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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】シリンジポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04B 53/00 20060101AFI20241010BHJP
   F04B 13/00 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
F04B53/00 A
F04B13/00 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021156720
(22)【出願日】2021-09-27
(65)【公開番号】P2023047669
(43)【公開日】2023-04-06
【審査請求日】2023-12-25
(73)【特許権者】
【識別番号】591274059
【氏名又は名称】CFTランズバーグ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098187
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 正司
(72)【発明者】
【氏名】本崎 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】石橋 昇吉
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-344788(JP,A)
【文献】実公昭50-000246(JP,Y1)
【文献】特開2008-307538(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0216870(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 53/00
F04B 13/00
B05B 5/16
B05B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダに嵌挿されたピストンによってシリンダ内充填室が画成され、該シリンダ内充填室の液体を塗装機に供給するシリンジポンプであって、
前記ピストンの周面に配置した該ピストンの移動方向に離間した第1、第2のシールリングと前記シリンダの内壁とによって形成された洗浄空間と、
前記ピストンの周面に設けられ、前記第1、第2のシールリング間の前記洗浄空間を臨む位置に開口する洗浄液供給ポートと、
前記ピストンの周面に設けられ、前記洗浄空間を臨む位置に開口する洗浄液排出ポートと、
前記ピストンに連なるピストンロッドに設けられ、前記洗浄液供給ポートに連なる洗浄液供給通路と、
前記ピストンロッドに設けられ、前記洗浄液排出ポートに連なる洗浄液排出通路と、
前記洗浄液供給通路に設けられた洗浄液供給制御バルブと、
前記洗浄液排出通路に設けられた洗浄液排出制御バルブとを有し、
前記洗浄液供給制御バルブ、前記洗浄液排出制御バルブを開閉させることにより、前記洗浄空間に洗浄液を圧送し、該洗浄空間の洗浄液を外部に排出することができ
前記洗浄液供給通路の端部を前記ピストン内部で屈曲させることにより、前記ピストンの周面において、前記洗浄空間に臨んで開口する洗浄液供給ポートが形成され、
前記洗浄液排出通路の端部を前記ピストン内部で屈曲させることにより、前記ピストンの周面において、前記洗浄空間に臨んで開口する洗浄液排出ポートが形成されていることを特徴とするシリンジポンプ。
【請求項2】
請求項記載のシリンジポンプにおいて、
前記ピストンを平面視したときに、前記洗浄液供給ポートと前記洗浄液排出ポートとが径方向において互いに対して配置されている、シリンジポンプ
【請求項3】
請求項記載のシリンジポンプにおいて、
前記洗浄液排出ポートが、前記ピストンを平面視したときに、前記洗浄液供給ポートと重なり合う位置に配置されている、シリンジポンプ
【請求項4】
請求項記載のシリンジポンプにおいて、
前記洗浄液供給通路の端部が交差する前記ピストンの接線に対して、前記洗浄液供給通路の端部の中心線が傾斜され、これにより、前記洗浄液供給ポートから吐出された洗浄液の旋回流が形成される、シリンジポンプ
【請求項5】
請求項1に記載のシリンジポンプにおいて、
前記洗浄液供給ポートが複数のノズル穴で構成され、
該複数のノズル穴が周方向に離間して配置され且つ一方向に傾斜している、シリンジポンプ
