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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 129/10 20060101AFI20241010BHJP
   C10M 105/38 20060101ALI20241010BHJP
   C10M 129/16 20060101ALI20241010BHJP
   C10M 129/66 20060101ALI20241010BHJP
   C10N 30/08 20060101ALN20241010BHJP
   C10N 40/30 20060101ALN20241010BHJP
【FI】
C10M129/10
C10M105/38
C10M129/16
C10M129/66
C10N30:08
C10N40:30
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021536948
(86)(22)【出願日】2020-07-17
(86)【国際出願番号】 JP2020027881
(87)【国際公開番号】W WO2021020182
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】P 2019138930
(32)【優先日】2019-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】永井 郷司
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03085757(EP,A1)
【文献】特表2014-517124(JP,A)
【文献】特開2016-023902(JP,A)
【文献】特開2013-133443(JP,A)
【文献】国際公開第2017/086221(WO,A1)
【文献】特表2017-502155(JP,A)
【文献】特開平08-134481(JP,A)
【文献】特開平06-025683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00-177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油基油と、アルキル化ヒドロキシアニソールと、酸捕捉剤と、を含む冷凍機油(ただし、前記冷凍機油がアルコキシ化ポリテトラヒドロフランを含む場合、並びに、前記冷凍機油がエストリド基油及びアミン抗酸化剤を含む場合を除く)であって、
前記アルキル化ヒドロキシアニソールの含有量が、冷凍機油全量基準で0.1~10質量%である、冷凍機油
【請求項2】
メトキシ基を有さないヒンダードフェノール化合物を更に含む、請求項に記載の冷凍機油。
【請求項3】
前記潤滑油基油が、含酸素油を含む、請求項1又は2に記載の冷凍機油。
【請求項4】
GWPが1000以下の冷媒と共に用いられる、請求項1~のいずれか一項に記載の冷凍機油。
【請求項5】
冷媒と、
潤滑油基油と、アルキル化ヒドロキシアニソールと、酸捕捉剤と、を含む冷凍機油(ただし、前記冷凍機油がアルコキシ化ポリテトラヒドロフランを含む場合、並びに、前記冷凍機油がエストリド基油及びアミン抗酸化剤を含む場合を除く)と、
を含む、冷凍機用作動流体組成物であって、
前記アルキル化ヒドロキシアニソールの含有量が、冷凍機油全量基準で0.1~10質量%である、冷凍機用作動流体組成物
【請求項6】
前記冷凍機油が、メトキシ基を有さないヒンダードフェノール化合物を更に含む、請求項に記載の冷凍機用作動流体組成物。
【請求項7】
前記潤滑油基油が、含酸素油を含む、請求項5又は6に記載の冷凍機用作動流体組成物。
【請求項8】
前記冷媒のGWPが1000以下である、請求項のいずれか一項に記載の冷凍機用作動流体組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫、カーエアコン、ルームエアコン、自動販売機等の冷凍機は、冷媒を冷凍サイクル内に循環させるための圧縮機を備える。そして、圧縮機には、摺動部材を潤滑させるための冷凍機油が充填される。冷凍機油は一般的に、耐摩耗性、安定性等の特性が求められており、要求特性に応じて選択される各種添加剤を含有する。例えば下記特許文献1では、冷凍機油の安定性を向上させるために酸捕捉剤等を添加することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-266423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の冷凍機油は、夾雑物の発生を抑制する等、安定性の点で更なる改善の余地がある。そこで、本発明は、優れた安定性を有する冷凍機油、及び該冷凍機油を含む冷凍機用作動流体組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、潤滑油基油と、アルキル化ヒドロキシアニソールと、を含む冷凍機油を提供する。
【0006】
