(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】無線送信システム及び無線送信方法
(51)【国際特許分類】
H04W 88/04 20090101AFI20241010BHJP
H04W 56/00 20090101ALI20241010BHJP
G08B 27/00 20060101ALI20241010BHJP
H04H 20/02 20080101ALI20241010BHJP
H04H 20/59 20080101ALI20241010BHJP
【FI】
H04W88/04
H04W56/00 130
G08B27/00 C
H04H20/02
H04H20/59
(21)【出願番号】P 2021143425
(22)【出願日】2021-09-02
【審査請求日】2023-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】宮下 敦
【審査官】横田 有光
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-174485(JP,A)
【文献】特開平10-174142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
G08B 23/00-31/00
H04H 20/00-20/46
20/51-20/86
20/91-40/27
40/90-60/98
H04B 1/02- 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声信号を複数のエリアに無線送信する親局と、前記音声信号を前記エリア毎に受信する子局とを有する無線送信システムであって、
前記子局に接続し、前記子局で受信した音声信号を特定の周波数のFM波に変換して送信するFM送信機と、
前記FM送信機における送信のタイミングとなる時刻を制御する時刻制御部とを設け、
前記複数のエリアを前記複数より少ない数のグループに分け、当該グループ毎に前記FM送信機が前記時刻制御部からの時刻に従って前記グループに割り当てられた時間帯で時分割に前記特定の周波数のFM波を送信することを特徴とする無線送信システム。
【請求項2】
前記子局に拡声器を接続し、受信した音声信号を前記拡声器から出力させることを特徴とする請求項1記載の無線送信システム。
【請求項3】
前記時刻制御部は、GPS受信機で得られた時刻情報を利用して時刻制御を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の無線送信システム。
【請求項4】
前記親局は、時刻制御のための同期タイミング信号を送信するものであり、
前記子局に接続し、前記子局で受信した前記同期タイミング信号を取得し、
前記時刻制御部に出力するプリセット受信部を設け、
前記時刻制御部は、前記プリセット受信部で得られた前記同期タイミング信号に基づいて時刻制御を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の無線送信システム。
【請求項5】
前記子局で受信した音声信号と同期タイミング信号から前記同期タイミング信号を消去して拡声器に出力する消音部を設けたことを特徴とする請求項4記載の無線送信システム。
【請求項6】
前記親局は、FM送信
機から送信されるFM波の出力レベルを制御するレベル制御信号に識別子を付与して送信するものであり、
前記子局に接続し、前記子局で受信した前記レベル制御信号と前記識別子を取得し、前記識別子が予め設定された識別子と一致する場合に、前記レベル制御信号を前記FM送信
機に出力するレベル制御部を設け、
前記FM送信
機は、前記レベル制御部で得られた前記レベル制御信号に基づいて前記FM波の出力レベルの制御を行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか記載の無線送信システム。
【請求項7】
