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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】搬送装置及びその搬送方法
(51)【国際特許分類】
   E04D 15/00 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
E04D15/00 E
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021057061
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022154160
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2024-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000175973
【氏名又は名称】三晃金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080090
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 邦男
(72)【発明者】
【氏名】藤丸 晃二
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-056222(JP,A)
【文献】特開2009-249968(JP,A)
【文献】特開2016-188471(JP,A)
【文献】実開平04-055926(JP,U)
【文献】登録実用新案第3180607(JP,U)
【文献】特開2021-024693(JP,A)
【文献】特開2017-002497(JP,A)
【文献】特開2007-145598(JP,A)
【文献】特開昭57-116868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 15/00
E04F 13/00
E04G 21/14
B65G 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属で且つ断面円形状の芯棒部と、外周側面を円滑面とする共に摺動性を有する樹脂製の外被部とを有し、前記芯棒部に前記外被部が被覆されてなるレール材と、該レール材を所定位置に着脱自在に取り付ける取付具とを備え、前記レール材は前記取付具を介して折板屋根板の頂部箇所に着脱可能としてなることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送装置において、前記レール材の前記外被部の外周には複数の三角山形状の突起条が円周方向に沿って周方向に所定間隔をおいて設けられてなることを特徴とする搬送装置。
【請求項3】
請求項1又は2の何れか1項に記載の搬送装置において、前記芯棒部は、中空管材としてなることを特徴とする搬送装置。
【請求項4】
請求項1,2又は3の何れか1項に記載の搬送装置において、前記レール材は、軸方向に沿って軸端部同士が連結可能とされてなることを特徴とする搬送装置。
【請求項5】
請求項4に記載の搬送装置において、前記レール材は、軸方向の一端に突出する凸部が設けられ、軸方向他端に前記凸部が挿入する穴状の凹部が設けられてなることを特徴とする搬送装置。
【請求項6】
請求項4に記載の搬送装置において、前記レール材は、軸方向に両端に穴状の凹部が設けられ、隣接する両前記レール材の両前記凹部に挿入する連結軸部を有する連結具が具備されてなることを特徴とする搬送装置。
【請求項7】
請求項1,2,3,4,5又は6の何れか1項に記載の搬送装置において、前記取付具は、前記レール材の外周の一部が露出するように該レール材を挟持状態で包持するホルダ部と、該ホルダ部が装着され且つ施工済み前記折板屋根板の頂部に着脱自在に取付可能とした取付ベース部とを備えてなることを特徴とする搬送装置。
【請求項8】
請求項1,2,3,4,5,6又は7の何れか1項に記載の搬送装置において、所定長さに設定された2つのフレームレール材と、両該フレームレール材を所定間隔をおいて平行に配列されて接続する接続軸状部と、両前記フレームレール材の長手方向中間箇所に設けられる係止部とを備え、両前記フレームレール材は、水平状フレーム部と傾斜状フレーム部とを有するへ字状となるように折曲形成された終端案内具が具備されてなることを特徴とする搬送装置。
【請求項9】
請求項8に記載の搬送装置において、前記終端案内具の前記係止部は回転自在のローラが設けられ、前記フレームレール材の長手方向端部に補助係止部が設けられてなることを特徴とする搬送装置。
【請求項10】
請求項1,2,3,4,5,6,7,8又は9の何れか1項に記載の搬送装置において、前記レール材は、複数が平行に配列されてなることを特徴とする搬送装置。
【請求項11】
金属で且つ断面円形状の芯棒部と、外周側面を円滑面とする共に摺動性を有する樹脂製の外被部とを有し、前記芯棒部に前記外被部が被覆されてなるレール材と、該レール材を所定位置に着脱自在に取り付ける取付具とを備え、構造材上に受具を所定間隔をおいて配置固着し、施工開始位置から折板屋根板が所定の個数施工した後に、施工完了済みの前記折板屋根板に直交するようにして複数の前記レール材を前記取付具を介して並列状に設置し、新たな折板屋根板を複数の前記レール材上に載置し、前記折板屋根板の施工開始位置から未施工位置付近まで設けられた前記レール材の終端位置まで摺動状態で前記新たな折板屋根板を搬送し、摺動搬送された前記新たな折板屋根板を前記レール材の終端位置から前記折板屋根板の未施工位置の前記受具上に配置してなることを特徴とする搬送装置による搬送方法。
【請求項12】
請求項11に記載の搬送装置による搬送方法において、前記レール材は、軸方向に長尺長さ、中間長さ及び短尺長さとしたものを具備し、施工済みの折板屋根板の数に対応する長さの前記レール材を使用し又は継ぎ足して使用してなることを特徴とする搬送装置による搬送方法。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の搬送装置による搬送方法において、前記レール材の前記外被部の外周には複数の三角山形状の突起条が円周方向に沿って周方向に所定間隔をおいて設けられてなることを特徴とする搬送装置による搬送方法。
【請求項14】
請求項11,12又は13の何れか1項に記載の搬送装置において、前記レール材は、軸方向に沿って軸端部同士が連結可能とされてなることを特徴とする搬送装置による搬送方法。
【請求項15】