アルキル化ヒドロキシアニソールの含有量は、冷凍機油全量基準で0.1~10質量%であってよい。
【0007】
冷凍機油は、酸捕捉剤を更に含んでいてもよい。
【0008】
冷凍機油は、メトキシ基を有さないヒンダードフェノール化合物を更に含んでいてもよい。
【0009】
冷凍機油において、上記潤滑油基油は、含酸素油を含んでいてもよい。
【0010】
冷凍機油は、GWPが1000以下の冷媒を含む冷媒と共に用いられてもよい。
【0011】
また、本発明は、上述した本発明に係る冷凍機油と、冷媒と、を含む冷凍機用作動流体組成物を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、優れた安定性を有する冷凍機油、及び該冷凍機油を含む冷凍機用作動流体組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0014】
本実施形態に係る冷凍機油は、潤滑油基油と、アルキル化ヒドロキシアニソールと、を含む。
【0015】
潤滑油基油としては、炭化水素油、含酸素油等を用いることができる。
【0016】
炭化水素油としては、鉱油系炭化水素油、合成系炭化水素油が例示される。
【0017】
鉱油系炭化水素油は、パラフィン系、ナフテン系等の原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤精製、水素化精製、水素化分解、溶剤脱ろう、水素化脱ろう、白土処理、硫酸洗浄等の方法で精製することによって得ることができる。これらの精製方法は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
合成系炭化水素油としては、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ポリα-オレフィン(PAO)、ポリブテン、エチレン-α-オレフィン共重合体等が挙げられる。
【0019】
潤滑油基油は、含酸素油を含むことが好ましい。含酸素油としては、エステル、エーテル、カーボネート、ケトン、シリコーン、ポリシロキサンが例示される。
【0020】
エステルとしては、ポリオールエステル、芳香族エステル、二塩基酸エステル、コンプレックスエステル、炭酸エステル及びこれらの混合物等が例示される。エーテルとしては、ポリビニルエーテル、ポリアルキレングリコール、ポリフェニルエーテル、パーフルオロエーテル及びこれらの混合物等が例示される。含酸素油としては、これらの中でもポリオールエステルが好ましく用いられる。
【0021】
ポリオールエステルは、多価アルコールと脂肪酸とのエステルである。脂肪酸としては、飽和脂肪酸が好ましく用いられる。脂肪酸の炭素数は、好ましくは4~20、より好ましくは4~18、更に好ましくは4~9、特に好ましくは5~9であり、極めて好ましくは8~9である。ポリオールエステルは、多価アルコールの水酸基の一部がエステル化されずに水酸基のまま残っている部分エステルであってもよく、全ての水酸基がエステル化された完全エステルであってもよく、また部分エステルと完全エステルとの混合物であってもよい。
【0022】
ポリオールエステルを構成する脂肪酸のうち、上述した好ましい炭素数を有する脂肪酸の割合は、好ましくは20~100モル%、より好ましくは50~100モル%、更に好ましくは60~100モル%、特に好ましくは70~100モル%、極めて好ましくは90~100モル%である。特に、ポリオールエステルを構成する脂肪酸として、炭素数9の脂肪酸を含む場合、当該脂肪酸の割合は、好ましくは40モル%以上、より好ましくは51モル%以上、更に好ましくは60モル%以上であり、好ましくは100モル%以下、より好ましくは90モル%以下、更に好ましくは80モル%以下、特に好ましくは70モル%以下である。
【0023】
また、ポリオールエステルを構成する脂肪酸のうち、上述した好ましい炭素数を有する脂肪酸(すなわち炭素数4~20の脂肪酸)としては、具体的には、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、イコサン酸が挙げられる。これらの脂肪酸は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。脂肪酸は、好ましくはα位及び/又はβ位に分岐を有する脂肪酸であり、より好ましくは、炭素数4~9の分岐脂肪酸であり、具体的には、2-メチルプロパン酸、2-メチルブタン酸、2-メチルペンタン酸、2-メチルヘキサン酸、2-エチルペンタン酸、2-メチルヘプタン酸、2-エチルヘキサン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸及び2-エチルヘキサデカン酸から選ばれ、更に好ましくは、冷媒相溶性の観点から、2-エチルヘキサン酸及び3,5,5-トリメチルヘキサン酸から選ばれる。
【0024】
