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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】柱の溶接方法、及び、溶接機械設置装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/028 20060101AFI20241010BHJP
   B23K 37/02 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
B23K9/028 J
B23K37/02 B
B23K37/02 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021150398
(22)【出願日】2021-09-15
(65)【公開番号】P2023042957
(43)【公開日】2023-03-28
【審査請求日】2024-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】近藤 祐輔
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-174237(JP,A)
【文献】特開2021-007978(JP,A)
【文献】特公昭51-026315(JP,B2)
【文献】特開2000-131056(JP,A)
【文献】特開平01-239268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/028
B23K 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドレールと当該ガイドレール上を水平方向に移動可能に構成された溶接ロボットとを備えた溶接機械を用いて、下側の柱の上に上側の柱を溶接する柱の溶接方法であって、
ガイドレールを設置するための設置部を備えた溶接機械設置装置を、下側の柱の側面に設けられたエレクションピースに固定した後に、当該エレクションピースに固定された溶接機械設置装置の設置部に溶接機械を設置して、当該溶接機械に、下側の柱の上端と上側の柱の下端との突き合わせ部分である溶接対象部への溶接を行わせることを特徴とする柱の溶接方法。
【請求項2】
請求項1に記載の溶接方法に使用する溶接機械設置装置であって、
下側の柱の側面に設けられたエレクションピースに固定するための取付部と、当該取付部がエレクションピースに固定された場合に水平面となる設置面とを備えたことを特徴とする溶接機械設置装置。
【請求項3】
取付部として、下側の柱の各側面にそれぞれ1つずつ設けられたエレクションピースに固定するための第1の取付部と、下側の柱の各側面にそれぞれ2つずつ設けられたエレクションピースに固定するための第2の取付部とを備えたことを特徴とする請求項2に記載の溶接機械設置装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下側の柱と上側の柱とを溶接機械を用いて溶接して接合する柱の溶接方法、及び、当該溶接機械を設置するための溶接機械設置装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下側の柱の上に上側の柱を溶接して継ぎ足す場合、溶接機械を用いて溶接することが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-174237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
溶接ロボットと当該溶接ロボットを水平方向に移動させるためのガイドレールとを備えた溶接機械を用いて、下側の柱の上に上側の柱を溶接して継ぎ足す場合、目標とする溶接対象部への正確な溶接を実現するためには、溶接の条件作成(ティーチング)後から溶接終了まで、溶接ロボットの正確な水平移動を維持しなければならない。
即ち、溶接の条件作成のためには、溶接ロボットの水平方向への移動をガイドするためのガイドレールを設置して、溶接ロボットを正確に動作させるための基準座標を設定しなければならず、このため、溶接機械のガイドレールを動かないように水平に設置できるように構成されたガイドレールの設置部が必要になる。
