(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】配線基板
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20241010BHJP
H05K 3/38 20060101ALI20241010BHJP
C23C 18/38 20060101ALI20241010BHJP
C23C 18/32 20060101ALN20241010BHJP
【FI】
H05K3/46 N
H05K3/46 B
H05K3/38 B
C23C18/38
C23C18/32
(21)【出願番号】P 2021070663
(22)【出願日】2021-04-19
【審査請求日】2024-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 大介
【審査官】沼生 泰伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-029697(JP,A)
【文献】国際公開第2017/094470(WO,A1)
【文献】特開2014-067941(JP,A)
【文献】特開2009-277905(JP,A)
【文献】特開2015-015285(JP,A)
【文献】特開2010-67887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
H05K 3/10- 3/26
H05K 3/38
H05K 1/11
H05K 3/40- 3/42
C23C 18/00-20/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア基板と、
前記コア基板上に積層され、交互に積層されている絶縁層および導体層、ならびに前記絶縁層を貫通する接続導体を含む積層体と
を含む配線基板であって、
前記積層体は、前記接続導体と前記導体層に含まれる導体パッドとが交互に積層されて構成されるスタックビア導体を含み、
前記スタックビア導体が、
粗化されている表面を有する少なくとも一つの第1導体パッドと、
前記絶縁層と前記導体層との密着性を向上させる被覆膜に覆われていて粗化されている表面を有する少なくとも一つの第2導体パッドと
を含み、
前記第1導体パッドが、前記第2導体パッドよりも前記コア基板側に積層されている。
【請求項2】
請求項1記載の配線基板であって、
前記積層体が、
前記第1導体パッドを含む第1導体層と、前記第1導体層を覆う第2絶縁層と、
前記第2導体パッドを含む第2導体層と、前記第2導体層を覆う第3絶縁層と、
を含み、
前記第1導体パッドの前記粗化されている表面は、第1面粗度を有しており、かつ、前記第2絶縁層と前記被覆膜を介さずに直接接するように向かい合っている。
【請求項3】
請求項2記載の配線基板であって、前記被覆膜は、前記第2導体パッドと前記第3絶縁層との間に介在している。
【請求項4】
請求項3記載の配線基板であって、前記第2導体パッドにおける前記第3絶縁層と向かい合う前記表面は、前記第1面粗度と略等しい面粗度を有するように粗化されている。
【請求項5】
請求項3記載の配線基板であって、前記第3絶縁層は、前記第3絶縁層および前記被覆膜を貫通して前記第2導体パッドに接する前記接続導体を含んでいる。
【請求項6】
請求項2記載の配線基板であって、
前記第1導体層は、前記第2絶縁層に覆われている第1配線パターンをさらに含み、
前記第1配線パターンにおける前記第2絶縁層と向かい合う表面は、前記第1面粗度と略等しい面粗度を有するように粗化されており、かつ、前記被覆膜を介さずに前記第2絶縁層と直接接している。
【請求項7】
請求項4記載の配線基板であって、
前記第2導体層は、前記第3絶縁層に覆われている第2配線パターンをさらに含み、
前記第2配線パターンと前記第3絶縁層との間に前記被覆膜が介在している。
【請求項8】
請求項7記載の配線基板であって、前記第2配線パターンにおける前記第3絶縁層と向かい合う表面は、前記第1面粗度よりも低い第2面粗度を有している。
【請求項9】
請求項8記載の配線基板であって、前記第1導体パッドにおける前記接続導体に覆われている表面および前記第2導体パッドにおける前記接続導体に覆われている表面は、前記第1面粗度よりも低くかつ前記第2面粗度よりも高い第3面粗度を有している。
【請求項10】
請求項1記載の配線基板であって、前記接続導体を構成する金属と前記接続導体の底面に対向している前記導体パッドを構成する金属とが、前記接続導体と前記導体パッドとの界面において被覆膜を介さずに直接接している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、プリント配線板に関し、低粗化または無粗化の金属配線層の表面に化成皮膜が形成され、この化成皮膜を介して金属配線層上に絶縁樹脂層が形成されることが、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の方法では、金属配線層の表面上に形成された化成皮膜が、後工程における各種の処理によって溶解することがある。そのため、特許文献1の方法で製造されたプリント配線板に化成皮膜の溶解液による意図せぬ不具合がもたらされ、プリント配線板の品質劣化を招くことがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の配線基板は、コア基板と、前記コア基板上に積層され、交互に積層されている絶縁層および導体層、ならびに前記絶縁層を貫通する接続導体を含む積層体と、を備えている。そして、前記積層体は、前記接続導体と前記導体層に含まれる導体パッドとが交互に積層されて構成されるスタックビア導体を含み、前記スタックビア導体が、粗化されている表面を有する少なくとも一つの第1導体パッドと、前記絶縁層と前記導体層との密着性を向上させる被覆膜に覆われていて粗化されている表面を有する少なくとも一つの第2導体パッドとを含み、前記第1導体パッドが、前記第2導体パッドよりも前記コア基板側に積層されている。
【0006】