なお、ポリオールエステルを構成する脂肪酸が炭素数4~9の分岐脂肪酸を含む場合、冷媒との相溶性がよいため、動粘度及び冷媒溶解粘度維持の観点から、3,5,5-トリメチルヘキサン酸を40モル%以上含むことが好ましい。一方、3,5,5-トリメチルヘキサン酸が多すぎると、冷媒共存下においてポリオールエステルの分解が起こりやすい傾向にあることから、3,5,5-トリメチルヘキサン酸の割合は、好ましくは51モル%以上、より好ましくは60モル%以上であり、好ましくは90モル%以下、より好ましくは80モル%以下、特に好ましくは70モル%以下であってよい。
【0025】
脂肪酸は、炭素数4~20の脂肪酸以外の脂肪酸を含んでいてもよい。炭素数4~20の脂肪酸以外の脂肪酸は、例えば炭素数21~24の脂肪酸であってよい。炭素数21~24の脂肪酸は、ヘンイコ酸、ドコサン酸、トリコサン酸、テトラコサン酸等であってよく、直鎖状であっても分岐状であってもよい。
【0026】
ポリオールエステルを構成する多価アルコールとしては、2~6個の水酸基を有する多価アルコールが好ましく用いられる。多価アルコールの炭素数は、好ましくは4~12、より好ましくは5~10である。多価アルコールは、好ましくは、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ-(トリメチロールプロパン)、トリ-(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等のヒンダードアルコールなどであり、冷媒との相溶性及び加水分解安定性に特に優れることから、より好ましくは、ペンタエリスリトールと、ジペンタエリスリトール、又はペンタエリスリトールとジペンタエリスリトールとの混合アルコールである。
【0027】
潤滑油基油が、上記含酸素油を含む場合、潤滑油基油における上記含酸素油の含有量は、潤滑油基油全量基準で、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、又は90質量%以上であってよく、含酸素油のみを含んでいてもよい。
【0028】
潤滑油基油の40℃における動粘度は、好ましくは3mm/s以上、より好ましくは4mm/s以上、更に好ましくは5mm/s以上、特に好ましくは10mm/s以上、極めて好ましくは20mm/s以上、非常に好ましくは30mm/s以上であってよい。潤滑油基油の40℃における動粘度は、好ましくは1000mm/s以下、より好ましくは500mm/s以下、更に好ましくは400mm/s以下、特に好ましくは300mm/s以下、極めて好ましくは200mm/s以下、非常に好ましくは150mm/s以下であってよい。潤滑油基油の100℃における動粘度は、好ましくは1mm/s以上、より好ましくは2mm/s以上であってよい。潤滑油基油の100℃における動粘度は、好ましくは100mm/s以下、より好ましくは50mm/s以下、更に好ましくは30mm/s以下、特に好ましくは20mm/s以下であってよい。本発明における動粘度は、JIS K2283:2000に準拠して測定された動粘度を意味する。
【0029】
本実施形態に係る冷凍機油は、アルキル化ヒドロキシアニソールを含む。アルキル化ヒドロキシアニソールは、アニソール骨格(ベンゼンの水素をメトキシ基に置換した構造)のベンゼン環に少なくとも1つの水酸基と少なくとも1つのアルキル基を有する化合物である。アルキル基の炭素数は、例えば1~4である。また、アルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよいが、好ましくは分岐鎖状であり、より好ましくはtert.-ブチル基である。アルキル化ヒドロキシアニソールとしては、例えば、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)が挙げられ、特に下記式(1)で表される2-tert.-ブチル-4-ヒドロキシアニソールのような2-アルキル-4-ヒドロキシアニソール、下記式(2)で表される3-tert.-ブチル-4-ヒドロキシアニソールのような3-アルキル-4-ヒドロキシアニソール、及びこれらの混合物等が挙げられる。混合物は、下記式(1)及び下記式(2)の化合物が1:1(質量比)で含まれることが好ましい。
【0030】
【化1】
【0031】
【化2】
【0032】
アルキル化ヒドロキシアニソールの含有量は、冷凍機油全量基準で、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.6質量%以上、更に好ましくは0.7質量%以上、特に好ましくは0.8質量%以上、極めて好ましくは0.9質量%以上であり、1.0質量%以上、1.2質量%以上又は1.5質量%以上であってもよい。アルキル化ヒドロキシアニソールの含有量が、冷凍機油全量基準で0.1質量%以上であると、後述する冷媒に起因する夾雑物の発生をより適切に抑制することができ、冷凍機油の安定性をより効果的に確保することができる。また、アルキル化ヒドロキシアニソールの含有量は、冷凍機油全量基準で、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下、更に好ましくは4.0質量%以下、特に好ましくは3.0質量%以下、極めて好ましくは2.9質量%以下、非常に好ましくは2.8質量%以下である。アルキル化ヒドロキシアニソールの含有量が、冷凍機油全量基準で10質量%以下であると、冷凍機油の動粘度及び粘度指数の過度な低下を抑制することができ、空気混入時の着色を効果的に抑えることができる。
