(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】キックバック対策用のストッパ装置、携帯用切断機とともに使用する付属品セット、および、携帯用切断システム
(51)【国際特許分類】
B23D 47/02 20060101AFI20241010BHJP
B23D 45/16 20060101ALI20241010BHJP
B25F 5/00 20060101ALI20241010BHJP
B25F 5/02 20060101ALI20241010BHJP
B27B 9/04 20060101ALI20241010BHJP
B27G 19/04 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
B23D47/02
B23D45/16
B25F5/00 A
B25F5/02
B27B9/04
B27G19/04 Z
(21)【出願番号】P 2021067009
(22)【出願日】2021-04-12
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】弁理士法人勇智国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 雅規
(72)【発明者】
【氏名】木村 佳弘
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-086278(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0283024(US,A1)
【文献】特開2011-143526(JP,A)
【文献】独国特許発明第102015107720(DE,B3)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 47/02
B23D 45/16
B25F 5/00
B25F 5/02
B27B 9/04
B27G 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被切断材に当接させるためのベースを有する携帯用切断機と、長手方向に延在する長尺定規であって、前記長手方向に延在する突条を有する長尺定規と、ともに使用するための、キックバック対策用のストッパ装置であって、
前記突条は、前記長手方向に延在する溝または凹部と、その両脇に形成された第1の凸部および第2の凸部と、を備え、
前記ベース、または、該ベースに取り付けられる長尺定規アダプタに直接的または間接的に連結するための連結部と、第1の押圧部および第2の押圧部と、を有する枢動部材を備え、
前記枢動部材は、
前記枢動部材が前記連結部を介して前記ベースまたは前記長尺定規アダプタに連結された状態である連結状態で前記携帯用切断機が前記長尺定規に対して前記長手方向の第1の側へ移動したときに、第1の枢動方向へ前記ベースに対して枢動可能に構成され
るとともに、
前記連結状態において、前記第1の押圧部および第2の押圧部が前記溝内または前記凹部内に位置するように配置されるように構成され、
前記枢動部材は、さらに、
前記枢動部材が前記第1の枢動方向に所定枢動位置まで枢動されたときに、前記第1の押圧部および前記第2の押圧部が前記突条
の前記第1の凸部および前記第2の凸部に
それぞれ近づいて、前記第1の押圧部が前記第2の押圧部と反対側に向けて前記突条
の前記第1の凸部を押圧するとともに、前記第2の押圧部が前記第1の押圧部と反対側に向けて前記突条
の前記第2の凸部を押圧し、
前記枢動部材が前記所定枢動位置まで枢動されていないときに、前記第1の押圧部および前記第2の押圧部が前記突条
の前記第1の凸部および前記第2の凸部を押圧しない
ように構成された
ストッパ装置。
【請求項2】
被切断材に当接させるためのベースを有する携帯用切断機と、長手方向に延在する長尺定規であって、前記長手方向に延在する突条を有する長尺定規と、ともに使用するための、キックバック対策用のストッパ装置であって、
前記ベース、または、該ベースに取り付けられる長尺定規アダプタに直接的または間接的に連結するための連結部と、第1の押圧部および第2の押圧部と、を有する枢動部材を備え、
前記枢動部材は、
前記枢動部材が前記連結部を介して前記ベースまたは前記長尺定規アダプタに連結された状態である連結状態で前記携帯用切断機が前記長尺定規に対して前記長手方向の第1の側に移動したときに、第1の枢動方向へ前記ベースに対して枢動可能に構成されるとともに、
前記連結状態において、前記第1の押圧部と前記第2の押圧部との間に前記突条が位置するように配置されるように構成され、
前記枢動部材は、さらに、
前記枢動部材が前記第1の枢動方向に所定枢動位置まで枢動されたときに、前記第1の押圧部および前記第2の押圧部が前記突条に近づいて、前記第1の押圧部が前記第2の押圧部側に向けて前記突条を押圧するとともに、前記第2の押圧部が前記第1の押圧部側に向けて前記突条を押圧し、
前記枢動部材が前記所定枢動位置まで枢動されていないときに、前記第1の押圧部および前記第2の押圧部が前記突条を押圧しない
ように構成された
ストッパ装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のストッパ装置であって、
前記枢動部材は、水平方向に枢動可能に構成され、
前記第1の枢動方向は、前記連結状態で前記携帯用切断機が前記長尺定規に対して前記長手方向の第1の側へ移動したときに、前記ベースに対する前記第1の押圧部および前記第2の押圧部の相対位置が前記第1の側と反対の第2の側へ移動する方向である
ストッパ装置。
【請求項4】
請求項3に記載のストッパ装置であって、
前記枢動部材は、前記連結状態において前記長手方向に交差する方向に延在する本体を備え、
前記第1の押圧部および前記第2の押圧部の各々は、前記連結状態において前記本体から鉛直方向に突出する
ストッパ装置。
【請求項5】
請求項4に記載のストッパ装置であって、
前記第1の押圧部および前記第2の押圧部の各々は、前記連結状態において、前記本体から、前記長尺定規へ向かう方向に突出する
ストッパ装置。
【請求項6】
請求項1を従属元に含む請求項3から請求項5のいずれか一項に記載のストッパ装置であって、
前記枢動部材は、前記連結状態において、前記第1の押圧部が、前記長尺定規の短手方向において、前記第2の押圧部よりも前記長尺定規の外側に位置するとともに、前記長手方向において、前記第2の押圧部よりも前記第1の側に位置するように構成された
ストッパ装置。
【請求項7】
請求項2を従属元に含む請求項3から請求項5のいずれか一項に記載のストッパ装置であって、
前記枢動部材は、前記連結状態において、前記第1の押圧部が、前記長尺定規の短手方向において、前記第2の押圧部よりも前記長尺定規の外側に位置するとともに、前記長手方向において、前記第2の押圧部よりも前記第2の側に位置するように構成された
ストッパ装置。
【請求項8】
請求項3から請求項7のいずれか一項に記載のストッパ装置であって、
前記ベースまたは前記長尺定規アダプタは、前記長尺定規の短手方向に延在する貫通孔を有する縁部を備え、
前記枢動部材は、
前記連結状態において、前記貫通孔を貫通するように配置可能であり、
前記枢動部材は、前記連結状態において前記枢動部材が前記所定枢動位置まで枢動されたときに前記枢動部材が前記ベースまたは前記長尺定規アダプタに当接しない大きさのクリアランスが前記ベースまたは前記長尺定規アダプタと、前記枢動部材と、の間に形成される
ような形状および大きさを有している
ストッパ装置。
【請求項9】
請求項3から請求項8のいずれか一項に記載のストッパ装置であって、
前記枢動部材は、前記連結状態で前記携帯用切断機が前記長尺定規に対して前記長手方向の第2の側へ移動したときに、前記第1の押圧部および前記第2の押圧部が前記突条から遠ざかるように、前記ベースに対して、前記第1の枢動方向と反対の第2の枢動方向に枢動可能に構成され、
前記枢動部材は、前記第2の枢動方向に所定の角度だけ枢動されたときに、前記ベースまたは前記長尺定規アダプタに当接して、前記第2の枢動方向への更なる枢動が規制されるような形状および大きさを有している
ストッパ装置。
【請求項10】
