(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】玩具部品及び人形玩具
(51)【国際特許分類】
A63H 3/36 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
A63H3/36 D
(21)【出願番号】P 2021145699
(22)【出願日】2021-09-07
(62)【分割の表示】P 2020092518の分割
【原出願日】2020-05-27
【審査請求日】2023-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000135748
【氏名又は名称】株式会社バンダイ
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 俊
(72)【発明者】
【氏名】高橋 力也
【審査官】鈴木 崇雅
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3197087(JP,U)
【文献】特開2012-196524(JP,A)
【文献】米国特許第04504167(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 1/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人形玩具を構成する玩具部品であって、
第1の部品と、
第2の部品と、
前記第1の部品と前記第2の部品とを接続する接続部材と
、
前記第1の部品と前記第2の部品との位置関係を制御する構造体と
を備え、
前記接続部材は、前記第2の部品と接続する位置を異ならせることにより、前記第1の部品と前記第2の部品との接続関係を、異なる第1の位置関係と第2の位置関係とのいずれかにおいて維持可能に構成され、
前記接続部材は、突起部に対する接続孔の接続位置を異ならせることにより、前記第2の部品と接続する位置を異ならせるように構成され、
前記接続部材が、前記第1の部品と前記第2の部品との接続関係を第2の位置関係において維持する場合、前記第1の部品は前記第2の部品に対して回動可能であ
り、
前記構造体は、前記第1の部品及び前記第2の部品よりも前記人形玩具の内側に位置する、玩具部品。
【請求項2】
前記第1の位置関係における前記第1の部品と前記第2の部品との距離は、前記第2の位置関係における前記第1の部品と前記第2の部品との距離よりも短い、請求項1に記載の玩具部品。
【請求項3】
前記距離は、前記人形玩具の高さ方向の距離である、請求項2に記載の玩具部品。
【請求項4】
前記第1の部品と前記第2の部品との内側に内部部品を更に備え、
前記内部部品は、前記第2の位置関係において、前記第1の部品と前記第2の部品との離間により生じた隙間から視認可能に配置される請求項2または3に記載の玩具部品。
【請求項5】
前記接続部材は、前記第2の部品の突起部と接続するための接続孔を有し、
前記接続孔は、前記第1の部品と前記第2の部品とが前記第1の位置関係にある場合に前記突起部と接続される第1の孔と、前記第1の部品と前記第2の部品とが前記第2の位置関係にある場合に前記突起部と接続される第2の孔とを組み合わせた形状を有し、
前記接続孔が、前記第1の孔において前記突起部と接続されている間において前記第1の位置関係が維持され、前記第2の孔において前記突起部と接続されている間において前記第2の位置関係が維持される、請求項1から
4のいずれか1項に記載の玩具部品。
【請求項6】
前記接続部材は、前記第1の部品の軸部と第1の回動面において回動可能に接続され、
前記接続部材は、前記接続孔を介して、前記第2の部品と前記第1の回動面と垂直で、前記軸部と平行な第2の回動面において回動可能に接続される、請求項
5に記載の玩具部品。
【請求項7】
前記第2の部品の前記突起部の外形は円形であり、
前記接続部材は、前記突起部を軸として前記第2の回動面において回動する、請求項
6に記載の玩具部品。
【請求項8】
前記接続孔は、ひょうたん形状を有し、前記ひょうたん形状のくぼみ部分の径は、前記第1の孔及び前記第2の孔の直径よりも短い請求項
6または
7に記載の玩具部品。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の玩具部品を有する人形玩具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、玩具部品及び人形玩具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、人形玩具の胴体部、腕部、脚部等の各部位に関節構造を設けることが記載されている。ユーザは、このような人形玩具を所望の姿勢にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、人形玩具の変形を維持しつつ、姿勢を変化させることを可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、人形玩具を構成する玩具部品であって、