【0033】
本実施形態に係る冷凍機油は、酸捕捉剤を更に含んでいてもよい。
【0034】
酸捕捉剤としては、例えばエポキシ化合物(エポキシ系酸捕捉剤)が挙げられる。エポキシ化合物としては、グリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、アリールオキシラン化合物、アルキルオキシラン化合物、脂環式エポキシ化合物、エポキシ化脂肪酸モノエステル、エポキシ化植物油等が挙げられる。これらの酸捕捉剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
グリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、例えば下記式(3)で表されるアリールグリシジルエーテル型エポキシ化合物又は得るキルグリシジルエーテル型エポキシ化合物を用いることができる。
【0036】
【化3】
[式(3)中、Rはアリール基又は炭素数5~18のアルキル基を表す。]
【0037】
式(3)で表されるグリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、フェニルグリシジルエーテル、n-ブチルフェニルグリシジルエーテル、i-ブチルフェニルグリシジルエーテル、sec-ブチルフェニルグリシジルエーテル、tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、ペンチルフェニルグリシジルエーテル、ヘキシルフェニルグリシジルエーテル、ヘプチルフェニルグリシジルエーテル、オクチルフェニルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテル、デシルフェニルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ウンデシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、トリデシルグリシジルエーテル、テトラデシルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテルが好ましい。
【0038】
で表されるアルキル基の炭素数が5以上であると、エポキシ化合物の安定性が確保され、水分、脂肪酸、酸化劣化物との反応前の分解、又はエポキシ化合物同士の自己重合を抑制でき、酸捕捉剤としての機能が得られやすくなる。一方、Rで表されるアルキル基の炭素数が18以下であると、冷媒との相溶性が良好に保たれ、安定性(夾雑物の析出抑制)をより向上させることができる。
【0039】
グリシジルエーテル型エポキシ化合物として、式(1)で表されるエポキシ化合物以外に、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールモノグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル等を用いることもできる。
【0040】
グリシジルエステル型エポキシ化合物としては、例えば下記式(4)で表されるものを用いることができる。
【0041】
【化4】
【0042】
式(4)中、Rはアリール基、炭素数5~18のアルキル基、又はアルケニル基を示す。
【0043】
式(4)で表されるグリシジルエステル型エポキシ化合物としては、グリシジルベンゾエート、グリシジルネオデカノエート、グリシジル-2,2-ジメチルオクタノエート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートが好ましい。
【0044】
で表されるアルキル基の炭素数が5以上であると、エポキシ化合物の安定性が確保され、水分、脂肪酸、酸化劣化物と反応する前に分解したり、エポキシ化合物同士が重合する自己重合を起こしたりするのを抑制でき、目的の機能が得られやすくなる。一方、Rで表されるアルキル基又はアルケニル基の炭素数が18以下であると、冷媒との相溶性が良好に保たれ、安定性(夾雑物の析出抑制)をより向上させることができる。
【0045】
脂環式エポキシ化合物とは、下記一般式(5)で表される、エポキシ基を構成する炭素原子が直接脂環式環を構成している部分構造を有する化合物である。
【0046】
【化5】
【0047】
脂環式エポキシ化合物としては、例えば、1,2-エポキシシクロヘキサン、1,2-エポキシシクロペンタン、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、エキソ-2,3-エポキシノルボルナン、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、2-(7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト-3-イル)-スピロ(1,3-ジオキサン-5,3’-[7]オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、4-(1’-メチルエポキシエチル)-1,2-エポキシ-2-メチルシクロヘキサン、4-エポキシエチル-1,2-エポキシシクロヘキサンが好ましい。
