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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】インピーダンス測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 27/02 20060101AFI20241010BHJP
   G01R 31/50 20200101ALI20241010BHJP
   G01R 31/56 20200101ALI20241010BHJP
   G01R 31/54 20200101ALI20241010BHJP
【FI】
G01R27/02 A
G01R31/50
G01R31/56
G01R31/54
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021138307
(22)【出願日】2021-08-26
(65)【公開番号】P2023032275
(43)【公開日】2023-03-09
【審査請求日】2024-05-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】北村 直也
(72)【発明者】
【氏名】吉原 亮平
(72)【発明者】
【氏名】羽田 一暁
【審査官】堀 圭史
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-256218(JP,A)
【文献】特開2000-111593(JP,A)
【文献】特開2007-178257(JP,A)
【文献】特開2009-300343(JP,A)
【文献】特開平6-104660(JP,A)
【文献】実開昭61-110184(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 27/02-27/32
G01R 31/50-31/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物に供給された交流電流によって前記被測定物の両端子のそれぞれに接触する接触端子間に生ずる電圧を測定し、前記被測定物の内部インピーダンスを求める測定部と、
前記測定部と前記被測定物との電流路に、カップリングコンデンサを介して、断線検出用の交流電流を供給する断線検出用電流源と、
前記カップリングコンデンサと前記断線検出用電流源との間に接続され、前記断線検出用電流源の両端子間電圧が所定の電圧範囲を超えたときに、前記カップリングコンデンサを充電する充電加速部と、
を備える、インピーダンス測定装置。
【請求項2】
前記所定の電圧範囲は、前記断線検出用電流源のコンプライアンス電圧より狭い、請求項1に記載のインピーダンス測定装置。
【請求項3】
前記充電加速部は、ヒステリシス特性を有する、請求項1または2に記載のインピーダンス測定装置。
【請求項4】
前記充電加速部は、正電源および負電源のヒステリシスコンパレータを備える、請求項3に記載のインピーダンス測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インピーダンス測定装置に関し、断線検出機能を備えた4端子インピーダンス測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被測定物の内部インピーダンスを測定する装置として、4端子インピーダンス測定装置がある。図4に、特許文献1に記載されている代表的なインピーダンス測定装置100の従来例を示す。インピーダンス測定装置100は、被測定物130に測定用電流源110から交流電流を供給し、交流電流によって被測定物130の両端子間に生ずる電圧を、測定部120で測定し、被測定物130に供給された電流と測定された両端子間電圧とから、被測定物130の内部インピーダンスを求める。
【0003】
内部インピーダンスを正確に測定するためには、被測定物130と接触端子Hc、Lc、Hp、Lpとが確実に接触している必要があるが、プロービング時に接触端子が接触していなかったり、測定中に接触端子が被測定物130から外れてしまって断線が生ずることがある。そこで、インピーダンス測定装置100では、測定部120と被測定物130との電流路101に、断線検出用電流源141から断線検出用電流を供給し、測定部120で断線検出用電流によって接触端子Hp、Lpの間に生じた電圧を測定することにより、電流路101の断線を検出する。