【請求項6】
請求項1ないしのいずれか一項に記載のシリンジポンプにおいて、
前記シリンダの端部に開口し且つ液体塗料源に通じる塗料受け入れ通路と、
該塗料受け入れ通路に介装され且つシリンダ内充填室への塗料受け入れを制御する塗料受け入れ制御バルブと、
前記シリンダの端部に開口し且つ前記塗装機に通じる塗料供給通路と、
該塗料供給通路に介装され、前記塗装機への塗料の充填を制御する塗装機充填制御バルブとを更に有する、シリンジポンプ
【請求項7】
請求項に記載のシリンジポンプにおいて、
前記洗浄液供給通路を通じて圧力下の洗浄液が前記洗浄空間に供給される、シリンジポンプ
【請求項8】
請求項又はに記載のシリンジポンプにおいて、
前記洗浄液供給制御バルブと前記洗浄液排出制御バルブとを制御するコントローラを更に有し、
前記コントローラは通常制御モードを実行し、
該通常制御モードでは、前記洗浄液供給制御バルブが開かれ、一方、前記洗浄液排出制御バルブが閉じられる、シリンジポンプ
【請求項9】
請求項に記載のシリンジポンプにおいて、
前記コントローラは第2制御モードを実行可能であり、
前記第2制御モードでは、前記洗浄液供給制御バルブ及び前記洗浄液排出制御バルブが共に開かれる、シリンジポンプ
【請求項10】
請求項又はに記載のシリンジポンプにおいて、
前記コントローラは第3制御モードを実行可能であり、
該第3制御モードでは、前記洗浄液供給制御バルブ及び前記洗浄液排出制御バルブを共に開いて前記洗浄空間の洗浄液を入れ替えた後に、前記洗浄液供給制御バルブ及び前記洗浄液排出制御バルブが閉じられる、シリンジポンプ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装機に液体塗料、二液塗料の硬化剤等の液体を供給するのに用いられるシリンジポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、塗装ガンを備えた塗装ロボットに関連した液体塗料の供給及び洗浄液の供給のための装置を開示しており、この装置はシリンジポンプを含んでいる。この種のシリンジポンプは、シリンダの充填室に液体塗料などを充填し、次いで、ピストンを摺動させて充填室から塗料を押し出す。押し出された塗料は塗装ガンに供給される。
【0003】
特許文献1に開示のシリンジポンプは、シリンダ端部の周囲壁にポートを有し、このポートを通じて、塗料だけでなく、洗浄液、洗浄エアがシリンダに供給される。シリンダに摺動可能に嵌挿された押出用ピストンは、その周面に前方シールリングと、後方シールリングと、この前後のシールリングの間の隙間を有している。シリンジポンプの洗浄は、ピストンが押出位置つまり押出用ピストンがシリンダの端部に位置して、上記ポートが、上記前後のリングの間の隙間に臨む状態のときに実施される。
【0004】
特許文献2は、押出用ピストンのストローク端を規定するピストン座をシリンダの端に設け、このピストン座の凹所を通じて、押出用ピストンの周面の前後のシールリング間の隙間に洗浄液、洗浄エアを供給するシリンジポンプを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-344788号公報
【文献】特開2019-74000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2は、共に、ストローク端部に押出用ピストンを位置決めした状態でシリンジポンプの洗浄工程を実行する技術的思想に基づいているが、この洗浄工程では洗浄しきれないで残留物が残るという問題を有している。特許文献2は、この問題点を改善すべく、押出用ピストンをシリンダ端に位置決めした状態で洗浄、乾燥させると共に、乾燥が終わったらピストン座の凹所に開口するポートを通じてシール液を上記隙間に供給して、この隙間をシール液で満たすことを提案している。
【0007】
本発明の目的は、押出用ピストンの位置に制限されることなくシリンダの洗浄が可能なシリンジポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の技術的課題は、本発明によれば、
シリンダに嵌挿されたピストンによってシリンダ内充填室が画成され、該シリンダ内充填室の液体を塗装機に供給するシリンジポンプであって、
前記ピストンの周面に配置した該ピストンの移動方向に離間した第1、第2のシールリングと前記シリンダの内壁とによって形成された洗浄空間と、