【0048】
アリールオキシラン化合物としては、1,2-エポキシスチレン、アルキル-1,2-エポキシスチレンなどが例示できる。
【0049】
アルキルオキシラン化合物としては、1,2-エポキシブタン、1,2-エポキシペンタン、1,2-エポキシヘキサン、1,2-エポキシヘプタン、1,2-エポキシオクタン、1,2-エポキシノナン、1,2-エポキシデカン、1,2-エポキシウンデカン、1,2-エポキシドデカン、1,2-エポキシトリデカン、1,2-エポキシテトラデカン、1,2-エポキシペンタデカン、1,2-エポキシヘキサデカン、1,2-エポキシヘプタデカン、1,1,2-エポキシオクタデカン、2-エポキシノナデカン、1,2-エポキシイコサンなどが例示できる。
【0050】
エポキシ化脂肪酸モノエステルとしては、エポキシ化された炭素数12~20の脂肪酸と、炭素数1~8のアルコール又はフェノールもしくはアルキルフェノールとのエステルなどが例示できる。エポキシ化脂肪酸モノエステルとしては、エポキシステアリン酸のブチル、ヘキシル、ベンジル、シクロヘキシル、メトキシエチル、オクチル、フェニルおよびブチルフェニルエステルが好ましく用いられる。
【0051】
エポキシ化植物油としては、大豆油、アマニ油、綿実油等の植物油のエポキシ化合物などが例示できる。
【0052】
酸捕捉剤は、好ましくはグリシジルエステル型エポキシ化合物及びグリシジルエーテル型エポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種であり、冷凍機内の部材に使用されている樹脂材料との適合性に優れる観点からは、好ましくはグリシジルエステル型エポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種である。
【0053】
酸捕捉剤の含有量は、冷凍機油全量基準で、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.4質量%以上である。また、酸捕捉剤の含有量は、冷凍機油全量基準で、好ましくは4質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下、特に好ましくは1.2質量%以下である。
【0054】
本実施形態に係る冷凍機油が酸捕捉剤を含む場合、冷凍機油におけるアルキル化ヒドロキシアニソール及び酸捕捉剤の含有量の合計に対する酸捕捉剤の含有量の質量比(酸捕捉剤の含有量/アルキル化ヒドロキシアニソール及び酸捕捉剤の含有量の合計)は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.5以上であり、また、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.9以下、更に好ましくは0.8以下である。
【0055】
本実施形態に係る冷凍機油が酸捕捉剤を含む場合、冷凍機油におけるアルキル化ヒドロキシアニソール及び酸捕捉剤の含有量の合計は、冷凍機油全量基準で、好ましくは0.7質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上、特に好ましくは2質量%以上であり、また、好ましくは10質量%以下、より好ましくは6質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、特に好ましくは4質量%以下、極めて好ましくは3質量%以下である。
【0056】
本実施形態に係る冷凍機油は、本発明の効果をより効果的に発揮する観点から、メトキシ基を有さないヒンダードフェノール化合物を更に含むことが好ましい。メトキシ基を有さないヒンダードフェノール化合物とは、ヒンダードフェノール化合物におけるベンゼン環の水素がメトキシ基で置換されていない化合物をいう。メトキシ基を有さないヒンダードフェノール化合物としては、例えば、2,6-ジ-tert.-ブチル-p-クレゾール(DBPC)、2,6-ジ-tert.-ブチル-フェノール、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert.-ブチル-フェノール)等及びこれらの類似構造の化合物群が挙げられ、DBPCが好ましく用いられる。冷凍機油がメトキシ基を有さないヒンダードフェノール化合物を含む場合、その含有量は、冷凍機油全量基準で、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.6質量%以上、更に好ましくは0.7質量%以上、特に好ましくは0.8質量%以上、極めて好ましくは0.9質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下、更に好ましくは4.0質量%以下、特に好ましくは3.0質量%以下、極めて好ましくは2.9質量%以下、非常に好ましくは2.8質量%以下である。