請求項11,12,13又は14の何れか1項に記載の搬送装置において、所定長さに設定された2つのフレームレール材と、両該フレームレール材を所定間隔をおいて平行に配列されて接続する接続軸状部と、両該フレームレール材の長手方向中間箇所に設けられる係止部とを備え、両前記フレームレール材は、水平状フレーム部と傾斜状フレーム部とを有するへ字状となるように折曲形成された終端案内具が具備され、該終端案内具が未施工位置付近で前記フレームレール材の終端位置付近に設置されてなることを特徴とする搬送装置による搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺な折板タイプの屋根の施工現場において、長尺の折板タイプの屋根板を、施工開始位置から所望の施工位置まで簡単,迅速且つ最小限の労力で搬送することができ、施工効率を格段と向上させることができる搬送装置及びその搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の大型面積の折板タイプの金属屋根の施工現場では、まず折板タイプの長尺な屋根板を成形する成形機が建築構造物の屋根施工箇所に据え付られる。この成形機により長尺の折板タイプの屋根板を成形し、この屋根板の長手方向と同一方向に沿って、適宜の間隔をおいて作業員が配属され、作業員がその屋根板を鉄骨梁等の構造材上の所定の施工箇所まで搬送し、所定の位置に屋根板を施工し、これを何度も繰り返して金属製の折板屋根を施工するものである。
【0003】
以上述べた折板屋根の施工において、屋根板の成形機は大型の機械であり、この成形機は、強固なる足場によって、高所に据え付けられている。そのため、成形機自体を移動することは困難であり、通常は、成形機の据付箇所は不動である。そこで、成形機の設置位置と、この成形機によって成形された屋根板の施工位置との間を作業員の人力により往復して屋根板を構造材上の所定の施工位置まで搬送していた。
【0004】
即ち、その成形機の据付箇所付近の施工済箇所から未施工箇所まで屋根板を作業員が搬送しなければならなかった。屋根板の施工済み箇所が拡がるにつれ、成形機から成形された屋根板の搬送する距離が延び、作業員に対する負担が増えてゆくものである。その搬送作業は、搬送時に長尺な屋根板に変形等を生じさせないように、作業員全員が歩調を合わせて移動しなければならず、これは作業員の歩幅、歩く速度が夫々異なり、特に、屋根板が長尺の場合には、重量も重くなり、作業員を多数必要とし、馳締屋根板の搬送は困難なものであった。
【0005】
折板タイプの金属屋根を施工する現場において、屋根板等の多数の折板屋根板を施工開始の位置から所望の施工位置まで搬送することは、人力に頼って行うことは、作業員に大きな負担がかかり、そのため工事の作業効率も悪くなる。そこで、施工現場で折板屋根板を搬送する専用の搬送機が種々開発され、台車等の搬送機が使用されることが多くなっている。
【0006】
このような搬送機は多くのものが存在し、その代表的なものとして特許文献に示すようなものが存在する。しかし、従来の搬送機の多くは、重量があり、価格も高いものであった。その結果、屋根板等の折板屋根板では、折板屋根板同士の極めて重要な連結部分である馳部或いは屋根表面を傷つけたり損傷させることがあり、施工後にタッチアツプ等の後処理が必要であった。
【0007】
従来、折板屋根板の搬送手段としては、そろばん式やソリ,スキータイプの台車や、角パイプや屋根材をレールとし、このレール上に車輪式の台車を載せて搬送作業を行うことが一般的であった。従来のレールを用いるものは、資材の種類が多くなるため調達が大変であり、レールの調整等セットをする手間がかかる等の問題があつた。
【0008】
また、そろばんタイプでは、それ自体の重量が重く、そこに取り付けたキャスターにより折版を傷つけるという問題があった。ソリタイプは、そろばんタイプに比べて騒音もなく、馳部の損傷も少ないため有効な施正機器である。 しかしながら、ソリに用いられる樹脂の板材は価格が高く、頻繁に交換するには不向きなものであった。
【0009】
例えば、脚部の交換で1足2万円程度となり、複数台使用するとなると、かなりの金額となる。そのため一度購入すると脚部のソリの交換はほとんど行われることなく使用され続けられるため、経年変化により板材が脆くなり、それによる折板屋根板(特にその馳部)に対する傷の発生が大きな問題となるおそれも十分にあつた。
【0010】
ソリを塩ビパイプ製としたものでは、パイプ自体の価格は安いものの、耐熱性がないため、屋根搬送時の往復回数が多くなるとソリの表面が摩擦で溶けて変形し、それにより折板屋根板(特にその馳部)を傷つけるという問題があつた。また、夏場での使用では、屋根表面温度は60~80℃となるため使用することができなかった。市販されているものにおける仕様では、ソリ部分にポリエチレン樹脂(PE)からなる板をとりつけたもので、塩ビよりも耐熱性が高く、滑動性もよいものである。
【0011】
しかしながら、ポリエチレン樹脂(PE)の板材はエンジニアリングプラスティック(通称エンプラ)といい価格が高く、板材の場合、端部が脆くなるという欠点がある。 また、屋根材 (特に馳部)との接触部が面接触となり、その分だけ抵抗も大きくなるという問題があつた。
【0012】
上記の塩ビパイプは、価格は安いものの、耐熱性がないため、折板屋根板の搬送時の往復回数が多くなると表面が溶けるという問題もあつた。塩ビパイプの融点は、約60℃ であり、耐熱タイプでも80℃であり、夏場では日昼で、金属屋根の表面温度 が約60℃~ 約80℃ となることが多く、夏場での使用も午前中や夕方といった涼しくなる時間帯でしか使用ができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】実用新案登録第3180607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来における建設用の搬送機は、前述したように種々のものが開発されており、その主なものの一例として特許文献に開示されている。その主なものを含めて、従来のものでは、ほとんどのものは構造が極めて複雑で、重量が大きいものであった。また、従来のものは取扱いも面倒であり、そのため作業員が使いこなせるまでには、長い時間と技量が必要であった。さらに、加えて、搬送機の使用時における騒音,振動等も大きく、作業環境及び周辺環境への及ぼす影響も問題となっている。
【0015】
本発明の目的は、屋根等の施工現場で成形機にて形成された長尺の折板タイプの屋根板等の建築資材を施工開始位置から未施工箇所付近まで簡易,迅速且つ最小限の労力で搬送することができ、さらに、搬送作業時における騒音,振動等も最小限に抑え、施工位置で折板屋根板を施工し易い状態で配置することができ、しかも装置の構造も極めて簡単である搬送装置及びその搬送方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
そこで発明者は上記課題を解決すべく鋭意,研究を重ねた結果、請求項1の発明を、金属で且つ断面円形状の芯棒部と、外周側面を円滑面とする共に摺動性を有する樹脂製の外被部とを有し、前記芯棒部に前記外被部が被覆されてなるレール材と、該レール材を所定位置に着脱自在に取り付ける取付具とを備え、前記レール材は前記取付具を介して折板屋根板の頂部箇所に着脱可能としてなる搬送装置としたことにより、上記課題を解決した。
【0017】