請求項3から請求項9のいずれか一項に記載のストッパ装置であって、
前記枢動部材は、前記連結部に位置する枢動軸線を中心として枢動するように構成された
ストッパ装置。
【請求項11】
請求項4から請求項10のいずれか一項に記載のストッパ装置であって、
前記第1の押圧部および前記第2の押圧部の各々は、前記連結状態において、前記本体から、前記長尺定規へ向かう方向と、前記長尺定規から離れる方向と、の両方に突出する
ストッパ装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載のストッパ装置であって、
前記枢動部材は、前記連結状態において、部分的に前記突条上に載置されるように構成された
ストッパ装置。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか一項に記載のストッパ装置であって、
前記枢動部材を枢動可能に保持する第1の保持部と、前記ベースまたは前記長尺定規アダプタに取り付けるための取付部と、を備えるホルダをさらに備え、
前記枢動部材は、前記ホルダを介して前記ベースまたは前記長尺定規アダプタに連結される
ストッパ装置。
【請求項14】
請求項13に記載のストッパ装置であって、
前記ホルダは、前記ストッパ装置の不使用時において、前記第1の保持部とは別の場所で前記枢動部材を保持する第2の保持部を備える
ストッパ装置。
【請求項15】
請求項1から請求項14のいずれか一項に記載のストッパ装置であって、
前記ストッパ装置は、前記ベースまたは前記長尺定規アダプタが有するつまみネジを利用してツールレスで前記枢動部材を前記ベースまたは前記長尺定規アダプタに連結可能に構成された
ストッパ装置。
【請求項16】
携帯用切断機とともに使用する付属品セットであって、
請求項1から請求項15のいずれか一項に記載のストッパ装置と、
前記長尺定規と
を備える付属品セット。
【請求項17】
請求項16に記載の付属品セットであって、
前記突条は、
前記突条の突出方向に向けて開口するとともに前記長手方向に延在する溝を有し、
前記長尺定規の縁部に前記長手方向に沿って形成された
付属品セット。
【請求項18】
携帯用切断システムであって、
請求項1から請求項15のいずれか一項に記載のストッパ装置、または、請求項16または請求項17に記載の付属品セットと、
前記携帯用切断機と
を備える携帯用切断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被切断材に当接させるためのベースを有する携帯用切断機と、長手方向に延在する長尺定規であって、長手方向に延在する突条を有する長尺定規と、ともに使用するための、キックバック対策用のストッパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯用マルノコ(以下、単にマルノコと呼ぶ)では、被切断材を切断する際に、回転する鋸刃の両面が、被切断材の歪みや曲がりに起因して被切断材によって締め付けられると、回転する鋸刃に対する被切断材の反力によって、マルノコが後方に跳ね返される現象(いわゆるキックバック)が生じる恐れがある。下記の特許文献1~3は、マルノコとともに使用される長尺定規の突条を利用してキックバック対策を行うことができるマルノコを開示している。具体的には、マルノコは、ストッパを備えている。キックバックが発生してマルノコが長尺定規に対して後方へ移動したときに、このストッパは、変位して、長尺定規の突条を長尺定規の短手方向に押圧する。この押圧力によって、マルノコが長尺定規に対して更に後方へ移動することが規制される(以下、この状態を規制状態と呼ぶ)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】独国特許出願公開第102004002275号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2018920号明細書
【文献】特開2011-143526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許文献のマルノコは、キックバックが発生したときに、ストッパが、マルノコのベースと、長尺定規の突条と、の間に噛み込んでしまう。このため、ストッパによる規制状態を解除するためには、大きな力が必要であり、作業性が悪い。この問題は、マルノコに限らず、種々の携帯用切断機(例えば、カッタ)に共通する。本明細書では、規制状態の解除が容易な、携帯用切断機のキックバック対策用のストッパ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書は、携帯用切断機と長尺定規とともに使用するための、キックバック対策用のストッパ装置を開示する。このストッパ装置は、キックバックが発生したときに、携帯用切断機の後退を規制するために使用される。携帯用切断機は、被切断材に当接させるためのベースを有する。長尺定規は、長手方向に延在する。この長尺定規は、長手方向に延在する突条を有する。
【0006】
ストッパ装置は、ベース、または、ベースに取り付けられる長尺定規アダプタに直接的または間接的に連結するための連結部と、第1の押圧部および第2の押圧部と、を有する枢動部材を備えていてもよい。枢動部材は、枢動部材が連結部を介してベースまたは長尺定規アダプタに連結された状態である連結状態で携帯用切断機が長尺定規に対して長手方向の第1の側へ移動したときに、第1の枢動方向へベースに対して枢動可能に構成されてもよい。枢動部材は、さらに、枢動部材が枢動方向に所定枢動位置まで枢動されたときに、第1の押圧部および第2の押圧部が突条に近づいて、第1の押圧部が第2の押圧部と反対側に向けて突条を押圧するとともに、第2の押圧部が第1の押圧部と反対側に向けて突条を押圧し、枢動部材が所定枢動位置まで枢動されていないときに、第1の押圧部および第2の押圧部が突条を押圧しないように構成されてもよい。
【0007】
ストッパ装置は、ベース、または、ベースに取り付けられる長尺定規アダプタに直接的または間接的に連結するための連結部と、第1の押圧部および第2の押圧部と、を有する枢動部材を備えていてもよい。枢動部材は、枢動部材が連結部を介してベースまたは長尺定規アダプタに連結された状態である連結状態で携帯用切断機が長尺定規に対して長手方向の第1の側に移動したときに、第1の枢動方向へベースに対して枢動可能に構成されるとともに、連結状態において、第1の押圧部と第2の押圧部との間に突条が位置するように配置されるように構成されてもよい。枢動部材は、さらに、枢動部材が枢動方向に所定枢動位置まで枢動されたときに、第1の押圧部および第2の押圧部が突条に近づいて、第1の押圧部が第2の押圧部側に向けて突条を押圧するとともに、第2の押圧部が第1の押圧部側に向けて突条を押圧し、枢動部材が所定枢動位置まで枢動されていないときに、第1の押圧部および第2の押圧部が突条を押圧しないように構成されてもよい。
【0008】
これらのストッパ装置は、キックバックが発生したときに携帯用切断機が長尺定規に対して第1の側に移動するように配置される。上記のいずれかの構成によれば、携帯用切断機の切断作業時、つまり、携帯用切断機を前方に向けて(つまり、第2の側に向けて)進行させるときには、枢動部材が所定枢動位置まで枢動されないので、第1の押圧部および第2の押圧部は、長尺定規の突条を押圧しない。つまり、第1の押圧部および第2の押圧部は、携帯用切断機の進行を妨げない。一方、キックバックが発生したとき(つまり、携帯用切断機が第1の側に移動したとき)は、枢動部材が所定枢動位置まで枢動されるので、第1の押圧部および第2の押圧部は、長尺定規の突条を押圧し、長尺定規に対するストッパ装置の移動が規制される。その結果、ストッパ装置に連結された携帯用切断機が、更に第1の側に移動することが阻止される。しかも、第1の押圧部および第2の押圧部は、所定枢動位置まで枢動されることによって、ベースまたは長尺定規アダプタから独立した状態で突条を押圧するので、第1の押圧部および第2の押圧部が突条に噛み込みにくい。したがって、ユーザは、大きな力を必要とすることなく、規制状態を容易に解除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態によるストッパ装置とともに使用されるマルノコの一例を示す斜視図である。
