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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】転圧機械
(51)【国際特許分類】
   E01C 19/26 20060101AFI20241010BHJP
   B60S 1/68 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
E01C19/26
B60S1/68
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021055414
(22)【出願日】2021-03-29
(65)【公開番号】P2022152587
(43)【公開日】2022-10-12
【審査請求日】2023-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 篤
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 貴尚
(72)【発明者】
【氏名】菅嶋 進弥
(72)【発明者】
【氏名】早坂 喜憲
(72)【発明者】
【氏名】池田 豊
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-131906(JP,A)
【文献】特開2012-017560(JP,A)
【文献】特開2016-089332(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0073906(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 19/00 - 19/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体と、
前記機体に回動可能に取付けられた前輪及び後輪を含む車輪と、
前記前輪及び前記後輪の夫々に対応して前記機体に取り付けられた摺接装置と、を備え、
前記摺接装置は、
マットブラシと、
前記マットブラシに固定されるとともに前記機体に揺動可能に取付けられたブラシ固定部、前記ブラシ固定部に取付けられた保持ピン、及び、前記ブラシ固定部に設けられた取っ手部を含み、前記ブラシ固定部の揺動に応じて前記マットブラシが前記車輪と接離するように構成されたマットブラシ支持部材と、
前記機体に揺動可能に取付けられたレバー部材であって、前記レバー部材の揺動に応じて前記保持ピンとの係合状態が切換えられるように構成された係合部を含み、前記係合部及び前記保持ピンが係合した状態で前記マットブラシを前記車輪から離間した位置に保持し、且つ、前記係合部と前記保持ピンとの係合が解除された状態で前記マットブラシが前記車輪に接触するように構成されたレバー部材と、を備える転圧機械において、
前記レバー部材は、前記係合部と前記保持ピンとの係合状態を切換える操作部を備え、
前記操作部は、前記係合部及び前記保持ピンが係合した状態で、前記取っ手部の下端よりも前記ブラシ固定部の揺動方向上側の位置で終端するものであって前記取っ手部の方向に延在する第1突出部及び第2突出部を含んで構成されており、
前記第1突出部は、前記係合部及び前記保持ピンが係合した状態で、前記ブラシ固定部の揺動方向を基準として前記取っ手部よりも手前側の位置で終端するように形成されており、
前記第2突出部は、前記係合部及び前記保持ピンが係合した状態で、前記ブラシ固定部の揺動方向を基準として前記取っ手部よりも奥側の位置で終端するように形成されている、
ことを特徴とする転圧機械。
【請求項2】
前記摺接装置は、一端において前記レバー部材に取り付けられ、且つ、他端において前記ブラシ固定部に取り付けられたばね部材を更に含んで構成されており、
前記ばね部材は、前記係合部と前記保持ピンとの係合が解除された状態で前記マットブラシが前記車輪に接触するように付勢されており、且つ、前記ブラシ固定部が前記車輪から離れる方向に揺動した際に前記係合部が前記保持ピンと係合するように付勢されている、ことを特徴とする請求項1記載の転圧機械。
【請求項3】
前記摺接装置は、前記取っ手部及び前記レバー部材をそれぞれ、前記機体の幅方向に離間して2組備えている、ことを特徴とする請求項1記載の転圧機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は転圧機械に関し、特にマットブラシを備える転圧機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、マットブラシを備える転圧機械が知られている(例えば特許文献1)。特許文献1には、タイヤの踏面に水又は液剤の膜を形成する摺接体とその支持手段を備えて構成されたタイヤローラが記載されている。当該タイヤローラでは、左右一組ずつのタイヤに摺接する摺接体同士がパイプ材により互いに連結されている。当該パイプ材は、上下のリンクアームを介して、車体に取り付けたブラケットに回動可能に連結されている。特許文献1に記載のタイヤローラでは、摺接体をタイヤの踏面から離した位置に保持するための爪部を備えたストッパロッドが、ブラケットに回動可能に保持されている。また、下リンクアームの途中に、ストッパロッドの爪部と係合するためのストッパ受けピンが固定されている。
【0003】
当該タイヤローラにおいて摺接体を後輪の踏面から離すとき、摺接体の支持手段(例えばパイプ材)を手で持ち、上リンクアームを所定の位置まで引上げる。この状態で、ストッパロッドが自重で後方へ倒れる。次いで、摺接体の支持手段から手を離す。これにより、摺接装置の自重と引張ばねの引張力によってストッパロッドの爪部にストッパ受けピンが係合し、摺接体が後輪の踏面から離れた位置に保持される。
【0004】