請求項2の発明を、請求項1に記載の搬送装置において、前記レール材の前記外被部の外周には複数の三角山形状の突起条が円周方向に沿って周方向に所定間隔をおいて設けられてなる搬送装置としたことにより、上記課題を解決した。請求項3の発明を、請求項1又は2の何れか1項に記載の搬送装置において、前記芯棒部は、中空管材としてなる搬送装置としたことにより、上記課題を解決した。
【0018】
請求項4の発明を、請求項1,2又は3の何れか1項に記載の搬送装置において、前記レール材は、軸方向に沿って軸端部同士が連結可能とされてなる搬送装置としたことにより、上記課題を解決した。請求項5の発明を、請求項4に記載の搬送装置において、前記レール材は、軸方向の一端に突出する凸部が設けられ、軸方向他端に前記凸部が挿入する穴状の凹部が設けられてなる搬送装置としたことにより、上記課題を解決した。
【0019】
請求項6の発明を、請求項4に記載の搬送装置において、前記レール材は、軸方向に両端に穴状の凹部が設けられ、隣接する両前記レール材の両前記凹部に挿入する連結軸部を有する連結具が具備されてなる搬送装置としたことにより、上記課題を解決した。請求項7の発明を、請求項1,2,3,4,5又は6の何れか1項に記載の搬送装置において、前記取付具は、前記レール材の外周の一部が露出するように該レール材を挟持状態で包持するホルダ部と、該ホルダ部が装着され且つ施工済み前記折板屋根板の頂部に着脱自在に取付可能とした取付ベース部とを備えてなる搬送装置としたことにより、上記課題を解決した。
【0020】
請求項8の発明を、請求項1,2,3,4,5,6又は7の何れか1項に記載の搬送装置において、所定長さに設定された2つのフレームレール材と、両該フレームレール材を所定間隔をおいて平行に配列されて接続する接続軸状部と、両該フレームレール材の長手方向中間箇所に設けられる係止部とを備え、両前記フレームレール材は、水平状フレーム部と傾斜状フレーム部とを有するへ字状となるように折曲形成された終端案内具が具備されてなる搬送装置としたことにより、上記課題を解決した。
【0021】
請求項9の発明を、請求項8に記載の搬送装置において、前記終端案内具の前記係止部は回転自在のローラが設けられ、前記フレームレール材の長手方向端部に補助係止部が設けられてなる搬送装置としたことにより、上記課題を解決した。請求項10の発明を、請求項1,2,3,4,5,6,7,8又は9の何れか1項に記載の搬送装置において、前記フレームレール材は、複数が平行に配列されてなる搬送装置としたことにより、上記課題を解決した。
【0022】
請求項11の発明を、金属で且つ断面円形状の芯棒部と、外周側面を円滑面とする共に摺動性を有する樹脂製の外被部とを有し、前記芯棒部に前記外被部が被覆されてなるレール材と、該レール材を所定位置に着脱自在に取り付ける取付具とを備え、構造材上に受具を所定間隔をおいて配置固着し、施工開始位置から折板屋根板が所定の個数施工した後に、施工完了済みの前記折板屋根板に直交するようにして複数の前記レール材を前記取付具を介して並列状に設置し、新たな折板屋根板を複数の前記レール材上に載置し、前記折板屋根板の施工開始位置から未施工位置付近まで設けられた前記レール材の終端位置まで摺動状態で前記新たな折板屋根板を搬送し、摺動搬送された前記新たな折板屋根板を前記レール材の終端位置から前記折板屋根板の未施工位置の前記受具上に配置してなる搬送装置による搬送方法としたことにより、上記課題を解決した。
【0023】
請求項12の発明を、請求項11に記載の搬送装置による搬送方法において、前記レール材は、軸方向に長尺長さ、中間長さ及び短尺長さとしたものを具備し、施工済みの折板屋根板の数に対応する長さの前記レール材を使用し又は継ぎ足して使用してなる搬送装置による搬送方法としたことにより、上記課題を解決した。
【0024】
請求項13の発明を、請求項11又は12に記載の搬送装置による搬送方法において、前記レール材の前記外被部の外周には複数の三角山形状の突起条が円周方向に沿って周方向に所定間隔をおいて設けられてなる搬送装置による搬送方法としたことにより、上記課題を解決した。請求項14の発明を、請求項11,12又は13の何れか1項に記載の搬送装置において、前記レール材は、軸方向に沿って軸端部同士が連結可能とされてなる搬送装置による搬送方法としたことにより、上記課題を解決した。
【0025】
請求項15の発明を、請求項11,12,13又は14の何れか1項に記載の搬送装置において、所定長さに設定された2つのフレームレール材と、両該フレームレール材を所定間隔をおいて平行に配列されて接続する接続軸状部と、両該フレームレール材の長手方向中間箇所に設けられる係止部とを備え、両前記フレームレール材は、水平状フレーム部と傾斜状フレーム部とを有するへ字状となるように折曲形成された終端案内具が具備され、該終端案内具が未施工位置付近で前記フレームレール材の終端位置付近に設置されてなる搬送装置による搬送方法としたことにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0026】
請求項1の発明では、レール材と取付具を具備し、レール材は、金属で且つ断面円形状の芯棒部と、外周側面を円滑面とする共に摺動性を有する樹脂製の外被部とを有し、前記芯棒部に前記外被部が被覆された構成としたものである。そして、建設現場における屋根施工現場で、レール材を施工過程において、既に施工(設置)済み折板屋根板の頂部を利用して、この頂部に取付具を介して前記レール材が着脱可能に装着される。
【0027】
これによって、屋根等の施工現場における施工作業において、その施工作業開始点から折板屋根板の施工済み箇所に、複数個のレール材が略平行状に配置されことにより、未施工位置に配置する新たな折板屋根板を、それぞれのレール材上に亘って略直交するように載置するのみで、折板屋根板は円滑面で摺動性を有するレール材上を滑るように移動搬送させ、新たな折板屋根板を未施工位置又はその付近まで最小限の作業員数で且つ僅かの力で、簡単且つ迅速に搬送できる。
【0028】
新たな折板屋根板を、レール材上で摺動搬送させるように施工目的位置まで搬送移動させることにより、極めて少ない労力で搬送作業を行うことにより作業員の負担を減少させ、作業効率を向上させることができ、さらに、折板屋根板はレール材上を搬送移動するときに極めて低振動且つ低騒音にすることができ、作業環境及び建設現場周辺の環境を良好にすることができる。
【0029】
請求項2の発明では、前記レール材の前記外被部の外周には複数の突起条が円周方向に沿って周方向に所定間隔をおいて設けられたことにより、レール材と、該レール材上を搬送移動する折板屋根板との当接において、前記突起条の先端部分と前記折板屋根板との当接部分は極めて小さくすることができ、相互の摩擦を最小とすることができる。そして、突起条は断面が三角山形状に形成されたことにより、レール材と、該レール材上を搬送移動する折板屋根板との当接状態は略線接触状態となり、相互の摩擦が最も小さくなり、折板屋根板はレール材上を極めて円滑に摺動移動することができる。
【0030】