【
図2】
図1のマルノコを長尺定規とともに使用する様子を示す斜視図である。
【
図3】
図1のマルノコを長尺定規とともに使用する様子を示す斜視図である。
【
図4】マルノコのベースにストッパ装置を連結した状態を示す斜視図である。
【
図5】マルノコのベースにストッパ装置を連結した状態を示す平面図である。
【
図7】ストッパ装置の枢動部材を示す斜視図である。
【
図11】マルノコが前進し、枢動部材が第2の枢動方向に枢動された状態を示す部分平面図である。
【
図12】マルノコがキックバックによって後退し、枢動部材が第1の枢動方向に枢動された状態を示す部分平面図である。
【
図13】ホルダが枢動部材を非使用位置で保持する様子を示す斜視図である。
【
図14】第2実施形態によるマルノコの一例を示す斜視図であり、枢動部材は非使用位置にある。
【
図15】マルノコのベースに第3実施形態によるストッパ装置を連結した状態を示す平面図である。
【
図18】第4実施形態によるストッパ装置の枢動部材を示す平面図であり、枢動部材が右勝手用のマルノコに連結されるときの枢動部材と長尺定規との位置関係を示している。
【
図20】第4実施形態によるストッパ装置の枢動部材を示す平面図であり、枢動部材が左勝手用のマルノコに連結されるときの枢動部材と長尺定規との位置関係を示している。
【
図22】第5実施形態によるストッパ装置の枢動部材を示す平面図であり、
図12に対応している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、本発明の代表的かつ非限定的な具体例について、図面を参照して詳細に説明する。この詳細な説明は、本発明の好ましい例を実施するための詳細を当業者に示すことを単純に意図しており、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。また、以下に開示される追加的な特徴ならびに発明は、さらに改善されたストッパ装置、その製造方法および使用方法を提供するために、他の特徴や発明とは別に、または共に用いることができる。
【0011】
また、以下の詳細な説明で開示される特徴や工程の組み合わせは、最も広い意味において本発明を実施する際に必須のものではなく、特に本発明の代表的な具体例を説明するためにのみ記載されるものである。さらに、上記および下記の代表的な具体例の様々な特徴、ならびに、独立および従属クレームに記載されるものの様々な特徴は、本発明の追加的かつ有用な実施形態を提供するにあたって、ここに記載される具体例のとおりに、あるいは列挙された順番のとおりに組合せなければならないものではない。
【0012】
本明細書および/または特許請求の範囲に記載された全ての特徴は、実施形態および/またはクレームに記載された特徴の構成とは別に、出願当初の開示ならびにクレームされた特定事項に対する限定として、個別に、かつ互いに独立して開示されることを意図するものである。さらに、全ての数値範囲およびグループまたは集団に関する記載は、出願当初の開示ならびにクレームされた特定事項に対する限定として、それらの中間の構成を開示する意図を持ってなされている。
【0013】
以下の説明において、長尺定規の長手方向または短手方向を用いてストッパ装置に関する方向に言及する場合、「長手方向」および「短手方向」は、長尺定規の使用時の状態(換言すれば、長尺定規上に携帯用切断機を載置した状態)における長手方向および短手方向をそれぞれ意味している。また、水平方向および鉛直方向とは、長尺定規の使用時の状態における水平方向を意味している。つまり、使用時において長尺定規と携帯用切断機とが並ぶ方向が鉛直方向であり、鉛直方向に直交する方向が水平方向である。
【0014】
1つまたはそれ以上の実施形態において、キックバック対策用のストッパ装置は、携帯用切断機と長尺定規とともに使用されることが意図されている。携帯用切断機は、被切断材に当接させるためのベースを有する。長尺定規は、長手方向に延在する。この長尺定規は、長手方向に延在する突条を有する。
【0015】
1つまたはそれ以上の実施形態において、ストッパ装置は、ベース、または、ベースに取り付けられる長尺定規アダプタに直接的または間接的に連結するための連結部と、第1の押圧部および第2の押圧部と、を有する枢動部材を備えていてもよい。枢動部材は、枢動部材が連結部を介してベースまたは長尺定規アダプタに連結された状態である連結状態で携帯用切断機が長尺定規に対して長手方向の第1の側へ移動したときに、第1の枢動方向へベースに対して枢動可能に構成されてもよい。枢動部材は、さらに、枢動部材が枢動方向に所定枢動位置まで枢動されたときに、第1の押圧部が第2の押圧部と反対側に向けて突条を押圧するとともに、第2の押圧部が第1の押圧部と反対側に向けて突条を押圧し、枢動部材が所定枢動位置まで枢動されていないときに、第1の押圧部および第2の押圧部が突条を押圧しないように構成されてもよい。
【0016】
1つまたはそれ以上の実施形態において、ストッパ装置は、ベース、または、ベースに取り付けられる長尺定規アダプタに直接的または間接的に連結するための連結部と、第1の押圧部および第2の押圧部と、を有する枢動部材を備えていてもよい。枢動部材は、枢動部材が連結部を介してベースまたは長尺定規アダプタに連結された状態である連結状態で携帯用切断機が長尺定規に対して長手方向の第1の側に移動したときに、第1の枢動方向へベースに対して枢動可能に構成されるとともに、連結状態において、第1の押圧部と第2の押圧部との間に突条が位置するように配置されるように構成されてもよい。枢動部材は、さらに、枢動部材が枢動方向に所定枢動位置まで枢動されたときに、第1の押圧部が第2の押圧部側に向けて突条を押圧するとともに、第2の押圧部が第1の押圧部側に向けて突条を押圧し、枢動部材が所定枢動位置まで枢動されていないときに、第1の押圧部および第2の押圧部が突条を押圧しないように構成されてもよい。
【0017】
これらのストッパ装置は、キックバックが発生したときに携帯用切断機が長尺定規に対して第1の側に移動するように配置される。上記のいずれかの構成によれば、携帯用切断機の切断作業時、つまり、携帯用切断機を前方に向けて(つまり、第2の側に向けて)進行させるときには、枢動部材が所定枢動位置まで枢動されないので、第1の押圧部および第2の押圧部は、長尺定規の突条を押圧しない。つまり、第1の押圧部および第2の押圧部は、携帯用切断機の進行を妨げない。一方、キックバックが発生したとき(つまり、携帯用切断機が第1の側に移動したとき)は、枢動部材が所定枢動位置まで枢動されるので、第1の押圧部および第2の押圧部は、長尺定規の突条を押圧し、長尺定規に対するストッパ装置の移動が規制される。その結果、ストッパ装置に連結された携帯用切断機が、更に第1の側に移動することが阻止される。しかも、第1の押圧部および第2の押圧部は、所定枢動位置まで枢動されることによって、ベースまたは長尺定規アダプタから独立した状態で突条を押圧するので、第1の押圧部および第2の押圧部が突条に噛み込みにくい。したがって、ユーザは、大きな力を必要とすることなく、規制状態を容易に解除することができる。突条は、単一の突条であってもよいし、互いに平行な2つの突条であってもよい。
【0018】
1つまたはそれ以上の実施形態において、枢動部材は、水平方向に枢動可能に構成されてもよい。第1の枢動方向は、連結状態で携帯用切断機が長尺定規に対して長手方向の第1の側へ移動したときに、ベースに対する第1の押圧部および第2の押圧部の相対位置が第1の側と反対の第2の側へ移動する方向であってもよい。キックバックの発生時において長尺定規とベースとは水平方向(より正確には、長手方向)に相対移動するので、この構成によれば、長尺定規とベースとの相対移動の方向を枢動部材の枢動方向に変換するための追加的な機構が必要ない。したがって、簡素な構造で、枢動部材を枢動可能にできる。
【0019】
1つまたはそれ以上の実施形態において、枢動部材は、連結状態において長手方向に交差する方向に延在する本体を備えていてもよい。第1の押圧部および第2の押圧部の各々は、連結状態において本体から鉛直方向に突出してもよい。この構成によれば、枢動部材を簡素な形状にすることができる。