前記ピストンの周面に設けられ、前記第1、第2のシールリング間の前記洗浄空間を臨む位置に開口する洗浄液供給ポートと、
前記ピストンの周面に設けられ、前記洗浄空間を臨む位置に開口する洗浄液排出ポートと、
前記ピストンに連なるピストンロッドに設けられ、前記洗浄液供給ポートに連なる洗浄液供給通路と、
前記ピストンロッドに設けられ、前記洗浄液排出ポートに連なる洗浄液排出通路と、
前記洗浄液供給通路に設けられた洗浄液供給制御バルブと、
前記洗浄液排出通路に設けられた洗浄液排出制御バルブとを有し、
前記洗浄液供給制御バルブ、前記洗浄液排出制御バルブを開閉させることにより、前記洗浄空間に洗浄液を圧送し、該洗浄空間の洗浄液を外部に排出することができ
前記洗浄液供給通路の端部を前記ピストン内部で屈曲させることにより、前記ピストンの周面において、前記洗浄空間に臨んで開口する洗浄液供給ポートが形成され、
前記洗浄液排出通路の端部を前記ピストン内部で屈曲させることにより、前記ピストンの周面において、前記洗浄空間に臨んで開口する洗浄液排出ポートが形成されていることを特徴とするシリンジポンプを提供することにより達成される。
【0009】
本発明によれば、ピストンがシリンダ端に位置しているときでも、ピストンが移動中であってもシリンダを洗浄することができる。本発明の詳細な作用効果及び他の目的は、以下の本発明の好ましい実施例の詳しい説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例のシリンジポンプを含む塗料供給装置の全体系統図である。
図2図1の要部拡大図であり、シリンジポンプの洗浄を説明するための図である。
図3】ピストンの断面図であり、洗浄液供給通路及び洗浄液排出通路の端部と、これに連なる洗浄液供給ポート及び洗浄液排出ポートの配置を説明するための図である。
図4図3の変形例を示す断面図であり、洗浄液供給通路及び洗浄液排出通路の端部と、これに連なる洗浄液供給ポート及び洗浄液排出ポートの配置の変形例を説明するための図である。
図5図4に図示の例の変形例を示す断面図である。
図6】洗浄液供給ポートが複数のノズル穴で構成された例を示す横断面図である。
図7図6に関連した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0011】
以下に、添付の図面に基づいて本発明の好ましい実施例を説明する。図1は、塗料供給装置2の全体系統図である。塗料供給装置2の概要を説明すると、塗料供給装置2はシリンジポンプ4を含み、シリンジポンプ4から例えば塗装ロボットに搭載されたベル型塗装機6に塗料が供給される。シリンジポンプ4には液体塗料源8から塗料、詳しくは二液塗料の硬化剤が供給される。塗料供給装置2はシリンジポンプ4を洗浄するための洗浄システム10を有している。
【0012】
シリンジポンプ4は、シリンダ40と、シリンダ40に嵌挿されたピストン42とを有し、ピストン42によってシリンダ内充填室44が画成されている。シリンダ40の端には、液体塗料源8に通じる塗料受け入れ通路46と、塗装機6に通じる塗料供給通路48とが形成されている。
【0013】
ピストン42はピストンロッド50の一端に連続して設けられ、ピストンロッド50の進退動作によってピストン42が駆動される。そして、ピストン42の動作によって、シリンダ内充填室44に塗料源8から塗料が充填され、また、充填室44の塗料がシリンダ40から押し出されて塗装機6に供給される。これらの制御は、塗料受け入れ通路46の第1の開閉バルブ(シリンダ内充填室への塗料受け入れ制御バルブ)52と、塗料供給通路48の第2の開閉バルブ(塗装機への塗料充填制御バルブ)54とによって制御される。すなわち、第1開閉バルブ52を開くことによって、塗料源8からシリンダ内充填室44に対する塗料の充填が実行される。第2の開閉バルブ54を開くことによって、シリンダ内充填室44の塗料を塗装機6に供給することができる。
【0014】
図2は、洗浄システム10の要部拡大図である。図1図2を参照してシリンジポンプ4の洗浄を説明すると、洗浄システム10は洗浄液源100を含む。洗浄液源100には洗浄液、典型的には有機溶剤が蓄えられている。洗浄液源100の洗浄液は、常時動作している洗浄液ポンプ120によって圧送される。洗浄システム10は、ピストンロッド50の内部に形成され且つピストンロッド50の軸線方向に延びる第1、第2の通路102、104を含む。第1の通路102は洗浄液源100に通じている。
【0015】