他方、当該タイヤローラにおいて摺接体を後輪の踏面に摺接させるとき、摺接体の支持手段(例えばパイプ材)を手で持ち、上リンクアームを所定の位置まで引上げる。次いで、ストッパロッドを手で持ち、爪部がストッパ受けピンから外れるまで前方に回動させる。最後に、摺接体の支持手段から手を離す。これにより、摺接装置の自重と引張ばねの引張力によって摺接体が後輪の踏面に圧接される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-131906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、特許文献1に記載のタイヤローラでは、摺接体をタイヤの踏面に摺接させる場合、支持手段を片手で把持しつつストッパロッドを別の手で把持して作業する必要がある。このように、作業者は、両手を使って摺接体をタイヤ踏面に摺接させる作業を行う必要があり、このことは当該作業の作業性を悪化させるおそれがあった。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車輪にマットブラシを接触させる作業及び車輪からマットブラシを離間させる作業を共に片手で実現し、当該作業の作業性向上を図る転圧機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の転圧機械は、機体と、前記機体に回動可能に取付けられた前輪及び後輪を含む車輪と、前記前輪及び前記後輪の夫々に対応して前記機体に取り付けられた摺接装置と、を備え、前記摺接装置は、マットブラシと、前記マットブラシに固定されるとともに前記機体に揺動可能に取付けられたブラシ固定部、前記ブラシ固定部に取付けられた保持ピン、及び、前記ブラシ固定部に設けられた取っ手部を含み、前記ブラシ固定部の揺動に応じて前記マットブラシが前記車輪と接離するように構成されたマットブラシ支持部材と、前記機体に揺動可能に取付けられたレバー部材であって、前記レバー部材の揺動に応じて前記保持ピンとの係合状態が切換えられるように構成された係合部を含み、前記係合部及び前記保持ピンが係合した状態で前記マットブラシを前記車輪から離間した位置に保持し、且つ、前記係合部と前記保持ピンとの係合が解除された状態で前記マットブラシが前記車輪に接触するように構成されたレバー部材と、を備える転圧機械において、前記レバー部材は、前記係合部と前記保持ピンとの係合状態を切換える操作部を備え、前記操作部は、前記係合部及び前記保持ピンが係合した状態で、前記取っ手部の下端よりも前記ブラシ固定部の揺動方向上側の位置で終端するものであって前記取っ手部の方向に延在する第1突出部及び第2突出部を含んで構成されており、前記第1突出部は、前記係合部及び前記保持ピンが係合した状態で、前記ブラシ固定部の揺動方向を基準として前記取っ手部よりも手前側の位置で終端するように形成されており、前記第2突出部は、前記係合部及び前記保持ピンが係合した状態で、前記ブラシ固定部の揺動方向を基準として前記取っ手部よりも奥側の位置で終端するように形成されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の転圧機械において、レバー部材は、当該レバー部材の揺動に応じて保持ピンとの係合状態が切換えられるように構成された係合部と係合部と保持ピンとの係合状態を切換える操作部とを含んで構成されている。また、レバー部材は、係合部と保持ピンとが係合した状態でマットブラシを車輪から離れた位置に保持し、且つ、係合部と保持ピンとの係合が解除された状態でマットブラシが車輪に接触するように構成されている。そして、当該操作部は、取っ手部の方向に延在する第1突出部及び第2突出部を含んで構成されており、第1突出部は、係合部及び保持ピンが係合した状態で、ブラシ固定部の揺動方向を基準として取っ手部よりも手前側の位置で終端するように形成されており、第2突出部は、係合部及び保持ピンが係合した状態で、ブラシ固定部の揺動方向を基準として取っ手部よりも奥側の位置で終端するように形成されている。このように、操作部は、第1突出部及び第2突出部を含み、作業者が取っ手部を順手或いは逆手で把持した場合に、いずれも作業者の親指で操作しやすい位置で終端している。このため、作業者は、取っ手部を片手で把持してブラシ固定部を揺動させつつ、当該取っ手部を把持している手の親指で操作部を操作してレバー部材を揺動させることができる。つまり、作業者は、ブラシ固定部を揺動させる操作と、保持ピン及び係合部の係合状態を切換える操作とを、取っ手部を把持している手即ち片手だけで行うことができる。このようにして、車輪にマットブラシを接触させる作業及び車輪からマットブラシを離間させる作業を片手で実現することができ、当該作業の作業性向上を図る転圧機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係る転圧機械の概略構成を示す斜視図である。
図2図1に示す転圧機械の前輪に対応して設けられた摺接装置の概略構成を示す拡大斜視図である。
図3図2に示す摺接装置の一部分を概略的に示す拡大斜視図であり、マットブラシが前輪から離間した状態を示すものである。
図4図2に示す摺接装置の一部分を概略的に示す拡大斜視図であり、マットブラシが前輪に接触した状態を示すものである。
図5図2に示す摺接装置においてマットブラシを前輪に接触させる操作を説明する図であり、(A)はマットブラシが前輪から離間した状態を示し、(B)は作業者が順手でマットブラシ支持部材を引上げてレバー部材を操作する状態を示し、(C)はマットブラシが前輪に接触した状態を示す。
図6図2に示す摺接装置においてマットブラシを前輪に接触させる操作を説明する図であり、(A)はマットブラシが前輪から離間した状態を示し、(B)は作業者が逆手でマットブラシ支持部材を引上げてレバー部材を操作する状態を示し、(C)はマットブラシが前輪に接触した状態を示す。
図7図2に示す摺接装置においてマットブラシを前輪から離間させる操作を説明する図であり、(A)はマットブラシが前輪に接触した状態を示し、(B)は作業者によってマットブラシ支持部材が引上げられた状態を示し、(C)はマットブラシが前輪から離間した状態を示す。
図8】本発明の第2実施形態に係る転圧機械の前輪に対応して設けられた摺接装置の一部分を概略的に示す拡大斜視図であり、マットブラシが前輪から離間した状態を示すものである。