本発明の実施形態によれば、導体層同士を接続する接続導体と接続導体に接する導体パッドとの剥離などの不具合が生じ難いと考えられる、高い品質の配線基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態の配線基板の一例を示す断面図。
【
図3A】本発明の一実施形態の配線基板の他の例を示す断面図。
【
図3B】本発明の一実施形態の配線基板のさらに他の例を示す断面図。
【
図3C】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
【
図3D】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
【
図3E】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
【
図3F】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
【
図3G】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
【
図3H】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
【
図3I】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
【
図3J】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
【
図3K】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態の配線基板が図面を参照しながら説明される。
図1は一実施形態の配線基板の一例である配線基板100を示す断面図である。なお、配線基板100は本実施形態の配線基板の一例に過ぎない。実施形態の配線基板の積層構造、ならびに、導体層および絶縁層それぞれの数は、
図1の配線基板100の積層構造、ならびに配線基板100に含まれる導体層および絶縁層それぞれの数に限定されない。
【0009】
図1に示されるように、配線基板100は、コア基板3と、コア基板3におけるその厚さ方向において対向する2つの主面(第1面3aおよび第2面3b)それぞれの上に交互に積層されている絶縁層および導体層を含む積層体を含んでいる。コア基板3は、絶縁層32と、絶縁層32の両面それぞれの上に形成されている導体層31とを含んでいる。
【0010】
なお、実施形態の説明では、配線基板100の厚さ方向において絶縁層32から遠い側は「上側」、「上方」、もしくは「外側」、または単に「上」もしくは「外」とも称され、絶縁層32に近い側は「下側」、「下方」、もしくは「内側」、または単に「下」もしくは「内」とも称される。さらに、各導体層および各絶縁層において、絶縁層32と反対側を向く表面は「上面」とも称され、絶縁層32側を向く表面は「下面」とも称される。
【0011】
配線基板100は、コア基板3の第1面3aの上に、第1面3a側から順に積層されている、第1絶縁層21、第1導体層11、第2絶縁層22、第2導体層12、第3絶縁層23、第3導体層13、第4絶縁層24、および第4導体層14を備えている。第1絶縁層21はコア基板3の第1面3aを覆っており、第2絶縁層22は、第1導体層11、および、第1導体層11に覆われずに露出する第1絶縁層21を覆っている。配線基板100は、さらに、コア基板3の第2面3bの上に交互に積層されている4つの絶縁層25および4つの導体層15を備えている。
【0012】
各絶縁層には、各絶縁層を貫通し、各絶縁層を介して隣接する導体層同士を接続する接続導体が形成されている。第1絶縁層21、第2絶縁層22、第3絶縁層23、第4絶縁層24、および4つの絶縁層25は、それぞれ、接続導体4を含んでいる。コア基板3の絶縁層32は接続導体33を含んでいる。接続導体33は、コア基板3の両面それぞれの導体層31同士を接続する、所謂スルーホール導体である。
【0013】
接続導体4は、順次ビルドアップされる各絶縁層内に形成される所謂ビア導体である。第1絶縁層21に含まれる接続導体4は、導体層31と第1導体層11とを接続している。第2絶縁層22に含まれる接続導体4は、第1導体層11と第2導体層12とを接続している。第3絶縁層23に含まれる接続導体4は、第2導体層12と第3導体層13とを、および、第4絶縁層24に含まれる接続導体4は、第3導体層13と第4導体層14とを接続している。4つの絶縁層25それぞれに含まれる接続導体4は、導体層31と導体層15とを接続するか、導体層15同士を接続している。
【0014】
第1~第4の絶縁層21、22、23、24、絶縁層25、および絶縁層32は、任意の絶縁性樹脂によって形成される。絶縁性樹脂としては、エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)またはフェノール樹脂などが例示される。
図1の例では、絶縁層32は、ガラス繊維やアラミド繊維などで形成される芯材(補強材)32aを含んでいる。
図1には示されていないが、絶縁層32以外の各絶縁層も、ガラス繊維などからなる芯材を含み得る。各絶縁層は、さらに、シリカ(SiO
2)、アルミナ、またはムライトなどの微粒子からなる無機フィラー(図示せず)を含み得る。
【0015】
第1~第4の導体層11、12、13、14、導体層15、および導体層31、ならびに、接続導体4および接続導体33は、銅またはニッケルなどの任意の金属を用いて形成される。
図1の例において、導体層31は、金属箔31a、金属膜31b、およびめっき膜31cを含んでいる。接続導体33は導体層31と一体的に形成されており、金属膜31bおよびめっき膜31cによって構成されている。
【0016】
一方、第1~第4の導体層11、12、13、14、および導体層15、ならびに接続導体4は、それぞれ、金属膜10bおよびめっき膜10cによって構成されている。各接続導体4は、第1~第4の導体層11、12、13、14、または導体層15と一体的に形成されている。めっき膜31c、10cは、例えば電解めっき膜である。金属膜31bおよび金属膜10bは、例えば無電解めっき膜またはスパッタリング膜であり、それぞれ、めっき膜31cおよびめっき膜10cが電解めっきで形成される際の給電層として機能する。