断線検出はインピーダンス測定の前後や測定中に行われるため、短時間で検出を行う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4695920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バッテリテスタのように直流電圧源を含む被測定物を測定するインピーダンス測定装置では、被測定物で生ずる直流電圧をキャンセルするために、被測定物と測定用電流源との間、被測定物と測定部との間、および、被測定物と断線検出用電流源との間のそれぞれに、カップリングコンデンサが挿入される。カップリングコンデンサの容量インピーダンスを小さくするためには、容量を大きくする必要がある。一方で、断線検出用電流源は両端子間電圧がコンプライアンス電圧の範囲内にならないと正常に機能しないため、カップリングコンデンサの充電が完了しないと、正常な断線検出用電流を供給して断線検出を行うことはできないが、カップリングコンデンサの容量が増加すると充電時間も増加してしまう。正常な断線検出用電流の供給が可能になるまでの時間(すなわち、断線検出部の応答時間)は、断線検出の度に生ずるため、断線検出を含めたインピーダンス測定のトータル時間が長くなってしまうという課題があった。
【0006】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、短時間でカップリングコンデンサを充電し、断線検出を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、被測定物に供給された交流電流によって被測定物の両端子のそれぞれに接触する接触端子間に生ずる電圧を測定し、被測定物の内部インピーダンスを求める測定部と、測定部と被測定物との電流路に、カップリングコンデンサを介して、断線検出用の交流電流を供給する断線検出用電流源と、カップリングコンデンサと断線検出用電流源との間に接続され、断線検出用電流源の両端子間電圧が所定の電圧範囲を超えたときに、カップリングコンデンサを充電する充電加速部とを備えるインピーダンス測定装置により、解決することができる。
【0008】
すなわち、カップリングコンデンサと断線検出用電流源との間に、カップリングコンデンサの充電電流を供給する充電加速部を設け、断線検出用電流源の両端子のそれぞれに接触する接触端子間の電圧が所定の電圧範囲を超えたときに動作させることにより、短時間でカップリングコンデンサを充電し、断線検出が可能となる。
【0009】
ここで、所定の電圧範囲は、断線検出用電流源のコンプライアンス電圧より狭いことが望ましい。断線検出用電流源は、両端子間電圧がコンプライアンス電圧の範囲内にあるときに、正常な断線検出用電流の供給が可能となる。断線検出用電流源の両端子間電圧の電圧範囲をコンプライアンス電圧の電圧範囲内になるようにカップリングコンデンサを充電することにより、短時間で断線検出が可能となる。
【0010】
また、充電加速部は、ヒステリシス特性を有することが望ましい。断線検出用の交流電流による電圧変動によって充電加速部が再稼働することを防止し、短時間で断線検出が可能となる。
【0011】
さらに、充電加速部は、正電源および負電源のヒステリシスコンパレータを備えることが望ましい。かかる構成により、両電源に対応することが可能となり、被測定物の直流電圧の極性にかかわらず、短時間でカップリングコンデンサを充電し、断線検出が可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るインピーダンス測定装置によれば、短時間でカップリングコンデンサを充電し、断線検出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係るインピーダンス測定装置を被測定物に接続した状態の構成図である。
図2】充電加速部の例示的な構成図である。
図3】ヒステリシス特性の説明図である。
図4】インピーダンス測定装置の従来例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態の具体例について図を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るインピーダンス測定装置の一例であるバッテリテスタ200を、被測定物であるバッテリ230に接続した状態の構成図である。
【0015】
バッテリテスタ200は、バッテリ230に測定用電流源210から測定用交流電流Imを供給し、交流電流Imによってバッテリ230の両端子のそれぞれに接触する接触端子Hp、Lp間に生ずる電圧Vmを、測定部220で測定し、バッテリ230に供給された電流Imと測定された電圧Vmとから、バッテリ230の内部インピーダンスZを計測する装置である。バッテリテスタ200は、測定部220とバッテリ230との電流路201の断線を検出するために、測定部220とバッテリ230との電流路201に、断線検出用電流供給部240からカップリングコンデンサC3を介して断線検出用交流電流Idを供給し、断線検出用交流電流Idによってバッテリ230の両端子のそれぞれに接触する接触端子Hp、Lpの間に生ずる電圧Vdを、測定部220で測定することにより、電流路201の断線を検出する。