図9図8に示す摺接装置においてマットブラシを前輪から離間させる操作を説明する図であり、(A)はマットブラシが前輪に接触した状態を示し、(B)は作業者が順手でマットブラシ支持部材を引上げてレバー部材を操作する状態を示し、(C)はマットブラシが前輪から離間した状態を示す。
図10図8に示す摺接装置においてマットブラシを前輪から離間させる操作を説明する図であり、(A)はマットブラシが前輪に接触した状態を示し、(B)は作業者が逆手でマットブラシ支持部材を引上げてレバー部材を操作する状態を示し、(C)はマットブラシが前輪から離間した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
【0012】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る転圧機械1の概略構成を示す斜視図である。図2は、図1に示す転圧機械1の前側転圧ローラ22に対応して設けられた摺接装置30の概略構成を示す拡大斜視図である。図3は、図2に示す摺接装置30の一部分を概略的に示す拡大斜視図であり、マットブラシ40が前側転圧ローラ22から離間した状態を示すものである。図4は、図2に示す摺接装置30の一部分を概略的に示す拡大斜視図であり、マットブラシ40が前側転圧ローラ22に接触した状態を示すものである。図5は、図2に示す摺接装置30においてマットブラシ40を前側転圧ローラ22に接触させる操作を説明する図であり、(A)はマットブラシ40が前側転圧ローラ22から離間した状態を示し、(B)は作業者が順手でマットブラシ支持部材50を引上げてレバー部材60を操作する状態を示し、(C)はマットブラシ40が前側転圧ローラ22に接触した状態を示す。図6は、図2に示す摺接装置30においてマットブラシ40を前側転圧ローラ22に接触させる操作を説明する図であり、(A)はマットブラシ40が前側転圧ローラ22から離間した状態を示し、(B)は作業者が逆手でマットブラシ支持部材50を引上げてレバー部材60を操作する状態を示し、(C)はマットブラシ40が前側転圧ローラ22に接触した状態を示す。図7は、図2に示す摺接装置30においてマットブラシ40を前側転圧ローラ22から離間させる操作を説明する図であり、(A)はマットブラシ40が前側転圧ローラ22に接触した状態を示し、(B)は作業者によってマットブラシ支持部材50が引上げられた状態を示し、(C)はマットブラシ40が前側転圧ローラ22から離間した状態を示す。
【0013】
なお、説明の便宜上、転圧機械1の進行方向を基準にキャビン26内の作業者(図示せず)から見て「前」、「後」、「左」、「右」をそれぞれ定義し、重力を基準に「上」、「下」を定義する。即ち、各図に示される矢印「前」及び「後」は、転圧機械1の前進方向及び後進方向を示し、矢印「上」及び「下」は転圧機械1の上下方向を示している。また、矢印「左」及び「右」は、転圧機械1の左右(車幅)方向であり、前後方向及び上下方向に垂直な方向を意味する。
【0014】
図1に示すように、転圧機械1は、機体10と、機体10に回動可能に取付けられた前側転圧ローラ22(前輪)及び後側転圧ローラ24(後輪)を含む転圧ローラ20(車輪)と、前側転圧ローラ22及び後側転圧ローラ24の夫々に対応して機体10に取り付けられた摺接装置30とを備える。
【0015】
図1に示すように、前側転圧ローラ22及び後側転圧ローラ24はそれぞれ、機体10の前部及び後部に回動可能に取付けられており、転圧機械1の車輪を兼用している。前側転圧ローラ22は、前側車軸(図示せず)を介して前側フレーム18に回動可能に支持されている。また、前側転圧ローラ22は、機体10の左右方向に隣り合って複数配置されている。具体的には、前側転圧ローラ22は、車幅方向の中央又は略中央に配置された中央転圧ローラ22bと、当該中央転圧ローラ22bの左右両側にそれぞれ配置された左転圧ローラ22a及び右転圧ローラ22cとを含んで構成されている。中央転圧ローラ22b、左転圧ローラ22a、及び右転圧ローラ22cは、互いに車幅方向に離間して配置されている。前側転圧ローラ22は操向輪であり、図1に示すように、キャビン26に配置されたステアリングハンドル26aによって操向可能となっている。
【0016】
後側転圧ローラ24は駆動輪であり、キャビン26に配置された前後進切換レバー、エンジン回転数切換スイッチ(いずれも図示せず)等の操作機器によって操作可能となっている。機体10には、図示しないエンジンルームが設けられており、このエンジンルーム内にはHSTシステムが配置されている。当該HSTシステムは、エンジン、走行用油圧ポンプ、ギヤポンプ、及び走行用油圧モータ等を含んで構成される。このHSTは、エンジンの駆動力を利用して走行用油圧ポンプやギヤポンプ等のポンプを作動させることで作動油を循環させ、作動油の循環によって機体10の駆動、減速、及び停止を行うことが可能とされる、所謂油圧式無段変速機である。なお、HSTの構成自体は公知のものであるため、その詳細な説明を省略する。
【0017】
図2から図4に示すように、機体10は、支柱部材12と、ブラケット14と、ヨーク16と、前側フレーム18とを含んで構成されている。支柱部材12、ブラケット14、ヨーク16、及び前側フレーム18は、前側転圧ローラ22に対応して設けられている。
【0018】
図2に示すように、前側フレーム18は、フロントビーム18a、一対のサイドビーム18b及びリアビーム(図示せず)を含む。フロントビーム18aは中央転圧ローラ22bの前方において左右方向に延在している。リアビームは、中央転圧ローラ22bの後方において左右方向に延在している。一対のサイドビーム18bはそれぞれ、中央転圧ローラ22b及び左転圧ローラ22aの間、中央転圧ローラ22b及び右転圧ローラ22cの間を機体10の前後方向に延在している。また、一対のサイドビーム18bはそれぞれ、前後方向の端部でフロントビーム18a及びリアビームに連結されている。これにより、フロントビーム18a、一対のサイドビーム18b及びリアビームは中央転圧ローラ22bを囲むように配置されている。
【0019】
図2に示すように、ヨーク16は上方に凸のアーチ形状を有し、当該ヨーク16の頂部が機体10の下面に取り付けられている。また、ヨーク16は、その両端でフロントビーム18a及びリアビームに固定されている。ヨーク16は、ステアリングハンドル26aの操向に応じて回動するように構成されており、これにより前側転圧ローラ22が転舵するようになっている。