【0017】
第4絶縁層24および第4導体層14の上には、ソルダーレジスト6が形成されている。コア基板3の第2面3b側の表層の絶縁層25および導体層15の上にもソルダーレジスト6が形成されている。ソルダーレジスト6には、第4導体層14または導体層15の一部を露出させる開口6aが設けられている。ソルダーレジスト6は、例えば、感光性のエポキシ樹脂またはポリイミド樹脂などで形成される。
【0018】
第1~第4の導体層11、12、13、14、4つの導体層15、および2つの導体層31は、それぞれ、所定の導体パターンを含んでいる。第1導体層11は、第1導体パッド11aと、第1配線パターン11bと、を含んでいる。第2導体層12は、第2導体パッド12aと、第2配線パターン12bと、を含んでいる。
【0019】
第1導体パッド11aは、第2絶縁層22を貫通する接続導体4と接している。すなわち、第1導体パッド11aは、その上に接続導体4が形成される導体パッドであり、第2絶縁層22を貫通する接続導体4に対する、所謂受けパッドである。そのため、第1導体パッド11aの第2絶縁層22側の表面の一部は、第2絶縁層22を貫通する接続導体4に覆われている。換言すると、第1導体パッド11aの第2絶縁層22側の表面の一部は、第2絶縁層22を貫通する接続導体4の底面に対向している。そして、第2導体パッド12aは、第3絶縁層23を貫通する接続導体4に対する受けパッドであり、第2導体パッド12aの第3絶縁層23側の表面の一部は、第3絶縁層23を貫通する接続導体4の底面に対向している。
【0020】
図1の例では、第1絶縁層21を貫通する接続導体4と、第2絶縁層22を貫通する接続導体4と、第3絶縁層23を貫通する接続導体4と、第4絶縁層24を貫通する接続導体4とが積み重なるように形成されており、所謂スタックビア導体が形成されている。従って第1導体パッド11aは、第1絶縁層21を貫通する接続導体4(ビア導体)の所謂ビアパッドとして設けられている。そして、第2導体パッド12aは、第2絶縁層22を貫通する接続導体4(ビア導体)のビアパッドとして設けられている。
【0021】
第1配線パターン11bおよび第2配線パターン12bは、任意の電気信号の伝送や電力の供給に用いられる導電路として機能する導体パターンである。第1配線パターン11bは、第1絶縁層21を向く表面以外の表面を第2絶縁層22に覆われている。第2配線パターン12bは、第2絶縁層22を向く表面以外の表面を第3絶縁層23に覆われている。第1配線パターン11bおよび第2配線パターン12bは、例えば数GHzを超えるような高周波信号の伝送路であってもよいが、これに限定される訳ではない。
【0022】
図2には、
図1のII部の拡大図が示されている。これまで参照された
図1では省略されているが、
図2に示されるように、第2導体層12における第3絶縁層23と向かい合う表面に被覆膜5が形成されている。すなわち、配線基板100は、さらに、第2導体層12と第3絶縁層23との間に介在する被覆膜5を備えている。なお「第2導体層12における第3絶縁層23と向かい合う表面」は、第2導体層12の表面のうちの第3絶縁層23と向かい合っている領域を意味している。同様に、後述する第2導体パッド12aおよび第2配線パターン12bそれぞれにおける「第3絶縁層23と向かい合う表面」は、第2導体パッド12aおよび第2配線パターン12bの表面それぞれのうちの第3絶縁層23と向かい合っている領域を意味している。
【0023】
図2に示される例では、第2導体層12における第3絶縁層23と向かい合う表面の全部に被覆膜5が形成されている。しかし、被覆膜5は、第2導体層12における第3絶縁層23と向かい合う表面の一部だけに形成されていてもよい。被覆膜5は、第2導体パッド12aにおける第3絶縁層23と向かい合う表面の少なくとも一部に形成されていればよい。なお、「第2導体層12における第3絶縁層23と向かい合う表面」には、第2導体パッド12aの表面のうちで第3絶縁層23を貫通する接続導体4に覆われている部分は含まれない。
【0024】
被覆膜5は、第2導体層12と第3絶縁層23との密着性を向上させる。被覆膜5は、例えば、第3絶縁層23を構成する樹脂などの有機材料、および第2導体層12を構成する金属などの無機材料の両方と結合し得る材料によって形成される。被覆膜5は、例えば、有機材料と化学結合し得る反応基および無機材料と化学結合し得る反応基の両方を含む材料によって形成される。そのため、被覆膜5に覆われている第2導体層12の各導体パターンと第3絶縁層23とが十分な強度で密着する。被覆膜5の材料としては、トリアゾール化合物などのアゾールシラン化合物を含むシランカップリング剤が例示される。なお、被覆膜5の材料は、第2導体層12の上に第3絶縁層23が直接形成される場合と比べて、第2導体層12と第3絶縁層23との密着強度を高め得るものであればよく、シランカップリング剤に限定されない。
【0025】
図2に示されるように、本実施形態では、第2導体層12の第2配線パターン12bにおける第3絶縁層23と向かい合う表面121は、被覆膜5に覆われている。すなわち、被覆膜5がない場合と比べて第2配線パターン12bと第3絶縁層23との密着性が高められている。従って、第2配線パターン12bからの第3絶縁層23の浮きや剥離が生じ難いと考えられる。
【0026】
本実施形態では、第2導体パッド12aにおける第3絶縁層23と向かい合う表面120は、被覆膜5に覆われている。すなわち、被覆膜5がない場合と比べて第2導体パッド12aと第3絶縁層23との密着性も高められている。従って、第2導体パッド12aからの第3絶縁層23の浮きや剥離が生じ難いと考えられる。
【0027】
先に参照された
図1では省略されているが、