【0016】
図1に示すように、バッテリテスタ200は、4つの接触端子(高圧側ソース端子Hc、低圧側ソース端子Lc、高圧側センス端子Hp、低圧側センス端子Lp)を備える。高圧側ソース端子Hcおよび高圧側センス端子Hpは、バッテリ230の高圧側に接続される。また、低圧側ソース端子Lcおよび低圧側センス端子Lpは、バッテリ230の低圧側に接続される。高圧側ソース端子Hc、低圧側ソース端子Lc、高圧側センス端子Hpおよび低圧側センス端子Lpと、バッテリ230との接触抵抗を、それぞれRHc、RLc、RHpおよびRLpで示す。
【0017】
高圧側ソース端子HcはカップリングコンデンサC1を介して測定用電流源210の一端に接続されている。測定用電流源210の他端と低圧側ソース端子Lcとは、ソース側の基準電位であるグランドGND1に接続されている。他方、高圧側センス端子Hpは、カップリングコンデンサC2を介して測定部220に、またカップリングコンデンサC3を介して断線検出用電流供給部240に接続されている。低圧側センス端子Lpは、センス側の基準電位であるグランドGND2に接続されている。測定部220や断線検出用電流供給部240などの、センス側に配置された構成要素の基準電位も、グランドGND2である。ソース側の基準電位であるグランドGND1と、センス側の基準電位であるグランドGND2とは、電気的に分離されている。
【0018】
カップリングコンデンサC2を介して測定部220の入力された信号は、オペアンプOP1の非反転増幅回路で増幅されて、演算部221に入力される。オペアンプOP1の非反転入力端子には測定部220の入力が、反転端子には抵抗R1の一端と抵抗R2の一端が、出力端子には抵抗R1の他端と演算部221が、それぞれ接続されている。抵抗R2の他端は、グランドGND2に接続されている。
【0019】
演算部221は、2つのロックインアンプを備え、それぞれ測定用電流源210および断線検出用電流供給部240から供給される交流電流の周波数で同期検波をかけることにより、測定用交流電流Imによってバッテリ230の両端子のそれぞれに接触する接触端子Hp、Lpの間に生ずる電圧Vmと、断線検出用交流電流Idによってバッテリ230の両端子のそれぞれに接触する接触端子Hp、Lp間に生ずる電圧Vdとを取得する。そして、測定用交流電流Imと電圧Vmとから、バッテリ230の内部インピーダンスZを求める。また、電圧Vdを基準値と比較することにより、測定部220とバッテリ230との電流路201の断線を検出する。
【0020】
断線検出用電流供給部240は、入力に対して互いに並列に接続された断線検出用電流源241、充電加速部242および抵抗R3を備える。断線検出用電流源241は、測定用交流電流Imの周波数とは異なる周波数の断線検出用交流電流Idを供給する電流源である。断線検出用交流電流Idは、カップリングコンデンサC3を介して、測定部220とバッテリ230との電流路201に供給される。断線検出用電流源241が正常に機能するためは、断線検出用電流源241の両端子間電圧がコンプライアンス電圧の範囲内であることが必要である。ところが、一般にバッテリ230の両端子間電圧の絶対値は、コンプライアンス電圧の絶対値よりも大きい。このため、断線検出用電流Idの供給に先立って、断線検出用電流源241の両端子間電圧がコンプライアンス電圧の範囲内となるように、カップリングコンデンサC3を充電する必要がある。
【0021】
抵抗R3は、一端がカップリングコンデンサC3に、他端がグランドGND2に接続されている。このため、測定用電流Imは、バッテリ230と抵抗R3に分流する。抵抗R3が小さい場合、抵抗R3への流入量が増加するために、測定誤差となる。このため、抵抗R3は大きいことが望ましい。また、カップリングコンデンサC3のインピーダンスは小さいことが望ましいため、容量は大きいことが望ましい。一方で、カップリングコンデンサC3の充電時間は、充電加速部242がない場合には、抵抗R3とカップリングコンデンサC3の時定数に比例する。例えば、抵抗R3が1MΩ、カップリングコンデンサC3の容量が100nFの場合には、時定数は100ms(=1MΩ×100nF)となり、充電完了して正常な断線検出用電流の供給が可能となるまでに、時定数に応じた時間がかかる。このため、充電加速部242により断線検出用電流源241の両端子間電圧、すなわち点aの電圧Vaを監視し、電圧Vaが所定の電圧範囲を超えたときには、充電加速部242から直流電流を供給してカップリングコンデンサC3の充電を加速することにより、断線検出が可能となるまで時間を短縮する。