複数のエリアを当該複数より少ない数のグループに分け、親局から送信された音声信号を前記エリア毎に設けられた子局で受信し、前記受信した音声信号を時刻情報に基づいて前記グループに割り当てられた時間帯で時分割にFM波により送信することを特徴とする無線送信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FM波を時分割に送信する無線送信システムに係り、特に、防災放送を一般のFM受信機で聴くことができる無線送信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
従来の防災無線では、市区町村の自治体に設置された放送局から屋外に設けられた拡声器を有する拡声子局で音声出力されるか、屋内に設置された戸別受信機で音声出力されるものである。
【0003】
近年、音声子局からの音声は、悪天候の際に聞きづらく、また、マンション等の密閉性の高い屋内では聞き取り難いものとなっていた。
更に、各住宅に戸別受信機の配布を増やすことも考えられるが、コスト高となってしまい、自治体及び住民の負担が大きい。
そこで、拡声伝達したい音声をFM波で一般のFMラジオに伝送するニーズがある。
【0004】
[関連技術]
尚、関連する先行技術として、特開2019-176232号公報「放送波中継システム及び放送波中継方法」(特許文献1)、特開2019-097025号公報「伝送システム」(特許文献2)、特開2017-073587号公報「放送通信システム及び放送通信方法」(特許文献3)、特開2017-017578号公報「防災無線システム」(特許文献4)がある。
【0005】
特許文献1~3には、FM同期放送に関する放送通信の技術が示されている。
特許文献4には、スピーカの拡声放送エリアを容易に変更できる防災無線システムが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-176232号公報
【文献】特開2019-097025号公報
【文献】特開2017-073587号公報
【文献】特開2017-017578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の防災無線では、一般のFMラジオで防災放送を聴きたいとのニーズはあるものの、多数存在する拡声子局に複数のFM波を割り当てるのは電波資源の観点から困難であるという問題点があった。
【0008】
そこで、FM波の同一周波数を使用することが考えられるが、各FM送信機の周波数と変調度を高精度に一致させる必要があり、既存の各拡声子局の音声レベルなどにばらつきを持つため、拡声子局を個々に再調整し、その状態を維持するのが困難であるという問題点があった。
【0009】
尚、特許文献1~4には、同一の周波数を用いてエリアのグループ単位に時分割でFM波を送信し、一般のFM受信機で防災放送を聴くことができる構成についての記載がない。
【0010】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、同一の周波数を用いてエリアのグループ単位に時分割でFM波を送信することで、防災放送を一般のFM受信機で聴くことができる無線送信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、音声信号を複数のエリアに無線送信する親局と、音声信号をエリア毎に受信する子局とを有する無線送信システムであって、子局に接続し、子局で受信した音声信号を特定の周波数のFM波に変換して送信するFM送信機と、FM送信機における送信のタイミングとなる時刻を制御する時刻制御部とを設け、複数のエリアを当該複数より少ない数のグループに分け、当該グループ毎にFM送信機が時刻制御部からの時刻に従ってグループに割り当てられた時間帯で時分割に特定の周波数のFM波を送信することを特徴とする。
【0012】
本発明は、上記無線送信システムにおいて、子局に拡声器を接続し、受信した音声信号を拡声器から出力させることを特徴とする。
【0013】
本発明は、上記無線送信システムにおいて、時刻制御部が、GPS受信機で得られた時刻情報を利用して時刻制御を行うことを特徴とする。
【0014】
本発明は、上記無線送信システムにおいて、親局が、時刻制御のための同期タイミング信号を送信するものであり、子局に接続し、子局で受信した同期タイミング信号を取得し、時刻制御部に出力するプリセット受信部を設け、時刻制御部が、プリセット受信部で得られた同期タイミング信号に基づいて時刻制御を行うことを特徴とする。