図2に示されるように、第2導体層12の各導体パターン(第2導体パッド12a、第2配線パターン12bなど)は、第2絶縁層22と接していない表面に、互いに程度の異なる凹凸を有している。換言すると、第2導体層12は、第3絶縁層23と向かい合う表面(表面120および表面121)および接続導体4に覆われる表面124において互いに面粗度の異なる複数の領域を有している。
図2の例において表面120および表面121の凹凸の凹部は、被覆膜5で充填されている。
【0028】
図2に示される第2導体層12では、第2導体パッド12aにおける第3絶縁層23と向かい合う表面120上の凹凸の高低差は、第2配線パターン12bにおける第3絶縁層23と向かい合う表面121上の凹凸の高低差よりも大きい。第2導体パッド12aの表面120は、第2配線パターン12bの表面121が有する面粗度(第2面粗度)よりも高い面粗度(第1面粗度)を有している。第2導体パッド12aの表面120は、第2面粗度よりも高い第1面粗度を有するように粗化されている。後述されるように第2導体パッド12aの表面120は、例えばマイクロエッチングなどによって粗化されている。
【0029】
一方、第2配線パターン12bの表面121は、表面121の粗化のために積極的に設けられた工程で粗化されていなくてもよい。表面121の凹凸は、めっき膜10cの粒界やめっき膜10cの形成時のめっきレジストの表面の凹凸によって生じていてもよい。
【0030】
本実施形態の配線基板100では、第2導体パッド12aの表面120は、比較的高い面粗度(第1面粗度)を有するように粗化されている。そのため、第2導体パッド12aと第3絶縁層23との剥離が抑制されることがある。具体的には、第2導体パッド12aと第3絶縁層23との界面への意図せぬ液体の浸入が、比較的高い第1面粗度を有する第2導体パッド12aの表面120の凹凸によって防がれる。その結果、そのような液体の浸入によって引き起こされ得る第2導体パッド12aと第3絶縁層23との剥離が抑制されることがある。
【0031】
詳述すると、配線基板100の製造工程では、接続導体4の形成のために第3絶縁層23に設けられた貫通孔4aの内壁が、各種の処理溶液やめっき液になどに晒されることがある。そしてそれらの液体が、貫通孔4aの内壁から第2導体パッド12aと第3絶縁層23との界面に侵入し、第2導体パッド12aと第3絶縁層23との剥離を引き起こすことがある。しかし、本実施形態では、そのような剥離を引き起こし得る意図せぬ液体の浸入が、比較的高い第1面粗度を有する第2導体パッド12aの表面120の凹凸によって防がれる。
【0032】
図2に示されている例では、第2配線パターン12bの表面121は、第2導体パッド12aの表面120が有する第1面粗度よりも低い面粗度(第2面粗度)を有している。例えば配線パターンが、高度に粗化された表面を有する場合、高周波信号の伝送において、表皮効果の影響を受けて実質的なインピーダンスが増加して伝送特性が低下することが考えられる。また、例えば10μm/10μm(配線幅/配線間隔)程度以下のファインな配線パターンでは、その表面が高度に粗化されると、設計上の配線幅や厚さに対して粗化後に所望の形状が得られないことがある。本実施形態のように、第2配線パターン12bの表面121が、比較的低い面粗度、少なくとも第1面粗度よりも低い第2面粗度を有していると、高い面粗度に起因する高周波伝送特性の低下などの問題が生じ難いと考えられる。
【0033】
図2に示されている例では、第2配線パターン12bの表面121も、第2配線パターン12bと第3絶縁層23との密着性を向上させる被覆膜5に覆われている。一般に、比較的低い面粗度の表面を有する導体層とその表面上に形成される絶縁層との間には、所謂アンカー効果の作用が十分に得られず、その結果、導体層と絶縁層との剥離が生じることがある。しかし本実施形態の第2配線パターン12bの表面121は被覆膜5に覆われているので、第2配線パターン12bと第3絶縁層23との間の剥離が生じ難いと考えらえられる。
【0034】
さらに本実施形態では、第2導体パッド12aの表面120上に形成された被覆膜5の溶解による品質の劣化が、第2導体パッド12aの表面120の凹凸によって防がれることがある。前述したように、配線基板100の製造工程では、第3絶縁層23に設けられた貫通孔4aの内壁は各種の液体に晒され得る。その液体が第2導体パッド12aと第3絶縁層23との界面に浸入すると、浸入した液体が第2導体パッド12aの表面120上に形成されている被覆膜5を溶解させることがある。その場合、被覆膜5が貫通孔4a内に溶出して接続導体4と第2導体パッド12aとの接続不良を引き起こしたり、被覆膜5の溶解箇所において第2導体パッド12aと第3絶縁層23との剥離が発生したりすることがある。しかし本実施形態では、そのような被覆膜5の溶解をもたらし得る意図せぬ液体の浸入が、比較的高い第1面粗度を有する第2導体パッド12aの表面120の凹凸によって防がれる。
【0035】
図2に示されるように、本実施形態では、第2導体層12より内層に積層されている第1導体層11における第2絶縁層22と向かい合う表面には被覆膜5が形成されていない。ここで、「第1導体層11における第2絶縁層22と向かい合う表面」は、第1導体層11の表面のうちの第2絶縁層22と向かい合っている領域を意味している。すなわち、第1導体層11に含まれる第1導体パッド11aおよび第1配線パターン11bそれぞれにおける第2絶縁層22と向かい合う表面は、被覆膜5に覆われていない。ただし、第1導体層11における第2絶縁層22と向かい合う表面の一部に被覆膜5が形成されていてもよい。例えば、第1導体層11は、被覆膜5に覆われていない第1配線パターン11bに加えて、第2絶縁層22と向かい合う表面が被覆膜5に覆われている任意の導体パターンを含んでいてもよい。
【0036】
換言すると、
図2に示される例では、第1導体パッド11aの表面110と第2絶縁層22とが被覆膜5を介さずに直接接している。また、第1配線パターン11bの表面111と第2絶縁層22とが被覆膜5を介さずに直接接している。一方、第1導体パッド11aの表面110および第1配線パターン11bの表面111のいずれも、第2導体層12に含まれる第2導体パッド12aの表面120が有する面粗度(第1面粗度)と略同等な面粗度を有している。すなわち、第1導体層11においては、第1導体パッド11aの表面110および第1配線パターン11bの表面111が例えばマイクロエッチングなどによって粗化されている。