【0022】
図2に、充電加速部242の例示的な構成を示す。充電加速部242は、正電源のヒステリシスコンパレータ245と、負電源のヒステリシスコンパレータ246を有する。正電源のヒステリシスコンパレータ245は、正電圧のバッテリ230(図1のように接続されたバッテリ)が接続されたときに動作し、カップリングコンデンサC3を充電する。これに対して、負電源のヒステリシスコンパレータ246は、負電圧のバッテリ230(図1とは逆接続のバッテリ)が接続されたときに動作し、カップリングコンデンサC3を充電する。
【0023】
正電源のヒステリシスコンパレータ245は、オペアンプOP2、ダイオードD1および3つの抵抗R11、R12、R13を備える。オペアンプOP2の反転端子は、充電加速部242の出力およびダイオードD1のアノードに接続されている。オペアンプOP2の非反転端子は、3つの抵抗R11、R12、R13の一端に接続されている。オペアンプOP2の出力端子は、ダイオードD1のカソードおよび抵抗R13の他端に接続されている。抵抗R11の他端はグランドGND2に、抵抗R12の他端は正電源+Vにそれぞれ接続されている。ヒステリシスコンパレータ245のヒステリシス特性(低圧側閾電圧および高圧側閾電圧)は、3つの抵抗R11、R12、R13および正電源+Vの大きさにより設定される。
【0024】
負電源のヒステリシスコンパレータ246は、正電源のヒステリシスコンパレータ245と対称的な構成を有する。すなわち、負電源のヒステリシスコンパレータ246は、オペアンプOP3、ダイオードD2および3つの抵抗R21、R22、R23を備える。オペアンプOP3の反転端子は、充電加速部242の出力およびダイオードD2のカソードに接続されている。オペアンプOP3の非反転端子は、3つの抵抗R21、R22、R23の一端に接続されている。オペアンプOP3の出力端子は、ダイオードD2のアノードおよび抵抗R23の他端に接続されている。抵抗R21の他端はグランドGND2に、抵抗R22の他端は負電源-Vにそれぞれ接続されている。ヒステリシスコンパレータ246のヒステリシス特性(低圧側閾電圧および高圧側閾電圧)は、3つの抵抗R21、R22、R23および負電源-Vの大きさにより設定される。
【0025】
次に、充電加速部242の動作について説明する。正電源のヒステリシスコンパレータ245と負電源のヒステリシスコンパレータ246とは、極性や充電電流の向きを除き、同様な動作によりカップリングコンデンサC3の充電を行うため、以下では正電源のヒステリシスコンパレータ245の動作を例にとって、充電加速部242の動作の説明を行う。
【0026】
バッテリテスタ200に、図1に示した極性でバッテリ230が接続されると、カップリングコンデンサC3が未充電の状態であるため、点aの電圧Vaはバッテリ230の電圧とほぼ同一の電圧となる。よって、断線検出用電流源241の両端子間電圧は、断線検出用電流源241のコンプライアンス電圧を大幅に超えた状態となり、断線検出用電流源241を正常動作させることはできない。電圧Vaは、正電源のヒステリシスコンパレータ245のオペアンプOP2の非反転端子にも印加され、反転端子の電圧と比較されて、オペアンプOP2の出力端子(点b)の電圧Vbは低電圧(オペアンプOP2に供給される負側電源電圧-Vと同等の電位)となる。すると、点aからダイオードD1を介して点bに充電電流Icが流入し、カップリングコンデンサC3が充電される。カップリングコンデンサC3の両端子間電圧の上昇にともなって、断線検出用電流源241の両端子間電圧Vaが低下する。
【0027】
カップリングコンデンサC3が充電がすすみ、電圧Vaが断線検出用電流源241のコンプライアンス電圧より小さな所定の電圧(ヒステリシスコンパレータ245の低圧側閾電圧)になると、オペアンプOP2の出力端子(点b)の電圧Vbが高電圧(正電源+Vと同等の電圧)に変化する。ダイオードD1のカソード側が高電圧となるため充電電流Icが停止して、充電加速部242の動作が停止する。断線検出用電流源241の両端子間電圧はコンプライアンス電圧以下であるので、断線検出用電流源241を正常動作し、正常な断線検出用電流Idを供給して、断線検出を行うことができる。
【0028】
このように、充電加速部242を設けることにより、カップリングコンデンサC3と抵抗R3の時定数に拘わりなく迅速にカップリングコンデンサを充電し、断線検出を行うことが可能となる。
【0029】