【0015】
本発明は、上記無線送信システムにおいて、子局で受信した音声信号と同期タイミング信号から同期タイミング信号を消去して拡声器に出力する消音部を設けたことを特徴とする。
【0016】
本発明は、上記無線送信システムにおいて、親局が、FM送信機から送信されるFM波の出力レベルを制御するレベル制御信号に識別子を付与して送信するものであり、子局に接続し、子局で受信したレベル制御信号と識別子を取得し、識別子が予め設定された識別子と一致する場合に、レベル制御信号をFM送信機に出力するレベル制御部を設け、FM送信機が、レベル制御部で得られたレベル制御信号に基づいてFM波の出力レベルの制御を行うことを特徴とする。
【0017】
本発明は、無線送信方法であって、複数のエリアを当該複数より少ない数のグループに分け、親局から送信された音声信号をエリア毎に設けられた子局で受信し、受信した音声信号を時刻情報に基づいてグループに割り当てられた時間帯で時分割にFM波により送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、音声信号を複数のエリアに無線送信する親局と、音声信号をエリア毎に受信する子局とを有する無線送信システムであって、FM送信機が、子局に接続し、子局で受信した音声信号を特定の周波数のFM波に変換して送信し、時刻制御部が、FM送信機における送信のタイミングとなる時刻を制御し、複数のエリアを当該複数より少ない数のグループに分け、当該グループ毎にFM送信機が時刻制御部からの時刻に従ってグループに割り当てられた時間帯で時分割に特定の周波数のFM波を送信するようにしているので、時分割送信を実現して、周波数の有効利用を図ることができ、防災放送を一般のFMラジオで聴くことができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1の無線送信システムの構成概略図である。
【
図2】第2の無線送信システムの構成概略図である。
【
図3】第2の無線送信システムの動作タイミングチャートである。
【
図4】プリセット音の拡声防止の構成概略図である。
【
図5】プリセット音の拡声防止の構成における動作タイミングチャートである。
【
図6】電波出力の遠隔制御を行う親局側を示す構成概略図である。
【
図7】電波出力の遠隔制御を行う子局側を示す構成概略図である。
【
図8】電波出力の遠隔制御の構成における動作タイミングチャートである。
【
図9】グループを3つに分けた例を示す概略図である。
【
図10】グループを9つに分けた例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る防災無線システム(本無線システム/本無線送信システム)は、音声信号を複数のエリアに無線送信する親局と、音声信号をエリア毎に受信する子局とを有する無線送信システムであって、FM送信機が、子局で受信した音声信号を特定の周波数のFM波に変換して送信し、時刻制御部が、FM送信機における送信のタイミングとなる時刻を制御し、複数のエリアを当該複数より少ない数のグループに分け、当該グループ毎にFM送信機が時刻制御部からの時刻に従ってグループに割り当てられた時間帯で時分割に特定の周波数のFM波を送信するものであり、これにより、時分割送信を実現して、周波数の有効利用を図ることができ、防災放送を一般のFMラジオで聴くことができるものである。
【0021】
[第1の無線送信システム:
図1]
本無線システムについて第1の無線送信システムについて
図1を参照しながら説明する。
図1は、第1の無線送信システムの構成概略図である。
第1の無線送信システムは、
図1に示すように、防災親局送信部10と、複数の防災子局受信部20と備え、無線通信により防災親局送信部10から防災子局受信部20に一斉通報が為される。
第1の無線送信システムの特徴は、後述するFM送信部23での時分割送信のタイミングを制御する時計24の基準時刻をGPS(Global Positioning System/全地球的測位システム)受信機26から取得するようにしている。
【0022】
[親局側]
第1の無線送信システムの親局側は、防災親局送信部10にマイク11と、マイクONスイッチ12と、アンテナ13とが接続される。