【0037】
スタックビア導体が形成されている配線基板においては、熱応力などによって、スタックビア導体へのストレスが生じたり、スタックビア導体の歪みが発生することがある。これらのストレスはビア底部に集中し、スタックビア導体のビア接続部においてクラックが発生したり、クラックにより絶縁層との界面において剥離が引き起こされる虞がある。しかし、本実施形態では、より応力が集中しがちな内層の第1導体層11が高い面粗度を有するように形成されているため、第1導体パッド11aと第2絶縁層22とのあいだにおいて、剥離の発生が抑制され得る十分なアンカー効果が得られると考えられる。同様に、第1配線パターン11bと第2絶縁層22とのあいだにおいても十分なアンカー効果が得られ得る。第1面粗度をもつ表面によりもたらされるアンカー効果は、被覆膜5によって提供され得る向上された導体層と絶縁層とのあいだの密着性より大きいと考えられる。クラックや界面剥離が生じ難い信頼性の高い配線基板100が提供され得る。
【0038】
配線基板100が、
図1に示されるように、コア基板3などのコア基板を有している場合、コア基板3に近い内層側の絶縁層や導体層では、コア基板3から遠い外層側と比べて、変位や変形に関してより低い自由度を有すると考えられる。このため、内層側において応力が緩和され難く、かつ、外層側からのストレスも加わり易いと考えられる。しかし、コア基板3の導体層31と、絶縁層21を貫通する接続導体4との界面では、コア基板3自体の剛性が高いため、界面剥離やクラックなどの実質的な不具合が生じ難いと推察される。そのため、スタックビア導体を構成している複数の接続導体4のうち、絶縁層21を貫通する接続導体4に次いで2番目にコア基板3に近接する、絶縁層22を貫通する接続導体4において、集中する応力による実質的な不具合が最も生じ易いことがある。したがって、
図1の配線基板100のように、2番目にコア基板3に近接する、絶縁層22を貫通する接続導体4が第1導体パッド11aに接続されていることが好ましいことがある。第1導体パッド11aの表面110は前述したように、高い面粗度を有し、第2絶縁層22とのあいだでアンカー効果の作用が十分に得られているため、接続導体4と接続導体4が接続される第1導体層11との間の界面剥離や、界面付近でのクラックが良好に防止されると考えられる。
【0039】
このように、配線基板100では、スタックビア導体の接続導体4と接する第1導体パッド11aと第2絶縁層22との剥離、および、第2導体パッド12aと第3絶縁層23との剥離などによる品質劣化が抑制され得、しかも、第2配線パターン12bにおいて良好な伝送特性および第3絶縁層23との十分な密着性が得られると考えられる。
【0040】
例えば、第1導体パッド11aの表面110、第2導体パッド12aの表面120、および第1配線パターン11bの表面111が有する面粗度(第1面粗度)は、例えば、算術平均粗さ(Ra)で0.3μm以上、0.6μm以下であってよい。この程度の面粗度であれば、第1導体パッド11aと第2絶縁層22とのあいだにおける剥離の発生を抑制することのできる良好なアンカー効果が得られ得る。
【0041】
図2に示されるように、第2導体パッド12aの表面120を覆う被覆膜5における第3絶縁層23と向かい合う表面は、表面120の凹凸に基づく起伏を有している。第2導体パッド12aの表面120が上述の程度の面粗度を有している場合、被覆膜5と第3絶縁層23との接触面積が、被覆膜5の表面が平坦な場合と比べて増大し、被覆膜5による密着性向上作用に加えて、接触面積の増大による密着性向上作用が得られることがある。
【0042】
例えば、第1導体パッド11aの表面110、第2導体パッド12aの表面120、および第1配線パターン11bの表面111の第1面粗度は、第2配線パターン12bの表面121の面粗度(第2面粗度)よりも100%以上高い。例えば、第1面粗度は、第2面粗度の200%以上、1200%以下であり得る。第2導体パッド12aと第3絶縁層23との界面への液体の浸入を略確実に防ぎながら、必要に応じて、第2配線パターン12bにおいて数GHzオーダーの高周波信号に対する良好な伝送特性も得られると考えられる。第2配線パターン12bの表面121の面粗度が小さいため、第2配線パターン12bの表面121において得られるアンカー効果は小さいと推察されるが、第2配線パターン12bの表面121は、前述したように被覆膜5に覆われている。被覆膜5によって密着性を高められている第2配線パターン12bと第3絶縁層23との間の界面剥離は生じ難いと考えられる。
【0043】
図2に示されているように、第2導体パッド12aにおける接続導体4に覆われている表面124と接続導体4との間には被覆膜5は介在していない。すなわち、第2導体パッド12aと接続導体4とは直接、接している。例えばシランカップリング剤のような有機材料を介さずに、第2導体パッド12aを構成する銅などの金属と接続導体4を構成する銅などの金属とが第2導体パッド12aと接続導体4との界面において直接、接している。従って、第2導体パッド12aと接続導体4との界面において金属同士による機械的に強固で電気的抵抗の小さい接合が得られていると考えられる。
【0044】
第2導体パッド12aの表面のうち、接続導体4に覆われている領域124は、第2導体パッド12aの第3絶縁層23と向かい合う表面120が有する第1面粗度よりも低い面粗度(第3面粗度)を有していてもよい。第3面粗度は、第2配線パターン12bの表面121が有する第2面粗度よりは高い。第3面粗度は、第1面粗度と第2面粗度との間の任意の大きさの面粗度であってよい。上述のように、第2導体パッド12aと接続導体4とは金属同士により強固に接合されているため、第1面粗度よりも低い第3面粗度であっても、第2導体パッド12aと接続導体4との間において、界面剥離などは生じ難いと考えられる。同様に、第1導体パッド11aの表面のうち、接続導体4に覆われている表面114が、第2絶縁層22と向かい合う表面110が有する第1面粗度よりも低い面粗度(第3面粗度)を有していてもよい。