しかしながら、特許文献1に開示された溶接方法では、溶接機械の溶接ロボットの水平方向への移動をガイドするためのガイドレールを水平に設置するための設置部が、柱の互いに対向する側面を挟み付けるように設けられたクランプにより構成されているので、当該クランプにより構成された設置部が、溶接時に動いてしまう可能性があり、溶接ロボットが、目標とする溶接対象部に正確な溶接作業を行えない可能性があった。
本発明は、溶接機械のガイドレールを動かないように水平に設置するための設置部を構成できる溶接機械設置装置を用いた溶接方法、及び、当該方法に使用する溶接機械設置装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る柱の溶接方法は、ガイドレールと当該ガイドレール上を水平方向に移動可能に構成された溶接ロボットとを備えた溶接機械を用いて、下側の柱の上に上側の柱を溶接する柱の溶接方法であって、ガイドレールを設置するための設置部を備えた溶接機械設置装置を、下側の柱の側面に設けられたエレクションピースに固定した後に、当該エレクションピースに固定された溶接機械設置装置の設置部に溶接機械を設置して、当該溶接機械に、下側の柱の上端と上側の柱の下端との突き合わせ部分である溶接対象部への溶接を行わせることを特徴とする。
本発明に係る柱の溶接方法によれば、溶接機械のガイドレールを動かないように水平に設置するための設置部を構成できるので、溶接機械が、下側の柱の上端と上側の柱の下端との突き合わせ部分である溶接対象部に対して正確な溶接作業を行えるようになる。
また、上述した溶接方法に使用する本発明に係る溶接機械設置装置は、下側の柱の側面に設けられたエレクションピースに固定するための取付部と、当該取付部がエレクションピースに固定された場合に水平面となる設置面とを備えたことを特徴とする。
また、取付部として、下側の柱の各側面にそれぞれ1つずつ設けられたエレクションピースに固定するための第1の取付部と、下側の柱の各側面にそれぞれ2つずつ設けられたエレクションピースに固定するための第2の取付部とを備えたことを特徴とする。
本発明に係る溶接機械設置装置によれば、上述した柱の溶接方法を良好に実現できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】(a)は溶接機械設置装置を示す斜視図、(b)は溶接機械設置装置を前側から見た図、(c)は溶接機械設置装置を後側から見た図(実施形態1)。
図2】(a)は溶接機械設置装置を第1の取付部を介して下側の柱のエレクションピースに固定した後、溶接機械設置装置の設置面上に溶接機械を設置した状態を示す図、(b)は溶接機械設置装置を第2の取付部を介して下側の柱のエレクションピースに固定した後、溶接機械設置装置の設置面上に溶接機械を設置した状態を示す図(実施形態1)。
図3】溶接機械設置装置を第1の取付部を介して下側の柱のエレクションピースに固定した状態を示す斜視図(実施形態1)。
図4】溶接機械設置装置を第1の取付部を介して下側の柱のエレクションピースに固定した状態を示す断面図(図3のA-A断面図)(実施形態1)。
図5】溶接機械設置装置を第2の取付部を介して下側の柱のエレクションピースに固定した状態を示す斜視図(実施形態1)。
図6】溶接機械設置装置を第2の取付部を介して下側の柱のエレクションピースに固定した状態を示す拡大斜視図(実施形態1)。
図7】溶接機械設置装置を第2の取付部を介して下側の柱のエレクションピースに固定した状態を前側から見た図(実施形態1)。
図8】溶接機械設置装置を示す斜視図(実施形態2)。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
実施形態1に係る柱の溶接方法は、下側の柱の上に上側の柱を溶接して接合する柱の溶接方法であり、溶接機械設置装置固定ステップと、溶接機械設置ステップと、溶接ステップとを備える。
尚、本明細書においては、上、下、左、右、前、後は、図1に示した方向と定義して説明する。
【0008】
溶接機械設置装置固定ステップは、図1に示す溶接機械設置装置1を、図2図3図5に示すように、下側の柱2の側面20Sに設けられたエレクションピース22に固定するステップである。
尚、溶接機械設置装置1は、実施形態1においては、溶接機械を設置するための架台として機能するため、以下、溶接機械設置装置1を、架台1という。
溶接機械設置ステップは、図2に示すように、エレクションピース22に固定された架台1の設置面1t上に、溶接機械10を設置するステップである。