マイク11は、音声を入力し、マイクONスイッチ12は、音声入力する時に押して音声ON状態にし、離すと音声OFF状態となる。
アンテナ13は、音声の一斉放送の電波を放出する。
【0023】
[子局側]
第1の無線送信システムの子局側は、防災子局受信部20にアンテナ21と、拡声器22と、FM送信部23が接続され、FM送信部23には時計24とFM用アンテナ25が接続され、時計24にはGPS受信機26が接続されている。尚、拡声器22は、屋外に設置されている。
また、FM用アンテナ25から時分割に送信されたFM波はFMラジオ30で受信され、防災放送を聴くことができる。
【0024】
アンテナ21で一斉放送の電波を受信し、防災子局受信部20に入力して拡声音声信号を拡声器22とFM送信部23に出力する。拡声器22は、拡声音声信号を拡声音として出力する。
【0025】
GPS受信機26では、GPSシステムを利用して高精度な基準時刻を取得し、時計24に出力する。時計24は、基準時刻を基にFM送信部23でのFM波送信のタイミングを提供する。GPS受信機26は、時刻制御部に相当する。
【0026】
尚、
図1の上段の時計AがエリアA用であり、中段の時計BがエリアB用であり、下段の時計CがエリアC用である。
エリア毎に時計24が同一周波数を使って時分割送信を行うために、異なる動作をするようになっている。
【0027】
具体的には、時計Aは、毎分の0~5秒、15~20秒、30~35秒、45~50秒にFM波の送信出力をオン(ON)にする制御を行い、時計Bは、毎分の5~10秒、20~25秒、35~40秒、50~55秒にFM波の送信出力をONにする制御を行い、時計Cは、毎分の10~15秒、25~30秒、40~45秒、55~60秒にFM波の送信出力をONにする制御を行う。後述するが、ONの時間帯は各時計で重複しないよう切り替わるようになっている。
【0028】
第1の無線送信システムでは、FM波の時分割送信をGPS受信機26の基準時刻を用いて制御するようにしているので、時分割送信を正確に実現でき、周波数の有効利用を図ることができ、防災放送を一般のFMラジオで聴くことができる。
【0029】
[第2の無線送信システム:
図2]
次に、本無線システムについて第2の無線送信システムについて
図2を参照しながら説明する。
図2は、第2の無線送信システムの構成概略図である。
第2の無線送信システムは、
図2に示すように、第1の無線送信システムと同様に、防災親局送信部10と、複数の防災子局受信部20と備え、無線通信により防災親局送信部10から防災子局受信部20に一斉通報が為される。
【0030】
第2の無線送信システムの特徴は、後述するプリセット送信部15が時刻を同期させるための同期タイミング信号を音信号で生成し、防災親局送信部10で音声信号に含めて防災子局受信部20に送信する。同期タイミング信号の音信号は、音声の音声信号とは重ならないように制御されるが、重なった場合には同期タイミング信号が優先されるようになっている。
そして、後述するプリセット受信部27で同期タイミング信号を取得し、その同期タイミング信号に合わせて時計24の時刻合わせ(同期)を行い、時計24の時刻に従いFM送信部23での時分割送信のタイミングを制御するようになっている。
【0031】
[親局側]
第1の無線送信システムの親局側は、防災親局送信部10に切替器16を介してマイク11が、切替器18を介してマイクONスイッチ12が、そしてアンテナ13が接続されている。
また、切替器16にはプリセット送信部15が接続され、同期タイミング信号が入力されるようになっている。
そして、コントローラ14が、切替器16,18の切替制御を行い、プリセット送信部15に同期タイミング信号送出の指示を出力する。
また、切替器18の一方の入力はマイクONスイッチ12であり、他方の入力は拡声ON出力部17である。
【0032】
親局側の動作を簡単に説明する。
通常は、コントローラ14が切替器16,18を制御し、マイク11の入力を選択し、マイクONスイッチ12の入力を選択しているので、音声入力する時にマイクONスイッチ12を押して拡声ON状態にし、マイク11で音声を入力し、防災親局送信部10から拡声音声がアンテナ13を介して一斉送信される。
【0033】