【0020】
1つまたはそれ以上の実施形態において、第1の押圧部および第2の押圧部の各々は、連結状態において、本体から、長尺定規へ向かう方向に突出してもよい。突条は、上方に向けて突出しているので、この構成のように、第1の押圧部および第2の押圧部が下方に向けて突出すれば、枢動部材が所定枢動位置まで枢動されたときに、第1の押圧部および第2の押圧部と突条とが係合して、第1の押圧部および第2の押圧部が突条を押圧する構成を、簡素な構造で実現できる。
【0021】
1つまたはそれ以上の実施形態において、枢動部材は、連結状態において、第1の押圧部が、長尺定規の短手方向において、第2の押圧部よりも長尺定規の外側に位置するとともに、長手方向において、第2の押圧部よりも第1の側に位置するように構成されてもよい。この構成によれば、枢動部材が、所定枢動位置に向けて枢動するにつれて、短手方向における第1の押圧部と第2の押圧部との離間距離が長くなる。このため、例えば、突条が、上方に向けて開口するとともに長手方向に延在する溝を有している場合、この溝内に第1の押圧部および第2の押圧部を配置すれば、枢動部材が所定枢動位置まで枢動されたときに、第1の押圧部および第2の押圧部が、溝を形成する突条の両内面を外側に向けてそれぞれ押圧することができる。あるいは、長尺定規が、互いに平行に延在する2つの突条を有する場合には、2つの突条の間に第1の押圧部および第2の押圧部を配置すれば、枢動部材が所定枢動位置まで枢動されたときに、第1の押圧部および第2の押圧部が、2つの突条を外側に向けてそれぞれ押圧することができる。
【0022】
1つまたはそれ以上の実施形態において、枢動部材は、連結状態において、第1の押圧部が、長尺定規の短手方向において、第2の押圧部よりも長尺定規の外側に位置するとともに、長手方向において、第2の押圧部よりも第2の側に位置するように構成されてもよい。この構成によれば、枢動部材が、所定枢動位置に向けて枢動するにつれて、短手方向における第1の押圧部と第2の押圧部との離間距離が短くなる。このため、突条を間に挟むように第1の押圧部および第2の押圧部を配置すれば、枢動部材が所定枢動位置まで枢動されたときに、第1の押圧部および第2の押圧部が、突条を外側から内側に向けて挟むように押圧することができる。
【0023】
1つまたはそれ以上の実施形態において、ベースまたは長尺定規アダプタは、長尺定規の短手方向に延在する貫通孔を有する縁部を備えていてもよい。枢動部材は、連結状態において、貫通孔を貫通するように配置可能となるような形状および大きさを有していてもよい。枢動部材は、さらに、連結状態において枢動部材が所定枢動位置まで枢動されたときに枢動部材がベースまたは長尺定規アダプタに当接しない大きさのクリアランスがベースまたは長尺定規アダプタと、枢動部材と、の間に形成されるような形状および大きさを有していてもよい。この構成によれば、枢動部材の所定枢動位置までの枢動が、枢動部材とベースまたは長尺定規アダプタとの当接に起因して阻害されることがない。したがって、第1の押圧部および第2の押圧部が突条をより確実に押圧できる。
【0024】
1つまたはそれ以上の実施形態において、枢動部材は、連結状態で携帯用切断機が長尺定規に対して長手方向の第2の側へ移動したときに、第1の押圧部および第2の押圧部が突条から遠ざかるように、ベースに対して、第1の枢動方向と反対の第2の枢動方向に枢動可能に構成されてもよい。枢動部材は、第2の枢動方向に所定の角度だけ枢動されたときに、ベースまたは長尺定規アダプタに当接して、第2の枢動方向への更なる枢動が規制されるような形状および大きさを有していてもよい。この構成によれば、携帯用切断機の切断作業時、つまり、携帯用切断機を前方に向けて(つまり、第2の側に向けて)進行させるときに、第1の押圧部および第2の押圧部が突条と離れる方向に枢動するので、第1の押圧部および第2の押圧部が携帯用切断機の進行に対して抵抗力(摩擦力)を及ぼすことがない。また、枢動部材は、第2の枢動方向への回転角度が制限されるので、枢動部材が大きな枢動角度で回転して、突条を押圧することもない。
【0025】
1つまたはそれ以上の実施形態において、枢動部材は、連結部に位置する枢動軸線を中心として枢動するように構成されてもよい。この構成によれば、連結のための構造と、枢動のための構造と、を一体化させることができる。したがって、ストッパ装置の構造を簡素化できる。ただし、これらの構造は、別々に設けられてもよい。
【0026】
1つまたはそれ以上の実施形態において、第1の押圧部および第2の押圧部の各々は、連結状態において、本体から、長尺定規へ向かう方向と、長尺定規から離れる方向と、の両方に突出してもよい。この構成によれば、枢動部材を、その表裏を反対にしても使用することができる。つまり、右利きの人に多く使われる右勝手用の携帯用切断機、および、左利きの人に多く使われる左勝手用の携帯用切断機のいずれに対しても使用することができる。したがって、ストッパ装置の汎用性が向上する。
【0027】
1つまたはそれ以上の実施形態において、枢動部材は、連結状態において、部分的に突条上に載置されるように構成されてもよい。この構成によれば、携帯用切断機が長尺定規に対して長手方向の第1の側または第2の側へ移動したときに、枢動部材と突条部材との間に作用する摩擦力によって、枢動部材が枢動しやすくなる。
【0028】
1つまたはそれ以上の実施形態において、ストッパ装置は、枢動部材を枢動可能に保持する第1の保持部と、ベースまたは長尺定規アダプタに取り付けるための取付部と、を備えるホルダをさらに備えていてもよい。枢動部材は、ホルダを介してベースまたは長尺定規アダプタに連結されてもよい。この構成によれば、枢動部材の構造を複雑にすることなく、枢動部材をベースまたは長尺定規アダプタに容易に連結できる。
【0029】
1つまたはそれ以上の実施形態において、ホルダは、ストッパ装置の不使用時において、第1の保持部とは別の場所で枢動部材を保持する第2の保持部を備えていてもよい。この構成によれば、ストッパ装置の不使用時には、携帯用切断機の使用の邪魔にならない場所で、ストッパ装置を携帯用切断機に保持させることができる。
【0030】
1つまたはそれ以上の実施形態において、ストッパ装置は、ベースまたは長尺定規アダプタが有するつまみネジを利用してツールレスで枢動部材をベースまたは長尺定規アダプタに連結可能に構成されてもよい。この構成によれば、ユーザの利便性が向上する。
【0031】
1つまたはそれ以上の実施形態において、携帯用切断機とともに使用する付属品セットが提供されてもよい。この付属品セットは、上記のいずれかの実施形態によるストッパ装置と、長尺定規と、を備えていてもよい。
【0032】
1つまたはそれ以上の実施形態において、突条は、当該突条の突出方向に向けて開口するとともに長手方向に延在する溝を有していてもよい。突条は、長尺定規の縁部に長手方向に沿って形成されていてもよい。この構成によれば、被切断材と長尺定規との相対位置を固定するためのクランプ装置を挿入するための溝が形成された汎用の長尺定規を使用して、キックバック対策を行うことができる。
【0033】
1つまたはそれ以上の実施形態において、携帯用切断システムが提供されてもよい。この携帯用切断システムは、上記のいずれかの実施形態によるストッパ装置または付属品セットと、携帯用切断機と、を備えていてもよい。
【0034】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態についてより詳細に説明する。
【0035】
本発明の第1実施形態について以下に説明する。まず、第1実施形態によるストッパ装置100とともに使用される携帯用マルノコ(以下、単にマルノコと呼ぶ)10および長尺定規60の一例について説明する。マルノコ10および長尺定規60は、周知であるから、ここでは簡単な説明に留める。
【0036】
以下の説明では、説明の便宜上、ユーザがマルノコ10を手に持って被切断材を切断するときにマルノコ10を進行させる方向(切断が進められる方向)をマルノコ10の前側とし、その反対方向をマルノコ10の後側と定義する。また、このとき、鉛直方向上方に位置する側をマルノコ10の上側と定義し、その反対側をマルノコ10の下側と定義する。また、前後方向および上下方向に直交する方向をマルノコ10の左右方向と規定する。左右方向において、後側から前側を見たときの右側をマルノコ10の右側と定義し、その反対側をマルノコ10の左側と定義する。