請求項3の発明では、前記芯棒部は、中空管材とした構成により、レール材を軽量化でき、施工済み折板屋根板上に設置したときに、施工済みの該折板屋根板に対して、重量的負担を最小限にすることができる。なお、前記芯棒部を中実とする構成にすれば、レール材の耐久性を増すことができ、また、芯棒部を中実軸とすれば、中空軸とした場合よりも重量がある程度増加するので、設置状態の安定性を得られるという利点も有することになる。
【0031】
請求項4の発明では、前記レール材は、軸方向に沿って軸端部同士が連結可能としたことにより、施工現場において施工が進み、施工済みの折板屋根板の範囲(面積)が増えることによって、レール材の長さも延長させる必要が生じる。このような場合又はその他の施工現場の状況に応じて、レール材を継ぎ足すことにより、レール材の全長を増加させることができ、レール長さを適宜調整することができ、折板屋根板の施工済み部分の増加に良好に対応することができる。
【0032】
請求項5の発明では、前記レール材は、軸方向の一端に突出する凸部が設けられ、軸方向他端に前記凸部が挿入する穴状の凹部が設けられる構成としたり、請求項6の発明では、前記レール材は、軸方向に両端に穴状の凹部が設けられ、隣接する両前記レール材の両前記凹部に挿入する連結軸部を有する連結具が具備される構成により、施工現場におけるレール材同士の軸方向における連結作業を簡単に行うことができる。
【0033】
請求項7の発明では、前記取付具は、前記レール材の外周の一部が露出するように該レール材を挟持状態で包持するホルダ部と、該ホルダ部が装着され且つ前記施工済み折板屋根板の頂部に着脱自在に取付可能とした取付ベース部とを備えた構成により、屋根施工現場において、施工済みの折板屋根板に対してレール材を極めて簡単に取り付けることができると共に、レール材の上面が必ず露出する構造にできる。これによって、新たな折板屋根板をレール材上に摺動移動させるときに、折板屋根板は取付具に対して何ら干渉することなく、また相互に接触することなくレール材上を円滑に摺動移動することができる。
【0034】
請求項8の発明では、所定長さに設定された2つのフレームレール材と、両該フレームレール材を所定間隔をおいて平行に配列されて接続する接続軸状部と、両該レール材の長手方向中間箇所に設けられる係止部とを備え、両前記フレームレール材は、水平状フレーム部と傾斜状フレーム部とを有するへ字状となるように折曲形成された終端案内具が具備されたことにより、該終端案内具によって、屋根施工現場においてレール材を介して未施工付近まで摺動搬送された新たな折板屋根板を、所定の未施工位置に適正に配置させることが簡易且つ迅速にでき、作業効率を向上させることができる。
【0035】
つまり、レール材の終端位置付近に終端案内具を配置し、折板屋根板の未施工位置付近まで摺動搬送された新たな折板屋根板は、終端案内具の水平状フレーム部に搬送され、そのまま終端案内具を未施工位置側に向かって下方となるように傾斜させることで、新たな折板屋根板は、傾斜状フレームに沿って降下し、未施工位置に適正に配置されることになる。これによって、新たな折板屋根板を未施工位置に適正に配置し、施工することが極めて簡易且つ迅速にできるものである。
【0036】
請求項9の発明では、前記終端案内具の前記係止部は回転自在のローラが設けられ、前記レール材の長手方向端部に補助係止部が設けらられたことにより、終端案内具は、回転自在のローラを中心にして揺動自在となり、新たな折板屋根板は、水平状フレーム部に到達して載置された状態となったときに、前記係止部を揺動中心として終端案内具を揺動させることで、新たな折板屋根板は、水平状フレーム部から傾斜状フレーム部に容易に移動でき、新たな折板屋根板をそのまま未施工位置に適正に配置させることができる。
【0037】
また、終端案内具は、回転自在のローラを中心にして揺動自在となるため、新たな折板屋根板が水平状フレーム部から傾斜状フレーム部に移動すれば、新たな折板屋根板の重量によって、終端案内具は、係止部を中心に未施工位置側に傾きそのまま新たな折板屋根板を未施工位置に適正に配置されることも可能となる。また、前記係止部と共に補助係止部が施工済みの折板屋根板に係止し、終端案内具を施工済みの折板屋根板に安定した取付及び仮固定が容易にできる。
【0038】
請求項10の発明では、前記レール材は、複数が平行に配列される構成により、複数のレール材上に新たな折板屋根板を載置したときに、複数のレール材に新たな折板屋根板の重量が均等にかかり、新たな折板屋根板の摺動移動を良好且つ安定した状態にできる。請求項11の発明では、屋根施工等の建設現場における折板屋根板の施工作業において、その施工作業開始点から折板屋根板の施工済み箇所に、複数個のレール材が略平行状に配置されことにより、未施工位置に配置する新たな折板屋根板を、それぞれのレール材上に亘って略直交するように載置するのみで、折板屋根板は円滑面で摺動性を有するレール材上を滑るように移動搬送させ、新たな折板屋根板を未施工位置又はその付近まで最小限の作業員数で且つ僅かの力で、簡単且つ迅速に搬送できる。
【0039】
新たな折板屋根板を、レール材上で摺動搬送を極めて少ない労力で搬送作業を行うことにより作業員の負担を減少させ、作業効率を向上させることができ、さらに、折板屋根板はレール材上を搬送移動するときに極めて低振動且つ低騒音にすることができ、作業環境及び建設現場周辺の環境を良好にすることができる。
【0040】
請求項12の発明では、前記レール材は、軸方向に長尺長さ、中間長さ及び短尺長さとしたものを具備し、施工済みの折板屋根板の数に対応する長さの前記レール材を使用し又は継ぎ足して使用することにより、施工工事の進行に合わせたレール材の長さを適宜調整できる。つまり、屋根の施工過程において施工済みの折板屋根板がある程度の面積に達した場合には、長尺,中間長さ又は短尺としたレール材を適宜組み合わせて使用し、それぞれの列のレール材による全長を適当となるように調整することができ、折板屋根板の施工済み部分の増加に良好に対応することができる。
【0041】
請求項13の発明では、前記レール材の前記外被部の外周には複数の三角山形状の突起条が円周方向に沿って周方向に所定間隔をおいて設けられたことにより、レール材と、該レール材上を搬送移動する折板屋根板との当接状態は略線接触状態となり、相互の摩擦が最も小さくなり、折板屋根板はレール材上を極めて円滑に摺動移動することができる。
【0042】
請求項14の発明では、前記レール材は、軸方向に沿って軸端部同士が連結可能とされ、それぞれの列のレール材による全長を適当となるように調整することができ、折板屋根板の施工済み部分の増加に良好に対応することができる。請求項15の発明では、終端案内具によって、屋根施工現場においてレール材を介して未施工付近まで摺動搬送された新たな折板屋根板を、所定の未施工位置に適正に配置させることが簡易且つ迅速にでき、作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】(A)は本発明におけるレール材を施工済みの折板屋根の頂部に設けた折板屋根の正面略示図、(B)は本発明におけるレール材を施工済みの折板屋根の頂部に設けた折板屋根の側面略示図、(C)は(B)の(α)部拡大図、(D)はレール材の拡大縦断面図である。