【0045】
これまで
図1を参照して、スタックビア導体として、コア基板3の第1面3a側において接続導体4が積み重なって形成されているスタックビア導体を例に説明されてきたが、スタックビア導体としては、この例に限定される訳ではない。
図2に示されているような、粗化された表面を有するより内層のビアパッドと被覆膜に覆われている粗化された表面を有するより外層のビアパッドとを含む構造をもつスタックビア導体は、コア基板3の第2面3b側にも形成されてよい。換言すると、実施形態の構造をもつスタックビア導体は、配線基板100の部品実装面側に形成されていてもよいし、部品実装面の反対面側に形成されていてもよい。また、
図1において参照されたスタックビア導体は、コア基板3の第2面3b側において接続導体4が積み重なって形成されているスタックビア導体と、平面視において重なる位置に形成されている。ここで「平面視」とは、配線基板100をその厚さ方向に沿った視線で見ることを意味している。しかし、コア基板3の第1面3a側に形成されるそれぞれのスタックビア導体と第2面3b側とに形成されるスタックビア導体とは平面視において異なる位置に、また、スルーホール導体(接続導体33)と平面視において重なる位置にあるいは異なる位置に、それぞれ形成されてよい。そして、任意のスタックビア導体が、
図2に示される実施形態の構造をもつスタックビア導体として形成され得る。
【0046】
図1に示されている例では、第1導体層11が、被覆膜5に覆われていない高い第1面粗度を有する導体パッドを含む導体層であって、その直上の第2導体層12が、被覆膜5に覆われている高い第1面粗度を有する導体パッドを含む導体層である。しかし、本実施形態のスタックビア導体は、被覆膜5に覆われていない高い第1面粗度を有する少なくとも一つの導体パッドを内層に含み、被覆膜5に覆われている高い第1面粗度を有する少なくとも一つの導体パッドを外層に含んでいればよい。内層側に集中しがちな応力による絶縁層と導体パッドとの界面におけるクラックや絶縁層の剥離が、被覆膜5に覆われずに露出する第1面粗度の大きな凹凸による良好なアンカー効果によって抑制されると考えられる。例えば、スタックビア導体を形成する、被覆膜5に覆われていない高い第1面粗度を有する導体パッドが第1導体層11に含まれ、スタックビア導体を形成する、被覆膜5に覆われている高い第1面粗度を有する導体パッドが第3導体層13やさらに外層の導体層に含まれていても良い。また、スタックビア導体は、被覆膜5に覆われていない高い第1面粗度を有する導体パッドおよび/または被覆膜5に覆われている高い第1面粗度を有する導体パッドをそれぞれ複数含んでいてもよい。
【0047】
つぎに、一実施形態の配線基板の製造方法が、
図1の配線基板100を例に用いて
図3A~
図3Kを参照して説明される。
【0048】
図3Aに示されるように、コア基板3の絶縁層32となる絶縁層と、この絶縁層の両表面にそれぞれ積層された金属箔31aを含む出発基板(例えば両面銅張積層板)が用意され、コア基板3の導体層31および接続導体33が形成される。例えばドリル加工または炭酸ガスレーザー光の照射によって接続導体33の形成位置に貫通孔が形成され、その貫通孔内および金属箔31a上に無電解めっきまたはスパッタリングなどによって金属膜31bが形成される。そして金属膜31bを給電層として用いる電解めっきによってめっき膜31cが形成される。その結果、3層構造の導体層31、および2層構造の接続導体33が形成される。その後、サブトラクティブ法によって導体層31をパターニングすることによって所定の導体パターンを備えるコア基板3が得られる。
【0049】
そして
図3Aに示されるように、第1絶縁層21および絶縁層25が、コア基板3の第1面3a上および第2面3b上にそれぞれ形成される。第1絶縁層21および絶縁層25それぞれの形成では、例えばフィルム状のエポキシ樹脂が、コア基板3の上に積層され、加熱および加圧される。その結果、第1絶縁層21および絶縁層25が、それぞれ形成される。第1絶縁層21および絶縁層25は、フィルム状のエポキシ樹脂に限らず、BT樹脂、またはフェノール樹脂などの任意の樹脂によって形成され得る。第1絶縁層21および絶縁層25には、接続導体4を形成するための貫通孔4aが、例えば炭酸ガスレーザー光の照射などによって形成される。
【0050】
第1導体パッド11aおよび第1配線パターン11bを有する第1導体層11が形成される。コア基板3の第2面3b側には導体層15が形成される。第1絶縁層21および絶縁層25それぞれには接続導体4が形成される。第1導体層11、導体層15、および接続導体4は、例えばセミアディティブ法を用いて形成される。すなわち、貫通孔4a内、ならびに、第1絶縁層21および絶縁層25の表面上に、例えば無電解めっきまたはスパッタリングによって金属膜10bが形成される。
【0051】
金属膜10bの上に、第1導体パッド11aおよび第1配線パターン11bに対応する開口、または、導体層15に含まれるべき導体パターンに対応する開口を有するめっきレジスト(図示せず)が設けられる。そして、金属膜10bを給電層として用いる電解めっきによって、めっきレジストの開口内にめっき膜10cが形成される。その結果、金属膜10bおよびめっき膜層10cからなる第1導体層11および導体層15それぞれが形成される。貫通孔4a内には、金属膜10bおよびめっき膜層10cからなる接続導体4が形成される。その後、めっきレジストが、例えば水酸化ナトリウムなどのアルカリ性剥離剤を用いて除去され、その後、金属膜10bにおいてめっき膜10cに覆われずに露出している部分がエッチングなどによって除去される。
【0052】
次いで、
図3Bに示されるように、第1導体層11の表面のうちの第1絶縁層21と接していない領域である第1導体層11の露出面が粗化される。
図3Bは、
図3AのIIIB部における第1導体層11の露出面の粗化処理後の拡大図である。
【0053】