【0020】
図2に示すように、支柱部材12は、一対のサイドビーム18bのそれぞれに固定された左支柱12a及び右支柱12bを含んで構成されている。左支柱12aは、一対のサイドビーム18bのうち左側に位置する部分の上面にボルトを用いて固定されている。右支柱12bは、一対のサイドビーム18bのうち右側に位置する部分の上面にボルトを用いて固定されている。支柱部材12は、前側転圧ローラ22の前側車軸より前方に位置付けられ、一対のサイドビーム18bの上面から上方に向かって延びている。左支柱12a及び右支柱12bには、車幅方向に延在する液剤配管96及び散水配管98が取付けられており、当該液剤配管96及び散水配管98を介して前側転圧ローラ22に対して水等が吹付けられる。
【0021】
図2から図4に示すように、ブラケット14は、左支柱12a及び右支柱12bのそれぞれに固定された左ブラケット14a及び右ブラケット14bを含んで構成されている。左ブラケット14a及び右ブラケット14bはそれぞれ、車幅方向に互いに離間して配置された一対の板材であり、左支柱12a及び右支柱12bから前方に延在して互いに平行に形成されている。
【0022】
図2から図4に示すように、摺接装置30は、マットブラシ40と、マットブラシ支持部材50と、レバー部材60と、ばね部材としての引張ばね80とを備える。以下、摺接装置30について、前側転圧ローラ22に対応して設けられたものを説明するが、当該摺接装置30は後側転圧ローラ24に対応して設けられるものであってもよい。
【0023】
図2に示すように、マットブラシ40は、前側転圧ローラ22に対応して設けられている。具体的には、マットブラシ40は、左転圧ローラ22aに対応して設けられた左マットブラシ40aと、中央転圧ローラ22bに対応して設けられた中央マットブラシ40bと、右転圧ローラ22cに対応して設けられた右マットブラシ40cとを含んで構成されている。マットブラシ40は、前側転圧ローラ22の周面に付着したゴミや合材等を除去するとともに、前側転圧ローラ22の周面に水や液剤の膜を形成するように構成されたものである。
【0024】
図2から図4に示すように、マットブラシ支持部材50は、マットブラシ40に固定されるとともに機体10に揺動可能に取付けられたブラシ固定部52と、ブラシ固定部52に取付けられた保持ピン54と、ブラシ固定部52に設けられた取っ手部56を含んで構成されている。
【0025】
ブラシ固定部52は、パイプ部材52aと、一対の連結部材52bと、第1回転軸52cとを含んで構成されている。パイプ部材52aは、略方形に屈曲して形成された部材であり、マットブラシ40に固定されている。具体的には、パイプ部材52aは、左マットブラシ40a、中央マットブラシ40b、及び右マットブラシ40cの背部(前側転圧ローラ22に摺接する側とは反対側)に固定されており、これらの左マットブラシ40a、中央マットブラシ40b及び右マットブラシ40cを一体に固定している。
【0026】
また、一対の連結部材52bは、幅方向に互いに離間して配置された一対の板材であり、機体10の前方且つ下方に斜めに互いに平行に延びている。一対の連結部材52bは、中央転圧ローラ22b及び左転圧ローラ22aの間、中央転圧ローラ22b及び右転圧ローラ22cの間に2組設けられている。これら一対の連結部材52bは同じ構成を有するため、ここでは、中央転圧ローラ22b及び左転圧ローラ22aの間に配置された一対の連結部材52bの説明のみを行う。
【0027】
図3及び図4に示すように、一対の連結部材52bは、上側の端部において第1回転軸52cが左右方向に貫通して固定されている。第1回転軸52cは断面円形の棒状部材であり、一対の連結部材52bは、第1回転軸52cを介してブラケット14に揺動可能に取付けられている。一対の連結部材52bは、当該一対の連結部材52bのうち左側に位置する部材から右方向に延在する前側突起94を含んで構成されている。前側突起94は、断面円形の棒状に形成されている。また、一対の連結部材52bは、下側の端部においてパイプ部材52aに固定されている。このようにして、マットブラシ支持部材50は、ブラシ固定部52の揺動に応じてマットブラシ40が前側転圧ローラ22と接離するように構成されている。具体的には、マットブラシ支持部材50は、ブラシ固定部52が第1回転軸52cを中心に前側転圧ローラ22に接近する方向に揺動することによって、マットブラシ40が前側転圧ローラ22と接触するように構成されている。また、マットブラシ支持部材50は、ブラシ固定部52が第1回転軸52cを中心に前側転圧ローラ22から離れる方向に揺動することによって、マットブラシ40が前側転圧ローラ22から離間するように構成されている。ここで、「マットブラシ40が前側転圧ローラ22と接離する」とは、マットブラシ40が前側転圧ローラ22に接触すること、及び、マットブラシ40が前側転圧ローラ22から離間することを意味する。
【0028】
図3及び図4に示すように、保持ピン54は、一対の連結部材52bに固定された棒状の部材であり、一対の連結部材52bの間を左右方向に延在して形成されている。取っ手部56は、パイプ部材52aの一部分として形成されている。具体的には、取っ手部56は、パイプ部材52aの左右方向に延在する部分のうち下側部分において、中央転圧ローラ22b及び左転圧ローラ22aの間の部分、並びに、中央転圧ローラ22b及び右転圧ローラ22cの間の部分に2つ設けられている。取っ手部56は、マットブラシ支持部材50を揺動させる際に作業者の持ち手となる部分であり、作業者は取っ手部56を把持して、転圧ローラ20に対するマットブラシ40の接離作業を行う。
【0029】
図2に示すように、レバー部材60は、取っ手部56に対応して、中央転圧ローラ22b及び左転圧ローラ22aの間、中央転圧ローラ22b及び右転圧ローラ22cの間に2つ設けられている。このように、取っ手部56及びレバー部材60はそれぞれ、機体10の幅方向に離間して2組設けられている。なお、両レバー部材60は同じ構成を有するため、ここでは、中央転圧ローラ22b及び左転圧ローラ22aの間に配置されたレバー部材60の説明のみを行う。