そして、コントローラ14は、1時間に1回、例えば、「0分0秒」のタイミングでプリセット送信部15に同期タイミング信号を出力するよう指示すると、プリセット送信部15は、音信号である同期タイミング信号を切替器16に出力する。
【0034】
この時、コントローラ14は、切替器16にプリセット送信部14からの信号を選択するよう制御しており、切替器18には拡声ON出力部17の入力(拡声ON信号)を選択するよう制御している。これは、拡声ON信号が防災親局送信部10に入力されている状態でないと、同期タイミング信号を送信できないからである。
【0035】
[子局側]
第2の無線送信システムの子局側は、防災子局受信部20にアンテナ21と、拡声器22と、FM送信部23が接続され、FM送信部23には時計24とFM用アンテナ25が接続され、時計24にはプリセット受信部27が接続されている。尚、拡声器22は、屋外に設置されている。
また、FM用アンテナ25から時分割に送信されたFM波はFMラジオ30で受信され、防災放送を聴くことができる。
【0036】
アンテナ21で一斉放送の電波を受信し、防災子局受信部20に入力して拡声音声信号を拡声器22とFM送信部23に出力する。拡声器22は、拡声音声信号を拡声音として出力する。
【0037】
プリセット受信部27では、防災親局送信部10から送信された同期タイミング信号を検出し、時計24にその同期タイミング信号を基に生成したパルス信号を出力する。時計24は、そのパルス信号を基に時刻情報を調整し、FM送信部23でのFM波送信のタイミングを提供する。プリセット受信部27は、時刻制御部に相当する。
【0038】
尚、
図1で説明したように、上段の時計AがエリアA用であり、中段の時計BがエリアB用であり、下段の時計CがエリアC用である。
エリア毎に時計24が同一周波数を使って時分割送信を行うための動作は、
図1で説明した内容と同様である。
【0039】
[第2の無線送信システムの動作:
図3]
次に、第2の無線送信システムの動作について
図3を参照しながら説明する。
図3は、第2の無線送信システムの動作タイミングチャートである。
まず、
図3において「C1」は、コントローラ14からプリセット送信部15、切替器16,18に出力されるタイミング信号のパルスである。このパルスは、親局側にGPS受信機を設置して、GPS受信信号からパルスを生成してもよい。
【0040】
そして、このパルスによってプリセット送信部15から同期タイミング信号が生成される。
「T信号」は、同期タイミング信号であり、拡声信号として送信するために音信号である。
【0041】
「PRS」は、プリセット受信部27で、同期タイミング信号を検出して生成されたパルス信号である。
「PL-A」は、上記パルス信号を基にした時計AからFM送信部23に出力されるタイミング信号である。
「PL-B」は、同様に、時計BからFM送信部23に出力されるタイミング信号であり、「PL-C」は、時計CからFM送信部23に出力されるタイミング信号である。
【0042】
「PL-A」、「PL-B」、「PL-C」のタイミング信号を形成することで、FM送信部23からFM波を時分割で送信できるようになる。
「C1」のパルスは、1時間に1回生成され、「T信号」の同期タイミング信号の生成とそれを基にした「PRS」のパルスの生成、そして「PL-A」、「PL-B」、「PL-C」のタイミング信号の形成が繰り返される。
【0043】
「マイク音声」は、マイク11から入力された音声信号であり、「マイクON」は、マイクONスイッチ12がオンされたタイミングを示している。
「拡声音」は、防災子局受信部20で受信され、拡声器22から出力される拡声音である。同期タイミング信号も音信号であるので、拡声音に現れている。
【0044】
「FM波A」、「FM波B」、「FM波C」は、各エリアのFM用アンテナ25から時分割に送信されるFM波である。このFM波は、時計A,B,Cで生成された「PL-A」、「PL-B」、「PL-C」のタイミング信号に従っている。
【0045】
第2の無線送信システムでは、FM波の時分割送信を防災親局送信部10から送信された同期タイミング信号を用いて制御するようにしているので、GPS受信機を用いることなく時分割送信を正確に実現でき、周波数の有効利用を図ることができる。