ところで、断線検出用電流Idの供給が開始されると、電圧Vaは、バッテリ230の電圧から、カップリングコンデンサC3の充電完了時の電圧と、電流路201の経路インピーダンスと断線検出用電流Idとの積の電圧降下分が重畳された電圧となる。断線検出用電流Idは交流電流であるため、電圧VaはカップリングコンデンサC3の充電完了時の電圧を瞬間的に超える。このとき、充電加速部242が再稼働して充電電流Icが流れると、断線検出用電流Idの一部が充電加速部242に分流してしまい、正確な断線検出ができなくなってしまう。しかしながら、ヒステリシスコンパレータ245はヒステリシス特性を有するため、電圧Vaが低圧側閾電圧を超えても、高電圧閾電圧を超えるまで再稼働せずに、高抵抗状態となる。ヒステリシスコンパレータ245の高電圧閾電圧を、断線検出用電流Idの供給時の最大電圧(瞬時値)以上に設定することにより、断線検出用電流Id供給時の再稼働を防止することができる。
【0030】
以上の例では、バッテリ230を図1のように接続して、正電源のヒステリシスコンパレータ245の動作によりカップリングコンデンサC3の充電を行う動作例を説明したが、バッテリ230を図1と逆向きに接続した場合は、負電源のヒステリシスコンパレータ246が同様に動作することにより、カップリングコンデンサC3を充電する(ただし、電圧の極性や充電電流Icの向きは逆となる)。正電源のヒステリシスコンパレータ245と負電源のヒステリシスコンパレータ246との動作により、充電加速部242は、断線検出用電流源の両端子間電圧が、断線検出用電流源のコンプライアンス電圧より狭い所定の電圧範囲を超えたときに、カップリングコンデンサを充電し、充電時以外は電流の流出入が無い高抵抗状態となる。
【0031】
充電加速部242のヒステリシス特性による効果について図3に用いて、さらに説明する。図3は、横軸に時間、縦軸に電圧をとって、断線検出用電流Id供給時の点aの電圧波形を示した図であり、図3(a)は、充電加速部242にヒステリシス特性がない場合の電圧波形、図3(b)はヒステリシス特性を有する場合の電圧波形である。Vは、充電加速部242が充電電流Icの供給を停止する電圧であり、ヒステリシス特性を有する充電加速部242では低圧側閾電圧である。Vはヒステリシス特性を有する充電加速部242の高圧側閾電圧である。
【0032】
充電加速部242にヒステリシス特性がない場合には、断線検出用電流Idの供給にともなってVaがV超えたときに、充電加速部242が再稼働する。このため、断続的に充電電流Icが流れて、カップリングコンデンサC3が充電され、図3(a)に示すように、Vaの直流成分が低下する。時間tになるとVaの最大値(瞬時値)がVを超えなくなり、充電加速部242の動作は完全に停止する。時間tまでは、断線検出用電流源241の両端子間電圧がコンプライアンス電圧を超えるため、断線検出用電流源241の正常動作が保証されず、断線検出を行うことができない。
【0033】
これに対して、充電加速部242がヒステリシス特性を有する場合には、図3(b)に示すように、断線検出用電流Idの供給によって電圧VaがVを超えても、Vを超えない限り、充電加速部242は再稼働せずに高抵抗状態を保つ。このため、断線検出用電流IdによってカップリングコンデンサC3が充電されることはなく、直ちに断線検出を行うことができる。よって、ヒステリシス特性を有することにより、時間tの分だけより短時間で断線検出が可能となることになる。
【0034】
以上、本願発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記実施の形態では、充電加速部242として、正電源および負電源のヒステリシスコンパレータを採用しているが、断線検出用電流源の両端子間電圧の監視機能やヒステリシス特性の機能を備えたプログラマブル電流源などを用いてもよい。
【符号の説明】
【0035】
100 インピーダンス測定装置
101、201 電流路
110、210 測定用電流源
120、220 測定部
130 被測定物
141、241 断線検出用電流源
200 インピーダンス測定装置(バッテリテスタ)
230 被測定物(バッテリ)
240 断線検出用電流供給部
242 充電加速部
245 ヒステリシスコンパレータ(正電源)
246 ヒステリシスコンパレータ(負電源)
C1、C2、C3 カップリングコンデンサ
D1、D2 ダイオード
GND1、GND2 グランド
Hc、Lc、Hp、Lp 接触端子
OP1、OP2、OP3 オペアンプ
R1、R2、R3、R11、R12、R13、R21、R22、R23 抵抗
Hc、RHp、RLc、RLp 接触抵抗
Z 内部インピーダンス
図1
図2
図3
図4