溶接ステップは、図2に示すように、架台1の設置面1t上に設置された溶接機械10に、下側の柱2の上端と上側の柱3の下端との突き合わせ部分である溶接対象部Sへの溶接を行わせることで、下側の柱2の上に上側の柱3を溶接接合するステップである。
【0009】
即ち、実施形態1に係る柱の溶接方法は、図2に示すように、ガイドレール12と当該ガイドレール12上を水平方向に移動可能に構成された溶接ロボット11とを備えた溶接機械10を用いて、下側の柱2の上に上側の柱3を溶接する柱の溶接方法であって、ガイドレール12を設置するための設置部としての水平な設置面1tを備えた架台1を、下側の柱2の側面20Sに設けられたエレクションピース22に固定した後に、当該エレクションピース22に固定された架台1の設置面1tに溶接機械10を設置して、当該溶接機械10に、下側の柱2の上端と上側の柱3の下端との突き合わせ部分である溶接対象部Sへの溶接を行わせる溶接方法である。
【0010】
下側の柱2及び上側の柱3は、例えばボックス柱と呼ばれる鋼柱である。
図2に示すように、下側の柱2は、柱部20と、柱部20の上端に設けられたトッププレート21とを備える。
上側の柱3は、柱部30と、柱部30の下端面より下方に突出するように設けられた裏当金31とを備える。
柱部20は、側面20S,20S…を形成する4枚のスキンプレートを溶接にて接合して断面四角中空柱状に形成される。
同様に、柱部30は、側面30S,30S…を形成する4枚のスキンプレートを溶接にて接合して断面四角中空柱状に形成される。
トッププレート21は、例えば柱部20の柱径よりも一回り大きい四角形状の平板により形成され、当該トッププレート21の外周側が柱部20の外周面(側面20S)より外方に突出するように設けられている。
裏当金31は、柱部30の各側面30S,30S…を構成する各スキンプレートの下端面より下方に突出する平板により形成される。尚、各裏当金31,31…は、柱部30を構成する各スキンプレートの下端側の内面に溶接にて接合されている。また、当該各平板で、柱部30の内周面に接触する外周面を形成する断面四角中空の裏当金筒状体が構成され、この柱部30の下端より下方に突出する当該裏当金筒状体の外周面が各裏当金31,31…の外表面となる。また、柱部30の各側面30S,30S…を形成する各スキンプレートの下端面が開先面32に形成されている。また、柱部30の下端より下方に突出する各裏当金31,31…の下端面は、柱部30の中心線と直交する同一平面状に位置されるように構成される。
【0011】
また、下側の柱2の柱部20の側面20S,20S…の上端側、及び、上側の柱3の柱部30の側面30S,30S…の下端側には、下側の柱2の上に上側の柱3を溶接して接合する際に、上下の柱2,3を垂直状態に仮固定するためのエレクションピースが設けられている。
尚、図2図3図5図7の各図では、架台1が固定される、下側の柱2の柱部20の側面20Sに設けられたエレクションピース22のみを図示し、その他のエレクションピースの図示は省略した。
【0012】
即ち、下側の柱2の上端となるトッププレート21の上面に、上側の柱3の下端となる各裏当金31,31…の下端面が突き合わされて、下側の柱2の各側面20S,20S…と上側の柱3の各側面30S,30S…とが同一平面上に位置されるように、エレクションピースを用いて仮固定された状態で、下側の柱2の上端と上側の柱3の下端との突き合わせ部分である溶接対象部Sへの溶接機械10を用いた溶接作業が行われる。
実施形態1に係る柱の溶接方法では、最初に、下側の柱2の1つの側面20Sの上方に位置されるトッププレート21の上面と上側の柱3の1つの側面30Sの下方に位置される裏当金31の下端面との突き合わせ部分である溶接対象部Sを溶接する場合に、当該下側の柱2の1つの側面20S以外の側面20S,20S…に設けられた図外のエレクションピースと上側の柱3の1つの側面30S以外の側面30S,30Sに設けられた図外のエレクションピースとを結合手段を用いて結合状態に固定することで、上下の柱2,3を垂直状態に仮固定した後に、図3図5に示すように、下側の柱2の1つの側面20Sに設けられたエレクションピース22に架台1を固定する。
尚、下側の柱2のエレクションピースと上側の柱3のエレクションピースと結合する結合手段としては、例えば、図外のプレート及びボルトや、専用の建方装置等の結合手段を用いればよい。
【0013】
図1に示すように、架台1は、本体5と、下側の柱2の側面20Sに設けられたエレクションピース22に取付けるための取付部とを備えた構成である。
【0014】