図2】(A)は本発明におけるレール材を施工済みの折板屋根の頂部に設けた斜視図、(B)は(A)の(β)部拡大図である。
図3】施工済み折板屋根の頂部に設けられたレール材上を新たな折板屋根板が施工開始位置側から未施工位置側に向かって摺動搬送される状態を示す平面略示図。
図4】(A)は本発明におけるレール材を取付具を介して施工済みの折板屋根板の頂部に設けた要部の正面拡大図、(B)は取付具の正面図、(C)は取付具の斜視図である。
図5】(A)は本発明におけるレール材と新たな折板屋根板との当接状態を示す要部拡大図、(B)は(A)の(γ)部拡大図、(C)は本発明におけるレール材と新たな折板屋根板との別の当接状態を示す要部拡大図、(D)は(C)の(δ)部拡大図である。
図6】(A)は本発明におけるレール材が摩耗した状態の要部拡大図、(B)は(A)の(ε)部拡大図、(C)はレール材を周方向に回転させて摩耗していない突起条を新たな折板屋根板と当接させた状態を示す要部拡大図である。
図7】(A)は終端案内具の平面図、(B)は(A)の(ζ)部拡大断面図、(C)は終端案内具の側面図、(D)は終端案内具の斜視図である。
図8】(A)は終端案内具を施工済みの折板屋根板に装着した状態を示す折板屋根の正面図、(B)及び(C)は終端案内具を施工済みの折板屋根板に仮固定する工程を示す要部拡大図である。
図9】(A)乃至(D)は終端案内具によって新たな折板屋根板を未施工位置に適正に配置する工程図である。
図10】(A)はレール材の軸方向における連結構造の実施形態の一部切除及び一部断面とした正面図、(B)はレール材の軸方向における連結構造の別の実施形態の一部切除及び一部断面とした正面図である。
図11】(A)乃至(E)はレール材の実施形態の縦断面図である。
図12】(A)は嵌合タイプの折板屋根板の頂部にレール材を装着した折板屋根の正面略示図、(B)は(A)の要部拡大図、(C)は重合タイプの折板屋根板の頂部にレール材を装着した折板屋根の正面略示図、(D)は(C)の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明を図面に基づいて説明する。なお、本発明における搬送装置は、主に金属製の折板屋根の施工現場で、新たな折板屋根板8nを搬送することに多く使用されるものであり、以下、折板屋根の施工現場で使用されるものとして説明する。また搬送方法についても、本発明における搬送装置を使用して新たな折板屋根板を所定に未施工位置に搬送する方法について説明するものである。
【0045】
搬送装置は、建築現場の屋根施工現場にて、施工開始位置から施工済みの複数の折板屋根板8,8,…の頂部を搬送路として利用し、新たな折板屋根板8nを未施工位置まで搬送する役目をなすものである〔図1(A),(B),図2図3参照〕。本発明の搬送装置が適用される屋根施工現場における折板屋根板8及び新たな折板屋根板8nは、折板タイプの金属製の部材であり、長手方向に長尺であって、一般に約50m乃至約100m程度のものである。
【0046】
折板屋根板8には、隣接する屋根板同士の連結箇所を馳とした馳締タイプ,隣接する屋根板同士の連結箇所にキャップ材を被せる嵌合タイプ及び隣接する屋根板同士の山形同士を重合する重合タイプ等のものが存在する。以下の説明では、折板屋根板8は主に馳締タイプとして説明する。
【0047】
また、施工済みの折板屋根板8は、屋根施工現場等の建設現場において、既に、梁等の構造材91上の受具92への適正な設置施工が完了されたものを言う。また、新たな折板屋根板8nとは、屋根施工現場において、設置予定位置に未だ設置施工されておらず、これから設置しようとする屋根板のことを言う。また、施工開始位置とは、施工を開始する起点のことを言う。未施工位置とは、新たな折板屋根板8nが設置施工されていない箇所のことを言う(図3参照)。
【0048】
本発明は、レール材Aと、取付具Bとを備えて搬送装置としたものである〔図1(C),図2(B),図4(A)等参照〕。そして、レール材Aは、取付具Bを介して屋根,壁等の建設現場において施工済みの折板屋根板に設置される。レール材Aは、芯棒部1と外被部2を備えている。芯棒部1は、金属製であり、断面円形状の棒状材であり、中空状の管材である、鋼管等が使用される。レール材Aは、その長手方向(又は軸方向)に直交する断面は、略円形状であり、さらに詳しくは、外周が略ギザギザの歯車形状をなしている〔図1(C),(D),図5(A),(C)等参照〕。
【0049】
芯棒部1は、直径が約20mm乃至約30mm程度で、さらに具体的には外径が約27.5mm程度で、内径約24mm程度である。また、芯棒部1は、前述したように、中空管材としているが、これに限定されず、中実とすることもある。芯棒部1が中実軸にされることで、耐久性を有することができ、また中空軸よりも重量がある程度増加するので、設置状態の安定性を得られる。
【0050】
外被部2は、樹脂製であり、前記芯棒部1の外周に被覆する構成となる。外被部2による芯棒部1外周への被覆手段として塗布による被覆が存在し、この塗布手段により、外被部2を構成する樹脂の量は極めて少量となり安価にできる。また、外被部2はチューブ状に形成され、このチューブ状に形成された外被部2を前記芯棒部1に被せるようにして被覆することもある。
【0051】
外被部2の外周側面は、円滑面とする共に摺動性を有するものである。具体的には、外被部2の外周面は、摩擦係数が極めて小さくなるように形成され、これに加えて、耐久性,強度共に優れた性質を備えた材質のものが使用される。外被部2の材質は、具体的には高機能且つ高密度のポリエチレン樹脂である。なお、高機能且つ高密度のポリエチレン樹脂は、その融点は約120乃至約140℃程度であり、真夏の酷暑にたいしても十分に耐え得るものである。
【0052】
芯棒部1に外被部2が被覆されて、レール材Aが構成される。該レール材Aは、その軸方向における標準的な長さ寸法は、全長が約4000mm程度である。レール材Aは、通常、複数個が備えられ、複数のレール材A,A,…が平行となるように並列状態に配列されて使用される〔図1(B),図2(A),図3等参照〕。
【0053】
さらに、屋根面積の極めて大きな施工箇所においては、並列状態におけるそれぞれの列に位置するレール材Aは、通常、軸方向に複数個連結されて使用されることが多い。また、屋根面積の小さい施工箇所においては、それぞれの列のレール材Aは、1個のみで足りることもある。
【0054】
レール材Aにおいて標準的な長さ寸法を有するものに対して、これよりも短い長さ寸法を有するものが数種類備えられることもある。具体的には、標準的なレール材Aを長尺長さとし、この他に中間長さ及び短尺長さとしたレール材Aを備えておくことが好ましい。具体的には、例えばその一例として挙げるならば、短尺長さとしたレール材Aでは、長さ寸法を約1000mm程度とし、中間長さとしたレール材Aでは、約2000mm程度としたものである。これら中間長さ及び短尺長さとしたレール材Aを、前述した準的的なレール材Aと共に備えておけば、屋根施工において極めて便利である。
【0055】