【0030】
図3及び図4に示すように、レバー部材60は、基部66と、係合部62と、操作部64とを含んで構成された板状の部材であり、機体10に揺動可能に取付けられている。具体的には、基部66には、棒状部材である第2回転軸60aが左右方向に貫通して固定されており、レバー部材60は、第2回転軸60aを介してブラケット14に揺動可能に取付けられている。第2回転軸60aは、第1回転軸52cよりも下方に配置されている。また、レバー部材60は、基部66から左方向に延在する後側突起95を含んで構成されている。後側突起95は、基部66において、第2回転軸60aより下側に設けられている。後側突起95は、断面円形の棒状に形成されている。
【0031】
図3及び図4に示すように、操作部64は、係合部62と保持ピン54との係合状態を切換えるように構成されている。具体的には、操作部64は、作業者が取っ手部56を把持した状態で当該作業者の少なくともいずれか一つの指が到達する位置、例えば取っ手部56の長手方向(左右方向)に垂直な面において取っ手部56を中心とした半径80mmの範囲内で終端するように形成されている。また、図5(A)に示すように、操作部64は、係合部62及び保持ピン54が係合した状態で、取っ手部56の下端56Aよりもブラシ固定部の揺動方向上側の位置で終端する。
【0032】
具体的には、操作部64は、取っ手部56の方向に延在する第1突出部64a及び第2突出部64bを含んで構成されている。図5(B)に示すように、第1突出部64aは、作業者が取っ手部56を順手で把持した状態で作業者の親指92が到達する位置、例えば取っ手部56の長手方向(左右方向)に垂直な面において取っ手部56を中心とした半径約20mmの範囲内で終端するように形成されている。具体的には、第1突出部64aは、基部66の前側部分から前方且つ下方に斜めに直線的に延在し、その先端部分において下に凸となるように湾曲して形成されている。そして、図5(A)に示すように、第1突出部64aは、係合部62及び保持ピン54が係合した状態で、ブラシ固定部52の揺動方向を基準として取っ手部56よりも手前側、即ち取っ手部56よりも前側の位置で終端するように形成されている。また、図6(B)に示すように、第2突出部64bは、作業者が取っ手部56を逆手で把持した状態で作業者の親指92が到達する位置、例えば取っ手部56の長手方向に垂直な面において取っ手部56を中心とした半径約40mmの範囲内で終端するように形成されている。具体的には、第2突出部64bは、第1突出部64aより上側に位置しており、基部66の前側部分から前方且つ下方に斜めに直線的に延在して形成されている。そして、図5(A)に示すように、第2突出部64bは、係合部62及び保持ピン54が係合した状態で、ブラシ固定部52の揺動方向を基準として取っ手部56よりも奥側、即ち取っ手部56よりも後側の位置で終端するように形成されている。
【0033】
図3及び図4に示すように、係合部62は、レバー部材60の揺動に応じて保持ピン54との係合状態が切換えられるように構成されている。具体的には、係合部62は、第3突出部62aと、第4突出部62bと、係合凹部62cとを含んで構成されている。図5(B)に示すように、第4突出部62bは、第2突出部64bより上側に位置しており、基部66の前側部分から前方且つ上方に斜めに直線的に延在して形成されている。また、第3突出部62aは、第4突出部62bより後側に位置しており、基部66の上側部分から前方且つ上方に斜めに直線的に延在して形成されている。第3突出部62aは、第4突出部62bよりも短く形成されている。係合凹部62cは、第3突出部62aと第4突出部62bとの間に形成された部分であり、レバー部材60の揺動に応じて保持ピン54が係合するように構成されている。係合凹部62cは、例えば取っ手部56の長手方向(左右方向)に垂直な面において取っ手部56を中心とした半径約130mmの位置に設けられている。図3に示すように、レバー部材60は、係合部62と保持ピン54とが係合した状態、即ち保持ピン54が係合凹部62cに収容された状態でマットブラシ40を前側転圧ローラ22から離間した位置に保持するように構成されている。更に、図4に示すように、レバー部材60は、係合部62と保持ピン54との係合が解除された状態、即ち保持ピン54が係合凹部62cに収容されていない状態でマットブラシ40が前側転圧ローラ22に接触するように構成されている。
【0034】
図3及び図4に示すように、引張ばね80は、コイルばねから成る本体部86、本体部86の前側及び後側にそれぞれ設けられた前側端部84(他端)及び後側端部82(一端)を含んで構成されている。引張ばね80は、後側端部82において後側突起95に取り付けられ、前側端部84において前側突起94に取り付けられている。これにより、引張ばね80の後側端部82は、レバー部材60の第2回転軸60aより下側に配置されている。引張ばね80は、本体部86が伸張することにより所定の付勢力を発揮するように構成されている。具体的には、引張ばね80は、係合部62と保持ピン54との係合が解除された状態(図4)で、ブラシ固定部52を前側転圧ローラ22に接近させる方向、即ちマットブラシ40が前側転圧ローラ22に接触するように付勢されている。また、引張ばね80は、ブラシ固定部52が前側転圧ローラ22から離れる方向に揺動した際に、レバー部材60が第2回転軸60aを中心に機体10の左側から見て時計回りに回動する方向、即ち係合部62が保持ピン54と係合するように付勢されている。
【0035】
次いで、図5を用いて、作業者が順手で取っ手部56を把持した状態で、マットブラシ40を前側転圧ローラ22に接触させる操作について説明する。なお、図面の見易さの観点から、図5(B)のみに作業者の左手90を示し、図5(A)、(C)には作業者の手90を図示していない。また、取っ手部56を把持する手は左手90でなくてもよく、右手であってもよい。
【0036】