本体5は、例えば、一方のH形鋼50Aの上下のフランジ51,52の端縁と他方のH形鋼50Bの上下のフランジ51,52の端縁とを突き合わせた状態で、一方のH形鋼50Aの上のフランジ51の端縁と他方のH形鋼50Bの上のフランジ51の端縁とを溶接にて接合するとともに、一方のH形鋼50Aの下のフランジ52の端縁と他方のH形鋼50Bの下のフランジ52の端縁とを溶接にて接合することにより、一方のH形鋼50Aの上のフランジ51とウェブ53と下のフランジ52と他方のH形鋼50Bの上のフランジ51とウェブ53と下のフランジ52とで囲まれた断面矩形状の筒状部55が形成されるように構成されている。
そして、互いに突き合わされた一方のH形鋼50Aの上のフランジ51及び他方のH形鋼50Bの上のフランジ51の外側の板面、又は、互いに突き合わされた一方のH形鋼50Aの下のフランジ52及び他方のH形鋼50Bの下のフランジ52の外側の板面のうちの、少なくとも一方の板面が、設置面1tに形成される。
尚、設置面1tは、一方のH形鋼50Aのフランジの外側の板面の端縁と他方のH形鋼50Bのフランジの外側の板面の端縁との境界の既溶接部分をグラインダー等の研削機械で研削することにより形成された平滑面により構成される。
【0015】
取付部は、下側の柱2の各側面20S,20S…にそれぞれ1つずつ設けられたエレクションピースに取付けるための第1の取付部6と、下側の柱2の各側面20S,20S…にそれぞれ2つずつ設けられたエレクションピースに取付けるための第2の取付部7とを備えた構成とした。
【0016】
第1の取付部6は、例えば、一方のH形鋼50Aの延長方向一端側(図1の前側)におけるウェブ53と当該ウェブ53の両方の板面に板面を接触させた状態で溶接された各添え板61,61…とを貫通するように形成されたねじ孔62と、他方のH形鋼50Bの延長方向一端側(図1の前側)におけるウェブ53と当該ウェブ53の両方の板面に板面を接触させた状態で溶接された各添え板61,61…とを貫通するように形成されたねじ孔62とで構成される。
尚、H形鋼50A,50Bに設けられるねじ孔62は、1つ以上であればよい。例えば、図1に示すように、ウェブ53の上下方向に所定の間隔を隔ててウェブ53の上下側に1つずつ設けるようにすればよい。
【0017】
第2の取付部7は、例えば、一方のH形鋼50Aの延長方向他端側(図1の後側)におけるウェブ53の板面(筒状部55の外側に位置する板面)に溶接で取付けられた溝形鋼70と、他方のH形鋼50Bの延長方向他端側(図1の後側)におけるウェブ53の板面(筒状部55の外側に位置する板面)に溶接で取付けられた溝形鋼70とで構成される。
換言すれば、溝形鋼70は、一方のH形鋼50Aや他方のH形鋼50Bのウェブ53の板面(筒状部55の外側に位置する板面)に一方のフランジ72の板面を接触させた状態で溶接されて、一方のH形鋼50Aや他方のH形鋼50Bに接合されたことによって、ウェブ71の板面が上下垂直方向及び左右水平方向に延長し、かつ、他方のフランジ73の板面が上下垂直方向及び前後水平方向に延長するように構成される。
そして、一方のH形鋼50A及び他方のH形鋼50Bのウェブ53に接合された当該溝形鋼70,70の他方のフランジ73,73により、第2の取付部7が構成される。
【0018】
溶接機械10は、溶接ロボット11と、ガイドレール12とを備え、当該溶接ロボット11がガイドレール12上を水平方向に移動可能に構成されている。
【0019】
下側の柱2の各側面20S,20S…において、当該側面20Sの幅方向の中央側にエレクションピースが1つずつ設けられている場合、架台固定ステップでは、図2(a),図3図4に示すように、第1の固定手段としてのボルト65を用いて架台1の第1の取付部6をエレクションピース22に固定することによって、架台1が動かないように当該架台1がエレクションピース22に強固に固定される。従って、架台1の設置面1tが、溶接機械10のガイドレール12を動かないように水平に設置するための動かない設置部としての水平な設置面となり、当該架台1の水平な設置面1tに、溶接機械10のガイドレール12を動かないように水平に設置できるようになる。
【0020】