第1の部品と、
第2の部品と、
前記第1の部品と前記第2の部品との位置関係を制御する構造体と、
前記第1の部品と前記第2の部品とを接続する接続部材と
を備え、
前記接続部材は、前記第2の部品の突起部と接続するための接続孔を有し、
前記接続孔は、前記第1の部品と前記第2の部品との位置関係が第1の位置関係にある場合に前記突起部と接続される第1の孔と、前記第1の部品と前記第2の部品との位置関係が第2の位置関係にある場合に前記突起部と接続される第2の孔とを組み合わせた形状を有し、
前記接続孔が、前記第1の孔において前記突起部と接続されている間において、前記第1の位置関係が維持され、前記第2の孔において前記突起部と接続されている間において、前記第2の位置関係が維持される。
本発明は更に、人形玩具を構成する玩具部品であって、
第1の部品と、
第2の部品と、
前記第1の部品と前記第2の部品とを接続する接続部材と、
前記第1の部品と前記第2の部品との位置関係を制御する構造体と
を備え、
前記接続部材は、前記第2の部品と接続する位置を異ならせることにより、前記第1の部品と前記第2の部品との接続関係を、異なる第1の位置関係と第2の位置関係とのいずれかにおいて維持可能に構成され、
前記接続部材は、突起部に対する接続孔の接続位置を異ならせることにより、前記第2の部品と接続する位置を異ならせるように構成され、
前記接続部材が、前記第1の部品と前記第2の部品との接続関係を第2の位置関係において維持する場合、前記第1の部品は前記第2の部品に対して回動可能であり、
前記構造体は、前記第1の部品及び前記第2の部品よりも前記人形玩具の内側に位置する、玩具部品。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、人形玩具の変形を維持しつつ、姿勢を変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に対応する人形玩具の一例を示す図。
【
図2】実施形態に対応する人形玩具の胴体部を構成する玩具部品の正面の構成及び変形例の一例を示す図。
【
図3】実施形態に対応する人形玩具の胴体部を構成する玩具部品の背面の構成及び変形例の一例を示す図。
【
図4】実施形態に対応する玩具部品の断面及び玩具部品を構成するパーツの一例を示す図。
【
図5】実施形態に対応する人形玩具の胴体部の変形及び姿勢の変化に対応する玩具部品の断面の一例を示す図。
【
図6】実施形態に対応する玩具部品の背面パーツの一例を示す図。
【
図7】実施形態に対応する玩具部品の背面パーツの接続例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴うち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。また、各図において、紙面に対する上下左右方向を、本実施形態における部品(またはパーツ)の上下左右方向として、本文中の説明の際に用いることとする。
【0009】
まず、本実施形態に対応する人形玩具の外観の一例を
図1に示す。
図1は、実施形態に係る人形玩具100を示す模式図である。人形玩具100は、頭部110、胸部上方部(或いは単に胸部)112、胸部下方部(或いは腹部)113、腰部114、脚部115および腕部116を備える。個々の部位110~116は、隣接する部位に対して回動(或いは揺動)可能に支持される。例えば、頭部110は胸部112に対して回動可能に支持され、腹部113は腰部114に対して回動可能に支持され、脚部115は腰部114に対して回動可能に支持され、また、腕部116は胸部112に対して回動可能に支持される。また、詳細については後述とするが、腹部113は変形が可能に構成され、かつ、変形の前後において姿勢を変更可能に構成される。
【0010】
このようにして人形玩具100の各部位には関節構造が設けられており、ユーザ(例えば、人形玩具1の所有者)は、このような人形玩具100を、例えば左右に屈曲した姿勢等、所望の姿勢にすることができる。また、詳細については後述とするが、人形玩具100は装飾部品117を付随的に備え、この装飾部品117は胸部112背面側に取り付けられる。
【0011】
尚、本明細書においては、各部位の位置関係を説明するのに際して、前(前方)、後(後方)、左(左側方)、右(右側方)、上(上方)、下(下方)等と記載する場合があるが、これらの表現は人形玩具1を基準とした相対的なものである。例えば、前は人形玩具100正面側に対応し、後は人形玩具100背面側に対応する。
【0012】
次に
図2を参照して、腹部の構造の一例を示す。