第1、第2の通路102、104は、その端部102a、104aがピストンロッド50からピストン42まで延び、第1、第2の通路102、104の端部102a、104aは好ましくは90度屈曲して径方向外方に延びて、ピストン42の周面に開口している。第1通路102の開口端を「洗浄液供給ポート」と呼び、参照符号Pt(su)を付す。第2通路104の開口端を「洗浄液排出ポート」と呼び、参照符号Pt(ex)を付す。
【0016】
ピストン42は、その周面に、ピストン42の移動方向に離間した第1、第2のシールリング56、58を有し、第1、第2のシールリング56、58の間に隙間つまり洗浄空間Sが形成されている。上記の洗浄液供給ポートPt(su)、洗浄液排出ポートPt(ex)は洗浄空間Sに臨んで配置されている。
【0017】
洗浄液源100に通じる第1通路102及びその端部102aは、洗浄空間Sに洗浄液を供給する「洗浄液供給通路」を構成し、この第1通路102には第1開閉バルブ110(図1)が介装されている。第1開閉バルブ110は、洗浄空間Sに対する洗浄液の供給を制御する「洗浄液供給制御バルブ」であり、第1開閉バルブ110を開くことによって、洗浄液源100の洗浄液が圧力下で第1通路(洗浄液供給通路)102を通り、洗浄液供給ポートPt(su)を通じて洗浄空間Sに吐出される。
【0018】
一方、第2通路104及びその端部104aは、洗浄空間Sから洗浄液を外部に排出する「洗浄液排出通路」を構成し、この第2通路104には第2開閉バルブ112(図1)が介装されている。第2開閉バルブ112は、洗浄空間S内の洗浄液の排出を制御する「洗浄液排出制御バルブ」であり、第2開閉バルブ112を開くことによって、洗浄空間Sの洗浄液が洗浄液排出ポートPt(ex)、第2通路(洗浄液排出通路)104を通って外部に排出される。外部に排出された洗浄液は、これを濾過して再利用してもよい。
【0019】
第1開閉バルブ(洗浄液供給制御バルブ)110及び第2開閉バルブ(洗浄液排出制御バルブ)112の制御は次の3つのモードを有している。
【0020】
通常制御モード(密封モード)
通常制御モードの下で、シリンジポンプ4からベル型塗装機6に塗料を供給する一連の動作が実行される。通常制御モードでは、第1開閉バルブ(洗浄液供給制御バルブ)110が開かれる。一方、第2開閉バルブ(洗浄液排出制御バルブ)112が閉じられる。第2開閉バルブ112を閉じた状態を維持しつつ第1開閉バルブ110を開いた状態を維持することで、洗浄空間S内の洗浄液にポンプ圧が作用した状態を継続することができる。そして、洗浄空間Sの洗浄液を加圧し続けることで、第1、第2のシールリング56、58に背圧を与え続けて、洗浄空間Sに塗料が侵入するのを防止できる。すなわち、通常制御モード(密封モード)を実行することで、洗浄空間Sに供給する洗浄液の圧力を利用して洗浄空間Sの圧力状態を制御することで、洗浄空間Sに塗料が侵入するのを防止できる。
【0021】
第2制御モード(循環モード)
第1開閉バルブ(洗浄液供給制御バルブ)110と第2開閉バルブ(洗浄液排出制御バルブ)112が共に開かれる。これにより、洗浄液源100から洗浄液ポンプ120を介して圧送される洗浄液が洗浄空間Sに供給され、洗浄空間Sの洗浄液が排出される。排出した洗浄液は濾過して再利用される。これにより、洗浄空間Sに洗浄液を供給すると共に排出し、排出された洗浄液を再度、洗浄空間Sに供給することができる。この洗浄液の循環の下でピストン42を動作させることで、ピストン42の移動中及びシリンダ端に位置しているときにシリンダ40の内壁面の汚れを除去することができる。
【0022】
第3制御モード(洗浄液の入れ替えモード)
第1開閉バルブ(洗浄液供給制御バルブ)110、第2開閉バルブ(洗浄液排出制御バルブ)112を共に開いて洗浄空間Sの洗浄液を入れ替えた後に、第1、第2開閉バルブ110、112を閉じることにより、例えば定期的に、洗浄空間Sに充填されている洗浄液を入れ替えることができる。
【0023】
エア抜き工程
通常制御モードを実行する前の準備工程として洗浄空間Sのエア抜きが実行される。エア抜きは次の手順で行われる。
(1)第1開閉バルブ(洗浄液供給制御バルブ)110、第2開閉バルブ(洗浄液排出制御バルブ)112を共に開く。
(2)次に、第2開閉バルブ(洗浄液排出制御バルブ)112の開閉動作を反復的に繰り返して洗浄空間Sの中のエアを十分に除去する。
(3)洗浄空間Sの中のエアを除去し終わったら、第2開閉バルブ(洗浄液排出制御バルブ)112を閉じる。