例えば、施工済みの折板屋根板8が少数(4個乃至5個)の場合では短尺のレール材Aを使用し、また施工済みの折板屋根板8(6個以上)の場合では長尺のレール材Aが使用される。また、屋根の施工過程において施工済みの折板屋根板8がある程度の面積に達した場合には、レール材Aは、長尺,中間長さ又は短尺としたものを適宜組み合わせて使用し、それぞれの列のレール材Aによる全長を適当となるように調整することができる。
【0056】
レール材Aの外被部2の外周には、その複数の突起条21,21,…がレール材Aの長手方向(又は軸方向)に沿って形成されている。また、その複数の突起条21,21,…は、レール材Aにおける円周方向に沿って、円周方向に所定間隔をおいて設けられている〔図1(D),図5図6参照〕。さらに、具体的には、多数の突起条21,21,…が、円周方向に沿って等間隔をおいて形成されている。複数の突起条21,21,…は、外被部2の外周において、隣接する突起条21,21同士の間隔が極めて近接するように形成されている。
【0057】
さらに、隣接する突起条21,21の頂部同士を結ぶ仮想の直線は、隣接する突起条21,21間の谷底部22より直径方向外方に位置する構成とすることが好ましい。これによって、レール材A上に載置且つ搬送移動される折板屋根板8は、突起条21の頂部にのみ当接し、谷底部22には当接しないようにすることができる〔図5(C),(D)参照〕。なお、本発明において、当接は、接触と称しても構わない。
【0058】
外被部2における突起条21は、略三角山形状に形成される。さらに、突起条21の形状を三角形とした場合では、略「八」字状とした扁平三角山形状〔図1(D)参照〕及び、略逆「V」字形状とした、先端が先鋭とした逆V字山形状としたものが存在する〔図11(A)参照〕。さらに、突起条21を略台形状としたものも存在する〔図11(B)参照〕。
【0059】
外被部2に円周方向に複数の突起条21,21,…が設けられることによって、レール材Aと該レール材A上に載置される折板屋根板8との相互の当接においては、突起条21の先端を介して当接するので、レール材Aとがレール材A上を摺動する新たな折板屋根板8nとの接触面積が極めて少ない線接触状態となり、相互間の摩擦が極めて微小なものにでき、新たな折板屋根板8nはレール材A上を極めて円滑に搬送移動されるものである〔図5(A)参照〕。
【0060】
また、突起条21を略台形状とした場合でも、突起条21と折板屋根板8との当接状態についても、略線接触状態に含まれ、線接触とする。さらに、外被部2の外周に、突起条21,21,…が形成されず、略真円状の断面となる実施形態も存在する〔図11(C)参照〕。この場合、外被部2の外周面は円滑且つ摺動性を有する面であり、折板屋根板8はレール材A上を極めて円滑に搬送移動されるものである。
【0061】
レール材Aは、金属製の芯棒部1と、樹脂製の外被部2とから構成されるものとしたが、単一部材のみで構成される実施形態も存在する。この場合、レール材Aは、金属製又は樹脂製のみで構成されることになる〔図11(D),(E)参照〕。また、この実施形態においても、レール材Aの外周は、突起条21,21,…が形成される場合と、突起条21,21,…が存在しない場合とが存在する。
【0062】
レール材A同士は、軸方向に沿って軸端部同士が連結可能とされる。このレール材A,A同士の連結手段にも複数の実施形態が存在する。その第1実施形態は、レール材Aと連結具4とが備わるものである〔図10(A)参照〕。該連結具4は、連結軸部41と2つの弾性ピン42とを有している。
【0063】
2つの弾性ピン42,42は、連結軸部41の軸方向両端付近で、且つ軸方向に沿って左右対称となるように配置され、弾性ピン42の一部が連結軸部41の内周側に溶接等によって固着されている。そして、連結軸部41には、軸方向両端付近に開口41a,41aが形成され、弾性ピン42の先端部分は、前記開口41aから外部に、弾性を有して突出入する構成である。
【0064】
レール材Aの軸方向の両端に穴状の凹部31が設けられている。該凹部31は、レール材Aが芯棒部1が中空管状であれば、その中空管内のことを言う。また、レール材Aが芯棒部1が中実材であれば、窪み状に凹部31が形成される。連結軸部41の外径は、レール材Aの凹部31に挿入可能な寸法となっている。
【0065】
そして、隣接する両前記レール材A,Aの対向する両凹部31に連結具4の連結軸部41が挿入され、開口41aから弾性ピン42の先端が弾性的に突出して、レール材Aの芯棒部1の凹部31の内周を押圧し、軸方向に隣接するレール材A,A同士を連結固定する役目なしている。
【0066】
また、別の連結構造として、前記レール材Aは、軸方向の一端に突出する凸部31が設けられ、軸方向他端に前記凹部31が設けられ、該凹部31に挿入する凸部32が設けられることもある〔図10(B)参照〕。凸部32は、凹部31に対して僅かな圧入状態となる締り嵌めとなることが好ましいが、これに限定されず、凸部32は、凹部31に対して余裕を有して挿入できる遊挿状態としても構わない。
【0067】
次に、取付具Bは、取付ベース部5とホルダ部6とからなる〔図1(C),図2(B),図4参照〕。なお、ここで説明する取付具Bは、馳締タイプの折板屋根板に装着することを前提とする。取付ベース部5は、金属製又は合成樹脂製であり、略方形状の上板部51と、該上板部51の一端から略垂下状に折曲形成されたボルト支持板部52と、前記上板部51の他端で且つ前記ボルト支持板部52に対向するようにして折曲形成された挟持板53とを有している。
【0068】
前記ボルト支持板部52には、内ネジ孔52aが形成され、該内ネジ孔52aに締付ボルト54が設けられたものである。前記挟持板53の下端から取付ベース部5の内方に向かって係止片53aが形成されている。そして、隣接する折板屋根板8,8同士の下馳部84と上馳部85とによる馳締部を、ボルト支持板部52と挟持板53との間に配置する。次いで、ボルト支持板部52に螺合された締付ボルト54を締め付けて、係止片53aの先端と、締付ボルト54の先端とで下馳部84と上馳部85とによる馳締部を挟持固定し、取付具Bを折板屋根の頂部に固定するものである〔図4(A)参照〕。
【0069】
ホルダ部6は、合成樹脂製又は金属製であり、座板部61と包持部62とからなり、座板部61は平板状をなし、該座板部61から包持部62が上方に立ち上がるように形成されている。包持部62は、2つの挟持片62a, 62aを有している。両挟持片62a, 62aは、左右対称の略半円状に形成されたものであり、両挟持片62a, 62aでレール材Aを水平方向における直径方向両側を挟持するように固定する〔図1(C),図2(B),図5等参照〕。
【0070】
ホルダ部6は、その座板部61が取付ベース部5の上板部51にビス等の固着具63を介して固着されている。また、両挟持片62a, 62aは、レール材Aの外径よりも僅かに狭く設定されており、レール材Aを挟持片62a, 62aで挟持したときには、レール材Aの外周に対して弾性的な押圧力をかけて固定することができる。
【0071】