図2は、腹部の正面を、参照番号113Aから113Dまでの4つの形態において示す。参照番号113Aは腹部113が上方向に展開していない変形前の状態を示している。これを第1の形態という。参照番号113Bは、腹部113が上方に展開して、脇から透明部品201が露出するように変形した状態となっている。これを第2の形態という。参照番号113C及び113Dは、それぞれ第2の形態における腹部113が左右に屈曲して姿勢が変化した状態を示している。
図2では省略しているが、第1の形態においても、左右に屈曲して姿勢を変化させることが可能であり、本実施形態は当該形態を含む。以下、同様である。
【0013】
次に
図3を参照して、腹部の背面の構成の一例を示す。
図3は、腹部の背面を参照番号113Aから113Dまでの4つの形態において示す。参照番号は
図2と共通であり、参照番号113Aは腹部113が上方向に展開していない第1の形態における変形前の状態を示している。参照番号113Bは、腹部113が上方に展開した第2の形態において、脇から透明部品201が露出するように変形した状態となっている。参照番号113C及び113Dは、それぞれ第2の形態における腹部113が左右に屈曲して姿勢が変化した状態を示している。
【0014】
腹部113は、背面に第1のパーツ301、第2のパーツ302及び接続パーツ303を含む。第1のパーツ301と第2のパーツ302とは参照番号113Aに示す第1の形態においては、互いに隣接し合う距離に配置されるが、参照番号113Bから113Dに示す第2の形態においては離間して配置され、離間により生じた第1のパーツ301と第2のパーツとの隙間から透明部品201を視認可能となる。
【0015】
接続パーツ303は、第1のパーツ301と第2のパーツ302とを接続し、その位置関係を保持するためのロック部材である。第1のパーツ301は接続パーツ303の上側の係合部と係合し、第2のパーツ302は接続パーツ303の下側の結合孔と結合する。これにより、接続パーツ303によるロック状態において、腹部の変形状態を第1の形態、又は、第2の形態において安定して保持する。第1のパーツ301はロック状態において、第1の形態及び第2の形態において腹部の変形状態を保持する一方で、左右への屈曲動作による姿勢変化を妨げないように構成されている。詳細は後述する。
【0016】
図4(A)は、
図2の腹部113Dの線A-Aを通る、図面に平行な面を切断面とした断面図であり、断面を正面から見た図である。
図4(B)は、
図4(A)において参照番号を付したパーツを分離して示した図である。
【0017】
図4(A)の断面におけるパーツ401、402、403、404が互いに連結し合って構造体を形成し、当該構造体と接続された第1のパーツ301及び第2のパーツ302との位置関係を制御し、腹部113が左右に屈曲して姿勢を変更可能に構成される。パーツ401の下部には、連結部401Ar及び401Alが配置され、これがパーツ402の上側の連結部402Arと402Alと回動可能に結合する。更に、パーツ402の下側の連結部402Brと402Blとが、パーツ403の上側の連結部403Ar、403Alと回動可能に連結する。更に、パーツ403の下側の連結部403Brと403Blとが、パーツ404の上側の連結部404Ar、404Alと回動可能に連結する。
【0018】
これにより、腹部113は、パーツ402の402Br、402Blと、パーツ403の403Ar、403Alとで構成される角度に応じて、パーツ401とパーツ404との距離を変更して腹部113を変形させたり、パーツ404に対するパーツ401の傾きを変更して腹部113の姿勢を変化させたりすることができる。
【0019】
図5は、
図2に対応する状態遷移をパーツ401から404からなる構造体の断面図により示した図である。参照番号113Aは、第1の形態における断面図の一例を示している。点線で囲んだ部分との関連で、パーツ402とパーツ403との結合部分の結合角度θを示している。参照番号113Bは、パーツ402とパーツ403との結合部分の結合角度θが、参照番号113Aの結合角度θよりも大きくなり、パーツ401とパーツ404との距離が広がっている。この結果として
図2に示すように腹部113の第1のパーツと第2のパーツとが離間により生じた隙間から内部部品201が露出する。参照番号113C及び113Dでは、パーツ402とパーツ403との結合部分の結合角度θが左右で異なるため、パーツ401がパーツ404に対して左右に傾いている。これにより腹部113の姿勢が変化する。
【0020】
このように、パーツ401から404を組合せてなる構造体により、腹部113を変形したり、姿勢を変化させたりすることが可能となる。
【0021】
次に、
図3で示した第1のパーツ301、第2のパーツ302及び接続パーツ303の役割について説明する。
図6(A)から(D)は、接続パーツ303を様々な角度で示した図である。
図6(A)は正面図、
図6(B)は斜視図、
図6(C)は右側面図、
図6(D)は、
図6(A)の線B-Bを切断面とした断面図である。