図5(A)に示すように、マットブラシ40が前側転圧ローラ22から離間した位置に保持された状態で、マットブラシ支持部材50の保持ピン54は、レバー部材60の係合凹部62cに収容されている。このとき、第1突出部64aは、取っ手部56の下端56Aよりもブラシ固定部の揺動方向上側の位置で終端している。具体的には、第1突出部64aは、ブラシ固定部52の揺動方向を基準として取っ手部56よりも手前側、即ち取っ手部56よりも前側の位置で終端している。次いで、図5(B)に示すように、作業者はマットブラシ支持部材50を引上げる。具体的には、作業者は、マットブラシ支持部材50の取っ手部56を左手90で順手で把持し、保持ピン54が係合凹部62cから外れるまで、当該マットブラシ支持部材50を第1回転軸52cを中心に時計回りに回転させる。これにより、保持ピン54は、係合凹部62cから外れ、レバー部材60を反時計回りに揺動させつつ係合部62の第3突出部62aにおける先端に当接した状態に移行する。この状態で、作業者は、取っ手部56を把持している左手90の親指92で、操作部64の第1突出部64aの先端を押す。これにより、レバー部材60は、第2回転軸60aを中心に更に反時計回りに回転する。この結果、図5(C)に示すように、保持ピン54は第3突出部62aの先端を乗り越え、マットブラシ支持部材50は、引張ばね80の付勢力によって第1回転軸52cを中心に反時計回りに回転する。これにより、マットブラシ40が前側転圧ローラ22に押し付けられる。
【0037】
次いで、図6を用いて、作業者が逆手で取っ手部56を把持した状態で、マットブラシ40を前側転圧ローラ22に接触させる操作について説明する。なお、図面の見易さの観点から、図6(B)のみに作業者の手90を示し、図6(A)、(C)には作業者の手90を図示していない。また、取っ手部56を把持する手は左手90でなくてもよく、右手であってもよい。
【0038】
図6(A)に示すように、マットブラシ40が前側転圧ローラ22から離間した位置に保持された状態で、マットブラシ支持部材50の保持ピン54は、レバー部材60の係合凹部62cに収容されている。このとき、第2突出部64bは、取っ手部56の下端56Aよりもブラシ固定部の揺動方向上側の位置で終端している。具体的には、第2突出部64bは、ブラシ固定部52の揺動方向を基準として取っ手部56よりも奥側、即ち取っ手部56よりも後側の位置で終端している。次いで、図6(B)に示すように、作業者はマットブラシ支持部材50を引上げる。具体的には、作業者は、マットブラシ支持部材50の取っ手部56を左手90で逆手で把持して、保持ピン54が係合凹部62cから外れるまで、当該マットブラシ支持部材50を第1回転軸52cを中心に時計回りに回転させる。これにより、保持ピン54は、係合凹部62cから外れ、レバー部材60を反時計回りに揺動させつつ係合部62の第3突出部62aの先端に当接した状態に移行する。この状態で、作業者は、取っ手部56を把持している左手90の親指92で、操作部64の第2突出部64bの先端を押す。これにより、レバー部材60は、第2回転軸60aを中心に更に反時計回りに回転する。この結果、図6(C)に示すように、保持ピン54は第3突出部62aの先端を乗り越え、マットブラシ支持部材50は、引張ばね80の付勢力によって第1回転軸52cを中心に反時計回りに回転する。これにより、マットブラシ40が前側転圧ローラ22に押し付けられる。
【0039】
次いで、図7を用いて、作業者が取っ手部56を把持した状態で、マットブラシ40を前側転圧ローラ22から離間させる操作について説明する。なお、マットブラシ40を前側転圧ローラ22から離間させる操作は順手及び逆手に関わらず同じ操作となるため、図面の見易さを考慮して図7では作業者の手を示していない。
【0040】
図7(A)に示すように、マットブラシ40が前側転圧ローラ22に押し付けられている状態で、マットブラシ支持部材50の保持ピン54は、レバー部材60の係合凹部62cから完全に外れている。次いで、図7(B)に示すように、作業者はマットブラシ支持部材50を引上げる。具体的には、作業者は、マットブラシ支持部材50の取っ手部56を片手で把持して、保持ピン54が係合部62の第3突出部62aの先端に当接するまで、マットブラシ支持部材50を第1回転軸52cを中心に時計回りに回転させる。図7(C)に示すように、作業者は、第1回転軸52cを中心に時計回りにマットブラシ支持部材50を更に回転させ、これにより、保持ピン54は第3突出部62aの先端を乗り越える。この結果、図7(C)に示すように、レバー部材60は、引張ばね80の付勢力によって第2回転軸60aを中心に時計回りに回転し、保持ピン54はレバー部材60の係合凹部62cに収容される。これにより、マットブラシ40は、前側転圧ローラ22から離間した位置に保持される。このとき、第1突出部64a及び第2突出部64bは、取っ手部56の下端56Aよりもブラシ固定部の揺動方向上側の位置で終端している。具体的には、第1突出部64aは、ブラシ固定部52の揺動方向を基準として取っ手部56よりも手前側、即ち取っ手部56よりも前側の位置で終端している。また、第2突出部64bは、ブラシ固定部52の揺動方向を基準として取っ手部56よりも奥側、即ち取っ手部56よりも後側の位置で終端している。
【0041】
次いで、本発明の第1実施形態に係る転圧機械1の作用、効果について説明する。
【0042】
本発明の第1実施形態に係る転圧機械1において、レバー部材60は、当該レバー部材60の揺動に応じて保持ピン54との係合状態が切換えられるように構成された係合部62と、係合部62と保持ピン54との係合状態を切換える操作部64とを含んで構成されている。また、レバー部材60は、係合部62と保持ピン54とが係合した状態でマットブラシ40を前側転圧ローラ22から離れた位置に保持し、且つ、係合部62と保持ピン54との係合が解除された状態でマットブラシ40が前側転圧ローラ22に接触するように構成されている。そして、操作部64は、係合部62及び保持ピン54が係合した状態で、取っ手部56の下端56Aよりもブラシ固定部52の揺動方向上側の位置で終端している。このように、操作部64は、作業者が取っ手部56を把持した場合に、作業者の親指で操作しやすい位置で終端している。このため、作業者は、取っ手部56を片手で把持してブラシ固定部52を揺動させつつ、当該取っ手部56を把持している手90の親指92で操作部64を操作してレバー部材60を揺動させることができる。つまり、作業者は、ブラシ固定部52を揺動させる操作と、保持ピン54及び係合部62の係合状態を切換える操作とを、取っ手部56を把持している手90即ち片手だけで行うことができる。このようにして、前側転圧ローラ22にマットブラシ40を接離させる作業を片手で実現することができ、当該作業の作業性向上を図る転圧機械1を提供することができる。