柱2の各側面20S,20S…において、当該側面20Sの幅方向に沿って所定の間隔を隔ててエレクションピースが2つずつ設けられている場合、固定ステップでは、図2(b),図5図6図7に示すように、例えば第2の固定手段としての万力75を用いて、架台1の第2の取付部7をエレクションピース22に固定することによって、架台1が動かないように当該架台1がエレクションピース22に強固に固定される。従って、架台1の設置面1tが、溶接機械10のガイドレール12を動かないように水平に設置するための動かない設置部としての水平な設置面となり、当該架台1の水平な設置面1tに、溶接機械10のガイドレール12を動かないように水平に設置できるようになる。
【0021】
尚、図2図3図5に示すように、架台1は、例えば鉄骨建築現場の床面や梁の上面等の基準面98に、高さ調整部材99を介して設置される。例えば、高さ調整部材99を用いて、架台1の設置面1tが、下側の柱2の1つの側面20Sの上方に位置されるトッププレート21の上面に近い水平面上に位置されるように調整する。
【0022】
例えば、下側の柱2の側面20Sに設けられた1つのエレクションピース22が架台1の筒状部55の前側開口を介して筒状部55内に位置されるように、架台1を基準面98に設置した後、H形鋼50A,50Bに設けられた第1の取付部6としてのねじ孔62に、図4に示すように、第1の固定手段としてのボルト65を螺着し、エレクションピース22の両方の板面を、左右両側のボルト65,65の先端65t,65tで挟み付けることで、架台1をエレクションピース22に固定する。
【0023】
また、例えば、下側の柱2の側面20Sに設けられた2つのエレクションピース22,22の板面とH形鋼50A,50Bに設けられた第2の取付部7としての溝形鋼70,70の他方のフランジ73,73の外側の板面とが離間又は接触して対向するように、架台1を設置する。
その後、図5図6図7に示すように、右のH形鋼50Aに設けられた右の溝形鋼70の他方のフランジ73と右のエレクションピース22とを第2の固定手段としての万力75を用いて挟み付けるとともに、同様にして、左のH形鋼50Bに設けられた左の溝形鋼70の他方のフランジ73と左のエレクションピース22とを第2の固定手段としての万力75を用いて挟み付けることによって、架台1を左右のエレクションピース22,22に固定する。
実際には、H形鋼や溝形鋼は寸法が規格化されているため、左右のエレクションピース22,22の互いに対向する板面間の間隔W1の寸法と左右の溝形鋼70,70の他方のフランジ73,73の外側の板面間の間隔W2の寸法とを合わせて、左右のエレクションピース22,22の板面と左右の溝形鋼70,70の他方のフランジ73,73の外側の板面とを接触させることは困難である。
従って、上述した間隔W2の寸法を間隔W1の寸法よりも小さくして、溝形鋼70の他方のフランジ73の外側の板面とエレクションピース22の板面との間に、間隙(空間)を持たせた状態で、溝形鋼70の他方のフランジ73とエレクションピース22とを万力75で挟み付けるようにすればよい。このようにしても、左右側でエレクションピース22と溝形鋼70の他方のフランジ73とが万力75で固定されるため、このように固定された架台1は左右方向に動くことはない。
尚、上述した間隔W2の寸法と間隔W1の寸法とを合わせることができれば、左右の溝形鋼70,70の他方のフランジ73,73の外側の板面と左右のエレクションピース22,22の板面とを接触させた状態としてから、万力75を用いて両者を挟み付けるようにしてもよいことはもちろんである。
【0024】
次に、溶接機械設置ステップでは、エレクションピース22に固定された架台1の水平な設置面1tに、ガイドレール12を水平に延長するように設置するとともに、溶接ロボット11を当該ガイドレール12上に水平移動可能なように設置する。即ち、溶接の条件作成(ティーチング)を行うことができるように、架台1の設置面1tに、ガイドレール12を固定状態に設置し、かつ、当該ガイドレール12上を移動可能なように溶接ロボット11をガイドレール12に組み付ける。
【0025】
そして、溶接ステップでは、架台1の設置面1tに設置された溶接機械10に、下側の柱2の上端と上側の柱3の下端との突き合わせ部分である溶接対象部Sへの溶接を行わせることで、下側の柱2の上に上側の柱3を溶接接合する。
即ち、図2に示すように、溶接ロボット11の溶接トーチ11tが溶接対象部Sに沿って移動することで、溶接対象部Sへの溶接が行われる。
この場合、下側の柱2及び上側の柱3の一つの側面20S,30Sにおける溶接対象部Sへの溶接が終了する毎に、架台1をエレクションピースから取り外して、架台1を下側の柱2のその他の側面20Sに設けられたエレクションピースに固定する。