【0037】
図1に示すように、マルノコ10は、被切断材の上面に当接させるためのベース20と、本体部30と、を備えている。ベース20は、略矩形の外形を有している。ベース20は前端に前端面20a、右端に右端面20b、左端に左端面20c、後端付近に後面20dを有し、4つの面によって平面視で長方形を成している。ベース20の底面には、前後方向に延在するガイド溝21が形成されている。この溝は、後述する長尺定規60の突条61が嵌合可能に構成される。また、ベース20の後端付近において、ベース20の後面20dの左側には、後方に突出する突出部20eが設けられている。突出部20eは、左端面20cと平行に形成された突出部側面20gと、前端面20aと平行に形成された突出部後面20fと、によって平面視矩形に形成されている。当該突出部20eを左右方向に貫通する貫通孔22が形成されている。この貫通孔22は、マルノコ10を直線的に前進させるためにオプション的に使用され得る平行定規(図示せず)のアーム部を挿入するために設けられている。また、ベース20上には、鉛直方向に延在する雄ネジ部(図示せず)を有するつまみネジ23が取り付けられている。つまみネジ23は、左右方向に見て、貫通孔22とオーバラップする位置に設けられている。貫通孔22に平行定規を挿入したとき、平行定規のアーム部は、つまみネジ23の下方を通って延在する。この状態で、つまみネジ23を締め付けると、つまみネジ23がアーム部を下向けて押圧し、平行定規がベース20に対して固定される。
図1では隠れているが、ベース20の前端付近にも、貫通孔22およびつまみネジ23と同等の構成が設けられている。
【0038】
本体部30は、基本的には、ベース20に対して上側に配置される。本体部30は、電動モータ31と、電動モータ31によって回転駆動される鋸刃32(
図3参照)と、を備えている。鋸刃32は円盤形状の丸鋸刃であり、チップソー(Tipped Saw Blade)と称される刃物が採用されている。鋸刃32がベース20よりも下方に突出する量(切込み深さ)は調節することができる。切込み深さを最大に調節した場合に、鋸刃32の略半分は、ベース20よりも下方に位置しており、この部分によって被切断材が切断される。
【0039】
図1に示すマルノコ10は、右利きの人に多く使われる右勝手用である。右勝手用のマルノコ10では、鋸刃32がマルノコ10の右端面20bの付近に配置され、電動モータ31は、鋸刃32に対して左側に配置される。図示は省略するが、左勝手用のマルノコでは、鋸刃32がマルノコ10の左端面20c付近に配置され、電動モータ31は、鋸刃32に対して右側に配置される。
【0040】
図2および
図3に示すように、長尺定規60は、上方から見て、長尺状の長方形の形状を有している。長尺定規60は、マルノコ10を直線的に前進させるためにオプション的に使用される。長尺定規60の使用時において、マルノコ10は、長尺定規60の長手方向が前後方向と一致し、かつ、長尺定規60の短手方向が左右方向と一致するように、長尺定規60上に載置される。
【0041】
長尺定規60は、2つの突条61,62を有している。突条61,62は、短手方向において互いに離間しており、長手方向に沿って互いに平行に延在している。突条62は、長尺定規60の短手方向の一方側の縁部に長手方向に沿って形成されている。突条61は、突条62よりも短手方向の内側に形成されている。以下では、説明の便宜上、突条61を内側突条61とも呼び、突条62を外側突条62とも呼ぶ。
【0042】
内側突条61は、マルノコ10のベース20のガイド溝21に嵌合する形状を有している。長尺定規60の使用時において、マルノコ10は、内側突条61とガイド溝21とが嵌合するように、長尺定規60上に配置される。このため、ユーザは、内側突条61に沿って、マルノコ10を直線的に前進させることができる。
【0043】
外側突条62は、その突出方向(つまり、上方)に向けて開口するとともに長手方向に延在する溝63と、短手方向における溝63の両脇に形成された上端64,65と、を備えている。上端64,65は、互いに近づくように内側に向けて突出している。換言すれば、上端64,65によって、溝63の上側の開口は狭められている。この外側突条62は、被切断材と長尺定規60との相対位置を固定するためのクランプ装置(図示せず)を溝63内に挿入するために形成されている。外側突条62は、複数の長尺定規60を長手方向に連結する際に、クランプ装置によってクランプする際にも利用可能である。なお、内側突条61も、その下側には、溝63と同様の構造を備えている。このため、ユーザは、内側突条61を利用して、クランプ装置によって、被切断材と長尺定規60との相対位置を固定することもできる。
【0044】
上述したマルノコ10と長尺定規60とを一緒に使用する場合、ストッパ装置100を使用することによって、マルノコ10にキックバックが発生したときにマルノコ10の後退を規制することができる。以下、ストッパ装置100について詳細に説明する。
【0045】
ストッパ装置100は、
図7および
図8に示す枢動部材110と、
図9および
図10に示すホルダ120と、を備えている。
図7~10における方向表示は、ストッパ装置100をマルノコ10のベース20に取り付けた状態(換言すれば、枢動部材110をベース20に連結した状態。以下、連結状態と呼ぶ)における方向を示している。以下、ストッパ装置100に関する方向について言及する場合は、特に断らない限りにおいて、連結状態でのストッパ装置100に関する方向が意図されている。
図7および
図8に示すように、枢動部材110は、本体111と連結部112と第1の押圧部113と第2の押圧部114とを備えている。本体111は、連結状態において前後方向(長尺定規60の長手方向)に交差する方向(
図7および
図8の例では、直交する方向)に延在する。本体111は、本実施形態では、金属プレートである。
【0046】
連結部112は、ベース20に連結するための構造を有する部分であり、本体111の右端側に形成されている。詳しくは後述するが、本実施形態では、連結部112は、ホルダ120を介して間接的にベース20に連結される。本実施形態では、連結部112は、円柱状の突起の形態であり、本体111から上方に向けて突出している。詳しくは後述するが、枢動部材110は、上下方向に延在する枢動軸線115を中心として枢動可能に構成されており、枢動軸線115は、連結部112の中心に位置している。
【0047】
第1の押圧部113および第2の押圧部114は、キックバックが発生したときにマルノコ10の後退を規制するために、外側突条62を押圧するための部分である。第1の押圧部113および第2の押圧部114は、本体111から鉛直方向に(より具体的には、下方へ向けて)突出している。本実施形態では、第1の押圧部113および第2の押圧部114の各々は、金属製のピンの形態であり、相対的に径が大きいヘッド部113a,114aが本体111に当接するまで、本体111に形成された貫通孔に圧入される。ただし、第1の押圧部113および第2の押圧部114は、焼結などによって、本体111と一体的に形成されていてもよい。
【0048】
図9および
図10に示すように、ホルダ120は、左右方向に長尺状に延在する略アーチ状の部材である。本実施形態では、ホルダ120は、軽量化のために、樹脂から形成されている。左右方向におけるホルダ120の略中央には、ホルダ120を上下方向に貫通する取付孔122が形成されている。取付孔122は、上方から見て円形を有している。ホルダ120の上端部分で取付孔122を取り囲む環状の上面121は、平坦に形成されている。
【0049】
ホルダ120の左端付近には第1の保持孔123が、右端付近には第2の保持孔124がそれぞれ形成されている。第1の保持孔123および第2の保持孔124の各々は、ホルダ120を上下方向に貫通している。第1の保持孔123および第2の保持孔124は、枢動部材110の連結部112を第1の保持孔123または第2の保持孔124内に選択的に挿入することによって、枢動部材110をホルダ120の左端または右端で保持するために設けられている。第1の保持孔123は、左右方向の幅が前後方向の幅よりも大きい長孔として形成されている。一方、第2の保持孔124は、上方から見て円形を有している。