【0057】
本実施形態に係る冷凍機油は、その他の添加剤を更に含有していてもよい。その他の添加剤としては、アミン系酸化防止剤等の酸化防止剤、極圧剤、油性剤、消泡剤、金属不活性化剤、耐摩耗剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、清浄分散剤等が挙げられる。これらの添加剤を含有させる場合の含有量は、下記で特に言及しない限り、冷凍機油全量基準で、10質量%以下又は5質量%以下であってよい。
【0058】
アミン系酸化防止剤としては、フェニル-α-ナフチルアミン類、ジアルキル化ジフェニルアミン類等が挙げられる。本実施形態に係る冷凍機油が、アミン系酸化防止剤等の酸化防止剤を含有する場合、その含有量は、冷凍機油全量基準で、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.6質量%以上、更に好ましくは0.7質量%以上、特に好ましくは0.8質量%以上、極めて好ましくは0.9質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下、更に好ましくは4.0質量%以下、特に好ましくは3.0質量%以下、極めて好ましくは2.9質量%以下、非常に好ましくは2.8質量%以下である。
【0059】
冷凍機油の40℃における動粘度は、潤滑性を確保する観点から、好ましくは3mm/s以上、より好ましくは4mm/s以上、更に好ましくは5mm/s以上、特に好ましくは10mm/s以上、極めて好ましくは20mm/s以上、非常に好ましくは30mm/s以上であってよい。冷凍機油の40℃における動粘度は、圧縮機内の粘性抵抗を抑制する観点から、好ましくは500mm/s以下、より好ましくは400mm/s以下、更に好ましくは300mm/s以下、特に好ましくは200mm/s以下、極めて好ましくは150mm/s以下であってよい。冷凍機油の100℃における動粘度は、潤滑性を確保する観点から、好ましくは1mm/s以上、より好ましくは2mm/s以上であってよい。冷凍機油の100℃における動粘度は、圧縮機内の粘性抵抗を抑制する観点から、好ましくは100mm/s以下、より好ましくは50mm/s以下であってよい。
【0060】
冷凍機油の流動点は、好ましくは-10℃以下、より好ましくは-20℃以下であってよい。本発明における流動点は、JIS K2269:1987に準拠して測定される流動点を意味する。
【0061】
冷凍機油の体積抵抗率は、好ましくは1.0×10Ω・m以上、より好ましくは1.0×1010Ω・m以上、更に好ましくは1.0×1011Ω・m以上であってよい。本発明における体積抵抗率は、JIS C2101:1999に準拠して測定した25℃での体積抵抗率を意味する。
【0062】
冷凍機油の水分含有量は、冷凍機油全量基準で、好ましくは200ppm以下、より好ましくは100ppm以下、更に好ましくは50ppm以下であってよい。なお、本発明における水分含有量は、JIS K2275(カールフィッシャー式滴定法)に準拠して測定された水分含有量を意味する。
【0063】
冷凍機油の酸価は、好ましくは1.0mgKOH/g以下、より好ましくは0.1mgKOH/g以下、更に好ましくは0.05mgKOH/g以下であってよい。冷凍機油の酸価が1.0mgKOH/g以下であると、化学的安定性をより確実に確保することができる。本発明における酸価は、JIS K2501:2003に準拠して測定された酸価を意味する。
【0064】
冷凍機油の灰分は、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下であってよい。本発明における灰分は、JIS K2272:1998に準拠して測定された灰分を意味する。
【0065】
本実施形態に係る冷凍機油は、通常、冷凍機において、冷媒と混合された冷凍機用作動流体組成物として存在している。すなわち、本実施形態に係る冷凍機油は、冷媒と共に用いられ、本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物は、本実施形態に係る冷凍機油と冷媒とを含む。冷凍機用作動流体組成物における冷凍機油の含有量は、冷媒100質量部に対して、1~500質量部、又は2~400質量部であってよい。
【0066】
冷媒としては、地球環境への影響を低減するため、地球温暖化係数(GWP)の低い冷媒を用いることが好ましい。具体的には、GWPが1000以下、500以下、100以下、50以下又は10以下の冷媒が挙げられる。冷媒としてGWPが1000以下の冷媒を用いる場合、かかる冷媒は、GWPが1000以下の冷媒のみを含んでいてもよく、GWPが1000以下の冷媒及びGWPが1000以下の冷媒以外の冷媒の混合冷媒であってもよい。GWPが1000以下の冷媒の含有量は、冷媒全量基準で、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上である。また、GWPが1000以下の冷媒の含有量は、冷媒全量基準で、好ましくは100質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