図6(F)は、第2の形態における直立姿勢(参照番号113Bに対応)における第1のパーツ301と第2のパーツ302との位置関係を示す背面の斜視図である。
【0022】
接続パーツ303の上側には、腹部113の第1のパーツ301の軸部611と係合により回動可能に支持するための係合部601が配置されている。接続パーツ303の回動面は軸部611の軸線に直交する面である。接続パーツ303の下側には、腹部113の第2のパーツ302の突起部612と結合するための結合孔602が設けられている。結合孔602は、2つの円形孔を組み合わせたようなひょうたん型をしており、第1のパーツ301と第2のパーツ302との位置関係、或いは、互いの距離が、
図2や
図4で示したように変化し、人形模型が変形した場合であっても、変化前後のそれぞれの形態を維持するように機能する。ひょうたん型のくぼみ部分603の径は、第2のパーツ302の突起部612の直径よりも短くなっており、突起部612は結合孔602内を容易に上下に移動することができない構造である。但し、本実施形態において、突起部612の結合孔602内の移動を禁止するものではない。一定以上の力がかかった場合には、上下に移動可能に構成することができる。このようにして、
図4で示した構造において第1の形態、または、第2の形態が実現された場合に、その状態を維持することができる。
【0023】
なお、
図6では、結合孔602を2つの円形孔の組合せとしたが、独立した円形孔を縦に2つ配置する形態であってもよい。
【0024】
図6(C)に示すように、係合部601は円形の溝を有しており、第1のパーツ301に設けられた柱状の軸部611と係合して、接続パーツ303を第1のパーツ301に対して回動可能に構成される。
図5に示した構造体において第1の形態から第2の形態への変化、或いは、第2の形態から第1の形態への変化に際しては、接続パーツ303の第2のパーツ302に対するロック状態を接続パーツ303を第1のパーツ301に対して回動することにより解除して、形態を変形した後に再度接続パーツ303を第2のパーツ302に対してロック状態とする。
【0025】
図7は、第1のパーツ301、第2のパーツ302、接続パーツ303の接続関係を説明するための図である。
図7では、
図2の113Aから113Dまでの4つの形態に対応する、第1のパーツ301から接続パーツ303の状態を示す。ここで、第1のパーツ301と第2のパーツ302とは実線で示し、接続パーツ303を点線で示している。接続パーツ303には、係合601と結合孔602との位置を点線で示している。参照番号113Aにおいては、第1の形態において、第1のパーツ301と第2のパーツ302とがほぼ接するように位置しており(これを第1の位置関係という)、これにより突起部612は結合孔602の上側の孔に位置している。結合孔602のひょうたん形の形状的特徴により突起部612は上側の孔から下側の孔にスライドして移動することができない。移動のためには、一旦パーツ303を軸部611を回転軸として回動させて、ロックを解除した上で、第1のパーツ301と第2のパーツ302とを引き離して、再度ロック状態としなければならない。
【0026】
再度ロックされた状態が参照番号113Bで示すものであり、第1のパーツ301と第2のパーツ302との距離は、第1の位置関係である参照番号113Aで示す状態よりも離れて位置している。このときの第1のパーツ301と第2のパーツ302との位置関係を第2の位置関係という。第2の位置関係においては、突起部612は結合孔602の下側の孔に位置している。そして、
図4及び
図5を参照して説明した内部の構造体に従って、第1のパーツ301と第2のパーツ302との位置関係が変化する場合に、結合孔602及び突起部612の形状が円形であるため、当該位置関係の変化に対応することができる。即ち、突起部612を軸として、腹部113の姿勢が変化するのに合わせて接続パーツ303を左右に回動させることができる。このときの接続パーツ303の回動面は、軸611と平行の面であり、接続パーツ303が軸611を回動軸として回動する場合の回動面とは直交している。
【0027】
なお、結合孔602と突起部612との結合力を高めるために、スナップボタン構造としてもよい。例えば、突起部612の先端に段差を設けて根元側よりも太くし、結合孔602の孔にも結合時に突起部612の先端を係止する突起を設けることができる。
【0028】
このように、本実施形態によれば、人形模型の腹部の構造体により、腹部を変形させることが可能であると共に、接続パーツ303により変形前、変形後の状態をそれぞれ維持することができる。その一方で、接続パーツ303は、変形後に構造体の変形による姿勢変更を妨げないので、変形前後において、姿勢の変更を自由に行うことができる。
【0029】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。