【0050】
このようなストッパ装置100は、ベース20のつまみネジ23を利用して、ベース20に取り付けられる。具体的には、
図6に示すように、ホルダ120は、つまみネジ23の雄ネジ部がホルダ120の取付孔122を貫通するように配置される。このような配置は、つまみネジ23を一旦、取り外し、ベース20上にホルダ120を配置して、つまみネジ23を再度、取り付けることによって、容易に実現できる。このような状態で、つまみネジ23を締めると、つまみネジ23のつまみ部分が、ホルダ120の上面121に当接して、ホルダ120を下方に向けて押圧する。これによって、ホルダ120は、ベース20に対して固定される。
【0051】
このようにホルダ120が取り付けられた状態において、枢動部材110の連結部112は、
図6に示すように、ホルダ120の第1の保持孔123内に収容され、抜け止め状態で保持される。この状態では、枢動部材110は、連結部112の中心に位置する枢動軸線115を中心として水平方向に枢動可能である。このようにして、枢動部材110は、ホルダ120を介して間接的にベース20に連結されている。ホルダ120を介して枢動部材110をベース20に連結することによって、枢動部材110の構造を複雑にすることなく、枢動部材110をベース20に容易に連結できる。このような連結状態において、枢動部材110の本体111は、
図6に示すように、ベース20の貫通孔22を介して、ベース20の内側から外側(つまり、左側)へ延出している。このように貫通孔22を利用することによって、本体111の形状を簡素化できる。ただし、本体111は、後述するような枢動部材110の枢動動作を許容するようなクリアランスを有してベース20の左側の縁部を乗り越えるような形状を有していてもよい。
【0052】
図4~6に示すように、連結状態において、第1の押圧部113および第2の押圧部114は、長尺定規60の外側突条62の溝63内に挿入される。
図5に示すように枢動部材110が長尺定規60の長手方向に対して略垂直に延在するように配置された状態では、外側突条62の上端64と第1の押圧部113との間、および、外側突条62の上端65と第2の押圧部114との間は、第1の押圧部113および第2の押圧部114を溝63内に円滑に出し入れできる程度の僅かなクリアランスが形成される。また、連結状態では、
図6に示すように、枢動部材110の本体111の底面は、外側突条62の上端64,65上に載置される。
【0053】
図4~6に示すように、第1の押圧部113は、左右方向(換言すれば、長尺定規60の短手方向)において、第2の押圧部114よりも左側(換言すれば、長尺定規60の外側)に位置している。また、第1の押圧部113は、前後方向(換言すれば、長尺定規60の長手方向)において、第2の押圧部114よりも後側に位置している。
【0054】
このような連結状態において、
図11に矢印A1で示すように、ユーザが、切断作業を行うためにマルノコ10を長尺定規60に対して前側へ移動させると、ベース20に固定されたホルダ120も一体的に前側へ移動する。これによって、
図11に示すように、枢動部材110の連結部112が、ホルダ120の第1の保持孔123の前側内面に当接し、さらに、枢動部材110が連結部112を中心として(つまり、枢動軸線115を中心として)第2の枢動方向A2へ枢動する。第2の枢動方向A2は、ベース20に対する第1の押圧部113および第2の押圧部114の相対位置が後側へ移動する方向である。
【0055】
枢動部材110の第2の枢動方向A2への枢動によって、第1の押圧部113は外側突条62の上端64から離れる方向に移動し、第2の押圧部114は外側突条62の上端65から離れる方向に移動する。このため、第1の押圧部113は上端64を押圧せず、また、第2の押圧部114は上端65を押圧しない。更に言えば、第1の押圧部113と外側突条62の上端64とが確実に離間するとともに、第2の押圧部114と外側突条62の上端65とが確実に離間するので、マルノコ10の前方への進行に対して第1の押圧部113および第2の押圧部114が抵抗力(摩擦力)を及ぼすことがない。このため、マルノコ10の進行を円滑化できる。
【0056】
このような枢動部材110の第2の枢動方向A2への枢動は、所定の枢動角度までは許容されるが、それ以上の枢動はベース20によって規制される。具体的には、
図11に示した枢動位置に達すると、枢動部材110の本体111の後端面が、貫通孔22を形成するベース20の内面に当接し、それ以上の第2の枢動方向A2への枢動が規制される。枢動部材110が第2の枢動方向A2へ無限に枢動できる場合には、第1の押圧部113が上端65に当接するとともに第2の押圧部114が上端64に当接し、さらには、第1の押圧部113および第2の押圧部114が上端65,64をそれぞれ外側に向けて押圧する事象が生じ得るが、本実施形態によれば、そのような事象は生じない。
【0057】
一方、マルノコ10を前側に進めながら切断作業を行っている最中にキックバックが発生すると、マルノコ10は、被切断材からの反力を受けて、
図12に矢印A3で示すように、長尺定規60に対して後側へ後退する。これによって、
図12に示すように、枢動部材110の連結部112が、ホルダ120の第1の保持孔123の後側内面に当接し、さらに、枢動部材110が連結部112を中心として(つまり、枢動軸線115を中心として)第1の枢動方向A4へ枢動する。第1の枢動方向A4は、ベース20に対する第1の押圧部113および第2の押圧部114の相対位置が前側へ移動する方向である。
【0058】
枢動部材110の第1の枢動方向A4への枢動によって、第1の押圧部113は外側突条62の上端64に近づく方向に移動し、第2の押圧部114は外側突条62の上端65に近づく方向に移動する。そして、枢動部材110が第1の枢動方向A4へ所定枢動位置まで枢動されると、矢印A5で示すように、第1の押圧部113が上端64を左側に向けて押圧するとともに、矢印A6で示すように、第2の押圧部114が上端65を右側へ向けて押圧する。これによって、ホルダ120を介して枢動部材110に連結されたベース20(ひいては、マルノコ10)が、矢印A3で示す方向に更に後退することが規制される。
【0059】
本実施形態では、枢動部材110は、第1の押圧部113および第2の押圧部114が上端64および上端65をそれぞれ押圧する所定枢動位置まで枢動されても、本体111がベース20(より具体的には、貫通孔22を形成する内面)に当接しないクリアランスが、本体111とベース20との間に形成される。本実施形態では、
図8に示すように、本体111の前端面に切欠116が形成されていることによって、そのようなクリアランスが確保される。このような構成によれば、枢動部材110の所定枢動位置までの枢動が、本体111とベース20との当接に起因して阻害されることがない。したがって、第1の押圧部113および第2の押圧部114が上端64,65をより確実に押圧できる。
【0060】
上述のように使用される枢動部材110は、不使用時には、
図13に示すように、使用時と反対側で保持される。具体的には、枢動部材110の連結部112が、ホルダ120の第2の保持孔124(
図9参照)内に収容され、抜け止め状態で保持される。つまり、枢動部材110は、ホルダ120の右端から右側に延在する状態で保持される。この場合、枢動部材110は、ベース20の突出部20eの右端の突出部側面20gから右方に突出しているが、右端面20bから突出するわけでないので、マルノコ10の使用の邪魔にはならない。
【0061】
上述したストッパ装置100によれば、第1の押圧部113および第2の押圧部114は、キックバックが発生してマルノコ10が後退したときに所定枢動位置まで第1の枢動方向A4に枢動されることによって、ベース20から独立した状態で外側突条62の上端64,65をそれぞれ押圧する。したがって、ストッパ装置100がマルノコ10の更なる後退を規制したときに、第1の押圧部113および第2の押圧部114が上端64,65に噛み込みにくい。したがって、ユーザは、大きな力を必要とすることなく、規制状態を容易に解除することができる。例えば、ユーザは、マルノコ10を上方に持ち上げれば、第1の押圧部113および第2の押圧部114を外側突条62から容易に抜くことができる。あるいは、ユーザは、マルノコ10を前側に移動させれば、枢動部材110が