【0043】
又、本発明の第1実施形態に係る転圧機械1によれば、操作部64は、取っ手部56の方向に延在する第1突出部64a及び第2突出部64bを含んで構成されている。そして、第1突出部64aは、係合部62及び保持ピン54が係合した状態で、ブラシ固定部52の揺動方向を基準として取っ手部56よりも手前側、即ち取っ手部56よりも前側の位置で終端するように形成されている。また、第2突出部64bは、係合部62及び保持ピン54が係合した状態で、ブラシ固定部52の揺動方向を基準として取っ手部56よりも奥側、即ち取っ手部56よりも後側の位置で終端するように形成されている。このため、作業者は、取っ手部56を把持する手90が順手であるか逆手であるかに関わらず、ブラシ固定部52を揺動させる操作と、保持ピン54及び係合部62の係合状態を切換える操作とを、取っ手部56を把持している手90即ち片手だけで行うことができる。このようにして、前側転圧ローラ22にマットブラシ40を接離させる作業を、取っ手部56を把持する手90の向きに関係なく片手で実現することができ、当該作業の更なる作業性向上を図る転圧機械1を提供することができる。
【0044】
又、本発明の第1実施形態に係る転圧機械1によれば、摺接装置30は、後側端部82においてレバー部材60に取り付けられ、且つ、前側端部84においてブラシ固定部52に取り付けられた引張ばね80を更に含んで構成されている。そして、引張ばね80は、係合部62と保持ピン54との係合が解除された状態でマットブラシ40が前側転圧ローラ22に接触するように付勢されており、且つ、ブラシ固定部52が前側転圧ローラ22から離れる方向に揺動した際に係合部62が保持ピン54と係合するように付勢されている。このため、保持ピン54が係合部62の第3突出部62aの先端を越えるまで、マットブラシ支持部材50を前側転圧ローラ22から離れる方向に揺動させることで、その後は引張ばね80の付勢力によって保持ピン54に係合部62を係合させることができる。これにより、マットブラシ40を前側転圧ローラ22から離間させる作業を容易に実行することができる。また、引張ばね80の付勢力によってマットブラシ40を前側転圧ローラ22に押し付けているため、マットブラシ40を前側転圧ローラ22に押し付けるための別途のばね部材を用意する必要がなく、部品点数を削減することができる。
【0045】
又、本発明の第1実施形態に係る転圧機械1によれば、摺接装置30は、取っ手部56及びレバー部材60をそれぞれ、機体10の幅方向に離間して2組備えている。このため、取っ手部56を両手で把持しつつ、この両手でもって2つのレバー部材60を同時に操作することができる。このように、前側転圧ローラ22にマットブラシ40を接離させる作業を両手で同時に実施することができ、当該作業の更なる作業性向上を図る転圧機械1を提供することができる。
【0046】
<第2実施形態>
次いで、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態に係る転圧機械1aは、上述の転圧機械1と比較して、引張ばね80が設けられていない点、レバー部材70に第1ピン67及び第2ピン68が設けられている点で異なる。以下、上述の転圧機械1と同じ又は類似する機能を有する構成については、転圧機械1と同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分について説明する。
【0047】
図8は、本発明の第2実施形態に係る転圧機械1aの前側転圧ローラ22に対応して設けられた摺接装置30aの一部分を概略的に示す拡大斜視図であり、マットブラシ40が前側転圧ローラ22から離間した状態を示すものである。図9は、図8に示す摺接装置30aにおいてマットブラシ40を前側転圧ローラ22から離間させる操作を説明する図であり、(A)はマットブラシ40が前側転圧ローラ22に接触した状態を示し、(B)は作業者が順手でマットブラシ支持部材50を引上げてレバー部材70を操作する状態を示し、(C)はマットブラシ40が前側転圧ローラ22から離間した状態を示す。図10は、図8に示す摺接装置30aにおいてマットブラシ40を前側転圧ローラ22から離間させる操作を説明する図であり、(A)はマットブラシ40が前側転圧ローラ22に接触した状態を示し、(B)は作業者が逆手でマットブラシ支持部材50を引上げてレバー部材70を操作する状態を示し、(C)はマットブラシ40が前側転圧ローラ22から離間した状態を示す。
【0048】
図8に示すように、レバー部材70は、操作部64の第1突出部64aから左方向に延在する第1ピン67と、操作部64の第2突出部64bから左方向に延在する第2ピン68とを含んで構成されている。第1ピン67及び第2ピン68はそれぞれ、第1突出部64a及び第2突出部64bの先端部分に設けられ、断面円形の棒状に形成されている。なお、第1突出部64aは、第1突出部64aから右方向に延在していてもよいし、第1突出部64aから左右方向に延在していてもよい。第2突出部64bは、第2突出部64bから右方向に延在していてもよいし、第2突出部64bから左右方向に延在していてもよい。また、第1ピン67及び第2ピン68はそれぞれ、第1突出部64a及び第2突出部64bの先端部分に設けられていなくてもよく、作業者が取っ手部56を把持した状態で親指92で接触可能な位置に設けられていればよい。具体的には、第1ピン67は、作業者が取っ手部56を順手で把持した状態で親指92で接触可能な位置に設けられていればよく、例えば取っ手部56の長手方向(左右方向)に垂直な面において取っ手部56を中心とした半径約20mmの範囲内に設けられている。また、第2ピン68は、作業者が取っ手部56を逆手で把持した状態で親指92で接触可能な位置に設けられていればよく、例えば取っ手部56の長手方向(左右方向)に垂直な面において取っ手部56を中心とした半径約40mmの範囲内に設けられている。