第1導体層11の露出面の粗化は任意の方法で行われ得る。例えば、黒化処理またはブラウン処理と呼ばれる表面酸化処理や、酸性の溶剤を用いたマイクロエッチング処理が用いられ得る。
【0054】
粗化処理により、第1導体層11の第1導体パッド11aの露出面および第1配線パターン11bの露出面が粗化される。第1導体パッド11aの露出面および第1配線パターン11bの露出面は、例えば、算術平均粗さ(Ra)で、0.3μm以上、0.6μm以下の面粗度を有するように粗化される。
【0055】
次に、
図3Cに示されるように、第1導体層11を覆う第2絶縁層22が形成される。コア基板3の第2面3b側には、階数が2の絶縁層25がさらに形成される。なお「階数」は、第1面3a側および第2面3b側のそれぞれに積層される複数の絶縁層または導体層に、コア基板3側から1ずつ増加する数を1から順に付与したときに各絶縁層または導体層に付与される数である。第2絶縁層22および階数が2の絶縁層25は、第1絶縁層21および階数が1の絶縁層25と同様に、例えば、フィルム状のエポキシ樹脂の積層、ならびに加熱および加圧によって形成される。
【0056】
第2絶縁層22および階数が2の絶縁層25には、接続導体4を形成するための貫通孔4aが、例えば炭酸ガスレーザー光の照射などによって形成される。例えば、前述した第1導体層11および階数が1の導体層15の形成と同様の方法で、第2導体層12および階数が2の導体層15が形成され得る。貫通孔4a内には、例えば、前述した第1導体層11および第1絶縁層21を貫通する接続導体4の形成方法と同様の方法で、第2絶縁層22を貫通する接続導体4が形成される。
【0057】
図3Dおよび
図3Eに示されるように、第2導体層12の表面のうちの第2絶縁層22と接していない領域である露出面が粗化される。但し、第2配線パターン12bの露出面は粗化されない。一方、第2導体パッド12aの露出面は粗化される。そのため、
図3Dおよび
図3Eに示されるように、第2導体パッド12aを露出させる開口R1aを有するレジスト膜R1が、第2絶縁層22および第2導体層12の上に設けられる。
【0058】
第2導体層12の露出面の粗化は任意の方法で行われ得る。第2導体層12の露出面は、例えば第1導体層11における露出面の粗化と同様の処理によって行われてよい。処理により、第2導体層12の露出面のうちのレジスト膜R1に覆われていない部分、すなわち第2導体パッド12aの露出面が粗化される。
【0059】
レジスト膜R1は、例えば感光性樹脂を含むフィルムの積層によって形成される。レジスト膜R1には、露光および現像などのフォトリソグラフィ技術を用いて、第2導体パッド12aを露出させる開口R1aが設けられる。レジスト膜R1は、前述した第1導体層11の形成に用いられるめっきレジスト(図示せず)と同様の材料で形成されてもよい。
【0060】
図3Eには、
図3DのIIIE部における第2導体層12の露出面の粗化処理後の拡大図が示されている。第2導体パッド12aの露出面は、少なくとも、第2配線パターン12bの粗化されない表面121が有する面粗度(第2面粗度)よりも高い面粗度を有するように粗化される。第2導体パッド12aの露出面は、例えば、算術平均粗さ(Ra)で、0.3μm以上、0.6μm以下の面粗度を有するように粗化される。
【0061】
レジスト膜R1の除去後、
図3Fに示されるように、第2導体層12の露出面に被覆膜5が設けられる。
図3Fは、
図3Eと同様の部分についての被覆膜5の形成後の状態を示している。
【0062】
被覆膜5は、第2導体層12と、後工程で形成される第3絶縁層23(
図3G参照)との密着性を向上させる。被覆膜5は、例えば、シランカップリング剤などの、有機材料および無機材料の両方と結合し得る材料を含む液体への第2導体層12の浸漬や、そのような液体の噴霧(スプレーイング)によって形成される。しかし、被覆膜5の形成方法は任意であり、被覆膜5を構成する材料への浸漬や、そのような材料の噴霧に限定されない。
【0063】
図3Gおよび
図3Hに示されるように、第2導体層12を覆う第3絶縁層23が形成される。コア基板3の第2面3b側には、階数が3の絶縁層25がさらに形成される。なお、
図3Hには
図3GにおけるIIIH部の拡大図が示されている。
図3Hに示されるように、第3絶縁層23は、被覆膜5も覆っている。第3絶縁層23および階数が3の絶縁層25は、第1および第2絶縁層21、22および階数が1、2の絶縁層25と同様に、例えば、フィルム状のエポキシ樹脂の積層、ならびに加熱および加圧によって形成される。
【0064】
第2絶縁層22および第3絶縁層23には、後工程で接続導体4(
図3I参照)を形成するための貫通孔4aが、例えば炭酸ガスレーザー光の照射などによって形成される。第3絶縁層23における第2導体パッド12a上の領域に貫通孔4aが形成される。貫通孔4aによって第2導体パッド12aの表面の一部(表面124)が露出する。
【0065】
図3Hの例では、貫通孔4aの形成によって貫通孔4a内に露出する第2導体パッド12aの表面124上に形成されていた被覆膜5が除去されている。表面124上に形成されていた被覆膜5は、例えば、貫通孔4aの形成時のレーザー光の照射を受けて、溶解および気化するか、または昇華する。その結果、表面124上に形成されていた被覆膜5が除去され得る。表面124から被覆膜5を除去することによって、後工程で導体パッド上に形成される接続導体4と第2導体パッド12aとを、金属同士で強固に、かつ小さな電気抵抗で接合させることができる。
【0066】
なお、被覆膜5の除去時の被覆膜5の溶解液による第2導体パッド12aと第3絶縁層23との界面への浸透が、前述したように比較的高い面粗度を有するように粗化されている第2導体パッド12aの表面120の凹凸によって妨げられる。第2導体パッド12aと第3絶縁層23との界面剥離が防止されることがある。
【0067】