特に、GPS受信環境が良好でない環境での利用が期待でき、更に回路構成のコストを低減できる効果がある。
【0046】
[プリセット音の拡声防止:
図4]
次に、第2の無線送信システムにおけるプリセット音の拡声防止について
図4を参照しながら説明する。
図4は、プリセット音の拡声防止の構成概略図である。
プリセット音の拡声防止の構成は、第2の無線送信システムの子局側の改良となる。よって、第2の無線送信システムの構成と相違する部分を中心に説明する。
【0047】
第2の無線送信システムの拡声器22からは、同期タイミング信号の音信号がプリセット音として出力されてしまう。ノイズのように感じられるので、そのプリセット音を消去するのが
図4の構成である。
【0048】
図4に示すように、子局側で、防災子局受信部20と拡声器22との間に、遅延部28aと、検知部28bと、スイッチ(SW)28cとが設けられている。この3つの構成を「消音部」と称することがある。
遅延部28aは、入力される拡声音の信号をプリセット音の発生期間遅延させ、SW28cに出力する。
検知部28bは、入力される拡声音の信号からプリセット音を検知し、プリセット音の発生期間にパルス信号「Cr1」をSW28cに出力する。
【0049】
SW28cは、遅延部28aからの拡声音の信号を拡声器22とFM送信部23に出力するが、検知部28bからCr1のパルスが入力されている間は出力をオフにする。これにより、プリセット音がカットされる。
【0050】
よって、拡声器22からプリセット音が出力されることがなく、更にFM送信部23からのFM波にもプリセット音が含まれることがない。
尚、防災子局受信部20からの拡声音の信号は、遅延部28a、検知部28b及びプリセット受信部27に入力される。プリセット受信部27では、第2の無線送信システムにおける処理と同様の処理を行う。
【0051】
[プリセット音の拡声防止の構成における動作:
図5]
次に、プリセット音の拡声防止の構成における動作について
図5を参照しながら説明する。
図5は、プリセット音の拡声防止の構成における動作タイミングチャートである。
図3と相違する点を説明する。
【0052】
「Cr1」は、遅延部28aでプリセット音を検知して、プリセット音の発生期間出力されるパルスである。
「拡声音DL」は、遅延させた拡声音の信号を示している。
「SW」は、パルスCr1の入力によりスイッチがオフとなるタイミングを示している。
「拡声音DL-SW」は、プリセット音がカット(除去)された遅延の拡声音の信号が示されている。
【0053】
プリセット音の拡声防止の構成によれば、プリセット音を除去して拡声音だけを拡声器22から出力でき、FM波にもプリセット音が乗ることがないので、プリセット音がノイズとして発生することがない。
【0054】
[FM波出力遠隔制御:
図6~8]
次に、FM送信部23からのFM波出力(電波出力)を遠隔制御するシステムについて
図6~8を参照しながら説明する。
図6は、電波出力の遠隔制御を行う親局側を示す構成概略図であり、
図7は、電波出力の遠隔制御を行う子局側を示す構成概略図であり、
図8は、電波出力の遠隔制御の構成における動作タイミングチャートである。
尚、
図6は、
図2の第2の無線送信システムを基にしているが、第1の無線送信システムに適用してもよい。また、
図7は、
図4のプリセット音の拡声防止の構成を基にしているが、第1の無線送信システム、
図2の第2の無線送信システムに適用してもよい。
【0055】
[親局側:
図6]
FM波出力遠隔制御の親局側は、
図6に示すように、
図2の構成にMコントローラ19aと、レベル制御信号発生器19bと、加算器19cと、加算器19dとが追加されている。追加された構成を中心に説明し、
図2で説明した構成についての説明は省略する。
【0056】
Mコントローラ19aは、レベル制御信号等を送信するタイミングを発生させるものであり、そのタイミングとなるパルスM1を生成し、レベル制御信号発生器19b、加算器19dに出力する。
【0057】
レベル制御信号発生器19bは、FM波の出力レベルを制御するレベル制御信号(レベル値データ)と識別子(ID)の信号とを含むレベル制御信号等を生成し(発生させ)、Mコントローラ19aからのパルスM1のタイミングにより加算器19cに出力する。