つまり、実施形態1では、架台1を、1つ1つの側面20Sに設けられたエレクションピースに順次取付直して行くことで、下側の柱2及び上側の柱3の4つの各側面20S,30Sにおける溶接対象部Sに対して順番に溶接を行う。
そして、すべての溶接作業が終了して、下側の柱2の上に上側の柱3が溶接接合された後に、下側の柱2及び上側の柱3の一つの側面20S,30Sに設けられていたエレクションピースを切断して取り除く。
【0026】
実施形態1に係る柱の溶接方法によれば、下側の柱2の側面20Sに設けられたエレクションピースを利用し、架台1が第1の取付部6又は第2の取付部7により当該エレクションピースに強固に固定されたことによって、溶接機械10のガイドレール12を動かないように水平に設置するための水平な設置面1tが動かない設置部を構成できる。
従って、当該架台1の設置面1tにガイドレール12を設置するとともに、ガイドレール12に溶接ロボット11を組み付けて、溶接ロボット11に溶接の条件作成(ティーチング)を行うことにより、当該溶接ロボット11が、下側の柱2の上端と上側の柱3の下端との突き合わせ部分である溶接対象部Sに対して正確な溶接作業を行えるようになる。
【0027】
実施形態2
架台は、図8に示すような、架台1Xを用いても良い。
当該架台1Xは、本体5Aと、下側の柱2の側面20Sに設けられたエレクションピース22に取付けるための取付部とを備えた構成である。
【0028】
本体5は、例えば、H形鋼50により構成される。
取付部は、実施形態1で説明した架台1と同様に、第1の取付部6と、第2の取付部7とを備えた構成とした。
当該架台1Xにおいては、第1の取付部6は、例えば、H形鋼50の延長方向一端側(図8の前側)におけるウェブ53に形成されたボルト貫通孔66により構成される。
また、当該架台1Xにおいては、第2の取付部7は、例えば、H形鋼50の延長方向他端側(図8の後側)におけるウェブ53の両方の板面にそれぞれ溶接で取付けられた溝形鋼70A,70Aにより構成される。
即ち、溝形鋼70Aは、H形鋼50のウェブ53の板面に一方のフランジ72の板面を接触させた状態で溶接されて、H形鋼50に接合されたことによって、ウェブ71の板面が上下垂直方向及び左右水平方向に延長し、かつ、他方のフランジ73の板面が上下垂直方向及び前後水平方向に延長するように構成される。
そして、H形鋼50のウェブ53の両方の板面に接合された当該溝形鋼70A,70Aの他方のフランジ73,73に形成されたボルト貫通孔76により、第2の取付部7が構成される。
尚、H形鋼50に設けられる第1の取付部6としてのボルト貫通孔66、及び、溝形鋼70Aの他方のフランジ73に設けられる第2の取付部7としてのボルト貫通孔76は、エレクションピース22に形成されたボルト貫通孔25(図2参照)に対応する位置に設けられる。
【0029】
実施形態2においては、下側の柱2の各側面20S,20S…において、当該側面20Sの幅方向の中央側にエレクションピースが1つずつ設けられている場合、架台1Xを、例えば鉄骨建築現場の床面や梁の上面等の基準面98に、高さ調整部材99を介して設置した後、架台1Xの第1の取付部6としてのボルト貫通孔66及びエレクションピース22に形成されたボルト貫通孔25に、図外のボルトを貫通させた後、当該ボルトの先端に図外のナットを締結することにより、架台1Xのウェブ53をエレクションピース22に固定すればよい。
また、下側の柱2の各側面20S,20S…において、当該側面20Sの幅方向に沿って所定の間隔を隔ててエレクションピースが2つずつ設けられている場合、架台1Xを、例えば鉄骨建築現場の床面や梁の上面等の基準面98に、高さ調整部材99を介して設置した後、架台1Xの第2の取付部7としてのボルト貫通孔76及びエレクションピース22に形成されたボルト貫通孔25に、図外のボルトを貫通させた後、当該ボルトの先端に図外のナットを締結することにより、架台1Xの溝形鋼70A,70Aのフランジ73,73をそれぞれ対応するエレクションピース22に固定すればよい。
以上により、架台1Xの設置面1tが、溶接機械10のガイドレール12を動かないように水平に設置するための水平な設置面となり、当該架台1Xの水平な設置面1tに、溶接機械10のガイドレール12を動かないように水平に設置できるようになる。
従って、実施形態1と同様に、当該架台1Xの設置面1tにガイドレール12を設置するとともに、ガイドレール12に溶接ロボット11を組み付けて、溶接ロボット11に溶接の条件作成(ティーチング)を行うことにより、当該溶接ロボット11が、下側の柱2の上端と上側の柱3の下端との突き合わせ部分である溶接対象部Sに対して正確な溶接作業を行えるようになる。