上記の工程(1)ないし工程(3)を行うことで、洗浄空間Sの中のエアを除去することができる。ちなみに、洗浄空間Sにエアが存在すると、このエアによってシリンダ40の内壁にできた塗料の薄膜が硬化してしまう恐れがある。
【0024】
通常制御モード、第2、第3の制御モードはコントローラCUによって制御される。すなわち、第1開閉バルブ(洗浄液供給制御バルブ)110、第2開閉バルブ(洗浄液排出制御バルブ)112がコントローラCUによって開閉制御される。コントローラCUに関連したメモリ150には、通常制御モード、第2制御モード、第3制御モードが記憶されており、コントローラCUは、予め設定した条件の下で、通常制御モード、第2制御モード、第3制御モードのいずれか一つのモードを選択して、選択した制御モードを実行する。
【0025】
実施例に含まれる洗浄システム10によれば、ピストン42の第1、第2シールリング56、58で囲まれた洗浄空間Sに臨む洗浄液供給ポートPt(su)、洗浄液排出ポートPt(ex)がピストン42の周面に形成されている。そして、洗浄液供給ポートPt(su)、洗浄液排出ポートPt(ex)に通じる第1通路(洗浄液供給通路)102、第2通路(洗浄液排出通路)104がピストンロッド50の内部に形成されている。これにより、実施例に含まれる洗浄システム10は、ピストン42がシリンダ端部に位置していても、また、ピストン42が移動中であっても、通常制御モード、第2、第3の制御モードのいずれでも動作させることができる。すなわち、実施例に含まれる洗浄システム10は、何時でも洗浄液を洗浄空間Sに圧送することが可能である。したがって、従来のように洗浄時にシリンダ端部にピストンが位置している必要はなく、そのためにピストンがシリンダ端部に到着するまで洗浄を中断しなければならない、という問題を解決することができる。
【0026】
図3は、ピストン42の水平断面図である。図3に示すように、第1通路(洗浄液供給通路)102の端部102aを例えば90度屈曲させて径方向外方に延ばすことにより、洗浄液供給ポートPt(su)を洗浄空間Sに臨んで開口させることができる。同様に、第2通路(洗浄液排出通路)104の端部104aを90度屈曲させて径方向外方に延ばすことにより、洗浄液排出ポートPt(ex)を洗浄空間Sに臨んで開口させることができる。好ましくは、洗浄液供給ポートPt(su)と洗浄液排出ポートPt(ex)とを平面視したときに径方向に対して配置させるのがよい。これにより、洗浄液供給ポートPt(su)から圧力下で吐出された洗浄液は、図3において、断面円周状の洗浄空間Sを時計方向と反時計方向の両方向に流れて洗浄液排出ポートPt(ex)に達し、この洗浄液排出ポートPt(ex)を通って排出される。これにより、洗浄液によってシリンダ40の内壁面を浄化することができる。
【0027】
図4は、洗浄液供給ポートPt(su)及び第1通路(洗浄液供給通路)102の端部102aの配置、洗浄液排出ポートPt(ex)及び第2通路(洗浄液排出通路)104の端部104aの配置に関する変形例を示す。図4において、Clは、第1通路(洗浄液供給通路)102の端部102aの通路軸線を示す。Tlは、第1通路(洗浄液供給通路)102の端部102aの開口つまり洗浄液供給ポートPt(su)に接するピストン42の周面の接線を示す。
【0028】
第1通路(洗浄液供給通路)102の端部102aの通路軸線Clは接線Tlと直交しておらず、端部102aの通路軸線Clと接線Tlとの交差角度θ1は90度よりも小さい。つまり、第1通路(洗浄液供給通路)102の端部102aはピストン42の周面に対して斜めに延びて洗浄液供給ポートPt(su)を通じて洗浄空間Sに開口している。このように第1通路(洗浄液供給通路)102の端部102aの延び方向を傾斜させることにより、図4において矢印で示すように、単一の洗浄液供給ポートPt(su)から吐出された洗浄液は一方向、つまり反時計方向に指向した流れを作る。この洗浄液の流れは、断面円周状の洗浄空間Sを反時計方向に旋回して、単一の洗浄液排出ポートPt(ex)に達する。すなわち、第1通路(洗浄液供給通路)102の端部102aを傾斜させることにより、洗浄液供給ポートPt(su)から洗浄空間Sに吐出された洗浄液を一方向に旋回する流れを作ることができ、洗浄空間Sで生成された旋回流によってシリンダ40の内壁面を浄化することができる。
【0029】
洗浄空間Sの洗浄液の旋回流に関し、上記の交差角度θ1が小さい方が良い。図5は、図4の変形例を示す図である。図4では、第1通路(洗浄液供給通路)102の端部102aが真っ直ぐに伸びる穴で構成されているが、これに代えて、端部102aを屈曲した穴で構成することで、端部102aの通路軸線Clと接線Tlとの交差角度θ2を図4の交差角度θ1よりも小さな交差角度にすることができる。