折板屋根板8は、底主板部81の幅方向両側に立上り側部82,82が形成されている。両立上り側部82,82は互いに外方側に向かって外方に向かって僅かに傾斜又は略水平状とした頂面部83,83が形成されている〔図1(A)参照〕。その一方の頂面部83には、下馳部84が形成され、他方の頂面部83には上馳部85が形成されている。
【0072】
本発明においては、レール材A,取付具Bと共に終端案内具Cが具備れる実施形態存在する。終端案内具Cは、主に2つのフレームレール材A1と、接続軸状部75と該レール材の長手方向中間箇所に設けられる係止部73から構成される。フレームレール材A1は水平状フレーム部71と傾斜状フレーム部72とを有し、これらによって、側面の形状が略「へ」字状となるように折曲形成されたものである〔図7(C),(D),図8(A)等参照〕。
【0073】
フレームレール材A1は、所定長さに形成されたものであり、前述したレール材Aと同等の部材が使用されており、長さ以外の要素において全て同一である。したがって、フレームレール材A1は、レール材Aと同様に芯棒部1と外被部2とを有しており、該外被部2は円滑性及び摺動性を備えたものである。
【0074】
したがって、フレームレール材A1自体の構成における説明はレール材Aの説明を参照されたい。フレームレール材A1は、前述したように水平状フレーム部71と傾斜状フレーム部72とを有し、一本の短いレール材Aが略「へ」字形状に折曲形成されたものと言ってもよい〔図7(C),(D)参照〕。
【0075】
2つのフレームレール材A1,A1が所定間隔をおいて平行に並列に配置され、両フレームレール材A1,A1を複数の接続軸状部75で接続している〔図7(A)参照〕。具体的には、該接続軸状部75は、3本備わっている。接続軸状部75は、接続軸片75a,接続管75b及びナット75cにて構成されている〔図7(B)参照〕。
【0076】
接続軸片75aは、両端にネジ部が形成されたボルト軸であり、接続管75bは、パイプ状の中空管であり、内部に前記接続軸片75aが挿通する。フレームレール材A1の水平状フレーム部71及び傾斜状フレーム部72には軸方向に直交する方向に貫通孔7aが形成されている。
【0077】
接続管75bを有する接続軸片75aの軸方向両端が2つのフレームレール材A1,A1のそれぞれの前記貫通孔に挿入される。このとき、フレームレール材A1を直交方向に貫通する貫通孔7aの両側から2つのナット75c,75cにて接続軸片75aのネジ部が締め付けられるようになっている〔図7(A),(B)参照〕。接続管75bは、金属管、又は合成樹脂管等が存在する。
【0078】
フレームレール材A1の水平状フレーム部71と傾斜状フレーム部72との折曲箇所付近には、係止部73が設けられている。係止部73は、折曲部付近の水平状フレーム部71側に設けられたり、或いは傾斜状フレーム部72側に設けられる。係止部73は、ローラ73aとローラ枠73bとから構成され、ローラ73aはローラ枠73bに対して回転自在な構成となっている。
【0079】
さらに、補助係止部74が水平状フレーム部71の軸端に装着されている。補助係止部74は、略半球状のキャップ材として形成されたものであり、金属製,合成樹脂製或いはゴム製等である。補助係止部74は、キャップ材として、水平状フレーム部71の軸端に圧入状態で固着されている〔図7(A),(C)参照〕。
【0080】
終端案内具Cは、屋根施工現場において施工開始位置から最後部に位置する施工済みの折板屋根板8の頂部に設置されたレール材Aの終端位置の付近に交わるように設置される(図3図9参照)。終端案内具Cの設置方法としては、終端案内具Cにおける係止部73のローラ73aが施工済みの折板屋根板8の下馳部84に係止され、補助係止部74が隣接する折板屋根板8の上馳部85に係止される〔図8(B),(C)参照〕。
【0081】
これによって、終端案内具Cが施工済みの折板屋根板8に仮固定状態で設置される〔図8(A),(C)参照〕。この施工済みの折板屋根板8に配置された終端案内具Cは、係止部73のローラ73aを揺動中心として、揺動自在となる〔図8(A)参照〕。これによって、終端案内具Cはシーソ状の動作を行うことができ、傾斜状フレーム部72の傾斜角度に緩急を付けることができる。
【0082】
そして、施工済みの折板屋根板8に設置済みのレール材Aの終端箇所に交わるように終端案内具Cが設置され、レール材A上を搬送移動された新たな折板屋根板8nが、終端案内具Cのフレームレール材A1上に載置され、そのまま、未施工箇所に配置される〔図9(A)乃至(D)参照〕。
【0083】
レール材Aの終端位置付近に終端案内具Cが配置され、折板屋根板8の未施工位置付近まで摺動搬送された新たな折板屋根板8nは、まず、終端案内具Cの水平状フレーム部71の位置に搬送される〔図9(A)参照〕。このとき、新たな折板屋根板8nはレール材Aに載置されているか、又はレール材Aと共に水平状フレーム部71にも載置された状態となる。
【0084】
そのまま、新たな折板屋根板8nを未施工位置の方向に摺動搬送させると、新たな折板屋根板8nは終端案内具Cの傾斜状フレーム部72に移動する〔図9(B)参照〕。そして、そのまま終端案内具Cを係止部73を揺動中心として、未施工位置側に向かって傾斜状フレーム部72が下方に下がるように傾斜させ急勾配状態にできる〔図9(C)参照〕。
【0085】
これによって、傾斜状フレーム部72上に載置された新たな折板屋根板8nは、終端案内具Cの傾斜状フレーム部72に沿って降下し、未施工位置に設けられた受具92の位置に適正に配置されることになる。そして、新たな折板屋根板8nは、未施工位置に適正に施工されて、施工済みの折板屋根板8となる。
【0086】
次いで終端案内具Cは、前回の施工済みの折板屋根板8から外し、新たな折板屋根板8nが施工済みの折板屋根板8となった場所に設置し、同様の作業を繰り返す。終端案内具Cをレール材Aと併用することによって、新たな折板屋根板8nを未施工位置に適正に配置し、施工することが極めて簡易且つ迅速にでき、作業効率を向上させることができる。
【0087】
また、終端案内具Cは、係止部73を回転自在のローラ73aを中心にして揺動自在となるため、新たな折板屋根板8nがレール材Aから水平状フレーム部71を介して傾斜状フレーム部72に移動すれば、新たな折板屋根板8nの重量によって、終端案内具Cは、係止部73を中心にして自然に未施工位置側に傾くことになる。そして、そのまま、新たな折板屋根板8nは折板屋根板8の未施工位置に適正に配置されることも可能となる。
【0088】
新たな折板屋根板8nが複数のレール材A,A,…上を摺動移動するたびに、レール材Aの突起条21,21,…は時間経過と共に摩耗することになる。これによって、新たな折板屋根板8nの底主板部81とレール材Aとの当接範囲は広くなる〔図6(A),(B)参照〕。そのため、新たな折板屋根板8nがレール材A上を摺動搬送されるときに新たな折板屋根板8nの底主板部81と、レール材Aとの摩擦が大きくなり、新たな折板屋根板8nの摺動搬送の効果が僅かに下がることもある。
【0089】