【0030】
尚、実施形態2においては、実施形態1と同様に、左右の溝形鋼70A,70Aの他方のフランジ73,73の外側の板面と下側の柱2の側面20Sに設けられた左右2つのエレクションピース22,22の板面とが離間又は接触して対向するように、架台1を設置し、その後、右の溝形鋼70Aの他方のフランジ73と右のエレクションピース22とを固定手段としての万力75を用いて挟み付けるとともに、左の溝形鋼70の他方のフランジ73と左のエレクションピース22とを固定手段としての万力75を用いて挟み付けることによって、架台1を左右のエレクションピース22,22に固定するようにしてもよい。
【0031】
本発明に係る柱の溶接方法は、例えば、本出願人が開発した以下のような鉄骨構造物の施工方法において下側の柱と上側の柱とを溶接する際に使用できる。
即ち、建設予定地における移動始点部に鉄骨構造物を横移動可能なように構成して、当該横移動可能に構成された鉄骨構造物を建設予定地における移動終点部まで横移動させた後に移動終点部の柱基礎に固定するようにした鉄骨構造物の施工方法において、移動始点部に各上側の柱3,3…を設けてこれら隣合う上側の柱3,3間に梁を組付けた鉄骨構造物を移動可能に構成し、移動可能に構成された鉄骨構造物を移動始点部から移動終点部まで横移動させ、移動終点部において、柱基礎に固定された各下側の柱2,2…に、横移動されてきた鉄骨構造物の各上側の柱3,3…を溶接して接合することにより、移動終点部の柱基礎に固定された鉄骨構造物を構築する場合に、上述した互いに対応する上下の柱2,3を溶接にて接合する際の溶接方法に使用できる。
この場合、架台1は、基準面98として基礎コンクリート床の上に設置すればよい。
【0032】
また、本発明に係る柱の溶接方法は、通常の鉄骨構造建物における下側の柱と上側の柱とを溶接にて継ぎ足す場合にも使用できる。この場合、例えば、下側の柱として、2フロア分の高さに相当する長さのものが用いられている場合には、架台1は、基準面98として3階の梁や床の上に設置すればよい。
【0033】
また、本発明において溶接対象となる柱は、上述したボックス柱以外の柱であってもよい。即ち、エレクションピースが取付けられた柱であれば、例えば、ボックス柱以外の角形鋼管柱、円形鋼管柱等の鋼管柱、あるいは、H形鋼等の鉄骨柱であってもよい。尚、円形鋼管柱を溶接対象とする場合は、円形鋼管柱の外周に沿って延長するようなガイドレールを用いればよい。
【0034】
また、実施形態で説明した柱の溶接方法では、水平面により形成された設置部としての設置面1tを有した溶接機械設置装置としての架台を用いた例を示したが、本発明に係る柱の溶接方法では、溶接機械のガイドレールを動かないように水平に設置するための設置部を備えた溶接機械設置装置を用いれば良く、必ずしも水平面により形成された設置面を有した溶接機械設置装置を用いる必要はない。
例えば、水平面では無い設置部を備えた溶接機械設置装置を用いて、何らかの取付部材を用いて溶接機械のガイドレールを動かないように水平に設置するようにしてもよい。
即ち、本発明に係る柱の溶接方法においては、エレクションピースに固定されて動かないように構成され、かつ、溶接機械のガイドレールを動かないように水平に設置できる設置部を備えた溶接機械設置装置を用いればよい。
【0035】
また、建築現場ではなく、工場などで本発明の溶接機械設置装置(架台)を使用した溶接を行うことも可能である。即ち、溶接機械設置装置を、基準面98としての工場の床面に設置して、下側の柱の上に上側の柱を溶接することも可能性である。
【0036】
また、溶接機械設置装置は、必ずしも基準面98に設置しなくてもよい。
即ち、本発明に係る柱の溶接方法においては、例えば、溶接機械設置装置は、エレクションピースに固定されて宙に浮いた状態で使用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 架台(溶接機械設置装置)、1t 設置面(設置部)、2 下側の柱、
3 上側の柱、6 第1の取付部、7 第2の取付部、10 溶接機械、
11 溶接ロボット、12 ガイドレール、20S 下側の柱の側面、
22 エレクションピース、S 溶接対象部。
図1
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