定した値を維持してから、元の温調制御に復帰させることができる。
【0089】
また、本実施形態では特に、前記圧縮機制御部62Aは、前記戻り液温度センサ34により検出される前記循環液Lの戻り温度と、当該暖房運転の再開時に前記戻り液温度センサ34により検出された循環液Lの戻り温度との温度偏差が、所定しきい値に到達したことを契機に、前記圧縮機53の回転数を、前記温調制御部62Aaにより温調制御する。
これにより、暖房運転再開時の圧縮機53の回転数の値を前記のように設定した後、変動する循環液Lの戻り温度と再開時の循環液Lの戻り温度との温度偏差が所定しきい値に到達するまではその設定した値を維持してから、元の温調制御に復帰させることができる。
【0090】
なお、以上においては、熱交換器51の入口側(流入側)の前記戻り液温度センサ34により検出された循環液Lの戻り温度に応じて、前記圧縮機53の回転数を制御する、いわゆる戻り温度制御を行ったが、これに限られない。すなわち、前記熱交換器51の出口側(流出側)に往き温度センサを設け、この往き温度センサにより検出された循環液Lの往き温度に応じて、前記圧縮機53の回転数を制御する、いわゆる往き温度制御を行ってもよい。この場合は前記往き温度が循環液Lの実温度に相当し、往き温度センサが実温度検出手段に相当する。
【0091】
また、以上では、除霜運転開始前に実行されるホットチャージにより生じるオーバーシュートに由来する暖房運転の停止という課題を、本願発明が解決する手法について説明した。しかしながら、本願発明の適用はこのようなホットチャージを行う構成には限られない。すなわち例えば、循環液Lが循環する負荷配管31に循環液加熱補助手段としての補助ヒータを設け、除霜運転中において当該補助ヒータによって熱交換端末36への循環液Lを加熱する手法がある。この場合、(前記ホットチャージを行わなくても)上記同様に、除霜運転中における循環液Lの温度を比較的高めに維持し、暖房環境における快適性の低下を防止できる。この手法の場合も、前記と同様に暖房運転再開時の圧縮機53の回転数を除霜運転開始直前の回転数と同じとすると、除霜運転中に負荷配管31や熱交換端末36等に蓄積された熱によって前記同様のオーバーシュートが生じる恐れがある。したがって、本願発明による前記の手法を適用することで、上記同様、温調制御による圧縮機53の停止を回避し暖房運転を継続できる効果を得ることができる。
【0092】
さらには、空気熱交換器55を介し熱源として利用する外気とは別の、第2の熱源から受熱可能な熱交換器(この場合はこの熱交換器が循環液加熱補助手段に相当する)を端末循環回路30に設け、その熱交換器において第2の熱源からの受熱を用いて循環液Lを加熱する構成に対し、本願発明を適用してもよい。第2の熱源としては、例えばガス加熱器や、地中熱を汲み出す地中熱交換器等があり得る。この場合、除霜運転実行の際にヒートポンプユニット5から循環液Lへの加熱が消失するのに応じて、それら第2熱源からの受熱で補い循環液Lを加熱することで、上記同様に、除霜運転中における循環液Lの温度を比較的高めに維持し、暖房環境における快適性の低下を防止できる。しかしながら、除霜運転が終了してヒートポンプユニット5による循環液Lの加熱を再開するとき、前記と同様にその再開時の圧縮機53の回転数を除霜運転開始直前の回転数と同じとすると、前記第2の熱源と併せて循環液Lへの加熱能力が過大となり前記同様のオーバーシュートが生じる恐れがある。したがってこのような場合も、前記同様、ヒートポンプユニット5による循環液Lの加熱再開時の圧縮機53の回転数を除霜運転開始直前の回転数よりも低く調整することで、オーバーシュートの発生を回避し、同様の効果を得ることができる。
【0093】
また、以上において、図4に示す矢印は信号の流れの一例を示すものであり、信号の流れ方向を限定するものではない。
【0094】
また、図8に示すフローチャートは本発明を上記フローに示す手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
【0095】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0096】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0097】
1 ヒートポンプ装置
5 ヒートポンプユニット(ヒートポンプ機構)
30 端末循環回路
31 負荷配管(循環液配管)
34 戻り液温度センサ(実温度検出手段)
36 熱交換端末(負荷端末)
50 ヒートポンプ回路
51 熱交換器(負荷側熱交換器)
52 冷媒配管
53 圧縮機
54 膨張弁
55 空気熱交換器(熱源側熱交換器)
57 外気温センサ
58 四方弁(切替弁)
62 制御装置
62A 圧縮機制御部(圧縮機制御手段)
62Aa 温調制御部(温調制御手段)
62Ab 目標温度補正部(目標温度補正手段)
62Ac 回転数調整部(回転数調整手段)
L 循環液
図1
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