図12に示した所定枢動位置から、
図11に示した枢動位置まで第2の枢動方向A2に枢動するので、規制状態を容易に解除することができる。
【0062】
さらに、ストッパ装置100によれば、枢動部材110は、水平方向に枢動可能に構成される。キックバックの発生時において長尺定規60とベース20とは水平方向(より正確には、前後方向)に相対移動するので、この構成によれば、長尺定規60とベース20との相対移動の方向を枢動部材110の枢動方向に変換するための追加的な機構が必要ない。したがって、簡素な構造で、枢動部材110を枢動可能にできる。
【0063】
さらに、ストッパ装置100によれば、枢動部材110は、本体111がベース20から外側突条62まで左右方向に延在し、突条62のところで第1の押圧部113および第2の押圧部114が鉛直方向に延在する構成を有しているので、枢動部材110を簡素な形状にすることができる。しかも、上方に向けて開口している、外側突条62の溝63内に、本体111から下方に向けて延在する第1の押圧部113および第2の押圧部114が挿入されるので、枢動部材110が所定枢動位置まで枢動されたときに、第1の押圧部113および第2の押圧部114が外側突条62と係合して押圧する構成を、簡素な構造で実現できる。
【0064】
さらに、ストッパ装置100によれば、枢動部材110は、連結部112に位置する枢動軸線115を中心として枢動するように構成されている。このため、枢動部材110とベース20との連結のための構造と、枢動部材110の枢動のための構造と、を一体化させることができる。換言すれば、連結部112を枢動のための軸部として機能させることができる。したがって、ストッパ装置100の構造を簡素化できる。
【0065】
さらに、ストッパ装置100によれば、枢動部材110の本体111は、部分的に外側突条62の上端64,65上に載置されるので、マルノコ10が長尺定規60に対して前側または後側へ移動したときに、枢動部材110と上端64,65との間に作用する摩擦力によって、枢動部材110が枢動しやすくなる。
【0066】
さらに、ストッパ装置100によれば、ベース20がもともと備えているつまみネジ23を利用してツールレスで枢動部材110をベース20に連結できる。したがって、ユーザの利便性が向上する。
【0067】
さらに、ストッパ装置100によれば、第1の保持孔123が、長孔として形成されているので、連結部112は、枢動部材110の枢動に追従して左右方向には移動できるが、前後方向には大きく移動できない。このため、枢動部材110を効率的に枢動させることができる。
【0068】
本発明の第2実施形態について、第1実施形態と異なる点についてのみ以下に説明する。
図14に示すように、第2実施形態によるマルノコ210は、第1実施形態のベース20に代えて、ベース220を備えている。ベース220は、後部に突出部が形成されておらず、替わりに後端面220dが形成されている。前端面20a、右端面20b、左端面20c、と後端面220dの4面によって平面視長方形が形成されている。ストッパ装置100の不使用時に枢動部材110が保持される箇所は、ベース220の4つの平面で囲まれている領域の内側である。このため、枢動部材110を衝突から保護できる。
【0069】
本発明の第3実施形態について、
図15~17を参照して、第1実施形態と異なる点についてのみ以下に説明する。第3実施形態によるストッパ装置300は、内側突条61と外側突条62とを利用して、ストッパ機能を発揮する。具体的には、ストッパ装置300は、枢動部材310とホルダ320とを備えている。
【0070】
図15に示すように、ホルダ320は、上方から見てL字形状を有しており、左右方向に延在する第1の部分325と、前後方向に延在する第2の部分326と、を備えている。第1の部分325は、つまみネジ23を利用してホルダ320をベース20に取り付けるために、第1実施形態のホルダ120と同様の構成を有している。第2の部分326は、
図17に示すように、ベース20の内側から後側に向けてベース20の後側の縁部を乗り越えており、その先で、上下に枝分かれした形状を有している。この上下に枝分かれした部分には、保持孔323が形成されている。保持孔323は、第2の部分326を上下方向に貫通している。
【0071】
枢動部材310は、
図16に示すように、本体311と連結部312と第1の押圧部313と第2の押圧部314とを備えている。本体311は、第1実施形態の本体111と類似の板状部材であり、左右方向に延在している。連結部312は、円柱状の突起の形態であり、本体311の右端付近で本体311から上方に向けて突出している。第1の押圧部313および第2の押圧部314は、連結部312よりも左側で、本体311から上下に延在している。
図15に示すように、第1の押圧部313は、第1実施形態と同様に、前後方向において、第2の押圧部314よりも後側に位置している。
【0072】
図15および
図16に示すように、枢動部材310の連結部312は、ホルダ320の保持孔323内に収容され、本体311のうちの連結部312の周囲の部分は、ホルダ320の第2の部分326の枝分かれした部分の間に挟持されている。この構成によって、枢動部材310は、第1実施形態と同様に、連結部312を中心として水平方向に枢動可能となっている。
【0073】
図15および
図16に示すように、連結状態において、第1の押圧部313および第2の押圧部314は、内側突条61と外側突条62との間に形成された凹部内に挿入される。
【0074】
このようなストッパ装置300において、
図15に矢印A1で示すように、ユーザがマルノコ10を長尺定規60に対して前側へ移動させると、第1実施形態と同様に、枢動部材310が第2の枢動方向A2(
図15参照)に枢動する。このとき、第1の押圧部313および第2の押圧部314は、内側突条61および外側突条62を押圧しない。一方、キックバックが発生すると、マルノコ10は、
図15に矢印A3で示すように、長尺定規60に対して後側へ後退する。これによって、枢動部材310が第1の枢動方向A4(
図15参照)に枢動する。その結果、第1の押圧部313は、
図15および
図16に矢印A5で示すように、外側突条62に当接して左側に押圧し、第2の押圧部314は、
図15および
図16に矢印A6で示すように、内側突条61に当接して右側に押圧する。したがって、第1実施形態と同様に、ホルダ320を介して枢動部材310に連結されたベース20(ひいては、マルノコ10)が、矢印A3で示す方向に更に後退することが規制される。
【0075】
本発明の第4実施形態について、
図18~21を参照して、第3実施形態と異なる点についてのみ以下に説明する。第4実施形態によるストッパ装置は、内側突条61を利用して、ストッパ機能を発揮する。具体的には、第4実施形態によるストッパ装置は、枢動部材410と、第3実施形態のホルダ320と、を備えている。なお、
図18~21では、マルノコ10およびホルダ320の図示を省略し、枢動部材410と長尺定規60との位置関係のみを示している。
【0076】
図18および
図19に示すように、枢動部材410は、本体411と連結部412と第1の押圧部413と第2の押圧部414とを備えている。本体411および連結部412は、第3実施形態の本体311および連結部312と同一の形状を有している。枢動部材410は、第1の押圧部413および第2の押圧部414の配置が第3実施形態と異なっている。具体的には、
図18に示すように、前後方向において、外側(左側)の第1の押圧部413は、第2の押圧部414よりも前側に位置している。つまり、連結状態において、第1の押圧部413および第2の押圧部414の前後方向の相対位置関係は、第3実施形態とは逆になっている。第1の押圧部413および第2の押圧部414は、第3実施形態と同様に、本体411から上下に延在している。
図18および