【0030】
図4図5を参照して、洗浄液排出ポートPt(ex)は、ピストン42の周面において、洗浄液供給ポートPt(su)と同じ側に配置するのがよい。また、洗浄液排出ポートPt(ex)は、ピストン42を平面視したときに、洗浄液供給ポートPt(su)と重なり合う位置に配置するのが好ましい。これにより、洗浄空間Sで生成された旋回流によってシリンダ40の内壁面を万遍なく浄化することができる。また、洗浄空間Sの充填された洗浄液を洗浄空間Sに残留させることなく、その全てを洗浄液排出ポートPt(ex)、第2通路(洗浄液排出通路)104を通じて排出することができる。
【0031】
更に、図4図5に図示のように、第2通路(洗浄液排出通路)104の端部104aを、上記第1通路(洗浄液供給通路)102の端部102aとは反対方向に傾斜して配置するのが好ましい。これにより、洗浄空間Sで旋回する洗浄液に向けて開口する洗浄液排出ポートPt(ex)で洗浄液を円滑に受け入れることができる。
【0032】
上述した実施例では、洗浄空間Sに対して一つの洗浄液供給ポートPt(su)を開口させる構成が採用されている。変形例として、洗浄空間Sに対して複数の穴(この穴を「ノズル穴」と呼ぶ。)を通じて洗浄液を圧力下で吐出して洗浄空間Sでの洗浄液の旋回流を助勢するようにしてもよい。
【0033】
圧力下の洗浄液を複数のノズル穴を通じて洗浄空間Sに供給する具体例を図6図7に基づいて説明する。ピストン42には、洗浄液供給ポートPt(su)に対応した位置に円周リング200が設けられている。円周リング200は、ピストン42と同軸である。円周リング200は、ピストン42の周面と協働して中間溝202を形成する凹所200aを有している。中間溝202は円周方向に連続している。円周リング200は、共に円周方向に連続して延びている溝202、洗浄空間Sに連通する複数のノズル穴204を有し、ノズル穴204は円周リング200の周方向に好ましくは等間隔に配置されている。
【0034】
図6において、参照符号Oは円周リング200の中心を示す。中心Oと各ノズル穴204とを結ぶ仮想線L1に対して、各ノズル穴204の中心線L2は傾斜している。図6に図示の例で説明すれば、反時計方向に角度α、ノズル穴204が傾斜している。これにより、洗浄空間Sにおいて、各ノズル穴204から圧力下で吐出される洗浄液は反時計方向に旋回する。
【0035】
周方向に等間隔に配置された複数のノズル穴204を備えた円周リング200をピストン42を構成する一つの部材と捉えると、図6図7に図示のピストン42は、洗浄空間Sに臨んで円周方向に離間して配置された複数のノズル穴204を備えていると把握することができる。換言すれば、洗浄液供給ポートPt(su)が複数のノズル穴204で構成されているのが図6図7に図示の例である。
【0036】
洗浄液供給ポートPt(su)を事実上構成する複数のノズル穴204は一方向に傾斜しており、この傾斜した複数のノズル穴204から圧力下で洗浄液が洗浄空間Sに向けて吐出され、これにより洗浄空間Sの旋回流が複数のノズル穴204によって助勢される。
【0037】
図1を参照して洗浄液ポンプ120は、コントローラCUによって制御するのが好ましい。通常制御モード、第2、第3の制御モードに対応した洗浄液ポンプ120の望ましい流量を予め設定しておくことで、洗浄液ポンプ120の流量を可変に制御するのがよい。
【符号の説明】
【0038】
4 シリンジポンプ
40 シリンダ
42 ピストン
44 シリンダ内の塗料充填室
46 塗料受け入れ通路
48 塗料供給通路
50 ピストンロッド
52 第1の開閉バルブ(シリンダ内充填室への塗料受け入れ制御バルブ)
54 第2の開閉バルブ(塗装機への塗料充填制御バルブ)
56 第1シールリング
58 第2シールリング
S 洗浄空間
6 塗装機
8 液体塗料源
10 洗浄システム
100 洗浄液源
102 第1通路(洗浄液供給通路)
102a 洗浄液供給通路の端部
104 第2通路(洗浄液排出通路)
104a 洗浄液排出通路の端部
110 洗浄液供給制御バルブ
112 洗浄液排出制御バルブ
120 洗浄液ポンプ
150 メモリ
204 ノズル穴
Pt(su) 洗浄液供給ポート
Pt(ex) 洗浄液排出ポート
CU コントローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7