【0049】
次いで、図9及び図10を用いて、作業者が取っ手部56を把持した状態で、マットブラシ40を前側転圧ローラ22から離間させる操作について説明する。なお、図面の見易さの観点から、図9(B)及び図10(B)のみに作業者の手90を示し、図9(A)、図9(C)、図10(A)、図10(C)には作業者の手90を図示していない。また、取っ手部56を把持する手は左手90でなくてもよく、右手であってもよい。
【0050】
図9(A)及び図10(A)に示すように、マットブラシ40が前側転圧ローラ22に押し付けられている状態で、マットブラシ支持部材50の保持ピン54は、レバー部材70の係合凹部62cから完全に外れている。次いで、図9(B)に示すように、作業者はマットブラシ支持部材50を引上げる。具体的には、作業者は、マットブラシ支持部材50の取っ手部56を順手で把持して、保持ピン54が係合部62の第3突出部62aの先端に当接するまで、マットブラシ支持部材50を第1回転軸52cを中心に時計回りに回転させる。この状態で、作業者は、取っ手部56を把持している左手90の親指92で、操作部64の第1突出部64aに取付けられた第1ピン67を上方に押す。これにより、レバー部材70は、第2回転軸60aを中心に時計回りに回転する。他方、図10(B)に示すように、作業者は、マットブラシ支持部材50の取っ手部56を逆手で把持して、保持ピン54が係合部62の第3突出部62aの先端に当接するまで、マットブラシ支持部材50を第1回転軸52cを中心に時計回りに回転させてもよい。この状態で、作業者は、取っ手部56を把持している左手90の親指92で、操作部64の第1突出部64aに取付けられた第1ピン67を上方に押す。これにより、レバー部材70は、第2回転軸60aを中心に時計回りに回転する。この結果、図9(C)及び図10(C)に示すように、保持ピン54は第3突出部62aの先端を乗り越え、保持ピン54はレバー部材70の係合凹部62cに収容される。これにより、マットブラシ40は、前側転圧ローラ22から離間した位置に保持される。
【0051】
なお、作業者が取っ手部56を把持した状態で、マットブラシ40を前側転圧ローラ22に接触させる操作については、第1実施形態における態様と同じなのでその説明は省略する。
【0052】
次いで、本発明の第2実施形態に係る転圧機械1aの作用、効果について説明する。
【0053】
本発明の第2実施形態に係る転圧機械1aによれば、レバー部材70は、操作部64の第1突出部64aから左方向に延在する第1ピン67と、操作部64の第2突出部64bから左方向に延在する第2ピン68とを含んで構成されている。また、摺接装置30aにおいて引張ばねが含まれていない。そして、第1ピン67及び第2ピン68は、作業者が取っ手部56を把持した状態で親指92で接触可能な位置に設けられている。このため、作業者は、ブラシ固定部52を揺動させる操作と、保持ピン54及び係合部62の係合状態を切換える操作とを、取っ手部56を把持している手90即ち片手だけで行うことができる。このようにして、部品点数の削減を実現しつつ、前側転圧ローラ22にマットブラシ40を接離させる作業を片手で実現することができ、当該作業の作業性向上を図る転圧機械1を提供することができる。
【0054】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に係る転圧機械1、1aに限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせても良い。例えば、上記実施形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的態様によって適宜変更され得る。
【0055】
例えば、上記実施形態では、取っ手部56は、パイプ部材52aの一部分として形成されていると説明した。しかし、取っ手部56は、パイプ部材52aとは別体に形成され、パイプ部材52aに溶接等により固定されていてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、操作部64が、第1突出部64a及び第2突出部64bの両方を含む態様について説明した。しかし、操作部64は、第1突出部64a及び第2突出部64bのいずれか一方のみから構成されてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、レバー部材60,70は、取っ手部56に対応して、中央転圧ローラ22b及び左転圧ローラ22aの間、中央転圧ローラ22b及び右転圧ローラ22cの間に2つ設けられていると説明した。しかし、レバー部材60,70は、中央転圧ローラ22b及び左転圧ローラ22aの間、中央転圧ローラ22b及び右転圧ローラ22cの間のいずれか一か所に一つだけ設けられていてもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、前側転圧ローラ22に対応して設けられた摺接装置30,30aについて説明した。しかし、摺接装置30,30aは、後側転圧ローラ24に対応して設けられるものであってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1,1a 転圧機械
10 機体
20 転圧ローラ(車輪)
22 前側転圧ローラ(前輪)
24 後側転圧ローラ(後輪)
30,30a 摺接装置
40 マットブラシ
50 マットブラシ支持部材
52 ブラシ固定部
54 保持ピン
56 取っ手部
56A 下端
60,70 レバー部材
62 係合部
64 操作部
64a 第1突出部
64b 第2突出部
80 引張ばね(ばね部材)
82 後側端部(一端)
84 前側端部(他端)
92 親指
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10