貫通孔4aの形成後、好ましくは、貫通孔4aの形成によって生じた樹脂残渣(スミア)を除去するデスミア処理が行われる。例えばアルカリ性過マンガン酸溶液などの処理液に貫通孔4aの内壁を晒すことによって貫通孔4a内のスミアが除去される。このデスミア処理のための処理液による、第2導体パッド12aと第3絶縁層23との界面への浸入が、第2導体パッド12aの粗化された表面120の凹凸によって妨げられる。処理液による表面120上の被覆膜5の溶解や、それに伴う界面剥離などの不具合が防止されると考えられる。
【0068】
好ましくは、後工程での第3導体層13および接続導体4(
図3I参照)の形成の前に、ソフトエッチング処理が行われる。ソフトエッチング処理によって、第3導体層13および接続導体4が形成される表面(第2導体パッド12aの表面120の露出部分および第3絶縁層23の表面)の酸化膜などが除去される。このソフトエッチング処理によって、第2導体パッド12aの表面120のうちの貫通孔4a内に露出している接続領域124の面粗度が、第3絶縁層23と向かい合っている表面120の第1面粗度よりも低い面粗度(第3面粗度)に低下する。この例が、
図3Hに示されている。
【0069】
なお、
図3Cには示されていないが、第2導体層12および接続導体4の形成の前にも、ソフトエッチング処理が行われ得る。このソフトエッチング処理によっても同様に、第1導体パッド11aの表面110のうちの貫通孔4a内に露出していて接続導体4に接続される領域である接続領域114の面粗度が、第2絶縁層22と向かい合っている表面110の面粗度よりも低下され得る(
図2および
図3H参照)。
【0070】
図3Iおよび
図3Jに示されるように、第3絶縁層23の上に第3導体層13が形成されると共に、第3絶縁層23を貫通して第2導体パッド12aと第3導体層13とを接続する接続導体4が形成される。コア基板3の第2面3b側には、さらに、導体層15および接続導体4が形成される。
図3Jには、
図3IのIIIJ部の拡大図が示されている。
【0071】
第3導体層13および第3絶縁層23を貫通する接続導体4は、例えば、前述した第1導体層11および第1絶縁層21を貫通する接続導体4の形成方法と同様の方法で形成される。例えば、第3導体層13および第3絶縁層23を貫通する接続導体4、ならびにコア基板3の第2面3b側にさらに形成される階層が3の導体層15および接続導体4は、セミアディティブ法によって形成される。
【0072】
セミアディティブ法による第3絶縁層23への接続導体4の形成では、
図3Jに示されるように、貫通孔4a内に例えば無電解めっきによって金属膜10bが形成され、さらに電解めっきによってめっき膜10cが形成される。本実施形態の配線基板の製造方法では、金属膜10bの形成時のめっき液による第2導体パッド12aと第3絶縁層23との界面への浸入が、第2導体パッド12aの粗化された表面120の凹凸によって妨げられる。めっき液による、表面120上の被覆膜5の溶解や、それに伴う界面剥離などの不具合が防止されると考えられる。
【0073】
続いて、前述した第1導体層11、導体層15、および接続導体4の形成と同様に、例えばセミアディティブ法を用いて、第3導体層13を覆う第4絶縁層24および第4絶縁層24の上に第4導体層14が形成される。コア基板3の第2面3b側には、階数が4の絶縁層25がさらに形成され、階数が4の絶縁層25の上に階数が4の導体層15が形成される。第4絶縁層24には、第4導体層14と第3導体層13を接続する接続導体4が形成されている。階数が4の絶縁層25にも上下の導体層15を接続する接続導体4が形成されている。コア基板3の第1面3a側および第2面3b側の最外層に、ソルダーレジスト6が形成される。ソルダーレジスト6には第4導体層14または階層が4の導体層15の一部を露出させる開口6aが設けられる。ソルダーレジスト6および開口6aは、例えば感光性のエポキシ樹脂またはポリイミド樹脂などを含む樹脂層の形成と、適切な開口パターンを有するマスクを用いた露光および現像とによって形成される。
【0074】
以上の工程を経る事によって、
図1の例の配線基板100が完成する。ソルダーレジスト6の開口6a内に露出する第4導体層14または階層が4の導体層15の一部の表面上には、無電解めっき、半田レベラ、またはスプレーコーティングなどによって表面保護膜(図示せず)が形成されてもよい。
【0075】
実施形態の配線基板は、各図面に例示される構造、ならびに、本明細書において例示される構造、形状、および材料を備えるものに限定されない。前述したように、実施形態の配線基板は任意の積層構造を有し得る。例えば実施形態の配線基板はコア基板を含まないコアレス基板であってもよい。実施形態の配線基板は、任意の数の導体層および絶縁層を含み得る。前述のように、第1導体層11および第2導体層12は、第1導体層11が内層側に存在し、第2導体層12が外層側に存在していれば、それぞれ、配線基板の積層構造上の任意の階層に存在し得る。第1導体層11および第2導体層12は、電解めっき膜からなるめっき膜10cを含まなくてもよく、例えば無電解めっき膜からなる金属膜10bだけを含んでいてもよい。
【0076】
実施形態の配線基板の製造方法は、各図面を参照して説明された方法に限定されない。例えば第1~第4の導体層11、12、13、14および導体層15はフルアディティブ法によって形成されてもよい。また、第1~第4の絶縁層21、22、23、24および絶縁層25は、フィルム状の樹脂に限らず、任意の形態の樹脂を用いて形成され得る。実施形態の配線基板の製造方法には、前述された各工程以外に任意の工程が追加されてもよく、前述された工程のうちの一部が省略されてもよい。
【符号の説明】
【0077】
100 配線基板
11 第1導体層
11a 第1導体パッド
110 第2絶縁層と向かい合う表面
114 接続導体に覆われている表面
11b 第1配線パターン
111 第2絶縁層と向かい合う表面
12 第2導体層
12a 第2導体パッド
120 第3絶縁層と向かい合う表面
124 接続導体に覆われている表面
12b 第2配線パターン
121 第3絶縁層と向かい合う表面
13 第3導体層
14 第4導体層
15 導体層
21 第1絶縁層
22 第2絶縁層
23 第3絶縁層
24 第4絶縁層
25 絶縁層
4 接続導体(ビア導体)
5 被覆膜
R1 レジスト膜