レベル制御信号は、子局側のFM送信部23から出力される電波(FM波)のレベルを調整するための制御信号である。
IDは、FM波の出力レベルを制御する子局側のIDである。
【0058】
加算器19cは、レベル制御信号発生器19bからの信号(レベル制御信号等)とプリセット送信部15からの信号(同期タイミング信号)とを加算して切替器16に出力する。
プリセット送信部15は、後述するように、パルスC1,M1で同期タイミング信号を出力するので、レベル制御信号等が出力される場合には、同期タイミング信号に加算されて加算器19cから出力されることになる。
切替器16には、加算器19cから同期タイミング信号とレベル制御信号等が加算された同期タイミング信号とが入力される。
【0059】
加算器19dは、Mコントローラ19aからのパルスM1(レベル制御信号送信タイミング)とコントローラ14からのパルスC1(同期タイミング信号の出力指示)を入力して加算(論理和)し、切替器16,18、プリセット送信部15に出力する。
よって、プリセット送信部15は、加算器19dからパルスC1,M1を入力すると、音信号である同期タイミング信号を加算器19cに出力する。
従って、パルスM1によってプリセット送信部15から同期タイミング信号とレベル制御信号発生器19bからレベル制御信号等が同時に加算器19cに入力され、加算して音信号であるレベル制御信号等が切替器16に出力される。
【0060】
[子局側:
図7]
FM波出力遠隔制御の子局側は、
図7に示すように、
図4の構成にID検知・比較部29aと、レベル記憶部29bとが追加されている。追加された構成を中心に説明し、
図4で説明した構成についての説明は省略する。
【0061】
ID検知・比較部29aは、防災子局受信部20からの拡声音の信号からレベル制御信号等を入力し、そのレベル制御信号等に含まれる子局側のIDを検知する。
そして、ID検知・比較部29aは、検知したIDが予め設定されている当該子局側のID(個ID)と比較し、一致した場合にレベル記憶部29bにレベル更新信号(レベル更新パルス:Cid)を出力する。
【0062】
レベル記憶部29bは、防災子局受信部20からの拡声音の信号からレベル制御信号等を入力し、ID検知・比較部29aからレベル更新パルスが入力された場合に、そのレベル制御信号等に含まれるFM波の出力レベルのレベル値データを記憶すると共に、FM送信部23のPL入力端子にそのレベル値データを出力する。
【0063】
FM送信部23は、レベル記憶部29bからPL入力端子に入力されたレベル値データに基づいて、FM用アンテナ25から放出されるFM出力のレベルを調整する。
尚、PL入力端子は、FM波の出力レベルを制御するための端子である。
従って、FM送信部23からFM波の出力レベルは、レベル記憶部29bからのレベル値データによって増減される。
【0064】
[電波出力の遠隔制御の動作:
図8]
次に、
図6,7で示した電波出力の遠隔制御の無線通信システムにおける動作について
図8を参照しながら説明する。
図8において、親局側で、コントローラ14からの同期タイミング信号の発生タイミングとなるパルスC1と、プリセット送信部15からの同期タイミング信号(T信号)と、Mコントローラ19aからのレベル制御信号等の発生タイミングとなるパルスM1と、レベル制御信号発生器19bから加算器19cを介して出力されるレベル制御信号等(ID,レベル信号)とが示されている。
【0065】
また、子局側で、プリセット受信部27からのプリセットパルスPRSと、検知部28bからの検知パルスCr&mと、SW28cのオン/オフの動作と、ID検知・比較部29aからのレベル更新パルスCidと、レベル記憶部29bでの記憶値(レベル値)と、FM波Aの出力レベルとが示されている。
【0066】
親局側では、コントローラ14からのパルスC1によりプリセット送信部15から同期タイミング信号(T信号)の音信号が生成され、Mコントローラ19aからのパルスM1により、レベル制御信号発生器19bから加算器19cを介してレベル制御信号等(ID,レベル信号)の音信号が生成される。
【0067】
子局側では、防災子局受信部20からの拡声音声出力に対して、検知部28bが音信号を検出してパルスCr&mを生成してSW28cに出力して、SW28cでON/OFFの切替動作が為される。