【0067】
GWPが1000以下の冷媒としては、例えば、三フッ化ヨウ化メタンを用いてもよい。冷媒が三フッ化ヨウ化メタンを含む場合、三フッ化ヨウ化メタンのみを含んでいてもよく、三フッ化ヨウ化メタン以外の冷媒を更に含んでいてもよい。三フッ化ヨウ化メタンの含有量は、冷媒全量基準で、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上である。また、三フッ化ヨウ化メタンの含有量は、冷媒全量基準で、好ましくは100質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
【0068】
三フッ化ヨウ化メタン以外の冷媒としては、例えば、飽和フッ化炭化水素冷媒、不飽和フッ化炭化水素冷媒、炭化水素冷媒、パーフルオロエーテル類等の含フッ素エーテル系冷媒、ビス(トリフルオロメチル)サルファイド冷媒、及び、アンモニア、二酸化炭素等の自然系冷媒、並びにこれらの冷媒から選ばれる2種以上の混合冷媒が例示される。
【0069】
飽和フッ化炭化水素冷媒としては、好ましくは炭素数1~3、より好ましくは炭素数1~2の飽和フッ化炭化水素が挙げられる。具体的には、ジフルオロメタン(R32)、トリフルオロメタン(R23)、ペンタフルオロエタン(R125)、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(R134)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R134a)、1,1,1-トリフルオロエタン(R143a)、1,1-ジフルオロエタン(R152a)、フルオロエタン(R161)、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(R227ea)、1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン(R236ea)、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン(R236fa)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(R245fa)、及び1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(R365mfc)、又はこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0070】
飽和フッ化炭化水素冷媒としては、上記の中から用途や要求性能に応じて適宜選択されるが、例えばR32単独;R23単独;R134a単独;R125単独;R134a/R32=60~80質量%/40~20質量%の混合物;R32/R125=40~70質量%/60~30質量%の混合物;R125/R143a=40~60質量%/60~40質量%の混合物;R134a/R32/R125=60質量%/30質量%/10質量%の混合物;R134a/R32/R125=40~70質量%/15~35質量%/5~40質量%の混合物;R125/R134a/R143a=35~55質量%/1~15質量%/40~60質量%の混合物などが好ましい例として挙げられる。さらに具体的には、R134a/R32=70/30質量%の混合物;R32/R125=60/40質量%の混合物;R32/R125=50/50質量%の混合物(R410A);R32/R125=45/55質量%の混合物(R410B);R125/R143a=50/50質量%の混合物(R507C);R32/R125/R134a=30/10/60質量%の混合物;R32/R125/R134a=23/25/52質量%の混合物(R407C);R32/R125/R134a=25/15/60質量%の混合物(R407E);R125/R134a/R143a=44/4/52質量%の混合物(R404A)等を用いることができる。
【0071】
三フッ化ヨウ化メタンと上記飽和フッ化炭化水素冷媒との混合冷媒としては、例えば、R32/R125/三フッ化ヨウ化メタン混合冷媒、R32/R410A/三フッ化ヨウ化メタン混合冷媒が好ましい例として挙げられる。このような混合冷媒におけるR32:三フッ化ヨウ化メタンの比率は、冷凍機油との相溶性、低GWP及び不燃性とのバランスから、好ましくは10~90:90~10、より好ましくは30~70:70~30、更に好ましくは40~60:60~40、特に好ましくは50~60:50~40であり、同様に、R32及び三フッ化ヨウ化メタンの混合冷媒:R125の比率は、好ましくは10~95:90~5であり、低GWPの観点から、より好ましくは50~95:50~5、更に好ましくは80~95:20~5である。
【0072】