図19に示すように、連結状態において、枢動部材410は、第1の押圧部413と第2の押圧部414との間に内側突条61が位置するように配置される。
【0077】
本実施形態では、キックバックが発生すると、マルノコ10は、
図18に矢印A3で示すように、長尺定規60に対して後側へ後退する。これによって、枢動部材410が第1の枢動方向A4(
図18参照)に枢動する。その結果、第1の押圧部413は、
図18および
図19に矢印A5で示すように、内側突条61の左側面に当接して右側に押圧し、第2の押圧部414は、
図18および
図19に矢印A6で示すように、内側突条61の右側面に当接して左側に押圧する。したがって、第3実施形態と同様に、ホルダ320を介して枢動部材410に連結されたベース20(ひいては、マルノコ10)が、矢印A3で示す方向に更に後退することが規制される。つまり、第4実施形態では、第1の押圧部413および第2の押圧部414が内側突条61を左右方向の両側から挟み込むことで、マルノコ10の更なる後退が規制される。
【0078】
この枢動部材410は、第1の押圧部413および第2の押圧部414が本体411から上下に延在していることから、
図18および
図19に示した状態から裏返しても使用することができる。具体的には、上述した実施形態は、全て右勝手用のマルノコ10を使用することを前提として説明してきたが、枢動部材410は、裏表を反対にすることによって、左勝手用のマルノコ10を使用する場合に使用することもできる。左勝手用のマルノコ10を使用する場合には、左右方向における電動モータ31と鋸刃32との位置関係が右勝手用のマルノコ10と反対になり、長尺定規60に対するマルノコ10の切断時の進行方向、および、キックバックの方向も逆になる。しかしながら、枢動部材410を
図18および
図19に示した状態から裏返して使用すると、第1の押圧部413および第2の押圧部414の前後方向の相対位置関係も逆になるので、
図20および
図21に示すとおり、
図18および
図19と同様の作用が生じる。
【0079】
このように、枢動部材410は、右勝手用のマルノコ10、および、左勝手用のマルノコ10のいずれに対しても使用することができるので、汎用性が向上する。なお、枢動部材410を保持するホルダ320の第2の部分326の上下に枝分かれした部分は、その上側部分および下側部分の両方に保持孔323を有している(
図17参照)。このため、枢動部材410を裏表のどちらで使用しても、枢動部材410の連結部412を保持孔323内に収容できる。また、説明は省略したが、第3実施形態による枢動部材310についても、枢動部材410と同様に、裏返して使用することができる。
【0080】
本発明の第5実施形態について、
図22を参照して、第1実施形態と異なる点についてのみ以下に説明する。第5実施形態によるストッパ装置は、第1実施形態の枢動部材110に代えて、枢動部材510を備えている。枢動部材510は、2つの突起として形成された第1の押圧部113および第2の押圧部114に代えて、1つの突起として形成された押圧部516を備えている。このような構成であっても、この押圧部516の左端516aは、第1の押圧部113と同様の機能を発揮し、この押圧部516の右端516bは、第2の押圧部114と同様の機能を発揮することになる。つまり、第1の押圧部および第2の押圧部は、互いに離間した2つの構成要素に限られず、単一の構成要素のうちの2つの部分であってもよい。
【0081】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、上述した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれる。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各要素の任意の組み合わせ、または、任意の省略が可能である。
【0082】
例えば、枢動部材410は、キックバック発生時に、第1の押圧部413および第2の押圧部414が外側突条62を左右方向の両側から挟み込むように構成されてもよい。
【0083】
さらに、ベース20がガイド溝21を有していない場合には、ベース20には、ガイド溝21と同等の構成を有する長尺定規アダプタが取り付けられることがある。この場合、枢動部材は、ベースに代えて、長尺定規アダプタに連結されてもよい。
【0084】
さらに、枢動部材の連結部は、ホルダが有する突起を挿入可能な保持孔の形態であってもよい。さらに、枢動部材は、ホルダを介さずに、直接的にベースに連結されてもよい。例えば、枢動部材の連結部は、つまみネジ23の雄ネジ部を挿入可能な貫通孔の形態であってもよい。
【0085】
さらに、枢動部材は、マルノコ10が切断のために前側へ移動されたときに第2の枢動方向A2に枢動しなくてもよい。そのような構成は、枢動部材とベース20とのクリアランスを調節することによって実現可能である。
【0086】
さらに、第1の押圧部および第2の押圧部は、枢動部材のプレート状の本体から延在する突起の形態に限られない。例えば、板状部材の湾曲によって、第1の押圧部および第2の押圧部が形成されてもよい。
【0087】
さらに、枢動部材は、水平方向以外の方向に枢動するように構成されてもよい。例えば、枢動部材は、左右方向に延在する枢動軸線を中心として枢動可能に構成されてもよい。この場合、ベースと長尺定規との前後方向の相対移動を枢動部材の枢動方向に変換する変換機構が設けられてもよい。また、左右方向に延在する第1の押圧部および第2の押圧部が、外側突条62の溝63内に挿入され、キックバックが発生した際に、第1の押圧部および第2の押圧部が、溝63の底面と、上端64または上端65と、をそれぞれ押圧してもよい。
【0088】
さらに、上述した種々の形態は、マルノコに限らず、長尺定規とともに使用される任意の携帯用加工機(例えば、カッタ)であってもよい。
【0089】
上記実施形態の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係を以下に示す。但し、実施形態の各構成要素は単なる一例であって、本発明の各構成要素を限定するものではない。
マルノコ10は、「携帯用切断機」の一例である。ベース20,220は「ベース」の一例である。長尺定規60は、「長尺定規」の一例である。内側突条61および外側突条62は、「突条」の一例である。枢動部材110,310,410,510は、「枢動部材」の一例である。連結部112,312,412は、「連結部」の一例である。第1の押圧部113,313,413は「第1の押圧部」の一例である。第2の押圧部114,314,414は、「第2の押圧部」の一例である。後側は「第1の側」の一例である。前側は、「第2の側」の一例である。第1の枢動方向A4は、「第1の枢動方向」の一例である。第2の枢動方向A2は、「第2の枢動方向」の一例である。貫通孔22は、「貫通孔」の一例である。枢動軸線115は、「枢動軸線」の一例である。第1の保持孔123,323は、「第1の保持部」の一例である。第2の保持孔124は、「第2の保持部」の一例である。ホルダ120,320は、「ホルダ」の一例である。取付孔122は、「取付部」の一例である。つまみネジ23は、「つまみネジ」の一例である。溝63は、「溝」の一例である。
【符号の説明】
【0090】
10,210…携帯用マルノコ
20,220…ベース
20a…前端面
20b…右端面
20c…左端面
20d…後面
20e…突出部
20f…突出部後面
20g…突出部側面
220d…後端面
21…ガイド溝
22…貫通孔
23…つまみネジ
30…本体部
31…電動モータ
32…鋸刃
60…長尺定規
61,62…突条
63…溝
64,65…上端
100,300…ストッパ装置
110,310,410,510…枢動部材
111,311,411…本体
112,312,412…連結部
113,313,413…第1の押圧部
113a,114a…ヘッド部
114,314,414…第2の押圧部
115…枢動軸線
116…切欠
120,320…ホルダ
121…上面
122…取付孔
123…第1の保持孔
124…第2の保持孔
323…保持孔
325…第1の部分
326…第2の部分
516…押圧部
516a…左端
516b…右端
A2…第2の枢動方向
A4…第1の枢動方向