【0068】
そして、ID検知・比較部29aが、拡声音声出からレベル制御信号等(ID,レベル信号)を検出して、IDが一致する場合にレベル更新パルスCidをレベル記憶部29cに出力し、レベル値の変更を行う。
図8では、レベル値が100%から90%に変更になっている。
それにより、FM送信部23のPL入力端子に変更になったレベル値が入力され、FM波Aの出力が変更となる。
【0069】
以上のように、電波出力の遠隔制御の構成によれば、親局側にMコントローラ19aとレベル制御信号発生器19bと、加算器19c,19dとを追加し、子局側にID検知・比較部29aとレベル記憶部29bを追加することにより、親局側は、子局側毎(子局ID毎)に任意のFM波の出力レベルを遠隔によって調整することができる。
【0070】
[エリアのグループ分け]
また、エリアのグループ分けでは、隣接するエリア同士は別グループとするのがよい。
そのためには、上記の例では3つにグループ分けしたが、グループ分けの数を10に増やすようにすれば、隣接するエリアとの境界で受信劣化を低減させることができる。
【0071】
[グループを3つに分けた例:
図9]
例えば、エリアのグループを3つに分けた例について
図9を参照しながら説明する。
図9は、グループを3つに分けた例を示す概略図である。
図9に示すように、隣接するエリア同士は別グループとするもので、図面の水平方向の第1段目にはAグループを、第2段目にはBグループを、第3段目にはCグループを配置している。
【0072】
図9では、B中心付近において、B相ではB1とB2とも等距離だが、距離が遠く、自局のBが支配的であり、大きなDU(希望波/妨害波の比率)を確保できる。
もし、B相をA相にしてしまうと、隣接のA1とA2との距離が等しく、およそ等DUになってしまい、受信による聞き取り状況は劣化しやすい。
【0073】
[グループを9つに分けた例:
図10]
例えば、エリアのグループを9つに分けた例について
図10を参照しながら説明する。
図10は、グループを9つに分けた例を示す概略図である。
図10に示すように、隣接するエリア同士は別グループとするもので、図面の水平方向の第1段目にはA,B,C,Aのエリアを、第2段目にはD,E,F,Dのエリアを、第3段目にはG,H,i,Gのエリアを、第4段目には、A,B,C、Aのエリアを配置している。
【0074】
図10において、9グループの分割であれば、2次元配置の場合、他相の局を非等距離に配置できる。
例えば、
図10のEエリアの中心付近において、B相ではB1エリアが隣接するが、B2エリアは隣々接となり、DUは大きくなり、影響がほぼないものである。
【0075】
[実施の形態の効果]
本無線システムによれば、FM送信機23が、防災子局受信部20で受信した音声信号を特定の周波数のFM波に変換して送信し、GPS受信機26又はプリセット受信部27の時刻制御部が、FM送信機における送信のタイミングとなる時刻を制御し、複数のエリアを当該複数より少ない数のグループに分け、当該グループ毎にFM送信機23が時刻制御部からの時刻に従ってグループに割り当てられた時間帯で時分割に特定の周波数のFM波を送信するものとしているので、時分割送信を実現して、周波数の有効利用を図ることができ、防災放送を一般のFMラジオで聴くことができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、同一の周波数を用いてエリアのグループ単位に時分割でFM波を送信することで、防災放送を一般のFM受信機で聴くことができる無線送信システムに好適である。
【符号の説明】
【0077】
10…防災親局送信部、 11…マイク、 12…マイクONスイッチ、 13…アンテナ、 14…コントローラ、 15…プリセット送信部、 16…切替器、 17…拡声ON出力部、 18…切替器、 19a…Mコントローラ、 19b…レベル制御信号発生器、 19c,19d…加算器 20…防災子局受信部、 21…アンテナ、 22…拡声器、 23…FM送信部、 24…時計、 25…FM用アンテナ、 26…GPS受信機、 27…プリセット受信部、 28a…遅延部、 28b…検知部、 28c…スイッチ(SW)、29a…ID検知・比較部、 29b…レベル記憶部