不飽和フッ化炭化水素(HFO)冷媒は、好ましくはフルオロプロペン、より好ましくはフッ素数が3~5のフルオロプロペンである。不飽和フッ化炭化水素冷媒としては、具体的には、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye)、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)、1,2,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ye)、及び3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1243zf)のいずれか1種又は2種以上の混合物であることが好ましい。冷媒物性の観点からは、HFO-1225ye、HFO-1234ze及びHFO-1234yfから選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。
【0073】
炭化水素冷媒は、好ましくは炭素数1~5の炭化水素、より好ましくは炭素数2~4の炭化水素である。炭化水素としては、具体的には例えば、メタン、エチレン、エタン、プロピレン、プロパン(R290)、シクロプロパン、ノルマルブタン、イソブタン、シクロブタン、メチルシクロプロパン、2-メチルブタン、ノルマルペンタン又はこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらの中でも、25℃、1気圧で気体のものが好ましく用いられ、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、2-メチルブタン又はこれらの混合物が好ましい。
【0074】
本実施形態に係る冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物は、往復動式や回転式の密閉型圧縮機を有するエアコン、冷蔵庫、開放型又は密閉型のカーエアコン、除湿機、給湯器、冷凍庫、冷凍冷蔵倉庫、自動販売機、ショーケース、化学プラント等の冷凍機、遠心式の圧縮機を有する冷凍機等に好適に用いられる。
【実施例
【0075】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0076】
実施例及び比較例においては、以下に示す基油及び添加剤を用いて表1に示す組成(冷凍機油全量基準での質量%)を有する冷凍機油を調製した。これらの冷凍機油の40℃における動粘度は、概ね70~75mm/sの範囲にあった。
【0077】
(基油)
A1:ペンタエリスリトールと、2-エチルヘキサン酸/3,5,5-トリメチルヘキサン酸の混合脂肪酸(モル比:37/63)とのポリオールエステル(40℃における動粘度:75.5mm/s、100℃における動粘度:8.9mm/s)
【0078】
(添加剤)
B1:ブチルヒドロキシアニソール(式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物との混合物)
B2:ブチルヒドロキシアニソール(分取LCにより、式(1)で表される化合物のみとしたもの)
B3:ブチルヒドロキシアニソール(分取LCにより、式(2)で表される化合物のみとしたもの)
C1:グリシジルネオデカノエート(エポキシ系酸捕捉剤)
D1:2,6-ジ-tert.-ブチル-p-クレゾール
D2:ジアルキル化ジフェニルアミン(アミン系酸化防止剤)
【0079】
三フッ化ヨウ化メタンを含む冷媒として、ジフルオロメタン(R32)、ジフルオロメタン(R32)/ペンタフルオロエタン(R125)の50/50質量%の混合物(R410A)、及び三フッ化ヨウ化メタンを混合し、R32、R125及び三フッ化ヨウ化メタンを含む混合冷媒(混合比(質量比):R32/R410A/三フッ化ヨウ化メタン=37.5/23/39.5)(R32/R125/三フッ化ヨウ化メタン=49.0/11.5/39.5)を調製した。この組成の混合冷媒は、GWPが733とされ、ASHRAEによるカテゴリーでは、不燃性冷媒(A1)にあたるとされている。
【0080】
実施例1~4及び比較例1の各冷凍機油について、以下に示す評価試験を実施した。
【0081】
オートクレーブ中に、水分を10ppm以下に調製した冷凍機油(初期色相L0.5、初期酸価0.01mgKOH/g以下)30gと、上記で調製した混合冷媒30gと、0.6mmφ×50mmの触媒(銅、鉄、アルミニウムの各1本)とを200mlオートクレーブに仕込み、175℃に加熱して48時間保持した。48時間後の冷凍機油について、夾雑物の含有量、色相(ASTM D156)及び酸価を測定した。結果を表1に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
また、実施例1及び実施例4の冷凍機油について、オートクレーブ中での保持時間を72時間に変更した以外は上記と同様の操作を行い、72時間後の冷凍機油について酸価を測定した。実施例1の冷凍機油の酸価は0.55mgKOH/gであり、実施例4の冷凍機油の酸価は0.05mgKOH/gであった。アルキル化ヒドロキシアニソールに、メトキシ基を有さないヒンダードフェノール化合物を更に含む冷凍機油を用いた場合、酸価の抑制効果をより向上させることができた。