このような場合には、レール材Aを周方向に回転させ、新たな突起条21が新たな折板屋根板8nの底主板部81と当接するように設定することで、新たな折板屋根板8nのレール材A上に対する摺動移動が滑らかに復帰し、良好な摺動搬送ができるようになる〔図6(C)参照〕。このように、レール材Aには外被部2に多数の突起条21が設けられているので、一定時間使用したらレール材Aを周方向に回転させるのみで、常に、新しい突起条21と、新たな折板屋根板8との当接状態を維持することができる。
【0090】
折板屋根板8については、既に説明した馳締タイプ以外に、嵌合キャップ材97を使用する嵌合タイプ〔図12(A),(B)参照〕と、山形部同士を重合して連結する重合タイプ〔図12(C),(D)参照〕が存在する。嵌合タイプの折板屋根板8は、馳締タイプの折板屋根板8と同様に、底主板部81の幅方向両側に立上り側部82,82が形成されている。両立上り側部82,82は互いに外方側に向かって外方に向かって僅かに傾斜又は略水平状とした頂面部83,83が形成されている。
【0091】
両頂面部83,83には、被嵌合部86,86が形成され、両被嵌合部86,86に嵌合して、隣接する折板屋根板8,8を連結する嵌合キャップ材87が具備される〔図12(A),(B)参照〕。そして、隣接する折板屋根板8,8の対向する被嵌合部86,86が前記受具92に吊子及びボルト・ナット等の固着具を介して固定され、対向する前記被嵌合部86,86に嵌合キャップ材87が嵌合固定される。
【0092】
この嵌合タイプの折板屋根板8に適応する取付具Bについて説明する。ホルダ部6については、馳締タイプの折板屋根板8と同一のものが使用されるので、前述したホルダ部6の説明を参照されたい。取付ベース部5については、略方形状の上板部51と、該上板部51の幅方向両端から略垂下状に折曲形成された挟持板55,55とからなるものである。両挟持板55,55は幅方向において左右対称の形状であり、その下端に互いに内方に突出する係止片55a,55aが形成されている。また、両挟持板55,55において、両挟持板55,55には、それぞれ貫通孔55b,55bが形成されている。
【0093】
さらに、両挟持板55,55を締め付ける締付ボルト561及びナット562が具備されており、該締付ボルト561のネジ軸部が前記貫通孔55bに挿入する。取付ベース部5は、両挟持板55,55の係止片55a,55aによって、前記嵌合キャップ材87の幅方向両側を挟持し、前記締付ボルト561及びナット562によって、両挟持板55,55を締め付け、取付具Bを嵌合タイプの折板屋根板8に固定することができる〔図12(B)参照〕。
【0094】
なお、一方の貫通孔55bに内ネジを形成すれば、締付ボルト561のみで両挟持板55,55を締付可能となり、ナット562は不要となる。そして、上板部51には、ホルダ部6がビス等の固着具にて固着される。嵌合タイプの折板屋根板8に装着されたレール材Aによって、嵌合タイプの新たな折板屋根板8nと、嵌合キャップ材87とが摺動搬送される〔図12(A)参照〕。
【0095】
次に、重合タイプの折板屋根板8について説明する。このタイプの折板屋根板8は、馳締タイプ及び嵌合タイプの折板屋根板8と略同様に、底主板部81を有している。該底主板部81の幅方向両側から半山形状の山形部88,88が形成されている。そして、隣接する折板屋根板8,8の山形部88,88が上下方向に重合されて、隣接する折板屋根板8,8が連結されるものである〔図12(C),(D)参照〕。
【0096】
重合タイプの折板屋根板8に適応する受具92の頂部には、ボルト軸部93が設けられている〔図12(D)参照〕。そして、山形部88,88の頂部同士が重合されると共に、その頂部同士に前記ボルト軸部93が貫通し、ナットがボルト軸部93に締め付けられて両山形部88,88が受具92に固定される。
【0097】
この重合タイプの折板屋根板8に適応する取付具Bについて説明する。ホルダ部6については、馳締タイプの折板屋根板8と同一のものが使用されるので、前述したホルダ部6の説明を参照されたい。取付ベース部5については、断面略方形状の中空部材が使用される〔図12(D)参照〕。
【0098】
取付ベース部5の上端面は上板部51であり、下端面は底板部56となる。底板部56には、前記ボルト軸部93に螺合する内ネジ部56aが形成され、取付ベース部5は、底板部56に形成された内ネジ部56aがボルト軸部93と螺合することによって、取付具Bは、重合タイプの折板屋根板8に固定される。そして、上板部51には、ホルダ部6がビス等の固着具にて固着される。
【0099】
次に、本発明における搬送装置を使用した搬送方法について説明する。具体的には折板屋根の施工における新たな折板屋根板の搬送方法として説明する。搬送方法は、以下のとおりである。まず、金属で且つ断面円形状の芯棒部1と、外周側面を円滑面とする共に摺動性を有する樹脂製の外被部2とを有し、前記芯棒部1に前記外被部2が被覆されてなるレール材Aと、該レール材Aを所定位置に着脱自在に取り付ける取付具Bとを備える〔図1(A),(B),図3図9等参照〕。
【0100】
構造材91上に受具92を所定間隔をおいて配置固着し、施工開始位置から折板屋根板8が所定の個数施工した後に、施工完了済みの折板屋根板8の頂部に直交するようにして複数のレール材Aを、取付具Bを介して並列状に設置する(図3参照)。次いで、新たな折板屋根板8nを並列された複数のレール材A,A,…上に亘って載置する。前記折板屋根板8の施工開始位置から未施工位置付近まで設けられたレール材Aの終端位置まで摺動状態で新たな折板屋根板8nを摺動搬送する〔図1(A),図9参照〕。
【0101】
次いで、摺動搬送された新たな折板屋根板8nをレール材Aの終端位置から折板屋根板8の未施工位置の受具92上に配置する〔図9(D)参照〕。レール材Aの終端位置に終端案内具Cを配置し、該終端案内具Cを利用して新たな折板屋根板8nを未施工位置の受具92上に配置する作業がより一層簡単になできる。
【0102】
未施工位置の受具92に適正に設置された新たな折板屋根板8nは隣接する施工済みの折板屋根板8と馳締め等の連結手段にて連結する。この作業を繰り返し、新たな折板屋根板8nを未施工位置に搬送し、折板屋根を施工する。施工過程で、施工済みの折板屋根板8の範囲(面積)が増えて、レール材Aの長さが不足する場合には、レール材Aを継ぎ足してレール材Aの総全長を増やしてゆくこともできる。
【0103】
本発明における搬送装置では、主に折板屋根の施工現場において、新たな折板屋根板8nを搬送するものとして説明したが、搬送されるものは、新たな折板屋根板8nに限定されるものではなく、その他の長尺な建設資材,梁等の構造材等も施工開始位置から未施工位置又は搬送目的位置まで搬送することもできる。
【符号の説明】
【0104】
A…レール材、1…芯棒部、2…外被部、21…突起条、32…凸部、31…凹部、
4…連結具、B…取付具、5…取付ベース部、6…ホルダ部、C…終端案内具、
A1…フレームレール材、71…水平状フレーム部、72…傾斜状フレーム部、
73…係止部、74…補助係止部。
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